説明

リソグラフィック装置及びデバイス製造方法

【課題】
リソグラフィック装置及びデバイス製造方法を提供すること。
【解決手段】
投影システムの最終エレメントと基板Wの間に配置される液浸液と共に使用するためのリソグラフィック投影装置を開示する。投影システム、基板テーブル及び液体拘束システムのコンポーネントを保護するための複数の方法を開示する。これらの方法には、投影システムの最終エレメント20に保護コーティングを施すステップと、コンポーネントの上流側に犠牲体を提供するステップが含まれている。また、CaFの2コンポーネント最終光学エレメントを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィック装置及びデバイスを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィック装置は、基板、一般的には基板の目標部分に所望のパターンを適用するマシンである。リソグラフィック装置は、たとえば集積回路(IC)の製造に使用することができる。この場合、マスク或いはレチクルとも呼ばれるパターン化デバイスを使用して、ICの個々の層に形成すべき回路パターンが生成され、このパターンが、基板(たとえばシリコン・ウェハ)上の目標部分(たとえば1つ又は複数のダイ部分からなる)に転送される。パターンの転送は、通常、基板上に提供された放射線感応材料(レジスト)の層への画像化を介して実施されている。通常、1枚の基板には、順次パターン化される目標部分に隣接する回路網が含まれている。知られているリソグラフィック装置には、パターン全体を1回で目標部分に露光することによって目標部分の各々が照射される、いわゆるステッパと、パターンを放射ビームで所与の方向(「走査」方向)に走査し、かつ、基板をこの方向に平行に、或いは非平行に同期走査することによって目標部分の各々が照射される、いわゆるスキャナがある。また、パターンを基板上に転写することによって、パターン化デバイスから基板へパターンを転送することも可能である。
【0003】
投影システムの最終エレメントと基板の間の空間を充填するべく、比較的屈折率の大きい液体中、たとえば水中に、リソグラフィック投影装置の基板を浸す方法が提案されている。この方法のポイントは、液体中では露光放射の波長がより短くなるため、より小さいフィーチャを画像化することができることである。(また、液体の効果は、システムの有効NAが大きくなり、かつ、焦点深度が長くなることにあると見なすことができる。)固体粒子(たとえば石英)が懸濁した水を始めとする他の液浸液が提案されている。
【0004】
しかしながら、基板又は基板と基板テーブルを液体槽に浸す(たとえば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれているUS4,509,852号を参照されたい)ことは、走査露光の間、加速しなければならない大量の液体が存在していることを意味しており、そのためにはモータを追加するか、或いはより強力なモータが必要であり、また、液体の攪乱により、望ましくない予測不可能な影響がもたらされることになる。
【0005】
提案されている解決法の1つは、液体供給システムの場合、液体拘束システムを使用して、基板の局部領域上のみ、及び投影システムの最終エレメントと基板の間に液体を提供することである(基板の表面積は、通常、投影システムの最終エレメントの表面積より広くなっている)。参照によりその全体が本明細書に組み込まれているWO99/49504号に、そのために提案されている方法の1つが開示されている。図2及び3に示すように、液体は、好ましくは基板が最終エレメントに対して移動する方向に沿って、少なくとも1つの入口INによって基板に供給され、投影システムの下を通過した後、少なくとも1つの出口OUTによって除去される。つまり、基板を最終エレメントの下を−X方向に走査する際に、最終エレメントの+X側で液体が供給され、−X側で除去される。図2は、入口INを介して液体が供給され、最終エレメントのもう一方の側で、低圧源に接続された出口OUTによって除去される構造を略図で示したものである。図2に示す図解では、液体は、必ずしもそれには限定されないが、基板が最終エレメントに対して移動する方向に沿って供給されている。様々な配向及び数の入口及び出口を最終エレメントの周りに配置することが可能である。図3はその実施例の1つを示したもので、両側に出口を備えた4組の入口が、最終エレメントの周りに一定のパターンで提供されている。
【0006】
提案されているもう1つの解決法は、投影システムの最終エレメントと基板テーブルの間の空間の境界の少なくとも一部に沿って展開したシール部材を備えた液体供給システムを提供することである。図4は、このような解決法を示したものである。シール部材は、Z方向(光軸の方向)における若干の相対移動が存在する可能性があるが、投影システムに対して実質的にXY平面内に静止している。シール部材と基板の表面の間にシールが形成されている。このシールは、ガス・シールなどの非接触シールであることが好ましい。参照によりその全体が本明細書に組み込まれている欧州特許出願第03252955.4号に、ガス・シールを備えたこのようなシステムが開示されている。
【0007】
欧州特許出願第03257072.3号に、二重ステージ液浸リソグラフィ装置の着想が開示されている。このような装置は、基板を支持するための2つのステージを備えている。1つのステージを使用して、液浸液が存在していない第1の位置で水準測定が実施され、もう1つのステージを使用して、液浸液が存在している第2の位置で露光が実施される。別法としては、装置は、1つのステージのみを有している。
【0008】
投影システムの最終エレメントと基板の間の空間に液浸液を使用することは、投影システムの最終エレメント(たとえば、投影システム若しくは投影システムの最終光学エレメントを密閉する「アブシュラススプラット(abschlussplatte)」)及び基板テーブルが液浸液と接触することを意味しており、投影システム若しくは基板テーブルのコンポーネントが液浸液と反応し、或いは液浸液中に溶解する問題をもたらしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
液浸液との接触によるコンポーネントの劣化が緩和されるリソグラフィック投影装置が提供されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、投影システムを使用してパターン化デバイスから基板上にパターンを投影するようになされ、かつ、前記投影システムの最終エレメントと前記基板の間の空間の少なくとも一部に液浸液を充填するための液体供給システムを有し、前記液浸液と接触する前記最終エレメントの表面に、実質的に前記液浸液に対して不溶性の保護コーティングが施されたリソグラフィック投影装置が提供される。
【0011】
したがって、投影システムの最終エレメントに使用する材料を、その光学特性を優先して選択することができ、最終エレメントの材料と液浸液の間の作用に関する問題を何ら考慮する必要がない。保護コーティングの厚さを薄くすることにより、投影ビームに対する保護コーティングの影響が最小化される。
