説明

リチウム二次電池用負極の製造方法

【課題】リチウム二次電池において、不可逆容量を低減し、かつ、充放電サイクル特性を向上させる。
【解決手段】リチウム二次電池用負極の製造方法は、集電体51上にケイ素を含む活物質膜53を形成する工程(A)と、チャンバー内において、減圧状態で活物質膜53にリチウム55を付与する工程(B)と、工程(B)の後、減圧状態のチャンバーに炭酸ガスを供給して、チャンバー内の圧力を上げる工程(C)と、工程(C)の後、炭酸ガスを含む雰囲気中で、活物質膜53が形成された集電体51を所定の温度で保持する工程(D)とを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用負極の製造方法に関し、特に集電体上にケイ素薄膜、または、ケイ素を主成分とする薄膜が形成された負極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、例えば電子機器の駆動用電源として広く用いられており、さらなる高容量化が望まれている。
【0003】
電池のさらなる高容量化のために、種々の負極活物質が研究されている。容量が高い負極活物質としては、リチウムと金属間化合物を形成する材料であるケイ素や錫などの合金や酸化物が有望である。例えば、ケイ素の理論放電容量は約4199mAh/gであり、現在主として負極に用いられている黒鉛の理論放電容量の11倍である。
【0004】
しかしながら、上記のような負極活物質を用いると、充放電の際の負極活物質に対するリチウムイオンの挿入および脱離の反応によって大きく膨張・収縮する。従って、上記負極活物質を用いてリチウム二次電池用の負極を構成すると、充放電の繰り返しによって、負極活物質が微粉化したり、負極活物質が集電体から脱離し、充放電サイクル特性の低下を引き起こすおそれがある。さらに、初期充電時に充電した容量のうち外部に取り出すことのできない容量、すなわち最初の充電容量と最初の放電容量との差(以下「不可逆容量」という。)が大きいために、負極活物質材料の持つ理論放電容量が高いという利点を十分に活かすことができないという問題もある。
【0005】
これらの問題を解決するために、上記負極活物質を含む活物質膜に予めリチウムを吸蔵させておく手法が提案されている。例えば特許文献1には、ケイ素やスズの化合物からなる活物質膜を形成した後、真空蒸着法などの気相法を用いてリチウムを活物質膜上に堆積させることにより、活物質膜にリチウムを拡散させることが提案されている。特許文献1に記載された実施例では、真空槽内で活物質膜上にリチウムを堆積し、続いて、パージガスとしてアルゴンガスを真空槽に注入した後、得られた負極を真空槽から取り出している。本明細書において、「パージガス」とは、真空槽(チャンバー)内の圧力を例えば大気圧まで上げるために、減圧状態の真空槽内に供給されるガスを意味する。
【0006】
活物質膜に予めリチウムを吸蔵させておく手法によると、初回充放電時における不可逆容量を低減することができるだけでなく、充放電に伴う活物質の膨張・収縮による応力を緩和できるので充放電サイクル特性の低下を抑えることができる。また、放電後に負極に電気的に活性なリチウムが残存するようにリチウムの吸蔵量を制御すれば、放電末期によける負極の電位上昇を抑えることができ、充放電サイクル特性を向上できる。
【0007】
しかしながら、リチウムを予め吸蔵させる際に、負極は充電状態となるため、活物質膜表面が酸化されて酸化リチウムまたは水酸化リチウムなどの被膜が形成されるおそれがある。このような被膜は電池内部のインピーダンスを上昇させ、電池特性を劣化させる要因となる。また、電池を取り扱う環境や保存条件によって、形成される被膜の厚さが異なるために、個体間で特性にバラツキが生じる可能性がある。
【0008】
これに対し、特許文献2には、活物質膜に予めリチウムを吸蔵させるとともに、活物質膜表面に炭酸リチウムを含む被膜を形成する手法が提案されている。この手法では、活物質膜(ケイ素膜)上にリチウムを堆積した後、活物質膜に二酸化炭素を含む不活性ガスを接触させることにより、活物質膜の表面に被膜を形成している。被膜の形成は、真空蒸着法により真空槽内でリチウムを堆積させた後、二酸化炭素およびアルゴンを20:80の体積比で混合したガスを真空槽に流入させることによって行われる。
【特許文献1】特開2005−85632号公報
【特許文献2】特開2005−216601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に記載された手法では、真空槽から負極を取り出す際に、パージガスとして、炭酸ガスおよびアルゴンガスを含むガスを真空槽内に流入させており、このパージ工程で炭酸リチウムを含む被膜の形成を行っている。しかしながら、本発明者が検討したところ、特許文献2のパージ工程では、活物質膜の表面酸化を十分に防止できる被膜を形成できない可能性がある。炭酸リチウムを含む被膜は化学反応によって形成されるが、パージ工程では、反応させる温度および時間などの条件を正確に制御して、炭酸リチウムを含む被膜を確実に形成することが困難である。
【0010】
