説明

リニアガイド装置の冷却構造

【課題】リニアガイド装置の設置のための追加の設計が不要であり、且つ、リニアガイド装置の設置作業の効率が良好なリニアガイド装置の冷却構造を提供する。
【解決手段】リニアガイド装置のスライダ2に、転動体転動路14内の転動体3の転動により発生する熱を吸収する冷却流体が流れる冷却路20と、冷却路20に冷却流体を導入する導入口21と、冷却路20から冷却流体を排出する排出口22と、を設けた。そして、冷却流体を導入口21に送るポンプを、導入口21に直接接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアガイド装置の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリニアガイド装置は、軸方向に延びる転動体転動溝を外面に有する案内レールと、該案内レールの転動体転動溝に対向する転動体転動溝を有するとともに軸方向に相対移動可能に案内レールに取り付けられたスライダと、案内レールの転動体転動溝とスライダの転動体転動溝との間に形成される転動体転動路内に転動自在に配された複数の転動体と、を備えており、転動体転動路内の転動体の転動を介してスライダが案内レールに沿って軸方向に移動可能となっている。
【0003】
このようなリニアガイド装置においては、転動体転動路内の転動体の転動により熱が発生するので、この熱によりスライダや案内レールが変形して精度低下が生じるおそれがあった。特に、高速・高荷重条件で駆動するリニアガイド装置は、熱の発生量が多いため、熱変形を十分に考慮する必要性があった。
上記のような発熱に対する対策がなされたリニアガイド装置が、特許文献1に開示されている。スライダの上面に接合されたテーブルに、スライダの発熱が伝播すると、テーブルが局部的に熱せられ熱的バランスが崩れて変形し、この変形によって加工精度が維持できなくなる。そこで、スライダからテーブルに熱が伝わらないように、スライダの内部で且つ転動体とスライダ上面との間に、冷却剤を流す層からなる断熱層を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2005/077597号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のリニアガイド装置においては、冷却剤は、テーブル又はテーブルとスライダとの間に介在されるスペーサに導入され、テーブル又はスペーサを経由してスライダに送り込まれるような構造になっている。したがって、スライダの上面とテーブル又はスペーサとの接合部分は、冷却剤の漏洩が生じないように、密閉構造とする必要がある。このように、特許文献1に開示の技術では、冷却剤を流す流路やシールをスライダのみならずテーブル又はスペーサにも設ける必要がある。
【0006】
一般的に、機械メーカーは、機台及びテーブルは各自で設計,製作し、部品メーカーから購入したリニアガイド装置を機台に設置するとともに、テーブルをリニアガイド装置のスライダに取り付ける。よって、冷却剤を流す流路やシールをスライダとテーブル又はスペーサとに設けるためには、両者の機能を損なうことなく追加の設計を行わなければならないので、設計が煩雑になるという問題があった。また、購入したリニアガイド装置に後加工を施さなければならないので、リニアガイド装置の設置作業の効率が良好ではなかった。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、リニアガイド装置の設置のための追加の設計が不要であり、且つ、リニアガイド装置の設置作業の効率が良好なリニアガイド装置の冷却構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の態様は、次のような構成からなる。すなわち、本発明の一態様に係るリニアガイド装置の冷却構造は、軸方向に延びる転動体軌道面を有する案内レールと、前記案内レールの転動体軌道面に対向する転動体軌道面を有するとともに軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、前記案内レールの転動体軌道面及び前記スライダの転動体軌道面の間に形成される転動体転動路内に転動自在に配された複数の転動体と、を備えるリニアガイド装置の前記スライダに、前記転動体転動路内の前記転動体の転動により発生する熱を吸収する冷却流体が流れる冷却路と、前記冷却路に前記冷却流体を導入する導入口と、前記冷却路から前記冷却流体を排出する排出口と、を設け、前記冷却流体を前記導入口に送る冷却流体導入手段を、前記導入口に直接接続したことを特徴とする。