【0012】
前記保護コーティングは、金属、金属酸化物若しくはTiNなどの窒化物、ダイヤモンド、DLC或いはSiOであることが好ましい。これらの材料は、液浸リソグラフィで使用される投影放射ビームに対して透明であり、かつ、実質的に水からなっていることが好ましい液浸液に対して不溶性若しくは不活性であることが分かっている。
【0013】
本発明の一態様によれば、投影システムを使用してパターン化デバイスから基板上にパターンを投影するようになされ、かつ、前記投影システムの最終エレメントと前記基板の間の空間の少なくとも一部に液浸液を充填するための液体供給システムを有し、前記液体供給システムが、前記最終エレメントと接触している前記空間に第1の液浸液を提供し、前記基板と接触している前記空間に第2の液浸液を提供するための手段を備えたリソグラフィック投影装置が提供される。
【0014】
この構造により、投影システムの最終エレメントの材料が、その液体に対して不溶性(及び/又は不活性)であるように第1の液浸液を選択することができ、一方、第1の液浸液とは異なる第2の液浸液については、適切な光学特性若しくは必要な光学特性を有する液浸液を選択することができる。第1及び第2の液体は、第1の液体のみが最終エレメントと接触することを保証することができるよう、分離した状態が維持されることが好ましい。
【0015】
液体供給システムは、第1及び第2の液浸液を分離するための膜を有していることが好ましい。これは、2種類の液浸液を最終エレメント及び基板に対して適切に拘束するべく配置することができる数ある方法のうちの1つである。膜の材料には石英を使用することができ、その厚さは、0.1mmと5mmの間であることが好ましい。この方法によれば、投影システムの最終エレメントを第2の液浸液から保護することができ、かつ、投影ビームの品質に悪影響を及ぼすことはほとんどない。他の解決法を利用することも可能である。
【0016】
本発明の一態様によれば、投影システムを使用してパターン化デバイスから基板上にパターンを投影するようになされ、かつ、前記投影システムの最終エレメントと前記基板の間の空間の少なくとも一部に液浸液を充填するための液体供給システムを有し、前記最終エレメントが、CaF或いはSiO若しくはそれらの両方を組み合わせた材料の第1及び第2のコンポーネントからなり、前記コンポーネントが、前記投影ビームが前記第1のコンポーネントを通過した後、前記第2のコンポーネントを通過するように配列されたリソグラフィック投影装置が提供される。
【0017】
この構造の場合、該当するのは、光パワーを備えた最終光学エレメント及び/又はアブシュラススプラットである。この方法によれば、CaFの第1及び第2のコンポーネントを使用して他のコンポーネントの真性複屈折の影響を相殺することができるため、CaFの良好な光学特性を利用することができる。そのための方法の1つは、前記第1のコンポーネントの真性複屈折を前記第2のコンポーネントの真性複屈折によって補償するように結晶軸が整列した第1及び第2のコンポーネントを提供することである。
【0018】
第1及び第2のコンポーネントは同心であることが好ましい。これは幾何学がコンパクトであり、第1のコンポーネントを通る光路の長さと、第2のコンポーネントを通る光路の長さが実質的に等しい。この構造の場合、最終レンズ・エレメントの形状が実質的に半球である場合、第2のレンズ・コンポーネントの形状が実質的に半球になり、かつ、非球面に凹部(実質的に半球状の凹部)を備えることにはなるが、第1のコンポーネントの形状も実質的に半球になるよう、実質的に第1のコンポーネントの凹部内に第2のコンポーネントを配置することができる。
【0019】
投影システムの最終エレメントのみがCaFで構築され、また、投影システムの他のエレメントは、CaF以外の材料で構築されることが好ましい。
【0020】
本発明の一態様によれば、投影システムを使用してパターン化デバイスから基板上にパターンを投影するようになされ、かつ、前記投影システムの最終エレメントと前記基板の間の空間の少なくとも一部に液浸液を充填するための液体供給システムを有し、前記液体供給システムが、前記空間の上流側の前記液浸液中に、前記液浸液中に溶解させ、それにより前記投影システム及び/又は前記基板テーブル及び/又は液体供給システムのうちの少なくとも1つのコンポーネントの溶解速度を遅くするための少なくとも1つの犠牲体を備えたリソグラフィック投影装置が提供される。
【0021】
本発明のこの態様は、犠牲体を液浸液中に溶解させ、それにより犠牲体の下流側のコンポーネントに対する液浸液の作用を小さくすることによって成り立っている。たとえば、犠牲体が保護すべきコンポーネントと同じ材料でできている場合、液浸液が犠牲体の材料で実質的に飽和し、したがってそれ以上液浸液中にその材料が溶解し得なくなるため、その材料でできているコンポーネントが保護される。石英は、このような材料の実施例の1つである。
【0022】
犠牲体の形状が、体積に対する表面積の比率が大きい形状である場合(たとえばロッド、チューブ、ファイバ等の形状である場合)、とりわけ速やかに液浸液中に溶解するため、犠牲体の形状は、このような形状であることが有利である。
【0023】
本発明の一態様によれば、パターン化された放射ビームを、投影システムの最終エレメントと基板の間の空間に提供される液浸液を介して前記基板に投射するステップを含み、前記液浸液と接触する前記最終エレメントの表面に、前記液浸液に対して実質的に不溶性の保護コーティングが施されるデバイス製造方法が提供される。
【0024】
本発明の一態様によれば、パターン化された放射ビームを、投影システムの最終エレメントと基板の間の空間に提供される第1の液浸液及び第2の液浸液を介して前記基板に投射するステップを含み、前記第1の液浸液と前記最終エレメントが接触し、かつ、前記第2の液浸液と前記基板が接触するデバイス製造方法が提供される。
【0025】
本発明の一態様によれば、パターン化された放射ビームを、投影システムの最終エレメントと基板の間の空間に提供される第1の液浸液及び第2の液浸液を介して前記基板に投射するステップを含み、前記空間の上流側の前記液浸液中に、前記液浸液中に溶解させ、それにより前記投影システム及び/又は前記基板テーブル及び/又は液体供給システムのうちの少なくとも1つのコンポーネントの溶解速度を遅くするための少なくとも1つの犠牲体が提供されるデバイス製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例によるリソグラフィック装置を示す図である。
【図2】従来技術のリソグラフィック投影装置に使用されている液体供給システムを示す図である。
【図3】従来技術のリソグラフィック投影装置に使用されている液体供給システムを示す他の図である。
【図4】従来技術の他のリソグラフィック投影装置による液体供給システムを示す図である。
【図5】本発明の一実施例による他の液体拘束システムを示す図である。
