説明

リチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法

【課題】リチウムイオン二次電池から、アルミニウム、銅などの有価物を簡単かつ効率的に回収することができるリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法の提供。
【解決手段】正極集電体としてのアルミニウムを有する正極と負極集電体としての銅を有する負極とを有するリチウムイオン二次電池を250℃〜550℃の温度で加熱して加熱物を得る加熱工程と、前記加熱物中の前記正極と前記負極とを選別する選別工程と、前記選別工程により選別された前記正極及び前記負極をそれぞれ破砕し、正極破砕物及び負極破砕物をそれぞれ得る破砕工程と、前記正極破砕物を篩分けして、前記アルミニウムを回収する第1の篩選別工程と、前記負極破砕物を篩分けして、前記銅を回収する第2の篩選別工程とを含むリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造過程で発生した不良品のリチウムイオン二次電池、並びに使用機器及び電池の寿命などに伴い廃棄されるリチウムイオン二次電池などから有価物を簡単に回収可能なリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、従来の鉛蓄電池、ニッカド二次電池などに比較して軽量、高容量、及び高起電力な二次電池であり、携帯電話、ノートパソコン等のモバイル機器に広く使用されており、自動車にも使用が拡大している。
【0003】
このようなリチウムイオン二次電池には、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケルなどの有価物が含まれている。
これまで、リサイクル利用の観点から、リチウムイオン二次電池からコバルト、ニッケルなどの希少有価物を回収することが積極的に行われている。
近年、リチウムイオン二次電池の利用が益々増加する中で、廃棄物低減の観点及び有価物のリサイクル率向上の観点から、リチウムイオン二次電池から希少有価物以外のアルミニウム、銅などの有価物も回収することが望まれている。また、有価物の再利用に必要なコストが非リサイクル品の有価物のコストを大幅に超えると、リサイクルを行う利点が低減してしまうため、リサイクルにおいては、簡単かつ効率的に有価物を回収することが望まれている。
【0004】
リチウムイオン二次電池からの有価物の回収に関して、例えば、使用済みリチウムイオン二次電池を焙焼し、破砕した後に篩分けして、コバルトと鉄とを分けて回収することが提案されている(特許文献1参照)。
しかし、この提案の技術は、アルミニウム、銅などを効率よく回収できるものではない。
【0005】
また、使用済みリチウムイオン二次電池を焙焼し、破砕し、磁選して磁性物と非磁性物に分別し、更に渦電流を発生させた非磁性物に磁石からの磁界を印加して、前記非磁性物を前記磁石から反撥させることにより、主としてアルミニウムからなる破砕粉と、主として銅からなる破砕粉とに分別する有価物回収方法が提案されている(特許文献2参照)。
しかし、この提案の技術は、磁性物と非磁性物とを選別する磁選装置、及びアルミニウムと銅とを選別する渦電流装置を用いるために、有価物の回収に必要な装置が大掛かりになるという問題がある。
【0006】
したがって、リチウムイオン二次電池から、アルミニウム、銅などの有価物を簡単かつ効率的に回収することができるリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法の提供が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06−346160号公報
【特許文献2】特開平11−242967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、リチウムイオン二次電池から、アルミニウム、銅などの有価物を簡単かつ効率的に回収することができるリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成すべく、鋭意検討を行った結果、特定の加熱処理後に正極と負極とを選別してから破砕した後に分級を行うことにより、アルミニウム、銅などの有価物を簡単かつ効率的に回収することができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 正極集電体としてのアルミニウムを有する正極と負極集電体としての銅を有する負極とを有するリチウムイオン二次電池を250℃〜550℃の温度で加熱して加熱物を得る加熱工程と、
前記加熱物中の前記正極と前記負極とを選別する選別工程と、
前記選別工程により選別された前記正極及び前記負極をそれぞれ破砕し、正極破砕物及び負極破砕物をそれぞれ得る破砕工程と、
前記正極破砕物を篩分けして、前記アルミニウムを回収する第1の篩選別工程と、
前記負極破砕物を篩分けして、前記銅を回収する第2の篩選別工程とを含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<2> 加熱工程における加熱温度が、300℃〜500℃である前記<1>に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<3> 第1の篩選別工程における篩の篩目が、1.18mm以上であり、第2の篩選別工程における篩の篩目が、0.6mm以上である前記<1>から<2>のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