【0008】
このような本発明の一態様に係るリニアガイド装置の冷却構造においては、前記冷却路を前記転動体転動路に平行に配することが好ましい。また、前記冷却路は、前記スライダを軸方向に貫通する貫通孔の両端を閉塞部材で閉塞してなるものでもよい。
また、前記のような本発明の一態様に係るリニアガイド装置の冷却構造においては、前記冷却路を前記転動体転動路と直角をなすように配してもよい。また、前記冷却路は、前記スライダを軸方向と直交する方向に貫通する貫通孔からなるものでもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るリニアガイド装置の冷却構造は、転動体転動路内の転動体の転動により発生する熱を吸収する冷却流体が流れる冷却路と、冷却路に冷却流体を導入する導入口と、冷却路から冷却流体を排出する排出口と、をスライダに設け、冷却流体を導入口に送る冷却流体導入手段を導入口に直接接続したので、リニアガイド装置の設置のための追加の設計が不要であり、且つ、リニアガイド装置の設置作業の効率が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第一実施形態のリニアガイド装置の構造を示す斜視図である。
【図2】図1のリニアガイド装置を軸方向から見た正面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】第一実施形態のリニアガイド装置の冷却路を説明する、要部を切断して示した平面図である。
【図5】第一実施形態のリニアガイド装置の冷却路を説明する側面図である。
【図6】図5のリニアガイド装置のB−B断面図である。
【図7】第二実施形態のリニアガイド装置の冷却路を説明する、要部を切断して示した平面図である。
【図8】第二実施形態のリニアガイド装置の冷却路を説明する側面図である。
【図9】図8のリニアガイド装置のC−C断面図である。
【図10】第三実施形態のリニアガイド装置の冷却路を説明する平面図である。
【図11】第三実施形態のリニアガイド装置の冷却路を説明する側面図である。
【図12】図11のリニアガイド装置のD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るリニアガイド装置の冷却構造の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
〔第一実施形態〕
図1は、第一実施形態のリニアガイド装置の構造を示す斜視図である。また、図2は、図1のリニアガイド装置を軸方向から見た正面図(ただし、エンドキャップを省略して図示している)であり、図3は、図2のA−A断面図である。なお、これ以降の各図においては、同一又は相当する部分には、同一の符号を付してある。
【0012】
軸方向に延びる断面形状略角形の案内レール1の上に、断面形状略コ字状のスライダ2が軸方向に相対移動可能に組み付けられている。なお、前記断面形状とは、軸方向に直交する平面で切断した場合の断面の形状を意味する。この案内レール1の上面1bと左右両側面1a,1aとが交差する稜線部には、軸方向に延びる断面ほぼ1/4円弧形状の凹溝からなる転動体転動溝(本発明の構成要件である転動体軌道面に相当する)10,10が形成され、また、案内レール1の左右両側面1a,1aの上下方向中間位置には、軸方向に延びる断面ほぼ1/2円弧形状(半円形)の凹溝からなる転動体転動溝10,10が形成されている。
【0013】
また、スライダ2は、スライダ本体2Aと、その軸方向両端部に着脱可能に取り付けられたエンドキャップ2B,2Bと、で構成されており、さらに、スライダ2の軸方向両端部(各エンドキャップ2Bの端面)には、案内レール1とスライダ2との間の隙間の開口部分のうち軸方向に向く開口部分を密封するシール部材5,5が装着されている。このシール部材5,5により、外部から前記隙間への異物の侵入や、前記隙間から外部への潤滑剤の流出が防止されている。
【0014】
さらに、スライダ本体2Aの左右両袖部6,6の内側面の角部及び上下方向中央部には、案内レール1の転動体転動溝10,10,10,10に対向する断面ほぼ1/2円弧形状(半円形)の転動体転動溝11,11,11,11(本発明の構成要件である転動体軌道面に相当する)が形成されている。そして、案内レール1の転動体転動溝10,10,10,10とスライダ2の転動体転動溝11,11,11,11との間に、断面ほぼ円形の転動体転動路14,14,14,14が形成されていて、これらの転動体転動路14は軸方向に延びている。なお、案内レール1及びスライダ2が備える転動体転動溝10,11の数は片側二列に限らず、例えば片側一列又は三列以上などであってもよい。
