説明

リチウムイオン二次電池の診断システム及び診断方法

【課題】リチウムイオン二次電池のモジュール電池の性能劣化要因を使用環境と製造工程とに切り分けて診断することができるようにする。
【解決手段】電池製造工程1で得られるモジュール電池とこれに搭載される単電池との製造管理情報が製造品質情報収集処理部4で収集され、データベース6に格納される。電池診断システム3で使用環境にあるモジュール電池2が充電されると、稼動実績処理部5がこのモジュール2の稼動実績情報を収集し、データベース7に格納する。稼動実績監視処理部8は、この稼動実績情報に異常があるか否かを判定し、その判定結果を製造・使用環境の要因分類処理部9に供給する。製造・使用環境の要因分類処理部9は、異常があるとの判定結果の場合、データベース6の当該モジュール電池の製造管理情報を基に、稼動実績情報の異常が製造要因によるか、使用環境要因によるか診断し、その診断結果が診断結果作成処理部10で作成されて表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電が可能なリチウムイオン二次電池を診断する診断システム及びその診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、リチウムイオン二次電池について説明する。
【0003】
図2はリチウムイオン二次電池の動作原理を模式的に示す図であって、100はリチウムイオン二次電池、100aは電池缶、101は正電極(正極)、101aは正極活物質、102は負電極(負極)、102aは負極活物質、103はセパレータ、104は電解液、200は使用環境である。
【0004】
同図において、リチウムイオン二次電池100は、リチウムなど金属酸化物の活物質101aから成る正極101、炭素材料の活物質102aから成る負極102、有機溶媒とリチウム塩から成る電解液104及びセパレータ103が電極缶100a内に収納された構成をなしている。正極101と負極102とはフィルム状をなし、フィルム状のセパレータ103を挟んで電極缶100aの筒形状に応じた筒状の電極対が形成されており、かかる電極対が電極缶100a内に注入されている電解液104内に収納されている。なお、正極101と負極102とのかかる電極対は、ここでは、電極缶100a内に1個を示しているが、複数個設けられており、これらが直列に接続されている。
【0005】
かかる構成のリチウムイオン二次電池100では、正極101,負極102間をリチウムイオンが移動することにより、充電と放電が行なわれる。使用環境200が充電時にあるときには、正極101のリチウムイオンが負極102に移動して充電が行なわれ、使用環境が放電時にあるときには、負極102のリチウムイオンが正極101に移動する。このように、リチウムイオン二次電池100は、原理的には化学反応を伴わない動作原理のため、寿命が長く、エネルギー効率が高いといった特徴を有している。
【0006】
なお、以下では、図2に示す構成の1つのリチウムイオン二次電池を「単電池」といい、かかる単電池を複数組み込んで構成される1つのリチウムイオン二次電池を「モジュール電池」という。
【0007】
図3はリチウムイオン二次電池の単電池及びモジュール電池の製造工程を模式的に示す図である。
【0008】
同図において、リチウムイオン二次電池100の製造工程は、正極材料製造工程110と負極材料製造工程111と単電池の組立工程112とモジュール電池の組立工程113とからなる。
【0009】
正極材料製造工程110では、まず、正極材料の原料となる各種材料を混練,調合して、スラリー材料を作成する。そして、フィルム状の金属箔にこのスラリー材料を塗工した後、スラリーが塗工された金属箔に圧縮や切断といった加工が行なわれて、フィルム状の正極材料が製造される。
【0010】
負極材料製造工程111では、正極材料製造工程110とは使用される原料となる各種材料は異なるが、手順は同じであって、負極材料の原料となる各種材料を混練,調合して、スラリー材料を作成し(混練,調合)、フィルム状の金属箔にこのスラリー材料を塗工した後(塗工)、スラリーが塗工された金属箔の圧縮や切断といった加工が行なわれて(加工)、フィルム状の負極材料が製造される。
【0011】
リチウムイオン二次電池の単電池の組立工程112では、捲回と呼ばれる工程で、上記のフィルム状の正極材料,負極材料から単電池に必要な大きさの正極,負極を切り出すとともに、これら正極材料と負極材料を分離するためのフィルム状のセパレータ材料から単電池に必要な大きさのセパレータ切り出し、これら正極,負極をセパレータを挟んで重ねて捲き合わせる(捲回)。そして、捲き合わさった正極,負極及びセパレータの電極対の群を組み立てて溶接し、これら電極対の群を電解液が注入(注液)された電池缶内に配置された後、この電池缶を完全に密閉する(封口)。このようにして、単電池が作成される。
【0012】
次に、この作成されたリチウムイオン二次電池の単電池で充放電が繰り返し行なわれ、このリチウムイオン二次電池の単電池の性能及び信頼性に関する検査を行なう(単電池検査)。これにより、単電池が完成し、単電池組立工程が終了する。
【0013】
次に、モジュール電池組立工程113では、単電池を複数個直列に組み合わせ、さらに、コントローラを接続してモジュール電池を製造する(モジュール組立)。その後、このリチウムイオン二次電池のモジュール電池の性能及び信頼性に関する検査を行なう(モジュール検査)。これにより、リチウムイオン二次電池のモジュール電池が完成して出荷されることになる。
【0014】
図4はリチウムイオン二次電池の充電方法の手順を示すフローチャートである。この充電方法は、図3における単電池組立工程112での「充放電」,「単電池検査」やモジュール電池組立工程113での「モジュール検査」で行なわれるものである。
【0015】
同図において、充電装置にリチウムイオン二次電池が装着されると、接続のチェック(ステップS100)及び温度のチェック(ステップS101)が行なわれ、これらに異常がなければ、充電前のこのリチウムイオン二次電池の電圧を測定する(ステップS102)。接続状態,温度及び充電前の二次電池の電圧が所定範囲から外れる場合(ステップS100,S101,S103で“No”)、異常として充電処理を終了する(ステップS107)。
【0016】
接続状態,温度及び充電前のリチウムイオン二次電池の電圧が所定範囲内にあって、正常である場合には(ステップS100,S101,S103で“Yes”)、一定の電圧をこのリチウムイオン二次電池に印加して充電を行なう(ステップS104)。充電処理時は、充電に要する時間をチェックしながら、リチウムイオン二次電池の電流を測定し、電流値が所定より小さくなるまで充電処理を繰り返す(ステップS105,S106の“No”,ステップS104の繰り返し)。そして、充電時間が所定値になる前に(ステップS105の“Yes”)、電流値が所定値より小さくなると(ステップS106の“Yes”)、このリチウムイオン二次電池は正常に充電されたとして、充電を終了する。しかし、充電時間が所定値になっても、電流値が所定値より小さくならないときには(ステップS105の“No”)、異常として充電処理を終了する(ステップS107)。
【0017】
個のようにして、正常な充電結果が得られたリチウムイオン二次電池のモジュール電池は、充電された状態で出荷され、それが購入された使用者が用いる使用環境の下で使用されることになる。
【0018】
図5はリチウムイオン二次電池の充電処理時の電圧と電流の推移を模式的に示す図である。
【0019】
充電時のリチウムイオン二次電池の電圧は、充電処理に伴なって増加する一方、充電電流は一定の状態を保ちながら、充電が完了に近い段階になると、急激に低下する。
【0020】
二次電池の充電を行なうとき、通常この二次電池には電圧が残留している。図5(a)は充電の開始電圧を二次電池の残留電圧とするときの充電処理時の電圧と電流の推移を示すものであり、この場合には、二次電池を充電装置に装着すると、直ちに充電処理が行なわれるものである。
【0021】
