説明

リチウムイオン二次電池監視半導体装置

【課題】リチウムイオン二次電池監視半導体装置において、電源電圧よりも高い電位に検出電位を設け、その回路により充電器逆接続状態を検出し、直ちに電流を遮断して、より安全を向上させることができる技術を提供する。
【解決手段】アノードがIDT311(検出端子)に接続されたダイオード401と、一方の端子がダイオード401のカソードに接続され、他方の端子が第1の電源GNDに接続された抵抗(R)402と、一方の入力がダイオード401のカソードに接続され、他方の入力が第2の電源VCCに接続され、検出信号312を出力する比較器403とを備えた逆接続検出回路301を設け、この回路により充電器逆接続状態を検出し、直ちに電流を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池監視半導体装置に関し、特に、リチウムイオン二次電池に充電器を逆接続した際の保護回路に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者が検討した技術として、例えば、リチウムイオン二次電池監視半導体装置においては、以下の技術が考えられる。
【0003】
現在、携帯電話機などの携帯用電子機器には、軽量、高容量、サイクル寿命の長さなどの理由から、殆どの場合にリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」という。)が用いられている。しかしながら、この電池は、高容量のために過充電または外部接続端子間の短絡などの状態では、膨張、発熱、発火の危険性も高い。そのため危険状態を回避するため、従来の電池監視半導体装置では、過充電電圧検出、過放電電圧検出、過電流検出の3つの保護機能を備えている。
【0004】
すなわち、この電池は、充電器を用いて充電する際に、充電完了状態を過ぎても定電流で充電を継続する場合、電池電圧の上昇を招く。このような過充電状態では、電池内部の圧力上昇により電池の破損、金属リチウムの析出による電極間短絡などが発生し、発熱、更には発火の危険性がある。
【0005】
この電池の異常状態の一つとして、充電器逆接続状態がある。電池に充電器を逆接続した際の保護回路としては、例えば、特許文献1に記載された技術がある。
【特許文献1】特開2002−176731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記のような電池監視半導体装置の技術について、本発明者が検討した結果、以下のようなことが明らかとなった。
【0007】
例えば、電池に充電器を逆接続した状態の時、ある端子に、VCC電位に対してPN接合の順方向電圧よりも高い電位が加わることにより、大電流が流れる。本来の半導体装置では使用しない状態であるため異常状態となり、危険性が高まる。
【0008】
このような充電器逆接続状態の保護回路として、例えば、過電流検出の監視機能がこの異常状態を検出し、電流遮断を行う方法が考えられる。しかし、過電流検出の監視機能ではノイズ除去タイマ時間を持たせているので、この方法では、直ちに電流遮断を行うことができないため、安全性が劣る。
【0009】
そこで、本発明の目的は、電池監視半導体装置において、電源電圧よりも高い電位に検出電位を設け、その回路により充電器逆接続状態を検出し、直ちに電流を遮断して、より安全を向上させることができる技術を提供することにある。
【0010】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
すなわち、本発明による電池監視半導体装置は、充電器逆接続を検出する検出回路を備え、その検出回路は、検出端子を入力とし、検出信号を出力とし、前記検出端子の電位が電源電圧の電位を超えた時に前記検出信号が反転する機能を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0014】
逆接続の検出専用に回路を設け、異常な過大電流を直ちに遮断できるため、安全性の向上が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
図1は本発明の一実施の形態による電池監視半導体装置の全体構成を示す図、図2(a),(b)は充電器の接続状態を示す図、図3は本実施の形態の電池監視半導体装置において、内部構成を示すブロック図、図4は図3の逆接続検出回路の構成例を示す回路図、図5は図3の逆接続検出回路の他の構成例を示す回路図である。
【0017】
まず、図1により、本実施の形態による電池監視半導体装置の構成の一例を説明する。本実施の形態の電池監視半導体装置は、例えば電池監視IC101とされ、付加回路としてFET(Field Effect Transistor:電界効果型トランジスタ)102,103、抵抗104,105,106などからなり、電池107とともに電池パック108を構成している。
【0018】
電池107の正(+)極は、電池パック108のPack(+)端子に接続され、また、抵抗104を介して電池監視IC101のVCC端子に接続される。
【0019】
電池107の負(−)極は、FET102のソース電極と電池監視IC101のGND端子に接続される。
【0020】
