説明

リチウムイオン電池用有機電解液及びこれを含むリチウムイオン電池

本発明は、有機溶媒及びリチウム塩からなる有機電解液を基本電解液にし、この基本電解液に対してジフェニルオクチルホスフェートを0.1〜20重量%含むことを特徴とするリチウムイオン電池用有機電解液及びこれを含むリチウムイオン電池に関する。本発明の有機電解液が適用されたリチウムイオン電池は、従来のエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの炭酸エステル系溶媒だけを用いた有機電解液に比べて電解液の熱安定性を向上させ、基本電解液の電池性能を減少させることなく、電池の高率特性及び充電−放電寿命性能を向上させるという効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池などに用いられる有機電解液及びこれを含むリチウムイオン電池に関し、更に詳しくは、有機溶媒にリチウム塩を溶解させたものを基本電解液とし、この基本電解液に対してジフェニルオクチルホスフェート(diphenyloctyl phoshate)を添加することによって電解質溶液の熱的安定性及び電池の高率特性、充電−放電サイクル特性を向上させるリチウムイオン電池用有機電解液及びこれを含むリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、情報通信産業の発展に伴い、電子機器が小型化、軽量化、薄型化及び携帯化されるにつれて、このような電子機器の電源として用いられる電池の高エネルギー密度化に対する要求が高まっている。リチウムイオン電池は、このような要求を最も満たすことができる電池であって、現在、それについての研究が活発に進められている。
通常、リチウムイオン電池は作動電圧が3.6V以上であり、ニッケル−カドミウム電池又はニッケル−水素電池より約3倍高く、エネルギー密度及び寿命特性が高いという点でその市場が急速に広がっている。現在、主に携帯電話やノートブックコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダなど携帯用電子機器などに幅広く用いられており、高容量リチウムイオン電池の応用を通じて電気自動車、ハイブリッドカー、ロボット分野、宇宙及び航空分野などの分野への適用研究が活発に進められている。
【0003】
リチウムイオン電池は、リチウム含有金属化合物を含む正極と、リチウムを挿入(intercalation)又は脱離(deintercalation)できる炭素材料を含む負極、リチウムイオンの移動経路を提供する電解質、そして正極と負極との間の短絡を防止するセパレータで構成される電池であって、リチウムイオンが前記正極と負極で挿入/脱離される際の酸化、還元反応により電気エネルギーを生成する。このようなリチウムイオン電池は、高い作動電圧、低い自己放電率、高いエネルギー密度及び長い使用寿命などを達成するために電気化学的に向上した組成の電解液を要求する。主に、カーボネート系溶媒の組み合わせからなる非水系混合溶媒、例えば、PC(Propylene Carbonate)、EC(Ethylene Carbonate)、DEC(Diethyl Carbonate)、DMC(Dimethyl Carbonate)及びEMC(Ethylmethyl Carbonate)などが電解液として用いられている。
【0004】
有機電解液の特性は、伝導度、電位窓、使用温度範囲、密度及び安定性などを主な指標としており、伝導度と関連した項目としては、溶解度、解離度、誘電率及び粘度などがある。リチウムイオン電池において電解液として用いられるこれらの溶媒はそれぞれ固有の長所と短所があり、使用時にこれらの特性をいかに組み合わせるかによって電池性能に大きな差が生じる。このように、リチウムイオン電池は主に非水系有機電解液を用いているが、非水系電解液は伝導度は低いものの、電気化学的電位窓(electrochemical stability window)が水より広く、電池の高電圧化が可能であるという点で広く用いられている。
【0005】
このようなリチウムイオン電池において、最も大きな問題の1つは低い安全性である。リチウムイオン電池は、固体電解質(Solid Electrolyte Interface、SEI)フィルムの形成反応中に、カーボネート系有機溶媒の分解によって電池の内部にガスが発生するという問題点がある。電池内部でのガスの発生により、充電時に電池の厚さが膨脹し、過充電時又は充電後の高温貯蔵時に時間が経過するにつれて、有機溶媒が分解されるなど急激な反応が起こる。このような有機溶媒の分解により、電池性能の低下及び電池の発火や爆発のような安全性の低下がもたらされる。
【0006】
プラズマ難燃剤として用いられてきたトリメチルホスフェート(TMP:trimethyl phosphate)、トリエチルホスフェート(TEP:triethyl phosphate)がリチウムイオン電池に初期に適用されて以来、トリブチルホスフェート(TBP:tributhyl phosphate)、ヘキサメトキシサイクロトリホスファゼン(HMPN:hexamethoxycyclotriphosphazene)など難燃剤についての研究が持続的に進められてきた。しかしながら、これらの難燃剤は難燃効果を提供するものの、電解質のイオン伝導性及び電池の可逆性の劣化などによって充電−放電サイクル寿命の短縮など電池の性能低下をもたらすという問題点がある。
