説明

リッドのロック装置及びこれを用いた車両用のフィラーリッドの開閉装置

【課題】 例えば車両用のフィラーリッド等のリッドのロック装置及びこれを用いた開閉装置に関し、リッドを比較的、簡便に且つ確実に開閉することができるようにしたものである。
【解決手段】 ロック装置(40)には、ケース(60)、スライダー(70)、付勢手段(例えばコイルバネ80)、ケース(60)に回転可能に支持され、スライダー(70)の突出方向の先端部にリンク機構(120)を介して連結されるラッチ(90)、スライダー(70)の後退位置で、付勢手段(例えばコイルバネ80)の付勢力に抗してスライダー(70)をロックするともに、リッド(20)を閉位置から更に押し込んだ際に、ロック部(32)に押し込まれてラッチ(90)が回転することで、付勢手段(例えばコイルバネ80)の付勢力に抗してスライダー(70)を更に後退させ、このときロック状態を解除するロック手段(100)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両用のフィラーリッド等のリッドのロック装置及びこれを用いた開閉装置に関し、リッドを比較的、簡便に且つ確実に開閉することができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プッシュロック・プッシュリターン方式の係止片を有する係止手段を用いた、自動車のフィラーリッド装置が知られている(特許文献1の2頁4欄14〜18行、第1図)。
上記リッドは、開口部に開閉可能に軸止され、板ばねである付勢手段により、開方向に付勢されている(特許文献1の2頁4欄35〜46行、第1図)。
【0003】
上記係止手段は、開口部の奥行き方向と直交する向きに配置されている(特許文献1の3頁5欄1〜3行、第1図)。
リッドの扉裏には、係止手段の係止片にプッシュする係合部材が設けられている(特許文献1の3頁5欄15〜17行、第1図)。
開状態のリッドを閉じると、係合部材が、係止手段の係止片をプッシュすることで、リッドが閉状態にロックされる。
【0004】
その後、閉したリッドを押し込むと、リッドの扉裏の係合部材が、係止手段の係止片をプッシュすることで、係止手段のロック状態が解除され、リッドが、板ばねである付勢手段の付勢力により開く。
なお、特許文献1のほか、リッド用のロック装置としては、実公昭47−1032号公報、特公平7−116884号公報、米国特許第5,836,638号公報がある。実公昭47−1032号公報のものは、閉じた扉を開く際に、扉を引っ張る構造となっている。また、特公平7−116884号公報、米国特許第5,836,638号公報のものは、装置が開口部の奥行き方向にスライドする構造となっている。
【特許文献1】特公平6−49463号公報(2頁4欄14〜18行、2頁4欄35〜46行、3頁5欄1〜3行、3頁5欄15〜17行、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来のリッド装置は、その係止手段を開口部の奥行き方向と直交する向きに配置しているので、係止手段を開口部の奥行き方向と平行に配置した場合に比較して、開口部の奥行きを短縮できる利点がある。
しかし、上記した従来のリッド装置は、ロック解除した際に、係止手段の係止片により、リッドの扉裏の係合部材を押し返す作用が無いので、別途、リッドを開方向に付勢するために板ばねである付勢手段が必要となり、構造が複雑になってしまうという第一の問題点がある。
【0006】
逆に、従来のリッド装置は、付勢手段により、リッドが不用意に全開してしまうという第二の問題点がある。
また、従来のリッド装置は、リッドの扉裏の係合部材の傾斜面で、係止手段の係止片を単にプッシュしているに過ぎなかったので、係止手段のロック解除及びロック動作が不安定になり易く、又、ロック状態の掛かり代も少ないため、動作の確実性や安定性が低いという第三の問題点がある。
【0007】
そこで、各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した第一〜第三の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次の点にある。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、上記した第一及び第二の問題点に鑑みてなされたものであり、次の点を目的とする。
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明は、スライダーを突出する方向に付勢する付勢手段をケース内に組み込み、且つ当該付勢手段より、ロック解除状態で、ラッチを介してリッドから突出するロック部を押し戻すことで、リッドを途中まで押し開くことができるようにしたものである。