FET102のドレイン電極はFET103のドレイン電極に接続され、FET102のゲート電極は電池監視IC101のDCH端子に接続される。
【0021】
FET103のソース電極は電池パック108のPack(−)端子に接続され、また、抵抗105を介して電池監視IC101のIDT端子に接続され、FET103のゲート電極は抵抗106を介して電池監視IC101のCHG端子に接続される。
【0022】
電池パック108のPack(+)端子とPack(−)端子の間には、充電器もしくは負荷109が接続される。
【0023】
電池監視IC101のVCC端子は正極側の電源端子、GND端子は負極側の電源端子である。
【0024】
IDT端子(検出端子)は、過電流電圧検出入力、充電過電流検出入力及びCHG出力の負(−)極側電源端子であり、放電電流が増加してIDT端子の入力電圧が過電流検出電圧(V5)、または短絡電流検知電圧(V6)を超えるとDCH出力がロウレベル(GND)になり、その後、入力電圧がV5以下になると過電流状態から復帰する。過電流検出はGND電位に対するIDT端子電位を監視することによって行われる。
【0025】
DCH端子は、放電回路遮断用外付けFET102の駆動信号出力であり、電池107の電圧が正常な時はハイレベル(VCC)となり、過放電状態または過電流状態を検出するとロウレベル(GND)になる。
【0026】
CHG端子は、充電回路遮断用外付けFET103の駆動信号出力であり、電池107の電圧が正常な時はハイレベル(VCC)となり、過充電状態または過大な充電器電圧を検出するとロウレベル(IDT)になる。
【0027】
図2に、充電器201の接続状態を示す。充電器201はPack(+)端子とPack(−)端子との間に接続され、図2(a)は正常接続状態である。図2(b)は充電器逆接続状態で、正負を逆に接続しているので異常電流が流れることになる。従来は、過電流検出機能によって異常電流を検出することにより間接的に逆接続を検出し、ノイズ除去タイマ時間後、FET102,103のゲート電位をコントロールすることにより電流遮断していた。本実施の形態では、IDT端子の電位が電源電圧VCCよりも高い電位の逆接続検出回路301(図3〜図5により後述)を設けることにより、充電器逆接続の異常状態を直接、IDT端子電圧で検出し、直ちに電流遮断を行う。すなわち、電源電圧よりも高い電位に検出電位を設け、異常状態を検知する。
【0028】
次に、図3により、電池監視IC101の内部構成の一例を説明する。本実施の形態による電池監視IC101は、例えば、逆接続検出回路301、制御回路302、駆動回路303、基準電圧発生回路304、上限電圧検出回路305、下限電圧検出回路306、発振器307、カウンタ308、充電器電圧検出回路309、放電電流検出回路310などから構成される。
【0029】
逆接続検出回路301では、IDT端子からIDT311が入力し、駆動回路303へ検出信号312が出力している。また、検出信号312は、駆動回路303を介してCHG端子又はDCH端子に接続される。逆接続検出回路301は、IDT311の電位が電源電圧VCCよりも高い電位になると、充電器逆接続の異常状態を検出し、検出信号312が反転する。駆動回路303は、検出信号312の反転を受けて、充電回路遮断用素子駆動信号又は放電回路遮断用素子駆動信号を反転させて、直ちに電流遮断を行う。
【0030】
次に、図4により、逆接続検出回路301の内部構成の一例を説明する。本実施の形態による逆接続検出回路301は、例えば、アノードがIDT(検出端子)311に接続されたダイオード401と、一方の端子がダイオード401のカソードに接続され、他方の端子が第1の電源GNDに接続された抵抗(R)402と、一方の入力がダイオード401のカソードに接続され、他方の入力が第2の電源(電源電圧)VCCに接続され、検出信号312を出力する比較器403と、などからなる。
【0031】
この逆接続検出回路301では、ダイオード401の閾値電圧をVthとすると、IDT311の電位がVCC+Vth以上になった時、比較器403の出力(検出信号312)が反転して、充電器逆接続の異常を検出する。
【0032】
図5に、逆接続検出回路301の内部構成の他の一例を示す。この例による逆接続検出回路301は、一方の端子がIDT(検出端子)311に接続された第1の抵抗(R1)501と、一方の端子が第1の抵抗501の他方の端子506に接続され、他方の端子が第1の電源GNDに接続された第2の抵抗(R2)502と、一方の端子が第2の電源(電源電圧)VCCに接続された第3の抵抗(R3)503と、一方の端子が第3の抵抗503の他方の端子507に接続され、他方の端子が第1の電源GNDに接続された第4の抵抗(R4)504と、一方の入力が第1の抵抗501の他方の端子506に接続され、他方の入力が第3の抵抗503の他方の端子507に接続され、検出信号312を出力する比較器505と、などからなる。R1,R2,R3,R4の各抵抗値は、[IDTの電位]>[VCCの電位]の条件で比較器505の出力(検出信号312)が反転するように設定する。これにより、IDT311の電位がVCCを超えた時、比較器403の出力(検出信号312)が反転して、充電器逆接続の異常を検出する。
