リチウムイオン二次電池の製造方法
【課題】剥離現象の異なるスリット工程での剥離現象、捲回工程での剥離現象を適確に評価する評価法、及びその評価法を用いたリチウムイオン二次電池の製造方法を提供すること。
【解決手段】箔12の表面に電極合剤11が塗工された幅広の電極基材をスリットするスリット工程と、スリットされた電極スリット材を捲回する捲回工程を有するリチウムイオン二次電池の製造方法において、SAICAS法によって測定された膜厚方向における剥離強度に基づいて、スリット工程又は捲回工程における剥離の良否を判定する判定閾値を設定すること。
【解決手段】箔12の表面に電極合剤11が塗工された幅広の電極基材をスリットするスリット工程と、スリットされた電極スリット材を捲回する捲回工程を有するリチウムイオン二次電池の製造方法において、SAICAS法によって測定された膜厚方向における剥離強度に基づいて、スリット工程又は捲回工程における剥離の良否を判定する判定閾値を設定すること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に電極合剤が塗工された幅広の電極基材をスリットするスリット工程と、スリットされた電極スリット材を捲回する捲回工程を有するリチウムイオン二次電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、90度剥離強度試験により、リチウムイオン二次電池電極の密着性評価を行うことが記載されている。
特許文献2には、アルミ合金箔と正極活物質の密着性評価試験として、SAICAS試験を用いることが記載されている。
一方、電極合剤を箔に塗工するときに、バインダと活物質とを混練させたペーストを塗工する1層塗工と、バインダ層と活物質層を2層に連続的に塗工する2層塗工が行われている。2層塗工を行う目的は、バインダが電極合剤の表面近傍に偏在しないようにするためである。バインダが電極合剤の表面近傍に偏在すると、リチウムイオンの進入を妨げるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2011/074439号
【特許文献2】特開2011-165637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2の技術には、次のような問題があった。
(1)例えば、リチウム二次電池に使用される箔に電極合剤が塗工された電極基材の剥離強度を、90度剥離強度試験で測定した結果を図9に示す。横軸に、電極水準を示し、縦軸に90度剥離強度(単位N/m)を示す。電極水準としては、電極合剤を箔上に1層塗工して高速で(比較的短い時間で)乾燥させた1層高速と、1層塗工して低速で(比較的長い時間をかけて)乾燥させた1層低速と、1層塗工して自然状態で乾燥させた1層自然と、2層塗工して高速(比較的短い時間で)で乾燥させた2層高速と、2層塗工して自然状態で乾燥させた2層自然の5タイプある。
1層高速では、90度剥離強度は、0.05N/mであり、1層低速では、0.55N/mであり、1層自然では、1.9N/mであり、2層高速では、1.35N/mであり、2層自然では、0.8N/mである。
【0005】
一方、スリット工程の後で、スリット部分を顕微鏡写真で検査したところ、1層高速、1層低速、及び1層自然では、箔12と電極合剤11の界面付近で、箔12からの電極合剤11の剥離が発生していることが確認された。そして、2層高速と2層自然では、箔12からの電極合剤11の剥離が発生していないことが確認された。1層塗工又は2層塗工された電極基材に対しては、90度剥離強度と、箔12からの電極合剤11の剥離とは、相関関係を持たないことが確認された。
したがって、90度剥離強度試験では、スリット工程における箔12と電極合剤11の剥離の発生を評価する基準とならない問題があった。
【0006】
次に、その理由を説明する。図10に、剥離発生箇所を示すために、剥離後の電極残存割合データを示す。
横軸に、電極水準を示し、縦軸に電極残存割合を示す。電極水準としては、1層高速、1層自然、2層高速と、及び2層自然の4タイプである。電極残存割合とは、図11に示すように、固定した箔12に密着した電極合剤11の先端部に所定の力Fをかけた電極合剤11を箔12から引き剥がしたときに、箔12上に残存している電極の量の、元の電極の量に対する割合を示す。
1層高速では、電極残存割合は、26%であり、1層自然では、39%であり、2層高速では、66%であり、2層自然では、82%である。
【0007】
この結果より、箔12にかなりの量の電極合剤11が残存していることが確認され、箔12と電極合剤11の剥離は、界面で発生しているのではないことが確認された。
また、1層高速と1層自然では、比較的、箔12に近い位置において剥離が発生し、2層高速と2層自然では、比較的、電極合剤11の表面近傍で剥離が発生していることが確認された。これが、1層塗工又は2層塗工された電極基材に対しては、90度剥離強度と、箔12からの電極合剤11の剥離とは、相関関係を持たないことの理由である。
【0008】
(2)また、特許文献2では、アルミ合金箔と正極活物質の界面に沿って切削を行い、SAICAS試験を行っている。本発明者が箔12と電極合剤11との界面においてSAICAS試験を行ったところ、特許文献2と同様に、1000N/m程度の密着強度データが得られた。
これに対して、箔12と電極合剤11との界面から、電極合剤側11へ1μm以上5μm以下の測定位置における密着強度データは、数十N/mであり、両者の密着強度には、40〜50倍程度の大きな差異が存在する。この原因は、箔12と電極合剤11との界面を測定した場合には、SAICAS試験の刃先が箔12と接触して、摩擦力が発生し、発生した摩擦力が密着強度に影響を与えるためであると、本発明者は考えている。したがって、特許文献2に記載されたSAICAS試験では、箔12と電極合剤11との間の密着強度そのものを正確に測ることができない問題があった。
また、上述したように、箔12と電極合剤11との剥離は、界面ではなく界面から少し離れた位置で発生しているのであるから、界面における密着強度は、箔12と電極合剤11との剥離と相関関係が少ないと考えられる。したがって、特許文献2の技術のように、SAICAS試験を界面で行って、密着強度を測定することは、技術的な意義が少ないと考えられる。
【0009】
(3)また、リチウムイオン二次電池の製造方法であるスリット工程と捲回工程とでは、剥離現象が異なっている。すなわち、スリット工程での剥離現象は、界面近くで発生するが、捲回工程での剥離現象は、起点が電極合剤11の表面と考えられるからである。
そのため、特許文献1の技術では、スリット工程と捲回工程における密着性を90度剥離強度試験で同時に評価することは困難であった。
また、特許文献2では、アルミ合金箔と正極活物質の界面に沿って切削を行い、SAICAS試験を行っているだけなので、特許文献1と同様に、スリット工程と捲回工程における密着性を同時に評価することは困難であった。
【0010】
本発明は、リチウムイオン二次電池の製造方法において、剥離現象の異なるスリット工程での剥離現象、捲回工程での剥離現象を適確に評価する評価法、及びその評価法を用いたリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法は、次の構成を有している。
(1)箔の表面に電極合剤が塗工された幅広の電極基材をスリットするスリット工程と、スリットされた電極スリット材を捲回する捲回工程を有するリチウムイオン二次電池の製造方法において、SAICAS法によって測定された膜厚方向における剥離強度に基づいて、スリット工程又は捲回工程における剥離の良否を判定する判定閾値を設定することを特徴とする。