【図6】保護コーティングが施された、投影システムの最終エレメントを示す図である。
【図7】投影システムの最終エレメントと、第1の液浸液及び第2の液浸液を提供するための液体供給システムを示す図である。
【図8】本発明の一実施例による液体供給システムを示す図である。
【図9】本発明による投影システムの最終エレメントに適用される保護プレートを示す図である。
【図10】本発明による投影システムの最終エレメントに適用される保護プレート及び液体層を示す図である。
【図11】本発明による投影システムの最終エレメントに適用される2層の保護コーティングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施例について、単なる実施例に過ぎないが、添付の略図を参照して説明する。図において、対応する参照記号は、対応する部品を表している。
【0028】
図1は、本発明の一実施例によるリソグラフィック装置を略図で示したものである。この装置は、
−放射ビームB(たとえばUV放射若しくはDUV放射)を調整するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、
−パターン化デバイス(たとえばマスク)MAを支持するように構築された、特定のパラメータに従ってパターン化デバイスを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに接続された支持構造(たとえばマスク・テーブル)MTと、
−基板(たとえばレジスト被覆ウェハ)Wを保持するように構築された、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第2のポジショナPWに接続された基板テーブル(たとえばウェハ・テーブル)WTと、
−パターン化デバイスMAによって放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの目標部分C(たとえば1又は複数のダイからなる)に投影するように構成された投影システム(たとえば屈折型投影レンズ系)PSと
を備えている。
【0029】
照明システムは、放射を導き、整形し若しくは制御するための屈折光学コンポーネント、反射光学コンポーネント、磁気光学コンポーネント、電磁光学コンポーネント、静電光学コンポーネント或いは他のタイプの光学コンポーネント、若しくはそれらの任意の組合せなど、様々なタイプの光学コンポーネントを備えることができる。
【0030】
支持構造は、パターン化デバイスを支持している。つまり、支持構造は、パターン化デバイスの重量を支えている。支持構造は、パターン化デバイスの配向、リソグラフィック装置の設計及び他の条件、たとえばパターン化デバイスが真空環境中で保持されているか否か等に応じた方法でパターン化デバイスを保持している。支持構造には、パターン化デバイスを保持するための機械式締付け技法、真空締付け技法、静電締付け技法若しくは他の締付け技法を使用することができる。支持構造は、たとえば必要に応じて固定若しくは移動させることができるフレームであっても、或いはテーブルであっても良い。支持構造は、たとえば投影システムに対して、パターン化デバイスを所望の位置に確実に配置することができる。本明細書における「レチクル」若しくは「マスク」という用語の使用はすべて、より一般的な「パターン化デバイス」という用語の同義語と見なすことができる。
【0031】
本明細書に使用されている「パターン化デバイス」という用語は、放射ビームの断面をパターン化し、それにより基板の目標部分にパターンを生成するべく使用することができる任意のデバイスを意味するものとして広義に解釈されたい。放射ビームに付与されるパターンは、たとえばそのパターンに移相フィーチャ若しくはいわゆる補助フィーチャが含まれている場合、基板の目標部分における所望のパターンに厳密に対応している必要はないことに留意されたい。放射ビームに付与されるパターンは、通常、目標部分に生成される、たとえば集積回路などのデバイス中の特定の機能層に対応している。
【0032】
パターン化デバイスは、透過型であっても或いは反射型であっても良い。パターン化デバイスの実施例には、マスク、プログラム可能ミラー・アレイ及びプログラム可能LCDパネルがある。マスクについてはリソグラフィにおいては良く知られており、バイナリ、交番移相及び減衰移相などのマスク・タイプ、及び様々なハイブリッド・マスク・タイプが知られている。プログラム可能ミラー・アレイの実施例には、マトリックスに配列された微小ミラーが使用されている。微小ミラーの各々は、入射する放射ビームが異なる方向に反射するよう、個々に傾斜させることができる。傾斜したミラーによって放射ビームにパターンが付与され、ミラー・マトリックスによって反射する。
【0033】
本明細書で使用されている「投影システム」という用語には、たとえば使用する露光放射に適した、或いは液浸液の使用若しくは真空の使用などの他の要因に適した、屈折光学系、反射光学系、カタディオプトリック光学系、磁気光学系、電磁光学系及び静電光学系、若しくはそれらの任意の組合せを始めとする任意のタイプの投影システムが包含されているものとして広義に解釈されたい。本明細書における「投影レンズ」という用語の使用はすべて、より一般的な「投影システム」という用語の同義語と見なすことができる。
【0034】
図に示すように、このリソグラフィック装置は、透過型(たとえば透過型マスクを使用した)タイプの装置である。別法としては、このリソグラフィック装置は、反射型(たとえば上で参照したタイプのプログラム可能ミラー・アレイを使用した、或いは反射型マスクを使用した)タイプの装置であっても良い。
【0035】
リソグラフィック装置は、場合によっては2つ(二重ステージ)以上の基板テーブル(及び/又は複数のマスク・テーブル)を有するタイプの装置であり、このような「多重ステージ」マシンの場合、追加テーブルを並列に使用することができ、或いは1つ又は複数の他のテーブルを露光のために使用している間、1つ又は複数のテーブルに対して予備ステップを実行することができる。
【0036】
図1を参照すると、イルミネータILは、放射源SOから放射ビームを受け取っている。放射源がたとえばエキシマ・レーザである場合、放射源及びリソグラフィック装置は、個別の構成要素にすることができる。その場合、放射源は、リソグラフィック装置の一部を形成しているとは見なされず、放射ビームは、たとえば適切な誘導ミラー及び/又はビーム拡大器からなるビーム引渡しシステムBDを使用して放射源SOからイルミネータILへ引き渡される。それ以外のたとえば放射源が水銀灯などの場合、放射源は、リソグラフィック装置の一構成要素である。放射源SO及びイルミネータILは、必要に応じてビーム引渡しシステムBDと共に放射システムと呼ぶことができる。
【0037】
