説明

リチウム、鉄及びリン酸を含有する結晶性材料の製造方法

本発明は、一般式(I):
Lia-bbFe1-ccd-eex (I)、
[式中、Mと、M、M、a、b、c、d、eは:
:Na、K、Rb、及び/又はCs、
:Mn、Mg、Ca、Ti、Co、Ni、Cr、V、
:Si、S、
a:0.8〜1.9、
b:0〜0.3、
c:0〜0.9、
d:0.8〜1.9、
e:0〜0.5、
x:1.0〜8、(Li、MFe、M、P、Mの量と酸化状態により異なる)、但し、一般式(I)の化合物は無電荷である。]で表される化合物の製造方法であって、
(A)少なくとも一種のリチウム含有化合物と、鉄の酸化状態が+3である少なくとも一種の鉄含有化合物と、存在するなら少なくとも一種のM含有化合物と、及び/又は存在するなら少なくとも一種のM含有化合物、及び/又は存在するならM含有化合物と、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される少なくとも一種の還元剤とを含む混合物を供給する工程、
(B)必要に応じて、工程(A)で供給される混合物を乾燥して、固体化合物を得る工程、及び
(C)工程(A)又は(B)から得られる固体化合物を300〜1000℃の温度で焼成する工程を含むことを特徴とする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム、鉄及びリン酸アニオンを含む化合物の製造方法、これらの化合物と少なくとも一種の電気伝導性材料とを含む混合物の製造方法、これらの方法により製造可能な化合物や混合物、およびこれらの化合物や混合物のリチウムイオン電池のカソード製造への利用に関する。
【背景技術】
【0002】
LiFePOの製造方法は、すでに知られている。
【0003】
US2003/0082454A1は、LiCOまたはLiOH・HOと、Fe(CHCOとNHPO・HOとを混合してLiFePOを製造する方法を開示している。NHとHOとCOを除くために、この固体混合物は300〜350℃で焼成される。次いで、この混合物は、さらにアルゴン下800℃で24時間処理される。この文書は、さらに、LiとLiHPOとFe(C)・2HOとを含む混合粉体を焼成してLiFePO系材料を製造する方法について言及している。
【0004】
US6,962,666B2には、3質量%のポリプロピレン粉末とFe(PO・8HOとLiPOからなる混合粉体をアルゴン下で焼成することによる炭素含有塗膜を有するLiFePOの製造方法が開示されている。この混合物は、Fe(PO・8HOの脱水のために、アルゴン下300℃で3時間焼成され、次いで700℃で7時間焼成される。このポリプロピレン粉末は、Fe(PO・8HO中のFe(III)をLiFePO中のFe(II)の変換し、また同時に炭素を製造するための還元剤である。
【0005】
US6,702,961B2には、また、FePOとLiCOと炭素とからなる混合粉末をペレット化し、次いで不活性雰囲気中で700℃で8時間焼成することによるLiFePOの製造方法が開示されている。
【0006】
CN1547273Aの要約書には、LiCOとFeC・2HOと(NHHPOとさらには炭素との混合物を粉砕しタブレットとしたものをマイクロ波照射下で焼成することによるLiFePOの製造方法が開示されている。
【0007】
DE102005015613A1には、FeSO・7HOとHPOとLiOH・HOを含む水混合物を窒素下160℃で10時間水熱処理してLiFePOが得られることが開示されている。
【0008】
DE102005012640A1には、LiPOをLiSOとともに共沈殿して得たFe(PO・8HOを160℃で10時間水熱処理することでLiFePOが得られることが開示されている。
【0009】
WO2006/057146A2には、FeOとPとLiOHとを含む混合物を1100℃でアルゴン下で溶融し、次いで粉末化することによりLiFePOが得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US2003/0082454A1
【特許文献2】US6,962,666B2
【特許文献3】US6,702,961B2
【特許文献4】CN1547273A
【特許文献5】DE102005015613A1
【特許文献6】DE102005012640A1
【特許文献7】WO2006/057146A2
【特許文献8】US2004/0013943
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
先行技術のLiFePOの製造方法は、炭素などの他の還元剤を反応混合物に混合する必要がある、あるいは焼成工程を還元雰囲気中で行う必要があるといった欠点を有している。添加される炭素は還元剤として作用するため高い反応温度と高い焼成温度が必要となり、これは材料中の結晶粒を成長させ、粒度分布が広がることとなる。他の欠点は、LiCOやFeなどの固体化合物を固相で混合すると、混合物全体に異なるイオンが均一に分散した混合物を得るのが難しいことである。また、炭素含有還元剤は、その還元力が使用量に依存しない、したがって還元に必要な炭素含有還元剤の量がどれほどか、また電気伝導性材料としてどれほどの量を使用できるかを予測することが容易でないという欠点を有している。
【0012】
本発明の目的は、リン酸リチウム鉄の製造方法であって、非常に均一に混合されて結晶状態にあるリン酸リチウム鉄を与えることのできる方法を提供することである。本発明のもう一つの目的は、容易にまた少ない反応工程で実施可能な上記化合物の製造方法を提供することである。本発明の他の目的は、単一相のリン酸リチウム鉄の製造に用いられる焼成温度を400℃以下にまで低下させることが可能なリン酸リチウム鉄の製造方法を提供することである。したがって、さらに他の目的は、Liイオン拡散性を改善するため、またこれにより動力特性を改善しLiイオン電池の性能を増加させるために、Liイオン電池の充放電において改善されたLiイオン拡散性を与える、結晶子の大きさの分布が非常に狭い微分散材料を得ることである。さらに他の目的は、多孔性の球状材料であって、その中に複数の結晶性一次粒子が詰まっている材料を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的は、一般式(I):
Lia-bbFe1-ccd-eex (I)、
[式中、Mと、M、M、a、b、c、d、eは:
:Na、K、Rb、及び/又はCs、
:Mn、Mg、Ca、Ti、Co、Ni、Cr、V、
:Si、S、
a:0.8〜1.9、
b:0〜0.3、
c:0〜0.9、
d:0.8〜1.9、
e:0〜0.5、
x:1.0〜8、(Li、MFe、M、P、Mの量と酸化状態により異なる)、但し、一般式(I)の化合物は無電荷である。]
で表される化合物の製造方法であって、
(A)少なくとも一種のリチウム含有化合物と、鉄の酸化状態が+3である少なくとも一種の鉄含有化合物と、存在するなら少なくとも一種のM含有化合物と、及び/又は存在するなら少なくとも一種のM含有化合物、及び/又は存在するならM含有化合物と、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される少なくとも一種の還元剤とを含む混合物を供給する工程、
(B)必要に応じて、工程(A)で供給される混合物を乾燥して、固体化合物を得る工程、及び
(C)工程(A)又は(B)から得られる固体化合物を300〜1000℃の温度で焼成する工程
を含むことを特徴とする方法により達成される。
【0014】
図1〜5は、以下の実施例で得られる化合物や混合物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、結晶構造が斜方晶トリフィライトであるLiFePO一次粒子の凝集物を700℃で焼成して得られた粉末のSEM写真である。
【図2】図2は、結晶構造が斜方晶トリフィライトであるLiFePO一次粒子の凝集物を750℃で焼成して得られた粉末のSEM写真である。
【図3】図3は、結晶構造が斜方晶トリフィライトであるLiFePOの一次粒子の凝集物を400℃で焼成して得られた粉末のSEM写真である。
【図4】図4は、結晶構造が斜方晶トリフィライトであるLiFePOの一次粒子の凝集物を600℃で焼成して得られた粉末のSEM写真である。
【図5】図5は、結晶構造が斜方晶トリフィライトであるLiFePOの一次粒子の凝集物と導入されたカーボンブラックからなる粉末を750℃で焼成した後のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ある好ましい実施様態においては、Mと、M、M、a、b、c、d、e、xは、以下の意味を有する:
:Na、
:Mn、Mg、Ca、Ti、Co、Ni、
:Si、S
a:0.6〜1.6、特に好ましくは0.9〜1.3、
b:0〜0.1、
c:0〜0.6、特に好ましくは0〜0.3
d:0.6〜1.6、特に好ましくは0.9〜1.3
e:0〜0.3、特に好ましくは0〜0.1
x:2〜6、(Li、M、Fe、M、P、Mの量と酸化状態により異なる)、なお、一般式(I)の化合物は無電荷である。
【0017】
例えば、ある非常に好ましい実施様態では、MとMとMとが存在せず、一般式(I)の化合物は無電荷のLiFePOとなる。なお、ここではFeの酸化状態は+2である。したがって、ある非常に好ましい実施様態では、本発明の方法は、式LiFePOの化合物を得るために実施される。
【0018】
他の好ましい実施様態においては、M、例えばNaが、LiとMの合計に対して10モル%の量で存在する。もう一つの好ましい実施様態においては、M、例えばMnが、化合物中に存在する鉄(II)とMの合計に対して30モル%の量で存在する。もう一つの好ましい実施様態においては、M、例えばSiが、リンとMの合計に対して10モル%の量で存在する。
【0019】
以下、製造工程(A)と(B)と(C)をより詳細に説明する。
【0020】
工程(A):
本発明の方法の工程(A)は、少なくとも一種のリチウム含有化合物と、少なくとも一種の鉄の酸化状態が+3である鉄含有化合物と、存在するなら少なくとも一種のM1含有化合物と、及び/又は存在するなら少なくとも一種のM2含有化合物、及び/又は存在するならM3含有化合物と、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される少なくとも一種の還元剤トを含む混合物を提供することからなる。
【0021】
ある好ましい実施様態では、本発明の方法の工程(A)において与えられる混合物が、実質的に水性である。
【0022】
一般に、当該分野における通常の知識を有する者には既知であり、本方法の工程(A)で実質的に水性である混合物に導入可能なLiとMとMとMを含有する化合物はすべて、本発明の方法において利用可能である。
【0023】
工程(A)のLi含有化合物は、好ましくは水酸化リチウムLiOH、水酸化リチウム水和物LiOH・HO、酢酸リチウムLiOAc、炭酸リチウムLiCO、LiHPOやLiHPO、LiPO、LiHPO、LiHPO、LiPO及び/又はLiHPOなどのリン酸リチウム類やこれらの混合物からなる群から選択される。ある非常に好ましい実施様態おいては、水酸化リチウムLiOH及び/又は水酸化リチウム水和物LiOH・HO及び/又は炭酸リチウムLiCOが、本発明の方法の工程(A)においてリチウム含有化合物として用いられる。二つの特に好ましいリチウム含有化合物が、水酸化リチウムLiOHと水酸化リチウム水和物LiOH・HOである。
【0024】
本発明の方法の工程(A)において、少なくとも一種のリチウム含有化合物が、混合物に、全反応混合物に対して通常0.04〜3モル−Li/Lの濃度で、好ましくは0.2〜2.0モル−Li/L、特に好ましくは0.3〜1.5モル−Li/Lの濃度で添加される。
【0025】
一般に、当該分野における通常の知識を有する者には既知の、鉄の酸化状態が+3である鉄含有化合物のすべてを、本発明の方法において使用でき、本方法の工程(A)において実質的に水性の混合物中に導入できる。本発明によれば、単一の鉄の酸化状態が+3である鉄含有化合物、または鉄の酸化状態が+3である異なる鉄含有化合物の混合物が使用可能である。鉄の酸化状態が+2および+3である鉄含有化合物、例えばFe3Oを用いることもできる。鉄の酸化状態が+3である一つの鉄化合物と鉄の酸化状態が+2である他の化合物とからなる異なる鉄含有化合物の混合物を用いることもできる。
【0026】
ある好ましい実施様態においては、この鉄の酸化状態が+3である鉄含有化合物が、
酸化鉄(II、III)、酸化鉄(III)、酸化水酸化鉄(III)、または水酸化物鉄〜なる群から、例えばFe3Oとα−Fe、γ−Fe、α−FeOOH、β−FeOOH、γ−FeOOH、Fe(OH)からなる群から選ばれる。好ましいのは、α−、β−、およびγ−酸化水酸化鉄(III)(FeOOH)であり、特に好ましいのは、α−及びγ−酸化水酸化鉄(III)であり、極めて好ましいのが、α−FeOOHである。
【0027】
ある好ましい実施様態においては、この鉄含有化合物が、好ましくはα−FeOOH、β−FeOOHまたはγ−FeOOHが、針状物として、特に好ましくは長さ/厚み比が>1.5、好ましくは>2、特に好ましくは>5である針状物として存在する。
【0028】
FeOOHの利用、好ましくはその針状物の利用の利点は、少なくとも一種のリチウム含有化合物と少なくとも一種のリン含有化合物とからなる混合物中において、非常に拡散経路が短いため、一般式(I)に記載の化合物を、非常に均一でまた単一相で得ることができることである。このFe(III)カチオンは、リチウム原子とリン原子との間を容易に移動して、結晶中の正しい位置に到る。このような移動は、異なる複数のFe含有化合物を用いると難しい。
【0029】
本発明の方法の工程(A)において、少なくとも一種の鉄含有化合物が、全反応混合物に対して通常0.04〜4.0モル−Fe/Lの濃度で、好ましくは0.1〜2.0モル−Fe/L、特に好ましい0.2〜1.5モル−Fe/Lの濃度で混合物に添加される。
【0030】
必要なら、この少なくとも一種のM含有化合物は、好ましくは、水酸化ナトリウムNaOH、水酸化ナトリウム水和物NaOH・HO、酢酸ナトリウムNaOAc、炭酸ナトリウムNaCO、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる。ある非常に好ましい実施様態おいては、水酸化ナトリウムNaOH及び/又は水酸化ナトリウム水和物NaOH・HO及び/又は炭酸ナトリウムNaCOが、本発明の方法の工程(A)においてナトリウム含有化合物として用いられる。二つの特に好ましいナトリウム含有化合物が、水酸化ナトリウムNaOHと水酸化ナトリウム水和物NaOH・HOである。
【0031】
存在するなら、少なくとも一種のM含有化合物が、好ましくは、必要なカチオンと、ヒドロキシド、アセテート、オキシド、カーボネート、フルオライドやクロライド、ブロマイド、アイオダイドなどのハロゲニド、ニトレートや、これらの混合物から選ばれるアニオンとを有する化合物から選ばれる。ある非常に好ましい実施様態おいては、この少なくとも一種のM含有化合物のアニオンが、アセテート、オキシド、ヒドロキシド、カーボネート、ニトレート、またはこれらの混合物である。
【0032】
必要なら、この少なくとも一種のM含有化合物は、HSO、(NH)HSO、(NHSO、LiHSO、LiSO、ゾルなどの形状の微粉状SiO2、HSiO、ケイ酸Liおよびこれらの混合物から選ばれる。
【0033】
必要なら、M含有化合物、M含有化合物、及び/又はM含有化合物が、実質的に水性の混合物に、式(I)の化合物中に存在する量で添加される。当該分野における通常の知識を有する者は、この必要量を計算する方法を知っている。
【0034】
本発明の方法は、好ましくは本発明の方法の工程(A)の混合物に少なくとも一種の還元剤を導入して行われる。本発明のプロセスの間で、これは、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される。少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される少なくとも一種の還元剤の使用の利点は、この還元剤の酸化生成物が、一般式(I)のPO3−含有化合物を得るのに必要なPO3−アニオンを与えることである。
【0035】
ある好ましい実施様態においては、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を含む少なくとも一種の化合物に酸化されるこの少なくとも一種の還元剤が、無炭素である。本発明によれば、無炭素とは、そのリン含有還元剤中に炭素原子が存在していないことを意味する。HPOのような無炭素還元剤の利点は、還元剤の炭素での還元には600℃以上の温度が必要であるにもかかわらず、300または350℃のような低温で還元が可能であることである。このような低温のため、ナノ結晶材料を得ることが可能となる。炭素と還元剤として用いる場合に通常必要な高温下では、ナノ結晶材料をうまく得ることができない。
【0036】
ある好ましい実施様態においては、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される少なくとも一種の還元剤は、HPO、(NH)HPO、(NHHPO、HPO、(NH)HPO、(NHHPO、LiHPO、LiHPO、LiPO、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる。特に好ましい実施様態においては、HPO、(NH)HPO、(NHHPOが用いられ、極めて好ましい還元剤はHPOである。
【0037】
この少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される少なくとも一種の還元剤は、本発明の方法の工程(A)の混合物に、全反応混合物に対して通常0.04〜2.0モル−P/Lの濃度で、好ましくは0.1〜1.3モル−P/L、特に好ましい0.15〜1.0モル−P/Lの濃度で添加される。
【0038】
本発明によれば、この小なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される少なくとも一種の還元剤が、本発明の方法の工程(A)の反応混合物に添加される。本発明の方法において用いられる還元剤は、好ましくはPO3−に酸化される。もしこの少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される少なくとも一種の還元剤が、好ましくは少なくとも等モル量で、特に好ましくは等モル量で反応混合物に添加される場合は、PO3−が、一般式(I)の化合物のリン酸アニオンとしての完全な量となるのに十分に量の酸化生成物として得られる。この実施様態によれば、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する化合物を加える必要がない。
【0039】
本出願のもう一つの好ましい実施様態においては、工程(A)において与えられる混合物がさらに、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される少なくとも一種の化合物を含んでいる。この好ましい本発明の実施様態では、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される少なくとも一種の還元剤と、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物とが共に、本発明の方法の工程(A)の反応混合物に添加される。本発明の方法において用いられる還元剤は、好ましくはPO3−に酸化される。本出願の方法のこの実施様態において、酸化生成物として得られるPO3−は、一般式(I)の化合物のリン酸アニオンの全量となるのに十分な量で存在していない。したがって、この実施様態においては、少なくとも一個の酸化状態が+5のリン原子を有する少なくとも一種の化合物を添加する必要がある。この少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物が、一般式(I)の化合物中に導入すべきPO3−アニオンの第二の供給源となる。
【0040】
好ましい少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を含む化合物であって、工程(A)で必要に応じて添加される化合物は、HPO、(NH)HPO、(NHHPO、(NHPO、LiPO、LiHPO、LiHPO、およびこれらの混合物からなる群から選ばれる。特に好ましいのは、HPOと、(NH)HPO、(NHHPO、及びこれらの混合物であり、非常に好ましいのはHPOである。
【0041】
この少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物は、本発明の方法の工程(A)の混合物に、全反応混合物に対して通常0.02〜1.0モル−P/Lの濃度で、好ましくは0.05〜0.65モル−P/L、特に好ましい0.1〜0.5モル−P/Lの濃度で添加される。
【0042】
本発明の方法において、本方法の官能基を二つ持つ化合物、例えばリチウム−カチオンとPO3−またはPO3−アニオンを持つ化合物を用いる場合、これらの化合物の量は、必要成分のすべてが、一般式(I)に記載の化合物を得るのに適当な量で反応混合物中に存在するように調整される。当該分野における通常の知識を有する者は、これらの量を計算する方法を知っている。
【0043】
他の好ましい実施様態においては、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される少なくとも一種の還元剤と、必要に応じて加える少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される少なくとも一種の化合物に加えて、少なくとも一種の他の還元剤を本発明の方法の工程(A)の混合物に添加することができる。この他の還元剤は、無炭素であっても有炭素であってもよい。
【0044】
この少なくとも一種の他の還元剤は、好ましくはヒドラジンまたはその誘導体、ヒドロキシルアミンまたはその誘導体、グルコース、サッカロース及び/又はラクトースなどの還元糖、炭素原子数が1〜10の脂肪族アルコール、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール(例えば、n−プロパノールまたはiso−プロパノール)、ブタノール(例えば、n−ブタノール、iso−ブタノール)などのアルコール、アスコルビン酸、易酸化性二重結合をもつ化合物、およびこれらの混合物から選ばれる。
【0045】
ヒドラジン誘導体の例としては、ヒドラジン水和物、ヒドラジン硫酸塩、ヒドラジン二塩酸塩などがあげられる。ヒドロキシルアミン誘導体の一例は、ヒドロキシルアミン塩酸塩である。特に好ましい、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化されない無炭素還元剤は、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、ヒドロキシルアミンまたはこれらの混合物である。
【0046】
一方、必要に応じて添加されるこの少なくとも一種の還元剤は、元来、一般式(I)の化合物中に導入可能な酸化生成物として、PO3−アニオンを放出できないものであってもよい。他方、この少なくとも一種の還元剤が、Fe(III)前駆体を完全にFe(II)に還元する能力を有していない。したがって、これらの他の還元剤の少なくとも一種が用いられる場合、本発明の好ましい電気化学的性質と微細構造を有する一般式(I)の化合物を得るのに、これらの還元剤を、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する化合物に酸化される少なくとも一種の化合物および必要に応じて少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物と共に使用することも必要となる。したがってこれらの場合は、工程(A)で用いられる、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する化合物に酸化される少なくとも一種の化合物、必要に応じて少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物、および必要に応じて少なくとも一種の他の還元剤の量や濃度を調整する必要がある。当該分野における通常の知識を有する者は、これらの量の計算方法を知っている。
【0047】
この少なくとも一種の他の還元剤は、必要に応じて、本発明の方法の工程(A)の混合物に、この試薬の還元力および潜在還元力に強く依存する濃度で添加される。当該分野における通常の知識を有する者は、これらの量の計算方法を知っている。
【0048】
酸化状態+5である少なくとも一種のリン化合物をもつ化合物に酸化される少なくとも一種の還元剤、好ましくはHPOと、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される少なくとも一種の化合物、好ましくはHPOとの組み合わせが、本発明の方法の工程(A)において添加される場合、酸素存在下でのスラリーの調整中、酸素存在下でのスラリーの噴霧乾燥中、及び/又は不純物酸素存在下で噴霧乾燥した粉末の焼成などの合成経路内での酸化的な影響を回避するために、これらを、好ましくは所望の一般式(I)に記載の化合物を得るのに必要がある比率より大きな比率(例えば、HPO/HPO比)で、添加する必要がある。当該分野における通常の知識を有する者は、本発明の工程(A)の混合物中の成分の化学量を決める方法を知っている。
【0049】
ある好ましい実施様態においては、少なくとも一種のリチウム含有化合物と、少なくとも一種の鉄の酸化状態が+3である鉄含有化合物と、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される少なくとも一種の還元剤と、必要に応じて少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物とが、実質的に水性の混合物に、一般式(I)の化学量が得られるように調整された量で添加される。当該分野における通常の知識を有する者は、必要な量を計算する方法を知っている。もう一つの好ましい本発明の実施様態においては、少なくとも一種のリチウム含有化合物が、一般式(I)の化学量論量よりは1質量%以上、好ましくは2%以上多い量で添加される。
【0050】
ある本発明の方法の実施様態においては、工程(A)で与えられる混合物中に存在する成分が、乾燥状態で細かく粉末化される。当該分野における通常の知識を有する者は、微粉末化の方法やミル等の使用可能な装置について知っている。
【0051】
ある好ましい実施様態においては、本発明の方法の工程(A)に与えられる混合物は、実質的に水性である。本発明で使用される用語「実質的に」とは、実質的に水性である本発明の方法の工程(A)の混合物を与えるのに使用される溶媒の50質量%を超える、好ましくは65質量%を超える、特に好ましくは80質量%を超える量が水であることを意味する。
【0052】
水に加えて、他の水混和性の溶媒が存在していてもよい。これらの溶媒の例としては、炭素原子数が1〜10の脂肪族アルコール、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール(例えば、N−プロパノールまたはiso−プロパノール)、ブタノール(例えば、n−ブタノール、iso−ブタノール)があげられる。本発明によれば、アルコールを、他の還元剤及び/又は他の溶媒として添加することができる。
【0053】
ある非常に好ましい実施様態おいては、本発明の方法の工程(A)で用いられる溶媒は、水のみで、他の溶媒を含まない。
【0054】
工程(A)の溶媒または溶媒混合物へのこれら異なる成分の添加順序は決められていない。ある好ましい実施様態においては、リチウム含有化合物をまず溶媒に添加し、鉄の酸化状態が+3である鉄含有化合物が第二の成分として添加される。この少なくとも一種の還元剤と、必要に応じて少なくとも一個の酸化状態が+5のリン原子を有する少なくとも一種の化合物と、必要に応じて少なくとも一種の他の還元剤とが、次いで添加される。
【0055】
本発明のある好ましい実施様態においては、本発明の方法の工程(A)から得られる混合物は、少なくとも一種のリチウム含有化合物と、少なくとも一種の鉄の酸化状態が+3である鉄含有化合物と、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される少なくとも一種の還元剤と、必要に応じて少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物とからなる実質的な水溶液である。
【0056】
実質的に水性状態で実施の場合は、工程(A)を、当業界の熟練者には既知のあらゆる好適な反応器中で行うことができる。工程(A)は、連続的に実施しても、非連続的に実施してもよい。
【0057】
本発明の方法の工程(A)が実質的に水性状態で実施される温度は、10〜120℃であり、好ましくは60〜100℃、特に好ましくは40〜95℃である。100℃を超える温度を使用する場合、水の沸点のため、反応混合物を耐圧の反応器中に入れる必要がある。混合物の均質性を増加させるため、混合は、高温で、必要に応じて剪断力下で、例えばウルトラタラックスを用いた剪断力下で行われる。
【0058】
ある好ましい実施様態では、工程(A)中で混合物は、0.05〜80時間、特に好ましくは0.5〜20時間攪拌される。攪拌終期には、混合物のpH値は、通常pH11未満に、好ましくはpH10未満、例えば2.0〜8.0となる。
【0059】
本発明の方法の工程(A)は、空気下で行っても不活性雰囲気下で行ってもよい。不活性ガスの例としては、窒素や、ヘリウムまたはアルゴンなどの希ガスがあげられる。ある好ましい実施様態においては、工程(A)が窒素雰囲気で行われる。
【0060】
ほとんどのFe3+のFe2+への還元は、通常本発明の方法の工程(B)及び/又は工程(C)で、好ましくは工程(C)で行われる。工程(A)において水性の混合物への還元剤の添加の直後に還元が始まることもある。あるいは、水混合物を40〜100℃の高温に、好ましくは60〜95℃の高温に加熱した後に、還元が始まることもある。もう一つの好ましい実施様態においては、もし二種のP含有化合物が、例えばHPO/HPOが還元剤として併用される場合、還元は、両成分の添加後に始まる。
【0061】
工程(B):
工程(A)で水混合物が得られる場合は、本発明の方法の任意の工程(B)では、固体化合物を得るために、工程(A)により得られる混合物を乾燥する。工程(A)で水混合物が得られなくても、乾燥工程(B)を実施することもできる。工程(A)では実質的に水性の混合物が得られることが好ましいため、好ましくは工程(B)を実施する。
【0062】
工程(B)では、工程(A)で得られた実質的に水性の混合物が固体化合物に変換される。本発明の方法の工程(A)において得られる混合物の乾燥は、当該分野における通常の知識を有する者には既知で、上記の成分からなる水混合物の水を除去するのに好適であるあらゆる方法で実施可能である。
【0063】
工程(B)において工程(A)からの混合物を乾燥するのに好ましい方法は、噴霧乾燥、凍結乾燥またはこれらの組み合わせである。本発明によれば、工程(B)の乾燥を噴霧乾燥のみで、凍結乾燥のみで、あるいは噴霧乾燥と凍結乾燥の両方をどちらかの順番で実施してもよい。本発明の方法の工程(B)は、好ましくは噴霧乾燥により行われる。工程(B)での噴霧乾燥により、好ましくは一般式(I)の化合物、好ましくはLiFePOの球状凝集物が得られることが好ましい。
【0064】
噴霧乾燥は、通常、工程(A)で得られた混合物を一個以上の狭いノズル通過させて微細な液滴とし、これを熱空気あるいは熱窒素、あるいは純粋酸素とアルゴン、ヘリウム、水素の熱混合物の気流により、好ましくは熱風または熱窒素のまたは空気と窒素の熱混合物の、また必要なら酸素の気流により乾燥させるが、特に好ましくは熱風により乾燥させる。噴霧を回転円板により行うこともでき、この方法が好ましい。ある好ましい実施様態においては、用いる熱空気または熱窒素の気流の温度が100〜500℃であり、特に好ましくは110〜350℃である。噴霧乾燥は、通常はなんら中間工程を設けることなく、直接、工程(A)の混合物を用いて行われる。噴霧乾燥により、通常は平均径が<0.5mm、即ち15〜300μm、好ましくは20〜200μm、特に好ましくは30〜150μmの球状凝集物が得られる。工程(B)のある好ましい実施様態においては、平均径が3〜50μmである比較的小さな球状凝集物を得るために薄い溶液を用いることができ、これらの希薄溶液の噴霧乾燥は高圧ノズルを用いて実施できる。通常、この溶液を希釈するために水が加えられる。
【0065】
第二の実施形態においては、本発明の方法の工程(B)が凍結乾燥で行われる。したがって、噴霧用混合物が、例えば液体窒素中に噴霧される。このようにして得られる球状粒子と凝集物は、低温で真空で乾燥できる。
【0066】
工程(B)の乾燥は、乾燥固体を得るために実施される。ある好ましい実施様態においては、本発明の方法の工程(B)での乾燥が、固体水分含有率が50質量%未満、好ましくは35質量%未満、特に好ましくは25質量%未満の固体を得るために実施される。
工程(B)の後では、目的の固体が、好ましくは直径が3〜300μm、好ましくは6〜200μm、非常に好ましくは10〜150μmである球状凝集物として存在する。
【0067】
工程(C):
本発明の方法の工程(C)は、工程(B)から得られる固体化合物を、300〜1000℃の焼成温度で焼成することからなる。工程(C)は、好ましくは375〜900℃の焼成温度で、特に好ましくは400〜850℃、例えば450〜800℃の焼成温度で実施される。
【0068】
焼成は、通常不活性ガス雰囲気下で行われる。不活性ガスの例としては、窒素や、微量の酸素を含む工業用窒素、ヘリウム及び/又はアルゴンなどの希ガスがあげられる。ある好ましい実施様態においては、本発明の方法の工程(C)において、窒素が用いられる。本発明の工程(C)で工業用窒素が用いられる場合は、この窒素が微量の酸素を含んでいてもよい。
【0069】
本発明の方法の一つの利点は、焼成を不活性雰囲気下で行うことができ、先行技術のように還元雰囲気下で工程(C)を行う必要がないことである。このため、本発明の方法は、短時間かつ低コストで実施可能である。ガス状還元剤、例えば水素が存在しないため、爆薬性のガス混合物の発生を避けることができる。焼成工程で用いる窒素が多量の酸素を含む場合は、COまたは水素などの還元ガスをこの酸素含有窒素に添加することができる。
【0070】
本発明の方法の工程(C)は、0.1〜8時間、好ましくは0.5〜3時間実施される。ある好ましい工程(C)の実施様態においては、この焼成温度を、0.1〜2時間、非常に好ましくは0.5〜1.5時間維持した後、最後に温度を室温にまで下げる。
【0071】
ある好ましい実施様態においては、工程(C)から得られる生成物が、実質的に直径が3〜300μmである、好ましくは6〜200μm、非常に好ましくは10〜150μmである球状凝集物からなる。SEMまたはTEMなど異なる分析機器を用いて調べてみると、この球状凝集物が結晶性の一次粒子からなり、空孔を含んでいることがわかる。空孔率は、いろいろな要素により、具体的にはFeOOH粒子の細かさ、針状FeOOH粒子の長さ/幅比、工程(A)で得られるスラリーの濃度、工程(B)での噴霧乾燥速度(またこれは使用ガスの温度に依存する)、また用いる噴霧塔の構造により変化する。球状凝集物の空孔率は、通常3〜85%である、好ましくは5〜70%、特に好ましくは5〜50%である。
【0072】
焼成温度は、一般式(I)の化合物の比表面積に大きな影響をもつ。焼成時が低温である場合は、比表面積が大きくなる。焼成時が高温である場合は、比表面積が小さくなる。
【0073】
本発明の方法の工程(C)で得られる球状粒子または凝集物の比BET表面積は、通常0.01〜50m/gであり、好ましくは0.1〜40m/gである。本発明はまた、本発明の方法により得られる少なくとも一種の一般式(I)の化合物を含む球状粒子または凝集物に関する。これらの球状粒子または凝集物は上記の特徴をもつ。
【0074】
本発明の方法の工程(C)で得られるこれらの球状粒子または凝集物は、必要なら、他の元素を、例えば必要なら還元剤の、例えば砂糖の熱分解により得られる炭素を含んでいてもよい。
【0075】
本発明の方法は、連続的に実施しても、不連続的に実施してもよい。ある好ましい実施様態においては、本発明の方法は連続的に実施される。工程(C)に好適な装置は、当該分野における通常の知識を有する者には既知である。不連続的または連続的焼成装置の一例が、回転炉である。連続焼成の場合、回転炉中での滞留時間は、炉の傾斜と回転数により決まる。当該分野における通常の知識を有する者は、回転炉中で好適な滞留時間に合わせる方法を知っている。ある好ましい実施様態においては、本発明の方法の工程(C)で焼成される固体が、例えば流動床反応器または回転炉中で焼成中に移動させられる。この固体を焼成中攪拌することもできる。回転炉は異なる温度ゾーンを持っていてもよい。例えば、第一のゾーンでは噴霧乾燥した粉末を排出させるために温度が低温に調整され、他のゾーンはより高温の焼成温度となる。粉末の加熱速度は、異なるゾーン内での温度と粉末が炉中を移動する速度とに依存する。
【0076】
本発明の方法の工程(C)は、通常、目的物への完全変換に適した圧力下で行われる。ある好ましい実施様態では、反応器中に外部より酸素が侵入するのを防止するため、工程(C)を大気圧より少し高い圧力で実施する。この少し高い気圧は、好ましくはこの工程において焼成される固体化合物の上を流れる少なくとも一種の不活性ガスによりもたらされる。
【0077】
本出願によれば、一般式(I)の化合物から製造される電極の組成によっては、また得られるリチウムイオン電池の所望の電気化学的性質によっては、球状凝集物を破砕して所望サイズのより小さく緻密な凝集物に、あるいは一次粒子とするために、工程(B)で得られる固体化合物を工程(C)の前に機械的に処理したり、及び/又は工程(C)で得られる固体化合物を工程(C)の後に機械的に処理することが有利となることもある。好適なミルや圧縮機及び/又はロールは、当該分野における通常の知識を有する者には既知である。その例は、非常に低摩擦のジェットミルであり、好ましくは窒素及び/又は空気を使用して使用される。焼成生成物を粉砕するのに、湿式粉砕法も、例えばビーズミルの使用も有利であるかもしれない。他の好適な装置は、圧縮機及び/又はロールである。
【0078】
本発明はまた、好ましくは球状の形状を有する、好ましくは本発明の方法により製造される上記一般式(I)の化合物に関する。これらの球状化合物は、上記の直径や空孔率などの特徴をもつ。これらの球状粒子は、好ましくは結晶性の一次粒子であり、これは、好ましくは実質的にLiFePOの結晶構造を示す。本発明の方法により製造された一般式(I)の組成のこれらの一次粒子は、従来技術により製造された化合物に較べて優れた結晶性を示す。また、得られる一次粒子のサイズの分布は、従来品に較べて狭い。得られる一次粒子の結晶性が改善されており、得られる固体中では、成分の分散性が改善されている。また、本発明では、単一相のリン酸リチウム鉄を製造する際の焼成温度を、通常用いられる高焼成温度の800℃から大幅に低下させることができる。焼成温度の低下により、通常より微細で結晶子の分布の小さい材料を得ることができ、Liイオン電池の放充電の際のLiイオンの拡散性が改善される。Liイオンの拡散性の改善により、Liイオン電池の動力特性と容量が改善される。
【0079】
この事実のため、本発明の方法で製造した一般式(I)の本発明の材料は、特にリチウムイオン電池または電気化学セルのカソードの製造への利用に好適である。したがって、本発明はまた、本発明の方法で得られる/製造可能な一般式(I)の化合物の球状粒子または凝集物の、リチウムイオン電池または電気化学的セルのカソードの製造への利用に関する。
【0080】
本発明はまた、本発明の方法で得られる/製造可能な一般式(I)の化合物の少なくとも一種の球状粒子または凝集物を含むリチウムイオン電池用のカソードに関する。上述のようにカソードを得るには、一般式(I)の化合物を、例えばWO2004/082047に記載されている少なくとも一種の電気伝導性材料と混合する。
【0081】
好適な電気伝導性材料としては、例えばカーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素ナノファイバー、炭素ナノチューブまたは電気伝導性ポリマーがあげられる。通常カソード中で、20〜40質量%の少なくとも一種の電気伝導性材料が、一般式(I)の化合物とともに用いられる。カソードを得るには、必要なら有機溶媒の存在下、必要ならポリイソブテンなど有機のバインダーの存在下で電気伝導性材料と一般式(I)の化合物を混合し、この混合物を必要なら成形して乾燥させる。乾燥工程では、80〜150℃の温度が用いられる。
【0082】
ある好ましい実施様態においては、少なくとも一種の電気伝導性材料または少なくとも一種の電気伝導性材料の前駆体の少なくとも一部が、上記の一般式(I)の化合物の製造の際に添加される。ある好ましい実施様態においては、少なくとも一種の電気伝導性材料または少なくとも一種の電気伝導性材料の前駆体の少なくとも一部が、一般式(I)の化合物の製造において出発原料混合物に添加される。一般式(I)の化合物の製造の際に使われなかった、少なくとも一種の電気伝導性材料または少なくとも一種の電気伝導性材料の前駆体の残部は、この製造後に添加される。
【0083】
したがって、本発明はまた、上記の少なくとも一種の一般式(I)に記載の化合物と少なくとも一種の電気伝導性材料とを含む混合物の製造方法であって、以下の工程を含むものに関する。
【0084】
(D)少なくとも一種の電気伝導性材料または少なくとも一種の電気伝導性材料の前駆体と、少なくとも一種のリチウム含有化合物と、少なくとも一種の鉄の酸化状態が+3である鉄含有化合物と、存在するなら少なくとも一種のM含有化合物と、及び/又は、存在するなら少なくとも一種のM含有化合物と、及び/又は存在するなら少なくとも一種のM含有化合物と、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される少なくとも一種の還元剤とを含む混合物を供給する工程、
(E)必要に応じて、固体化合物を得るために工程(D)で供給される混合物を乾燥させる工程、及び
(F)工程(E)で得られる固体化合物を300〜1000℃の温度で焼成する工程。
【0085】
ある好ましい本発明の方法の実施様態においては、工程(D)で得られる混合物が実質的に水性である。他の好ましい実施様態においては、工程(D)で得られる混合物が、さらに、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物を含んでいる。
【0086】
これらのリチウム含有化合物、M含有化合物、M含有化合物、及び/又はM含有化合物、鉄含有化合物、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される少なくとも一種の還元剤、必要に応じて存在する少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物、通電性材料、装置、及び工程(D)〜(F)の運転上の変数は、上述の通りである。ある好ましい実施様態においては、上記また上述のように、上記の少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される少なくとも一種の還元剤と必要に応じて存在する少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物とに加えて、少なくとも一種の他の還元剤を添加してもよい。
【0087】
ある好ましい実施様態においては、この電気伝導性材料は、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素ナノファイバー、炭素ナノチューブ、電気伝導性ポリマーまたはこれらの混合物からなる群から選ばれる。この少なくとも一種の電気伝導性材料の前駆体は、好ましくは本発明の混合物の製造の際に熱分解により炭素中に取り込まれる化合物から選ばれ、その例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、グルコース、フルクトース、スクロース、サッカロース、キシロース、ソルボース、ラクトース、デンプン、セルロース及びそのエステル、エチレンとエチレンオキシドのブロックポリマー、フリフリルアルコールのポリマー、またはこれらの混合物があげられる。特に好ましいのは、水溶性の炭素前駆体である。
【0088】
カーボンブラック、グラファイトまたは実質的に炭素からなる物質が工程(D)中で電気伝導性材料として用いられる場合は、これらの材料は、好ましくは、他成分の混合物中に、好ましくは実質的に水溶液または分散液中に懸濁される。これは、これらの電気伝導性材料を、他成分の混合物に、好ましくは水混合物に直接添加することにより行われる。あるいは、カーボンブラック、グラファイトまたは実質的に炭素からなる物質を過酸化水素の水溶液中に懸濁し、この懸濁液を、上記の一種以上の成分の溶液または分散液に添加してもよい。過酸化水素で処理すると、通常、炭素の濡れ性が向上し、安定性の改善された、即ち分離傾向の小さな炭素含有懸濁液を得ることが可能となる。また、混合物中での電気伝導性材料の分散均一性が改善される。この水性懸濁液をさらに攪拌及び/又は加熱すると、過剰の過酸化水素が、LiとFeと及び/又はPを含有する前駆体の触媒的な存在下で、水と酸素に分解する。
【0089】
実質的に炭素からなる物質を分散させるのに、過酸化水素に代えて、あるいは過酸化水素とともに、界面活性剤を使用することができる。好適な界面活性剤は、当該分野における通常の知識を有する者には既知である、その例としては、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドのブロックコポリマー、例えばBASF社のプルオニック(R)という商品名で販売されている界面活性剤があげられる。
【0090】
少なくとも一種の電気伝導性材料の前駆体を使用する場合、この少なくとも一種の前駆体は、少なくとも一種の通電性材料の添加なしに、あるいは必要に応じて少なくとも一種の通電性材料とともに用いることができる。
【0091】
本発明はまた、上記の方法で製造される、上記の少なくとも一種の一般式(I)の化合物と少なくとも一種の電気伝導性材料とからなる混合物に関する。従来技術の材料とは異なり、これらの本発明の混合物では、得られた材料球状凝集物内での少なくとも一種の電気伝導性材料の分散性が改善されている。C分散の改善の結果、本発明のカソード材料粉末中に高導電性の炭素網状組織が形成され、電極などの層の導電性が改善される。少なくとも一種の一般式(I)に記載の化合物と少なくとも一種の電気伝導性材料とを含む混合物は、通常混合物中に添加された炭素の種類と量により決まるBET表面積を有し、0.1〜500m/gの範囲である。
【0092】
本発明はさらに、前記の方法により製造される、上述の少なくとも一種の一般式(I)に記載の化合物と少なくとも一種の電気伝導性材料とを含む混合物からなる球状粒子または凝集物に関する。サイズ、空孔率などの特徴は、上記の電気伝導性材料を含まない球状粒子または凝集物と同じである。
【0093】
したがって、本発明はまた、上記混合物または、上記の少なくとも一種の一般式(I)に記載の化合物と少なくとも一種の電気伝導性材料とを含む混合物を含む球状粒子または凝集物の、リチウムイオン電池または電気化学的セルのカソードの製造のための利用に関する。
【0094】
本発明はまた、混合物または上記混合物を含む球状粒子または凝集物を含むリチウムイオン電池用のカソードに関する。
【0095】
ある好ましい実施様態においては、上記一般式(I)に記載の化合物を用いて、または上記の一般式(I)に記載の化合物または球状粒子または凝集物を含む混合物と上記の少なくとも一種の電気伝導性材料とを用いてカソードを製造するために、以下のバインダーが使用される:
【0096】
ポリエチレンオキシド(PEO)、セルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル−メチルメタクリレート、スチレン−ブタジエン−コポリマー、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−コポリマー、ポリビニリデンフルオリド−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF−HFP)、パーフルオロアルキル−ビニルエーテル−コポリマー、ビニリデンフルオリドクロロトリフルオロエチレン−コポリマー、エチレン−クロロフルオロエチレン−コポリマー、エチレン−アクリル酸−コポリマー(ナトリウムイオン含有または非含有)、エチレンメタクリル酸(ナトリウムイオン含有又は非含有)、ポリイミド、およびポリイソブテン。
【0097】
このバインダーは、全カソード材料に対して通常は1〜10質量%の量で、好ましくは2〜8質量%、特に好ましい3〜7質量%の量で用いられる。
【実施例】
【0098】
本発明を以下の実施例をもとにさらに説明する。
【0099】
実施例1
LiOH・HOとα−FeOOHとHPOとHPO(理論量、60時間攪拌)からLiFePO

2LiOH・HO + 2Fe3+OOH +HPO +HPO = 2LiFe2+5+ + 5H
【0100】
気流(50NL/h)下で、外部加熱可能な10Lのガラス反応器中に、6Lの80℃の水を投入する。他の工程の間も、N気流置換を維持する。攪拌下で、174.97gのLiOH・HO(57.49%LiOH、4.2モル−Li、ケメタル社、D−60487 Frankfurt、ドイツ)を添加、溶解して、無色透明の溶液を得る。366.20gのα−FeOOH(61.0%Fe、BET=14m/g、4.0モル−Fe;ZMAG−5102、キャセイピグメンツ(USA)社、4901 Evans Ave.、Valparaiso、IN 46383、USA)を添加する。添加したZMAG−5102型のα−FeOOHは、針状の形状を有し、透過型電子顕微鏡による平均の針の長さは1μmで、平均の針径が100〜200nmである。この琥珀色の水性懸濁液に、167.34のHPO(98%、2モル−P、アクロス・オルガニクス、B−2440 Geel、Belgium)を、0.5分間かけて添加する。次いで、230.58のHPO(85%、2モル−P、リーデルデハーン社、D−30926 Seelze)を添加する。得られる水性懸濁液を、窒素気流下で60時間90℃で攪拌する。この黄色の懸濁液を、次いで窒素下にて噴霧乾燥装置(マイナーMM型、Niro、Danmark)(入り口温度=330℃、出口温度=106℃)中で噴霧乾燥する。
【0101】
次いで、得られる50gの噴霧粉末を、連続的に窒素気流下(15NL/h)で試験室回転炉(BASF)中で回転(7rpm)している1Lの石英ガラス容器に添加し、1時間かけて採取温度Tまで加熱し、この温度Tで1時間維持し、次いでN気流下で室温まで冷却する。
【0102】
実施例1.1
最終温度Tが350℃の場合は、BET表面積が20.0m/gで、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造[国際回折データセンター(ICDD)の粉末回折パターン00−040−1499]を示すX線粉末回折パターンを持ち、非常に少量のα−Feを含む粉末を与える。化学分析では、Li1.03Fe(PO0.99の組成を示す。LiFePOに含まれる鉄の酸化状態(Feox)の分析を下記式により行う:

Feox = 3 − {[Fe2+]/([Fe2+] + [Fe3+])}
【0103】
Feox値を決定するために、粉末試料を、窒素下80℃でHCl水溶液に溶解する。この溶液中のFe2+の量の決定は、0.1NのKCr溶液を用いる電位差滴定で行う。他のHCl−酸性試料のFe3+濃度は、0.1NのTiCl溶液を用いる電位差滴定で行う。Fe2+とFe3+の量にこれらの値を用いると、350℃での焼成では、酸化状態Feoxとして2.10が得られる。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ちその中間粒径が約30μmである。一つの球は、複数のLiFePOの一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞が観察される。
【0104】
実施例1.2
最終温度Tが400℃の場合、BET表面積が17.7m/gで、実質的には斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造を示すX線粉末回折パターンを持ち、非常に少量のα−Feを含む粉末が得られる。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.09である。走査型電子顕微鏡では、この粉末が球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞が観察される。
【0105】
実施例1.3
最終温度Tが400℃の場合、BET表面積が13.8m/gで、実質的には斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造を示すX線粉末回折パターンを持ち、非常に少量のα−Feを含む粉末がえられる。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.06である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞が観察される。一次粒子の径は、約100〜200nmである。
【0106】
実施例1.4
最終温度Tが400℃の場合、BET表面積が9.8m/gで、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造をもつ単一相を示すX線粉末回折パターンを持つ粉末が得られる。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.03である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞が観察される。一次粒子の径は、約150〜250nmである。
【0107】
実施例1.5
最終温度Tが700℃の場合、BET表面積が5.0m/gで、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造をもつ単一相を示すX線粉末回折パターンを持つ粉末が得られる。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.03である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。一次粒子の径は、約150〜200nmである(図1)。
【0108】
実施例1.6
最終温度Tが700℃の場合、BET表面積が3.7m/gで、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造をもつ単一相を示すX線粉末回折パターンを持つ粉末が得られる。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.02である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。一次粒子の径は、約200〜500nmである。
【0109】
実施例2
LiOH・HOとα−FeOOHとHPOとHPO(理論量、16時間攪拌)からLiFePO

2LiOH・HO + 2Fe3+OOH +HPO+HPO = 2LiFe2+5+ + 5H
【0110】
気流(50NL/h)下で、外部加熱可能な10Lのガラス反応器中に、6Lの80℃の水を投入する。他の工程の間も、N気流置換を維持する。攪拌下で、174.97gのLiOH・HO(57.49%LiOH、4.2モル−Li、ケメタル社、D−60487 Frankfurt、ドイツ)を添加、溶解して、無色透明の溶液を得る。366.20gのα−FeOOH(61.0%Fe、BET=14m/g、4.0モル−Fe;ZMAG−5102、キャセイピグメンツ(USA)社、4901 Evans Ave.、Valparaiso、IN 46383、USA)を添加する。添加したZMAG−5102型のα−FeOOHは、針状の形状を有し、透過型電子顕微鏡による平均の針の長さが1μmで、平均の針径が100〜200nmである。この琥珀色の水性懸濁液に、167.34のHPO(98%、2モル−P、アクロス・オルガニクス、B−2440 Geel、Belgium)を、0.5分間かけて添加する。次いで、230.58のHPO(85%、2モル−P、リーデルデハーン社、D−30926 Seelze)を添加する。得られる水性懸濁液を、窒素気流下で16時間90℃で攪拌する。この黄色の懸濁液を、次いで窒素下にて、噴霧乾燥装置(マイナーMM型、Niro、Danmark)(入り口温度=330℃、出口温度=106℃)中で噴霧乾燥する。
【0111】
次いで、得られる50gの噴霧粉末を、連続的に窒素気流下(15NL/h)で試験室回転炉(BASF)中で回転(7rpm)している1Lの石英ガラス容器に添加し、1時間かけて採取温度Tまで加熱し、この温度Tで1時間維持し、次いでN気流下で室温まで冷却する。
【0112】
実施例2.1
最終温度Tが350℃の場合、BET表面積が9.1m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、実質的に斜方晶LiFePO(トリフィライト)である結晶構造と非常に少量のα−Feを示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.09である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。
【0113】
実施例2.2
最終温度Tが400℃の場合、BET表面積が8.4m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、実質的に斜方晶LiFePO(トリフィライト)である結晶構造と非常に少量のα−Feを示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.08である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。
【0114】
実施例2.3
最終温度Tが500℃の場合、BET表面積が5.0m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、実質的に斜方晶LiFePO(トリフィライト)である結晶構造と非常に少量のα−Feを示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.05である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。一次粒子の径は、約100〜150nmである。
【0115】
実施例2.4
最終温度Tが400℃の場合、BET表面積が8.4m/gで、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造を示すX線粉末回折パターンをもつ粉末が得られる。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.02である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。一次粒子の径は、約150〜250nmである。
【0116】
実施例2.5
最終温度Tが700℃の場合、BET表面積が3.1m/gで、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造を示すX線粉末回折パターンをもつ粉末が得られる。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.02である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。一次粒子の径は、約150〜250nmである。
【0117】
実施例2.6
最終温度Tが750℃の場合、BET表面積が2.6m/gで、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造を示すX線粉末回折パターンをもつ粉末が得られる。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.02である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。一次粒子の径は、約200〜600nmである。
【0118】
実施例3:
LiOH・HOとα−FeOOHとHPOとHPO(HPO過剰、16時間攪拌)からLiFePO

2LiOH・HO + 2Fe3+OOH + 1.06HPO + 0.94HPO → 2LiFe2+5+
【0119】
気流(50NL/h)下で、外部加熱可能な10Lのガラス反応器中に、6Lの80℃の水を投入する。他の工程の間も、N気流置換を維持する。攪拌下で、174.97gのLiOH・HO(57.49%LiOH、4.2モル−Li、ケメタル社、D−60487 Frankfurt、ドイツ)を添加、溶解して、無色透明の溶液を得る。366.20gのα−FeOOH(61.0%Fe、BET=14m/g、4.0モル−Fe;ZMAG−5102、キャセイピグメンツ(USA)社、4901 Evans Ave.、Valparaiso、IN 46383、USA)を添加する。添加したZMAG−5102型のα−FeOOHは、針状の形状を有し、透過型電子顕微鏡による平均の針の長さは1μmで、平均の針径が100〜200nmである。この琥珀色の水性懸濁液に、177.38のHPO(98%、2.12モル−P、アクロス・オルガニクス、B−2440 Geel、Belgium)を、0.5分間かけて添加する。次いで、230.58のHPO(85%、2モル−P、リーデルデハーン社、D−30926 Seelze)を添加する。得られる水性懸濁液を、窒素気流下で16時間90℃で攪拌する。この黄色の懸濁液を、次いで窒素下にて、噴霧乾燥装置(マイナーMM型、Niro、Danmark)(入り口温度=330℃、出口温度=106℃)中で噴霧乾燥する。
【0120】
次いで、得られる50gの噴霧粉末を、連続的に窒素気流下(15NL/h)で試験室回転炉(BASF)中で回転(7rpm)している1Lの石英ガラス容器に添加し、1時間かけて採取温度Tまで加熱し、この温度Tで1時間維持し、次いでN気流下で室温まで冷却する。
【0121】
実施例3.1
最終温度Tが400℃の場合、BET表面積が7.6m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、実質的に斜方晶LiFePO(トリフィライト)である結晶構造と非常に少量のα−Feを示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.06である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。
【0122】
実施例3.2
最終温度Tが500℃の場合、BET表面積が9.1m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、実質的に斜方晶LiFePO(トリフィライト)である結晶構造と非常に少量のα−Feを示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.03である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。一次粒子の径は、約100〜150nmである。
【0123】
実施例3.3
最終温度Tが600℃の場合、BET表面積が3.4m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。一次粒子の径は、約100〜200nmである。
【0124】
実施例3.4
最終温度Tが700℃の場合、BET表面積が2.7m/gで、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示すX線粉末回折パターンをもつ粉末が得られる。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。一次粒子の径は、約150〜300nmである。
【0125】
実施例3.5
最終温度Tが750℃の場合、BET表面積が1.9m/gで、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の単一相結晶構造を示すX線粉末回折パターンをもつ粉末が得られる。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。一次粒子の径は、約200〜600nmである(図2)。
【0126】
実施例4
LiOH・HOとα−FeOOHとHPOとHPO(理論量、16時間攪拌、内部での添加サッカロースの熱分解で約1重量%の炭素が発生)からのLiFePO

2LiOH・HO +2Fe3+OOH +HPO +HPO =2LiFe2+5+ + 5H
【0127】
気流(50NL/h)下で、外部加熱可能な10Lのガラス反応器中に、6Lの80℃の水を投入する。他の工程の間も、N気流置換を維持する。攪拌下で、174.97gのLiOH・HO(57.49%LiOH、4.2モル−Li、ケメタル社、D−60487 Frankfurt、ドイツ)を添加、溶解して、無色透明の溶液を得る。366.20gのα−FeOOH(61.0%Fe、BET=14m/g、4.0モル−Fe;ZMAG−5102、キャセイピグメンツ(USA)社、4901 Evans Ave.、Valparaiso、IN 46383、USA)を添加する。添加したZMAG−5102型のα−FeOOHは、針状の形状を有し、透過型電子顕微鏡による平均の針の長さは1μmで、平均の針径が100〜200nmである。この琥珀色の水性懸濁液に、167.34のHPO(98%、2モル−P、アクロス・オルガニクス、B−2440 Geel、Belgium)を、0.5分間かけて添加する。次いで、230.58gのHPO(85%、2モル−P、リーデルデハーン社、D−30926 Seelze)と79.24gのサッカロース(C121122、0.23mol、リーデルデハーン社、D−30926 Seelze、ドイツ)を添加し、さらに攪拌しながら溶解する。得られる水性懸濁液を、窒素気流下で16時間90℃で攪拌する。次いで、この黄色の懸濁液を、で窒素下にて、噴霧乾燥装置(マイナーMM型、Niro、Danmark)(入り口温度=330℃、出口温度=106℃)中で噴霧乾燥する。
次いで、得られる50gの噴霧粉末を、連続的に窒素気流下(15NL/h)で試験室回転炉(BASF)中で回転(7rpm)している1Lの石英ガラス容器に添加し、1時間かけて採取温度Tまで加熱し、この温度Tで1時間維持し、次いでN気流下で室温まで冷却する。
【0128】
実施例4.1
最終温度Tが350℃の場合、BET表面積が18.3m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、実質的に斜方晶LiFePO(トリフィライト)である結晶構造と非常に少量のα−Feを示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.10である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、U1.05Fe(PP0.99である。炭素の量は、1.7質量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。
【0129】
実施例4.2
最終温度Tが400℃の場合、BET表面積が17.1m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、実質的に斜方晶LiFePO(トリフィライト)である結晶構造と非常に少量のα−Feを示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.06である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、Li1.06Fe(PO0.99である。炭素の量は、1.5質量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。
【0130】
実施例4.3
最終温度Tが500℃の場合、BET表面積が14.8m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.03である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、Li1.05Fe(PO0.99である。炭素の量は、1.5質量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。一次粒子の径は、約150〜200nmである。
【0131】
実施例4.4
最終温度Tが600℃の場合、BET表面積が14.1m/gで斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示すX線粉末回折パターンをもつ粉末が得られる。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.02である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、Li1.06Fe(PO0.99である。炭素の量は、1.4質量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。一次粒子の径は、約200〜300nmである。
【0132】
実施例4.5
最終温度Tが700℃の場合、BET表面積が12.0m/gで、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示すX線粉末回折パターンをもつ粉末が得られる。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、Li1.07Fe(PO1.00である。炭素の量は、1.3質量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。一次粒子の径は、約200〜350nmである。
【0133】
実施例4.6
最終温度Tが750℃の場合、BET表面積が9.2m/gで、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示すX線粉末回折パターンをもつ粉末が得られる。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、L1.07Fe(PO0.99である。炭素の量は、1.0質量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。一次粒子の径は、約200〜350nmである。
【0134】
実施例5
LiOH・HOとα−FeOOHとHPOとHPO(理論量、16時間攪拌、添加サッカロースの内部熱分解で約2.5重量%の炭素が発生)からLiFePO

2LiOH・HO + 2Fe3+OOH +HPO +HPO = 2LiFe2+5+ + 5H
【0135】
気流(50NL/h)下で、外部加熱可能な10Lのガラス反応器中に、6Lの80℃の水を投入する。他の工程の間も、N気流置換を維持する。攪拌下で、174.97gのLiOH・HO(57.49%LiOH、4.2モル−Li、ケメタル社、D−60487 Frankfurt、ドイツ)を添加、溶解して、無色透明の溶液を得る。366.20gのα−FeOOH(61.0%Fe、BET=14m/g、4.0モル−Fe;ZMAG−5102、キャセイピグメンツ(USA)社、4901 Evans Ave.、Valparaiso、IN 46383、USA)を添加する。添加したZMAG−5102型のα−FeOOHは、針状の形状を有し、透過型電子顕微鏡による平均の針の長さは1μmで、平均の針径が100〜200nmである。この琥珀色の水性懸濁液に、167.34のHPO(98%、2モル−P、アクロス・オルガニクス、B−2440 Geel、Belgium)を、0.5分間かけて添加する。次いで、230.58gのHPO(85%、2モル−P、リーデルデハーン社、D−30926 Seelze)と163.66gのサッカロース(C121122、0.48mol、リーデルデハーン社、D−30926 Seelze、ドイツ)を添加し、さらに攪拌しながら溶解する。得られる水性懸濁液を、窒素気流下で16時間90℃で攪拌する。この黄色の懸濁液を、次いで窒素下にて、噴霧乾燥装置(マイナーMM型、Niro、Danmark)(入り口温度=330℃、出口温度=106℃)中で噴霧乾燥する。
【0136】
次いで、得られる50gの噴霧粉末を、連続的に窒素気流下(15NL/h)で試験室回転炉(BASF)中で回転(7rpm)している1Lの石英ガラス容器に添加し、1時間かけて採取温度Tまで加熱し、この温度Tで1時間維持し、次いでN気流下で室温まで冷却する。
【0137】
実施例5.1
最終温度Tが400℃の場合、BET表面積が19.3m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の単一相結晶構造を示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.06である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、Li1.04Fe(PO0.99である。炭素の量は、3.3質量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある(図3)。
【0138】
実施例5.2
最終温度Tが600℃の場合、BET表面積が22.0m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.03である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、U1.05Fe(PO0.99である。炭素の量は、3.1質量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある(図4)。
【0139】
実施例5.3
最終温度Tが750℃の場合、BET表面積が20.61m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、Li1.04Fe(PO0.99である。炭素の量は、2.5質量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。一次粒子の径は、約150〜200nmである。
【0140】
実施例6
LiOH・HOとα−FeOOHとHPOとHPO(理論量、2時間攪拌、添加カーボンブラックで約3重量%の炭素が発生)からLiFePO

2LiOH・HO + 2Fe3+OOH +HPO +HPO =2LiFe2+5+ + 5H
【0141】
5L−ガラス−反応器中に、3lの水を室温で攪拌下に投入する。20.18gのカーボンブラック(チムカルスーパーP Li、チムカルドイツランド社、D−40212 Dusseldorf、ドイツ)をこの水に添加する。その際、カーボンブラックは表面に浮く。次いで、150mlのHO2水溶液(30%、メルク社、D−64293 Darmstadt、ドイツ)を攪拌下で滴下する。その際、カーボンブラックは水中に分散する。得られる黒色のカーボンブラック水分散液を、攪拌下で、外部加熱可能な10Lガラス反応器に入った2850ml室温の水に添加する。得られる混合物を、N気流下(50NL/h)で60℃に加熱し、この温度で2時間維持する。攪拌下で、60℃としたこの混合物に、174.97gのLiOH・HO(57.49%LiOH、4.2モル−Li、ケメタル社、D−60487 Frankfurt、ドイツ)を添加する。得られる混合物に、366.20gのα−FeOOH(61.0%Fe、BET=14m/g、4.0モル−Fe;ZMAG−5102、キャセイピグメンツ(USA)社、4901 Evans Ave.、Valparaiso、IN 46383、USA)を添加する。添加したZMAG−5102型のα−FeOOHは、針状の形状を有し、透過型電子顕微鏡による平均の針の長さは1μmで、平均の針径が100〜200nmである。得られる懸濁液を90℃に加熱する。次いで、167.34gのHPO(98%、2モル−P、アクロス・オルガニクス、B−2440 Geel、Belgium)を0.5分間かけて添加する。さらに20分間攪拌後、230.58gのHPO(85%、2モル−P、リーデルデハーン社、D−30926 Seelze)を添加する。得られる懸濁液を、N気流を維持したまま、さらに二時間攪拌する。得られる水性懸濁液を、窒素気流下で16時間90℃で攪拌する。次いで窒素下にて、この黄色の懸濁液を、噴霧乾燥装置(マイナーMM型、Niro、Danmark)(入り口温度=330℃、出口温度=106℃)中で噴霧乾燥する。
【0142】
次いで、得られる50gの噴霧粉末を、連続的に窒素気流下(15NL/h)で試験室回転炉(BASF)中で回転(7rpm)している1Lの石英ガラス容器に添加し、1時間かけて採取温度Tまで加熱し、この温度Tで1時間維持し、次いでN気流下で室温まで冷却する。
【0143】
実施例6.1
最終温度Tが750℃では、BET表面積が3.8m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の単一相結晶構造を示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、Li1.044Fe(PO0.99である。炭素の量は、3.0重量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。一次粒子の径は、約200〜600nmである。投入された非常に微細なカーボンブラックは、球状凝集物中の一次粒子間の空洞の一部に存在している。
【0144】
実施例7
LiOH・HOとα−FeOOHとHPOとHPO(理論量、2時間攪拌、添加のカーボンブラックで約4.5重量%の炭素が発生)からLiFePO

2LiOH・HO + 2Fe3+OOH +HPO +HPO = 2LiFe2+5+ + 5H
【0145】
5L−ガラス−反応器中に、3lの水を室温で攪拌下に投入する。31.27gのカーボンブラック(チムカルスーパーP Li、チムカルドイツランド社、D−40212 Dusseldorf、ドイツ)をこの水に添加する。その際、カーボンブラックは表面に浮く。次いで、150mlのHO2水溶液(30%、メルク社、D−64293 Darmstadt、ドイツ)を攪拌下で滴下する。その際、カーボンブラックは水中に分散する。得られる黒色のカーボンブラックの水分散液を、攪拌下で、外部加熱可能な10Lガラス反応器に入った2850ml室温の水に添加する。得られる混合物を、N気流下(50NL/h)で60℃に加熱し、この温度で2時間維持する。攪拌下で、60℃としたこの混合物に、174.97gのLiOH・HO(57.49%LiOH、4.2モル−Li、ケメタル社、D−60487 Frankfurt、ドイツ)を添加する。得られる混合物に、366.20gのα−FeOOH(61.0%Fe、BET=14m/g、4.0モル−Fe;ZMAG−5102、キャセイピグメンツ(USA)社、4901 Evans Ave.、Valparaiso、IN 46383、USA)を添加する。添加したZMAG−5102型のα−FeOOHは、針状の形状を有し、透過型電子顕微鏡による平均の針の長さは1μmで、平均の針径が100〜200nmである。得られる懸濁液を90℃に加熱する。次いで、167.34gのHPO(98%、2モル−P、アクロス・オルガニクス、B−2440 Geel、Belgium)を0.5分間かけて添加する。さらに20分間攪拌後、230.58gのHPO(85%、2モル−P、リーデルデハーン社、D−30926 Seelze)を添加する。得られる懸濁液を、N気流を維持したまま、さらに二時間攪拌する。得られる水性懸濁液を、窒素気流下で16時間90℃で攪拌する。この黄色の懸濁液を、次いで窒素下にて、噴霧乾燥装置(マイナーMM型、Niro、Danmark)(入り口温度=330℃、出口温度=106℃)中で噴霧乾燥する。
【0146】
次いで、得られる50gの噴霧粉末を、連続的に窒素気流下(15NL/h)で試験室回転炉(BASF)中で回転(7rpm)している1Lの石英ガラス容器に添加し、1時間かけて採取温度Tまで加熱し、この温度Tで1時間維持し、次いでN気流下で室温まで冷却する。
【0147】
実施例7.1
最終温度Tが750℃では、BET表面積が5.0m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、Li1.04Fe(PO0.98である。炭素の量は、4.5質量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。一次粒子の径は、約200〜600nmである。投入された非常に微細なカーボンブラックは、球状凝集物中の一次粒子間の空洞の一部に存在している。
【0148】
実施例8
LiOH・HOとα−FeOOHとHPOとHPO(理論量、2時間攪拌、添加のカーボンブラックで6重量%の炭素が発生)からのLiFePO

2LiOH・HO + 2Fe3+OOH +HPO +HPO = 2LiFe2+5+ + 5H
【0149】
反応を、実施例7と同様に行う。31.27gのカーボンブラックに代えて、43.96gのカーボンブラック(チムカルスーパーP Li,チムカルドイツランド社,D−40212Dusseldorf, Germany)を添加する。
【0150】
実施例8.1
最終温度Tが750℃では、BET表面積が7.1m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、Li1.06Fe(PO0.98である。炭素の量は、6.3重量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。一次粒子の径は、約200〜600nmである。投入された非常に微細なカーボンブラックは、球状凝集物中の一次粒子間の空洞の一部に存在している。
【0151】
実施例8.2
最終温度Tが750℃では、BET表面積が36.4m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、Li1.05Fe(PO0.99である。炭素の量は、6.3重量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。一次粒子の径は、約200〜600nmである。投入された非常に微細なカーボンブラックは、球状凝集物中の一次粒子間の空洞の一部に存在している。
【0152】
実施例9
LiOH・HOとα−FeOOHとHPOとHPO(理論量、2時間攪拌、添加のカーボンブラックで約9重量%の炭素が発生)からのLiFePO

2LiOH・HO + 2Fe3+OOH +HPO +HPO = 2LiFe2+5+ + 5H
【0153】
実施例7に準じて、反応を行う。31.27gのカーボンブラックに代えて、62.55gのカーボンブラック(チムカルスーパーP Li,チムカルドイツランド社,D−40212Dusseldorf, Germany)を添加する。
【0154】
実施例9.1
最終温度Tが700℃では、BET表面積が8.6m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、Li1.05Fe(PO0.98である。炭素の量は、8.7質量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。一次粒子の径は、約200〜600nmである。投入された非常に微細なカーボンブラックは、球状凝集物中の一次粒子間の空洞の一部に存在している。
【0155】
実施例9.2
最終温度Tが750℃では、BET表面積が7.0m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、Li1.06Fe(PO1.00である。炭素の量は、8.7質量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。一次粒子の径は、約200〜600nmである。投入された非常に微細なカーボンブラックは、球状凝集物中の一次粒子間の空洞の一部に存在している。
【0156】
実施例10
LiOH・HOとα−FeOOHとHPOとHPO(理論量、2時間攪拌、添加サッカロースと添加のカーボンブラック(3.4%)の内部熱分解で約6重量%の炭素が発生)からのLiFePO

2LiOH・HO + 2α−Fe3+OOH + 1.06HPO + 0.94HPO → 2LiFe2+5+
【0157】
5L−ガラス−反応器中に、3lの水を室温で攪拌下に投入する。22.59gのカーボンブラック(チムカルスーパーP Li、チムカルドイツランド社、D−40212 Dusseldorf、ドイツ)をこの水に添加する。その際、カーボンブラックは表面に浮く。次いで、150mlのHO2水溶液(30%、メルク社、D−64293 Darmstadt、ドイツ)を攪拌下で滴下する。その際、カーボンブラックは水中に分散する。得られる黒色のカーボンブラックの水分散液を、攪拌下で、外部加熱可能な10Lガラス反応器に入った2850ml室温の水に添加する。得られる混合物をN気流下(50NL/h)で60℃に加熱し、この温度で2時間維持する。攪拌下で、60℃としたこの混合物に、174.97gのLiOH・HO(57.49%LiOH、4.2モル−Li、ケメタル社、D−60487 Frankfurt、ドイツ)を添加する。得られる混合物に、366.20gのα−FeOOH(61.0%Fe、BET=14m/g、4.0モル−Fe;ZMAG−5102、キャセイピグメンツ(USA)社、4901 Evans Ave.、Valparaiso、IN 46383、USA)を添加する。添加したZMAG−5102型のα−FeOOHは、針状の形状を有し、透過型電子顕微鏡による平均の針の長さは1μmで、平均の針径が100〜200nmである。得られる懸濁液を90℃に加熱する。次いで、167.34gのHPO(98%、2モル−P、アクロス・オルガニクス、B−2440 Geel、Belgium)を添加する。さらに20分間攪拌後、230.58gのHPO(85%、2モル−P、リーデルデハーン社、D−30926 Seelze)と89.62gサッカロース(C121122、0.26mol、リーデルデハーン社、D−30962ドイツ)を添加し、攪拌下で溶解した。得られる懸濁液を、N気流を維持したまま、さらに二時間90℃で攪拌する。得られる水性懸濁液を、窒素気流下で16時間90℃で攪拌する。次いで窒素下にて、この黄色の懸濁液を、噴霧乾燥装置(マイナーMM型、Niro、Danmark)(入り口温度=330℃、出口温度=106℃)中で噴霧乾燥する。
【0158】
次いで、得られる50gの噴霧粉末を、連続的に窒素気流下(15NL/h)で試験室回転炉(BASF)中で回転(7rpm)している1Lの石英ガラス容器に添加し、1時間かけて採取温度Tまで加熱し、この温度Tで1時間維持し、次いでN気流下で室温まで冷却する。
【0159】
実施例10.1
最終温度Tが700℃では、BET表面積が33.9m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、Li1.05Fe(PO1.00である。炭素の量は、6.1質量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。投入された非常に微細なカーボンブラックは、球状凝集物中の一次粒子間の空洞の一部に存在している。
【0160】
実施例10.2
最終温度Tが750℃では、BET表面積が15.1m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.00である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、Li1.04Fe(PO0.99である。炭素の量は、5.7質量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。投入された非常に微細なカーボンブラックは、球状凝集物中の一次粒子間の空洞の一部に存在している。
【0161】
実施例11
LiOH・HOとα−FeOOHとHPOとHPO(理論量、2時間攪拌、添加サッカロースと添加カーボンブラック(5.2%)の内部熱分解で約7.5重量%の炭素が発生)からのLiFePO

2LiOH・HO + 2Fe3+OOH +HPO +HPO = 2LiFe2+5+ + 5H
【0162】
実施例10に準じて反応を行う。22.59gのカーボンブラックと89.62gのサッカロースに代えて、35.13gのカーボンブラックと94.21gのサッカロースを添加する。
【0163】
実施例11.1
最終温度Tが750℃では、BET表面積が23.9m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の単一相結晶構造を示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、Li1.05Fe(PO0.99である。炭素の量は、7.7質量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。投入された非常に微細なカーボンブラックは、球状凝集物中の一次粒子間の空洞の一部に存在している。
【0164】
実施例11.2
最終温度Tが750℃では、BET表面積が21.9m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、Li1.06Fe(PO1.00である。炭素の量は、7.4質量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある(図5)。投入された非常に微細なカーボンブラックは、球状凝集物中の一次粒子間の空洞の一部に存在している。
【0165】
実施例12
LiOH・HOとα−FeOOHとHPOとHPO(理論量、2時間攪拌、添加サッカロースと添加カーボンブラック(6.9%)の内部熱分解で約12重量%の炭素が発生)からのLiFePO

2LiOH・HO + 2Fe3+OOH +HPO +HPO = 2LiFe2+5+ + 5H
【0166】
実施例10に準じて反応を行う。22.59gのカーボンブラックと89.62gのサッカロースに代えて、49.23gのカーボンブラックと180.33gのサッカロースを添加する。
【0167】
実施例12.1
最終温度Tが750℃では、BET表面積が41.3m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、Li1.04Fe(PO0.99である。炭素の量は、12.4質量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。投入された非常に微細なカーボンブラックは、球状凝集物中の一次粒子間の空洞の一部に存在している。
【0168】
実施例12.2
最終温度Tが750℃では、BET表面積が35.0m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、Li1.05Fe(PO1.00である。炭素の量は、12.2質量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。投入された非常に微細なカーボンブラックは、球状凝集物中の一次粒子間の空洞の一部に存在している。
【0169】
実施例13
LiOH・HOとα−FeOOHとHPOとHPO(理論量、2時間攪拌、添加サッカロースと添加カーボンブラック(9.7%)の内部熱分解で約15重量%の炭素が発生)からのLiFePO

2LiOH・HO + 2Fe3+OOH +HPO +HPO = 2LiFe2+5+ + 5H
【0170】
5L−ガラス−反応器中に、3lの水を室温で攪拌下に投入する。70.27gのカーボンブラック(チムカルスーパーP Li、チムカルドイツランド社、D−40212 Dusseldorf、ドイツ)をこの水に添加する。その際、カーボンブラックは表面に浮く。次いで、150mlのHO2水溶液(30%、メルク社、D−64293 Darmstadt、ドイツ)を攪拌下で滴下する。その際、カーボンブラックは水中に分散する。得られる黒色のカーボンブラックの水分散液を、攪拌下で、外部加熱可能な10Lガラス反応器に入った2750ml室温の水に添加する。得られる混合物をN気流下(50NL/h)で60℃に加熱し、この温度で2時間維持する。攪拌下で、60℃としたこの混合物に、174.97gのLiOH・HO(57.49%LiOH、4.2モル−Li、ケメタル社、D−60487 Frankfurt、ドイツ)を添加する。得られる混合物に、366.20gのα−FeOOH(61.0%Fe、BET=14m/g、4.0モル−Fe;ZMAG−5102、キャセイピグメンツ(USA)社、4901 Evans Ave.、Valparaiso、IN 46383、USA)を添加する。添加したZMAG−5102型のα−FeOOHは、針状の形状を有し、透過型電子顕微鏡による平均の針の長さは1μmで、平均の針径が100〜200nmである。得られる懸濁液を90℃に加熱する。次いで、167.34gのHPO(98%、2モル−P、アクロス・オルガニクス、B−2440 Geel、Belgium)を添加する。さらに20分間攪拌後、230.58gのHPO(85%、2モル−P、リーデルデハーン社、D−30926 Seelze)と185.85gのサッカロース(C121122、0.55mol、リーデルデハーン社、D−30962ドイツ)を添加し、攪拌下に溶解する。得られる懸濁液を、N気流を維持したまま、さらに二時間90℃で攪拌する。得られる水性懸濁液を、窒素気流下で16時間90℃で攪拌する。この黄色の懸濁液を、次いで窒素下にて、噴霧乾燥装置(マイナーMM型、Fa Niro、Danmark)(入り口温度=330℃、出口温度=106℃)中で噴霧乾燥する。
次いで、得られる50gの噴霧粉末を、連続的に窒素気流下(15NL/h)で試験室回転炉(BASF)中で回転(7rpm)している1Lの石英ガラス容器に添加し、1時間かけて採取温度Tまで加熱し、この温度Tで1時間維持し、次いでN気流下で室温まで冷却する。
【0171】
実施例13.1
最終温度Tが750℃では、BET表面積が42.9m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、Li1.06Fe(PO1.00である。炭素の量は、14.7質量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。投入された非常に微細なカーボンブラックは、球状凝集物中の一次粒子間の空洞の一部に存在している。
【0172】
実施例13.2
最終温度Tが750℃では、BET表面積が39.0m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、Li1.06Fe(PO0.99である。炭素の量は、14.6質量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。投入された非常に微細なカーボンブラックは、球状凝集物中の一次粒子間の空洞の一部に存在している。
【0173】
実施例14
LiOH・HOとα−FeOOHとHPOとHPO(理論量、2時間攪拌、添加カーボンブラック(SPLi+KS06+EN350 = 3/2/1)で約10重量%の炭素が発生)からLiFePO

2LiOH・HO + 2Fe3+OOH +HPO +HPO = 2LiFe2+5+ + 5H
【0174】
5L−ガラス−反応器中に、3lの水を室温で攪拌下に投入する。37.48gのカーボンブラック(チムカルスーパーP Li、チムカルドイツランド社、D−40212 Dusseldorf、ドイツ)と、12.5gのカーボンブラック(エンサゴ350PWD、チムカルドイツランド社、D−40212 Dusseldorf、ドイツ)と、25.0gのグラファイト粉末(チムレックスKS6、チムカルドイツランド社、D−40212 Dusseldorf、ドイツ)とをこの水に添加する。その際、カーボンブラックは表面に浮く。次いで、300mlのHO2水溶液(30%、メルク社、D−64293 Darmstadt、ドイツ)を攪拌下で滴下する。その際、カーボンブラックは水中に分散する。得られる黒色のカーボンブラックの水分散液を、攪拌下で、外部加熱可能な10Lガラス反応器に入った2700ml室温の水に添加する。得られる混合物をN気流下(50NL/h)で60℃に加熱し、この温度で2時間維持する。攪拌下で、60℃としたこの混合物に、174.97gのLiOH・HO(57.49%LiOH、4.2モル−Li、ケメタル社、D−60487 Frankfurt、ドイツ)を添加する。得られる混合物に、366.20gのα−FeOOH(61.0%Fe、BET=14m/g、4.0モル−Fe;ZMAG−5102、キャセイピグメンツ(USA)社、4901 Evans Ave.、Valparaiso、IN 46383、USA)を添加する。添加したZMAG−5102型のα−FeOOHは、針状の形状を有し、透過型電子顕微鏡による平均の針の長さは1μmで、平均の針径が100〜200nmである。得られる懸濁液を90℃に加熱する。次いで、167.34gのHPO(98%、2モル−P、アクロス・オルガニクス、B−2440 Geel、Belgium)を添加する。さらに20分間攪拌後、230.58gのHPO(85%、2モル−P、リーデルデハーン社、D−30926 Seelze)を添加する。得られる懸濁液を、N気流を維持したまま、90℃で二時間攪拌する。得られる水性懸濁液を、窒素気流下で16時間90℃で攪拌する。この黄色の懸濁液を、次いで窒素下にて、噴霧乾燥装置(マイナーMM型、Niro、Danmark)(入り口温度=330℃、出口温度=106℃)中で噴霧乾燥する。
【0175】
次いで、得られる50gの噴霧粉末を、連続的に窒素気流下(15NL/h)で試験室回転炉(BASF)中で回転(7rpm)している1Lの石英ガラス容器に添加し、1時間かけて採取温度Tまで加熱し、この温度Tで1時間維持し、次いでN気流下で室温まで冷却する。
【0176】
実施例14.1
最終温度Tが500℃では、BET表面積が18.6m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。また、X線粉末回折パターンは、グラファイトの存在を示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.04である。得られるリン酸リチウム鉄の化学組成は、Li1.06Fe(PO1.00である。炭素の量は、10.4質量%である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。
【0177】
実施例15(例14に対する比較例)
LiOH・HOとα−FeOOHとHPO(理論量、2時間攪拌、添加のカーボンブラック(SPLi+KS06+EN350=3/2/1)から約10重量%の炭素が発生)からのLiFePO

2LiOH・HO + 2Fe3+OOH + 2HPO + 0.5C = 2LiFe2+5++ 5HO + 0.5CO
【0178】
5L−ガラス−反応器中に、3lの水を室温で攪拌下に投入する。37.48gのカーボンブラック(チムカルスーパーP Li、チムカルドイツランド社、D−40212 Dfjsseldorf、ドイツ)と、12.5gのカーボンブラック(エンサゴ350PWD、チムカルドイツランド社、D−40212 Dusseldorf、ドイツ)と、25.0gのグラファイト粉末(チムレックスKS6、チムカルドイツランド社、D−40212 Dusseldorf、ドイツ)とをこの水に添加する。その際、カーボンブラックは表面に浮く。次いで、300mlのHO2水溶液(30%、メルク社、D−64293 Darmstadt、ドイツ)を攪拌下で滴下する。その際、カーボンブラックは水中に分散する。得られる黒色のカーボンブラックの水分散液を、攪拌下で、外部加熱可能な10Lガラス反応器に入った2700ml室温の水に添加する。得られる混合物をN気流下(50NL/h)で60℃に加熱し、この温度で2時間維持する。攪拌下で、60℃としたこの混合物に、174.97gのLiOH・HO(57.49%LiOH、4.2モル−Li、ケメタル社、D−60487 Frankfurt、ドイツ)を添加する。得られる混合物に、366.20gのα−FeOOH(61.0%Fe、BET=14m/g、4.0モル−Fe;ZMAG−5102、キャセイピグメンツ(USA)社、4901 Evans Ave.、Valparaiso、IN 46383、USA)を添加する。添加したZMAG−5102型のα−FeOOHは、針状の形状を有し、透過型電子顕微鏡による平均の針の長さは1μmで、平均の針径が100〜200nmである。得られる懸濁液を90℃に加熱する。次いで、461.18gのHPO(85%、4モル−P、リーデルデハーン社、D−30926 Seelze)を添加する。得られる懸濁液を、N気流を維持したまま、さらに二時間90℃で攪拌する。得られる水性懸濁液を、窒素気流下で16時間90℃で攪拌する。この黄色の懸濁液を、次いで窒素下にて、噴霧乾燥装置(マイナーMM型、Fa Niro、Danmark)(入り口温度=330℃、出口温度=106℃)中で噴霧乾燥する。
【0179】
次いで、得られる50gの噴霧粉末を、連続的に窒素気流下(15NL/h)で試験室回転炉(BASF)中で回転(7rpm)している1Lの石英ガラス容器に添加し、1時間かけて採取温度Tまで加熱し、この温度Tで1時間維持し、次いでN気流下で室温まで冷却する。
【0180】
実施例15.1
最終温度Tが750℃では、BET表面積が25.4m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、単斜晶LiFe(PO[国際回折データセンター(ICDD)の粉末回折パターン00−040−1499]とα−Feの混合物を示す。また、X線粉末回折パターンは、グラファイトの存在を示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.90である。得られる粉末の化学組成は、Li1.06Fe(PO1.01である。炭素の量は、10.4質量%である。
【0181】
実施例16
LiOH・HOとα−FeOOHとHPO(理論量、16時間攪拌、HPO無添加)からのLiFePO

LiOH・HO + Fe3+OOH +HPO → LiFe2+5+
【0182】
外部加熱可能な10Lガラス反応器中に、N気流下(50NL/h)で、6Lの80℃の水を入れる。他の工程の間も、N気流置換を維持する。攪拌下で、174.97gのLiOH・HO(57.49%LiOH、4.2モル−Li、ケメタル社、D−60487 Frankfurt、ドイツ)を添加、溶解して、無色透明の溶液を得る。366.20gのM−FeOOH(61.0%Fe、BET=14m/g、4.0モル−Fe;ZMAG−5102、キャセイピグメンツ(USA)社、4901 Evans Ave.、Valparaiso、IN 46383、USA)を添加する。添加したZMAG−5102型のα−FeOOHは、針状の形状を有し、透過型電子顕微鏡による平均の針の長さは1μmで、平均の針径が100〜200nmである。この琥珀色の水性懸濁液に、1334.69のHPO(98%、2モル−P、アクロス・オルガニクス、B−2440 Geel、Belgium)を、3分間かけて添加する。得られる水性懸濁液を、窒素気流下で16時間90℃で攪拌する。この黄色の懸濁液を、次いで窒素下にて、噴霧乾燥装置(マイナーMM型、Niro、Danmark)(入り口温度=330℃、出口温度=106℃)中で噴霧乾燥する。
【0183】
次いで、得られる50gの噴霧粉末を、連続的に窒素気流下(15NL/h)で試験室回転炉(BASF)中で回転(7rpm)している1Lの石英ガラス容器に添加し、1時間かけて採取温度Tまで加熱し、この温度Tで1時間維持し、次いでN気流下で室温まで冷却する。
【0184】
実施例16.1
最終温度Tが400℃では、BET表面積が18.5m/gの粉末が得られ、X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。化学分析による組成物は、Li1.06Fe(PO1.01である。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。
【0185】
実施例16.2
最終温度Tが450℃では、BET表面積が21.2m/gの粉末が得られ、X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。化学分析による組成物は、Li1.05Fe(PO1.00である。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。
【0186】
実施例16.3
最終温度Tが500℃では、BET表面積が9.6m/gの粉末が得られ、X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。
【0187】
実施例16.4
最終温度Tが600℃では、BET表面積が6.8m/gの粉末が得られ、X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。化学分析による組成物は、Li1.06Fe(PO1.00である。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。
【0188】
実施例16.5
最終温度Tが700℃では、BET表面積が3.6m/gの粉末が得られ、X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。化学分析による組成物は、Li1.06Fe(PO1.01である。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。
【0189】
実施例16.6
最終温度Tが750℃では、BET表面積が1.6m/gの粉末が得られ、X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。化学分析による組成物は、Li1.05Fe(PO1.01である。実施例1.1のようにして求めたFeの酸化状態Feoxは、2.01である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。
【0190】
実施例17
LiOH・HOとn−FeOOHとHPOとHPO(理論量、60時間攪拌)からLiFePO

2LiOH・HO + 2Fe3+OOH +HPO +HPO = 2LiFe2+5+ + 5H
【0191】
外部加熱可能な10Lガラス反応器中に、N気流下(50NL/h)で、6Lの80℃の水を入れる。他の工程の間も、N気流置換を維持する。攪拌下で、174.97gのLiOH・HO(57.49%LiOH、4.2モル−Li、ケメタル社、D−60487 Frankfurt、ドイツ)を添加、溶解して、無色透明の溶液を得る。378.71gのγ−FeOOH(59.0%Fe、BET=77m/g、4.0モル−Fe;ZMAG−5100、キャセイピグメンツ(USA)社、4901 Evans Ave.、Valparaiso、IN 46383、USA)を添加する。添加したZMAG−5100型のγ−FeOOHは、針状の形状を有し、透過型電子顕微鏡による平均の針の長さは1μmで、平均の針径が50〜120nmである。この琥珀色の水性懸濁液に、167.34のHPO(98%、2モル−P、アクロス・オルガニクス、B−2440 Geel、Belgium)を、0.5分間かけて添加する。次いで、230.58gのHPO(85%、2モル−P、リーデルデハーン社、D−30926 Seelze)を添加する。得られる水性懸濁液を、窒素気流下で16時間90℃で攪拌する。この黄色の懸濁液を、次いで窒素下にて、噴霧乾燥装置(マイナーMM型、Niro、Danmark)(入り口温度=330℃、出口温度=106℃)中で噴霧乾燥する。
【0192】
次いで、得られる50gの噴霧粉末を、連続的に窒素気流下(15NL/h)で試験室回転炉(BASF)中で回転(7rpm)している1Lの石英ガラス容器に添加し、1時間かけて採取温度Tまで加熱し、この温度Tで1時間維持し、次いでN気流下で室温まで冷却する。
【0193】
実施例17.1
最終温度Tが300℃では、BET表面積が14.5m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。化学分析による組成物は、Li1.07Fe(PO1.01である。実施例1.1のようにして求めた酸化状態Feoxは、2.08である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。
【0194】
実施例17.2
最終温度Tが350℃では、BET表面積が11.8m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。化学分析による組成物は、Li1.05Fe(PO1.01である。実施例1.1のようにして求めた酸化状態Feoxは、2.03である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり、これらの一次粒子間には空洞がある。
【0195】
実施例17.3
最終温度Tが450℃では、BET表面積が7.0m/gの粉末が得られる。X線粉末回折パターンは、斜方晶LiFePO(トリフィライト)の結晶構造の単一相を示す。実施例1.1のようにして求めた酸化状態Feoxは、2.02である。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は球状の形状を持ち、その中間粒径は約30μmである。単一の球は、複数のLiFePO一次粒子からなる。
【0196】
実施例17.4
最終温度Tが500℃では、BET表面積が5.9m/gで、化学分析組成がLi1.05Fe(PO1.01で、Feの酸化状態Feoxが2.01であるLiFePOの結晶構造の単一相が得られる。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は中間粒径は約30μmである球状の形状を持つ。
【0197】
実施例17.5
最終温度Tが500℃では、BET表面積が5.9m/gで、化学分析組成がLi1.05Fe(PO1.00で、Feの酸化状態Feoxが2.01であるLiFePOの結晶構造の単一相が得られる。走査型電子顕微鏡によると、この粉末は中間粒径は約30μmである球状の形状を持つ。一つの球は複数のLiFePO一次粒子からなり(これらの粒子の中間粒子径は約600〜1000nmである)、これらの一次粒子間には空洞がある。
【0198】
実施例17.6
最終温度Tが700℃では、BET表面積が1.1m/gで、化学分析組成がLi1.05Fe(PO1.02で、Feの酸化状態Feoxが2.01であるLiFePOの結晶構造の単一相が得られる。走査型電子顕微鏡による一次粒子径は0.5〜2μmである。
【0199】
実施例17.7
最終温度Tが750℃では、BET表面積が0.5m/gで、化学分析組成がLi1.04Fe(PO1.00で、Feの酸化状態Feoxが2.01であるLiFePOの結晶構造の単一相が得られる。
【0200】
実施例18
本発明のカソード材料の電気化学的特性評価
750℃で得られたLiFePOと湿式合成中にLiFePO中に導入され750℃で焼成された炭素とを含む実施例12.2のカソード材料(炭素含量=約12.2%=6.9%SPLi+サッカロース由来5.3%C)を、カソードに加工し、電気化学的に評価した。
【0201】
カソードを製造するに当たり、90質量%のカソード材料と10質量%のバインダーPVdF−HFP(Kynar 2821、Arkema)と、適当な量の溶媒NMP(N−メチル−2−ピロリドン)とを強力な混合機(ウルトラタラックスT25ベーシック、IKAレーバテクニク、D−79219 Staufen、ドイツ)中で激しく混合する。得られる分散液を、閉鎖されたガラス容器内のロール機でロールして脱泡させる。脱泡した分散液を、アルミ箔上に、層厚が250μmで塗布する。真空乾燥キャビネット中80℃で1時間乾燥後の層厚は80μmである。この層状材料電極に、直径13mmの孔を開ける。電気化学的特性評価のために、これらの電極を連結して電気的なセルを形成する。これは、アルゴン(酸素含量と水含量はそれぞれ<1ppm)下でグローブボックス中で実施する。50μmの厚みのリチウム箔(シグマアルドリッチ社、CH−9571 Buchs SG、Switzerland)から、アノードを切り出す。厚みが1mmのガラス繊維不織布をセパレータとして使用する。電解質は、ジメチルカーボネートとエチレンカーボネートの混合物(1:1)で1mol/Lのヘキサフルオロリン酸リチウムLiPF6(フェロ社、Cleveland、USA)を含んでいる。
【0202】
測定装置中に、この電気セルを設け、以下の条件で運転する。
【0203】
充電は、最初の4サイクルを19mA/gとし、以降のサイクルは39mA/gとして、セル電圧が4Vとなるまで充電する。
【0204】
放電は、第一の4サイクルを19mA/gとし、以降の5サイクルは39mA/gとし、10番目のサイクルは77mA/とし、11番目のサイクルは55mA/gとし、12番目のサイクルは309mA/gとし13番目のサイクルは618mA/gとし、14番目のサイクルは1256mA/gとし、次の2サイクルは19mA/gとし、最後のサイクルは39mA/gとして、セル電圧が2.5Vとなるまで放電する。
【0205】
電気化学的特性評価の結果を次表に示す。
【0206】
【表1】

【0207】
表中の値はすべて、材料中の電気化学的な活性成分であるLiFePOの質量に関連するもので、導入炭素は考慮されていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
Lia-bbFe1-ccd-eex (I)、
[式中、Mと、M、M、a、b、c、d、eは:
:Na、K、Rb、及び/又はCs、
:Mn、Mg、Ca、Ti、Co、Ni、Cr、V、
:Si、S、
a:0.8〜1.9、
b:0〜0.3、
c:0〜0.9、
d:0.8〜1.9、
e:0〜0.5、
x:1.0〜8、(Li、MFe、M、P、Mの量と酸化状態により異なる)、但し、一般式(I)の化合物は無電荷である。]
で表される化合物の製造方法であって、
(A)少なくとも一種のリチウム含有化合物と、鉄の酸化状態が+3である少なくとも一種の鉄含有化合物と、存在するなら少なくとも一種のM含有化合物と、及び/又は存在するなら少なくとも一種のM含有化合物、及び/又は存在するならM含有化合物と、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される少なくとも一種の還元剤とを含む混合物を供給する工程、
(B)必要に応じて、工程(A)で供給される混合物を乾燥して、固体化合物を得る工程、及び
(C)工程(A)又は(B)から得られる固体化合物を300〜1000℃の温度で焼成する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
工程(A)で供給される前記混合物が実質的に水性である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(A)で供給される前記混合物が、さらに少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物を含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
上記少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される少なくとも一種の還元剤が、HPO、(NH)HPO、(NHHPO、HPO、(NH)HPO、(NHHPO、LiHPO、LiHPO、LiPO及びこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1〜3にいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(A)で添加される、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物が、HPO、(NH)HPO、(NHHPO、(NHPO、LiPO、LiHPO、LiHPO及びこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項2〜4にいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(B)の乾燥が噴霧乾燥で行われる請求項2〜5にいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の方法により得られる少なくとも一種の一般式(I)の化合物を含む球状粒子又は凝集物。
【請求項8】
請求項の1〜6のいずれか一項に記載の方法により製造された請求項1に規定される一般式(I)の化合物。
【請求項9】
請求項7に記載の球状粒子若しくは凝集物又は請求項8に記載の化合物を、リチウムイオン電池又は電気化学的セルのカソードの製造のために使用する方法。
【請求項10】
請求項7に記載の少なくとも一種の球状粒子若しくは凝集物又は請求項8に記載の少なくとも一種の化合物を含むリチウムイオン電池用カソード。
【請求項11】
上記の少なくとも一種の一般式(I)に記載の化合物と少なくとも一種の電気伝導性材料とを含む混合物の製造方法であって、
(D)少なくとも一種の電気伝導性材料又は少なくとも一種の電気伝導性材料の前駆体と、少なくとも一種のリチウム含有化合物と、少なくとも一種の鉄の酸化状態が+3である鉄含有化合物と、存在するなら少なくとも一種のM含有化合物と、及び/又は、存在するなら少なくとも一種のM含有化合物と、及び/又は存在するなら少なくとも一種のM含有化合物と、少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される少なくとも一種の還元剤とを含む混合物を供給する工程、
(E)必要に応じて、工程(D)で供給される混合物を乾燥して、固体化合物を得る工程、及び
(F)工程(E)で得られる固体化合物を300〜1000℃の温度で焼成する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
工程(D)で供給される混合物が、さらに少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物を含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記の少なくとも一個の酸化状態が+5であるリン原子を有する少なくとも一種の化合物に酸化される少なくとも一種の還元剤が、HPO、(NH)HPO、(NHHPO、HPO、(NH)HPO、(NHHPO、LiHPO、LiHPO、LiPO及びこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記電気伝導性材料が、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素ナノファイバー、炭素ナノチューブ、電気伝導性ポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項11〜13にいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法により製造される、少なくとも一種の請求項1に規定する一般式(I)に記載の化合物と少なくとも一種の電気伝導性材料とを含む混合物。
【請求項16】
請求項15に記載の混合物を含む球状粒子又は凝集物。
【請求項17】
請求項15に記載の混合物又は請求項16に記載の球状粒子若しくは凝集物を、リチウムイオン電池又は電気化学的セルのカソードの製造のために使用する方法。
【請求項18】
請求項15に記載の混合物又は請求項16に記載の球状粒子若しくは凝集物を含むリチウムイオン電池用のカソード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−517653(P2011−517653A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504453(P2011−504453)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054486
【国際公開番号】WO2009/127672
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】