<4> 第1の篩選別工程において、篩の篩上にアルミニウムを回収し、篩の篩下に正極活物質を回収し、第2の篩選別工程において、篩の篩上に銅を回収する前記<3>に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、リチウムイオン二次電池から、アルミニウム、銅などの有価物を簡単かつ効率的に回収することができるリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例1(加熱温度400℃)の回収物における粒径とアルミニウムの濃度との関係、及び回収物における粒径とアルミニウムの積算質量との関係を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例1(加熱温度400℃)の回収物における粒径と銅の濃度との関係、及び回収物における粒径と銅の積算質量との関係を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例2(加熱温度300℃)の回収物における粒径とアルミニウムの濃度との関係、及び回収物における粒径とアルミニウムの積算質量との関係を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例2(加熱温度300℃)の回収物における粒径と銅の濃度との関係、及び回収物における粒径と銅の積算質量との関係を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例3(加熱温度500℃)の回収物における粒径とアルミニウムの濃度との関係、及び回収物における粒径とアルミニウムの積算質量との関係を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例3(加熱温度500℃)の回収物における粒径と銅の濃度との関係、及び回収物における粒径と銅の積算質量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(リチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法)
本発明のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法は、加熱工程と、選別工程と、破砕工程と、第1の篩選別工程と、第2の篩選別工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0014】
<加熱工程>
前記加熱工程としては、リチウムイオン二次電池を、250℃〜550℃で加熱して加熱物を得る工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0015】
−リチウムイオン二次電池−
前記リチウムイオン二次電池としては、正極集電体としてのアルミニウムを有する正極と負極集電体としての銅を有する負極とを有するリチウムイオン二次電池であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リチウムイオン二次電池の製造過程で発生した不良品のリチウムイオン二次電池、使用機器の不良、使用機器の寿命などにより廃棄されるリチウムイオン二次電池、寿命により廃棄される使用済みのリチウムイオン二次電池などが挙げられる。
【0016】
前記リチウムイオン二次電池の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、正極と、負極と、セパレーターと、電解質と、前記正極、前記負極、前記セパレーター及び前記電解質を収容する金属製の電池ケース、アルミニウムラミネートフィルム等の容器とを備えたものなどが挙げられる。
【0017】
前記リチウムイオン二次電池の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラミネート型、円筒型、ボタン型、コイン型、角型、平型などが挙げられる。
【0018】
−−正極−−
前記正極としては、正極集電体としてのアルミニウムを有する正極であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウムと、前記アルミニウム上に付与された正極活物質を有する正極材とを備えた正極などが挙げられる。
前記正極の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状などが挙げられる。
【0019】
−−−正極集電体−−−
前記正極集電体の材質は、アルミニウムである。
前記正極集電体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状などが挙げられる。
前記正極集電体の大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0020】
−−−正極材−−−
前記正極材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、希少有価物を含有する正極活物質を少なくとも含み、必要により導電剤と、結着樹脂とを含む正極材などが挙げられる。
