説明

リチウムマンガン複合酸化物及びリチウム二次電池

【課題】マンガン酸リチウムのMnの一部をAlで置換したリチウムマンガン複合酸化物及びこれを用いる高温での充放電サイクルに伴う容量維持特性に優れるリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】下記一般式(1);Lix Mn2-y Aly 4-Z (1)(式中、0<x<2.0、0<y<0.4、0≦z<2.0を示す)で表されるリチウムマンガン複合酸化物において、X線回折による2θが10〜90°における回折面のピークデータが、JCPDSカードチャートでのLiMn2 4 の前記回折面のピークデータを示し、JCPDSカードチャートでのMnAl2 4 の(331)面の48.318°、(440)面の64.174°、(622)面の77.024°、(444)面の81.166°、(711)面及び(551)面の84.191°及びJCPDSカードチャートでのAl2 3 の(400)面の45.786°のピークを示さないリチウムマンガン複合酸化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムマンガン複合酸化物、特に高温での充放電サイクルに伴う放電容量の低下を抑制する正極活物質であるリチウムマンガン複合酸化物及びこれを用いたリチウム二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、民生用電子機器のポータブル化、コードレス化が急速に進むに従い、小型電子機器の電源としてリチウム二次電池が実用化されはじめている。このリチウム二次電池については、1980年に水島等によりコバルト酸リチウムがリチウム二次電池の正極活物質として有用であるとの報告(「マテリアル リサーチブレティン」vol 115,783〜789頁(1980年))がなされて以来、リチウム系複合酸化物に関する研究開発が活発に進められており、これまでに正極活物質としてコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム及びマンガン酸リチウムなどが知られている。このうち、マンガン酸リチウムは、コバルト酸リチウムやニッケル酸リチウムなどと比べると原料が安価であることなどから製造コストの面で有利であり、これまで様々な開発が進んでいる。
【0003】
また、近年ではマンガン酸リチウムのマンガンの一部を他の金属で置換又は単に添加することにより特性を改善する方法が提案されており、例えば、Lix y Mn2-y z (但し、Mは周期律表III a又はIII bから選ばれた元素、0<x≦1、0<y≦1、4≦z<4.5)の組成を持つ複合酸化物を正極活物質とする非水電解液二次電池(特開平2−278661号公報)、Lix y Mn2-y 4 (MはCo、Cr又はFeであり、かつ0.85≦x≦1.15、0.02≦y≦0.3)である正極活物質を用いる非水電解質二次電池(特開平3−219571号公報)、LiMn2 4 中のMnをAlで一部置換したLix Mn2-y Aly 4 (0.85≦x≦1.15、0.02≦y≦0.5)で表される正極活物質として用いる非水電解液二次電池(特開平4−289662号公報)
、マンガンの一部を周期律表6A族に属するMo、Wから選ばれた少なくとも1種の元素と同表3B族に属するB、Al、Ga、Inから選ばれた少なくとも1種の元素で置換して成るマンガン酸化物を主体としたMn−Li系合成物からなるリチウム二次電池用正極活物質(特開平5−28991号公報)、リチウムマンガン複合酸化物(LiMn2 4 )にAI2 3 、In2 3 、SnO2 、ZnOから選ばれる1種以上の酸化物を添加する非水電解液二次電池(特開平7−153495号公報)、あらかじめマンガンの一部を他元素M(ここで、Mは周期律表III B、IVBおよびVB族の非金属元素および半金属元素、アルカリ土類金属、Mn以外の金属元素の中から選ばれた1種または1種以上の元素)で置換したマンガン化合物を原料として合成されたリチウムマンガン複合酸化物を正極活物質として使用するリチウム二次電池(特開平8−162115号公報)、正極としてLix Mn2-y y 4 (M=Na、Mg、Sc、Y、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Pb、Sb、0≦x≦1.2、0≦y≦0.7)を主体とする複合酸化物あるいはMn2 4 を主体とする複合酸化物とする二次電池(特開平8−236151号公報)、正極のマンガン酸化物にAl2 3 、In2 3 、Ga2 3 、Tl2 3 、LiAlO2 、LiInO2 、LiGaO2 及びLiTlO2 の中から選ばれた1 種の添加剤が添加されているリチウム二次電池(特開平10−116603号公報)、正極活物質が、少なくともLiMn2 4 およびLiMn2-a a 4 (XはIIA、IIIA、IVA、VA、VIA、VIIA、VIII、IB、IIB、III B、IVB元素よりなる群から選ばれた少なくとも1種類の元素、0<a≦1.0)の両者を含有する非水電解質二次電池(特開平10−199508号公報)などが挙げられる。
【0004】