さらにまた、スライダ2は、スライダ本体2Aの左右両袖部6,6の肉厚部分の上部及び下部に、転動体転動路14とほぼ平行をなして軸方向に延びる第一戻し路13,13,13,13(例えば、スライダ本体2Aを軸方向に貫通する孔からなる直線状路)を備えている。
【0015】
一方、エンドキャップ2Bは、例えば樹脂材料の射出成形品からなり、断面形状が略コ字状に形成されている。エンドキャップ2B,2Bは、図3に示すように、スライダ本体2Aとの当接面(裏面)の左右両側に、転動体転動路14とこれにほぼ平行な第一戻し路13とを連通させる湾曲状(例えば半ドーナッツ状)の第二戻し路15を有している。
【0016】
そして、第一戻し路13と両端の第二戻し路15,15とで、転動体3を転動体転動路14の終点から始点へ送り循環させる転動体戻し路16が構成され、この転動体戻し路16と転動体転動路14とで、略環状の転動体循環路が形成されている。この転動体循環路内には、例えば鋼球からなる多数の転動体3が転動自在に装填されていて、これらの転動体3の転動を介してスライダ2が案内レール1に沿って軸方向に移動するようになっている。
【0017】
案内レール1に組み付けられたスライダ2を案内レール1に沿って軸方向に移動させると、転動体転動路14内に装填されている転動体3は、転動体転動路14内を転動しつつ案内レール1に対してスライダ2と同方向に移動する。そして、転動体3が転動体転動路14の終点に達すると、エンドキャップ2B内に備えられたタング部17によって転動体転動路14からすくい上げられ、第二戻し路15へ送られる。第二戻し路15に入った転動体3はUターンして第一戻し路13に導入され、第一戻し路13を通って反対側の第二戻し路15に至る。ここで再びUターンして転動体転動路14の始点に戻り、このような転動体循環路内の循環を無限に繰り返す。
【0018】
次に、冷却路20について、図4〜6を参照しながら詳細に説明する。図4は、第一実施形態のリニアガイド装置の冷却路20を説明する平面図であり、スライダ本体2Aのうち冷却路20の周辺部分のみ切断して示している。また、図5は、第一実施形態のリニアガイド装置の冷却路20を説明する側面図であり、図6は、図5のリニアガイド装置のB−B断面図である。
【0019】
このリニアガイド装置のスライダ本体2Aには、転動体転動路14内の転動体3の転動により発生する熱を吸収する冷却流体(図示せず)が流れる冷却路20が設けられている。この冷却路20は、スライダ本体2Aを軸方向に貫通する貫通孔の両端を閉塞部材で閉塞してなり、転動体転動路14,14の近傍に転動体転動路14,14と平行に延びている。本実施形態においては、スライダ本体2Aの左右両袖部6,6の肉厚部分の上下方向中央部に、それぞれ冷却路20が設けられている。
【0020】
また、閉塞部材として、シール部材5及びエンドキャップ2Bをスライダ本体2Aに固定するための固定部品(本実施形態においてはねじ8)が用いられている。すなわち、シール部材5及びエンドキャップ2Bをスライダ本体2Aに固定するねじ8の先端部分が、前記貫通孔に挿通され、前記貫通孔の端部を塞いでいる。なお、シール部材5及びエンドキャップ2Bをスライダ本体2Aに固定するための固定部品を、閉塞部材として兼用してもよいが、本発明はこれに限定されるものではなく、前記貫通孔の端部を塞ぐための専用の閉塞部材を用いてもよい。
【0021】
冷却路20の一端部又はその近傍部分には、冷却路20に冷却流体を導入する導入口21が設けられており、他端部又はその近傍部分には、冷却路20から冷却流体を排出する排出口22が設けられている。すなわち、スライダ本体2Aの袖部6の外側面に開口し冷却路20に連通する通路が設けられており、この通路が導入口21や排出口22を構成している。
【0022】
そして、導入口21には、冷却流体を送り出す図示しないポンプ(本発明の構成要件である冷却流体導入手段に相当する)の配管が直接連結されており、ポンプから導入口21に冷却流体が直接送り込まれるようになっている。導入口21に導入された冷却流体は冷却路20に至り、冷却路20内を通って排出口22からスライダ2の外部に排出される。排出口22から排出された冷却流体は、ポンプに戻して循環利用することが好ましいが、冷却路20に送り込む冷却流体を十分に確保できるならば、リニアガイド装置の周辺環境に放出しても差し支えない。