前記希少有価物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、マンガン、コバルト、及びニッケルの少なくともいずれかであることが好ましい。
前記正極活物質としては、例えば、マンガン酸リチウム(LiMn)、コバルト酸リチウム(LiCoO)、コバルトニッケル酸リチウム(LiCo1/2Ni1/2)、LiNiCoMnなどが挙げられる。
前記導電剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、グラファイト、カーボンファイバー、金属炭化物などが挙げられる。
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フッ化ビニリデン、四フッ化エチレン、アクリロニトリル、エチレンオキシド等の単独重合体又は共重合体、スチレン−ブタジエンゴムなどが挙げられる。
【0021】
−−負極−−
前記負極としては、負極集電体としての銅を有する負極であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銅と、前記銅上に付与された負極材とを備えた負極などが挙げられる。
前記負極の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状などが挙げられる。
【0022】
−−−負極集電体−−−
前記負極集電体の材質は、銅である。
前記負極集電体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平板状などが挙げられる。
前記負極集電体の大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0023】
−−−負極材−−−
前記負極材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グラファイト、ハードカーボン等の炭素材、チタネイトなどが挙げられる。
【0024】
−加熱−
前記加熱の温度は、250℃〜550℃であり、300℃〜500℃が好ましく、350℃〜450℃がより好ましい。
前記加熱により、リチウムイオン二次電池中の電解質に用いられている有機溶剤が除去される。また、前記加熱は、後述の工程における前記正極集電体と前記正極活物質との分離(前記正極集電体からの前記正極活物質の剥離)を容易にする。前記負極集電体と前記負極材との分離(前記負極集電体からの前記負極材の剥離)を容易にする。
前記加熱の温度が、250℃未満であると、有機溶剤の除去が十分ではなく、有機溶剤の粘着性により、後述の工程において、前記正極集電体と前記正極活物質との分離(前記正極集電体からの前記正極活物質の剥離)が困難になる。また、同様に前記負極集電体と前記負極材との分離(前記負極集電体からの前記負極材の剥離)が困難になる。
前記加熱の温度が、550℃を超えると、アルミニウム及び銅の少なくとも一部が酸化されて脆い酸化アルミニウム及び酸化銅になる。そのため、加熱工程の際、後述の選別工程、及び破砕工程においてアルミニウム及び銅が粉々になり、他の物質(例えば、正極活物質、負極材など)との選別が困難になる。その結果、アルミニウム及び銅の回収率が低下する。
前記加熱の温度が、前記より好ましい範囲内であると、臭気による作業性の低下がなく、前記正極集電体と前記正極活物質との分離(前記正極集電体からの前記正極活物質の剥離)、及び前記負極集電体と前記負極材との分離(前記負極集電体からの前記負極材の剥離)が容易になるとともに、アルミニウム及び銅を良好な回収率で回収できる点で有利である。
【0025】
ここで、加熱温度とは、加熱時のリチウムイオン二次電池周辺の気体の温度をいい、例えば、加熱時の加熱炉内においてリチウムイオン二次電池が置かれた付近の気体の温度をいう。
【0026】
前記加熱の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5時間〜6時間が好ましく、0.5時間〜2時間がより好ましい。
【0027】
前記加熱の際には、通常、前記リチウムイオン二次電池に備えられている安全弁が開く(作動する)。そうすることにより、リチウムイオン二次電池の内圧が上昇しても破裂することなく、加熱し、かつ有機溶剤を除去できる。なお、有機溶剤は、100%除去される必要はない。
【0028】
前記加熱は、炉を用いて行うことが好ましい。前記炉としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロータリーキルン炉、流動床炉、トンネル炉、マッフル等のバッチ式炉、キュウポラ炉、ストーカー炉などが挙げられる。本発明においては、大気雰囲気下でも加熱することができるので、例えば、ロータリーキルン炉等の普通に用いられている炉を使用することができ、炉の選択幅が広くなる。
【0029】
<選別工程>
前記選別工程としては、前記加熱工程で得られた前記加熱物中の前記正極と前記負極とを選別する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、手作業により選別する方法などが挙げられる。
【0030】