上記、従来の技術のうち、例えば特開平4−289662号公報には、正極活物質として、LiMn2 4 中のMnをAlで一部置換したLix Mn2-y Aly 4 (0.85≦x≦1.15、0.02≦y≦0.5)で表される物質が単一相として得られることが記載され、また、その正極活物質を製造する場合、アルミニウムの原料として、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム又は硝酸アルミニウム等を使用することが記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の正極活物質として、LiMn2 4 中のMnをAlで一部置換したと説明されているLix Mn2-y Aly 4 は、分析技術上の問題もあり、必ずしもMnサイトにAlが理論通りに置換されているとは限らないし、実際その証明もなされていない。該マンガン酸リチウムはスピネル構造を有するため、通常、X線回折によりこの構造を確認しているが、このX線回折結果においては、Mnサイトに置換されていないAl(不純物Al)に起因するピークがマンガン酸リチウムのスピネル構造由来のピークに重なって観察されるため、その不純物Alの存在を確認できないという問題があった。このため、従来のマンガン酸リチウムのMnの一部をAlで置換したとされるリチウムマンガン複合酸化物は、例えば50〜60℃の高温での放電容量特性においては未だ十分で
あるとは言えなかった。また、原料に使用する塩化アルミニウム、臭化アルミニウム又は硝酸アルミニウムは、NOX 、塩素及び臭素等の有害ガスがリチウムマンガン複合酸化物製造時に発生することがあり、工業的及び環境的にも問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、マンガン酸リチウムのMnの一部をAlで効果的に置換し、Alに起因する不純物を含まないリチウムマンガン複合酸化物及びこれを用いる高温での放電容量特性に優れるリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、アルミニウム原料として、特定の平均粒子径を有する微細な水酸化アルミニウムを使用することにより、Mnの一部にAlが効果的に置換したリチウムマンガン複合酸化物が、Alに起因する不純物を含まず、工業的には安価で生産性が高く、しかも環境的に問題がないことを見出すと共に、得られたリチウムマンガン複合酸化物は(1)X線回折のピークマッチング法により、(2)走査型電子顕微鏡(EPMA)測定によるAlのマッピング像とMnのマッピング像との同一性の比較により、あるいは(3)塩酸溶液による溶解操作による不溶解物量により、それぞれ特定できるものであり、これを用いたリチウム二次電池は優れた高温放電容量特性を示すことをも見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明(1)は、下記一般式(1);
Lix Mn2-y Aly 4-Z (1)
(式中、0<x<2.0、0<y<0.4、0≦z<2.0を示す)で表されるリチウムマンガン複合酸化物において、X線回折による2θが10〜90°における回折面のピークデータが、JCPDSカードチャートでのLiMn2 4 の前記回折面のピークデータを示し、JCPDSカードチャートでのMnAl2 4 の(331)面の48.318°、(440)面の64.174°、(622)面の77.024°、(444)面の81.166°、(711)面及び(551)面の84.191°及びJCPDSカードチャートでのAl2 3 の(400)面の45.786°のピークを示さないことを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物を提供するものである。
【0009】
また、本発明(2)は、下記一般式(1);
Lix Mn2-y Aly 4-Z (1)
(式中、0<x<2.0、0<y<0.4、0≦z<2.0を示す)で表されるリチウムマンガン複合酸化物において、走査型電子顕微鏡(EPMA)測定によるAlのマッピング像がMnのマッピング像と実質的に同一に現れることを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物を提供するものである。
【0010】
また、本発明(3)は、下記一般式(1);
Lix Mn2-y Aly 4-Z (1)
(式中、0<x<2.0、0<y<0.4、0≦z<2.0を示す)で表されるリチウムマンガン複合酸化物であって、6N塩酸溶液50mlに前記リチウムマンガン複合酸化物5.0g添加し、100℃、2時間加熱溶解による不溶物が2.5wt%以下であることを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物を提供することにある。
【0011】
また、本発明(4)は、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のリチウムマンガン複合酸化物を含有することを特徴とするリチウム二次電池正極活物質を提供するものである。