これに対し、図5(b)は二次電池を充電装置に装着すると、まず、この二次電池に残留する電気を放電させて残留電圧を0(V)にし、しかる後、この0(V)を充電開始電圧として、充電処理を開始するものである。この場合には、まず、二次電池から放電電流が流れ、しかる後、上記のように、電圧が充電処理に伴なって増加する一方、充電電流が一定の状態を保ちながら、充電が完了に近い段階になると、急激に低下する。
【0022】
リチウムイオン二次電池は、充電と放電とを繰り返して使用される。リチウムイオン二次電池の安全性、信頼性を確保するため、充電時または放電時の二次電池の電圧及び電流を測定し、その測定結果に基づき二次電池の性能に問題がないかどうかを把握するための診断が行なわれる。
【0023】
その一従来例として、電池の電圧・電流から内部インピダンスを計算し電池の寿命を診断している技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0024】
他の従来例としては、充電及び放電時の電圧と電流特性を測定し、所定周波数領域に対する特性インピダンスの測定結果から特性因子を数値化して、電池の状態を診断し、また、製造工程でも、安全性,信頼性を確保するために、電池特性に応じてモジュールで使用する電池を選別するようにした技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0025】
さらに、他の従来例として、電池のインピダンススペクトルを基に、パターンマッチング手法を用いて、類似したスペクトルを持つ単電池を分類し、モジュール電池内の標準偏差が小さくなるように、単電池を選別することにより、モジュール電池の信頼性を高めているようにした技術も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特表2006−524332公報
【特許文献2】特開2000−156248公報
【特許文献3】特開平10−312823公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
リチウムイオン二次電池には、高い安全性,信頼性が求められる。その製造工程では、材料の均一性劣化や異物混入などによる製品の安全性及び信頼性低下のポテンシャルがあるため、製造工程の最終工程で単電池及びモジュール電池毎の検査を行ない、製造不具合のある電池を選別している。出荷後のモジュール電池は使用状況に応じて性能が劣化する。電池の劣化の度合いは、個別のモジュール電池の使用環境及び製造工程における製造ばらつきによって決まる。使用環境に起因する劣化は避けられない経時変化であるが、製造工程に起因する劣化度合いの違いは、製造工程の改善でもって対処することができる。
【0028】
また、製造要因となる製造履歴を有するモジュール電池は、性能劣化加速のポテンシャルが高く、他のモジュール電池と比べて、早めの交換を行なうなどの対策が重要である。従来の公知技術では、個別のモジュール電池もしくは単電池の状態のモニタリングにより、個別の劣化度合いを把握することはできるが、製造と使用環境に分類した劣化要因の特定を行なうことはできない。
【0029】
本発明は、かかる問題を解消し、モジュール電池の性能劣化要因を使用環境要因と製造工程要因(製造要因)とに切り分けて診断することができるようにしたリチウムイオン二次電池の診断システム及び診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記目的を達成するために、本発明によるリチウムイオン二次電池の診断システムは、リチウムイオン二次電池の単電池や単電池を用いたモジュール電池の製造工程から製造品質情報を収集する製造品質情報収集処理部と、製造品質情報収集処理部が収集した製造品質情報を蓄積する製造品質管理データベースと、使用環境で稼働中のモジュール電池から稼動実績情報を収集する稼動実績情報収集処理部と、稼動実績情報収集処理部が収集した稼動実績情報を蓄積する稼動実績データベースと、稼動実績情報を用いてモジュール電池の稼動状況の監視を行なう稼動実績監視処理部と、製造品質管理データベースでの製造品質情報と稼動実績データベースでの稼動実績情報とを用いて、稼動実績監視処理部で検出された稼動実績の異常の要因が使用環境要因か製造要因かの切り分けを行なう製造・使用環境の要因分類処理部と、稼動実績監視処理部の処理結果と製造・使用環境の要因分類処理部の処理結果とに基づいて、診断対象となるモジュール電池の診断結果を作成する診断結果作成処理部とから構成されることを特徴とする。
【0031】
また、本発明によるリチウムイオン二次電池の診断システムは、稼動実績情報収集処理部は、モジュール電池の充電終了後に当該モジュール電池の稼動実績情報を収集し、製造・使用環境の要因分類処理部は、稼動実績監視処理部が稼動実績情報収集処理部で収集した稼動実績情報を基に稼働実績の異常が有ることを検出したとき、稼動実績の異常の要因が使用環境要因が製造要因かの切り分けを行なうことを特徴とする。
【0032】
さらに、本発明によるリチウムイオン二次電池の診断システムは、製造品質情報収集処理部と製造品質管理データベースとが、モジュールを製造する製造工程を有する電池製造管理システムに設けられ、稼動実績情報収集処理部は、モジュール電池を充電する充電システムに設けられ、稼動実績データベースと稼動実績監視処理部と製造・使用環境の要因分類処理部と診断結果作成処理部とが電池診断システムを構成し、電池製造管理システムと充電システムと電池診断システムとがネットワークを介して接続された構成をなすことを特徴とする。
【0033】
上記目的を達成するために、本発明によるリチウムイオン二次電池の診断方法は、稼動実績情報収集手段を用いて、稼動中のリチウムイオン二次電池のモジュール電池の稼動実績情報を収集する第1のステップと、稼動実績監視手段を用いて、取得したモジュール電池の稼動実績情報に異常があるかどうか判定する第2のステップと、製造・使用環境の要因分類手段を用いて、稼動実績に異常がある当該モジュール電池及びその単電池の製造品質情報を取得し、製造品質情報の製品検査情報の比較処理により、製造要因の有意差があるかどうかを判定する第2のステップと、稼動実績監視手段及び製造・使用環境の要因分類手段での処理結果に基づいて、当該モジュール電池の診断結果を作成する第4のステップとからなり、第1〜第4のステップの一連の処理を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によると、リチウムイオン二次電池のモジュール電池の診断において、個々のモジュール電池の使用環境での稼動実績情報及び製造工程の品質管理情報に応じて、モジュール電池の性能劣化要因を使用環境要因及び製造工程要因に切り分ける診断処理を実施する機能を有するため、製造工程における性能劣化対策が可能となり、モジュール電池の信頼性を向上することができる。また、製造要因となる製造履歴を持つモジュール電池及び単電池に対する診断処理の指示により、不具合が発生する前段階での異常の有無を把握することができ、リチウムイオン二次電池の信頼性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明によるリチウムイオン二次電池の診断システム及び診断方法の第1の実施形態を示すブロック構成図である。
【図2】リチウムイオン二次電池の動作原理を模式的に示す図である。
【図3】リチウムイオン二次電池の単電池及びモジュール電池の製造工程を模式的に示す図である。
【図4】リチウムイオン二次電池の充電方法の手順を示すフローチャートである。
【図5】リチウムイオン二次電池の充電処理時の電圧と電流の推移を模式的に示す図である。
【図6】図1での電池製造工程1における単電池工程1cで製造されたリチウムイオン二次電池の単電池の種類を示す図である。
【図7】図1での電池製造工程1におけるモジュール組立工程1eで製造されたリチウムイオン二次電池のモジュール電池の構成を模式的に示す斜視図である。
【図8】図1での工程1a〜1bから取得した情報に基づく単電池の製造履歴情報の一具体例を示す図である。
【図9】図1での単電池検査工程1dから取得した情報に基づく製造検査情報の一具体例を示す図である。
【図10】図1でのモジュール電池組立工程1eから得られる情報に基づく製造履歴情報の一具体例を示す図である。
