説明

リチウム電池制御装置

【課題】本発明は、内部温度及び端子電圧に基づいて、リチウム電池の充放電を制御し、リチウム電池のセルの膨張を防止することを目的とする。
【解決手段】本発明は、外部電源2から充電され電子機器3を駆動するリチウム電池1と、内部温度が内部温度閾値以上でありかつ端子電圧が端子電圧閾値以上であるときに、外部電源2にリチウム電池1の充電を停止させるとともに、リチウム電池1に電子機器3の駆動を実行させ、内部温度が内部温度閾値未満であるとき、または、端子電圧が端子電圧閾値未満であるときに、外部電源2にリチウム電池1の充電を実行させるとともに、リチウム電池1に電子機器3の駆動を停止させる制御回路4と、を備えることを特徴とするリチウム電池制御装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池のセルの膨張を防止するリチウム電池制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池は、エネルギー密度が高いため、電源として広く使われている。しかし、リチウム電池は、高温で放置されるときに、膨張や破裂や漏液を起こすことがある。ここで、特許文献1では、内部温度及び内部圧力に基づいて、リチウム電池の充放電を制御している。つまり、内部温度及び内部圧力が所定値以上であるときに、充放電経路を遮断することにより、膨張や破裂や漏液を防いでいる。また、特許文献2では、充電時、充放電の繰り返し時又は高温での放置時でも、外装缶が脹れないような構造をとっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−244844号公報
【特許文献2】特許第4484497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、内部温度及び内部圧力に基づいて、リチウム電池の充放電を制御しており、また、特許文献2では、外装缶が脹れないような構造をとっており、いずれの特許文献でも、リチウム電池の端子電圧を判断していなかった。
【0005】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、内部温度及び端子電圧に基づいて、リチウム電池の充放電を制御し、リチウム電池のセルの膨張を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、内部温度が内部温度閾値以上でありかつ端子電圧が端子電圧閾値以上であるときに、充電を停止させ放電を実行させることとした。そして、内部温度が内部温度閾値未満であるとき、または、端子電圧が端子電圧閾値未満であるときに、充電を実行させ放電を停止させることとした。ここで、充電は外部電源から行ない、放電は電子機器へと行なうこととした。
【0007】
具体的には、本発明は、外部電源から充電され電子機器を駆動し、内部温度の増加につれて内部温度閾値においてセルが急激に膨張し始め、端子電圧の増加につれて端子電圧閾値において前記セルが急激に膨張し始めるリチウム電池と、前記リチウム電池の内部温度が前記内部温度閾値以上でありかつ前記リチウム電池の端子電圧が前記端子電圧閾値以上であるときに、前記外部電源に前記リチウム電池の充電を停止させるとともに、前記リチウム電池に前記電子機器の駆動を実行させ、前記リチウム電池の内部温度が前記内部温度閾値未満であるとき、または、前記リチウム電池の端子電圧が前記端子電圧閾値未満であるときに、前記外部電源に前記リチウム電池の充電を実行させるとともに、前記リチウム電池に前記電子機器の駆動を停止させる制御回路と、を備えることを特徴とするリチウム電池制御装置である。
【0008】
この構成によれば、リチウム電池が膨張する可能性が高いことを適切に判断して、リチウム電池を適切に放電させることができる。そして、リチウム電池が膨張する可能性が低いことを適切に判断して、リチウム電池を適切に充電させることができる。
【0009】
また、本発明は、前記内部温度閾値は40℃であり、前記端子電圧閾値は3.8Vであることを特徴とする、リチウム電池制御装置である。
【0010】
発明者は、内部温度が40℃以上でありかつ端子電圧が3.8V以上であるときには、リチウム電池が膨張する可能性が高く、内部温度が40℃未満であるとき、または、端子電圧が3.8V未満であるときには、リチウム電池が膨張する可能性が低いことを発見した。この構成によれば、上記発見に基づいて、リチウム電池が膨張する可能性が高いことを適切に判断して、リチウム電池を適切に放電させることができる。そして、上記発見に基づいて、リチウム電池が膨張する可能性が低いことを適切に判断して、リチウム電池を適切に充電させることができる。
【0011】
また、本発明は、前記制御回路は、前記リチウム電池に前記電子機器の駆動を実行させているときに、前記電子機器の省電力モードを許容せず、前記リチウム電池に前記電子機器の駆動を停止させているときに、前記電子機器の省電力モードを許容することを特徴とする、リチウム電池制御装置である。
【0012】