また、特許文献2では、ケイ素または錫を活物質として用いているが、代わりにケイ素酸化物などの酸化物を活物質として用いる場合には、特許文献2の手法によって炭酸リチウムを含む被膜を確実に形成することは特に困難となる。この理由は後述する。
【0011】
このように、従来の手法によると、リチウムを予め吸蔵させる際に生じる活物質膜の表面酸化を十分に抑制できない可能性があり、不可逆容量を低減しつつ、活物質膜の表面酸化に起因する充放電サイクル特性の低下を抑制することは難しかった。
【0012】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、リチウム二次電池において、電池内部のインピーダンスの上昇を抑制しつつ、不可逆容量を低減し、充放電サイクル特性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるリチウム二次電池用負極の製造方法は、集電体上にケイ素を含む活物質膜を形成する工程(A)と、チャンバー内において、減圧状態で前記活物質膜にリチウムを付与する工程(B)と、前記工程(B)の後、前記減圧状態のチャンバーに炭酸ガスを供給して、前記チャンバー内の圧力を上げる工程(C)と、前記工程(C)の後、炭酸ガスを含む雰囲気中で、前記活物質膜が形成された集電体を所定の温度で保持する工程(D)とを包含する。
【0014】
本発明によると、活物質膜にリチウムを予め吸蔵させておくことができるので、不可逆容量を低減できる。また、工程(C)および工程(D)により、十分な厚さの炭酸リチウムの被膜を活物質膜表面により均質に形成できる。従って、電池内部のインピーダンスの上昇による電池特性の劣化や電池個体間の特性のバラツキを抑制でき、その結果、充放電サイクル特性を大幅に向上できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のリチウム二次電池用負極の製造方法によると、活物質膜に予めリチウムを吸蔵させるとともに、活物質膜により均一な表面改質層を確実に形成することができる。従って、不可逆容量を低減でき、かつ、充放電サイクル特性などの電池特性を向上させることができる。また、そのような負極を、製造工程を複雑にすることなく、簡便に製造することができる。
【0016】
本発明を、負極活物質としてケイ素酸化物を用いた負極に適用すると、特に顕著な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<負極の製造方法>
以下、図面を参照しながら、本発明によるある好ましい実施形態のリチウム二次電池用負極(以下、「負極」)の製造方法を説明する。
【0018】
図1(a)〜(c)は、本実施形態の負極の製造方法を説明するための工程断面図である。
【0019】
まず、図1(a)に示すように、銅箔などの集電体51上にケイ素を含む活物質膜53を形成する。
【0020】
ケイ素を含む活物質膜53を形成する方法は特に限定しないが、真空蒸着法やスパッタ法などの気相法を用いることが好ましい。気相法で形成された活物質膜53は、塗布など気相法以外の方法によって形成された活物質膜と比べて高い密着性を有し、集電体51から剥離しにくいからである。なお、気相法を用いる代わりに、粒子状の負極材料、導電剤、結着剤などを分散媒中に分散させてスラリーとし、上記スラリーを集電体上に塗布、乾燥することによって活物質膜53を形成してもよい。
【0021】
活物質膜53は、ケイ素および酸素を含んでいることが好ましく、例えばケイ素酸化物(SiOx、0<x<2)を主成分とする膜であってもよい。より好ましくは、SiOx(0.2≦x≦1.5)で表される組成を有する。一般に、活物質としてケイ素酸化物を用いる場合、ケイ素酸化物における酸素比率が高いほど不可逆容量は大きくなる。従って、活物質膜53におけるケイ素に対する酸素のモル比(以下、単に「酸素比率」ともいう。)xが0.2以上になると、リチウム55を予め吸蔵させることによる不可逆容量の低減効果が大きくなるからである。一方、酸素比率xが1.5より大きいと、リチウム55を予め吸蔵させたとしても、不可逆容量が大きく、電池としての容量が低下してしまう。
【0022】
次に、図1(b)に示すように、チャンバー内において、減圧下で、活物質膜53にリチウム55を付与する。例えば真空プロセスによりリチウム55を活物質膜53上に堆積してもよい。このとき、活物質膜53は、堆積されたリチウム55を吸蔵して膨張し、活物質膜53aとなる。
【0023】
活物質膜53にリチウム55を付与する方法は特に限定しない。リチウム箔を活物質膜53の表面に貼り付けることによってリチウム55を付与することもできるが、蒸着法などの真空プロセスを用いると、本発明の効果をより顕著に得ることができるので好ましい。蒸着法を用いると、リチウム箔を貼り付ける手法よりも均一にリチウム55を付与することができ、リチウム55の堆積量の制御も容易である。
【0024】
なお、リチウム箔を貼り付ける手法を行なう場合、真空もしくは不活性ガス中でロール等での転写によって貼り付けを行なうことが好ましいと考えられる。
【0025】
また、活物質膜53に対するリチウム55の付与量は、付与後の(Li/Li+)に対する電位が0.3V以上0.7V以下となるように調整されることが好ましい。これにより、充放電サイクル特性をより効果的に改善できる。