【図11】図1でのモジュール電池検査工程1fから得られる情報に基づく製品検査情報の一具体例を示す図である。
【図12】使用環境にあるモジュール電池から得られる稼働データに基づく稼動実績情報の一具体例を示す図である。
【図13】使用環境にあるモジュール電池から得られる稼働データに基づくモジュール電池の単電池単位の稼動実績情報の一具体例を示す図である。
【図14】図1における電池診断システムによる使用環境にあるリチウムイオン二次電池のモジュール電池の診断処理の流れの一具体例を示すフローチャートである。
【図15】図1における稼働実績監視処理部8が実行する図14におけるステップS201の処理の一具体例を示すフローチャートである。
【図16】図15に示す稼動実績監視処理におけるモジュール電池の稼動実績情報の異常判定結果を表わす出力画面を示す図である。
【図17】図1における製造・使用環境の要因分類処理部による図14における稼動異常の製造・使用環境の要因分類処理のステップS203の一具体例を示すフローチャートである。
【図18】図17でのステップS401で作成された以上の有無判定の対象となる当該モジュール電池の製造履歴リストの出力結果の一具体例を示す図である。
【図19】図17のステップS403での製造品質の有意差の比較処理の一具体例を示す図である。
【図20】図1における診断結果作成処理部10による図14における診断結果作成処理のステップS206の一具体例を示すフローチャートである。
【図21】図20でのステッフS507で得られた製造要因の有意差判定の診断結果の出力画面の一具体例を示す図である。
【図22】図1での診断結果作成処理部10で作成された画面表示される診断対象のモジュール電池2の診断結果の一具体例を示す図である。
【図23】本発明によるリチウムイオン二次電池の診断システム及び診断方法の第2の実績形態を示すブロック図である。
【図24】本発明によるリチウムイオン二次電池の診断システム及び診断方法の第3の実績形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
【0037】
図1は本発明によるリチウムイオン二次電池の診断システム及び診断方法の第1の実施形態を示すブロック構成図であって、1は製造工程、1aは材料受入工程、1bは電極製造工程、1cは単電池組立工程、1dは単電池検査工程、1eはモジュール組立工程、1fはモジュール検査工程、2は稼働中(使用環境)のモジュール電池、3は電池診断システム、4は製造品質情報収集処理部、5は稼動実績情報収集処理部、6は製造品質管理データベース、7は稼動実績データベース、8は稼動実績監視処理部、9は製造・使用環境の要因分類処理部、10は診断結果作成処理部である。
【0038】
同図において、電池診断システム3は、製造工程1から単電池やモジュール電池の製造過程で得られる各種のデータを収集して処理し、モジュール電池やその単電池の製造品質情報を作成する製造品質情報収集処理部4と、製造品質情報収集処理部4で作成された製造品質情報を格納保持する製造品質管理データベース6と、使用環境で稼働中のモジュール電池2から、その充電時、その稼動実績情報を収集して処理する稼動実績情報収集処理部5と、稼動実績情報収集処理部5が収集して処理した稼動実績情報を格納保持する稼動実績データベース7と、稼動実績情報収集処理部5が収集して処理した稼動実績情報を用いてモジュール電池2の稼動状況の監視を行なう稼動実績監視処理部8と、稼動実績監視処理部8の監視結果を基に、製造品質管理データベース6の製造品質情報と稼動実績データベース7の稼動実績情報とを用いて稼動実績の異常要因が使用環境要因か製造要因かの切り分けを行なう製造・使用環境の要因分類処理部9と、稼動実績監視処理部8と製造・使用環境の要因分類処理部9の処理結果とに基づいて、診断対象となるモジュール電池2の診断結果を作成する診断結果作成処理部10とから構成される。
【0039】
電池製造工程1は、図3に示す電池製造工程に相当するものであって、材料受入工程1aは、図2での単電池の正極101や負極102などの材料を受け入れる工程であって、図3での正極材料製造工程110及び負極材料製造工程111に相当する工程である。電極製造工程1bは、受け入れた材料でもって正極101や負極102を製造する図3での単電池組立工程112の捲回,溶接・組立に相当する工程である。単電池組立工程1cは、図3の単電池組立工程112での注液,封口の工程に相当するものであって、単電池検査工程1dは、同じく図3の単電池組立工程112での充放電〜単電池検査の工程に相当するものである。モジュール組立工程1eは、図3のモジュール電池組立工程113でのモジュール組立の工程に相当し、モジュール検査工程1fは、同じく図3のモジュール電池組立工程113でのモジュール検査の工程に相当する。
【0040】
図6は図1での電池製造工程1における単電池工程1cで製造されたリチウムイオン二次電池の単電池の種類を示す図であって、11は単電池、12が管理番号マーク、13はラミネール、14は正極、15は負極である。
【0041】
図6(a)は円筒型の単電池11を示すものであって、図2に示す構成をなしてその電極缶100aが円筒状をなすものである。この単電池11の表面にこの単電池11を管理するための、例えば、バーコードからなる読み取り可能な管理マーク12が付けられている。製造品質情報収集処理部4(図1)は、製造される単電池11毎に、その管理番号マーク12から読み取られた単電池11の管理番号とその単電池11の製造品質情報とを互いに関連付けて電池製造工程1(図1)から収集する。
【0042】
図6(b)は角型の単電池11を示すものであって、図2に示す構成をなしてその電極缶100aが角型をなすものである。この単電池11の表面にこの単電池11を管理するための、例えば、バーコードからなる読み取り可能な管理番号マーク12が付けられている。製造品質情報収集処理部4(図1)は、電池製造工程1から収集したデータを基に、製造される単電池11毎に、製造品質情報を作成し、単電池11の管理番号マーク12から読み取られたこの単電池11の管理番号とその単電池11の製造品質情報とを互いに関連付ける。
【0043】
図6(c)はラミネート型の単電池11を示すものであって、図2に示す構成がラミネール13内に密閉封入されており、正極14と負極15との一部がこのラミネール13から外部に突出している。このラミネール13の表面にこの単電池11を管理するための、例えば、バーコードからなる読み取り可能な管理番号マーク12が付けられている。製造品質情報収集処理部4(図1)は、電池製造工程1から収集したデータを基に、製造される単電池11毎に、製造品質情報を作成し、単電池11の管理番号マーク12から読み取られたこの単電池11の管理番号とその単電池11の製造品質情報とを互いに関連付ける。
【0044】
図7は図1での電池製造工程1におけるモジュール組立工程1eで製造されたリチウムイオン二次電池のモジュール電池2の構成を模式的に示す斜視図であって、16は電池缶、17は管理番号マーク、18はコントローラであり、図6に対応する部分には同一符号を付けている。
【0045】
同図において、モジュール電池2は、電池缶16内に複数の単電池11を配列し、このモジュール電池2の図示しない正極,負極間にこれら単電池を直列に接続したものである。このモジュール電池2の電池缶16の表面には、このモジュール電池2を管理するための、例えば、バーコードからなる読み取り可能な管理番号マーク17が付けられており、また、電池缶16の表面に使用環境にあるこのモジュール電池2の実績を管理するためのコントローラ18が設けられている。これら管理番号マーク17やコントローラ18は、電池缶16の表面の適宜の場所に取り付けられる。製造品質情報収集処理部4(図1)は、組み立てられたモジュール2毎に、製造品質情報を作成し、モジュール電池2の管理番号マーク17から読み取られたモジュール電池2の管理番号とそのモジュール電池2の製造品質情報とを互いに関連付ける。
【0046】