【0023】
冷却路20内を流れる冷却流体が、転動体転動路14内の転動体3の転動により発生した熱を吸収するので、熱によりスライダ2や案内レール1が変形して精度低下が生じるおそれがほとんどない。よって、本実施形態のリニアガイド装置は初期精度を保つことができる。特に、高速・高荷重条件で駆動するリニアガイド装置は、熱の発生量が多いが、本実施形態のリニアガイド装置は、そのような場合でも熱が吸収されるので、精度低下が生じにくい。
【0024】
また、冷却流体は、スライダ2に積載される積載物や積載物とスライダ2との間に介在されるスペーサ等の別部材に導入され、この別部材を経由してスライダ2に送り込まれるような構造にはなっておらず、導入口21を介してスライダ2内に直接的に導入される構造になっている。よって、冷却流体を流す流路を前記別部材に設ける必要はない。また、スライダ2と前記別部材との接合部分から冷却流体の漏洩が生じるおそれがないので、接合部分を密閉構造とするためにシール等を設ける必要はない。
【0025】
このように、本実施形態のリニアガイド装置は、機台等への設置の際に、冷却流体を流す流路やシールなどを設けるための追加の設計を、リニアガイド装置や前記別部材に対して行う必要がない。また、冷却流体を流す流路やシールを設けるために、リニアガイド装置や前記別部材に対して後加工を施す必要がないので、リニアガイド装置の設置作業の効率が良好である。
【0026】
さらに、シール部材5及びエンドキャップ2Bをスライダ本体2Aに固定するためのねじ8を、閉塞部材として用いたので、リニアガイド装置の部品の点数の増加を抑えることができる。また、ねじ8と前記貫通孔とが軸方向に直列に配置されるので、スライダ本体2Aの断面(軸方向に直交する平面で切断した場合の断面)内に、閉塞部材を取り付けるための新たな空間を求める必要がない。
【0027】
〔第二実施形態〕
図7は、第二実施形態のリニアガイド装置の冷却路20を説明する平面図であり、スライダ本体2Aのうち冷却路20の周辺部分のみ切断して示している。また、図8は、第二実施形態のリニアガイド装置の冷却路20を説明する側面図であり、図9は、図8のリニアガイド装置のC−C断面図である。なお、第二実施形態のリニアガイド装置の構成及び作用・効果は、第一実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0028】
リニアガイド装置のスライダ本体2Aには、第一実施形態と同様に、転動体転動路14内の転動体3の転動により発生する熱を吸収する冷却流体(図示せず)が流れる冷却路20が設けられている。この冷却路20は、スライダ本体2Aを軸方向に貫通する貫通孔の両端を閉塞部材で閉塞してなり、転動体転動路14,14と平行に延びている。
第二実施形態においては、冷却路20は、スライダ本体2Aの上部の肉厚部分の左右方向中央部付近(転動体転動路14,14の上方)に設けられている。このように、第一戻し路13やねじ8や前記別部材の取付穴と干渉しなければ、スライダ本体2Aの任意の位置に、冷却路20を自由に設けることができる。
なお、第二実施形態においては、閉塞部材として、シール部材5及びエンドキャップ2Bをスライダ本体2Aに固定するためのねじ8は用いずに、前記貫通孔の端部を塞ぐための専用の閉塞部材である埋め栓9を用いている。
【0029】
〔第三実施形態〕
図10は、第三実施形態のリニアガイド装置の冷却路20を説明する平面図である。また、図11は、第三実施形態のリニアガイド装置の冷却路20を説明する側面図であり、図12は、図11のリニアガイド装置のD−D断面図である。なお、第三実施形態のリニアガイド装置の構成及び作用・効果は、第一,第二実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同様の部分の説明は省略する。
【0030】
リニアガイド装置のスライダ本体2Aには、第一,第二実施形態と同様に、転動体転動路14内の転動体3の転動により発生する熱を吸収する冷却流体(図示せず)が流れる冷却路20が設けられている。この冷却路20は、スライダ本体2Aを軸方向と直交する方向(図2における左右方向)に貫通する貫通孔からなり、転動体転動路14,14と直角をなすように延びているが、転動体転動路14,14と干渉しないように上下方向に間隔を空けて設けられている。
第三実施形態においては、冷却路20は、スライダ本体2Aの上部の肉厚部分の軸方向中央部付近に設けられている。このように、第一戻し路13やねじ8や前記別部材の取付穴と干渉しなければ、スライダ本体2Aの任意の位置に、冷却路20を自由に設けることができる。
