説明

リッジホーンアンテナの製造方法

【課題】本発明の課題は、孔の開いた板を挟むようにして外側の板で前記孔に蓋をするように積層してリッジを作製することにより、軽量化のためのリッジ内部の空洞の作製が容易になり、製造原価の軽減が可能となるリッジホーンアンテナの製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、ホーンアンテナ本体21の開口内部にリッジ22が設けられたリッジホーンアンテナの製造方法において、リッジ22として、孔23,23,23が加工された内側となる板22,22,22の両側に、外側となる板22,22を前記孔23,23,23に蓋をするように挟持して一体に形成したリッジを用いてリッジホーンアンテナを作製することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホーンアンテナ開口内部にリッジと呼ばれる凸部を設けることにより、通常のホーンアンテナに比べより広域の周波数帯域にて送受信が可能となるリッジホーンアンテナの製造方法に係り、特にリッジを軽量化したリッジホーンアンテナの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、リッジホーンアンテナは波長に比例(周波数に反比例)してその寸法が大きくなる。
【0003】
通常のホーンアンテナと違ってリッジホーンアンテナでは開口内部にリッジと呼ばれる板がついており、その厚さと高さも波長に比例して大きく厚くなる。
【0004】
図2(a)は従来のリッジホーンアンテナの一例を示す断面図、図2(b)は従来のリッジホーンアンテナの一例を示す正面図、図2(c)は従来のリッジホーンアンテナの他の例を示す正面図である。
【0005】
図2(a),(b)に示すように、四角の角錐台状の筒体よりなるホーンアンテナ本体11の開口内部の上下にはそれぞれ対応してリッジ12が湾曲した凸部状に設けられる。
【0006】
また、図2(c)に示すように、四角の角錐台状の筒体よりなるホーンアンテナ本体11の開口内部の上下および左右にはそれぞれ対応してリッジ12が湾曲した凸部状に設けられる。
【0007】
すなわち、リッジホーンアンテナは、垂直または水平の1偏波(電界)に沿って対象に開口内の上下または左右に2枚必要な2重リッジホーンアンテナと、垂直および水平の直交する2偏波を送受信する4重リッジホーンアンテナがある。4重リッジホーンアンテナではリッジが上下左右の4枚必要なため、この場合はリッジ部分の質量は4重でさらに重くなる。
【0008】
地上固定装置のリッジホーンアンテナではあまり問題とならないが、搭載装置など質量に制限がある場所でリッジホーンアンテナを使用する場合、リッジホーンアンテナの質量を少しでも軽くする必要がある。
【0009】
また、リッジホーンアンテナの場合、送受信する周波数が低くなり各寸法が大きくなるにつれ、リッジ部分の質量が全体の質量中に占める比率が高くなる。
【0010】
その為、リッジ部分の質量を軽量化することは、全体の軽量化を図る上で大きな効果がある。
【0011】
図3(a)は従来のリッジホーンアンテナを示す断面図、図3(b)は従来のリッジホーンアンテナのリッジを示す側面図、図3(c)は従来のリッジホーンアンテナのリッジを示す断面図である。
【0012】
図3(a)に示すように、四角の角錐台状の筒体よりなるホーンアンテナ本体11の開口内部の上下にはそれぞれ対応してリッジ12が湾曲した凸部状に設けられる。
【0013】
前記リッジ12は図3(b),(c)に示すように、リッジ12の底面側から機械加工により掘削され、複数の穴13が開けられる。
【0014】
従来、リッジホーンアンテナの場合、表皮効果によりリッジの表面の非常に薄い部分のみに電流が流れるため、その内部は空洞でもまったく問題がない。
【0015】
従来のリッジホーンアンテナでリッジ部分の質量を軽量化するには、リッジを中空にする必要があり、リッジの底面側から機械加工により掘削(穴を開けてゆく)方法が一般的であるが、この方法は寸法が大きくなるにつれその掘削作業が技術的に難しくなる。
【0016】
また、リッジにはホーンアンテナ本体との接合に必要なネジ等の固定部分を設ける必要があるためリッジ内部全てを掘削することが出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2000−261232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、孔の開いた板を挟むようにして外側の板で前記孔に蓋をするように積層してリッジを作製することにより、軽量化のためのリッジ内部の空洞の作製が容易になり、製造原価の軽減が可能となるリッジホーンアンテナの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために本発明は、ホーンアンテナの開口内部にリッジが設けられたリッジホーンアンテナの製造方法において、リッジとして、孔が加工された内側となる板の両側に、外側となる板を前記孔に蓋をするように挟持して一体に形成したリッジを用いてリッジホーンアンテナを作製することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のリッジホーンアンテナの製造方法は、孔の開いた板を挟むようにして外側の板で前記孔に蓋をするように積層し、複数枚の薄い板を重ねてリッジを作製することにより、外観は全方位閉じたブロックで内部の空洞の作製が容易になり、軽量化できると共に製造原価の軽減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は本発明の実施形態に係るリッジホーンアンテナを示す断面図、(b)は本発明の実施形態に係るリッジホーンアンテナを示す正面図、(c)は本発明の実施形態に係るリッジホーンアンテナのリッジを示す分解斜視図、(d)は本発明の実施形態に係るリッジホーンアンテナのリッジを示す拡大断面図である。
【図2】(a)は従来のリッジホーンアンテナの一例を示す断面図、(b)は従来のリッジホーンアンテナの一例を示す正面図、(c)は従来のリッジホーンアンテナの他の例を示す正面図である。
【図3】(a)は従来のリッジホーンアンテナを示す断面図、(b)は従来のリッジホーンアンテナのリッジを示す側面図、(c)は従来のリッジホーンアンテナのリッジを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
図1(a)は本発明の実施形態に係るリッジホーンアンテナを示す断面図、図1(b)は本発明の実施形態に係るリッジホーンアンテナを示す正面図、図1(c)は本発明の実施形態に係るリッジホーンアンテナのリッジを示す分解斜視図、図1(d)は本発明の実施形態に係るリッジホーンアンテナのリッジを示す拡大断面図である。
【0024】
図1(a),(b)に示すように、四角の角錐台状の筒体よりなるホーンアンテナ本体21の開口内部の上下にはそれぞれ対応してリッジ22が湾曲した凸部状に設けられる。
【0025】
尚、四角の角錐台状の筒体よりなるホーンアンテナ本体の開口内部の左右にそれぞれ対応してリッジを湾曲した凸部状に設けてもよく、また、四角の角錐台状の筒体よりなるホーンアンテナ本体の開口内部の上下および左右にそれぞれ対応してリッジを湾曲した凸部状に設けてもよい。
【0026】
すなわち、リッジホーンアンテナは、垂直または水平の1偏波(電界)に沿って対象に開口内の上下または左右に2枚必要な2重リッジホーンアンテナと、垂直および水平の直交する2偏波を送受信する4重リッジホーンアンテナがある。4重リッジホーンアンテナではリッジが上下左右の4枚必要となる。
【0027】
図1(c),(d)に示すように、前記リッジ22は複数枚例えば5枚の薄い板(例えば鉄板)22,22,22,22,22を積層するように重ねることにより作製される。この場合、内側になる板22,22,22にはそれぞれ細長い孔23,23,23が加工され、内側になる板22,22,22を積層した両側には外側の板22,22が孔23,23,23に蓋をするように挟持して一体に形成される。したがって、リッジ22は外観が全方位閉じたブロックで内部を空洞に作製することが容易となり、軽量化にできると共に製造原価の軽減が可能となる。また、リッジ22をホーンアンテナ本体21に取付けるのに必要であったネジ等の固定部分もリッジ22のホーンアンテナ本体21との設置面を残したままリッジ22の内部を空洞と出来る。以上のように作製したリッジ22をホーンアンテナ本体21にネジ等で固定することにより、リッジホーンアンテナを製造する。
【0028】
尚、リッジ22は薄板を複数枚重ねることにより板間に微小な誤差や隙間が出来る場合もあるが、表面の誤差は最後に表面を研磨することにより改善が可能であるし、隙間についても軽量化が必要となるのは周波数の低い領域で使用される、形状の大きなリッジホーンアンテナであり、周波数が低ければその隙間は波長に比べて十分小さい値となり無視できる。
【0029】
また、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0030】
21…ホーンアンテナ本体、22…リッジ、22,22,22,22,22…板、23,23,23…孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホーンアンテナの開口内部にリッジが設けられたリッジホーンアンテナの製造方法において、
リッジとして、孔が加工された内側となる板の両側に、外側となる板を前記孔に蓋をするように挟持して一体に形成したリッジを用いてリッジホーンアンテナを作製することを特徴とするリッジホーンアンテナの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−166698(P2011−166698A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30599(P2010−30599)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000221155)東芝電波プロダクツ株式会社 (62)
【Fターム(参考)】