その結果、途中まで開いたリッドを持って、更に開くことができる。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した第三の問題点に鑑みてなされたものであり、上記した請求項1に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0009】
すなわち、請求項2に記載の発明は、リッドのロック状態において掛かり代を増加でき、動作の確実性や安定性を向上することができるようにしたものである。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0010】
すなわち、請求項3に記載の発明は、ロック手段と、カム溝とこれをトレースするトレースピンとから構成することができるようにしたものである。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0011】
すなわち、請求項4に記載の発明は、ブーツにより、埃や塵等の侵入を未然に防止することができるようにしたものである。
その結果、埃や塵等による不具合の発生を未然に防止でき、ロック装置の耐久性を向上することができる。
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、上記した請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0012】
すなわち、請求項5に記載の発明は、ロック装置のスライダーを、開口部の奥行き方向に対して直交する向きにスライドするように配置することで、ロック装置の取付スペースの確保を容易に行うことができるようにしたものである。
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、上記した請求項5に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0013】
すなわち、請求項6に記載の発明は、電子錠により、ドアのロック状態においてリッドが不用意に開放するのを防止でき、防犯上も好適である。
また、請求項6に記載の発明は、電子錠を使用したことにより、その車内の配線の取り回しを容易に行うことができる。
すなわち、機械的な解錠装置を使用した場合には、運転席から比較的に太いケーブルを、車室内に取り回さなければならず、その取り回しが困難であった。しかし、電子錠を使用する場合には、太いケーブルに代えて、細い配線を使用することができ、その取り回しも比較的に容易である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した各目的を達成するためになされたものであり、各発明の特徴点を図面に示した発明の実施の形態を用いて、以下に説明する。
なお、カッコ内の符号は、発明の実施の形態において用いた符号を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
また、図面番号も、発明の実施の形態において用いた図番を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、リッドのロック装置であって、次の点を特徴とする。
【0015】
第一に、例えば図1に示すように、開口部(31)に開閉可能に軸止されたリッド(20)を閉位置にロックするためのリッド(20)のロック装置(40)である。
第二に、ロック装置(40)には、例えば図2に示すように、次の構成を備える。
(1)ケース(60)
ケース(60)は、開口部(31)の内部に固定されるものである。
【0016】
(2)スライダー(70)
スライダー(70)は、ケース(60)内を出入りするものである。
(3)付勢手段(例えばコイルバネ80)
付勢手段(例えばコイルバネ80)は、スライダー(70)をケース(60)から突出する方向に付勢するものである。
【0017】
(4)ラッチ(90)
ラッチ(90)は、ケース(60)に回転可能に支持され、スライダー(70)の突出方向の先端部にリンク機構(120)を介して連結されている。
そして、ラッチ(90)は、リッド(20)を閉じた際に、当該リッド(20)から突出するロック部(32)に押し込まれて回転することで、付勢手段(例えばコイルバネ80)の付勢力に抗してスライダー(70)を後退させ、当該後退位置でリッド(20)のロック部(22)をロックするためのものである。
【0018】
(5)ロック手段(100)