【0007】
このような問題を解決するために、電解液に特定の化合物を加える技術の開発が進められている。
【0008】
その一例として、下記の特許文献1が挙げられる。この特許文献によれば、ナフトイルクロライド(naphtoyl chloride)+ジビニルアジペート(divinyl adipate)+エトキシエチルホスフェート(ethoxy ethyl phosphate)を混合添加して電池の過充電を抑止させて安定性を向上させる方法が提示されている。下記の特許文献2では、トリメチルシリルボレート(trimethylsilyl borate)とトリメチルシリルホスフェート(trimethylsilyl phosphate)を混合添加して高率(high C−rate)で電池の性能を向上させる方法を提案した。
【0009】
しかしながら、これらの添加剤を含む電解液は、過充電の抑止効果又は高率性能の向上については提示されたが、その他の電池の性能については詳細に知られていない。また、電池の性能向上のために特定の化合物を電解液に添加する場合にも大部分の電池の性能のうち、一部項目における性能の向上は期待できるが、他の項目の性能をむしろ減少させてしまうなどの問題を発生させる場合が多かった。
【0010】
従って、電池の性能に影響を及ぼすことなく、難燃効果を発揮できる電解液の開発に対する要求が持続的に高まっているのが現状である。
【特許文献1】大韓民国登録特許第10−0693288号
【特許文献2】大韓民国登録特許第10−0585947号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、有機溶媒、リチウム塩を基にした電解液に単一の難燃性添加剤を添加して有機電解液の熱的特性の増加及び向上した電池の性能を有するリチウムイオン電池用有機電解液を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、前記電解液を含むリチウムイオン電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、以下のような発明を提供する。
【0014】
第一発明では、リチウム塩及び有機溶媒を含むリチウムイオン電池用電解液において、ジフェニルオクチルホスフェートを含むことを特徴とするリチウムイオン電池用電解液を提供する。
【0015】
第二発明では、第一発明を基本とし、さらに、電解液重量を基準にジフェニルオクチルホスフェートの含有量は0.1〜20重量%を含むことを特徴とするリチウムイオン電池用電解液を提供する。
【0016】
第三発明では、第一発明または第二発明を基本とし、さらに、リチウム塩は、LiPF、LiBF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、LiCFSO、LiC(SOCF、LiN(CFSO、及びLiCH(CFSOで構成された群より選択されるいずれか1種の塩又は2種以上の塩が共に用いられることを特徴とするリチウムイオン電池用電解液を提供する。
【0017】
第四発明では、第一発明または第二発明を基本とし、さらに、有機溶媒は、カーボネート系、エステル系、エーテル系 及びケトン系で構成された群より選択されるいずれか1種又は2種以上の溶媒混合物であることを特徴とするリチウムイオン電池用電解液を提供する。
【0018】
第五発明では、第三発明を基本とし、さらに、有機溶媒は、カーボネート系、エステル系、エーテル系及びケトン系で構成された群より選択されるいずれか1種又は2種以上の溶媒混合物であることを特徴とするリチウムイオン電池用電解液を提供する。
【0019】
第六発明では、電池リチウムイオンを可逆的に挿入及び脱離できる正極活物質を含む正極と、前記電池リチウムイオンを可逆的に挿入及び脱離できる負極活物質を含む負極と、前記正極及び負極の間で結合されて短絡を防止するセパレータと、第一発明または第二発明に記載の電解液と、を含むことを特徴とするリチウムイオン電池を提供する。
【0020】
第七発明では、第特発明を基本とし、さらに、前記正極は、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、V、LiFePO又はLiCo1-xNi(0.01<X<1)の活物質で構成された群より選択されることを特徴とするリチウムイオン電池を提供する。
【0021】
第八発明では、第六発明を基本とし、さらに、前記負極は、結晶質又は非晶質の炭素、炭素複合体の炭素系負極活物質、炭素繊維、酸化錫化合物、リチウム金属又はリチウム合金で構成された群より選択されることを特徴とするリチウムイオン電池を提供する。
【0022】
第九発明では、第六発明を基本とし、さらに、前記セパレータは、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリオレフィンの高分子膜又はこれらの多重膜、微細多孔性フィルム、織布及び不織布で構成された群より選択されることを特徴とするリチウムイオン電池を提供する。
【0023】