また、本発明(5)は、前記(4)記載のリチウム二次電池正極活物質を用いたリチウム二次電池を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のリチウムマンガン複合酸化物は、スピネル構造を有し、且つAlがMnサイトに均一にほぼ理論的に置換されているために、Alに起因する不純物が少なく、高純度のAl置換のリチウムマンガン複合酸化物である。Alが効果的にMnと置換しているために、従来のリチウムマンガン複合酸化物に比べて高温放電容量特性が優れる。また、Alの原料として安価な水酸化アルミニウムを用いるため、工業的に非常に有利であり、且つ水酸化アルミニウムは製造時に有害ガスを発生しないため環境的にも非常に好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るリチウムマンガン複合酸化物は、前記一般式(1)で示されるリチウムマンガン複合酸化物であって、X線回折による2θが10〜90°における回折面のピーク位置が、JCPDSカードチャートでのLiMn2 4 の前記回折面に対応する回折面のピーク位置よりも高角度側にシフトしているリチウムマンガン複合酸化物である。このシフトの量は0.001〜0.4°程度であり、これはAlがMnに置換しているために格子定数が小さくなるためである。このように、Alを入れることにより構造が安定化するため、リチウム二次電池の活物質として用いれば充放電を繰り返しても構造変化が起こりにくく、放電容量が低下しにくい。上記本発明に係るリチウムマンガン複合酸化物は、スピネル構造を有する。
【0014】
式(1)中、xの好ましい範囲は0.95<x<1.2、yの好ましい範囲は0.02<y<0.25である。本発明のリチウムマンガン複合酸化物は、結晶構造中、本来Mnが占めるべきサイトの一部にAlが置換して入り込んでいるものである。該Alがリチウムマンガン複合酸化物中に上記範囲内の量比で含まれると、リチウムイオンのインターカレーション及びデインターカレーション反応をより高い電位で行うことができるため好ましい。
【0015】
本発明に係るリチウムマンガン複合酸化物において、X線回折による2θが10〜90°における回折面のピーク位置とは、Cu−Kα線で測定される回折面のピーク位置2θであって、2θが10〜90°の範囲内において2θの小さい方から(111)面、(220)面、(311)面、(222)面、(400)面、(331)面、(511)面、(440)面、(531)面、(533)面、(622)面、(444)面、(551面の順に現れるピーク位置を示す。また、ピーク位置の2θが10°未満の部分ではピークの対称性が悪いためピーク位置が正確な位置を示さないおそれがあり、90°を越える部分ではピーク強度が弱いためピーク位置を特定できないおそれがある。
【0016】
JCPDSカードチャートでのLiMn2 4 の回折面のピーク位置とは、X線回折(Cu−Kα線)による10〜90°における2θのピーク位置であり、上記カードチャートに記載されるように、(111)面が18.610°、(220)面が30.649°、(311)面が36.084°、(222)面が37.745°、(400)面が43.867°、(331)面が48.045°、(511)面が58.054°、(440)面が63.777°、(531)面が67.076°、(533)面が75.523°、(622)面が76.543°、(444)面が80.631°、(551)面が83.647°である。本発明のリチウムマンガン複合酸化物の回折面のピーク位置は、AlがMn位置に置換しているためにわずかに高角度側にシフトするものである。
【0017】
また、本発明のリチウムマンガン複合酸化物は、Cu−Kα線でのX線回折による2θが10〜90°における回折面のピーク位置において、JCPDSカードチャートでのMnAl2 4 の(331)面の48.318°、(440)面の64.174°、622)面の77.024°、(444)面の81.166°、(711)面及び(551)面の84.191°のピークを示さないものである。これらのピークは、通常のX線回折パターン又は弱ピークを強く表示する平方根表示されたX線回折パターン(以下、「XRDチャート」ともいう)ではLiMn2 4 のピークに重なって存在するため、リチウムマンガン複合酸化物のXRDチャートからはその存在を認識することはできないこともある。
【0018】
また、本発明のリチウムマンガン複合酸化物は、Cu−Kα線でのX線回折による2θが10〜90°における回折面のピーク位置において、JCPDSカードチャートに示されるAl2 3 (JCPDS29−0063)のピーク位置(400)面の45.786°を示さないものである。この(400)面のピークはリチウムマンガン複合酸化物のXRDチャートからは極めて弱ピークとして現れるため、チャートのベースラインに隠れてしまう。また、本発明のリチウムマンガン複合酸化物はX線回折のピークデータにおいて、MnAl2 4 、Al2 3 及びその他の不純物Alに起因するピークが現れないものである。
【0019】
上記MnAl2 4 及び上記Al2 3 等はリチウムマンガン複合酸化物のMnのサイトの一部に入り込めなかった不純物であり、本発明のリチウムマンガン複合酸化物はかかるピークの全部が存在しないことから、リチウムマンガン複合酸化物の本来Mnが占めるべきサイトの一部にMnと置換してAlが効果的に入り込んでいることが判る。
【0020】
また、本発明のリチウムマンガン複合酸化物は走査型電子顕微鏡(EPMA)測定によるAlのマッピング像はMnのマッピング像と実質的に同一に現れる。走査型電子顕微鏡の測定条件としては、例えば、加速電圧20kV、倍率260倍である。Alのマッピング像は電子線の照射に伴いAl原子から放出される特性X線を捉えて画像化されたものであり、Al原子の存在を示す。Mnのマッピング像は、同様に電子線の照射に伴いMn原子から放出される特性X線を捉えて画像化されたものであり、Mn原子の存在を示す。Alのマッピング像がMnのマッピング像と実質的に同一に現れるとは、同一視野内においてAlの存在を示す無数の点状物で形成される画像物と、Mnの存在を示す無数の点状物で形成される画像物とが同一形状物として認識されるものを言う。この場合、当該Al又