ロック手段(100)は、スライダー(70)の後退位置で、付勢手段(例えばコイルバネ80)の付勢力に抗してスライダー(70)をロックするともに、リッド(20)を閉位置から更に押し込んだ際に、ロック部(32)に押し込まれてラッチ(90)が回転することで、付勢手段(例えばコイルバネ80)の付勢力に抗してスライダー(70)を更に後退させ、このときロック状態を解除するものである。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、リッドのロック装置であって、上記した請求項1に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0019】
すなわち、ラッチ(90)には、例えば図2に示すように、リッド(20)から突出するロック部(32)をくわえ込むロック溝(92)を備えている。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、リッドのロック装置であって、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0020】
ロック手段(100)は、例えば図2に示すように、次の構成を備える。
(1)カム溝(130)
カム溝(130)は、例えば図6に示すように、スライダー(70)に設けられたハート型の島(例えばハート島131)を中心に形成され、スライダー(70)のスライド方向に延びるものである。
【0021】
(2)ロックピン(140)
ロックピン(140)は、一端部がケース(60)に回転可能に支持され、他端部がカム溝(130)をトレースするものである。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、リッドのロック装置であって、上記した請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0022】
ロック装置(40)には、例えば図3に示すように、スライダー(70)が出入りするケース(60)の出入口に取り付けられ、スライダー(70)とラッチ(90)との間の軸(例えば回転軸91)の周囲を覆うブーツ(110)を備えている。
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、車両用のフィラーリッドの開閉装置であって、上記した請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0023】
第一に、開口部(31)は、図示しないが、車体の外表面に設けられ、内部に燃料注入口(例えばキャップ50参照)を有する。
第二に、ロック装置(40)のスライダー(70)は、例えば図1に示すように、開口部(31)の奥行き方向に対して、直交する向きにスライドするように配置されている。
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、車両用のフィラーリッドの開閉装置であって、上記した請求項5に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0024】
すなわち、開口部(31)には、図示しないが、ドアのロック状態おいて、リッド(20)を施錠するための電子錠を備えている。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
(請求項1)
請求項1に記載の発明によれば、次のような効果を奏する。
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、スライダーを突出する方向に付勢する付勢手段をケース内に組み込み、且つ当該付勢手段より、ロック解除状態で、ラッチを介してリッドから突出するロック部を押し戻すことで、リッドを途中まで押し開くことができる。
【0026】
その結果、途中まで開いたリッドを持って、更に開くことができる。
(請求項2)
請求項2に記載の発明によれば、上記した請求項1に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
すなわち、請求項2に記載の発明によれば、リッドのロック状態において掛かり代を増加でき、動作の確実性や安定性を向上することができる。
(請求項3)
請求項3に記載の発明によれば、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0027】
すなわち、請求項3に記載の発明によれば、ロック手段と、カム溝とこれをトレースするトレースピンとから構成することができる。
(請求項4)
請求項4に記載の発明によれば、上記した請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0028】