【0031】
また、第三実施形態においては、冷却路20の端部がスライダ本体2Aの袖部6の左右の外側面にそれぞれ開口しているので、両端の開口部が導入口21及び排出口22を構成する。
なお、前述した第一〜第三実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は第一〜第三実施形態に限定されるものではない。例えば、第一〜第三実施形態においては、冷却路20を転動体転動路14と平行又は直交する方向に配したが、転動体転動路14に対して斜め方向に冷却路20を配してもよい。また、転動体転動路14と平行な冷却路20(第一,第二実施形態)と転動体転動路14と直交する冷却路20(第三実施形態)との両方を、スライダ本体2Aに設けてもよい。
【0032】
また、冷却流体の種類は、熱の吸収が効率良く行われるならば特に限定されるものではなく、液体でも気体でもよい。例えば、水,水溶液,アルコール類,油類等の液体状の冷媒や、空気,窒素等のガスが好適である。また、冷却流体の温度は、速度,荷重等のリニアガイド装置の使用条件に応じて適宜設定すればよく、例えば20〜25℃程度の室温でもよいし、例えば0〜15℃程度の冷温でもよい。冷却流体の温度を冷温とする場合には、冷却流体を冷却する冷却装置を、ポンプに組み合わせて用いればよい。すなわち、冷却装置で冷却した冷却流体を、ポンプで冷却路20に送り込むようにすればよい。
【0033】
さらに、本実施形態においては、冷却流体を冷却路20に送り込んでリニアガイド装置を冷却したが、冷却路20を利用することにより、逆にリニアガイド装置を加温することも可能である。例えば、リニアガイド装置の周辺環境が低温で、リニアガイド装置を潤滑する潤滑剤の硬度が高まって粘性抵抗が大きくなってしまうような場合には、加温した流体を冷却路20に送り込めば、潤滑剤の温度を上昇させることができる。そうすれば、潤滑剤の硬度が高まることが抑制されるので、案内レール1に対するスライダ2の摺動抵抗が適切なレベルに保たれる。よって、負荷の上昇を伴うことなく、リニアガイド装置を駆動することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 案内レール
2 スライダ
2A スライダ本体
2B エンドキャップ
3 転動体
8 ねじ
9 埋め栓
10 転動体転動溝
11 転動体転動溝
13 第一戻し路
14 転動体転動路
15 第二戻し路
16 転動体戻し路
20 冷却路
21 導入口
22 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる転動体軌道面を有する案内レールと、前記案内レールの転動体軌道面に対向する転動体軌道面を有するとともに軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、前記案内レールの転動体軌道面及び前記スライダの転動体軌道面の間に形成される転動体転動路内に転動自在に配された複数の転動体と、を備えるリニアガイド装置の前記スライダに、
前記転動体転動路内の前記転動体の転動により発生する熱を吸収する冷却流体が流れる冷却路と、前記冷却路に前記冷却流体を導入する導入口と、前記冷却路から前記冷却流体を排出する排出口と、を設け、
前記冷却流体を前記導入口に送る冷却流体導入手段を、前記導入口に直接接続したことを特徴とするリニアガイド装置の冷却構造。
【請求項2】
前記冷却路を前記転動体転動路に平行に配したことを特徴とする請求項1に記載のリニアガイド装置の冷却構造。
【請求項3】
前記冷却路は、前記スライダを軸方向に貫通する貫通孔の両端を閉塞部材で閉塞してなることを特徴とする請求項2に記載のリニアガイド装置の冷却構造。
【請求項4】
前記冷却路を前記転動体転動路と直角をなすように配したことを特徴とする請求項1に記載のリニアガイド装置の冷却構造。
【請求項5】
前記冷却路は、前記スライダを軸方向と直交する方向に貫通する貫通孔からなることを特徴とする請求項4に記載のリニアガイド装置の冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−233522(P2012−233522A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101824(P2011−101824)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】