説明

リチウム2次電池用難燃性電解液及びこれを含むリチウム2次電池

【課題】 熱安定性及び難燃性に優れており、高率及びサイクル寿命特性が向上したリチウム2次電池用難燃性電解液を提供する。また、前記リチウム2次電池用難燃性電解液を含むリチウム2次電池を提供する。さらにまた、前記リチウム2次電池用難燃性電解液を含むリチウム2次電池の製造方法を提供すること。
【解決手段】 リチウム塩、線状カーボネート系溶媒、アンモニウム陽イオン、燐酸系溶媒、及びオキサラトボレート系添加剤を含むリチウム2次電池用難燃性電解液及びこれを含むリチウム2次電池が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム2次電池用難燃性電解液及びこれを含むリチウム2次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の携帯用小型電子機器の電源として脚光を浴びているリチウム2次電池は、有機電解液を使用して、従来のアルカリ水溶液を用いた電池より2倍以上の高い放電電圧を示すことにより、高いエネルギー密度を示す電池である。
【0003】
リチウム2次電池の正極活物質には、LiCoO、LiMn、LiNi1−xCo(0<x<1)などのようにリチウムが挿入が可能な構造を有するリチウムと、遷移金属からなる酸化物が主に使用される。
【0004】
負極活物質には、リチウムの挿入/脱離が可能な人造/天然黒鉛、ハードカーボンを含む多様な形態の炭素系材料が適用されてきた。
【0005】
また、電解液には、リチウム塩が溶解されたカーボネート系溶媒が幅広く使用されてきており、最近は、電解液の難燃性を増加させるために、環状カーボネート及び線状カーボネートの混合溶媒に燐酸系難燃剤を添加剤水準に導入して使用してきた(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−190316号公報
【特許文献2】特開2008−034256号公報
【特許文献3】特開2008−108460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記燐酸系難燃剤は、負極と電解液の反応の際に深刻な還元分解を起こして負極の可溶容量を減少させ、また、電池抵抗を増加させて、リチウムイオンの円滑な挿入反応を阻害するという問題があった。
【0008】
また、前記燐酸系難燃剤を、添加剤水準でない溶媒形態に多量を導入すると、電池のサイクル寿命特性を急激に低下させるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、本発明は、熱安定性及び難燃性に優れており、高率及びサイクル寿命特性が向上したリチウム2次電池用難燃性電解液を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的とするところは、前記リチウム2次電池用難燃性電解液を含むリチウム2次電池を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的とするところは、前記リチウム2次電池用難燃性電解液を含むリチウム2次電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、リチウム塩、線状カーボネート系溶媒、アンモニウム陽イオン、燐酸系溶媒、及びオキサラトボレート系添加剤を含むリチウム2次電池用難燃性電解液が提供される。
【0013】
前記線状カーボネート系溶媒は、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)またはこれらの組み合わせであることが好ましい。
【0014】
ピリジニウム(pyridinium)、ピリダジニウム(pyridazinium)、ピリミジニウム(pyrimidinium)、ピラジニウム(pyrazinium)、イミダゾリウム(imidazolium)、ピラゾリウム(pyrazolium)、チアゾリウム(thiazolium)、オキサゾリウム(oxazolium)、トリアゾリウム(triazolium)またはこれらの組み合わせのN−含有ヘテロ環陽イオンであることができ、具体的には、下記の化学式1ないし3で示される陽イオンの中よりいずれか一つであることが好ましい。
【0015】
【化1】

・・・(化学式1)
【0016】
(前記化学式1で、R及びRは、各々、独立的に、置換あるいは非置換されたアルキル基、または置換あるいは非置換されたアルコキシ基であり、Rは、水素、または置換あるいは非置換されたアルキル基であり、nは1ないし5の整数であり、nが2以上である場合、各々のRは互いに同一であるかまたは異なり、
mは0または1である。)
【0017】
【化2】

・・・(化学式2)
【0018】
(前記化学式2で、R及びRは、各々、独立的に、置換あるいは非置換されたアルキル基、または置換あるいは非置換されたアルコキシ基であり、Rは、水素、または置換あるいは非置換されたアルキル基であり、nは1ないし3の整数であり、nが2以上である場合、各々のRは互いに同一であるかまたは異なる。)
【0019】
【化3】

・・・(化学式3)
【0020】
(前記化学式3で、R、R、R、及びR10は、各々、独立的に、置換あるいは非置換されたアルキル基、または置換あるいは非置換されたアルコキシ基である。)
前記リチウム2次電池用電解液は、陰イオンをさらに含むことができ、前記アンモニウム陽イオンと前記陰イオンを含むイオン性液体は、前記リチウム2次電池用難燃性電解液総量に対して20ないし70質量%で含まれることができ、前記陰イオンは、N(SOCH、N(SOCFCF、PF、BF、下記の化学式4または下記の化学式5で示される陰イオンであることが好ましい。
【0021】
【化4】

・・・(化学式4)
【0022】
【化5】

・・・(化学式5)
【0023】
前記オキサラトボレート系添加剤は下記の化学式6で示され、具体的には、リチウムジフルオロオキサラトボレートであることができ、また、リチウムビスオキサラトボレートであってもよい。また、前記オキサラトボレート系添加剤は、前記リチウム2次電池用難燃性電解液総量に対して0.1ないし5質量%で含まれていてもよい。
【0024】
【化6】