イルミネータILは、放射ビームの角強度分布を調整するための調整器ADを備えることができる。通常、イルミネータのひとみ平面内における強度分布の少なくとも外部及び/又は内部ラジアル・エクステント(一般に、それぞれσ−外部及びσ−内部と呼ばれている)は調整が可能である。また、イルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなど、他の様々なコンポーネントを備えることができる。イルミネータを使用して放射ビームを調整し、所望する一様な強度分布をその断面に持たせることができる。
【0038】
支持構造(たとえばマスク・テーブルMT)上に保持されているパターン化デバイス(たとえばマスクMA)に投影ビームBが入射し、パターン化デバイスによってパターン化される。マスクMAを透過した放射ビームBは、ビームを基板Wの目標部分Cに集束させる投影システムPSを通過する。基板テーブルWTは、第2のポジショナPW及び位置センサIF(たとえば干渉デバイス、直線エンコーダ若しくは容量センサ)を使用して正確に移動させることができ、それによりたとえば異なる目標部分Cを放射ビームBの光路内に位置決めすることができる。同様に、第1のポジショナPM及びもう1つの位置センサ(図1には明確に示されていない)を使用して、たとえばマスク・ライブラリから機械的に検索した後、若しくは走査中に、マスクMAを放射ビームBの光路に対して正確に位置決めすることができる。通常、マスク・テーブルMTの移動は、第1のポジショナPMの一部を形成している長ストローク・モジュール(粗位置決め)及び短ストローク・モジュール(精密位置決め)を使用して実現されている。同様に、基板テーブルWTの移動は、第2のポジショナPWの一部を形成している長ストローク・モジュール及び短ストローク・モジュールを使用して実現されている。ステッパ(スキャナではなく)の場合、マスク・テーブルMTは、短ストローク・アクチュエータのみに接続することができ、或いは固定することも可能である。マスクMA及び基板Wは、マスク位置合せマークM1、M2及び基板位置合せマークP1、P2を使用して整列させることができる。図には、専用目標部分を占有している基板位置合せマークが示されているが、基板位置合せマークは、目標部分と目標部分の間の空間に配置することも可能である(このような基板位置合せマークは、スクライブ・レーン位置合せマークとして知られている)。同様に、複数のダイがマスクMA上に提供される場合、ダイとダイの間にマスク位置合せマークを配置することができる。
【0039】
図に示す装置は、以下に示すモードのうちの少なくとも1つのモードで使用することができる。
1.ステップ・モードでは、マスク・テーブルMT及び基板テーブルWTは、基本的に静止状態に維持され、放射ビームに付与されたパターン全体が目標部分Cに1回の照射(すなわち単一静止露光)で投影される。次に、基板テーブルWTがX及び/又はY方向にシフトされ、異なる目標部分Cが露光される。ステップ・モードでは、露光視野の最大サイズによって、単一静止露光で画像化される目標部分Cのサイズが制限される。
2.走査モードでは、放射ビームに付与されたパターンが目標部分Cに投影されている間、マスク・テーブルMT及び基板テーブルWTが同期走査される(すなわち単一動的露光)。マスク・テーブルMTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの倍率(縮小率)及び画像反転特性によって決定される。走査モードでは、露光視野の最大サイズによって、単一動的露光における目標部分の幅(非走査方向の)が制限され、また、走査運動の長さによって目標部分の高さ(走査方向の)が左右される。
3.他のモードでは、プログラム可能パターン化デバイスを保持するべくマスク・テーブルMTが基本的に静止状態に維持され、放射ビームに付与されたパターンが目標部分Cに投影されている間、基板テーブルWTが移動若しくは走査される。このモードでは、通常、パルス放射源が使用され、走査中、基板テーブルWTが移動する毎に、或いは連続する放射パルスと放射パルスの間に、必要に応じてプログラム可能パターン化デバイスが更新される。この動作モードは、上で参照したタイプのプログラム可能ミラー・アレイなどのプログラム可能パターン化デバイスを利用しているマスクレス・リソグラフィに容易に適用することができる。
【0040】
上で説明した使用モードの組合せ及び/又はその変形形態若しくは全く異なる使用モードを使用することも可能である。
【0041】
図5は、投影システムPLと基板ステージWT上に配置された基板Wの間の液体リザーバ10を示したものである。液体リザーバ10には、入口/出口ダクト13を介して提供される比較的屈折率が大きい液体11、たとえば水が充填されている。この液体は、この液体中における投影ビームの放射波長を、空気中若しくは真空中における波長より短くする効果を有しており、したがってより小さいフィーチャを解像することができる。とりわけ投影ビームの波長及びシステムの開口数によって投影システムの解像限界が決定されることは良く知られている。また、液体が存在することにより、有効開口数が大きくなると考えることができ、さらに、固定開口数においては、液体は、被写界深度の改善に有効である。
【0042】
液体リザーバ10は、投影レンズPLの画像視野の周りの基板Wに対して好ましくは非接触シールを形成し、投影システムPLと対向する基板の主表面と、投影システムPLの最終エレメント(たとえば、投影システム若しくは投影システムの最終光学エレメントを密閉する「アブシュラススプラット」)との間の空間を充填するべく液体を閉じ込めている。液体リザーバは、投影レンズPLの最終エレメントの下方に、最終エレメントを取り囲んで配置されたシール部材12によって形成されており、したがって液体拘束システムLCSは、基板の局部領域上にのみ液体を提供している。シール部材12は、投影システムの最終エレメントとセンサ(若しくは基板W)の空間に液体を充填するための液体拘束システムLCSの一部を形成している。この液体は、投影レンズの下方のシール部材12内の空間に充填される。シール部材12は、液体のバッファを提供するべく、投影レンズの底部エレメントの上方にわずかに伸び、最終エレメントの上方に液体が上昇している。シール部材12は、上端部が投影システム若しくは投影システムの最終エレメントの形状に密に整合した、たとえば丸い形をした内部周囲を有している。該内部周囲の底部は、画像視野の形状に密に整合した、必ずしもその必要はないがたとえば長方形の開口を形成しており、投影ビームは、この開口を通過している。
【0043】
液体11は、シール・デバイス16によって液体リザーバ10内に閉じ込められている。図5に示すように、このシール・デバイスは、非接触シールすなわちガス・シールである。このガス・シールは、シール部材12と基板Wの間のギャップに入口15を介して加圧状態で提供され、かつ、第1の出口14から抽出されるガス、たとえば空気若しくは合成空気によって形成されている。ガス入口15の超過圧力、第1の出口14の真空レベル及びギャップの幾何学は、リソグラフィック装置の光軸に向かって内側に向かう、液体11を閉じ込める高速空気流が存在するようになされている。あらゆるシールと同様、若干の液体がたとえば第1の出口14から漏れる可能性がある。
【0044】