すなわち、請求項4に記載の発明によれば、ブーツにより、埃や塵等の侵入を未然に防止することができる。
その結果、埃や塵等による不具合の発生を未然に防止でき、ロック装置の耐久性を向上することができる。
(請求項5)
請求項5に記載の発明によれば、上記した請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0029】
すなわち、請求項5に記載の発明によれば、ロック装置のスライダーを、開口部の奥行き方向に対して直交する向きにスライドするように配置することで、ロック装置の取付スペースの確保を容易に行うことができる。
(請求項6)
請求項6に記載の発明によれば、上記した請求項5に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0030】
すなわち、請求項6に記載の発明によれば、電子錠により、ドアのロック状態においてリッドが不用意に開放するのを防止でき、防犯上も好適である。
また、請求項6に記載の発明によれば、電子錠を使用したことにより、その車内の配線の取り回しを容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(図面の説明)
図1〜10は、本発明の実施の形態の一例をそれぞれ示すものである。
図1は、リッドの開閉装置の断面図、図2はロック装置の分解斜視図、図3はロック装置の断面図、図4は図3のIV−IV線に沿う断面図、図5は図3のV−V線に沿う断面図、図6はロック装置のロック溝の拡大図、図7は図3に対応し、ロック解除状態を説明するためのロック装置の断面図、図8は図1に対応し、リッドを閉じた状態を説明するの開閉装置の断面図、図9は図1に対応し、閉じたリッドを押し込んだ状態を説明するの開閉装置の断面図、図10は図3に対応し、閉じたリッドを押し込んだ状態を説明するのロック装置の断面図をそれぞれ示すものである。
(開閉装置10)
図1中、10は、リッド20の開閉装置を示すものである。
【0032】
リッド20は、例えば車両用のフィラーリッドとして使用するが、これに限定されず、車室内の小物入れ等のリッドに使用しても良い。また、開閉装置10は、車両に限定されず、飛行機、船舶、事務機器、家具、家電製品等の各種のリッドに使用できる。
上記開閉装置10は、図1に示すように、大別すると、次のパーツを備える。
(1)凹部30
(2)リッド20
(3)ロック装置40
なお、開閉装置10のパーツは、上記した(1)〜(3)に限定されない。
(凹部30)
凹部30は、図1に示すように、自動車のリヤフェンダーの外表面に開口する開口部31を有し、奥には燃料注入口(図示せず)が臨み、燃料注入口にはキャップ50が装着されている。
【0033】
また、開口部31には、ロック装置40のほか、図示しないが、ドアのロック状態おいて、リッド20を施錠するための電子錠を備えている。電子錠は、ドアのロック解除状態おいて、リッド20を解錠する。
(リッド20)
リッド20は、図1に示すように、リッド軸21を介して、開口部31に開閉可能に軸止されている。
【0034】
リッド20の自由端部には、図1に示すように、裏面からロック装置40に向かって突出するロック部22を設けている。
ロック部22は、略コ字形乃至はC字形に屈曲している。
なお、ロック部22の形状は、略コ字形乃至はC字形に限定されない。
(ロック装置40)
ロック装置40には、図2に示すように、大別すると、次のパーツを備える。
【0035】
(1)ケース60
(2)スライダー70
(3)コイルバネ80(付勢手段)
(4)ラッチ90
(5)ロック手段100
(6)ブーツ110
なお、ロック装置40のパーツは、上記した(1)〜(6)に限定されない。
(ケース60)
ケース60は、図2に示すように、一端部が開口した筒形に形成され、例えば適度な弾性と剛性とを有する樹脂で一体成形されている。開口には、ラッチ90に向かって舌片状に延び、当該ラッチ90を軸止するための一対の軸受部61,61を設けている。
【0036】
また、ケース60の外側面には、開口部31の内部に固定するための一対の弾性爪62,62と、両弾性爪62に対向し、円盤形に張り出した鍔部63とを設けている。
これに対し、凹部30の側壁には、図1及び図3に示すように、ケース60がはまり込む長円形の貫通孔32を設けておく。貫通孔32は、リッド20のリッド軸21を軸止した凹部30の側壁と反対側の側壁に形成され、当該側壁の表裏面を貫通する。
【0037】