(2)(1)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記電極合剤が、バインダ層と活物質層の2層塗工されていること、を特徴とする。
【0012】
(3)(1)又は(2)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記スリット工程では、前記箔と前記電極合剤との界面から、前記電極合剤側へ1μm以上5μm以下の測定位置における界面強度に基づいて、前記判定閾値を決定すること、を特徴とする。
(4)(3)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記測定位置が2μmであること、を特徴とする。
(5)(3)又は(4)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記判定閾値である界面強度が44.3N/m以上であること、を特徴とする。
【0013】
(6)(1)乃至(5)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法のいずれか1つにおいて、前記捲回工程では、前記電極合剤の表面から2μmの測定位置における表層強度に基づいて、前記判定閾値を決定すること、を特徴とする。
(7)(6)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記判定閾値である表層強度が18.5N/m以下であること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法は、次のような作用、効果を奏する。
(1)箔の表面に電極合剤が塗工された幅広の電極基材をスリットするスリット工程と、スリットされた電極スリット材を捲回する捲回工程を有するリチウムイオン二次電池の製造方法において、SAICAS法によって測定された膜厚方向における剥離強度に基づいて、スリット工程又は捲回工程における剥離の良否を判定する判定閾値を設定することを特徴とする。
スリット工程における剥離の起点は、箔と電極合剤との界面で発生する場合が多いので、SAICAS試験により、箔と電極合剤の界面における密着強度を管理すればスリット工程における剥離を管理することができる。
一方、捲回工程における剥離は、屈曲による応力集中により発生する屈曲剥離であり、その起点は電極合剤の表層に存在する。電極合剤の表層強度が低いほど、バインダが少なく、活物質が自由に移動できるので、柔軟性が高く、屈曲剥離の起点の発生を抑制することができると考えられる。そのため、SAICAS試験により、電極合剤の表層強度を管理すれば、捲回工程における剥離を抑制することができる。
【0015】
(2)(1)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記電極合剤が、バインダ層と活物質層の2層塗工されていること、を特徴とする。2層塗工では、図9に示すように、90度剥離試験の結果と、スリット工程における剥離の発生との相関関係が得られないため、SAICAS試験に基づく密着強度による管理が効果的である。
【0016】
(3)(1)又は(2)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記スリット工程では、前記箔と前記電極合剤との界面から、前記電極合剤側へ1μm以上5μm以下の測定位置における界面強度に基づいて、前記判定閾値を決定すること、を特徴とするので、SAICAS試験の刃先が箔と1μm離間しているおり、刃先が箔に接触することがなく、刃先に箔との摩擦力が作用することがないため、箔と電極合剤との密着強度を正確に測定することができる。
また、箔と電極合剤との剥離は、界面で全てが発生しているのではなく、界面及び界面近くの電極合剤内で行われていると考えられるので、界面近傍の電極合剤内における密着強度を測定することにより、剥離発生との適切な相関関係を得ることができる。
ここで、5μm以下としているのは、活物質の平均粒径が5〜10μmであるため、その粒径より大きいと、活物質間の強度を測定することになり、箔と電極合剤との間の密着強度を正確に測定できないからであり、測定位置の誤差を考慮して5μm以下としている。
なお、本発明におけるSAICAS試験の条件は、刃は、BNであり、刃幅は、1mmであり、スクイズ角は、20度であり、逃げ角は、10度であり、水平速度(一定)は、2μm/Sである。
【0017】
(4)(3)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記測定位置が2μmであること、を特徴とするので、特に、2μmの測定位置で測定すると、刃先の位置に僅かな誤差があっても、箔と電極合剤との密着強度を正確に測定することができる。
(5)(3)又は(4)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記判定閾値である界面強度が44.3N/m以上であること、を特徴とするので、スリット工程における箔と電極合剤との剥離の抑制を適切に管理することができる。44.3N/mは、2層高速の水準における界面強度であり、この値以上の界面強度があれば、箔と電極合剤との間で剥離が発生しないことを実験により確認している。
【0018】
(6)(1)乃至(5)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法のいずれか1つにおいて、前記捲回工程では、前記電極合剤の表面から2μmの測定位置における表層強度に基づいて、前記判定閾値を決定すること、を特徴とする。
なお、SAICAS試験の条件は、刃は、BNであり、刃幅は、1mmであり、スクイズ角は、20度であり、逃げ角は、10度であり、水平速度(一定)は、2μm/Sである。
捲回工程における剥離は、屈曲剥離であり、その起点は電極合剤の表層に存在する。電極合剤の表層強度が低いほど、バインダが少なく、活物質が自由に移動できるので、柔軟性が高く、屈曲剥離の起点の発生を抑制することができると考えられる。逆に言うと、電極合剤の表面強度が高いほど、バインダが多く、活物質が自由に移動できないため、バインダに応力が集中して、破断すると考えられる。
そのため、SAICAS試験により、電極合剤の表層強度を所定値以下に管理すれば、捲回工程における剥離を抑制することができる。
【0019】
(7)(6)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記判定閾値である表層強度が18.5N/m以下であること、を特徴とする。
本出願人の実験によれば、SAICAS法により、表層強度が18.5N/m以下であれば、捲回工程において剥離発生しないことを確認している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】SAICAS試験による箔−合剤界面密着強度の測定方法を示す図である。
【図2】SAICAS試験により測定した箔12と電極合剤11との間の界面密着強度を示すデータ図である。
【図3】SAICAS試験による表層密着強度の測定方法を示す図である。
【図4】SAICAS試験により測定した電極合剤11の表層密着強度を示すデータ図である。
【図5】SAICAS試験に用いる刃の形状を示す斜視図である。
【図6】SAICAS試験に用いる刃の形状を示す側面図である。
【図7】1層高速の場合において、電極基材をスリットしたときの電極基材の状態を示す図である。