図2及び3は、同じく、1つ又は複数の入口IN、1つ又は複数の出口OUT、基板W及び投影レンズPLの最終エレメントによって画定される液体リザーバを示したものである。図5に示す液体拘束システムと同様、図2及び3に示す液体拘束システムも、1つ又は複数の入口IN及び1つ又は複数の出口OUTを備えており、投影システムの最終エレメントと基板の主表面の局部領域との間の空間に液体を供給している。
【0045】
図2及び3並びに図4に示す両液体拘束システムLCS、及び基板W若しくは基板テーブルWT全体を浸す槽などの他の解決法は、以下で説明する本発明と共に使用することができる。
【0046】
図6は、投影システムPLの最終エレメント20を詳細に示したものである。図6に示す実施例では、最終エレメントは、第1のコンポーネント25及び第2のコンポーネント27を備えた最終光学エレメント20である。投影システムPLの最終エレメント20は、複屈折を示す材料を使用して最終エレメントを構築することができるよう、第1及び第2のコンポーネント25、27からなっている。157nmで照射するための好ましい材料はCaFである。CaFは透過性ではあるが、157nmの波長で複屈折特性を示す。石英は、157nmではほとんど透過性ではない。また、CaFは、193nmでの照射にも好ましく、この波長の場合、石英を使用することも可能であるが、石英レンズは、これらの波長におけるコンパクションの問題を抱えており、そのためにレンズの微小部分に放射が集束し、褪色(暗くなる)、より多くの熱の吸収及びチャネル切断の原因になっている。
【0047】
最終エレメント20を第1及び第2のコンポーネントすなわち部品として提供することにより、第1及び第2のコンポーネントの結晶配向を、第1のコンポーネント25が示す真性複屈折が第2のコンポーネント27が示す真性複屈折によって相殺されるように確実に整列させることによって、CaFが157nmで示す複屈折を補償することができる。したがって、最初に第1のコンポーネント25を通過し、続いて第2のコンポーネント27を通過して第2のコンポーネント27から射出する投影ビームPBには、実質的に複屈折現象が存在しない。
【0048】
投影システムPLの残りの光学エレメントには、CaF以外の材料を使用することができる。投影ビームの強度は、最終エレメントの強度が最も強く、かつ、最も弱いため、その材料に石英が使用されている場合、コンパクションの問題を抱えるのはこの最終エレメントである可能性が最も高い。
【0049】
図6に示すように、投影システムPLの最終エレメント20の形状は実質的に半球であり、したがって第2のコンポーネント27は、その形状が半球であり、非湾曲表面に凹部を備えた半球形状の外部表面を有する第1のコンポーネント25の凹部内に配置されている。
【0050】
CaFは、液浸液リソグラフィック投影装置に使用される液浸液11中に溶解し、或いは液浸液11と反応することが分かっている。現在、248nm及び193nmには実質的に水からなる液浸液が意図されており、157nmには過フッ化炭化水素が意図されている。
【0051】
液浸液11による腐食から投影システムの最終エレメント20を保護する方法の1つは、液浸液と接触する最終エレメント20の表面に保護コーティング40を施すことである。保護コーティング40の材料は、液浸液11に対して不活性であり、かつ、液浸液11中に溶解しない材料であることが好ましい。図6に示すように、保護コーティング40は、投影システムPLの第2のコンポーネント27の底部表面(図解するように)に施されている。
【0052】
保護層は、投影システムPLの最終光学エレメント20を保護する一方で可能な限り薄くすることが好ましい。保護コーティングの厚さは、5nmと500nmの間であることが好ましく、10nmと200nmの間であることがより好ましい。保護コーティング40の材料は、金属、金属酸化物、金属窒化物或いはSiOであることが好ましく、気泡の含有を制限するためには液浸流体との接触角度が小さいことが好ましい。保護層は、たとえば蒸着、スパッタリング等によって最終光学エレメント20に付着させることができる。
【0053】
保護コーティング40の使用は、投影システムPLの最終エレメント20がCaFからなっている場合に何ら限定されない。たとえば、最終エレメントが石英からなっている場合(アブシュラススプラットが最終エレメントである場合に典型的に見られるように)、同じく液浸液11中への石英の溶解若しくは液浸液11との石英の反応による問題が存在する可能性があり、この場合にも保護層40が必要である。
【0054】
透過損失を最少化するためには、可能な限り保護コーティング40を薄くしなければならない。保護コーティング40の屈折率は、付着プロセス及び付着パラメータによって部分的に変化させることができる。EUVコーティングの付着から得られる経験を有効利用して、この付着プロセスを最適化することができる。
【0055】
図7は、本発明による第2の実施例を示したもので、以下の説明を除き、第1の実施例と同じである。
【0056】
この実施例では、液体供給システムは、投影システムの最終エレメント20と接触する第1の液浸液70を提供するための手段を備えている。また、基板Wと接触する第2の液浸液75が提供されている。
【0057】
第1の液浸液70には、最終エレメント20の材料にのみ反応するか、或いは最終エレメント20の材料を溶解させる速度が極めて遅いか、若しくは全く反応しない液体を選択することができる。また、第2の液浸液75は、最終エレメント20との接触に起因する作用上の制限が何らもたらされることのないその良好な光学特性に基づいて選択することができる。
【0058】
2種類の液浸液70及び75を空間の適切な領域に提供し、かつ、実質的に分離した状態を維持することができる方法には幾通りかの方法があり、たとえば、とりわけ第1及び第2の液浸液が非混合性であるか、或いは容易に混合しない液体である場合、2組の入口及び出口を提供することによって2つの液体の流れを得ることができる。
【0059】
図7に示す実施例では、第1の液浸液70と第2の液浸液75を分離するための膜50が提供されている。液浸液70及び75は、膜の両側にそれぞれ提供されている。
【0060】
投影ビームPBの品質に重大な悪影響を及ぼすことなく必要な剛性を得るためには、膜の厚さは、0.1mmと5mmの間であることが好ましい。膜50の構築に適した材料はSiOである。膜50は交換が可能である。
【0061】
図8は、上記2つの実施例のいずれとも用が可能な液体供給システムを示したものである。液体供給システム100は、入口102から液体拘束システムLCSへ液体を提供している。液体拘束システムLCSには、任意のタイプの液体拘束システム、とりわけ図2ないし図5に示すタイプの液体拘束システムを使用することができる。図8に示す実施例では、アブシュラススプラット90と基板Wの間に液浸液が提供されている。液浸液はドレン104を介して排出される。
【0062】
液体拘束システム、投影システムPL及び基板テーブルWTのコンポーネントはすべて液浸液と接触しているため、これらのコンポーネントのうちのいずれかが未処理液浸液中に溶解する材料で構築され、かつ、保護されていない場合、リソグラフィック投影装置の寿命に悪影響を及ぼすことになる。