【0033】
したがって、本実施の形態の電池監視半導体装置によれば、電源電圧よりも高い電位に検出電位を設けた検出回路により充電器逆接続状態を検出し、直ちに電流を遮断して、より安全を向上させることができる。
【0034】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0035】
例えば、前記実施の形態においては、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではなく、他の二次電池(繰返し充電可能な電池)についても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、リチウムイオン二次電池監視IC、充電制御IC等について適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施の形態による電池監視半導体装置の全体構成を示す図である。
【図2】(a),(b)は、本発明の一実施の形態による電池監視半導体装置において、充電器の接続状態を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態による電池監視半導体装置において、内部構成を示すブロック図である。
【図4】図3の逆接続検出回路の構成例を示す回路図である。
【図5】図3の逆接続検出回路の他の構成例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0038】
101 電池監視IC
102,103 FET
104,105,106,402,501,502,503,504 抵抗
107 電池
108 電池パック
109 充電器もしくは負荷
201 充電器
301 逆接続検出回路
302 制御回路
303 駆動回路
304 基準電圧発生回路
305 上限電圧検出回路
306 下限電圧検出回路
307 発振器
308 カウンタ
309 充電器電圧検出回路
310 放電電流検出回路
311 IDT
312 検出信号
401 ダイオード
403,505 比較器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電器の逆接続状態を検出する検出回路を備えたリチウムイオン二次電池監視半導体装置であって、
前記検出回路は、検出端子を入力とし、検出信号を出力とし、前記検出端子の電位が電源電圧の電位を超えた時に前記検出信号が反転する機能を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池監視半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載のリチウムイオン二次電池監視半導体装置において、
前記検出回路は、
アノードが前記検出端子に接続されたダイオードと、
一方の端子が前記ダイオードのカソードに接続され、他方の端子が第1の電源に接続された抵抗と、
一方の入力が前記ダイオードのカソードに接続され、他方の入力が第2の電源に接続され、前記検出信号を出力する比較器と、を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池監視半導体装置。
【請求項3】
請求項1記載のリチウムイオン二次電池監視半導体装置において、
前記検出回路は、
一方の端子が前記検出端子に接続された第1の抵抗と、
一方の端子が前記第1の抵抗の他方の端子に接続され、他方の端子が第1の電源に接続された第2の抵抗と、
一方の端子が第2の電源に接続された第3の抵抗と、
一方の端子が前記第3の抵抗の他方の端子に接続され、他方の端子が前記第1の電源に接続された第4の抵抗と、
一方の入力が前記第1の抵抗の他方の端子に接続され、他方の入力が前記第3の抵抗の他方の端子に接続され、前記検出信号を出力する比較器と、を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池監視半導体装置。
【請求項4】
請求項1記載のリチウムイオン二次電池監視半導体装置において、
前記検出信号が反転した時に、直ちに、リチウムイオン二次電池と充電器との間の電流遮断を行う機能を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池監視半導体装置。
【請求項5】
請求項4記載のリチウムイオン二次電池監視半導体装置において、
前記検出信号が反転した時に、充電回路遮断用素子駆動信号又は放電回路遮断用素子駆動信号が反転する機能を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池監視半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−210026(P2006−210026A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17569(P2005−17569)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000233169)株式会社日立超エル・エス・アイ・システムズ (327)
【Fターム(参考)】