【図8】1層高速の場合電極基材を1回だけ捲回したときの電極基材の状態を示す図である。
【図9】リチウムイオン二次電池に使用される箔に電極合剤が塗工された電極基材の剥離強度を、90度剥離強度試験で測定した結果を示す図である。
【図10】剥離後の電極残存割合データを示すデータ図である。
【図11】固定した箔12に密着した電極合剤11の先端部に所定の力Fをかけた電極合剤11を箔12から引き剥がしたときの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法の一実施例について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1に、SAICAS試験による箔−合剤界面密着強度の測定方法を示す。本SAICAS試験に用いる刃の形状を図5に斜視図で示し、図6に側面図で示す。刃は、BNであり、刃幅は、1mmであり、スクイ角θS(すくい角)は、20度であり、逃げ角θNは、10度であり、水平速度は、2μm/Sである。
刃先13aは、箔12と電極合剤11との間の界面Bから、電極合剤11側に2μm入った位置を切削する。図1においては、X=箔12の厚さ+2μmである。
2μmの位置は、図示しないSAICAS試験機が、箔12の表面(界面B)に対して、刃13を正確に位置決めしつつ移動させ、切削している。このとき、刃先13aには、進行方向と逆向きの水平力R(N/m)が作用する。この水平力Rが密着力であり、界面密着強度である。
本実施例においては、アルミ合金からなる箔12の表面に、30〜50μmの厚みの電極合剤11が塗工されている。電極合剤11の主な成分は、活物質とバインダである。活物質の平均粒径は、5〜10μmである。
【0022】
SAICAS試験により測定した箔12と電極合剤11との間の界面密着強度を図2に示す。図2には参考のため、90度剥離試験の結果も記載している。
横軸に、電極水準を示し、縦軸に、箔−合剤界面密着強度(単位N/m)、及び90度剥離強度(単位N/m)を示す。電極水準としては、電極合剤を箔上に1層塗工して高速で乾燥させた1層高速と、1層塗工して低速で乾燥させた1層低速と、1層塗工して自然状態で乾燥させた1層自然と、2層塗工して高速で乾燥させた2層高速と、2層塗工して自然状態で乾燥させた2層自然の5タイプある。
箔−合剤界面密度強度は、1層高速では、7.90N/mであり、1層低速では、10.0N/mであり、1層自然では、31.1N/mであり、2層高速では、44.3N/mであり、2層自然では、51.2N/mである。
一方、90度剥離試験の剥離強度は、1層高速では、90度剥離強度は、0.05N/mであり、1層低速では、0.55N/mであり、1層自然では、1.90N/mであり、2層高速では、1.35N/mであり、2層自然では、0.80N/mである。
【0023】
上記5水準の電極基材を、スリット工程においてスリットした。図7に、1層高速の場合において、電極基材をスリットしたときの電極基材の状態を示す。スリット装置は、円板形状の上刃22と、円板形状の下刃21を有する。上刃22の先端角度は、60度であり、下刃21の先端角度は90度である。上刃22と下刃21のクリアランスは、ゼロに設定している。なお、下刃21の上側には、本実施例では、電極基材を押える基材押さえを設けていない。しかし、本発明者の実験によれば、基材押さえを設けた場合と、基材押さえを設けなかった場合とで有意差はなかった。
図7では、上刃22により切断された電極基材において、箔12から電極合剤11が剥がれる剥離Pが発生しているのが確認できる。すなわち、1層高速の電極基材をスリットした場合には、剥離Pの発生が確認された。同様に、1層低速の電極基材、及び1層自然の電極基材をスリットした場合にも剥離Pの発生が確認された。
【0024】
一方、2層高速、及び2層自然の電極基材をスリットした場合には、剥離Pの発生は全くないことを確認した。
したがって、箔12と電極合剤11との間の界面Bから、電極合剤11側に2μm入った位置において、SAICAS試験により測定した密着強度である箔−合剤界面強度(N/m)は、スリット工程における剥離Pの発生指標として使用できることが確認できた。
本出願人は、箔12と電極合剤11との間の界面Bから、電極合剤11側に1μm入った位置、3〜5μm入った位置において、SAICAS試験により測定した密着強度を用いても、スリット工程における剥離Pの発生指標として使用できることを確認している。
【0025】
次に、SAICAS試験による表層密着強度の測定について説明する。図3に、SAICAS試験による表層密着強度の測定方法を示す。本SAICAS試験に用いるものの形状は、界面密着強度を測定するものと同じである。
刃先13aは、電極合剤11に表面DからY=2μm入った位置を切削する。2μmの位置は、図示しないSAICAS試験機が、電極合剤11の表面Dに対して、刃13を正確に位置決めしつつ移動させ、切削している。このとき、刃先13aには、進行方向と逆向きの水平力R(N/m)が作用する。この水平力Rが密着力であり、表層密着強度である。
本実施例においては、アルミ合金からなる箔12の表面に、30〜50μmの厚みの電極合剤11が塗工されている。電極合剤11の主な成分は、活物質とバインダである。活物質の平均粒径は、5〜10μmである。
【0026】
SAICAS試験により測定した電極合剤11の表層密着強度を図4に示す。図4には参考のため、90度剥離試験の結果も記載している。
横軸に、電極水準を示し、縦軸に、表層密着強度(単位N/m)、及び90度剥離強度(単位N/m)を示す。電極水準としては、電極合剤を箔上に1層塗工して高速で乾燥させた1層高速と、1層塗工して低速で乾燥させた1層低速と、1層塗工して自然状態で乾燥させた1層自然と、2層塗工して高速で乾燥させた2層高速と、2層塗工して自然状態で乾燥させた2層自然の5タイプある。
表層密着強度は、1層高速では、33.5N/mであり、1層低速では、34.7N/mであり、1層自然では、22.6N/mであり、2層高速では、18.5N/mであり、2層自然では、12.0N/mである。
一方、90度剥離試験の剥離強度は、1層高速では、90度剥離強度は、0.05N/mであり、1層低速では、0.55N/mであり、1層自然では、1.9N/mであり、2層高速では、1.35N/mであり、2層自然では、0.8N/mである。
【0027】
図8に、1層高速の場合電極基材(上記水準5)を、捲回工程において、1回だけ捲回した後、扁平プレスしたときの電極基材の状態を示す。実際の工程では、数十巻き捲回した後、扁平プレスを行うのであるが、剥離は通常最内周で発生することが多いので、最内周のみの実験を示す。
図8では、1回だけ捲回された電極基材の屈曲部分において、箔12から電極合剤11が剥がれる剥離Qが発生しているのが確認できる。すなわち、1層高速の電極基材を捲回した場合には、屈曲による剥離Qの発生が確認された。捲回工程においては、1回目の捲回により形成される曲率が一番小さいため、通常、1回目の捲回により剥離Qが発生する。言い換えると、1回目の捲回で剥離Qが発生しなければ、2回目以後の捲回で剥離Qが発生することは、きわめて少ない。
同様に、1層低速の電極基材、及び1層自然の電極基材を捲回した場合にも、屈曲による剥離Qの発生が確認された。
一方、2層高速、及び2層自然の電極基材を捲回した場合には、屈曲による剥離Qの発生は全くないことを確認した。
したがって、電極合剤11の表面Dから、電極合剤11に2μm入った位置において、SAICAS試験により測定した密着強度である表層密着強度(N/m)は、捲回工程における屈曲による剥離Qの発生指標として使用できることが確認できた。