・・・(化学式6)
【0025】
(前記化学式6で、R11及びR12は、各々、独立的に、ハロゲン元素またはハロゲン化されたC1ないしC10のアルキル基である。)
【0026】
前記燐酸系溶媒は、ホスファート(phosphate)化合物、ホスホネート(phosphonate)化合物、ホスファゼン(phosphazene)化合物またはこれらの組み合わせであることが好ましい。
【0027】
前記リチウム2次電池用電解液は、フッ素に置換されたカーボネート系溶媒をさらに含んでいてもよく、前記フッ素に置換されたカーボネート系溶媒は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、フルオロジメチルカーボネート(FDMC)、フルオロエチルメチルカーボネート(FEMC)またはこれらの組み合わせであることが好ましい。また、前記フッ素に置換されたカーボネート系溶媒は、前記リチウム2次電池用難燃性電解液100質量部に対して5ないし80質量部で含まれる。
【0028】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、正極、負極、セパレータ、リチウム塩、線状カーボネート系溶媒、アンモニウム陽イオン、及び燐酸系溶媒を含む電解液、及びオキサラトボレート系添加剤またはオキサラトボレート系ポリマーを含むリチウム2次電池が提供される。
【0029】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、正極、負極及びセパレータを含む電極群を用意する段階、前記電極群をリチウム塩、線状カーボネート系溶媒、アンモニウム陽イオン、燐酸系溶媒、及びオキサラトボレート系添加剤を含む電解液に含浸させる段階、及び前記電解液での前記オキサラトボレート系添加剤を分解し、前記負極の上に被膜を形成するために、電池を充電する段階を含むリチウム2次電池の製造方法が提供される。
【0030】
その他、本発明の側面の具体的な事項は、以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように本発明によれば、高温での電池構成成分の熱分解特性が最小化または除去されることによって、熱安定性及び難燃性に優れ、高率及び寿命特性が向上した優れた電気化学的特性を有することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】リチウム2次電池の代表的な構造を示す概略図である。
【図2】実施例1及び比較例1ないし3による満充電負極のDSC(Differential Scanning Calorimetry)グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0034】
以下、本発明の実施態様を詳しく説明する。ただし、これは例示として提示されるものであって、これによって本発明が制限されるわけではなく、後述の特許請求の範囲の範疇によってのみ定義される。
【0035】
本明細書で別途の定義がない限り、“アルキル基”及び“アルコキシ基”は、各々、“C1ないしC30のアルキル基”及び“C1ないしC30のアルコキシ基”を意味する。
【0036】
また、本明細書で別途の定義がない限り、“置換”は、C1ないしC30のアルコキシ基またはカルボキシル基に置換されたものを意味する。
【0037】
一実施態様によるリチウム2次電池用難燃性電解液は、リチウム塩、線状カーボネート系溶媒、アンモニウム陽イオン、燐酸系溶媒、及びオキサラトボレート系添加剤を含む。
【0038】
前記リチウム塩は、有機溶媒に溶解されて、電池内でリチウムイオンの供給源として作用することによって基本的なリチウム2次電池の作動を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。
【0039】
前記リチウム塩は、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiCFSO、LiN(SO、Li(CFSON、LiCSO、LiB(C、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、x及びyは自然数である)、LiCl、LiIまたはこれらの組み合わせのものを使用することができる。
【0040】
前記リチウム塩は、0.1ないし2.0Mの範囲で使用することができる。リチウム塩が前記範囲で用いられる場合、電解液の粘度を最適化することができるので、リチウムイオンの移動性を向上させ、電解液の性能を最適化するという長所がある。
【0041】
前記リチウム塩は、前記リチウム2次電池用難燃性電解液総量に対して2ないし30質量%で含まれることができ、具体的には、5ないし20質量%で含まれる。リチウム塩が前記範囲内で含まれる場合、難燃性電解液の最適イオンの伝導度を現わすことができる。
【0042】
リチウム2次電池用電解液として、主に線状及び環状カーボネート系溶媒を混合して使用しているが、一実施態様によれば、線状カーボネート系溶媒だけを用いることができる。
【0043】
つまり、リチウム塩の解離度(dissociation degree)及び解離したリチウムイオンの移動度(mobility)を確保するために、エチレンカーボネートなどの環状カーボネート系溶媒を線状カーボネート系溶媒と共に使用してきているが、これは、高温でガスが発生し、被膜を構成している各種のリチウム塩の溶解が可能になるという問題点がある。しかし、一実施態様による電解液による場合、このような環状カーボネート系溶媒は必要でなくなり、これにより、高温でのガスの発生や被膜構造が崩壊される問題が解消されるので、電池の高率特性及び常温での寿命特性が確保される。
【0044】
一実施態様で使用される線状カーボネート系溶媒は、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)などを用いることができ、これらを混合して使用することもできる。
【0045】
前記線状カーボネート系溶媒は、粘度が0.4ないし1cP(mPa.s)の範囲を有することができる。線状カーボネート系溶媒の粘度が前記範囲である場合、電池の高率特性及び寿命特性が改善される。
【0046】
前記線状カーボネート系溶媒は、前記リチウム2次電池用難燃性電解液総量に対して1ないし90質量%で含まれ、具体的には、30ないし80質量%で含まれるが、より具体的には、40ないし60質量%で含まれる。線状カーボネート系溶媒が前記範囲内で含まれる場合、難燃性電解液の粘度増加を最小化すると共に、難燃性も付与することができる。
【0047】
前記アンモニウム陽イオンは、ピリジニウム(pyridinium)、ピリダジニウム(pyridazinium)、ピリミジニウム(pyrimidinium)、ピラジニウム(pyrazinium)、イミダゾリウム(imidazolium)、ピラゾリウム(pyrazolium)、チアゾリウム(thiazolium)、オキサゾリウム(oxazolium)、トリアゾリウム(triazolium)またはこれらの組み合わせのN−含有ヘテロ環陽イオンであることができる。
【0048】
前記アンモニウム陽イオンは、具体的に、下記の化学式1ないし3で示される陽イオンの中よりいずれか一つである。
【0049】
【化7】

・・・(化学式1)
【0050】
(前記化学式1で、R及びRは、各々、独立的に、置換あるいは非置換されたアルキル基、または置換あるいは非置換されたアルコキシ基であり、Rは、水素、または置換あるいは非置換されたアルキル基であり、nは1ないし5の整数であり、nが2以上である場合、各々のRは互いに同一であるかまたは異なり、
mは0または1である。)
【0051】
【化8】

・・・(化学式2)
【0052】
(前記化学式2で、R及びRは、各々、独立的に、置換あるいは非置換されたアルキル基、または置換あるいは非置換されたアルコキシ基であり、
は、水素、または置換あるいは非置換されたアルキル基であり、nは1ないし3の整数であり、nが2以上である場合、各々のRは互いに同一であるかまたは異なる。)
【0053】
【化9】

・・・(化学式3)
【0054】
(前記化学式3で、R、R、R、及びR10は、各々、独立的に、置換あるいは非置換されたアルキル基、または置換あるいは非置換されたアルコキシ基であり、
この時、前記化学式1ないし3で、“置換”とは、C1ないしC30のアルコキシ基またはカルボキシル基に置換されたものを意味する。)
【0055】
一実施態様によれば、前記アンモニウム陽イオンは、陰イオンと共にイオン性液体に提供されることができる。つまり、前記イオン性液体は、アンモニウム陽イオンと陰イオンからなる塩形態の化合物である。この時、“イオン性液体”とは、イオンだけで構成された液体として、100℃以下の温度で液体状態に存在するものを意味する。特に、常温で液体である場合を常温溶融炎(常温イオン性液体)という。
【0056】
前記陰イオンは、N(SOCH、N(SOCFCF、PF、BF、下記の化学式4または下記の化学式5で示される陰イオンであることができる。
【化10】

・・・(化学式4)
【0057】
【化11】

・・・(化学式5)
【0058】
前記アンモニウム陽イオン及び陰イオンを含むイオン性液体は、揮発性が低いので、溶媒の揮発によって形成された気体による電池内部の圧力が上昇することを防いだり、膨張(swelling)現象を抑制することができる。
【0059】
前記アンモニウム陽イオン及び陰イオンを含むイオン性液体は、前記リチウム2次電池用難燃性電解液総量に対して1ないし90質量%で含まれ、具体的には、20ないし70質量%で含まれる。イオン性液体が前記範囲内で含まれる場合、電解液の難燃性を極大化することができる。
【0060】
前記燐酸系溶媒は、ホスファート(phosphate)化合物、ホスホネート(phosphonate)化合物、ホスファゼン(phosphazene)化合物またはこれらの組み合わせのものを使用することができる。
【0061】
前記ホスファート化合物には、トリメチルホスファート(trimethyl phosphate、TMP)、トリエチルホスファート(triethyl phosphate、TEP)、トリプロピルホスファート(tripropyl phosphate、TPP)、トリフェニルホスファート(triphenyl phosphate、TPP)、トリクレシルホスファート(tricresyl phosphate、TCP)、トリキシレンホスファート(trixylenyl phosphate、TXP)などが挙げられる。
【0062】
前記ホスホネート化合物には、ジメチルメチルホスホネート(dimethyl methylphosphonate、DMMP)、ジエチルメチルホスホネート(diethyl methylphosphonate、DEMP)などのアルキルホスホネート化合物が挙げられる。
【0063】
前記ホスファゼン化合物には、ヘキサメトキシシクロトリホスファゼン、フッ素化シクロトリホスファゼンなどが挙げられる。
【0064】
このようなホスファート化合物、ホスホネート化合物、及びホスファゼン化合物に存在する水素原子は、ハロゲンに置換された構造であっても全て可能である。
【0065】
前記燐酸系溶媒は、R・、H・ などのような活性ラジカルと選択的に反応することによって、電解液の燃焼反応を停止させることができる。これにより、電池内部の熱の発生による電解液の燃焼分解反応を抑制するのが可能である。
【0066】
前記燐酸系溶媒は、誘電率が3ないし20であるのが好ましい。燐酸系溶媒の誘電率が前記範囲内にある場合、リチウムイオンと非共有電子対を有する酸素原子がイオン−双極子相互作用(ion−dipole interaction)をするのができるので、リチウム塩の解離が可能である。
【0067】
前記燐酸系溶媒は、前記リチウム2次電池用難燃性電解液総量に対して1ないし90質量%で含まれることができ、具体的には、5ないし30質量%で含まれる。燐酸系溶媒が前記範囲内で含まれる場合、電解液が難燃性または自己消火性(self−extinguishing)を有することができる。
【0068】
前記オキサラトボレート系添加剤は、下記の化学式6で示されたものである。
【0069】
【化12】

・・・(化学式6)
【0070】
(前記化学式6で、R11及びR12は、各々、独立的に、ハロゲン元素、またはハロゲン化されたC1ないしC10のアルキル基である。)
【0071】
前記ハロゲン化されたC1ないしC10のアルキル基は、具体的に、CF、CFCF、CHCF、CFHCHFなどが挙げられる。
【0072】
前記オキサラトボレート系添加剤の具体的な例としては、LiB(C)F(リチウムジフルオロオキサラトボレート、LiFOB)などが挙げられる。
【0073】
また、前記オキサラトボレート系添加剤は、LiB(C(リチウムビスオキサラトボレート(LiBOB)であるのが好ましい。
【0074】
前記オキサラトボレート系添加剤は、初期充電時に約0.7V(vs.Li/Li)以上の領域で還元分解し、約5V(vs.Li/Li)以上の領域で酸化分解する。これにより、イオン性液体の電気化学的還元分解を除去して、負極上の被膜を安定的に形成することができ、これで満充電負極と電解液の間の熱分解を最小化して、電池の熱安定性及び難燃性を極大化させることができる。
【0075】
前記負極上の被膜はオキサラトボレート系ポリマーからなることができ、これはオキサラトボレート系添加剤から誘導されて、形成される。前記オキサラトボレート系ポリマーからなる被膜は、充電の際、オキサラトボレート系添加剤が分解される時に形成される。具体的な例として、前記オキサラトボレート系添加剤がリチウムビスオキサラトボレートである場合、負極上の被膜は、下記の化学式6Aで示されるオキサラトボレート系ポリマーからなることができる。
【0076】
【化13】