そして、ケース60を、凹部30の貫通孔32に合わせて挿入すると、両弾性爪62が貫通孔32の周囲に当接する。ここで、ケース60を強く挿入すると、両弾性爪62が撓むことで、貫通孔32を通過し、裏側で樹脂の弾性復元力により復帰し、図1及び図3に示すように、鍔部63との間で凹部30の側壁を表裏面から挟持する。
こうして、ケース60は、図1に示すように、開口部31の奥行き方向に対して、直交する向きに凹部30内に固定される。
(スライダー70)
スライダー70は、ケース60の中空内部にスライド可能に保持され、ケース60の開口から出入りするものであり、例えば適度な剛性を有する樹脂で一体成形されている。
(コイルバネ80)
コイルバネ80は、ケース60とスライダー70との間で圧縮され、スライダー70をケース60の開口から突出する方向に付勢するものであり、付勢手段を構成する。
【0038】
なお、付勢手段は、コイルバネ80に限定されず、板バネ等でも良い。また、付勢手段を、一体のコイルバネ80から構成したが、ケース60やスライダー70に例えば弾性片等を一体的に形成しても良い。
(ラッチ90)
ラッチ90は、図2に示すように、ケース60に回転軸91を介して回転可能に支持され、スライダー70の突出方向の先端部にリンク機構120を介して連結されている。
【0039】
そして、ラッチ90は、リッド20を閉じた際に、当該リッド20から突出するロック部22に押し込まれて回転することで、コイルバネ80のバネ復元力に抗してスライダー70を後退させ、当該後退位置でリッド20のロック部22をロックするためのものである。ラッチ90は、例えば適度な剛性を有する樹脂で一体成形されている。
具体的には、ラッチ90の後端部には、図2に示すように、一対の回転軸91,91を設けている。そして、両回転軸91を、ケース60の一対の軸受部61に軸止している。
【0040】
また、ラッチ90とスライダー70との間には、図2に示すように、リンク機構120を設けている。
リンク機構120は、ラッチ90の回転運動をスライダー70の直線運動に変換するものである。
具体的には、リンク機構120は、図2に示すように、大別すると、次のパーツを備える。
【0041】
(1)リンク軸121
リンク軸121は、スライダー70の先端部から互いに背向して一対の突出する。
(2)長穴122
長穴122は、ラッチ90の後端部に一対形成され、両リンク軸121がそれぞれはまり込む。
なお、リンク機構120は、上記したリンク軸121と長穴122とに限定されない。また、リンク軸121をスライダー70に、長穴122をラッチ90にそれぞれ設けたが、逆にリンク軸121をラッチ90に、長穴122をスライダー70にそれぞれ設けても良い。
【0042】
また、ラッチ90の先端部には、図2に示すように、リッド20から突出するロック部32をくわえ込む略U字状のロック溝92を備えている。
具体的には、ラッチ90の先端部は、ロック溝92を挟んで略J字形に屈曲し、長さの比較的に長い当接部93と、短い係止部94とを有する。長い当接部93は、リッド20を閉じる際にロック部22に押され、ラッチ90は回転軸91を中心に回転すると、短い係止部94がロック部22に引っ掛かることで、リッド20の開放が阻止される。
【0043】
また、ラッチ90の前後の途中には、図1〜2に示すように、四方に方形に張り出す鍔部95を設け、鍔部95の根本部分には、後述するブーツ110を係止するための凹んだ係止溝96を設けている。
(ロック手段100)
ロック手段100は、スライダー70の後退位置で、コイルバネ80のバネ復元力に抗してスライダー70をロックするともに、リッド20を閉位置から更に押し込んだ際に、ロック部32に押し込まれてラッチ90が回転することで、コイルバネ80のバネ復元力に抗してスライダー70を更に後退させ、このときロック状態を解除するものである。
【0044】
具体的には、ロック手段100は、図2に示すように、次の構成を備える。
(1)カム溝130
(2)ロックピン140
なお、ロック手段100は、上記した(1)〜(2)に限定されない。
(カム溝130)
カム溝130は、図6に示すように、スライダー70に設けられたハート型の島、すなわちハート島131を中心に形成され、スライダー70のスライド方向に延びるものである。
【0045】
具体的には、カム溝130は、図4〜5に示すように、スライダー70の後半部に設けられ、その表裏面に一対設けられている。なお、カム溝130は、2個に限定されず、スライダー70の表裏面のいずれかの片側に1個だけ設けておいても良い。
各カム溝130は、図6に示すように、ハート島131の尖った先端部131aからスライダー70のスライド方向に沿って長く延びる導入路132と、導入路132から分岐して、ハート島131の一側に沿って延び、ハート島131のハート型に凹んだ凹部131bに至る往路133と、往路133に連続し、ハート島131の他方の一側に沿って延び、導入路132に至る復路134とを有する。