【0028】
以上詳細に説明したように、本実施例のリチウムイオン二次電池の製造方法によれば、(1)箔12の表面に電極合剤11が塗工された幅広の電極基材をスリットするスリット工程と、スリットされた電極スリット材を捲回する捲回工程を有するリチウムイオン二次電池の製造方法において、SAICAS法によって測定された膜厚方向における剥離強度に基づいて、スリット工程又は捲回工程における剥離の良否を判定する判定閾値を設定することを特徴とする。
スリット工程における剥離の起点は、箔12と電極合剤11との界面Bで発生する場合が多いので、SAICAS試験により、箔12と電極合剤11の界面Bにおける密着強度を管理すればスリット工程における剥離を管理することができる。
一方、捲回工程における剥離は、屈曲による応力集中により発生する屈曲剥離であり、その起点は電極合剤11の表面Dに存在する。電極合剤11の表層強度が低いほど、バインダが少なく、活物質が自由に移動できるので、柔軟性が高く、屈曲剥離の起点の発生を抑制することができると考えられる。そのため、SAICAS試験により、電極合剤11の表層強度を管理すれば、捲回工程における剥離を抑制することができる。
【0029】
(2)(1)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、電極合剤11が、バインダ層と活物質層の2層塗工されていること、を特徴とする。2層塗工では、図9に示すように、90度剥離試験の結果と、スリット工程における剥離の発生との相関関係が得られないため、SAICAS試験に基づく密着強度による管理が効果的である。
【0030】
(3)(1)又は(2)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、スリット工程では、箔12と電極合剤11との界面Bから、電極合剤11側へ1μm以上5μm以下の測定位置における界面強度に基づいて、判定閾値を決定すること、を特徴とするので、SAICAS試験の刃先13aが箔12と1μm離間しているおり、刃先13aが箔12に接触することがなく、刃先13aA箔12との摩擦力が作用することがないため、箔12と電極合剤11との密着強度を正確に測定することができる。
また、箔12と電極合剤11との剥離は、界面Bで全てが発生しているのではなく、界面B及び界面近くの電極合剤内で行われていると考えられるので、界面B近傍の電極合剤11内における密着強度を測定することにより、剥離発生との適切な相関関係を得ることができる。
ここで、5μm以下としているのは、活物質の平均粒径が10μmであり、活物質の粒径が5〜15μmのため、その最小粒径より大きいと、活物質間の強度を測定することになり、箔12と電極合剤11との間の密着強度を正確に測定できないからである。
なお、本発明におけるSAICAS試験の条件は、刃13は、BNであり、刃幅は、1mmであり、スクイズ角は、20度であり、逃げ角は、10度であり、水平速度(一定)は、2μm/Sである。
【0031】
(4)(3)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、測定位置が2μmであること、を特徴とするので、特に、2μmの測定位置で測定すると、刃先13aの位置に僅かな誤差があっても、箔12と電極合剤11との密着強度を正確に測定することができる。
(5)(3)又は(4)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、判定閾値である界面強度が44.3N/m以上であること、を特徴とするので、スリット工程における箔12と電極合剤11との剥離の抑制を適切に管理することができる。44.3N/mは、2層高速の水準における界面強度であり、この値以上の界面強度があれば、箔12と電極合剤11との間で剥離が発生しないことを、本発明者は実験により確認している。
【0032】
(6)(1)乃至(5)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法のいずれか1つにおいて、捲回工程では、電極合剤11の表面Dから2μmの測定位置における表層強度に基づいて、判定閾値を決定すること、を特徴とする。
なお、SAICAS試験の条件は、刃13は、BNであり、刃幅は、1mmであり、スクイズ角は、20度であり、逃げ角は、10度であり、水平速度(一定)は、2μm/Sである。
捲回工程における剥離は、屈曲剥離であり、その起点は電極合剤の表層に存在する。電極合剤11の表層強度が低いほど、バインダが少なく、活物質が自由に移動できるので、柔軟性が高く、屈曲剥離の起点の発生を抑制することができると考えられる。逆に言うと、電極合剤の表面強度が高いほど、バインダが多く、活物質が自由に移動できないため、バインダに応力が集中して、破断すると考えられる。
そのため、SAICAS試験により、電極合剤11の表層強度を所定値以下に管理すれば、捲回工程における剥離を抑制することができる。
【0033】
(7)(6)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、判定閾値である表層強度が18.5N/m以下であること、を特徴とする。
本出願人の実験によれば、SAICAS法により、表層強度が18.5N/m以下であれば、捲回工程において屈曲剥離が発生しないことを確認している。
【0034】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
本実施の形態では、界面強度の閾値を44.3N/mとし、表層強度の閾値を18.5N/mとしているが、これらの値は、電極合剤11の種類等により変化するものであり、その都度実験により求めれば良い。
【符号の説明】
【0035】
11 電極合剤
12 箔
13 刃
13a 刃先
B (電極合剤と箔の)界面
D (電極合剤の)表面
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に電極合剤が塗工された幅広の電極基材をスリットするスリット工程と、スリットされた電極スリット材を捲回する捲回工程を有するリチウムイオン二次電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、90度剥離強度試験により、リチウムイオン二次電池電極の密着性評価を行うことが記載されている。
特許文献2には、アルミ合金箔と正極活物質の密着性評価試験として、SAICAS試験を用いることが記載されている。
一方、電極合剤を箔に塗工するときに、バインダと活物質とを混練させたペーストを塗工する1層塗工と、バインダ層と活物質層を2層に連続的に塗工する2層塗工が行われている。2層塗工を行う目的は、バインダが電極合剤の表面近傍に偏在しないようにするためである。バインダが電極合剤の表面近傍に偏在すると、リチウムイオンの進入を妨げるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2011/074439号
【特許文献2】特開2011-165637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2の技術には、次のような問題があった。
(1)例えば、リチウム二次電池に使用される箔に電極合剤が塗工された電極基材の剥離強度を、90度剥離強度試験で測定した結果を図9に示す。横軸に、電極水準を示し、縦軸に90度剥離強度(単位N/m)を示す。電極水準としては、電極合剤を箔上に1層塗工して高速で(比較的短い時間で)乾燥させた1層高速と、1層塗工して低速で(比較的長い時間をかけて)乾燥させた1層低速と、1層塗工して自然状態で乾燥させた1層自然と、2層塗工して高速(比較的短い時間で)で乾燥させた2層高速と、2層塗工して自然状態で乾燥させた2層自然の5タイプある。
1層高速では、90度剥離強度は、0.05N/mであり、1層低速では、0.55N/mであり、1層自然では、1.9N/mであり、2層高速では、1.35N/mであり、2層自然では、0.8N/mである。
【0005】
一方、スリット工程の後で、スリット部分を顕微鏡写真で検査したところ、1層高速、1層低速、及び1層自然では、箔12と電極合剤11の界面付近で、箔12からの電極合剤11の剥離が発生していることが確認された。そして、2層高速と2層自然では、箔12からの電極合剤11の剥離が発生していないことが確認された。1層塗工又は2層塗工された電極基材に対しては、90度剥離強度と、箔12からの電極合剤11の剥離とは、相関関係を持たないことが確認された。
したがって、90度剥離強度試験では、スリット工程における箔12と電極合剤11の剥離の発生を評価する基準とならない問題があった。
【0006】
次に、その理由を説明する。図10に、剥離発生箇所を示すために、剥離後の電極残存割合データを示す。
横軸に、電極水準を示し、縦軸に電極残存割合を示す。電極水準としては、1層高速、1層自然、2層高速と、及び2層自然の4タイプである。電極残存割合とは、図11に示すように、固定した箔12に密着した電極合剤11の先端部に所定の力Fをかけた電極合剤11を箔12から引き剥がしたときに、箔12上に残存している電極の量の、元の電極の量に対する割合を示す。
1層高速では、電極残存割合は、26%であり、1層自然では、39%であり、2層高速では、66%であり、2層自然では、82%である。
【0007】
この結果より、箔12にかなりの量の電極合剤11が残存していることが確認され、箔12と電極合剤11の剥離は、界面で発生しているのではないことが確認された。
また、1層高速と1層自然では、比較的、箔12に近い位置において剥離が発生し、2層高速と2層自然では、比較的、電極合剤11の表面近傍で剥離が発生していることが確認された。これが、1層塗工又は2層塗工された電極基材に対しては、90度剥離強度と、箔12からの電極合剤11の剥離とは、相関関係を持たないことの理由である。
【0008】
(2)また、特許文献2では、アルミ合金箔と正極活物質の界面に沿って切削を行い、SAICAS試験を行っている。本発明者が箔12と電極合剤11との界面においてSAICAS試験を行ったところ、特許文献2と同様に、1000N/m程度の密着強度データが得られた。
これに対して、箔12と電極合剤11との界面から、電極合剤側11へ1μm以上5μm以下の測定位置における密着強度データは、数十N/mであり、両者の密着強度には、40〜50倍程度の大きな差異が存在する。この原因は、箔12と電極合剤11との界面を測定した場合には、SAICAS試験の刃先が箔12と接触して、摩擦力が発生し、発生した摩擦力が密着強度に影響を与えるためであると、本発明者は考えている。したがって、特許文献2に記載されたSAICAS試験では、箔12と電極合剤11との間の密着強度そのものを正確に測ることができない問題があった。
また、上述したように、箔12と電極合剤11との剥離は、界面ではなく界面から少し離れた位置で発生しているのであるから、界面における密着強度は、箔12と電極合剤11との剥離と相関関係が少ないと考えられる。したがって、特許文献2の技術のように、SAICAS試験を界面で行って、密着強度を測定することは、技術的な意義が少ないと考えられる。
【0009】
(3)また、リチウムイオン二次電池の製造方法であるスリット工程と捲回工程とでは、剥離現象が異なっている。すなわち、スリット工程での剥離現象は、界面近くで発生するが、捲回工程での剥離現象は、起点が電極合剤11の表面と考えられるからである。
そのため、特許文献1の技術では、スリット工程と捲回工程における密着性を90度剥離強度試験で同時に評価することは困難であった。
また、特許文献2では、アルミ合金箔と正極活物質の界面に沿って切削を行い、SAICAS試験を行っているだけなので、特許文献1と同様に、スリット工程と捲回工程における密着性を同時に評価することは困難であった。
【0010】
本発明は、リチウムイオン二次電池の製造方法において、剥離現象の異なるスリット工程での剥離現象、捲回工程での剥離現象を適確に評価する評価法、及びその評価法を用いたリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法は、次の構成を有している。
(1)箔の表面に電極合剤が塗工された幅広の電極基材をスリットするスリット工程と、スリットされた電極スリット材を捲回する捲回工程を有するリチウムイオン二次電池の製造方法において、SAICAS法によって測定された膜厚方向における剥離強度に基づいて、スリット工程又は捲回工程における剥離の良否を判定する判定閾値を設定することを特徴とする。
(2)(1)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記電極合剤が、バインダ層と活物質層の2層塗工されていること、を特徴とする。
【0012】
(3)(1)又は(2)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記スリット工程では、前記箔と前記電極合剤との界面から、前記電極合剤側へ1μm以上5μm以下の測定位置における界面強度に基づいて、前記判定閾値を決定すること、を特徴とする。
(4)(3)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記測定位置が2μmであること、を特徴とする。
(5)(3)又は(4)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記判定閾値である界面強度が44.3N/m以上であること、を特徴とする。
【0013】
(6)(1)乃至(5)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法のいずれか1つにおいて、前記捲回工程では、前記電極合剤の表面から2μmの測定位置における表層強度に基づいて、前記判定閾値を決定すること、を特徴とする。
(7)(6)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記判定閾値である表層強度が18.5N/m以下であること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法は、次のような作用、効果を奏する。
(1)箔の表面に電極合剤が塗工された幅広の電極基材をスリットするスリット工程と、スリットされた電極スリット材を捲回する捲回工程を有するリチウムイオン二次電池の製造方法において、SAICAS法によって測定された膜厚方向における剥離強度に基づいて、スリット工程又は捲回工程における剥離の良否を判定する判定閾値を設定することを特徴とする。
スリット工程における剥離の起点は、箔と電極合剤との界面で発生する場合が多いので、SAICAS試験により、箔と電極合剤の界面における密着強度を管理すればスリット工程における剥離を管理することができる。
一方、捲回工程における剥離は、屈曲による応力集中により発生する屈曲剥離であり、その起点は電極合剤の表層に存在する。電極合剤の表層強度が低いほど、バインダが少なく、活物質が自由に移動できるので、柔軟性が高く、屈曲剥離の起点の発生を抑制することができると考えられる。そのため、SAICAS試験により、電極合剤の表層強度を管理すれば、捲回工程における剥離を抑制することができる。
【0015】
(2)(1)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記電極合剤が、バインダ層と活物質層の2層塗工されていること、を特徴とする。2層塗工では、図9に示すように、90度剥離試験の結果と、スリット工程における剥離の発生との相関関係が得られないため、SAICAS試験に基づく密着強度による管理が効果的である。
【0016】
(3)(1)又は(2)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記スリット工程では、前記箔と前記電極合剤との界面から、前記電極合剤側へ1μm以上5μm以下の測定位置における界面強度に基づいて、前記判定閾値を決定すること、を特徴とするので、SAICAS試験の刃先が箔と1μm離間しているおり、刃先が箔に接触することがなく、刃先に箔との摩擦力が作用することがないため、箔と電極合剤との密着強度を正確に測定することができる。
また、箔と電極合剤との剥離は、界面で全てが発生しているのではなく、界面及び界面近くの電極合剤内で行われていると考えられるので、界面近傍の電極合剤内における密着強度を測定することにより、剥離発生との適切な相関関係を得ることができる。
ここで、5μm以下としているのは、活物質の平均粒径が5〜10μmであるため、その粒径より大きいと、活物質間の強度を測定することになり、箔と電極合剤との間の密着強度を正確に測定できないからであり、測定位置の誤差を考慮して5μm以下としている。
なお、本発明におけるSAICAS試験の条件は、刃は、BNであり、刃幅は、1mmであり、スクイズ角は、20度であり、逃げ角は、10度であり、水平速度(一定)は、2μm/Sである。
【0017】
(4)(3)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記測定位置が2μmであること、を特徴とするので、特に、2μmの測定位置で測定すると、刃先の位置に僅かな誤差があっても、箔と電極合剤との密着強度を正確に測定することができる。
(5)(3)又は(4)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記判定閾値である界面強度が44.3N/m以上であること、を特徴とするので、スリット工程における箔と電極合剤との剥離の抑制を適切に管理することができる。44.3N/mは、2層高速の水準における界面強度であり、この値以上の界面強度があれば、箔と電極合剤との間で剥離が発生しないことを実験により確認している。
【0018】
(6)(1)乃至(5)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法のいずれか1つにおいて、前記捲回工程では、前記電極合剤の表面から2μmの測定位置における表層強度に基づいて、前記判定閾値を決定すること、を特徴とする。
なお、SAICAS試験の条件は、刃は、BNであり、刃幅は、1mmであり、スクイズ角は、20度であり、逃げ角は、10度であり、水平速度(一定)は、2μm/Sである。
捲回工程における剥離は、屈曲剥離であり、その起点は電極合剤の表層に存在する。電極合剤の表層強度が低いほど、バインダが少なく、活物質が自由に移動できるので、柔軟性が高く、屈曲剥離の起点の発生を抑制することができると考えられる。逆に言うと、電極合剤の表面強度が高いほど、バインダが多く、活物質が自由に移動できないため、バインダに応力が集中して、破断すると考えられる。
そのため、SAICAS試験により、電極合剤の表層強度を所定値以下に管理すれば、捲回工程における剥離を抑制することができる。
【0019】
(7)(6)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記判定閾値である表層強度が18.5N/m以下であること、を特徴とする。
本出願人の実験によれば、SAICAS法により、表層強度が18.5N/m以下であれば、捲回工程において剥離発生しないことを確認している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】SAICAS試験による箔−合剤界面密着強度の測定方法を示す図である。
【図2】SAICAS試験により測定した箔12と電極合剤11との間の界面密着強度を示すデータ図である。
【図3】SAICAS試験による表層密着強度の測定方法を示す図である。
【図4】SAICAS試験により測定した電極合剤11の表層密着強度を示すデータ図である。
【図5】SAICAS試験に用いる刃の形状を示す斜視図である。
【図6】SAICAS試験に用いる刃の形状を示す側面図である。
【図7】1層高速の場合において、電極基材をスリットしたときの電極基材の状態を示す図である。
【図8】1層高速の場合電極基材を1回だけ捲回したときの電極基材の状態を示す図である。
【図9】リチウムイオン二次電池に使用される箔に電極合剤が塗工された電極基材の剥離強度を、90度剥離強度試験で測定した結果を示す図である。
【図10】剥離後の電極残存割合データを示すデータ図である。
【図11】固定した箔12に密着した電極合剤11の先端部に所定の力Fをかけた電極合剤11を箔12から引き剥がしたときの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明のリチウムイオン二次電池の製造方法の一実施例について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1に、SAICAS試験による箔−合剤界面密着強度の測定方法を示す。本SAICAS試験に用いる刃の形状を図5に斜視図で示し、図6に側面図で示す。刃は、BNであり、刃幅は、1mmであり、スクイ角θS(すくい角)は、20度であり、逃げ角θNは、10度であり、水平速度は、2μm/Sである。
刃先13aは、箔12と電極合剤11との間の界面Bから、電極合剤11側に2μm入った位置を切削する。図1においては、X=箔12の厚さ+2μmである。
2μmの位置は、図示しないSAICAS試験機が、箔12の表面(界面B)に対して、刃13を正確に位置決めしつつ移動させ、切削している。このとき、刃先13aには、進行方向と逆向きの水平力R(N/m)が作用する。この水平力Rが密着力であり、界面密着強度である。
本実施例においては、アルミ合金からなる箔12の表面に、30〜50μmの厚みの電極合剤11が塗工されている。電極合剤11の主な成分は、活物質とバインダである。活物質の平均粒径は、5〜10μmである。
【0022】
SAICAS試験により測定した箔12と電極合剤11との間の界面密着強度を図2に示す。図2には参考のため、90度剥離試験の結果も記載している。
横軸に、電極水準を示し、縦軸に、箔−合剤界面密着強度(単位N/m)、及び90度剥離強度(単位N/m)を示す。電極水準としては、電極合剤を箔上に1層塗工して高速で乾燥させた1層高速と、1層塗工して低速で乾燥させた1層低速と、1層塗工して自然状態で乾燥させた1層自然と、2層塗工して高速で乾燥させた2層高速と、2層塗工して自然状態で乾燥させた2層自然の5タイプある。
箔−合剤界面密度強度は、1層高速では、7.90N/mであり、1層低速では、10.0N/mであり、1層自然では、31.1N/mであり、2層高速では、44.3N/mであり、2層自然では、51.2N/mである。