【0026】
続いて、減圧状態のチャンバー内に、パージガスとして炭酸ガスを供給する。これにより、リチウム55が付与された後の活物質膜53aの表面は、最初にこのパージガスと接触する。この結果、図1(c)に示すように、活物質膜53aの表面においてリチウム55が炭酸ガスと反応し、炭酸リチウムの被膜55aが形成される。なお、この被膜55aは、活物質膜53aに吸蔵されていたリチウム55の一部が放出されて炭酸ガスと反応して形成されたものと考えられる。
【0027】
本実施形態におけるパージガスは、炭酸ガスを主成分とするガスであることが好ましい。「炭酸ガスを主成分とする」とは、例えば、炭酸ガスの体積比が80%より大きいことをいう。これにより、リチウム55が付与され、活性が高い状態の活物質膜53aを均一に炭酸ガスで処理することができる。さらに、活性が高い状態の活物質膜53aの表面に炭酸ガス以外のガスが接触すると他の反応が生じる可能性があるが、活物質膜53aを他のガスに曝すことなく炭酸ガスで処理することができるので、炭酸リチウムが生成される反応以外の反応が生じにくい。なお、パージガスとして、実質的に炭酸ガスのみからなるガスを用いると、炭酸リチウムが生成される反応以外の反応をより効果的に抑えることができるので特に好ましい。
【0028】
この後、被膜55aおよび活物質膜53aが形成された集電体51を、炭酸ガスを含む雰囲気下で一定時間保持する(「エージング」ともいう)。これにより、 炭酸リチウムを生成する反応を十分に進行させることができ、活物質膜表面全体に、より均質に、十分な厚さの被膜を形成することができる ので、充放電サイクル特性を効果的に向上させることができる。このようにして、被膜55aおよび活物質膜53aからなる活物質層60が形成され、負極100が得られる。
【0029】
エージング工程を行う雰囲気中の炭酸ガスの体積比は20%より大きいことが好ましく、より好ましくは80%以上である。さらに好ましくは、実質的に炭酸ガスのみからなる雰囲気下でエージング工程を行う。これにより、エージング時間を短縮化できる。また、炭酸ガスを含む混合ガス雰囲気下で行ってもよく、その場合には、炭酸ガスとアルゴンやネオンなどの不活性ガスとの混合ガスを用いることが好ましい。不活性ガスとの混合ガスであれば、炭酸ガスの効果のみを発揮できるからである。
【0030】
本工程において、炭酸ガスを含む雰囲気下で保持する温度(保持温度)は、集電体51の軟化や、活物質膜53aからの酸素の脱離などの目的外の反応が生じない温度域であればよく、適宜選択され得る。ただし、25℃以上200℃以下であることが好ましい。生産性の観点からは、150℃以上(例えば200℃程度)の温度に加熱した状態で保持する(すなわち、熱処理を行う)ことが好ましい。保持温度を高くすると反応速度が大きくなるからである。一方、集電体51として電解銅箔を用いた場合、保持温度が200℃を超えると、集電体51に軟化が生じ始めるという問題があるため、200℃以下に設定することが好ましい。
【0031】
炭酸ガスを含む雰囲気下で保持する時間(保持時間)は、特に限定しないが、5分以上であれば被膜55aによる表面酸化防止効果を顕著に改善できるので好ましい。一方、保持時間が24時間を超えると生産性が大幅に低下するおそれがあるので、24時間以下であることが好ましい。より好ましくは1時間以下である。1時間を超えると、活物質膜53aの特性に対する悪影響は無いが、単位時間に対する上記効果の改善の度合いが急激に低下してくるため、生産性の観点から好ましくないからである。なお、保持温度によっては、保持時間は1分でもよい。
【0032】
本実施形態では、チャンバー内でリチウム55を付与した後、集電体51をチャンバーから取り出すことなくパージ工程行う。これにより、リチウム55が付与された活物質膜53aを、他の雰囲気に曝すことなく、炭酸ガスと接触させることができるので、活物質膜53aの表面をより確実に改質できる。パージ工程後、集電体51をチャンバーから取り出して、加熱炉でエージング工程を行ってもよいし、パージ工程と同じチャンバー内でエージング工程を行ってもよい。チャンバー内でリチウム55を付与した後、集電体51をチャンバーから取り出すことなく、パージ工程およびエージング工程を行うと、活物質膜53aを他の雰囲気に曝すことなく、炭酸ガスと接触させ、続いて炭酸ガスを含む雰囲気で保持できるので、炭酸リチウムを生成する反応以外の反応をより効果的に抑制できる。
【0033】
図1(a)の活物質膜53は、集電体51の表面に形成された連続膜であり、例えば、複数の粒子状の活物質が堆積された構造を有していてもよい。あるいは、活物質膜53は、集電体51の表面に間隔を空けて配置された複数の柱状の活物質を有していてもよい。ここでは、粒子状の活物質および柱状の活物質を何れも「活物質体」と称することにする。
【0034】
次に、活物質体の模式図を参照しながら、本発明による効果をより詳しく説明する。図2(a)は、図1(a)に示す活物質膜53の一部を示す模式的な拡大断面図である。ここでは活物質膜53を構成する1つの活物質体のみを拡大して示している。
【0035】