・・・(化学式6A)
【0077】
前記オキサラトボレート系添加剤は、前記リチウム2次電池用難燃性電解液総量に対して0.1ないし5質量%で含まれることができ、具体的には、0.5ないし2質量%で含まれる。オキサラトボレート系添加剤が前記範囲内で含まれる場合、電池の優れた熱安定性及び難燃性を確保することができる。
【0078】
一方、前記オキサラトボレート系添加剤が分解されて負極の上に被膜を形成する間、オキサラトボレート系添加剤の一部が難燃性電解液組成物に残る可能性がある。例えば、オキサラトボレート系添加剤が難燃性電解液組成物に2質量%以上含まれる場合、前記オキサラトボレート系添加剤は、充電時に負極上の被膜を形成した後、難燃性電解液組成物に一部が残ることがある。反面、前記オキサラトボレート系添加剤が2質量%未満で含まれる場合、難燃性電解液組成物には残らない。
【0079】
一実施態様によるリチウム2次電池用難燃性電解液は、フッ素に置換されたカーボネート系溶媒をさらに含むことができる。
【0080】
前記フッ素に置換されたカーボネート系溶媒は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、フルオロジメチルカーボネート(FDMC)、及びフルオロエチルメチルカーボネート(FEMC)からなる群より選択されるものを使用することができる。
【0081】
前記フッ素に置換されたカーボネート系溶媒は、HOMO(highest occupied molecular orbital)エネルギーが−12eV以上であり、LUMO(lowest unoccupied molecular orbital)エネルギーが−0.5ないし−1eVであるのが好ましい。
【0082】
また、初期充電時に約0.7V(vs.Li/Li)以上の領域で還元分解し、約5V(vs.Li/Li)以上の領域で酸化分解する。
【0083】
前記フッ素に置換されたカーボネート系溶媒は、電解液に添加されても粘度上昇を招かずに望ましい構造(LiFを多量含む)の被膜を形成して、充電された電極活物質と電解液の間の発熱反応を効果的に除去することができる。
【0084】
また、前記フッ素に置換されたカーボネート系溶媒は、燐酸系溶媒とアンモニウム陽イオンを含むイオン性液体の電気化学的安定性を確保することができる。つまり、燐酸系溶媒とアンモニウム陽イオンを含むイオン性液体が負極と有機電解液の界面で還元分解する前に、低いLUMOエネルギーを有するフッ素に置換されたカーボネート系溶媒が先に分解されることによって、負極上の被膜を安定的に形成することができ、これにより、電池の可逆効率、容量利用率、及び長い寿命特性を極大化させるようになる。
【0085】
また、前記フッ素に置換されたカーボネート系溶媒は、耐酸化性に優れており、負極の表面に安定した固体電解液界面(Solid Electrolyte Interface、SEI)被膜を形成するので、本発明の一実施態様によれば、非フッ素化環状カーボネート系溶媒を用いる必要がない。
【0086】
前記フッ素に置換されたカーボネート系溶媒は、前記リチウム2次電池用難燃性電解液100質量部に対して5ないし80質量部で含まれることができ、具体的には、10ないし50質量部で含まれる。フッ素に置換されたカーボネート系溶媒が前記範囲内で含まれる場合、負極表面に安定したSEI被膜を形成し、被膜を形成せずに電解液に残存するフッ素化カーボネート系溶媒の含有量を最小化することによって、それによって発生し得る電池内圧の上昇などの問題を解決することができる。
【0087】
一実施態様による難燃性電解液の粘度は5cP以下であることができ、具体的には1ないし3cPである。難燃性電解液の粘度が前記範囲内である場合、難燃性電解液の粘度上昇を抑制して、電池の高率充放電特性が向上することができる。
【0088】
一実施態様によるリチウム2次電池用難燃性電解液は、前述のリチウム塩、線状カーボネート系溶媒、アンモニウム陽イオン、燐酸系溶媒、オキサラトボレート系添加剤、そして選択的にフッ素に置換されたカーボネート系溶媒を含むことによって、高温での電池構成成分の熱分解特性が最小化または除去されて、電池の熱安定性及び難燃性が向上し、高率特性及び寿命維持特性などの電気化学的特性が改善される。
【0089】
他の一実施態様によれば、正極、負極、セパレータ、電解液、及びオキサラトボレート系添加剤またはオキサラトボレート系ポリマーを含むリチウム2次電池を提供する。この時、前記電解液は、リチウム塩、線状カーボネート系溶媒、アンモニウム陽イオン、及び燐酸系溶媒を含む。
【0090】
前述のように、リチウム2次電池の充電時にオキサラトボレート系添加剤が分解されることにより、電解液内にオキサラトボレート系添加剤が残っていることもでき、全く残っていないこともできる。また、オキサラトボレート系添加剤が分解されつつ負極の上に被膜を形成することができる。このように多様な実施態様が可能であり、このような実施態様の一部を以下で説明する。
【0091】
一実施態様を説明すれば、正極、負極、セパレータ、電解液、及びオキサラトボレート系添加剤またはオキサラトボレート系ポリマーを含むリチウム2次電池の場合、前記負極の上に、前記オキサラトボレート系ポリマーを含む被膜を形成することができる。また、この時、前記電解液に前記オキサラトボレート系添加剤を含むことができる。前記被膜は、前述のように、前記化学式6Aで示されるオキサラトボレート系ポリマー、つまり、オキサラトボレート系添加剤から誘導されたポリマーからなることができる。また、前記電解液は、陰イオンをさらに含むこともできる。また、前記電解液は、フッ素に置換されたカーボネート系溶媒をさらに含むこともできるが、この時、前記負極の上に、LiF、前記オキサラトボレート系ポリマーまたはこれらの組み合わせを含む被膜を形成することもできる。
【0092】
他の一実施態様を説明すれば、正極、負極、セパレータ、電解液、及びオキサラトボレート系添加剤またはオキサラトボレート系ポリマーを含むリチウム2次電池の場合、前記負極の上に、LiF、前記オキサラトボレート系ポリマーまたはこれらの組み合わせを含む被膜を形成することができる。この時、前記電解液は、オキサラトボレート系添加剤を含むこともでき、フッ素に置換されたカーボネート系溶媒を含むこともできる。
【0093】
前記リチウム2次電池は、使用するセパレータと電解液の種類によって、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、及びリチウムポリマー電池に分類されることができ、形態によっては、円筒形、角型、コイン型、パウチ型などに分類され、サイズによっては、バルクタイプと薄膜タイプに分けられる。これら電池の構造と製造方法はこの分野で広く知られているので、詳細な説明は省略する。
【0094】
図1に、リチウム2次電池の代表的な構造を概略的に示した。図1に示したように、前記リチウム2次電池100は円筒形であって、負極112、正極114、及び前記負極112と正極114の間に配置されたセパレータ113、前記負極112、正極114、及びセパレータ113に含浸された本発明の一実施態様による難燃性電解液(図示せず)、電池容器120及び前記電池容器120を封入する封入部材140を主な部分にして構成されている。このようなリチウム2次電池100は、負極112、正極114、及びセパレータ113を順に積層した後、螺旋状に巻取られた状態で電池容器120に収納して、構成される。
【0095】
前記正極114は、電流集電体及びこの電流集電体に形成される正極活物質層を含む。
【0096】
前記正極活物質は、リチウムの可逆的な挿入及び脱離が可能な化合物(リチエイテッド挿入化合物)を使用することができる。具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル、及びこれらの組み合わせから選択される金属とリチウムとの複合酸化物のうちの1種以上のものを用いることができ、その具体的な例としては、下記の化学式のうちのいずれか一つに示される化合物を使用することができる:
【0097】
Li1−b(上記の式で、0.90≦a≦1.8、及び0≦b≦0.5である。);
Li1−b2−c(上記の式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である。);
LiE2−b4−c(上記の式で、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である。);
LiNi1−b−cCoα(上記の式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である。);
LiNi1−b−cCo2−αα(上記の式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である。);
LiNi1−b−cCo2−α(上記の式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<である。);
LiNi1−b−cMnα(上記の式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である。);
LiNi1−b−cMn2−αα(上記の式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である。);
LiNi1−b−cMn2−α(上記の式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である。);
LiNi(上記の式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である。);
LiNiCoMn(上記の式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である。);
LiNiG(上記の式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である。);
LiCoG(上記の式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である。);
LiMnG(上記の式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である。);
LiMn(上記の式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である。);
QO
QS
LiQS

LiV
LiIO
LiNiVO
Li(3−f)(PO(0≦f≦2);
Li(3−f)Fe(PO(0≦f≦2);及び
LiFePO
【0098】
前記化学式において、
Aは、Ni、Co、Mn、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;
Bは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;
Dは、O、F、S、P、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;
Eは、Co、Mn、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;
Fは、F、S、P、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;
Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;
Qは、Ti、Mo、Mn、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;
Iは、Cr、V、Fe、Sc、Y、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され;
Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0099】
もちろん、この化合物の表面にコーティング層を有するものも使用することができ、または前記化合物とコーティング層を有する化合物を混合して使用することもできる。このコーティング層は、コーティング元素のオキシド、ヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、及びコーティング元素のヒドロキシカーボネートからなる群より選択される少なくとも一つのコーティング元素化合物を含むことができる。これらコーティング層を成す化合物は、非晶質または結晶質であることができる。前記コーティング層に含まれるコーティング元素には、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはこれらの混合物を使用することができる。コーティング層の形成工程は、前記化合物にこのような元素を使用して、正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えば、スプレーコーティング、浸漬法など)でコーティングすることができればいかなるコーティング方法を使用しても構わず、これについては当該分野に務める人々によく理解できる内容であるので、詳しい説明は省略する。
【0100】
前記導電剤は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を招かない電子伝導性材料であればいずれのものでも使用可能であり、その例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末、金属繊維などを使用することができ、また、ポリフェニレン誘導体などの導電性材料を1種または1種以上を混合して使用することができる。
【0101】
前記バインダーは、正極活物質粒子を互いにはっきり付着させ、また、正極活物質を集電体にもはっきり付着させる役割を果たすが、その代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンラバー、アクリレイテッドスチレン−ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどが挙げられるが、これに限定されるのではない。
【0102】
前記電流集電体にはAlを使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0103】
前記負極112は、集電体及び前記集電体の上に形成された負極活物質層を含み、前記負極活物質層は負極活物質を含む。
【0104】
前記負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムをドープ及び脱ドープすることができる物質、または遷移金属酸化物を含む。
【0105】
前記リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質としては、炭素物質として、リチウムイオン2次電池で一般に使用される炭素系負極活物質であればいずれのものでも用いることができ、その代表的な例としては、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらを共に使用することができる。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球形または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(低温焼成炭素)またはハードカーボン、メゾフェースピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0106】
前記リチウム金属の合金には、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al、及びSnからなる群より選択される金属の合金が用いられる。
【0107】
前記リチウムをドープ及び脱ドープすることができる物質には、Si、SiO(0<x<2)、Si−Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Siではない)、Sn、SnO、Sn−Y(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Snではない)などが挙げられ、また、これらのうちの少なくとも一つとSiOを混合して使用することもできる。前記元素Yには、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0108】
前記遷移金属酸化物には、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。
【0109】
前記負極活物質層はまたバインダーを含み、選択的に導電剤をさらに含むこともできる。
【0110】
前記バインダーは負極活物質粒子を互いにはっきり付着させ、また、負極活物質を電流集電体にはっきり付着させる役割を果たすが、その代表的な例として、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンラバー、アクリレイテッドスチレン−ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどが挙げられるが、これに限定されるのではない。
【0111】
前記導電剤は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を招かずに電子伝導性材料であればいずれのものでも使用可能であり、その例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末、または金属繊維などを使用することができ、また、ポリフェニレン誘導体などの導電性材料を混合して使用することができる。
【0112】
前記電流集電体としては、銅薄、ニッケル薄、ステレンス鋼薄、チタニウム薄、ニッケル発泡体、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0113】
前記負極112と正極114は、活物質、導電剤、及び結着剤を、溶媒中で混合して活物質組成物を製造し、この組成物を電流集電体に塗布して製造する。このような電極製造方法は、当該分野に広く知られた内容であるので、本明細書で詳細な説明は省略する。前記溶媒にはN−メチルピロリドンなどを使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0114】
前記リチウム2次電池100はまた、前述の本発明の一実施態様による難燃性電解液を含む。
【0115】
リチウム2次電池100の種類によって正極と負極の間にセパレータ113が存在することもできる。このようなセパレータ113には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデンまたはこれらの2層以上の多層膜が用いられることができ、ポリエチレン/ポリプロピレンの2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層セパレータなどのような混合多層膜も当然用いられることができる。
【0116】
また、他の一実施態様によれば、正極、負極、及びセパレータを含む電極群を用意する段階;前記電極群をリチウム塩、線状カーボネート系溶媒、アンモニウム陽イオン、燐酸系溶媒、及びオキサラトボレート系添加剤を含む電解液に含浸させる段階;及び前記電解液での前記オキサラトボレート系添加剤を分解し、前記負極の上に被膜を形成するために、電池を充電する段階;を含むリチウム2次電池の製造方法が提供される。
【実施例】
【0117】
以下、本発明の望ましい実施例を記載する。ただし、下記の実施例は本発明の望ましい一実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例によって限定されるわけではない。
【0118】
<難燃性電解液の製造>
(実施例1)
1M濃度のLiPF9質量%、ジメチルカーボネート(DMC)50質量%、下記の化学式7で示されるアンモニウム陽イオンを含むイオン性液体20質量%、トリメチルホスファート(TMP)10質量%、LiFOB1質量%、及びフルオロエチレンカーボネート(FEC)10質量%からなる難燃性電解液を製造した。
【化14】

・・・化学式7
【0119】
(比較例1)
1M濃度のLiPF10質量%、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)を3:7の質量比で混合した混合物60質量%、及び前記化学式7で示されるアンモニウム陽イオンを含むイオン性液体30質量%からなる電解液を製造したことを除いては、前記実施例1と同一な方法で実施した。
【0120】
(比較例2)
1M濃度のLiPF10質量%、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)を3:7の質量比で混合した混合物60質量%、及びトリメチルホスファート(TMP)30質量%からなる電解液を製造したことを除いては、前記実施例1と同一な方法で実施した。
【0121】
(比較例3)
1M濃度のLiPF10質量%、及びエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)を3:7の質量比で混合した混合物90質量%からなる電解液を製造したことを除いては、前記実施例1と同一な方法で実施した。
【0122】
(比較例4)
実施例1で、カーボネート系溶媒としてジメチルカーボネート(DMC)を単独で使用した代わりに、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)を3:7の質量比で混合した混合物を使用して電解液を製造したことを除いては、前記実施例1と同一な方法で実施した。
【0123】
(実験例1:難燃性電解液の粘度の測定)
前記実施例1及び比較例1ないし4で製造された難燃性電解液の粘度を下記の方法によって測定して、その結果を下記表1に示した。
【0124】
難燃性電解液の粘度は、回転式粘度系(デジタル)を使用して、周波数(frequency)に応力(stress)の変化を測定して、粘度を計算する方法で測定した。なお、実施例1、比較例1〜4における粘度については全て25℃で測定した。
【0125】
(実験例2:難燃性電解液の難燃度の測定)
前記実施例1及び比較例1ないし4で製造された難燃性電解液の難燃度を下記の方法によって測定して、その結果を下記表1に示した。
【0126】
難燃性電解液の難燃度は、各物質の火炎燃焼実験を通じて燃焼する程度を区分するために、UL94燃焼性試験(flammability test)の標準方法を使った。前記燃焼性試験は、横4cm及び縦1cmのガラス繊維(glass fiber)に0.5gの電解液を担持させた後、ガラス繊維の一端を着火源につくようにして、火がつくか否かと火に焼ける時間を測定して、各難燃性電解液の難燃度を測定した。
【0127】
【表1】

【0128】
前記表1によれば、実施例1による難燃性電解液は5cP以下の粘度を有し、優れた難燃性を示すことが分かる。なお、非常に焼け易い(very flammable)とは、すぐに火がつく状態を指す。また、焼け難い(nonflammable)とは、全く火がつかない状態を指す。また、自己消火性を持つ(self extinguishing)とは、火がついて10秒以内で消される状態を指す。
【0129】
反面、リチウム塩、環状及び線状カーボネート系混合溶媒、そしてアンモニウム陽イオンを含むイオン性液体を用いた比較例1と、リチウム塩、環状及び線状カーボネート系混合溶媒、そして燐酸系溶媒を用いた比較例2は、5cP以下の粘度を有するが、難燃性は低下することを確認することができる。また、リチウム塩と環状及び線状カーボネート系混合溶媒を用いた比較例3と、環状及び線状カーボネート系混合溶媒を用いたことだけを除いては実施例1と同一に製造された比較例4の場合、難燃性は優れているが、粘度が、一実施態様による適正の範囲を超えたことが分かる。
【0130】
<リチウム2次電池の製作>
前記実施例1及び比較例1ないし4で製造された難燃性電解液を使用して各々のリチウム2次電池を製作したが、その製作方法は次の通りである。
【0131】
人造黒鉛負極活物質97質量%とポリフッ化ビニリデンバインダー3質量%を混合し、この混合物をN−メチル−2−ピロリドン中に分散させて、負極活物質スラリーを製造した。前記負極活物質スラリーを、厚さ20μmの銅薄上に均一に塗布及び乾燥させて、負極を製作した。前記負極の対極としてLi金属を使用した。製作された負極及び対極と前記に製造された電解液を利用して、通常の方法で半電池を製作した。
【0132】
(実験例3:満充電負極の難燃度の測定)
【0133】
前記実施例1及び比較例1ないし4で製造された難燃性電解液を含む負極を、0.1Cの条件でリチウム電極対比10mVまで満充電させて、その難燃度を(下記の方法で)測定して、その結果を下記表2に示した。
【0134】
難燃性電解液を含む満充電負極を着火源と直接的に接触させて、火に焼けるか否か及び時間を測定することによって、満充電負極の難燃度を測定した。
【0135】
(実験例4:リチウム2次電池の充放電特性の測定)
前記実施例1及び比較例1ないし4で製作されたリチウム2次電池の電気化学的充放電特性を下記の方法で測定して、その結果を下記表2に示した。
【0136】
前記実施例1及び比較例1ないし4で製作されたリチウム2次電池を、0.1Cまで1回充放電を行って、電気化学的充放電特性を測定した。この時、化成効率は、1回サイクルでの放電容量/1回サイクルでの充電容量)×100に計算される。
【0137】
また、実施例1と比較例4で製作されたリチウム2次電池を、1Cレイト(rate)及び2Cレイト(rate)の各々で充放電を行った以後の容量維持率を測定して、その結果を下記表3に示した。
【0138】
(実験例5:満充電負極のDSCグラフの分析)
図2は、実施例1及び比較例1ないし3による満充電負極のDSC(Differential Scanning Calorimetry)グラフである。前記図2を参照すれば、熱分解開始温度が、実施例1の場合は121℃であり、比較例1の場合は64℃であり、比較例2の場合は80℃であり、比較例3の場合は75℃である。また、発熱量は、各グラフに該当する面積から求めることができ、実施例1の場合190J/gであり、比較例1の場合280J/gであり、比較例2の場合210J/gであり、比較例3の場合350J/gである。これにより、実施例1によるリチウム2次電池は熱分解開始温度が高く、発熱量が低いので、熱的安定性に優れていることが確認できる。なお、本実験例におけるDSC測定については、10℃/minの昇温速度で測定した。
【0139】
【表2】

【0140】
【表3】

【0141】
前記表2によれば、実施例1によるリチウム2次電池の場合、満充電負極の難燃性に優れているだけでなく、化成効率もまた優れていることが分かる。
【0142】
反面、リチウム塩、環状及び線状カーボネート系混合溶媒、そしてアンモニウム陽イオンを含むイオン性液体を使用して製作された比較例1のリチウム2次電池、リチウム塩、環状及び線状カーボネート系混合溶媒、そして燐酸系溶媒を使用して製作された比較例2のリチウム2次電池、リチウム塩と環状及び線状カーボネート系混合溶媒を使用して製作された比較例3のリチウム2次電池、及び環状及び線状カーボネート系混合溶媒を使用したことだけを除いて実施例1と同一に製作された比較例4のリチウム2次電池の場合、満充電負極に対する難燃性が低下するかまたは化成効率が低下していることが分かる。
【0143】
また、前記表3によれば、線状カーボネート系溶媒を単独で用いた場合の実施例1は、環状及び線状カーボネート系混合溶媒を用いた場合の比較例4と比較すれば、容量維持率もまた高いことが分かる。
【0144】
以上で、本発明の望ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明及び添付した図面の範囲内で多様に変形して実施するのが可能であり、これもまた本発明の範囲に属するのは当然のことである。
【0145】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0146】
100 リチウム2次電池
112 負極
113 セパレータ
114 正極
120 電池容器
140 封入部材







【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩と、
線状カーボネート系溶媒と、
アンモニウム陽イオンと、
燐酸系溶媒と、
オキサラトボレート系添加剤と、
を含む、リチウム2次電池用難燃性電解液。
【請求項2】
前記線状カーボネート系溶媒は、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、及びエチルメチルカーボネート(EMC)から選択されるいずれか1つまたは複数からなる溶媒である、請求項1に記載のリチウム2次電池用難燃性電解液。
【請求項3】
前記アンモニウム陽イオンは、ピリジニウム(pyridinium)、ピリダジニウム(pyridaZinium)、ピリミジニウム(pyrimidinium)、ピラジニウム(pyraZinium)、イミダゾリウム(imidaZolium)、ピラゾリウム(pyraZolium)、チアゾリウム(thiaZolium)、オキサゾリウム(oxaZolium)、及びトリアゾリウム(triaZolium)から選択されるいずれか1つまたは複数からなるN−含有ヘテロ環陽イオンである、請求項1または2に記載のリチウム2次電池用難燃性電解液。
【請求項4】
前記アンモニウム陽イオンは、下記の化学式1ないし3で示される陽イオンの中から選択されるいずれか1つの陽イオンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウム2次電池用難燃性電解液。
【化1】

・・・(化学式1)
(前記化学式1で、R及びRは、各々、独立的に、置換あるいは非置換されたアルキル基、または置換あるいは非置換されたアルコキシ基であり、
は、水素、または置換あるいは非置換されたアルキル基であり、nは1ないし5の整数であり、nが2以上である場合、各々のRは互いに同一であるかまたは異なり、
mは0または1である。)
【化2】