前記加熱物中の前記正極と前記負極とは、目視でも容易に判別できる。例えば、前記正極の一部はアルミニウムが露出しており、その部分はアルミニウムの金属色を有している。一方、前記負極の一部は銅が露出しており、その部分は銅の金属色を有している。そのため、前記正極と前記負極とは、目視でも容易に判別できる。
また、前記加熱工程後、アルミニウム及び銅は、粉々になっておらず、その形状(例えば、平板状)を維持しているため、手作業でも容易に前記正極と前記負極を選別できる。
【0031】
手作業による選別方法としては、例えば、ラミネート型リチウムイオン二次電池の場合、リチウムイオン二次電池を加熱して得られた加熱物のアルミニウムラミネートフィルム(通常、袋状で4角形)の3辺、又は4辺を裁断し、内容物である正極、セパレーター、及び負極を取り出し、目視により正極と負極とを選別する方法などが挙げられる。
ラミネート型リチウムイオン二次電池は、通常、正極、セパレーター、及び負極を交互に積層し、正極及び負極それぞれの電極をタブといわれる金属端子に接続し、アルミニウムラミネートフィルムで構成した容器の中に入れ、電解質を注入した後にシールした構造となっている。
そのため、ラミネート型リチウムイオン二次電池の容器であるアルミニウムラミネートフィルムの3辺、又は4辺を裁断することで、簡単、かつ早急に内容物である正極、セパレーター、及び負極を取り出すことができ、効率的に選別工程を行うことができる。
ラミネート型リチウムイオン二次電池を積層してアルミニウムラミネートフィルムの3辺、又は4辺を裁断すれば、更に効率的に選別工程を行うことができる。
【0032】
前記選別工程は、前記加熱工程において前記正極と前記負極とが破砕されていないため、渦電流装置のような大掛かりな装置を必要とせず、簡単に前記正極と前記負極とを選別できる。
【0033】
<破砕工程>
前記破砕工程としては、前記選別工程により選別された前記正極及び前記負極をそれぞれ破砕し、正極破砕物及び負極破砕物をそれぞれ得る工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、破砕機を用いる方法などが挙げられる。
【0034】
−破砕−
前記破砕としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、打撃による破砕などが挙げられる。
前記打撃を行う方法としては、回転する打撃子(ビーター)により、前記正極又は前記負極を叩く方法が挙げられ、例えば、ハンマークラッシャーなどにより行うことができる。また、セラミックなどのボールにより前記正極又は前記負極を叩く方法が挙げられ、ボールミルなどにより行うことができる。
【0035】
前記正極を粉砕すると、前記正極活物質は細かく破砕され、一方、前記正極集電体であるアルミニウムはほとんど破砕されない。そのため、破砕により得られる正極破砕物中のアルミニウムと前記正極活物質とは、後述する第1の篩選別工程により、高度に選別される。
【0036】
前記負極を粉砕すると、炭素材などの前記負極材は細かく破砕され、一方、前記負極集電体である銅はほとんど破砕されない。そのため、破砕により得られる負極破砕物中の銅と前記負極材とは、後述する第2の篩選別工程により、高度に選別される。
【0037】
<第1の篩選別工程>
前記第1の篩選別工程としては、前記正極破砕物を篩分けして、前記アルミニウムを回収する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0038】
−篩分け−
前記篩分けとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、振動篩、多段式振動篩、サイクロン、JIS Z8801の標準篩などを用いて行うことができる。
前記篩分けにより、前記アルミニウムとその他の物質(例えば、前記正極活物質)とを分離して回収できる。
【0039】
篩の篩目としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、アルミニウムの回収率及び回収物におけるアルミニウムの含有割合に優れる点から、1.18mm以上が好ましい。
【0040】
前記篩分けにおいては、通常、前記篩の篩上に前記アルミニウムを回収する。また、前記正極活物質を回収する場合には、前記篩の篩下に前記正極活物質を回収することができる。
【0041】
前記篩分けとしては、乾式であってもよいし、湿式であってもよい。
【0042】
<第2の篩選別工程>
前記第2の篩選別工程としては、前記負極破砕物を篩分けして、前記銅を回収する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0043】
−篩分け−
前記篩分けとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、振動篩、多段式振動篩、サイクロン、JIS Z8801の標準篩などを用いて行うことができる。
前記篩分けにより、前記銅とその他の物質(例えば、前記炭素材などの前記負極材)とを分離して回収できる。
【0044】
篩の篩目としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、銅の回収率及び回収物における銅の含有割合に優れる点から、0.6mm以上が好ましい。また、純度がより優れる点からは、1.18mm以上がより好ましい。
【0045】
前記篩分けにおいては、通常、前記篩の篩上に前記銅を回収する。また、前記炭素材などの前記負極材を回収する場合には、前記篩の篩下に前記炭素材などの前記負極材を回収することができる。
【0046】
前記篩分けとしては、乾式であってもよいし、湿式であってもよい。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
<有価物の回収>
使用済みのラミネート型リチウムイオン二次電池を用いた。
このリチウムイオン二次電池における正極は、箔状の正極集電体としてアルミニウム箔を用い、正極集電体に正極活物質(LiNiCoMn)が塗布された正極である。負極は、箔状の負極集電体として銅箔を用い、該負極集電体に炭素材が塗布された負極である。容器は、アルミニウムラミネートフィルムである。
【0049】
−加熱工程−
ボックス炉(光洋サーモシステム社製)にリチウムイオン二次電池を入れ、昇温速度10℃/分間で400℃(炉内温度)まで昇温した。加熱温度である400℃(炉内温度)に到達後、1時間加熱した。炉内雰囲気は空気雰囲気とした。
【0050】
−選別工程−
前記加熱工程で得られた加熱物について、アルミニウムラミネートフィルムの4辺を裁断した後、内容物を取り出し、目視で見分け、手作業により正極と負極とを選別した。なお、正極の一部はアルミニウムの金属色をしており、負極の一部は銅の金属色をしていることから、正極及び負極を簡単に見分けることができ、容易に選別できた。
また、リチウムイオン二次電池中の電解質の揮発成分は、加熱工程においてほとんど除去されていた。そのため、選別工程の際に電解質による臭気はほとんどなく、作業に支障をきたさなかった。
【0051】
−破砕工程−
前記選別工程により選別された正極及び負極をそれぞれ破砕した。破砕には、ハンマークラッシャー(HC−20、槇野産業株式会社製)を用い、50Hz(約2,500rpm、周速46m/s)で1秒間破砕し、正極破砕物、及び負極破砕物をそれぞれ得た。
【0052】
−篩選別工程−
−−第1の篩選別工程−−
破砕後の正極破砕物を、篩目が0.075mm、0.15mm、0.3mm、0.6mm、1.18mm、2.0mmの各篩をこの順に重ねた多段式篩(6段)を用いて篩選別した。
【0053】
−−第2の篩選別工程−−
破砕後の負極破砕物を、篩目が0.075mm、0.15mm、0.3mm、0.6mm、1.18mm、2.0mmの各篩をこの順に重ねた多段式篩(6段)を用いて篩選別した。
【0054】
篩選別後の各篩上及び篩下の回収物について、各種金属の濃度を求めた。また、それら回収物について、粒径の細かい方からの質量積算値を求めた。
第1の篩選別工程の結果を表1及び図1に示す。
第2の篩選別工程の結果を表2及び図2に示す。
なお、金属の濃度については、ICP発光分光分析(Perkin Elmer社製、Optima3300XL)により求めた。
【0055】
粒径は、篩目を基準として算出した。即ち、篩目が0.075mmの篩を通過した回収物については、粒径を「0.075mm以下」(なお、図及び表においては、「〜0.075」と表記する。)とした。篩目が1.18mmmの篩を通過し、かつ篩目が0.6mmの篩上に残った回収物については、粒度を「0.6mmを超え1.18mm以下」(なお、図及び表においては、「1.18/0.6」と表記する。)とした。
【0056】
【表1】

【0057】
表1及び図1に示すように、正極破砕物の篩分けにより、アルミニウムを簡易かつ効率良く回収することができた。特に、篩目が1.18mmの篩の篩上の回収物は、アルミニウムの回収率が高い(回収率78.42質量%)上にアルミニウムの含有割合(純度)が優れていた。なお、アルミニウムの回収率とは、リチウムイオン二次電池中の正極のアルミニウム量に対する回収したアルミニウム量を表す。
また、篩下(篩目が1.18mmの篩の篩下)には、正極活物質(LiNiCoMn)中のマンガンが多く含まれていることから、篩下に正極活物質が回収できていることが確認できた。
【0058】
【表2】

【0059】
表2及び図2に示すように、負極破砕物の篩分けにより、銅を簡易かつ効率良く回収することができた。特に、篩目が0.6mmの篩の篩上の回収物は、銅の回収率が高い(回収率97.87質量%)上に銅の含有割合(純度)が優れていた。なお、銅の回収率とは、リチウムイオン二次電池中の負極の銅量に対する回収した銅量を表す。
【0060】
(実施例2)
実施例1において、加熱温度を、300℃に変えた以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム及び銅の回収を行った。
【0061】
篩選別後の各篩上及び篩下の回収物について、各種金属の濃度を求めた。また、それら回収物について、粒径の細かい方からの質量積算値を求めた。
第1の篩選別工程の結果を表3及び図3に示す。
第2の篩選別工程の結果を表4及び図4に示す。
【0062】
【表3】

【0063】
表3及び図3に示すように、正極破砕物の篩分けにより、アルミニウムを簡易かつ効率良く回収することができた。特に、篩目が1.18mmの篩の篩上の回収物は、アルミニウムの回収率が高かった(回収率81.51質量%)。なお、アルミニウムの回収率とは、リチウムイオン二次電池中の正極のアルミニウム量に対する回収したアルミニウム量を表す。しかし、篩目が1.18mmの篩の篩上の回収物におけるアルミニウムの純度は、400℃で加熱したときほど高くはなかった。
また、篩下(篩目が1.18mmの篩の篩下)には、正極活物質(LiNiCoMn)中のマンガンが多く含まれていることから、篩下に正極活物質が回収できていることが確認できた。
【0064】
【表4】

【0065】
表4及び図4に示すように、負極破砕物の篩分けにより、銅を簡易かつ効率良く回収することができた。特に、篩目が0.6mmの篩の篩上の回収物は、銅の回収率が高かった(回収率96.24質量%)。なお、銅の回収率とは、リチウムイオン二次電池中の負極の銅量に対する回収した銅量を表す。しかし、篩目が0.6mmの篩の篩上の回収物における銅の純度は、400℃で加熱したときほど高くはなかった。
【0066】
(実施例3)
実施例1において、加熱温度を、500℃に変えた以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム及び銅の回収を行った。
【0067】
篩選別後の各篩上及び篩下の回収物について、各種金属の濃度を求めた。また、それら回収物について、粒径の細かい方からの質量積算値を求めた。
第1の篩選別工程の結果を表5及び図5に示す。
第2の篩選別工程の結果を表6及び図6に示す。
【0068】
【表5】

【0069】
表5及び図5に示すように、正極破砕物の篩分けにより、アルミニウムを簡易かつ効率良く回収することができた。特に、篩目が1.18mmの篩の篩上の回収物は、アルミニウムの回収率が高かった(回収率86.54質量%)。なお、アルミニウムの回収率とは、リチウムイオン二次電池中の正極のアルミニウム量に対する回収したアルミニウム量を表す。しかし、篩目が1.18mmの篩の篩上の回収物におけるアルミニウムの純度は、400℃で加熱したときほど高くはなかった。
また、篩下(篩目が1.18mmの篩の篩下)には、正極活物質(LiNiCoMn)中のマンガンが多く含まれていることから、篩下に正極活物質が回収できていることが確認できた。
【0070】
【表6】

【0071】
表6及び図6に示すように、負極破砕物の篩分けにより、銅を簡易かつ効率良く回収することができた。篩目が0.6mmの篩の篩上の回収物は、銅の回収率が高い(81.98質量%)ものの、400℃で加熱したときほどではなかった。なお、銅の回収率とは、リチウムイオン二次電池中の負極の銅量に対する回収した銅量を表す。
【0072】
(比較例1)
実施例1において、加熱温度を、200℃に変えて加熱工程を行った。前記加熱工程で得られた加熱物について、アルミニウムラミネートフィルムの4辺を裁断したところ、電解質の粘着性により、正極と負極との分離が上手くできず選別工程を行うことができなかった。また、正極集電体と正極活物質との分離、負極集電体と負極材との分離も困難であった。
【0073】
(比較例2)
実施例1において、加熱温度を、600℃に変えて加熱工程を行った。前記加熱工程で得られた加熱物は、容器であるアルミニウムラミネートフィルム、正極集電体であるアルミニウム箔、負極集電体である銅箔が、酸化により脆化しており、粉々になっていた。
そのため、正極及び負極を選別することができず、また篩による選別もできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法は、リチウムイオン二次電池から、アルミニウム、銅などの有価物を簡単かつ効率的に回収することができることから、使用済みのリチウムイオン二次電池から有価物を回収する方法に好適に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体としてのアルミニウムを有する正極と負極集電体としての銅を有する負極とを有するリチウムイオン二次電池を250℃〜550℃の温度で加熱して加熱物を得る加熱工程と、
前記加熱物中の前記正極と前記負極とを選別する選別工程と、
前記選別工程により選別された前記正極及び前記負極をそれぞれ破砕し、正極破砕物及び負極破砕物をそれぞれ得る破砕工程と、
前記正極破砕物を篩分けして、前記アルミニウムを回収する第1の篩選別工程と、
前記負極破砕物を篩分けして、前記銅を回収する第2の篩選別工程とを含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
【請求項2】
加熱工程における加熱温度が、300℃〜500℃である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
【請求項3】
第1の篩選別工程における篩の篩目が、1.18mm以上であり、第2の篩選別工程における篩の篩目が、0.6mm以上である請求項1から2のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。
【請求項4】
第1の篩選別工程において、篩の篩上にアルミニウムを回収し、篩の篩下に正極活物質を回収し、第2の篩選別工程において、篩の篩上に銅を回収する請求項3に記載のリチウムイオン二次電池からの有価物の回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−80595(P2013−80595A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219347(P2011−219347)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(506347517)DOWAエコシステム株式会社 (83)
【Fターム(参考)】