はMnの存在を示す点状物の濃度は均一に分散している限り、異なっていてもよい。すなわち、Alの点状物の密集度と、Mnの点状物の密集度とは相違していてもよい。また、Alのマッピング像とMnのマッピング像は別途の条件で得られるため、画像の濃淡も相違していてもよい。また、本発明のリチウムマンガン複合酸化物において、画像上Al又はMnの存在を示す点状物は均一分散状に現れる。一方、リチウムマンガン複合酸化物のMnのサイトの一部に入り込めなかったAlに起因する不純物が存在すると、Alのマッピング像はMnのマッピング像から把握される形状を特定できず、また、Alの存在を示す点状のものは不均一で、大きな塊状のものが点々と分散しているように見える。
【0021】
また、本発明のリチウムマンガン複合酸化物は6N塩酸溶液50mlに前記リチウムマンガン複合酸化物5.0g添加し、100℃、2時間加熱による不溶物が2.5wt%以下、好ましくは1.0wt%以下、更に好ましくは0.2wt%以下である。6N塩酸溶液は原液(1部)+純水(1部)のものであるが、塩酸濃度はLiMn2 4 が溶解する濃度であればよく、適宜純水又は塩酸を添加して乾固しないようにすればよい。
【0022】
本発明のリチウムマンガン複合酸化物は、マンガン酸リチウムの結晶構造中のマンガン(Mn)又はAlの一部をMnあるいはAl以外の元素、例えば、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、モルブデン(Mo)などより選ばれる1種以上の元素で置換した置換体であってもよい。
【0023】
次に、本発明に係るリチウムマンガン複合酸化物の製造方法について説明する。本発明に係るリチウムマンガン複合酸化物の製造方法は、最終生成物のLi:Mn:Alのモル比がx:2−y:y(式中、xは0<x<2.0、yは0<y<0.4の値をとる。)となるように出発原料を混合し焼成して、前記一般式(1)で示されるリチウムマンガン複合酸化物を得る。
【0024】
出発原料は、リチウム原料、マンガン原料及びアルミニウム原料とからなるものであり、例えば、リチウムを含むリチウム原料、マンガンを含むマンガン原料、アルミニウムを含むアルミニウム原料等を別々に用意し、これらを焼成後の最終生成物が上記原子のモル比を満たすように配合したものを用いればよい。また、上記諸原料を配合する際は、全ての原料を同時に混合して出発原料を調製してもよいし、初めに2の原料を混合してからこの混合原料と他の原料とを混合して出発原料を調製してもよい。混合は、乾式でも湿式でもよい。出発原料の形態は、焼成可能であればよいが、例えば、混合されて粉末状のままのものでもよく、均一に混合した後加圧成形して成形体としたものであってもよい。
【0025】
上記リチウム原料及びマンガン原料は、それぞれの金属を含むものであればどのようなものでもよいが、例えば、それぞれの金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩及び有機酸塩等が挙げられる。すなわち、リチウム原料としては、リチウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩及び有機酸塩から選択される1種または2種以上よりなるものが挙げられ、例えば、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム等のリチウム塩が挙げられ、このうち炭酸リチウムが焼成時の好ましくないガスの発生もなく工業上特に好ましい。炭酸リチウムの平均粒子径は0.5〜10μm の範囲のものが、水酸化アルミニウムの平均粒子径をこのような範囲とすることが、均一に分散された混合物を焼成でき、不純物Alの無い焼成物を得ることができる点から好ましい。
【0026】
また、マンガン原料としては、マンガンの酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩及び有機酸塩から選択される1種または2種以上よりなるものが挙げられ、例えば、電解二酸化マンガン、化学合成二酸化マンガン、炭酸マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン等のマンガン塩が挙げられ、このうち電解二酸化マンガンが工業的に入手が容易であるため好ましい。
【0027】
また、アルミニウム原料は、水酸化アルミニウムが好ましい。水酸化アルミニウムの平均粒子径は0.1〜10μm 、好ましくは0.1〜4μm 、更に好ましくは0.5〜2μm である。水酸化アルミニウムの平均粒子径をこのような範囲とすることが、均一に分散された混合物を焼成でき、不純物Alの無い焼成物を得ることができる点で好ましい。また、水酸化アルミニウムは、その粒子表面にステアリン酸又はオレイン酸等の高級脂肪酸又はその塩で表面処理を施したものや、また、高級脂肪酸又はその塩を微量添加したものを使用すれば、微粉の塊を生じることなく、微細なまま均一に分散できる点で好ましい。
【0028】