この構成によれば、リチウム電池の放電が行なわれており、リチウム電池の放電及び電子機器の省電力が競合するときに、リチウム電池の放電を優先することができる。そして、リチウム電池の放電が行なわれておらず、リチウム電池の放電及び電子機器の省電力が競合しないときに、電子機器の省電力を実行することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、内部温度及び端子電圧に基づいて、リチウム電池の充放電を制御し、リチウム電池のセルの膨張を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のリチウム電池制御装置の構成要素を示す図である。
【図2】本発明のリチウム電池制御装置の定期チェック処理を示す図である。
【図3】本発明のリチウム電池制御装置の省電力移行時処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0016】
本発明のリチウム電池制御装置の構成要素を図1に示す。リチウム電池制御装置は、リチウム電池1、制御回路4及びスイッチ5、6から構成され、外部電源2及び電子機器3に接続される。電子機器3として、車載用通信端末などをあげることができ、外部電源2として、車載用バッテリ又は車載用太陽電池などをあげることができ、車載用バッテリ及び車載用太陽電池を切り換えて使用することができる。発明者は、内部温度の増加につれてセルが急激に膨張し始める内部温度閾値が40℃であり、端子電圧の増加につれてセルが急激に膨張し始める端子電圧閾値が3.8Vであることを発見した。
【0017】
リチウム電池1は、外部電源2から充電され、電子機器3を駆動する。リチウム電池1において、内部温度が40℃以上でありかつ端子電圧が3.8V以上であるときに、制御回路4は、外部電源2にリチウム電池1の充電を停止させるとともに、リチウム電池1に電子機器3の駆動を実行させる。リチウム電池1において、内部温度が40℃未満であるとき、または、端子電圧が3.8V未満であるときに、制御回路4は、外部電源2にリチウム電池1の充電を実行させるとともに、リチウム電池1に電子機器3の駆動を停止させる。制御回路4は、リチウム電池1から内部温度及び端子電圧の情報を入力し、スイッチ5、6に制御信号を出力し、前述の処理を実行する。
【0018】
電子機器3は、動作モード及び省電力モードの間を移行する。制御回路4は、リチウム電池1に電子機器3の駆動を実行させているときに、電子機器3の動作モードから省電力モードへの移行を許容しない。制御回路4は、リチウム電池1に電子機器3の駆動を停止させているときに、電子機器3の動作モードから省電力モードへの移行を許容する。
【0019】
本発明のリチウム電池制御装置の定期チェック処理を図2に示す。制御回路4は、リチウム電池1から内部温度及び端子電圧の情報を入力する。
【0020】
リチウム電池1において、内部温度が40℃以上でありかつ端子電圧が3.8V以上であるとき(ステップS1においてYESかつステップS2においてYES)について説明する。発明者は、このときに、リチウム電池1が膨張する可能性が高いことを発見した。
【0021】
制御回路4は、外部電源2にリチウム電池1の充電を停止させるとともに、リチウム電池1に電子機器3の駆動を実行させる(ステップS3及びステップS4)。具体的には、制御回路4は、外部電源2に接続されたスイッチ5をオフにする制御信号をスイッチ5に出力し、電子機器3に接続されたスイッチ6をオンにする制御信号をスイッチ6に出力する。よって、リチウム電池制御回路は、リチウム電池1が膨張する可能性が高いことを適切に判断して、リチウム電池1を適切に放電させることができる。
【0022】
リチウム電池1において、内部温度が40℃未満であるとき(ステップS1においてNO)、または、内部温度が40℃以上でありかつ端子電圧が3.8V未満であるとき(ステップS1においてYESかつステップS2においてNO)について説明する。発明者は、このときに、リチウム電池1が膨張する可能性が低いことを発見した。
【0023】
制御回路4は、外部電源2にリチウム電池1の充電を実行させるとともに、リチウム電池1に電子機器3の駆動を停止させる(ステップS5及びステップS6)。具体的には、制御回路4は、外部電源2に接続されたスイッチ5をオンにする制御信号をスイッチ5に出力し、電子機器3に接続されたスイッチ6をオンにする制御信号をスイッチ6に出力し、外部電源2に電子機器3の駆動を実行させる。あるいは、制御回路4は、外部電源2に接続されたスイッチ5をオンにする制御信号をスイッチ5に出力し、電子機器3に接続されたスイッチ6をオフにする制御信号をスイッチ6に出力し、外部電源2に電子機器3の駆動を停止させる。よって、リチウム電池制御装置は、リチウム電池1が膨張する可能性が低いことを適切に判断して、リチウム電池1を適切に充電させることができる。
【0024】
本発明のリチウム電池制御装置の省電力移行時処理を図3に示す。制御回路4は、動作モードから省電力モードに切り換えようとする旨の情報を電子機器3から入力し、リチウム電池1に電子機器3の駆動を実行させているか(ステップS4)、リチウム電池1に電子機器3の駆動を停止させているか(ステップS6)、を判断する(ステップS11)。
【0025】
制御回路4は、リチウム電池1に電子機器3の駆動を実行させているときに(ステップS11において実行中)、電子機器3の動作モードから省電力モードへの移行を許容しない(ステップS12)。よって、リチウム電池1の放電が行なわれており、リチウム電池1の放電及び電子機器3の省電力が競合するときに、リチウム電池1の放電を優先することができる。