なお、コントローラ18は、後述する累積充電/放電サイクル回数をカウントするカウンタやモジュール電池2の出荷からの経過時間を計測するタイマ,充放電情報や単電池11に関する情報などを取得するための手段などを備え、また、このモジュール電池2が正常に稼働するときのデータを表わす正常稼働モデルを保持しており、充電時などでは、かかるデータを、稼働データとして、稼働実績情報収集処理部5を提供する。
【0047】
図1において、製造品質情報収集処理部4は、リチウムイオン二次電池の製造工程1からその単電池11やモジュール電池2の製造に関する各種の情報、即ち、材料受入工程1aでの正極や負極などの材料に関する検収データや電極製造工程1bでの正極や負極の電極の製造に関する製造条件などのデータ,単電池組立工程1cでの単電池組立の際に得られるQC(Quality Check)検査データ、単電池検査工程1dでの製造された単電池の検査で得られた製品検査データ、モジュール組立工程1eでのモジュール電池の組立の際に得られるQC検査データ,モジュール検査工程1fでの製造されたモジョール電池の検査で得られた製品検査データをモジュール電池やその単電池の管理番号と関連付けて収集し、これらデータから単電池11やモジュール電池2の製造品質情報を作成して製造品質管理データベース6に格納する。製造品質情報としては、材料受入工程1a〜単電池組立工程1cにおける製造履歴情報(単電池11の製造順序やその材料の使用順序などの情報)や単電池検査工程1dにおける製品検査情報、モジュール組立工程1eにおける製造履歴情報(モジュール電池2の製造順序や単電池11の使用順序などの情報)やモジュール検査工程1fにおける製品検査情報がある。
【0048】
単電池組立の製造履歴情報は単電池11の管理番号毎に収集されるものであるが、この単電池組立の製造履歴情報としては、単電池11の組立に使用した電極材料の材料種類毎の名称(またはコード)や管理番号(例えば、ロット番号)、処理を行なう製品・工程の名称(またはコード)、処理日時、製造装置の名称(またはコード)、レシピ名(当該製品・工程で使用する製造装置の動作プログラム名称)がある。
【0049】
モジュール電池2の製造履歴情報はモジュール電池2の管理番号に対応して収集されるものであるが、このモジュール電池2の製造履歴情報としては、組立日時、使用される単電池11の管理番号、コントローラ18などの部品の管理番号がある。
【0050】
単電池11の製品検査情報としては、単電池11の管理番号、検査日時、容量・電圧といった性能データの他に、この単電池11の充電/放電(この「放電」とは、図5(b)に示すように、充電装置による単電池11の残留電圧の放電をいうものである。以下同様)時の電流,電圧のアナログデータなどがある。また、モジュール電池2の製品検査情報としては、モジュール電池2の管理番号、検査日時、容量・電圧といった性能データの他に、このモジュール電池2の充電/放電(この「放電」とは、図5(b)に示すように、充電装置によるモジュール電池2の残留電圧の放電をいうものである。以下同様)時の電流、電圧のアナログデータなどがある。
【0051】
稼動実績情報処理部5は、使用環境にあるモジュール電池2の稼動時の動作データなどの稼動実績情報を、このモジュール電池2に設けられた管理番号マーク17から得られる管理番号とともに、そのモジュール電池2に設けられたコントローラ18(図7)から取得し、稼動実績情報管理データベース7に格納する。モジュール電池2の稼動実績情報としては、このモジュール電池2の出荷してから現在までの充電の累積回数である累積充放電サイクル数,このモジュール電池2を出荷してから現在までの時間である経過時間や、これらに対応した電池の容量,電圧といった性能データの他に、充電/放電時の図5で示したような電流,電圧のアナログデータなどがある。モジュール電池2のかかる稼働実績情報は、このモジュール電池2のコントローラ18で得られて蓄積されている。なお、コントローラ18には、このモジュール電池が正常に稼働するときの上記の性能データなど設定値が、正常稼動モデルとして、設定されている。
【0052】
かかるモジュール電池2をネットワークに接続された充電システムで充電処理が行なわれるとき、稼動実績情報処理部5がネットワークを介してこのモジュール電池2のコントローラ18からその稼動実績情報を、正常稼働モデルとともに、取得することができるし、通信機能を有する機器システムにこのモジュール電池2が搭載されて使用される場合には、機器システムの通信機能を用いてこのコントローラ18からこのモジュール電池2の稼動実績情報を、正常稼働モデルとともに、取得することができる。また、モジュール電池2が定期的に点検を行なう機器システムに搭載されて点検が行なわれるとき、専用のデータ収集装置を用いてこのモジュール電池2のコントローラ18内の稼動実績情報を、正常稼働モデルとともに、取得することもできる。
【0053】
稼動実績監視処理部8は、稼動実績情報処理部5がモジュール電池2から新規に稼動実績情報を取得し、これを稼動実績管理データベース7に格納すると、この稼動実績管理データベース7より、このモジュール電池2の稼動実績情報と正常稼動モデルを取得し、稼動実績情報と正常稼動モデルとに基づいて、このモジュール電池2の稼動実績の異常の有無を判定する。
【0054】
製造・使用環境の要因分類処理部9は、稼動実績監視処理部8によってモジュール電池2の稼動実績に異常有りとの判定があると、製造品質管理データベース6より製造品質情報を取得し、この製造品質情報に基づいて製造要因の有無を判定する。診断結果作成処理部10は、稼動実績監視処理部8及び製造・使用環境の要因分類処理部9の処理結果に基づいて診断対象となるモジュール電池2の診断結果を作成する。
【0055】
製造品質管理データデータ6は、単電池11の管理番号に対応した製品名、工程名(またはコード)、処理日時、製造装置の名称(またはコード)、レシピ名(当該製品・工程で使用する製造装置の動作プログラム名称)、材料種類毎の名称(またはコード)・管理番号(例えば、ロット番号)、単電池11の製品検査情報(容量、電圧といった性能データ等)及び、モジュール電池2の管理番号に対応した単電池11の管理番号、コントローラなどの部品の管理番号、モジュール電池2の製品検査情報(容量、電圧といった性髄データ等)が登録される。
【0056】
稼動実績管理データデータ7は、モジュール電池2または単電池11の管理番号に対応した累積充放電サイクル数、累積経過時間、容量、電圧といった性能データ及び正常稼動モデルが登録される。
【0057】
図8は図1での工程1a〜1bから取得した情報に基づく単電池11の製造履歴情報の一具体例を示す図であって、20は単電池11の製造履歴情報である。
【0058】
単電池11の製造で正極と負極とセパレータとを重ねて捲き合わせる図3における捲回工程が行なわれるが、この捲回工程が行なわれた単電池11に、この捲回工程を受けた順に、その順番に対応した整理番号が設定される。図1における製造品質情報収集処理部4は、捲回工程を受けた単電池11に設定された整理番号20aを、この単電池11の正極や負極,セパレータに関する情報とともに、材料受入工程1a,電極製造工程1bから取得し、これを処理して図8に示す製造履歴情報20を作成し、製造品質管理データベース6に格納する。
【0059】
単電池11の製造履歴情報20では、図8に示すように、取得された単電池11の整理番号20aがその取得順に配列され、この整理番号20a毎に(即ち、単電池11毎に)、捲回を行なった日時20b,正極材料の管理番号及び正極材料20cの調合に使用された各種材料(調合材料1,2,……)の管理番号などからなる正極情報20c,負極材料の管理番号及び負極材料の調合に使用された各種材料(調合材料1,2,……)の管理番号,セパレータ20eの管理番号などからなる負極情報20dが含まれる。
【0060】
正極材料や負極材料はフィルム状の金属箔から製造されており、1つの正極材料や負極材料から夫々複数の正極,負極を作成できて複数の単電池の製造に用いることができるから、同じ正極材料や負極材料から作成された正極,負極の単電池11は、正極材料,負極材料や調合材料の整理番号は同じとなる。図示する製造履歴情報20によると、整理番号B01,B02の単電池11は、正極情報20cと正極情報20dとセパレータ20eが同じであるが、整理番号B03の単電池は、整理番号B01,B02の単電池11とは異なるセパレータが使用されていることになる。また、整理番号B04〜B06の単電池11では、正極情報20cで調合材料1が整理番号B01〜B03の単電池11とは正極情報20cで同じ調合材料1が使用されており、それ以外の正極情報20cや正極情報20dは整理番号B01〜B03の単電池11とは異なっていることになる。