また、本発明で使用する原料は、いずれにおいても製造履歴は問わないが、可及的に不純物含有量が少ないものが好ましい。
【0029】
次いで、上記原料を所定量、乾式で混合し、該混合物を600〜950℃で焼成すればよい。乾式混合は、原料が均一に混合するようなブレンダーを使用すればよい。また、原料を造粒して焼成してもよい。
【0030】
焼成方法は、(1) 一度に600〜950℃に昇温して焼成する方法、(2) 一度600℃以上で焼成して更に高温に昇温して焼成する方法、(3) 一度600℃以上で焼成して、100℃以下に冷却して、必要に応じて粉砕又は分級した後、再度600℃以上で再焼成する方法、(4) 前記(3) の方法を数回繰り返す方法、(5) 前記(3) 〜(4) で、原料を数回に分けて添加する方法、(6) 一度高温で焼成した後、それより低温で焼成する方法、などが挙げられ、このうち、好ましくは(1) の方法である。また、焼成は通常大気中雰囲気又は酸素雰囲気下で行うが、不活性雰囲気下でも良い。焼成終了後は、冷却し、必要に応じて粉砕する。冷却は炉内で徐々に冷却しても、空気中で放冷してもよく、急冷してもよい。
【0031】
得られた式(1)で示されるリチウムマンガン複合酸化物は、スピネル構造を有する。本発明に係るリチウムマンガン複合酸化物、並びに本発明に係る製造方法で得られたリチウムマンガン複合酸化物は、特に、リチウム二次電池正極活物質として有用である。
【0032】
本発明に係るリチウム二次電池正極合剤は、上記リチウムマンガン複合酸化物を主成分として、黒鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン等を有機溶媒に分散させた混練ペーストのことである。次いで、該混練ペーストをアルミ箔等の導電性基板に塗布した後、乾燥し、加圧して適宜形状に切断して正極板を得ることができる。
【0033】
すなわち、リチウム二次電池は、正極、負極、セパレーターおよびリチウム塩を含有する非水電解質を有し、正極は前記正極板が使用される。負極に用いられる負極材料としては、金属複合酸化物と炭素質材料などがある。錫酸化物を主体として含む非晶質構造又は結晶構造の金属複合酸化物や、黒鉛等の炭素質材料を単独で用いてもよいし、これらの複合金属酸化物と炭素質材料の複合物を用いてもよい。これらの負極材料は高容量のリチウム吸蔵を特徴とすることから、高容量である上記の正極活物質とバランスよく組み合わせることにより、ロッキングチェア型二次電池の高容量化を効率良く図ることができる。
【0034】
二次電池で負極材料と共に用いることができる負極活物質としては、リチウム金属、リチウム合金などが挙げられる。リチウム金属やリチウム合金の併用目的は、リチウムイオンを電池内で負極材料に挿入させるためのものであり、電池反応としてリチウム金属などの溶解析出反応を利用するものではない。
【0035】
二次電池正極合剤に含まれる導電剤としては、構成された電池において、化学変化を起こさない電子伝導材料であれば何でもよい。通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛など)、人工黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維や金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀(特開昭63−148554号)など)粉、金属繊維あるいはポリフェニレン誘導体(特開昭59−20971号)などの導電性材料を1種またはこれらの混合物として含ませることができる。黒鉛とアセチレンブラックの併用が特に好ましい。その添加量は、特に限定されないが、1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。カーボンや黒鉛では、2〜15重量%が特に好ましい。
【0036】
結着剤には、通常、でんぷん、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリ弗化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエン、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシドなどの多糖類、熱可塑性樹脂、ゴム弾性を有するポリマーなどが1種またはこれらの混合物として用いられる。結着剤の添加量は2〜30重量%が好ましい。フィラーは、構成された電池において、化学変化を起こさない繊維状材料であれば何でも用いることができる。通常、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系ポリマー、ガラス
、炭素などの繊維が用いられる。フィラーの添加量は特に限定されないが、0〜30重量%が好ましい。
【0037】
二次電池の製造に用いられる非水電解液としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステルなどの非プロトン性有機溶媒の少なくとも1種以上を混合した溶媒とその溶媒に溶けるリチウム塩が使用される。中でも、プロピレンカーボネートあるいはエチレンカーボートと1,2−ジメトキシエタンおよび/あるいはジエチルカーボネートの混合液にLiCF3 SO3 、LiClO4 、LiBF4 および/あるいはLiPF