さらに詳細には、前記目的を達成するために、本発明は有機溶媒とリチウム塩に基づいた溶液に難燃性添加剤であるジフェニルオクチルホスフェートを添加した有機電解液及びこれを含むリチウムイオン電池を提供する。
【0024】
本発明で用いられたジフェニルオクチルホスフェートは、リン(phosphate)系難燃剤の一種であって、沸騰点は225℃であり、主にプラスチック複合体の難燃性物質として用いられてきた化合物である。このようなリン系難燃剤は、一般に熱分解によりポリメタリン酸が生成され、このポリメタリン酸が生成される過程で脱水作用により生成される炭素層が酸素及び潜熱を遮断することで、熱分解反応を減少させる。リン系難燃剤の例としては、赤リン、リン酸アンモニウムなどのリン酸塩(phosphates)、亜リン酸塩(phosphites)、リン化水素酸化物(phosphine oxide)、リン化水素酸化物ジオール(phosphine oxide diols)、ホスホネート(phosphonates)、トリアリルリン酸塩(triaryl phosphate)、アルキルジアリルリン酸塩(alkyldiaryl phosphate)、トリアルキルリン酸塩(trialkyl phosphate)及びレソルシノールビスジフェニルリン酸塩(resorcinaol bisdiphenyl phosphate)(RDP)などが挙げられる。
【0025】
前記ジフェニルオクチルホスフェートの添加量は、基本電解液に対して0.1〜20重量%添加することが好ましい。ジフェニルオクチルホスフェートの添加量が0.1重量%未満であれば、過充電による熱暴走現象を防止できず、20重量%を超える場合には電池性能が低下するおそれがあるので、好ましくない。ジフェニルオクチルホスフェートは、リチウム塩を含む有機溶媒に添加される。リチウム塩は、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウムイオン電池の作動を可能にし、有機溶媒は電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質としての役割をする。この際に用いられる有機溶媒は、イオンの解離度を高めてイオン伝導度を大きくするために、誘電率(極性)が大きく、粘度が低いものを用いなければならない。
【0026】
前記リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、LiC(SOCF、LiN(CFSO、LiCH(CFSOなどからなる群より選択される1種又は2種以上の化合物の混合物が使用され得る。リチウム塩は、格子エネルギーが少なく、解離度が大きいためイオン伝導度に優れ、熱安定性及び耐酸化性に優れているものを用いることが好ましい。電解液でリチウム塩は0.6〜2.0Mの濃度で用いられることが好ましい。リチウム塩の濃度が0.6M未満であれば、電解質の濃度が低くて電解質性能が低下し、2.0Mを超える場合には電解質の粘度が増加してリチウムイオンの移動性が減少し、低温性能も低下するという問題点がある。
本発明において、非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系又はケトン系などが用いられる。カーボネート系溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)又はブチレンカーボネート(BC)などが使用され得る。エステル系溶媒として、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテートなどが使用され得る。エーテル系溶媒として、テトラヒドロフラン又は2−メチルテトラヒドロフランなどが使用されることができ、ケトン系としては、ポリメチルビニルケトンが用いられる。
【0027】
本発明の電解液を含むリチウムイオン電池は、正極、負極及び分離膜を含む。正極はリチウムイオンを可逆的に挿入及び脱離できる正極活物質を含み、このような正極活物質の代表例としては、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、V、LiFePO又はLiCo1−xNi(0.01<X<1)などが挙げられる。負極はリチウムイオンを挿入及び脱離できる負極活物質を含み、このような負極活物質としては、結晶質又は非晶質の炭素、又は炭素複合体の炭素系負極活物質(熱的に分解された炭素、コーク、黒鉛)、炭素繊維、酸化錫化合物、リチウム金属又はリチウム合金を用いることができる。
【0028】
リチウムイオン電池は、正極及び負極の間に短絡を防止する分離膜を含むことができ、このような分離膜としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィンなどの高分子膜又はこれらの多重膜、微細多孔性フィルム、織布及び不織布などを用いることができる。
【0029】
本発明の電解液の構成は、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を30:70の体積割合で混合した溶媒に電解質塩としてLiPFを1.15M溶解させたものを基本電解液とし、この基本電解液に対してジフェニルオクチルホスフェート添加剤を5重量%で添加して構成される。