図2(a)に示す各活物質体57は、例えばケイ素酸化物からなる。図示しないが、活物質体57の表面には、多くの場合、二酸化ケイ素からなる自然酸化膜が形成されているか、あるいは、活物質体57の内部よりも酸素比率の高い被膜が形成されていると考えられる。
【0036】
このような活物質体57にリチウムを付与すると、図2(b)に示すように、各活物質体57がリチウムを吸蔵して膨張し、その表面から内部に向かって割れが生じることがある。このとき、活物質体57の割れによって新生面(活物質体57の内部から新たに表面へ現れる面)が生じる。
【0037】
本発明者が検討したところ、図2(b)に示すような活物質体57aの表面を改質し、上述したような酸化リチウムまたは水酸化リチウムなどの被膜が形成されることを防止するためには、活物質体57aの新生面に炭酸ガスを最初に接触させることが重要であるとの知見を得た。このためには、リチウムの付与後、減圧状態のチャンバー内に炭酸ガスを供給する必要がある。これによって、活物質体57aの表面(新生面を含む)に炭酸ガスが最初に接触し、炭酸リチウムが生成される。
【0038】
この結果、図2(c)に示すように、活物質体57aの表面を覆うように炭酸リチウムの被膜55aが形成される。このとき、割れによって生じた新生面上にも炭酸リチウムの被膜55aが形成され得る。ただし、炭酸ガスをパージガスとしてチャンバー内に流入させるのみでは、被膜55aの厚さが十分でなかったり、割れの内表面にまで被膜55aが形成されない可能性もある。
【0039】
この後、図示しないが、被膜55aが形成された後の負極を、炭酸ガス雰囲気中で所定の温度で保持する。これにより、炭酸ガスとリチウムとの反応をさらに進行させて、活物質体57aの表面(新生面を含む)に十分な厚さの炭酸リチウムの被膜55aを形成することが可能になる。
【0040】
このように、本発明によると、活物質体57aに予めリチウムを吸蔵させ、かつ、その表面に炭酸リチウムの被膜55aを確実に形成できるので、不可逆容量を抑えつつ、活物質体57aの表面酸化によるインピーダンスの増大やバラツキを従来よりも効果的に抑制することが可能になる。その結果、充放電サイクル特性を改善できる。
【0041】
活物質体57に含まれる活物質(すなわち図1(a)に示す活物質膜53に含まれる活物質)は、ケイ素(Si)単体であってもよいが、ケイ素酸化物(SiOx)であることが好ましく、これにより、特に顕著な効果を得ることができる。ケイ素酸化物を活物質として用いた電池では、ケイ素単体を活物質として用いた電池よりも不可逆容量が大きいため、ケイ素酸化物を含む活物質体57にはより多くのリチウムを予め吸蔵させておく必要がある。図2(b)に示す工程において、多量のリチウムを吸蔵させると、活物質体57aの体積膨張が大きくなってより多くの割れが生じ得る。例えば特許文献2に開示されているような従来の方法では、活物質膜に多くの割れが生じ、新生面の面積が増大した場合には、炭酸リチウムを含む被膜を活物質膜の新生面に確実に形成することは極めて困難であった。これに対し、本実施形態では、パージ工程およびエージング工程によって新生面に確実に炭酸リチウムの被膜55aを形成できるので、活物質体57aの表面を効果的に改質できる。
【0042】
なお、ケイ素酸化物を用いる場合、上述したように、活物質体57により多くの新生面が生じるので、炭酸ガス雰囲気中で保持する際に集電体を加熱し(例えば150℃以上)、リチウムと炭酸ガスとの反応速度を大きくすることが好ましい。
【0043】
<電池の構成および製造方法>
以下、図面を参照しながら、積層型電池を例に、本実施形態の負極100を適用して得られるリチウムイオン二次電池の構成を説明する。
【0044】
図3は、本実施形態のリチウム二次電池の模式的な断面図である。リチウムイオン二次電池200は、正極25と、正極25を挟んで配置された2つの負極27と、各負極27および正極25の間に設けられたセパレータ16とを有する極板群、および、極板群を収容するアルミラミネート外装体21を備えている。
【0045】
正極25は、正極集電体14と、その両面に設けられた正極活物質層15とを有している。負極27は、負極集電体17と、その表面に形成された負極活物質層18とを有している。負極活物質層18は、図1を参照しながら前述した活物質層60と同様の構成を有している。すなわち、リチウムを含む活物質膜と、その表面に形成された炭酸リチウムの被膜とを有する。負極活物質層18は、それぞれ、セパレータ16を介して正極活物質層15と対向するように配置されている。
【0046】
正極集電体14および負極集電体17は、それぞれ正極リード19および負極リード20の一端と接続されており、正極リード19および負極リード20の他端は外装体21の外部に導出されている。セパレータ16には、リチウムイオン伝導性を有する電解質が含浸されている。負極27、正極25およびセパレータ16は、リチウムイオン伝導性を有する電解質とともに、外装体21の内部に収納されて密封されている。なお、負極27と正極25の配置が逆であってもよい。
【0047】
本発明のリチウム二次電池用負極は、図3に示す積層型電池に限定されず、捲回型の極板群を有する円筒型電池や角型電池などにも適用できる。
【0048】
本発明は、負極の構成に特徴を有することから、リチウムイオン二次電池200における負極27以外の構成要素は特に限定されない。例えば、正極活物質層15には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn24)などのリチウム含有遷移金属酸化物を用いることができるが、これに限定されない。また、正極活物質層15は、正極活物質のみで構成してもよいし、正極活物質と結着剤と導電剤を含む合剤で構成してもよい。なお、正極集電体14には、Al、Al合金、Tiなどを用いることができる。
【0049】
リチウムイオン伝導性の電解質には、様々なリチウムイオン伝導性の固体電解質や非水電解液が用いられる。非水電解液には、非水溶媒にリチウム塩を溶解したものが好ましく用いられる。非水電解液の組成は特に限定されない。
【0050】
セパレータ16や外装体21も特に限定されず、様々な形態のリチウム二次電池に用いられている材料を特に限定されることなく用いることができる。
【0051】
次に、図4を参照しながら、本実施形態の電池の製造方法を説明する。
【0052】
まず、図1(a)〜(c)を参照しながら前述した方法で、負極集電体上に活物質膜を形成する(S1)。次いで、図1を参照しながら前述した方法により、負極活物質層を形成する(S2)。
【0053】
続いて、正極集電体上に正極活物質層を形成して正極を得る(S3)。正極の作製方法は特に限定されず、公知の方法を用いてもよい。さらに、電解液を作製する(S4)。
【0054】
この後、正極活物質層と負極活物質層とがセパレータを介して対向するように、正極、負極およびセパレータを積層し、極板群を得る(S5)。得られた極板群を電解液とともに容器に封入する(S6)。このようにして、電池が製造される。
【0055】
(実施例および比較例)
以下、本発明による実施例を説明する。本実施例では、真空プロセスを用いて電極1〜3を作製した。また、比較のため、本発明と異なる条件で比較例の電極A〜Dを作製した。さらに、実施例の電極1〜3および比較例の電極A〜Dを用いて、評価試験用のサンプルセルをそれぞれ作製し、その特性を評価した。
【0056】
(1)実施例の電極1〜3の作製
(1−1)ケイ素を主成分とする活物質膜の形成
本実施例では、集電体の表面に、真空蒸着法を用いてケイ素を主成分とする活物質膜を形成した。
【0057】
図5は、本実施例で使用した蒸着装置の模式的な断面図である。蒸着装置300は、チャンバー2と、チャンバーを排気する真空排気装置4とを備えている。チャンバー内には、巻き出しキャンローラ7aと、巻き取りキャンローラ7bと、キャン5と、蒸発源1と、チャンバー2内に酸素を導入するためのノズル3とが設けられている。蒸発源1は、蒸着材料を収容するための坩堝と、蒸着材料を加熱して蒸発させるための電子ビーム加熱手段とを有している。集電体6は、巻き出しキャンローラ7aからキャン5に沿って走行し、巻き取りキャンローラ7bによって巻き取られる。蒸発源1はキャン5の下方に配置されており、キャン5上を走行する集電体6の表面に蒸発させた蒸着粒子を供給する。
【0058】
まず、集電体6を巻き出しキャンローラ7aに装着した。本実施例では、集電体6として、幅が10cm、厚さが35μm、長さが50mのシート状の電解銅箔(古河サーキットフォイル(株)製)を用いた。また、蒸発源1の坩堝内に、純度99.9999%のケイ素単結晶(信越化学工業(株)製)を設置した。
【0059】
次いで、チャンバー2内の圧力が3×10-6torrになるまで真空引きを行ったあと、ノズル3から酸素ガスをチャンバー2内に導入し、チャンバー2内の真空度が2×10-4torrになるように制御した。ノズル3から供給する酸素ガスとして、純度が99.7%の酸素ガス(日本酸素(株)製)を用いた。
【0060】
この後、集電体6を、巻き出しキャンローラ7aから、キャン5を経由させ、巻き取りキャンローラ7bまで、毎分2cmの速度で走行させた。このとき、蒸着源1のケイ素単結晶に電子ビームを照射してケイ素を蒸発させ、キャン5上の集電体6の表面に入射させた。蒸着材料に照射する電子ビームの加速電圧を10kVとし、エミッションを500mAに設定した。ケイ素の蒸気は、上記のように制御された酸素雰囲気下で集電体6の表面に供給され、その結果、集電体6の表面にケイ素酸化物からなる蒸着膜(活物質膜)が形成された。蒸着レートは毎分2μmに設定した。このようにして、活物質膜が形成された集電体6’を得た。
【0061】
本実施例で形成された活物質膜の厚さは10μmであった。また、ICP発光分析により、活物質膜の組成を測定したところSiO0.5であった。
【0062】
この後、活物質膜が形成されたシート状の集電体6’を所定のサイズ(30mm×40mm)に切断し、7個のサンプル電極を得た。これらのうち4個を用いて、以下で説明する方法で実施例の電極1〜3を作製した。なお、残りの3個は比較例の負極A〜Dの作製に用いた。
【0063】
(1−2)活物質膜に対するリチウムの付与
次いで、上記(1−1)で得られたサンプル電極の活物質膜表面に、真空蒸着法によってリチウムを蒸着した。なお、本蒸着工程およびその後の工程は、特に明示されない場合は、露点−40℃のドライ雰囲気で実施した。
【0064】
図6は、本実施例でリチウムを蒸着するために使用した蒸着装置の模式的な断面図である。蒸着装置400は、チャンバー13と、チャンバー13を排気するための真空排気装置(ロータリーポンプ)11と、チャンバー13内を加熱するためのヒーター(図示せず)と、チャンバー13内に設けられ、活物質膜が形成された集電体(サンプル電極)10を設置するための固定台12とを備えている。また、固定台12の鉛直下方には、抵抗加熱ボート8と、加熱手段(図示せず)とを有する蒸発源が配置されている。ここでは、抵抗加熱ボート8としてはタンタル製のボートを用い、抵抗加熱ボート8内に蒸着材料として純度99.97%のリチウム(本荘ケミカル(株)製)9を収容した。
【0065】
蒸着装置400の固定台12にサンプル電極10を設置した後、チャンバー13内の圧力を2×10-4torrに調整した。
【0066】
続いて、リチウム9を加熱手段(図示せず)によって加熱して蒸発させ、サンプル電極10の活物質膜上に蒸着させた。リチウムの蒸着量は厚さ換算で12μmとした。このリチウムは全ていったん活物質膜に吸蔵された
【0067】
(1−3)二酸化炭素パージによる炭酸リチウムを含む被膜の形成
前記(1−2)工程によってリチウムを蒸着した後、蒸着装置400のチャンバー13を開放する際のパージガスとして、純度99.995%の高純度炭酸ガス(株式会社ダイオー製)を用いた。炭酸ガスをチャンバー13に流入させる速度は(流入速度)1リットル/分とし、チャンバー13内の圧力が大気圧に達した後も、同様の流量で一分間炭酸ガスのフローを実施した。これにより、活物質膜上のリチウムの一部と炭酸ガスとが反応し、活物質膜表面に炭酸リチウムを含む被膜が形成された。
【0068】
(1−4)二酸化炭素雰囲気における保持工程
上記(1−3)で被膜を形成したサンプル電極をチャンバー13より取り出し、加熱炉内に静置した状態で、まず、加熱炉の内部圧力をロータリーポンプで5×10-3torrまで減圧した。この後、純度99.995%の炭酸ガスを加熱炉に導入し、加熱炉内の圧力が1.0atmとなるように封入した。
【0069】
次に、加熱炉内の温度を10℃/分の昇温速度で所定の温度(保持温度)まで加熱し、その状態で所定の時間保持した。ここでは、表1に示すように、保持時間および温度の異なる3種類の電極1〜3を作製した。
【0070】
電極1を作製した後は、加熱炉のヒーターを停止した直後に加熱炉から電極1を取り出したが、電極2および3を作製した後は、ヒーターを停止し、加熱炉内の温度が100℃以下になるまで自然放冷を行ってから、電極2および3を取り出した。
【0071】
なお、ここでは、加熱炉を用いて保持工程を行っているが、サンプル電極をチャンバー13から取り出さずに、チンバー13内で本保持工程を行ってもよい。その場合には、全工程でチャンバー13内に導入されたパージガス(炭酸ガス)をそのまま雰囲気ガスとして利用できる。
【0072】
(2)比較例の電極A〜Dの作製
パージ工程および保持工程における条件を変えて、比較例の電極A〜Dを作製した。各電極の形成条件を表1に示す。
【0073】
電極Aの作製方法を具体的に説明する。まず、実施例と同様の方法で活物質膜にリチウムを付与した後、パージガスとして純度6Nのアルゴン(株式会社ダイオー製)をチャンバー内に流入させた。パージガスの流入速度およびパージガスをフローさせる時間は、上記実施例における炭酸ガスの流入速度およびフロー時間と同様とした。次いで、チャンバー内をドライ雰囲気に保ったままの状態で、パージ後のサンプル電極を25℃の温度で1時間保持した。チャンバー内の圧力は1.0atmとした。このようにして、電極Aを得た。
【0074】
電極Bの作製は、加熱炉内で保持温度を200℃とした点以外は、電極Aと同様の方法で行った。電極Cの作製は、パージガスとしてアルゴンガスを用いた点以外は、電極3と同様の方法で行った。さらに、電極Dの作製は、ドライ雰囲気下で保持工程を行った点以外は、電極1と同様の方法で行った。
【0075】
(3)正極の作製
平均粒径5μmのコバルト酸リチウム(LiCoO2)100重量部に、導電材としてアセチレンブラックを3重量部混合して、混合物を得た。得られた混合物に、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液をPVdF重量に換算して4重量部加え練合し、ペースト状正極合材を得た。この正極合材を、アルミニウム箔からなる集電体(厚さ:15μm)の両面に塗着し(厚さ:片面85μm)、乾燥後、圧延して、正極を得た。
【0076】
(4)サンプルセルの作製
上記(1)および(2)で作製した実施例の電極1〜3および比較例の電極A〜Dと、上記(3)で作製した正極とを用いて、それぞれ、積層型のサンプルセルを作製した。これらのサンプルセルの構成は、図3を参照しながら前述した構成と同様とした。再び図3を参照して、サンプルセルの作製方法を説明する。
【0077】
まず、上記(1)および(2)の方法で作製した保持工程後の各電極を、15mm×15mmのサイズに切り出し、その端部にニッケル製の負極用リード20をスポット溶接で接合してセル用負極27とした。
【0078】
次いで、上記で作製した正極を14.5mm×14.5mサイズ切り出し、さらに集電体端部にアルミニウム製の正極用リード19をスポット溶接にて接合して、セル用正極25とした。
【0079】
セル用正極25の両面にポリエチレン製の微多孔膜からなるセパレータ16(厚さ:16μm)を配置し、さらにその外側にセル用負極27を配置した。挟み込んだセル用正極25がずれないように、ポリプロピレン製の接着テープで固定し、スタックとした。そのスタックをアルミラミネート外装体(パウチ)21に収容し、電解液を1cm3加えて、熱シールにより封止した。電解液には、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DEC)を3:5:2の体積比で混合した混合溶媒に、電解質塩としてLiPF6(三菱化学製)を1M溶解させたものを用いた。アルミラミネート外装体21としては昭和電工パッケージング製(厚さ:95μm)を用いた。このようにして、サンプルセルを得た。
【0080】
(5)サンプルセルの評価
上記工程(4)によって得られたサンプルセルをドライ雰囲気から取り出し、それぞれに対して、以下の条件で充放電サイクル試験を行った。
【0081】
充電時:定電流定電圧充電、15mA、
終止電圧4.2Vカットオフ、終止電流0.75mAカットオフ
休止時間:10分間
放電時:定電流放電、3mA、終止電圧2.0Vカットオフ
休止時間:10分間
【0082】
上記条件の充放電を1サイクルとして、充放電サイクルを繰り返し、電池容量が初期容量の60%以下に劣化するまでのサイクル数を求めた。結果を表1に示す。なお、実施例および比較例のサンプルセルの初期の容量は何れも15mAh程度であった。
【0083】
【表1】

【0084】
表1から明らかなように、電池容量が60%に低下するまでのサイクル数を比較すると、エージング処理条件に関わらず、パージガスとしてアルゴンガスを用いて形成された電極A〜Cを有するサンプルセルよりも、パージガスとして炭酸ガスを用いて形成された電極1〜3および電極Dを有するサンプルセルの方が優れた充放電サイクル特性を示した。
【0085】
パージガスとして炭酸ガスを用いると充放電サイクル特性を改善できた理由は、次のように考えられる。ケイ素を含む活物質膜にリチウムを付与した後、リチウム付与によって生じた活物質の新生面は最初にパージガスに暴露される。パージガスとして炭酸ガスを用いると、活物質膜に付与されたリチウムが炭酸ガスと接触して炭酸リチウムを生成し、活物質膜表面に炭酸リチウムを含む被膜(表面改質層)が形成される。この結果、活物質膜の表面酸化が生じにくくなり、充放電サイクル特性の劣化を抑制できる。
【0086】
これに対し、電極Cのように、リチウムの付与によって生じた新生面が最初にアルゴンガスと接触すると、その後のエージング処理において炭酸ガスと接触させたとしても、エージング処理工程において、炭酸リチウムの被膜を形成する反応は生じにくい。これは、電極Cを用いたサンプルセルの特性が、ドライ雰囲気でエージング処理を行った電極Bを用いたサンプルセルの特性と略同等であることから明らかである。
【0087】
また、電極1〜3および電極Dを有するサンプルセルの特性を比較することにより、パージガスとして炭酸ガスを用いても、ドライ雰囲気中でエージング処理を行うと(電極D)、炭酸ガス雰囲気中でエージング処理を行った場合(電極1〜3)よりもサイクル特性が大幅に低下することがわかった。
【0088】
さらに、エージング処理における保持時間が同じ場合、高い保持温度(200℃)でエージング処理を行った電極3の方が、25℃でエージング処理を行った電極1よりも高い充放電サイクル特性を実現できることがわかった。一方、エージング処理における保持温度が同じ場合、1時間の保持を行った電極3の方が、5分間の保持を行った電極2よりも高い充放電サイクル特性を実現できることがわかった。また、特に保持温度を高めることにより、充放電サイクル特性を飛躍的に向上できることがわかった。
【0089】
これらの結果から、高い充放電サイクルを実現するためには、パージガスとして炭酸ガスを用いるだけでなく、炭酸ガス雰囲気中でエージング処理を行うことが重要であることが確認された。
【0090】
炭酸ガスによるパージ工程後に炭酸ガス雰囲気中でエージングを行うと、活物質膜表面の表面改質層の厚さが増大する。すなわち、活物質膜に対する表面改質層の形成が進行し、より均一で厚い表面改質層が確実に得られるからと考えられる。これにより、パージ工程のみでは十分に得られなかった表面改質効果を得ることができる。なお、エージング処理中に表面改質層の形成が進むことは、保持時間および保持温度によって表面改質による効果が変わることから明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、様々な形態のリチウム二次電池に適用することができる。本発明を適用可能なリチウム二次電池の形状は、特に限定されず、例えばコイン型、ボタン型、シート型、円筒型、偏平型、角型などの何れの形状でもよい。また、正極、負極およびセパレータからなる極板群の形態は、捲回型でも積層型でもよい。また、電池の大きさは、小型携帯機器などに用いる小型でも電気自動車等に用いる大型でもよい。本発明のリチウム二次電池は、例えば携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の電源に用いることができるが、用途は特に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】(a)〜(c)は、本発明による実施形態の負極の製造方法を説明するための模式的な工程断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、本発明による実施形態の負極の製造方法を説明するための模式的な工程断面図であり、活物質膜の一部を示す模式的な拡大図である。
【図3】本発明の実施形態のリチウムイオン二次電池の模式的な断面図である。
【図4】本発明による実施形態の電池を製造する方法のフローチャートである。
【図5】本発明の実施例において、活物質膜を形成するために使用した蒸着装置の模式的な断面図である。
【図6】本発明の実施例において、活物質膜にリチウムを付与するために使用した蒸着装置の模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0093】
1 蒸発源
2 チャンバー(真空槽)
3 ガス導入ノズル
4 真空排気装置
5 キャン
6、6’ 集電体
7a 巻き出しキャンローラ
7b 巻き取りキャンローラ
8 抵抗加熱ボート
9 蒸着材料(リチウム)
10 活物質膜が形成された集電体
11 真空排気装置(ロータリーポンプ)
12 固定台(支持板)
13 チャンバー(真空槽)
51 集電体
53 活物質膜
53a リチウムが付与された活物質膜
55 リチウム
55a 炭酸リチウムを含む被膜
57 活物質体
60 活物質層
14 正極集電体
15 正極活物質層
16 セパレータ
17 負極集電体
18 負極活物質層
19 正極用リード
20 負極用リード
21 アルミラミネート
25 正極
27 負極
100 負極
200 電池
300、400 蒸着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体上にケイ素を含む活物質膜を形成する工程(A)と、
チャンバー内において、減圧状態で前記活物質膜にリチウムを付与する工程(B)と、
前記工程(B)の後、前記減圧状態のチャンバーに炭酸ガスを供給して、前記チャンバー内の圧力を上げる工程(C)と、
前記工程(C)の後、炭酸ガスを含む雰囲気中で、前記活物質膜が形成された集電体を所定の温度で保持する工程(D)と
を包含するリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項2】
前記工程(D)において、前記活物質膜が形成された集電体を保持する時間は5分以上24時間以内である請求項1に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項3】
前記工程(D)において、前記所定の温度は25℃以上200℃以下である請求項1に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項4】
前記工程(C)は、前記減圧状態のチャンバーに、実質的に炭酸ガスのみを供給して、前記チャンバー内の圧力を上げる工程である請求項1に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項5】
前記工程(D)において、前記雰囲気に含まれる炭酸ガス濃度は20%よりも高い請求項1に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項6】
前記活物質膜はSiOx(0.2≦x≦1.5)で表される組成を有する請求項1に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項7】
前記工程(B)は、真空蒸着法を用いて前記活物質膜の上にリチウムを堆積させる工程である請求項1に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項8】
前記リチウムが付与された後、(Li/Li+)に対する電位が0.3V以上0.7V以下である請求項1に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項9】
リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極と、
請求項1から8のいずれかの方法で製造されたリチウム二次電池用負極と、
前記正極と前記リチウム二次電池用負極との間に配置されたセパレータと、
リチウムイオン伝導性を有する電解質と
を含むリチウムイオン二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−73402(P2010−73402A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237760(P2008−237760)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】