【0026】
制御回路4は、リチウム電池1に電子機器3の駆動を停止させているときに(ステップS11において停止中)、電子機器3の動作モードから省電力モードへの移行を許容する(ステップS13)。よって、リチウム電池1の放電が行なわれておらず、リチウム電池1の放電及び電子機器3の省電力が競合しないときに、電子機器3の省電力を実行することができる。
【0027】
リチウム電池1において、内部温度が40℃以上であるか40℃未満であるかを、以下のように判断してもよい。つまり、内部温度の上昇時には、内部温度が40℃以上になったときに、40℃未満ステータスから40℃以上ステータスに移行させる。そして、内部温度の下降時には、内部温度が40℃よりやや低い温度(例えば37℃)未満になったときに、40℃以上ステータスから40℃未満ステータスに移行させる。よって、内部温度が十分に下降した後に充電を開始させて、安全性を高められる。
【0028】
リチウム電池1において、端子電圧が3.8V以上であるか3.8V未満であるかを、以下のように判断してもよい。つまり、端子電圧の上昇時には、端子電圧が3.8V以上になったときに、3.8V未満ステータスから3.8V以上ステータスに移行させる。そして、端子電圧の下降時には、端子電圧が3.8Vよりやや低い電圧(例えば3.75V)未満になったときに、3.8V以上ステータスから3.8V未満ステータスに移行させる。よって、端子電圧が十分に下降した後に充電を開始させて、安全性を高められる。
【0029】
電子機器3が省電力モードに移行しているときに、リチウム電池1において、内部温度が40℃以上になりかつ端子電圧が3.8V以上になることがありうる。このとき、電子機器3が省電力モードから動作モードに切り換えるときに、制御回路4が内部温度及び端子電圧をすぐに確認して、充電を停止し放電を開始すればよい。
【0030】
本発明のリチウム電池制御装置が適用されるより前に、従来技術の充電IC(例えば、内部温度が43℃以上になれば充電を行なわず、充電中でも内部温度が50℃以上になれば充電を止める)が適用されていることがありうる。つまり、本発明のリチウム電池制御装置の処理及び従来技術の充電ICの処理が相違することがありうる。このとき、本発明のリチウム電池制御装置の処理を、従来技術の充電ICの処理より優先すればよい。
【0031】
なお、以上に説明した実施形態では、内部温度の判断閾値を40℃としているが、充電回路、特に充電制御ICやサーミスタの仕様によってはこの限りではない。また、以上に説明した実施形態では、端子電圧の判断閾値を3.8Vとしているが、これは公称電圧を3.7Vとしているためであり、公称電圧によってはこの限りではない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係るリチウム電池制御装置は、リチウム電池を駆動電源とする、車載用通信端末などの様々な電子機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1:リチウム電池
2:外部電源
3:電子機器
4:制御回路
5、6:スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源から充電され電子機器を駆動し、内部温度の増加につれて内部温度閾値においてセルが急激に膨張し始め、端子電圧の増加につれて端子電圧閾値において前記セルが急激に膨張し始めるリチウム電池と、
前記リチウム電池の内部温度が前記内部温度閾値以上でありかつ前記リチウム電池の端子電圧が前記端子電圧閾値以上であるときに、前記外部電源に前記リチウム電池の充電を停止させるとともに、前記リチウム電池に前記電子機器の駆動を実行させ、前記リチウム電池の内部温度が前記内部温度閾値未満であるとき、または、前記リチウム電池の端子電圧が前記端子電圧閾値未満であるときに、前記外部電源に前記リチウム電池の充電を実行させるとともに、前記リチウム電池に前記電子機器の駆動を停止させる制御回路と、
を備えることを特徴とするリチウム電池制御装置。
【請求項2】
前記内部温度閾値は40℃であり、前記端子電圧閾値は3.8Vであることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム電池制御装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記リチウム電池に前記電子機器の駆動を実行させているときに、前記電子機器の省電力モードを許容せず、前記リチウム電池に前記電子機器の駆動を停止させているときに、前記電子機器の省電力モードを許容することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のリチウム電池制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−205383(P2012−205383A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67299(P2011−67299)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】