【0030】
電解液を含むリチウムイオン電池の構成は、LiCoOを正極活物質とし、結着剤としてはPVDF(polyvinylidene difluoride)を用い、導電剤として、Super P blackを用いて正極を構成した。負極活物質としてはMCMB(mesocarbon microbeads)を、結着剤としてはPVDFを用い、導電剤としてはSuper P blackを用いて負極を構成した。正極と負極との間にセパレータを挿入して電極組立体を製造する。次いで、製造された電極組立体をケース内に入れ、本発明のリチウムイオン電池用電解液を注入すれば、リチウムイオン電池が構成される。
【発明の効果】
【0031】
上述したように、本発明に係るリチウムイオン電池は、電解液の熱的安定性が向上することはもちろん、高率特性に優れ、かつ電池の内部抵抗が減少して電池寿命特性が向上できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、製造例及び実施例を通じて本発明の内容を詳述する。下記の製造例は例示に過ぎないものであって、本発明の権利範囲を制限するものではないことはもちろんである。
<製造例>
<<製造例1:電解液及び電池の製造>>
<<<電解液の製造>>>
【0033】
まず、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を3:7(体積比)で混合した溶媒に電解質塩として1.15MのLiPFを溶解させたものを基本電解液にして有機電解液を製造した。
<<<電池の製造>>>
【0034】
缶直径が20mm、高さ3.2mmである2032コイン型電池を製造した。正極活物質としてLiCoOを用いた。95:2:3の重量比の活物質:バインダ(PVDF):導電剤(Super P black)をn−メチル−2−ピロリジノン(NMP:n−methyl 2−pyrrolidinone)溶媒を添加してスラリーを製造した。前記スラリーをアルミニウムホイール上に塗布し、110℃で12時間乾燥させた後、ロールプレスで圧延して正極15を製造した。負極活物質として、MCMBを用いた。95:3:2の重量比で、活物質:バインダ(PVDF): 導電剤 (Super P black)をNMP溶媒に溶かしてスラリーを製造した。前記スラリーを銅集電体に塗布し、110℃で12時間乾燥させた後、ロールプレスで圧延して負極12を製造した。多孔性ポリプロピレン(ploypropylene)セパレータ16を正極18と負極12との間に入れ、有機電解液を含浸させた。正極18とステンレス鋼蓋24との間にスペーサ20、バネ22及び絶縁ガスケット14を挿入した。そして、ステンレス鋼ケース10、ステンレス鋼蓋24で完全に密閉して2032タイプのコイン型電池を製造した(図1)。
<<製造例2:電解液及び電池の製造>>
【0035】
前記有機電解液にジフェニルオクチルホスフェートを5重量%用いたことを除いては、前記製造例1と同一に電解液及び電池を製造した。
<実施例>
<<電解液の熱分析>>
【0036】
前記製造例1と製造例2で製造した電解液に対して示差走査熱量計(DSC)を用いて熱分解反応試験を行い、その結果を表1及び図2に示した。
【表1】

【0037】
表1と図2に示すように、ジフェニルオクチルホスフェート添加剤を添加していない基本電解液で構成された製造例1の場合は、電解液の吸熱反応温度が215℃に示され、本発明の電解液で構成された製造例2の場合には、反応温度が231℃に高く示された。
<<率特性の試験(Rate Performance Test)>>
【0038】
前記製造例1と製造例2で製造した電解液で構成された電池を率別放電容量試験を行い、その結果を表2及び図3に示した。
【表2】

【0039】
表2と図3に示すように、ジフェニルオクチルホスフェート添加剤を添加していない製造例1の電池の場合は、2Cで87%の率性能を示したが、本発明の電解液で構成された製造例2の電池の場合には、2Cで90%に向上した高率性能を示した。
<<充・放電寿命の試験及び内部抵抗の測定>>
【0040】
電池寿命の評価のための試験であって、電池を常温で1.0C(3.0mA)で100回充電−放電を行った。このために、4.2Vまで定電流−定電圧充電を、2.75Vまで定電流放電を行った。また、100回の寿命試験の間にEIS(electrochemical impedence spectroscopy)測定を通じて電池の内部抵抗を比較した。100回サイクル後の容量維持率と100回サイクルまでの電池抵抗値(Rcell)を表3と図4、図5にそれぞれ示した。
【表3】

【0041】
表3と図4に示すように、製造例1によって製造されたリチウムイオン電池の100サイクル後に容量維持率が66%に示され、本発明の電解液で構成された製造例2の場合には68%の容量維持率となり、向上した電池寿命特性を確認することができた。また、100サイクル後にジフェニルオクチルホスフェート添加剤を含む場合の方が添加剤を含まない場合より電池放電容量が高くなることが分かり、これは表3と図5に示すように、100サイクル後の電池の内部抵抗(Rcell)が製造例2の場合は71.2Ω・cmとなり、製造例1の75.5 Ω・cmより低いためであることを確認することができた。