一方、90度剥離試験の剥離強度は、1層高速では、90度剥離強度は、0.05N/mであり、1層低速では、0.55N/mであり、1層自然では、1.90N/mであり、2層高速では、1.35N/mであり、2層自然では、0.80N/mである。
【0023】
上記5水準の電極基材を、スリット工程においてスリットした。図7に、1層高速の場合において、電極基材をスリットしたときの電極基材の状態を示す。スリット装置は、円板形状の上刃22と、円板形状の下刃21を有する。上刃22の先端角度は、60度であり、下刃21の先端角度は90度である。上刃22と下刃21のクリアランスは、ゼロに設定している。なお、下刃21の上側には、本実施例では、電極基材を押える基材押さえを設けていない。しかし、本発明者の実験によれば、基材押さえを設けた場合と、基材押さえを設けなかった場合とで有意差はなかった。
図7では、上刃22により切断された電極基材において、箔12から電極合剤11が剥がれる剥離Pが発生しているのが確認できる。すなわち、1層高速の電極基材をスリットした場合には、剥離Pの発生が確認された。同様に、1層低速の電極基材、及び1層自然の電極基材をスリットした場合にも剥離Pの発生が確認された。
【0024】
一方、2層高速、及び2層自然の電極基材をスリットした場合には、剥離Pの発生は全くないことを確認した。
したがって、箔12と電極合剤11との間の界面Bから、電極合剤11側に2μm入った位置において、SAICAS試験により測定した密着強度である箔−合剤界面強度(N/m)は、スリット工程における剥離Pの発生指標として使用できることが確認できた。
本出願人は、箔12と電極合剤11との間の界面Bから、電極合剤11側に1μm入った位置、3〜5μm入った位置において、SAICAS試験により測定した密着強度を用いても、スリット工程における剥離Pの発生指標として使用できることを確認している。
【0025】
次に、SAICAS試験による表層密着強度の測定について説明する。図3に、SAICAS試験による表層密着強度の測定方法を示す。本SAICAS試験に用いるものの形状は、界面密着強度を測定するものと同じである。
刃先13aは、電極合剤11に表面DからY=2μm入った位置を切削する。2μmの位置は、図示しないSAICAS試験機が、電極合剤11の表面Dに対して、刃13を正確に位置決めしつつ移動させ、切削している。このとき、刃先13aには、進行方向と逆向きの水平力R(N/m)が作用する。この水平力Rが密着力であり、表層密着強度である。
本実施例においては、アルミ合金からなる箔12の表面に、30〜50μmの厚みの電極合剤11が塗工されている。電極合剤11の主な成分は、活物質とバインダである。活物質の平均粒径は、5〜10μmである。
【0026】
SAICAS試験により測定した電極合剤11の表層密着強度を図4に示す。図4には参考のため、90度剥離試験の結果も記載している。
横軸に、電極水準を示し、縦軸に、表層密着強度(単位N/m)、及び90度剥離強度(単位N/m)を示す。電極水準としては、電極合剤を箔上に1層塗工して高速で乾燥させた1層高速と、1層塗工して低速で乾燥させた1層低速と、1層塗工して自然状態で乾燥させた1層自然と、2層塗工して高速で乾燥させた2層高速と、2層塗工して自然状態で乾燥させた2層自然の5タイプある。
表層密着強度は、1層高速では、33.5N/mであり、1層低速では、34.7N/mであり、1層自然では、22.6N/mであり、2層高速では、18.5N/mであり、2層自然では、12.0N/mである。
一方、90度剥離試験の剥離強度は、1層高速では、90度剥離強度は、0.05N/mであり、1層低速では、0.55N/mであり、1層自然では、1.9N/mであり、2層高速では、1.35N/mであり、2層自然では、0.8N/mである。
【0027】
図8に、1層高速の場合電極基材(上記水準5)を、捲回工程において、1回だけ捲回した後、扁平プレスしたときの電極基材の状態を示す。実際の工程では、数十巻き捲回した後、扁平プレスを行うのであるが、剥離は通常最内周で発生することが多いので、最内周のみの実験を示す。
図8では、1回だけ捲回された電極基材の屈曲部分において、箔12から電極合剤11が剥がれる剥離Qが発生しているのが確認できる。すなわち、1層高速の電極基材を捲回した場合には、屈曲による剥離Qの発生が確認された。捲回工程においては、1回目の捲回により形成される曲率が一番小さいため、通常、1回目の捲回により剥離Qが発生する。言い換えると、1回目の捲回で剥離Qが発生しなければ、2回目以後の捲回で剥離Qが発生することは、きわめて少ない。
同様に、1層低速の電極基材、及び1層自然の電極基材を捲回した場合にも、屈曲による剥離Qの発生が確認された。
一方、2層高速、及び2層自然の電極基材を捲回した場合には、屈曲による剥離Qの発生は全くないことを確認した。
したがって、電極合剤11の表面Dから、電極合剤11に2μm入った位置において、SAICAS試験により測定した密着強度である表層密着強度(N/m)は、捲回工程における屈曲による剥離Qの発生指標として使用できることが確認できた。
【0028】
以上詳細に説明したように、本実施例のリチウムイオン二次電池の製造方法によれば、(1)箔12の表面に電極合剤11が塗工された幅広の電極基材をスリットするスリット工程と、スリットされた電極スリット材を捲回する捲回工程を有するリチウムイオン二次電池の製造方法において、SAICAS法によって測定された膜厚方向における剥離強度に基づいて、スリット工程又は捲回工程における剥離の良否を判定する判定閾値を設定することを特徴とする。
スリット工程における剥離の起点は、箔12と電極合剤11との界面Bで発生する場合が多いので、SAICAS試験により、箔12と電極合剤11の界面Bにおける密着強度を管理すればスリット工程における剥離を管理することができる。
一方、捲回工程における剥離は、屈曲による応力集中により発生する屈曲剥離であり、その起点は電極合剤11の表面Dに存在する。電極合剤11の表層強度が低いほど、バインダが少なく、活物質が自由に移動できるので、柔軟性が高く、屈曲剥離の起点の発生を抑制することができると考えられる。そのため、SAICAS試験により、電極合剤11の表層強度を管理すれば、捲回工程における剥離を抑制することができる。
【0029】
(2)(1)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、電極合剤11が、バインダ層と活物質層の2層塗工されていること、を特徴とする。2層塗工では、図9に示すように、90度剥離試験の結果と、スリット工程における剥離の発生との相関関係が得られないため、SAICAS試験に基づく密着強度による管理が効果的である。
【0030】
(3)(1)又は(2)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、スリット工程では、箔12と電極合剤11との界面Bから、電極合剤11側へ1μm以上5μm以下の測定位置における界面強度に基づいて、判定閾値を決定すること、を特徴とするので、SAICAS試験の刃先13aが箔12と1μm離間しているおり、刃先13aが箔12に接触することがなく、刃先13aA箔12との摩擦力が作用することがないため、箔12と電極合剤11との密着強度を正確に測定することができる。
また、箔12と電極合剤11との剥離は、界面Bで全てが発生しているのではなく、界面B及び界面近くの電極合剤内で行われていると考えられるので、界面B近傍の電極合剤11内における密着強度を測定することにより、剥離発生との適切な相関関係を得ることができる。
ここで、5μm以下としているのは、活物質の平均粒径が10μmであり、活物質の粒径が5〜15μmのため、その最小粒径より大きいと、活物質間の強度を測定することになり、箔12と電極合剤11との間の密着強度を正確に測定できないからである。
なお、本発明におけるSAICAS試験の条件は、刃13は、BNであり、刃幅は、1mmであり、スクイズ角は、20度であり、逃げ角は、10度であり、水平速度(一定)は、2μm/Sである。
【0031】
(4)(3)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、測定位置が2μmであること、を特徴とするので、特に、2μmの測定位置で測定すると、刃先13aの位置に僅かな誤差があっても、箔12と電極合剤11との密着強度を正確に測定することができる。
(5)(3)又は(4)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、判定閾値である界面強度が44.3N/m以上であること、を特徴とするので、スリット工程における箔12と電極合剤11との剥離の抑制を適切に管理することができる。44.3N/mは、2層高速の水準における界面強度であり、この値以上の界面強度があれば、箔12と電極合剤11との間で剥離が発生しないことを、本発明者は実験により確認している。
【0032】
(6)(1)乃至(5)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法のいずれか1つにおいて、捲回工程では、電極合剤11の表面Dから2μmの測定位置における表層強度に基づいて、判定閾値を決定すること、を特徴とする。
なお、SAICAS試験の条件は、刃13は、BNであり、刃幅は、1mmであり、スクイズ角は、20度であり、逃げ角は、10度であり、水平速度(一定)は、2μm/Sである。
捲回工程における剥離は、屈曲剥離であり、その起点は電極合剤の表層に存在する。電極合剤11の表層強度が低いほど、バインダが少なく、活物質が自由に移動できるので、柔軟性が高く、屈曲剥離の起点の発生を抑制することができると考えられる。逆に言うと、電極合剤の表面強度が高いほど、バインダが多く、活物質が自由に移動できないため、バインダに応力が集中して、破断すると考えられる。
そのため、SAICAS試験により、電極合剤11の表層強度を所定値以下に管理すれば、捲回工程における剥離を抑制することができる。
【0033】
(7)(6)に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、判定閾値である表層強度が18.5N/m以下であること、を特徴とする。
本出願人の実験によれば、SAICAS法により、表層強度が18.5N/m以下であれば、捲回工程において屈曲剥離が発生しないことを確認している。
【0034】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
本実施の形態では、界面強度の閾値を44.3N/mとし、表層強度の閾値を18.5N/mとしているが、これらの値は、電極合剤11の種類等により変化するものであり、その都度実験により求めれば良い。
【符号の説明】
【0035】
11 電極合剤
12 箔
13 刃
13a 刃先
B (電極合剤と箔の)界面
D (電極合剤の)表面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箔の表面に電極合剤が塗工された幅広の電極基材をスリットするスリット工程と、スリットされた電極スリット材を捲回する捲回工程を有するリチウムイオン二次電池の製造方法において、
SAICAS法によって測定された膜厚方向における剥離強度に基づいて、前記スリット工程又は前記捲回工程における剥離の良否を判定する判定閾値を設定することを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、
前記電極合剤が、バインダ層と活物質層の2層塗工されていること、
を特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、
前記スリット工程では、前記箔と前記電極合剤との界面から、前記電極合剤側へ1μm以上5μm以下の測定位置における界面強度に基づいて、前記判定閾値を決定すること、
を特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、
前記測定位置が2μmであること、
を特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、
前記判定閾値である界面強度が44.3N/m以上であること、
を特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法のいずれか1つにおいて、
前記捲回工程では、前記電極合剤の表面から2μmの測定位置における表層強度に基づいて、前記判定閾値を決定すること、
を特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、
前記判定閾値である表層強度が18.5N/m以下であること、
を特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項1】
箔の表面に電極合剤が塗工された幅広の電極基材をスリットするスリット工程と、スリットされた電極スリット材を捲回する捲回工程を有するリチウムイオン二次電池の製造方法において、
SAICAS法によって測定された膜厚方向における剥離強度に基づいて、前記スリット工程又は前記捲回工程における剥離の良否を判定する判定閾値を設定することを特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、
前記電極合剤が、バインダ層と活物質層の2層塗工されていること、
を特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、
前記スリット工程では、前記箔と前記電極合剤との界面から、前記電極合剤側へ1μm以上5μm以下の測定位置における界面強度に基づいて、前記判定閾値を決定すること、
を特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、
前記測定位置が2μmであること、
を特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、
前記判定閾値である界面強度が44.3N/m以上であること、
を特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法のいずれか1つにおいて、
前記捲回工程では、前記電極合剤の表面から2μmの測定位置における表層強度に基づいて、前記判定閾値を決定すること、
を特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、
前記判定閾値である表層強度が18.5N/m以下であること、
を特徴とするリチウムイオン二次電池の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−109853(P2013−109853A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251781(P2011−251781)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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