【0061】
図9は図1での単電池検査工程1dから取得した情報に基づく製造検査情報の一具体例を示す図であって、21は単電池11の製造検査情報である。
【0062】
同図において、単電池11の製造検査情報21は、取得された単電池11の整理番号20aがその取得順(即ち、検査順)に配列され、この整理番号20a毎に(即ち、単電池11毎に)、検査日時21a,検査項目21bなどが含まれる。検査項目21bとしては、単電池11の検査時に得られた電圧,電流,容量などが含まれる。
【0063】
図10はモジュール電池組立工程1eから得られる情報に基づく製造履歴情報の一具体例を示す図であって、22はモジュール電池2の製造履歴情報である。
【0064】
図1のモジュール組立工程1eでは、複数の単電池11を用いてモジュール電池2が組み立てられるが、この組み立てられたモジュール電池2に、その組立順に、その順番に対応した整理番号(モジュール整理番号)が設定される。図1における製造品質情報収集処理部4は、組み立てられたモジュール電池2に設定されたモジュール整理番号22aを、このモジュール電池2に関する情報とともに、モジュール組立工程1eから取得し、これを処理して図10に示すモジュール電池2の製造履歴情報22を作成し、製造品質管理データベース6に格納する。
【0065】
このモジュール電池2の製造履歴情報22では、図8に示すように、取得されたモジュール電池2の整理番号22aがその取得順に配列され、この整理番号22a毎に(即ち、モジュール電池2毎に)、モジュール電池2の組立日時22b,このモジュール電池2に用いられている単電池11の管理番号22c,このモジュール電池2に取り付けられたコントローラ18(図7)の整理番号などが含まれる。
【0066】
図11はモジュール電池検査工程1fから得られる情報に基づく製品検査情報の一具体例を示す図であって、23はモジュール電池2の製品検査情報である。
【0067】
同図において、この製品検査情報23は、取得されたモジュール電池2の整理番号22aがその取得順(即ち、検査順)に配列され、この整理番号22a毎に(即ち、モジュール電池2毎に)、検査日時23a,検査項目23bなどが含まれる。検査項目23bとしては、モジュール電池2の電圧,電流,容量などが含まれる。
【0068】
図12は使用環境にあるモジュール電池2から得られる稼働データに基づく稼動実績情報の一具体例を示す図であって、24は稼動実績情報である。
【0069】
同図において、出荷後の使用環境にあるモジュール電池2では、そのコントローラ18(図7)から、例えば、その充電時、稼働実績情報収集処理部5(図1)が稼働データを取り込み、この稼働データを処理して図12に示す稼動実績情報24を作成し、稼働実績管理データベース7(図1)に格納するとともに、稼働実績監視処理部8に供給する。
【0070】
この稼動実績情報24では、稼働データを取得する順にモジュール電池2の整理番号22aがに配列され、この整理番号22a毎に(即ち、モジュール電池2毎に)、充電を行なった日時24aと、累積充電サイクル回数24bと、出荷後の経過時間24cと、充電処理時のモジュール電池2の電圧や電流,容量といった性能データなどが含まれる。モジュール電池2の管理番号毎の累積充電サイクル回数は必ず連続するデータではない。
【0071】
図13は使用環境にあるモジュール電池2から得られる稼働データに基づくモジュール電池2の単電池単位の稼動実績情報の一具体例を示す図であって、25は稼動実績情報である。
【0072】
同図において、この稼動実績情報25では、各モジュール電池2において、その単電池の管理番号20a毎に充電を行なった日時、累積充電サイクル回数、出荷後の経過時間(これらは、同じモジュール電池2では、同じ)の他、単電池11の管理番号20a毎の充電処理時の単電池11の電圧,電流,容量といった性能データなどが含まれる。
【0073】
図14は図1における電池診断システム3による使用環境にあるリチウムイオン二次電池のモジュール電池2の診断処理の流れの一具体例を示すフローチャートである。
【0074】
同図において、モジュール電池2の充電時などで稼働実績情報収集処理部5(図1)が当該モジュール電池2から稼働データと正常稼動モデルとを収集し、この稼働データを処理して図12に示す稼働実績情報24を作成し(なお、図13に示す稼働実績情報25であってもよいが、以下では、図12に示す稼働実績情報24について説明する)、これと正常稼動モデルとを稼働実績管理データベース7(図1)に格納するとともに、稼働実績監視処理部8に供給する。これにより、稼働実績監視処理部8が充電された当該モジュール電池2の稼働実績情報24と正常稼動モデルとを取得する(ステップS200)。
【0075】
稼働実績監視処理部8は、取得した稼働実績情報24と正常稼動モデルとの比較処理を行ない(ステップS201)、当該モジュール電池2の稼働実績で異常が有るか否かの判定を行なう(ステップS202)。この異常判定方法については、図15を用いて後述する。当該モジュール電池2の稼動実績に異常がなければ(ステップS202の“No”)、その判定結果を製造・使用環境の要因分類処理部9(図1)に出力する。製造・使用環境の要因分類処理部9は、その判定結果を診断結果作成処理部10(図1)に通知し(ステップS205)、診断結果作成処理部10は、この判定結果を基に、診断結果の作成を行なう(ステップS206)。
【0076】
当該モジュール電池2の稼働実績で異常が有ると判定した場合でも(ステップS202の“Yes”)、その判定結果が製造・使用環境の要因分類処理部9に送られる。製造・使用環境の要因分類処理部9は、製造品質管理データベース6から当該モジュール電池2に該当する製造品質情報(即ち、当該モジュール電池2に用いられている単電池11の製造履歴情報20(図8)や製造検査情報21(図9)、当該モジュール電池2の製造履歴情報22(図10)や製造検査情報23(図11))を取得し、この製造品質情報を基に、当該モジュール電池2が異常となる製造要因を有するか否かを判定するための製造・使用環境の要因分類処理を実行開始し(ステップS203)、当該モジュール電池2の稼働実績情報に異常が有ることの要因として、製造要因の有意差が有るか否かの判定を行なう(ステップS204)。製造要因の有意差が有る場合には(ステップS204の“Yes”)、その旨の判定結果情報を、また、製造要因の有意差がない場合にも(ステップS204の“No”)、その旨の判定結果情報を診断結果作成処理部10(図1)に送り(ステップS205)、診断結果作成処理部10は、この判定結果を基に、診断結果の作成を行なう(ステップS206)。
【0077】
図15は図1における稼働実績監視処理部8が実行する図14におけるステップS201の処理の一具体例を示すフローチャートである。ここでは、モジュール電池2の稼動実績情報が図12に示す稼動実績情報24であるものとして説明する。
【0078】
同図において、稼働実績監視処理部8は、ステップ201において、充電していて監視対象となったモジュール電池2の稼動実績情報24を取得すると、この稼動実績情報から当該モジュール電池2の累積充電サイクル回数24b,経過時間24c及びこのモジュール電池2の測定項目24dの性能データを抽出する。このモジュール電池2の性能データは、ここでは、モジュール単位のものであるが、図13に示す稼動実績情報25の場合には、モジュール電池2内の単電池単位のものとなる(ステップS300)。
【0079】
次に、当該モジュール電池2の正常の稼動実績を表わす正常稼動モデルを取得する(ステップS301)。正常稼動モデルは、累積充電サイクル回数に対する正常となるモジュール電池2の性能データ推移の範囲を示す上・下限のしきい値や、経過時間に対する正常となるモジュール電池2の性能データ推移の範囲を示す上・下限のしきい値を表わすデータなどからなるものであり、性能データの種類毎に正常稼動モデルが設定されている。また、累積充電サイクル回数や経過時間に対する電池性能データのかかる上・下限しきい値は、過去実績データに基づいて、多項次数近似式にて表現することができる。例えば、3次近似式の場合、図12,図13に示すような性能データの測定項目iに対する上限しきい値,下限しきい値は夫々、4つの係数「a_uk(i)」,「a_lk(i)」(但し、k=0,1,2,3)でもって、累積充電サイクル回数、または、経過時間を変数tとする3次近似式として、次の数1で示すように表現される。
【0080】
(数1)
上限しきい値=a_u3(i)×t3+a_u2(i)×t2
+a_ul(i)×t+a_uO(i)
下限しきい値=a_13(i)×t3+a_12(i)×t2
+a_11(i)×t+a_10(i)。
【0081】
そして、当該モジュール電池2の稼動実績情報と正常稼動モデルに基づいて、当該モジュール電池2の性能データの夫々の測定項目iの稼動実績がそれに該当する正常稼動モデルから外れているかどうかの判定を行なう(ステップS303)。正常稼動モデルから外れた稼働実績が1つでもある場合には、稼動実績異常として(ステップS303の“Yes”)、処理を終了する。正常稼動モデルから外れた稼動実績が存在しない場合には、今回取得したモジュール電池2の夫々の稼動実績を該当する夫々の正常稼動モデルに追加して、夫々の正常稼動モデルを更新する(ステップS304)。
【0082】
上記のように多項次数近似式によって表現される正常稼動モデルでは、新規取得したモジュール電池2の稼動実績を追加したデータを用いた最小2乗近似により、多項次数近似式の各係数を更新することができる。
【0083】
図16は図15に示す稼動実績監視処理におけるモジュール電池2の稼動実績情報の異常判定結果を表わす出力画面を示す図である。
【0084】
過去の稼動実績情報に基づいて算出された正常稼動モデルは、性能データの種類毎に累積充電サイクル回数もくしは経過時間に対応した上・下限しきい値で表現される。診断対象となるモジュール電池2の稼動実績データを、図16に示すように、プロットし、正常稼動モデルの上下限しきい値の範囲にプロットした点が含まれるかどうかを判定することにより、異常な稼働実績があるか否かを判定する。
【0085】
図16において、診断対象のモジュール電池2の■印で示す稼動実績データは下限しきい値を下回るため、この稼動実績は異常と判定される。なお、モジュール電池2の性能データは、モジュール単位もしくはモジュール電池2内の単電池単位のいずれであってもよい。
【0086】
図17は図1における製造・使用環境の要因分類処理部9による図14における稼動異常の製造・使用環境の要因分類処理のステップS203の一具体例を示すフローチャートである。
【0087】
同図において、製造・使用環境の要因分類処理部9は、ステップ301において、要因分類処理の対象となる当該モジュール電池2に対して、それに該当する製造品質管理情報を製造品質管理データベース6(図1)から取得する(ステップS400)。
【0088】
モジュール電池2の製造品質管理情報としては、このモジュール電池2の製造履歴情報や製品検査情報だけでなく、このモジュール電池2に搭載されている単電池11の製造履歴情報や製品検査情報も含まれる。モジュール電池2の製造履歴情報には、図10に示すように、その組立日時や使用される単電池の管理番号,コントローラなどの部品の管理番号がある。モジュール電池2の製品検査情報には、図11に示すように、検査日時や容量・電圧といった性能データの他に、充電/放電時の電流、電圧のアナログデータなども含まれる。モジュール電池2の製造履歴情報には、使用した電極材料の材料種類毎の名称(またはコード)、管理番号(例えば、ロット番号)、処理を行なう製品・工程の名称(またはコード)、処理日時、製造装置の名称(またはコード)、レシピ名(当該製品・工程で使用する製造装置の動作プログラム名称)がある。
【0089】
また、単電池11の製品検査情報としては、この単電池11の管理番号や検査日時,容量・電圧といった性能データの他に、充電/放電時の電流や電圧のアナログデータなどがある。
【0090】
次いで、取得した当該モジュール電池2の製造品質管理情報に基づいて、製造履歴リストを作成する(ステップS401)。この製造履歴リストには、モジュール電池2の組立工程や当該モジュール電池2に搭載された単電池11の組立工程に使用された各種部品及び材料の名称とその管理番号が含まれる。
【0091】
図18はこのステップS401で作成された以上の有無判定の対象となる当該モジュール電池2の製造履歴リストの出力結果の一具体例を示す図であって、26は製造履歴リストである。
【0092】
同図において、当該モジュール電池2の製造履歴リスト26は、図13に示す稼動実績情報25から取得した当該モジュール電池2の管理番号22aと当該モジュール電池2に搭載される単電池11の整理番号25a、稼働実績監視処理部8(図1)での稼動実績の異常の有無の判定結果26a、製造品質管理データベース6(図1)から取得した単電池11毎の製造履歴情報20から取得した正極やその各種調合材料の管理番号(以下、これを正極材料の管理番号という)、同じく負極やその各種調合材料の管理番号(以下、これを負極材料の管理番号という)からなるものである(なお、これら管理番号をまとめて正極/負極材料の管理番号という)。
【0093】
図17に戻って、次に、当該モジュール電池2に対して作成されたこの製造履歴リスト26に基づいて、この製造履歴リスト26に含まれる正極/負極材料の管理番号に正極/負極材料の管理番号が等しい単電池であって、他のモジュール電池2に搭載されている単電池(以下、同一製造履歴の単電池という)11の製造品質情報(図8に示す製造履歴情報20と図9に示す製造検査情報21)を製造品質管理データベース6(図1)から取得し(ステップS402)、当該モジュール電池2に搭載されている単電池(以下、当該単電池という)11の製造品質管理情報、特に、製造検査情報21と同一製造履歴の単電池11の製造品質管理情報、特に、製造検査情報21と比較する(ステップS403)。
【0094】
そして、この比較の結果、当該単電池11の製造品質管理情報と同一製造履歴単電池11の製造品質管理情報との間に有意差が有るか否かを判定し、有意差が有る場合には(ステップS404の“Yes”)、その旨を示す判定結果を、また、有意差がない場合でも(ステップS404の“No”)、その旨を示す判定結果を夫々診断結果作成処理部10(図1)に通知する(図14のステップS205)。
【0095】
ここで、単電池11の製品検査情報21には、図9に示すように、単電池11の管理番号,検査日時,検査項目である容量・電圧といった性能データがあるが、性能データに有意差があるかどうか判定は、母集団となる同一の管理番号を持つ同一製造履歴の単電池11の性能データの平均値と標準偏差を計算し、次の数2として示す上・下限しきい値、即ち、
(数2)
有意差判定の上限しきい値=平均値+k・標準偏差
有意差判定の下限しきい値=平均値−k・標準偏差
で設定されてこれら上限しきい値と下限しきい値とで決まる範囲から外れる各単電池11の性能データを有意差があるものとして判定する(ステップS404)。なお、係数kは任意に設定可能であるが、通常3〜4当りの値を設定する。また、これら上・下限しきい値は、製造履歴リストに含まれる各種部品及び材料の管理番号別、並びに単電池11の性能データの種類別に作成される。
【0096】
なお、かかる製造有意差の比較処理は、製造履歴リスト26に含まれる各種部品及び材料の管理番号や単電池の性能データの種類毎に実行される。
【0097】
以上の有意差判定の結果に基づいて製造要因の有無を判別し、この稼動異常の製造・使用環境の要因分類処理(図14のステップS203の処理)が終了する。
【0098】
図19は図17のステップS403での製造品質の有意差の比較処理の一具体例を示す図である。
【0099】