【0042】
前記表1、表2及び表3と図2、図3、図4及び図5のグラフに示すように、本発明の電解液を用いる場合、電解液の熱安定性が増加し、電池の率特性に優れ、電池の充・放電寿命性能も向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の2032コイン型電池の断面図である。
【図2】本発明の製造例1と製造例2による有機電解液を示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry、以下、「DSC」という)で分析した結果を示すグラフである。
【図3】本発明の製造例1と製造例2によって製造されたリチウムイオン電池の率別放電容量(discharge capacity at different rates)を比較したグラフである。
【図4】本発明の製造例1と製造例2によって製造されたリチウムイオン電池の充電−放電サイクル寿命の試験結果を示すグラフである。
【図5】本発明の製造例1と製造例2によって製造されたリチウムイオン電池のサイクル寿命試験の間の電気化学的インピーダンス(Electrochemical Impedance Spectroscopy、以下、「EIS」という)試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0044】
10 ステンレス鋼ケース
12 負極
14 絶縁ガスケット
16 セパレータ
18 正極
20 スペーサ
22 バネ
24 ステンレス鋼蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩及び有機溶媒を含むリチウムイオン電池用電解液において、
ジフェニルオクチルホスフェートを含むことを特徴とするリチウムイオン電池用電解液。
【請求項2】
電解液重量を基準にジフェニルオクチルホスフェートの含有量は0.1〜20重量%を含むことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用電解液。
【請求項3】
リチウム塩は、LiPF、LiBF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、LiCFSO、LiC(SOCF、LiN(CFSO、及びLiCH(CFSOで構成された群より選択されるいずれか1種の塩又は2種以上の塩が共に用いられることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用電解液。
【請求項4】
有機溶媒は、カーボネート系、エステル系、エーテル系及びケトン系で構成された群より選択されるいずれか1種又は2種以上の溶媒混合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用電解液。
【請求項5】
有機溶媒は、カーボネート系、エステル系、エーテル系及びケトン系で構成された群より選択されるいずれか1種又は2種以上の溶媒混合物であることを特徴とする請求項3に記載のリチウムイオン電池用電解液。
【請求項6】
電池リチウムイオンを可逆的に挿入及び脱離できる正極活物質を含む正極と、
前記電池リチウムイオンを可逆的に挿入及び脱離できる負極活物質を含む負極と、
前記正極及び負極の間で結合されて短絡を防止するセパレータと、
請求項1又は2に記載の電解液と、
を含むことを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項7】
前記正極は、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、V、LiFePO又はLiCo1-xNi(0.01<X<1)の活物質で構成された群より選択されることを特徴とする請求項6に記載のリチウムイオン電池。
【請求項8】
前記負極は、結晶質又は非晶質の炭素、炭素複合体の炭素系負極活物質、炭素繊維、酸化錫化合物、リチウム金属又はリチウム合金で構成された群より選択されることを特徴とする請求項6に記載のリチウムイオン電池。
【請求項9】
前記セパレータは、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリオレフィンの高分子膜又はこれらの多重膜、微細多孔性フィルム、織布及び不織布で構成された群より選択されることを特徴とする請求項6に記載のリチウムイオン電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−536444(P2009−536444A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520688(P2009−520688)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【国際出願番号】PCT/KR2008/003226
【国際公開番号】WO2008/156255
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(508330995)ソンギュンカンユニバーシティー ファンデーション フォー コーポレート コラボレーション (1)
【Fターム(参考)】