・・・(化学式2)
(前記化学式2で、R及びRは、各々、独立的に、置換あるいは非置換されたアルキル基、または置換あるいは非置換されたアルコキシ基であり、
は、水素、または置換あるいは非置換されたアルキル基であり、nは1ないし3の整数であり、nが2以上である場合、各々のRは互いに同一であるかまたは異なる。)
【化3】

・・・(化学式3)

(前記化学式3で、R、R、R、及びR10は、各々、独立的に、置換あるいは非置換されたアルキル基、または置換あるいは非置換されたアルコキシ基である。)
【請求項5】
前記リチウム2次電池用電解液は陰イオンをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウム2次電池用難燃性電解液。
【請求項6】
前記アンモニウム陽イオンと前記陰イオンを含むイオン性液体は、前記リチウム2次電池用難燃性電解液総量に対して20〜70質量%で含まれる、請求項5に記載のリチウム2次電池用難燃性電解液。
【請求項7】
前記陰イオンは、N(SOCH、N(SOCFCF、PF、BF、下記の化学式4または下記の化学式5で示される陰イオンである、請求項5に記載のリチウム2次電池用難燃性電解液。
【化4】

・・・(化学式4)
【化5】

・・・(化学式5)
【請求項8】
前記オキサラトボレート系添加剤は下記の化学式6で示される、請求項1〜7のいずれか1項に記載のリチウム2次電池用難燃性電解液。
【化6】

・・・(化学式6)
(前記化学式6で、R11及びR12は、各々、独立的に、ハロゲン元素またはハロゲン化されたC1〜C10のアルキル基である。)
【請求項9】
前記オキサラトボレート系添加剤はリチウムジフルオロオキサラトボレートである、請求項8に記載のリチウム2次電池用難燃性電解液。
【請求項10】
前記オキサラトボレート系添加剤はリチウムビスオキサラトボレートである、請求項1〜9のいずれか1項に記載のリチウム2次電池用難燃性電解液。
【請求項11】
前記燐酸系溶媒は、ホスファート(phosphate)化合物、ホスホネート(phosphonate)化合物、ホスファゼン(phosphazene)化合物またはこれらの組み合わせのものである、請求項1〜10のいずれか1項に記載のリチウム2次電池用難燃性電解液。
【請求項12】
前記燐酸系溶媒は、前記リチウム2次電池用難燃性電解液総量に対して5〜30質量%で含まれる、請求項1〜11のいずれか1項に記載のリチウム2次電池用難燃性電解液。
【請求項13】
前記オキサラトボレート系添加剤は、前記リチウム2次電池用難燃性電解液総量に対して0.1〜5質量%で含まれる、請求項1〜12のいずれか1項に記載のリチウム2次電池用難燃性電解液。
【請求項14】
前記リチウム2次電池用電解液は、フッ素に置換されたカーボネート系溶媒をさらに含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載のリチウム2次電池用難燃性電解液。
【請求項15】
前記フッ素に置換されたカーボネート系溶媒は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、フルオロジメチルカーボネート(FDMC)、フルオロエチルメチルカーボネート(FEMC)またはこれらの組み合わせのものである、請求項14に記載のリチウム2次電池用難燃性電解液。
【請求項16】
前記フッ素に置換されたカーボネート系溶媒は、前記リチウム2次電池用難燃性電解液100質量部に対して5〜80質量部で含まれる、請求項14または15に記載のリチウム2次電池用難燃性電解液。
【請求項17】
正極と、
負極と、
セパレータと、
リチウム塩、線状カーボネート系溶媒、アンモニウム陽イオン、及び燐酸系溶媒を含む電解液と、
オキサラトボレート系添加剤またはオキサラトボレート系ポリマーと、
を含むリチウム2次電池。
【請求項18】
前記リチウム2次電池は、前記負極の上に前記オキサラトボレート系ポリマーを含む被膜をさらに含む、請求項17に記載のリチウム2次電池。
【請求項19】
前記電解液は前記オキサラトボレート系添加剤を含む、請求項17または18に記載のリチウム2次電池。
【請求項20】
前記オキサラトボレート系ポリマーは下記の化学式6Aで示される、請求項17〜19のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【化7】

・・・(化学式6A)

【請求項21】
前記電解液は陰イオンをさらに含む、請求項17または18に記載のリチウム2次電池。
【請求項22】
前記電解液は、フッ素に置換されたカーボネート系溶媒をさらに含む、請求項17〜21のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【請求項23】
前記リチウム2次電池は、前記負極の上にLiF、前記オキサラトボレート系ポリマーから選択されるいずれか1つまたは複数を含む被膜をさらに含む、請求項22に記載のリチウム2次電池。
【請求項24】
前記リチウム2次電池は、前記負極の上にLiF、前記オキサラトボレート系ポリマーから選択されるいずれか1つまたは複数を含む被膜をさらに含む、請求項17に記載のリチウム2次電池。
【請求項25】
前記電解液はオキサラトボレート系添加剤をさらに含む、請求項24に記載のリチウム2次電池。
【請求項26】
前記電解液は、フッ素に置換されたカーボネート系溶媒をさらに含む、請求項24または25に記載のリチウム2次電池。
【請求項27】
前記オキサラトボレート系ポリマーは下記の化学式6Aで示される、請求項24〜26のいずれか1項に記載のリチウム2次電池。
【化8】

・・・(化学式6A)
【請求項28】
正極、負極、及びセパレータを含む電極群を用意する段階と、
前記電極群を、リチウム塩、線状カーボネート系溶媒、アンモニウム陽イオン、燐酸系溶媒、及びオキサラトボレート系添加剤を含む電解液に含浸させる段階と、
前記電解液での前記オキサラトボレート系添加剤を分解し、前記負極の上に被膜を形成するために、電池を充電する段階と、
を含むリチウム2次電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−192430(P2010−192430A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10316(P2010−10316)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】