同図において、上記のように、当該単電池11と同一製造履歴の単電池11との性能データの平均値と標準偏差とから、上記の数2によって有意差判定の上限しきい値と有意差判定の下限しきい値とを算出し、これら有意差判定の上限しきい値と有意差判定の下限しきい値とで設定される有意差の範囲に対するこれら単電池11が持つ性能データを●印で示すものであって、ここでは、当該単電池11の性能データAと1つの同一製造履歴の単電池11の性能データBとが有意差の範囲を外れていることを示している。
【0100】
図17のステップS403の比較処理は、このように、得られた有意差の範囲を当該単電池11の性能データが外れているか否か、また、この当該単電池11以外の同一製造履歴の単電池11にその性能データが有意差の範囲を外れたものがあるかどうかを判定するものであり、当該単電池11の性能データがこの有意差の範囲から外れていれば、稼働実績監視処理部8(図1)で稼働実績情報が異常と判定されたこの当該単電池11を用いている当該モジュール電池2は、製造要因による異常ということになる。また、性能データが有意差の範囲を外れたと判定された同一製造履歴の単電池11が有る場合には、この同一製造履歴の単電池11を用いた他のモジュール電池2も、製造要因による異常となるものと判定されるものである。
【0101】
そこで、かかる有意差による比較処理によると、
(1)当該モジュール電池2が製造要因によって異常であるが、当該モジュール電池2と同一製造履歴の単電池11を用いた他のモジュール電池2のうちには、製造要因による異常のモジュール電池2はないこと
(2)当該モジュール電池2が製造要因によって異常であるとともに、当該モジュール電池2と同一製造履歴の単電池11を用いた他のモジュール電池2も製造要因によって異常であること
(3)当該モジュール電池2の異常は製造要因によるものではないが、当該モジュール電池2と同一製造履歴の単電池11を用いた他のモジュール電池2のうちに、製造要因による異常のモジュール電池2があること(この場合には、当該モジュール電池2は使用環境要因によって異常であることになる)
の少なくともいずれかの判定結果が得られることになる。
【0102】
このように、稼働実績監視処理部8(図1)でモジュール電池2に稼働実績情報に異常が有ると判定(図14のステップS202の“Yes”)された当該モジュール電池2に対しては、製造・使用環境の要因分類処理部9(図1)により、製造品質管理データベース6(図1)からのこの当該モジュール電池2の単電池11に関する製造品質情報とモジュール電池に関する製造品質情報を基に、その異常が製造要因によるものであるか、使用環境要因によるものであるかを判別することができるし、さらには、当該モジュール電池2と同一製造履歴の単電池11を用いた他のモジュール電池2に関しても、製造要因による異常となっているものがあるか否かも、検出することができるものである。
【0103】
図20は図1における診断結果作成処理部10による図14における診断結果作成処理のステップS206の一具体例を示すフローチャートである。
【0104】
同図において、診断結果作成処理部10は、製造・使用環境の要因分類処理部9(図1)からの処理結果(稼働実績監視処理部8(図1)の判定結果も含む)に基づいて、診断対象となる当該モジュール電池2に稼動実績異常があるかどうかを識別する(ステップS500)。稼働実績監視処理部8(図1)の処理により、この当該モジュール電池2に稼動実績異常がないとの判定がなされている場合には(ステップS500の“No”)、この当該モジュール電池2は異常がないとして(ステップS502)、その旨の診断結果を出力して画面表示する(ステップS507)。
【0105】
稼働実績監視処理部8(図1)の処理により、当該モジュール電池2に稼動実績異常があるとの判定がなされている場合には(ステップS500の“Yes”)、製造・使用環境の要因分類処理部9(図1)による図14のステップ204の処理から得られた判定結果、即ち、当該モジュール電池2での単電池11のうちでその製品検査情報が図19に示した有意差の範囲を外れたものが有るか否かの判定結果(当該モジュール電池2に製造要因の有意差が有る単位電池11があるか否かの判定結果)を用いて、有意差がない場合には(ステップS503の“No”)、この診断対象の当該モジュール電池2の稼働実績異常は使用環境要因によるものとして(ステップS504)、その旨の診断結果を出力して画面表示する(ステップS507)。
【0106】
これに対し、有意差が有る場合には(ステップS503の“Yes”)、この診断対象の当該モジュール電池2の稼働実績異常は製造要因(即ち、製造工程)によるものとして(ステップS505)、さらに、製造・使用環境の要因分類処理部9(図1)による図17のステップS404の判定結果を基に、当該モジュール電池2の単電池11と同一製造履歴の単電池11のうちで製造要因の有意差が有る(即ち、製造要因で異常となる)同一製造履歴単電池11が存在する場合には、かかる同一製造履歴単電池11の管理番号と、かかる同一製造履歴単電池11を用いた他のモジュール電池2の管理番号とを取得し(ステップS506)、この当該モジュール電池2の稼働実績情報の異常が製造要因によるものである旨を、上記のような同一製造履歴単電池11が有れば、その管理番号や他のモジュール電池2の管理番号とともに、診断結果として出力して画面表示する(ステップS507)。なお、製造要因の中で有意差が発生した部品または材料の名称及び管理番号や製品検査の種類を診断結果に追加する。
【0107】
図21は図20でのステッフS507で得られた製造要因の有意差判定の診断結果の出力画面の一具体例を示す図である。
【0108】
同図において、ここでは、当該モジュール電池2の管理番号(ここでは、「M01」)、このモジュール電池2に搭載されている単電池11の管理番号(ここでは、「B01」,「B02」,「B03」,「B15」,「B16」,「B17」)、これら単電池11毎の稼働異常(稼動実績情報での異常の有無)、製造要因有意差の有無、有意差判定対象となる製造要因項目、有意差判定に用いた製品検査の種類、検査データ値を出力する。製造要因項目としては、例えば、正極やその調合材料の管理番号であり、検査データ値としては、当該モジュール電池2の出荷前検査時の容量などである。
【0109】
図22は図1での診断結果作成処理部10で作成された画面表示される診断対象のモジュール電池2の診断結果の一具体例を示す図であって、27は診断結果画面である。
【0110】
同図において、表示される診断結果画面27には、診断処理を行なった診断日時27a、診断処理を行なったモジュール電池2の管理番号27b、このモジュール電池2に搭載される単電池の管理番号27c、稼動実績情報での異常の有無27d、製造要因による異常の有無を示す製造要因判定27eが表示される。
【0111】
また、製造要因による異常がある場合には、異常が発生している製造要因の項目27f、及び、当該モジュール電池2以外に製造要因の有意差があるモジュール電池2内に搭載された単電池11の管理番号27gが出力される。
【0112】
図23は本発明によるリチウムイオン二次電池の診断システム及び診断方法の第2の実績形態を示すブロック図であって、28は電池製造管理システム、29は充電システムであり、図1に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
【0113】
同図において、この第2の実施形態は、電池診断システム3と電池製造管理システム28と充電システム29とがネットワークを介して接続された構成をなしている。電池製造管理システム28は電池製造工程1と製造品質情報収集処理部4と製造品質管理データベース6とからなり、電池診断システム3は稼動実績管理データベース7と稼働実績監視処理部8と製造・使用環境の要因分類処理部9と診断結果作成処理部10とからなり、充電システム29は稼働実績情報収集処理部5を備えている。
【0114】
電池製造管理システム28では、製造品質情報収集処理部4によって電池製造工程1から収集される単電池11やモジュール電池2のデータから作成された製造品質情報が製造品質管理データベース6に格納保存される。このように、製造品質情報収集処理部4及び製造品質管理データベース部6は、リチウムイオン二次電池の製造における各工程での製造実績(ロット・ウェハ番号、製造装置の名称及び着工開始、終了日時など)の蓄積、及び製造フローの管理並びに次工程の製造指示などを行なう電池製造管理システム28内に組み込まれており、各処理が実施される。
【0115】
充電システム29にモジュール電池2が取り付けられて充電されるとき、稼働実績情報収集処理部5がこのモジュール電池2の稼働実績情報を収集し、ネットワークを介して電池診断システム3に送信する。電池診断システム3では、当該モジュール電池2からこの稼働実績情報を取得すると、これを、稼動実績管理データベース7に格納して保持するとともに、稼働実績監視処理部8でこの稼働実績情報に異常が有るか否かを判定し、異常があるときには、製造・使用環境の要因分類処理部9は電池製造管理システム28の製造品質管理データベース6から当該モジュール電池2とこれに搭載されている単電池11の製造品質情報を取得し、当該モジュール電池2の単電池11にこの稼働実績情報に異常を生じさせる製造要因が有るか否かを判定処理し、有れば、この稼働実績情報に異常が製造要因によるもの、無ければ、この稼働実績情報に異常が使用環境要因によるものとして、その判定結果を診断結果作成処理部10に提供し、図21,図22に示す診断結果の画面を作成させる。また、図1に示す第1の実施形態と同様、製造・使用環境の要因分類処理部9は、当該モジュール電池2に搭載されて製造要因による異常と判定された単電池11と同一製造履歴の単電池やこれを用いた他のモジュール電池2に関する情報も、取得して診断結果作成処理部10に提供する。
【0116】
このように、この第2の実施形態も、一部の処理部やデータベースが先の第1の実施形態とは異なるシステムに設けられるものではあるが、第1の実施形態と同様の動作を実行して同様の効果が得られるものである。
【0117】
図24は本発明によるリチウムイオン二次電池の診断システム及び診断方法の第3の実績形態を示すブロック図であって、30は電池稼働実績管理システムであり、図1,図23に対応する部分には同一符号をつけて重複する説明を省略する。
【0118】
同図において、この第3の実績形態では、図23に示す第2の実施形態において、稼動実績管理データベース7を除いた電池診断システム3も充電システム29内に組み込まれ、この稼動実績管理データベース7を電池稼動実績管理システム30内に設けたものである。これら充電システム29と電池稼動実績管理システム30と電池製造管理システム28とはネットワークで接続されており、電池診断システム3が診断処理に必要な情報を電池製造管理システム28内の製造品質管理データベース6と電池稼動実績管理システム13内の稼動実績管理データベース7とから取得し、先の実施形態と同様の動作を行なう。
【符号の説明】
【0119】
1 製造工程
1a 材料受入工程
1b 電極製造工程
1c 単電池組立工程
1d 単電池検査工程
1e モジュール組立工程
1f モジュール検査工程
2 稼働中(使用環境)のモジュール電池
3 電池診断システム
4 製造品質情報収集処理部
5 稼動実績情報収集処理部
6 製造品質管理データベース
7 稼動実績データベース
8 稼動実績監視処理部
9 製造・使用環境の要因分類処理部
10 診断結果作成処理部
11 単電池
12が管理番号マーク
13 ラミネール
14 正極
15 負極
16 電池缶
17 管理番号マーク
18 コントローラ
20 単電池11の製造履歴情報
21 単電池11の製造検査情報
22 モジュール電池2の製造履歴情報
23 モジュール電池2の製品検査情報
24,25 稼動実績情報
26 製造履歴リスト
27 診断結果画面
28 電池製造管理システム
29 充電システム
30 電池稼働実績管理システム
100 リチウムイオン二次電池
100a 電池缶
101 正電極(正極)
101a 正極活物質
102 負電極(負極)
102a 負極活物質
103 セパレータ
104 電解液
200 使用環境

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン二次電池の単電池や該単電池を用いたモジュール電池の製造工程から製造品質情報を収集する製造品質情報収集処理部と、
該製造品質情報収集処理部が収集した該製造品質情報を蓄積する製造品質管理データベースと、
使用環境で稼働中の該モジュール電池から稼動実績情報を収集する稼動実績情報収集処理部と、
該稼動実績情報収集処理部が収集した該稼動実績情報を蓄積する稼動実績データベースと、
該稼動実績情報を用いて該モジュール電池の稼動状況の監視を行なう稼動実績監視処理部と、
該製造品質管理データベースでの該製造品質情報と該稼動実績データベースでの該稼動実績情報とを用いて、該稼動実績監視処理部で検出された稼動実績の異常の要因が使用環境要因か製造要因かの切り分けを行なう製造・使用環境の要因分類処理部と、
該稼動実績監視処理部の処理結果と該製造・使用環境の要因分類処理部の処理結果とに基づいて、診断対象となる該モジュール電池の診断結果を作成する診断結果作成処理部と
から構成されることを特徴とするリチウムイオン二次電池の診断システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記稼動実績情報収集処理部は、前記モジュール電池の充電終了後に当該モジュール電池の前記稼動実績情報を収集し、
前記製造・使用環境の要因分類処理部は、前記稼動実績監視処理部が前記稼動実績情報収集処理部で収集した前記稼動実績情報を基に稼働実績の異常が有ることを検出したとき、該稼動実績の異常の要因が前記使用環境要因が前記製造要因かの切り分けを行なう
ことを特徴とするリチウムイオン二次電池の診断システム。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記製造品質情報収集処理部と前記製造品質管理データベースとが、前記モジュールを製造する製造工程を有する電池製造管理システムに設けられ、
稼動実績情報収集処理部は、前記モジュール電池を充電する充電システムに設けられ、
前記稼動実績データベースと前記稼動実績監視処理部と前記製造・使用環境の要因分類処理部と前記診断結果作成処理部とが電池診断システムを構成し、
該電池製造管理システムと該充電システムと該電池診断システムとがネットワークを介して接続された構成をなすことを特徴とするリチウムイオン二次電池の診断システム。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記製造品質情報収集処理部と前記製造品質管理データベースとが、前記モジュールを製造する製造工程を有する電池製造管理システムに設けられ、
前記稼動実績データベースが電池稼働実績管理システムに設けられ、
前記稼動実績情報収集処理部と前記稼動実績監視処理部と前記製造・使用環境の要因分類処理部と前記診断結果作成処理部とが前記モジュール電池を充電する充電システムに設けられ、
該電池製造管理システムと該電池稼働実績管理システムと該充電システムとがネットワークを介して接続された構成をなすことを特徴とするリチウムイオン二次電池の診断システム。
【請求項5】
稼動実績情報収集手段を用いて、稼動中のリチウムイオン二次電池のモジュール電池の稼動実績情報を収集する第1のステップと、
稼動実績監視手段を用いて、取得した該モジュール電池の該稼動実績情報に異常があるかどうか判定する第2のステップと、
製造・使用環境の要因分類手段を用いて、該稼動実績に異常がある当該モジュール電池及びその単電池の製造品質情報を取得し、該製造品質情報の製品検査情報の比較処理により、製造要因の有意差があるかどうかを判定する第2のステップと、
該稼動実績監視手段及び該製造・使用環境の要因分類手段での処理結果に基づいて、当該モジュール電池の診断結果を作成する第4のステップと
からなり、該第1〜第4のステップの一連の処理を実行することを特徴とするリチウムイオン二次電池の診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−100691(P2011−100691A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256229(P2009−256229)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】