6 を含む電解質が好ましい。これら電解質を電池内に添加する量は、特に限定されないが、正極活物質や負極活物質の量や電池のサイズによって必要量用いることができる。
【0038】
二次電池に用いるセパレーターとしては大きなイオン透過度を持ち、所定の機械的強度を持った絶縁性の薄膜が用いられる。耐有機溶剤性と疎水性からポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマーあるいはガラス繊維あるいはポリエチレンなどからつくられたシートや不織布が用いられる。セパレーターの孔径は、一般的に電池用として有用な範囲が用いられる。例えば、0.01〜10μm が用いられる。セパレーターの厚みは、例えば5〜300μm の範囲のものが用いられる。電解質にポリマーなどの固体電解質が用いられる場合には、固体電解質がセパレーターを兼ねる場合がある。自己放電や充放電特性を改良する目的で、ピリジン、トリエチルフォスファイト、トリエタノールアミン等の化合物を電解質に添加することが知られている。
【0039】
電池の形状はコイン、ボタン、シート、シリンダー、角等いずれにも適用できる。コインやボタンでは、正極活物質や負極活物質の合剤はペレットの形状にプレスされて用いられる。また、シート、シリンダー、角では、正極活物質や負極活物質の合剤は、集電体の上に塗布、乾燥、脱水、プレスされて用いられる。その塗布厚みは、電池の大きさにより決められるが、乾燥後の圧縮された状態で10〜500μmが特に好ましい。
【0040】
非水二次電池の用途は、特に限定されないが、例えば、電子機器に搭載する場合、カラーノートパソコン、白黒ノートパソコン、ペン入力パソコンポケット(パームトップ)パソコン、ノート型ワープロ、ポケットワープロ、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディクリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、電子翻訳機、自動車電話、トランシーバー、電動工具、電子手帳、電卓、メモリーカード、テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源等が挙げられる。その他民生用として、自動車、電動車両用モーター、照明機器、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、アイロン、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機等)等が挙げられる。さらに、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池や燃料電池と組み合わせることもできる。
【実施例】
【0041】
次に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0042】
実施例1
平均粒子径3.2μm の電解二酸化マンガン20.0g、平均粒子径4.5μm の炭酸リチウム4.43g、平均粒子径0.6μm の水酸化アルミニウム1.11gを乾式で混合し、次いで大気雰囲気下900℃で12時間焼成し、LiMn1.875 Al0.125 4 (Mn:Al=15:1)で表されるリチウムマンガン複合酸化物を得た。次に、このリチウムマンガン複合酸化物のX線回折測定、走査型電子顕微鏡(EPMA)測定及び塩酸不溶物測定を行い、更にリチウム二次電池を作製してその電池性能を評価した。実施例1で得られたリチウムマンガン複合酸化物のXRDチャート(平方根表示)を図1の上段に、X線回折測定におけるピークデータを図2の(C)に、走査型電子顕微鏡(EPMA)のSEM写真、Alマッピング像及びMnマッピング像を図3に、電池性能は表1にそれぞ
れ示す。なお、図2の(C)はJCPDS35−0782のLiMn2 4 ピークデータと同一であった。
【0043】
(EPMA測定)
・装置;PV9900型(日本フィリップス社製)
・測定条件;加速電圧20kV、倍率260倍
【0044】
(塩酸不溶物測定)
リチウムマンガン複合酸化物をそれぞれ6N塩酸溶液50mlに5.00g添加して100℃、2時間加熱溶解する。次いで、秤量済みのフィルタ(PTFE製、孔径0.1μm )を用いて吸引濾過し、純水で十分に洗浄した後、十分に乾燥して秤量、重量増加分を残さ量とする。この塩酸不溶解量(wt%)は(残さ量(g)×100/リチウムマンガン複合酸化物量(g))から求められる。必要に応じて、この残さをX線回折測定して、リチウムマンガン複合酸化物(LiMn2 4 )のピークが無いことを確認する。
【0045】
実施例2〜4
平均粒子径0.6μm の水酸化アルミニウムに代えて、平均粒子径1.2μm の水酸化アルミニウム(実施例2)、平均粒子径3.6μm の水酸化アルミニウム(実施例3)、平均粒子径8.0μm の水酸化アルミニウム(実施例4)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。また、各焼成物は実施例1と同様の測定及び分析を行った。XRDチャート及び走査型電子顕微鏡(EPMA)のSEM写真、Alマッピング像及びMnマッピング像は実施例1と同様の結果であった。また、電池性能は表1に示す。
【0046】
比較例1〜4
平均粒子径0.6μm の水酸化アルミニウムに代えて、平均粒子径11μm の水酸化アルミニウム(比較例1)、平均粒子径18μm の水酸化アルミニウム(比較例2)、平均粒子径25μm の水酸化アルミニウム(比較例3)、平均粒子径55μm の水酸化アルミニウム(比較例4)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。また、各焼成物は実施例1と同様の測定及び分析を行った。比較例1のXRDチャート(平方根表示)を図1の下段に、X線回折測定におけるピークデータを図2に、走査型電子顕微鏡(EPMA)のSEM写真、Alマッピング像及びMnマッピング像を図4に、電池性能は表1にそれぞれ示す。なお、比較例2〜4のXRDチャート及び走査型電子顕微鏡(EPMA)のSEM写真、Alマッピング像及びMnマッピング像は比較例1と同様の結果であった。また
、比較例2〜4の電池性能は表1に示す。図2中、(A)図は図1の下段と同じ比較例1のXRDチャートであり、(B)図は(A)のピークデータであり、(C)図は実施例1のピークデータであり、(D)図はMnAl2 4 (JCPDSカード29−0880)のピークデータであり、(E)図はAl2 3 (JCPDSカード29−0063)のピークデータである。(A)図のピーク頂点の□印はMnAl2 4 等の不純物Alに起因するピークであることを示す。
【0047】
実施例5
平均粒子径3.2μm の電解二酸化マンガン20.0g、平均粒子径4.5μm の炭酸リチウム4.62g、平均粒子径0.6μm の水酸化アルミニウム1.84gを乾式で混合し、次いで大気雰囲気下900℃で12時間焼成し、LiMn1.8 Al0.2 4 (Mn:Al=9:1)で表されるリチウムマンガン複合酸化物を得た。また、このリチウムマンガン複合酸化物は実施例1と同様の測定及び分析を行った。XRDチャート及び走査型電子顕微鏡(EPMA)のSEM写真、Alマッピング像及びMnマッピング像は実施例1と同様の結果であった。また、電池性能は表2に示す。
【0048】
実施例6〜8
平均粒子径0.6μm の水酸化アルミニウムに代えて、平均粒子径1.2μm の水酸化アルミニウム(実施例6)、平均粒子径3.6μm の水酸化アルミニウム(実施例7)、平均粒子径8.0μm の水酸化アルミニウム(実施例8)を使用した以外は、実施例5と同様に行った。また、これらのリチウムマンガン複合酸化物は実施例1と同様の測定及び分析を行った。XRDチャート及び走査型電子顕微鏡(EPMA)のSEM写真、Alマッピング像及びMnマッピング像は実施例5と同様の結果であった。また、電池性能は表2に示す。
【0049】
比較例5〜8
平均粒子径0.6μm の水酸化アルミニウムに代えて、平均粒子径11μm の水酸化アルミニウム(比較例5)、平均粒子径18μm の水酸化アルミニウム(比較例6)、平均粒子径25μm の水酸化アルミニウム(比較例7)、平均粒子径55μm の水酸化アルミニウム(比較例8)を使用した以外は、実施例5と同様に行った。また、これらのリチウムマンガン複合酸化物は実施例1と同様の測定及び分析を行った。XRDチャート及び走査型電子顕微鏡(EPMA)のSEM写真、Alマッピング像及びMnマッピング像は比較例1〜4と同様の結果であった。また、電池性能は表2に示す。
【0050】
図1から明らかなように、実施例1のリチウムマンガン複合酸化物のXRDチャートと比較例1のリチウムマンガン複合酸化物のXRDチャートとは、同じものと認識される。一方、図2から明らかなように、実施例1のピークデータ(図中、(C))と比較例1のピークデータ(図中、(B))とは異なる。すなわち、比較例1のピークデータには、XRDチャートのピーク頂点に□印を付けた部分において、不純物Alに起因するピークが現れる。例えば、MnAl2 4 に起因する64.5(図中、(i))、77.6(図中、(ii))、81.8(図中、(iii))、84.7(図中、(iv))及びAl2 3 に起因する45.8(図中、(v))である。従って、X線回折測定のピークデータを平方根表示して比較すれば、不純物Alの存在が判ると共に、実施例1のリチウムマンガン複合酸化物はLiMn2 4 中のMnが占めるサイトの一部にAlが効果的に置換したものであることが判る。
【0051】
図3から、Alマッピング像はMnマッピング像と同一に現れている。すなわち、Mn原子を示す白い点状物はAl原子を示す白い点状物に比して、その密度は大きく相違するものの、白い点状物から認識される形状は同一である。また、Alマッピング像とMnマッピング像は共に、白い点状物は均一に分散していることが判る。一方、図4から、Alマッピング像はMnマッピング像とは相違する。SEM写真とMnマッピング像から、Mn原子の均一な存在は認識できるものの、Alマッピング像のAl原子を示す白い点状物は塊状となり点在している。従って、EPMAのAlマッピング像とMnマッピング像との比較によっても、不純物Alの存在が判ると共に、実施例1のリチウムマンガン複合酸化物はLiMn2 4 中のMnが占めるサイトの一部にAlが効果的に置換したものであることが判る。
【0052】
図5は原料に使用される水酸化アルミニウムの平均粒子径に対する塩酸不溶物量の関係を示したもので、水酸化アルミニウムの平均粒子径が微細な方が塩酸不溶解物量が少ないことがわかる。特に、水酸化アルミニウムの平均粒子径が10μm 近傍において、急激な変化が生じている。従って、LiMn2 4 は塩酸溶液に溶解しても、不純物Alを含むリチウムマンガン複合酸化物は塩酸溶液に不溶解であるから、この塩酸溶液法においても不純物Alの存在が判ると共に、実施例のリチウムマンガン複合酸化物はLiMn2 4 中のMnが占めるサイトの一部にAlが効果的に置換したものであることが判る。
【0053】
(i)リチウム二次電池の作製;
上記のように製造したリチウムマンガン複合酸化物70重量%、黒鉛粉末20重量%、ポリフッ化ビニリデン10重量%を混合して正極剤とし、これをN−メチル−2−ピロリジノンに分散させて混練ペーストを調製した。該混練ペーストをアルミ箔に塗布したのち乾燥、プレスして直径15mmの円盤に打ち抜いて正極板を得た。この正極板を用いて、セパレーター、負極、正極、集電板、取り付け金具、外部端子、電解液等の各部材を使用してリチウム二次電池を製作した。このうち、負極は金属リチウム箔を用い、電解液にはエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1:1混練液1リットルにLiPF61モルを溶解したものを使用した。
【0054】
(ii)リチウム二次電池の性能評価
作製したリチウム二次電池を50℃で作動させ、初期放電容量及び容量保持率を測定して電池性能を評価した。
・放電容量の評価方法
放電容量は正極に対して0.5mA/cm2 で4.3Vまで充電した後、3.5Vまで放電させる充放電を繰り返すことにより測定し、容量保持率は前記の充放電を反復した結果から、下記の式により算出した。
容量保持率(%)=(20サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0055】
(初期放電容量及び容量保持率測定)
実施例1〜8、比較例1〜8のリチウムマンガン複合酸化物について初期放電容量及び容量保持率を測定した。その結果を表1、表2及び図5に示す。図5は原料に使用される水酸化アルミニウムの平均粒子径に対する50℃における20サイクル後の容量保持率の関係を示す。この図より、原料に用いる水酸化アルミニウムは微細な方が容量保持率が良いことがわかる。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施例1及び比較例1のリチウムマンガン複合酸化物のXRDチャートを示す図である。
【図2】リチウムマンガン複合酸化物のピークデータを示す図である。
【図3】実施例1のEPMA分析結果を示す図である。
【図4】比較例1のEPMA分析結果を示す図である。
【図5】原料水酸化アルミニウムの平均粒子径と塩酸不溶物量及び50℃での20サイクル後の容量保持率の関係を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1);
Lix Mn2-y Aly 4-Z (1)
(式中、0<x<2.0、0<y<0.4、0≦z<2.0を示す)で表されるリチウムマンガン複合酸化物において、X線回折による2θが10〜90°における回折面のピークデータが、JCPDSカードチャートでのLiMn2 4 の前記回折面のピークデータを示し、JCPDSカードチャートでのMnAl2 4 の(331)面の48.318°、(440)面の64.174°、(622)面の77.024°、(444)面の81.166°、(711)面及び(551)面の84.191°及びJCPDSカードチャートでのAl2 3 の(400)面の45.786°のピークを示さないことを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物。
【請求項2】
下記一般式(1);
Lix Mn2-y Aly 4-Z (1)
(式中、0<x<2.0、0<y<0.4、0≦z<2.0を示す)で表されるリチウムマンガン複合酸化物において、走査型電子顕微鏡(EPMA)測定によるAlのマッピング像がMnのマッピング像と実質的に同一に現れることを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物。
【請求項3】
下記一般式(1);
Lix Mn2-y Aly 4-Z (1)
(式中、0<x<2.0、0<y<0.4、0≦z<2.0を示す)で表されるリチウムマンガン複合酸化物であって、6N塩酸溶液50mlに前記リチウムマンガン複合酸化物5.0g添加し、100℃、2時間加熱溶解による不溶物が2.5wt%以下であることを特徴とするリチウムマンガン複合酸化物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムマンガン複合酸化物を含有することを特徴とするリチウム二次電池正極活物質。
【請求項5】
請求項4記載のリチウム二次電池正極活物質を用いたリチウム二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−112709(P2007−112709A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295062(P2006−295062)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【分割の表示】特願平11−322540の分割
【原出願日】平成11年11月12日(1999.11.12)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】