【0046】
そして、カム溝130は、その溝の深さを変化させることで、ロックピン140が、往路133から復路134の順に一方向に巡るようにしている。
(ロックピン140)
ロックピン140は、一端部がケース60に回転可能に支持され、他端部が一対のカム溝130をそれぞれトレースするものである。
(ブーツ110)
ブーツ110は、弾性に富み、例えばゴム製で、図3に示すように、蛇腹状に形成され、スライダー70が出入りするケース60の出入口に取り付けられ、スライダー70とラッチ90との間の回転軸91の周囲を覆うものである。
【0047】
具体的には、ブーツ110の一方の開口端部110aは、図3〜4に示すように、ラッチ90の鍔部95に被せられ、その内方に断面L字形に折れ曲がった開口縁部をラッチ90の係止溝96に弾性的にはめ込んでいる。
また、ブーツ110の他方の開口端部110bは、ケース60の鍔部63に被せられ、その内方に断面L字形に折れ曲がった開口縁部を鍔部63の裏側に弾性的に引っ掛けている。
【0048】
ブーツ110の他方の開口端部110bの開口縁部は、ケース60を凹部30の貫通孔32に挿入したときに、鍔部63の裏側と凹部30の側壁の表面との間で、ブーツ110の開口縁部が弾性的に押し潰される。
このため、ブーツ110により、凹部30の貫通孔32をシールすることができる。
また、ブーツ110の一方の開口端部110aは、図3〜4、図7、図10に示すように、ラッチ90の回転に追従して屈曲する。
(使用方法)
つぎに、上記した構成を備える開閉装置10の使用方法について、以下に説明する。
【0049】
まず、図1に示すように、開放したリッド20を閉じるには、リッド20を開口部31に向かって押し込めば良い(図8参照)。
リッド20を閉じると、その裏面のロック部32が、ラッチ90の先端部の長さの長い当接部93に当接する(図7参照)。
リッド20を更に閉ると、ラッチ90がケース60との間の回転軸91を中心に回転し、このとき、リンク機構120を介してスライダー70が、コイルバネ80のバネ復元力に抗してケース60内を後退する。
【0050】
このとき、カム溝130の導入路132に位置するロックピン140が、スライダー70の後退により、カム溝130の位置が相対的に移動することで、図示しないが、導入路132から往路133に進む。
リッド20を更に閉ると、スライダー70も更に後退し、図示しないが、ロックピン140が往路133の端部で行き止まる。
【0051】
リッド20を閉じる力を解放すると、スライダー70が、コイルバネ80のバネ復元力により僅かに前進することで、図3に示すように、ハート島131のハート型に凹んだ凹部131bに向かって進み、当該凹部131bにはまり込むことで、ロック装置40がロック状態となる。
このとき、ラッチ90が回転し、図3及び図8に示すように、リッド20のロック部32がロック溝92にはまり込み、短い係止部94に引っ掛かることで、リッド20の開放が阻止される。
【0052】
一方、図8に示すように、閉じたリッド20を開くには、図9に示すように、リッド20を開口部31に向かって再度、押し込めば良い。
リッド20が押し込まれると、図10に示すように、その裏面のロック部32が、ラッチ90の長い当接部93を更に押すこととなる。
このため、ラッチ90がケース60との間の回転軸91を中心に回転し、このとき、リンク機構120を介してスライダー70が、コイルバネ80のバネ復元力に抗してケース60内を更に後退する。
【0053】
スライダー70の後退により、カム溝130の位置が相対的に移動することで、図10に示すように、ハート島131の凹部131bにはまり込んでいたロックピン140が復路134に進み、図示しないが、当該復路134の端部で行き止まり、ロック装置40がロック状態が解除される。
リッド20を閉じる力を解放すると、スライダー70が、コイルバネ80のバネ復元力により前進することで、復路134に進んだロックピン140は、図7に示すように、復路134を逆進して導入路132に戻る。
【0054】
このため、スライダー70にリンク機構120を介して連結されたラッチ90が逆転して、図7に示すように、その長い当接部93により、リッド20のロック部32を押し戻すことで、リッド20が開口部31から少し開いた状態となる。
リッド20を更に開くには、リッド20と開口部31との隙間に手を入れて、リッド20を更に開けば良い(図1参照)。
【0055】
こうして、リッド20を開くことで、図1に示すように、開口部31の奥のキャップ50が露呈し、キャップ50を取り外すことで、燃料注入口からの給油が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】リッドの開閉装置の断面図である。