【0063】
この問題に対処するために、液体供給システム100内の液体拘束システムLCSの上流側に犠牲ユニット80が提供されている。犠牲ユニット80の内部には少なくとも1つの犠牲体85が配置されている。犠牲体85には、液浸液中に溶解し、それにより液浸液と保護すべき投影システムのコンポーネントの材料との作用、及び/又は液浸液と基板テーブルの材料の作用、及び/又は液浸液と下流側の液体拘束システムの材料との作用を小さくすることが意図されている。
【0064】
たとえば、投影システムPLの最終エレメント、たとえばアブシュラススプラット90(最終レンズ・エレメント)が石英からなり、かつ、液浸液と接触しており、また、犠牲体のうちの少なくとも1つが石英からなっている場合、犠牲ユニット80を通過する際に液浸液(水であっても良い)が石英で飽和し、液浸液が液体拘束システムLCS及びアブシュラススプラット90に到達すると、液浸液と石英の作用が小さくなる。
【0065】
犠牲ユニット80は、必ずしもすべてが同じ材料である必要はない複数の犠牲体を含有することができる。また、保護を意図する材料とは異なる材料を使用して犠牲体を構築することも可能であり、たとえば、犠牲ユニット80の下流側の保護すべきコンポーネントの材料が溶解しないレベルまで液浸液のpHを小さくするべく犠牲体を設計することができる。別法としては、液浸液にバッファを添加することも可能である。
【0066】
犠牲体85は、体積に対する表面積の比率が可能な限り大きいことが有利である。ロッド、チューブ等は、犠牲体85の形状の実施例であるが、任意の形状を使用することができることは明らかであろう。
【0067】
図9に示す本発明による他の実施例では、投影システムの最終エレメント20は、溶融シリカプレート45によって保護されている。このプレートの厚さは、50μmから5mmまでの範囲であり、最終エレメント20に接触結合若しくは接着剤結合されている。接触結合の場合、接着剤は使用されず、結合表面が滑らかに、かつ、十分に浄化され、それにより直接1つに結合される。最終エレメントへの結合後、溶融シリカプレートが所望の厚さに研削され、研磨されるが、これにより極めて薄い板を処理する場合に固有の困難性が回避される。継ぎ目の周囲には液体を漏らさないシール46を提供することができる。
【0068】
最終エレメントと溶融シリカプレートを1つに接触結合させる場合、最終エレメントと保護溶融シリカプレートの継ぎ目の周囲のシール46は、とりわけ望ましい。この形態の結合によって並外れて強力な結合が提供されるが、CaFと溶融シリカのように異種類の材料を結合する場合、温度変化及び熱勾配によって結合が「息をする」ことになり、2種類の材料の差動熱膨張若しくは収縮によって、応力が緩和されるまでそれらを分離させることになる。熱分離の場合、通常、結合は極めて迅速に改質するが、たとえば保護層を研磨している間、或いは保護層を研削している間、若しくはリソグラフィック投影装置の使用時において、最終エレメントと液体が接触する際にこの熱分離が生じると、液体がギャップ中に引き込まれることになる。
【0069】
使用可能なシールの形態の1つは、適切なプリカーソル(シリコーン流体(つまり様々な炭化水素側鎖を備えた様々な長さのSi−O鎖からなる流体)、オルトケイ酸テトラエチル、テトラシロキサンデカメチル及びオルトケイ酸テトラブチルなど)を塗布し、かつ、該プリカーソルをSiOに光変換するべくDUV光で照射することによって形成されたSiOの層である。この形態のシールには、溶融シリカプレートと同様の硬度を有しているため、同様の速度で研磨することができる利点がある。
【0070】
有用なシールの他の形態は、酸化チタン層の上に提供されたシリコン充填材である。酸化チタンは、シールの上にプリカーソルを塗布し、塗布したプリカーソルを酸化チタンに光変換することによって加えられ、リソグラフィック投影装置が動作している間、シリコーン充填材をUV光から保護するべく作用する。
【0071】
また、オルトケイ酸テトラエチルを継ぎ目の周囲に塗布し、次に、シールを形成する溶融シリカの薄層を形成するべく室温で分解させることにより、さらに他の形態のシールが形成される。しかしながらこのシールは、どちらかと言えば脆いため、取扱いには注意が必要である。
【0072】
図10に示す、図9の構造の変形態様では、最終レンズ・エレメント20と保護プレート45の間に、オイルなどの液体47が提供されている。この液体47は、水を使用することもできる液浸液11の屈折率に可能な限り近い屈折率を有し、かつ、CaFを使用することもできる最終レンズ・エレメント20の材料を損傷することのない液体であることが好ましく、それにより、保護プレート45の上側及び下側の流体に同様の屈折率を持たせるべく保護プレート45を位置決めすべき精度に対する要求事項が実質的に緩和され、したがって保護プレートが交換可能になる。
【0073】
図11に示す本発明の他の変形態様には、内部層48及び外部層49を構築している2層の保護コーティングが使用されている。ピンホールの無い保護コーティング層を形成することは極めて困難である。CaFボディに加えられる保護コーティング中のピンホールがたとえ最小であっても、水中に浸されるとCaFボディを溶解させ、最終エレメントの光学特性に極めて有害なキャビテーションの原因になる。2層の保護コーティングを使用することにより、一方の層のピンホールともう一方の層のピンホールが一致しないように配列することができ、それにより保護層を貫通する経路の存在を無くすことができる。異なる方法を使用して2つの保護層を加えることにより、2つの層のピンホールの不一致を最も確実に保証することができる。
【0074】
本発明の好ましい実施例は、スパッタリングによって加えられた第1のSiO層48、及びプリカーソルをスピン・コーティングし、かつ、該プリカーソルをSiOに光変換することによって加えられた第2のSiO層49を有している。この方法は、第2のスパッタ層中のピンホールが第1の層中のピンホールに整列する傾向があるため、2つのSiO層をスパッタリングするより有効であることが分かっている。驚くべきことには、スピン・コーティング及び光変換方法により、多孔性SiO層ではなく、バルクSiO層が提供されることが分かっている。また、プリカーソルをスピン・コーティングし、それをSiOに光変換することによって形成された層を、シール層として自らの層の上に使用することができる。
【0075】
保護層49の形成に使用するプリカーソルには、適切な任意の有機ケイ素化合物流体若しくは有機ケイ素化合物を含有した流体を使用することができる。適切な実施例には、シリコーン流体(つまり様々な炭化水素側鎖を備えた様々な長さのSi−O鎖からなる流体)、オルトケイ酸テトラエチル、テトラシロキサンデカメチル及びオルトケイ酸テトラブチルがある。材料を選択することによって所望の粘性を持たせることができるため、スピン・コーティングによって、ふさわしい均一な層を提供することができる。揮発性有機溶媒であることが好ましい溶媒を使用して、必要に応じて粘度を調整することができる。
【0076】
SiOへのプリカーソルの光変換は、様々な波長、たとえば184nm若しくは172nmの波長のDUV光を、最終エレメント中の熱勾配によって誘導される可能性のあるあらゆる悪影響を回避するべく定められたレートで照射することによって達成される。
【0077】
2つの保護コーティング層の各々には、50nmないし200nmの範囲の厚さを持たせることができる。
【0078】
本明細書においては、とりわけICの製造におけるリソグラフィック装置の使用が参照されているが、本明細書において説明したリソグラフィック装置は、集積光学系、磁気領域メモリのための誘導及び検出パターン、フラット・パネル・ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造などの他のアプリケーションを有していることを理解されたい。このような代替アプリケーションのコンテキストにおいては、本明細書における「ウェハ」或いは「ダイ」という用語の使用はすべて、それぞれより一般的な「基板」或いは「目標部分」という用語の同義語と見なすことができることは、当分野の技術者には理解されよう。本明細書において参照されている基板は、たとえばトラック(通常、基板にレジスト層を塗布し、かつ、露光済みレジストを現像するツール)、度量衡学工具及び/又は検査工具中で、露光前若しくは露光後に処理することができる。適用可能である場合、本明細書における開示は、このような基板処理ツール及び他の基板処理ツールに適用することができる。また、基板は、たとえば多層ICを生成するべく複数回に渡って処理することができるため、本明細書において使用されている基板という用語は、処理済みの複数の層が既に含まれている基板を指している場合もある。
【0079】
本明細書で使用されている「放射」及び「ビーム」という用語には、紫外(UV)放射(たとえば、波長が約365nm、248nm、193nm、157nm若しくは126nmの放射)を含むあらゆるタイプの電磁放射が包含されている。
【0080】
このコンテキストが許容する場合、「レンズ」という用語は、屈折光学コンポーネント及び反射光学コンポーネントを始めとする様々なタイプの光学コンポーネントのうちの任意の1つ或いは組合せを意味している。
【0081】
以上、本発明の特定の実施例について説明したが、説明した以外の方法で本発明を実践することができることは理解されよう。たとえば、本発明は、上で開示した方法を記述した1つ又は複数の機械可読命令シーケンスを含んだコンピュータ・プログラムの形態、或いはこのようなコンピュータ・プログラムが記憶されているデータ記憶媒体(たとえば半導体メモリ、磁気又は光ディスク)の形態を取ることができる。
【0082】
本発明は、排他的ではないが、とりわけ上で言及したタイプの任意の液浸リソグラフィ装置に適用することができる。
【0083】
以上の説明は、例証を意図したものであり、本発明を制限するものではない。したがって、特許請求の範囲に示す各請求項の範囲を逸脱することなく、上で説明した本発明に改変を加えることができることは、当分野の技術者には理解されよう。
【符号の説明】
【0084】
10 液体リザーバ
11、47 液体(液浸液)
12 シール部材
13 入口/出口ダクト
14、OUT 第1の出口
15、102、IN 入口
16 シール・デバイス
20 投影システムの最終エレメント(最終光学エレメント)
25 第1のコンポーネント
27 第2のコンポーネント
40 保護コーティング(保護層)
45 溶融シリカプレート(保護プレート)
46 シール
48 保護コーティングの内部層(第1のSiO層)
49 保護コーティングの外部層(第2のSiO層)
50 膜
70 第1の液浸液
75 第2の液浸液
80 犠牲ユニット
85 犠牲体
90 アブシュラススプラット
100 液体供給システム
104 ドレン
AD 調整器
B 放射ビーム
BD ビーム引渡しシステム
C 目標部分
CO コンデンサ
IF 位置センサ
IL 照明システム(イルミネータ)
IN インテグレータ
M1、M2 マスク位置合せマーク
MA パターン化デバイス
MT 支持構造
P1、P2 基板位置合せマーク
PM 第1のポジショナ
PL、PS 投影システム(投影レンズ)
PW 第2のポジショナ
SO 放射源
W 基板
WT 基板テーブル(基板ステージ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影システムを使用してパターン化デバイスから基板上にパターンを投影するようになされ、かつ、前記投影システムの最終エレメントと前記基板の間の空間の少なくとも一部に液浸液を充填するための液体供給システムを有し、前記液浸液と接触する前記最終エレメントの表面に、実質的に前記液浸液に対して不溶性の保護コーティングが施されたリソグラフィック投影装置。
【請求項2】
前記保護コーティングの厚さが5nm以上である、請求項1に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項3】
前記保護コーティングの厚さが500nm以下である、請求項1又は2に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項4】
前記保護コーティングが、金属、金属酸化物若しくは金属窒化物、CaF、SiO、SiO、又はこれらの材料の組合せである、請求項1、2又は3に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項5】
前記保護コーティングが溶融シリカプレートである、請求項1に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項6】
前記溶融シリカプレートの厚さが、50μmから5mmまでの範囲である、請求項5に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項7】
前記溶融シリカプレートが、接着剤を使用しない接触結合によって前記最終エレメントに結合された、請求項5又は6に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項8】
前記保護コーティングが異なる2つの層を有する、請求項1に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項9】
前記異なる2つの層が、異なる方法で形成された同じ材料の層である、請求項8に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項10】
前記異なる2つの層の一方の層がスパッタリングによって形成され、前記異なる2つの層のもう一方の層が、前記最終エレメント上にプリカーソルをスピン・コーティングし、かつ、前記プリカーソルを紫外光で照射することによって形成された、請求項9に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項11】
前記保護コーティングが、前記最終エレメント上にプリカーソルをスピン・コーティングし、かつ、前記プリカーソルを紫外光で照射することによって形成された、請求項1に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項12】
前記プリカーソルが有機ケイ素化合物からなる、請求項10又は11に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項13】
前記プリカーソルが、シリコーン流体、オルトケイ酸テトラエチル、テトラシロキサンデカメチル及びオルトケイ酸テトラブチルからなるグループから選択される少なくとも1つの化合物からなる、請求項12に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項14】
投影システムを使用してパターン化デバイスから基板上にパターンを投影するようになされ、かつ、前記投影システムの最終エレメントと前記基板の間の空間の少なくとも一部に液浸液を充填するための液体供給システムを有し、前記液体供給システムが、前記最終エレメントと接触している前記空間に第1の液浸液を提供し、前記基板と接触している前記空間に第2の液浸液を提供するための手段を備えたリソグラフィック投影装置。
【請求項15】
前記液体供給システムが、前記第1及び第2の液浸液を分離するための膜をさらに備えた、請求項14に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項16】
前記膜が石英である、請求項15に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項17】
前記膜の厚さが0.1mmないし5mmの範囲である、請求項15又は16に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項18】
前記最終エレメントがCaFからなる、請求項1から17までのいずれか一項に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項19】
前記最終エレメントが、いずれもCaFである第1及び第2のコンポーネントからなり、投影ビームが前記第1のコンポーネントを通過した後、前記第2のコンポーネントを通過する、請求項18に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項20】
投影システムを使用してパターン化デバイスから基板上にパターンを投影するようになされ、かつ、前記投影システムの最終エレメントと前記基板の間の空間の少なくとも一部に液浸液を充填するための液体供給システムを有し、前記最終エレメントが、CaF或いはSiO若しくはそれらの両方を組み合わせた材料の第1及び第2のコンポーネントからなり、前記コンポーネントが、投影ビームが前記第1のコンポーネントを通過した後、前記第2のコンポーネントを通過するように配列されたリソグラフィック投影装置。
【請求項21】
前記第1及び第2のコンポーネントの各々が、前記第1のコンポーネントの真性複屈折が前記第2のコンポーネントの真性複屈折によって補償されるように整列した結晶軸を有する、請求項19又は20に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項22】
前記第1及び第2のコンポーネントが同心である、請求項19、20又は請求項21に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項23】
前記第2のコンポーネントが実質的に前記第1のコンポーネントの凹部内に配置された、請求項19から22までのいずれか一項に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項24】
前記投影システムの前記最終エレメント以外のエレメントが、CaF以外の1つ又は複数の材料を使用して構築された、請求項19から23までのいずれか一項に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項25】
投影システムを使用してパターン化デバイスから基板上にパターンを投影するようになされ、かつ、前記投影システムの最終エレメントと前記基板の間の空間の少なくとも一部に液浸液を充填するための液体供給システムを有し、前記液体供給システムが、前記液浸液中に溶解させ、それにより前記投影システム及び/又は前記基板テーブル及び/又は液体供給システムのうちの少なくとも1つのコンポーネントの溶解速度を遅くするための少なくとも1つの犠牲体を前記空間の上流側の前記液浸液中に備えたリソグラフィック投影装置。
【請求項26】
前記少なくとも1つの犠牲体が、前記少なくとも1つのコンポーネントの材料と実質的に同じ材料で作られた、請求項25に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項27】
前記少なくとも1つの犠牲体が、石英若しくはCaFを使用して作られた、請求項25又は26に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項28】
前記少なくとも1つの犠牲体が、体積に対する表面積の比率が大きい形状を有する、請求項25、26又は27に記載のリソグラフィック投影装置。
【請求項29】
パターン化された放射ビームを、投影システムの最終エレメントと基板の間の空間に提供される液浸液を介して前記基板に投射するステップを含み、前記液浸液と接触する前記最終エレメントの表面に、前記液浸液に対して実質的に不溶性の保護コーティングが施されるデバイス製造方法。
【請求項30】
パターン化された放射ビームを、投影システムの最終エレメントと基板の間の空間に提供される第1の液浸液及び第2の液浸液を介して前記基板に投射するステップを含み、前記第1の液浸液と前記最終エレメントが接触し、かつ、前記第2の液浸液と前記基板が接触するデバイス製造方法。
【請求項31】
パターン化された放射ビームを、投影システムの最終エレメントと基板の間の空間に提供される第1の液浸液及び第2の液浸液を介して前記基板に投射するステップを含み、前記空間の上流側の前記液浸液中に、前記液浸液中に溶解させ、それにより前記投影システム及び/又は前記基板テーブル及び/又は液体供給システムのうちの少なくとも1つのコンポーネントの溶解速度を遅くするための少なくとも1つの犠牲体が提供されるデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−151513(P2012−151513A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−111485(P2012−111485)
【出願日】平成24年5月15日(2012.5.15)
【分割の表示】特願2010−81728(P2010−81728)の分割
【原出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】