【図2】ロック装置の分解斜視図である。
【図3】ロック装置の断面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図3のV−V線に沿う断面図である。
【図6】ロック装置のロック溝の拡大図である。
【図7】図3に対応し、ロック解除状態を説明するためのロック装置の断面図である。
【図8】図1に対応し、リッドを閉じた状態を説明するの開閉装置の断面図である。
【図9】図1に対応し、閉じたリッドを押し込んだ状態を説明するの開閉装置の断面図である。
【図10】図3に対応し、閉じたリッドを押し込んだ状態を説明するのロック装置の断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10 開閉装置 20 リッド
21 リッド軸 22 ロック部
30 凹部 31 開口部
32 貫通孔 40 ロック装置
50 キャップ 60 ケース
61 軸受部 62 弾性爪
63 鍔部 70 スライダー
80 コイルバネ(付勢手段) 90 ラッチ
91 回転軸 92 ロック溝
93 当接部 94 係止部
95 鍔部 96 係止溝
100 ロック手段 110 ブーツ
110a,110b 開口端部 120 リンク機構
121 リンク軸 122 長穴
130 カム溝 131 ハート島
131a 先端部 131b 凹部
132 導入路 133 往路
134 復路 140 ロックピン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を開閉可能なリッドを閉位置にロックするためのリッドのロック装置において、
前記ロック装置には、
前記開口部の内部に固定されるケースと、
前記ケース内を出入りするスライダーと、
前記スライダーを前記ケースから突出する方向に付勢する付勢手段と、
前記ケースに回転可能に支持され、前記スライダーの突出方向の先端部にリンク機構を介して連結され、前記リッドを閉じた際に、当該リッドから突出するロック部に押し込まれて回転することで、前記付勢手段の付勢力に抗して前記スライダーを後退させ、当該後退位置で前記リッドの前記ロック部をロックするためのラッチと、
前記スライダーの後退位置で、前記付勢手段の付勢力に抗して前記スライダーをロックするともに、
前記リッドを閉位置から更に押し込んだ際に、前記ロック部に押し込まれて前記ラッチが回転することで、前記付勢手段の付勢力に抗して前記スライダーを更に後退させ、このときロック状態を解除するロック手段とを備えていることを特徴とするリッドのロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載のリッドのロック装置において、
前記ラッチには、
前記リッドから突出する前記ロック部をくわえ込むロック溝を備えていることを特徴とするリッドのロック装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のリッドのロック装置において、
前記ロック手段は、
前記スライダーに設けられたハート型の島を中心に形成され、前記スライダーのスライド方向に延びるカム溝と、
前記一端部が前記ケースに回転可能に支持され、他端部が前記カム溝をトレースするロックピンとから構成されていることを特徴とするリッドのロック装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリッドのロック装置において、
前記ロック装置には、
前記スライダーが出入りする前記ケースの出入口に取り付けられ、
前記スライダーと前記ラッチとの間の軸の周囲を覆うブーツを備えていることを特徴とするリッドのロック装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のリッドのロック装置を備えた開閉装置において、
前記開口部は、
車体の外表面に設けられ、内部に燃料注入口を有し、
前記ロック装置の前記スライダーは、
前記開口部の奥行き方向に対して、直交する向きにスライドするように配置されていることを特徴とする車両用のフィラーリッドの開閉装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用のフィラーリッドの開閉装置において、
前記開口部には、
ドアのロック状態おいて、前記リッドを施錠するための電子錠を備えていることを特徴とする車両用のフィラーリッドの開閉装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate