説明

リニアガイド装置

【課題】スライダのサイズが小さく、且つ、保持器の湾曲を抑制するためのねじ部材と転動体戻し路を構成する管状部材との干渉がないリニアガイド装置を提供する。
【解決手段】ころ3を軸方向に沿って案内する保持器15の軸方向中央部又は軸方向中央近傍部が、保持器15の湾曲を抑制するように、スライダ本体2Aの腕部6にねじ留めされている。腕部6の内側面と外側面とを貫通するねじ穴30が形成されており、ねじ留めのためのボルト34がねじ穴30に挿通されている。ねじ穴30は、隣接する直線状路14の間を通るとともに、直線状路14を構成する管状部材22が挿入される孔20と一部分が重複している。管状部材22の外周面の前記重複部分に対応する位置には、ボルト34との干渉を避けるための凹み部22aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリニアガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリニアガイド装置の例を、図6,7を参照しながら説明する。図6は、リニアガイド装置を軸方向から見た図であるが、右側半分は正面図であり、左側半分は軸方向に直交する平面で切断した場合の断面図である。また、図7は、管状部材122及びねじ穴130の周辺部分を示すスライダ102の部分断面図である。
軸方向に延びる断面形状略角形の案内レール101の上に、断面形状略コ字状のスライダ102が軸方向に移動可能に組み付けられている。この案内レール101の左右両側面101a,101aには、軸方向に延びる上下2つの傾斜面が略ハ字状に形成されていて、左右合計4つの傾斜面はそれぞれ転動体軌道面110をなしている。
【0003】
また、スライダ102は、スライダ本体102Aと、その軸方向両端部に着脱可能に取り付けられたエンドキャップ102Bと、で構成されており、スライダ本体102Aの左右両腕部106,106の内側面には、案内レール101の転動体軌道面110,110,110,110に対向する傾斜面状の転動体軌道面111,111,111,111が形成されている。
【0004】
そして、案内レール101の転動体軌道面110,110,110,110とスライダ102の転動体軌道面111,111,111,111との間に、断面形状略矩形の転動体転動路113,113,113,113が形成されていて、これらの転動体転動路113,113,113,113は軸方向に延びている。転動体転動路113,113,113,113内には、転動体である複数の円筒ころ103が転動自在に装填されていて、これらの円筒ころ103の転動を介してスライダ102が案内レール101に沿って軸方向に移動するようになっている。
【0005】
さらに、スライダ102は、スライダ本体102Aの左右両腕部106,106の肉厚部分の上部及び下部に、転動体転動路113,113,113,113と平行をなして軸方向に貫通する断面略矩形の直線孔からなる直線状路114,114,114,114を備えている。すなわち、両腕部106に形成された軸方向に延びる孔120内に、円筒ころ103の形状に沿う断面形状の内面を有する管状部材122が挿入されており、この管状部材122の内面で形成される直線孔により直線状路114が構成されている。
【0006】
一方、エンドキャップ102Bは、例えば樹脂材料の射出成形品からなり、断面形状が略コ字状に形成されている。また、エンドキャップ102Bの裏面の左右両側には、断面形状略矩形の半ドーナツ状の湾曲路(図示せず)が上下二段に形成されている。このエンドキャップ102Bをスライダ本体102Aに取り付けると、前記湾曲路によって転動体転動路113と直線状路114とが連通される。これら直線状路114と両端の湾曲路とで、円筒ころ103を転動体転動路113の終点から始点へ送る転動体戻し路が構成され、転動体転動路113と前記転動体戻し路とで、略環状の転動体循環路が案内レール101を挟んで左右両側に形成される。
【0007】
案内レール101に組みつけられたスライダ102が案内レール101に沿って軸方向に移動すると、転動体転動路113内に装填されている円筒ころ103は、転動体転動路113内を転動しつつ案内レール101に対してスライダ102と同方向に移動する。そして、円筒ころ103が転動体転動路113の終点に達すると、転動体転動路113からすくい上げられ湾曲路へ送られる。湾曲路に入った円筒ころ103はUターンして直線状路114に導入され、直線状路114を通って反対側の湾曲路に至る。ここで再びUターンして転動体転動路113の始点に戻り、このような転動体循環路内の循環を無限に繰り返す。
【0008】
このリニアガイド装置には、軸方向に延びる断面略三角形状の柱状部材である保持器115が備えられている。この保持器115には、円筒ころ103の一端面に接して円筒ころ103を軸方向に案内する案内面115a,115aが軸方向に沿って形成されている。一方、スライダ本体102Aには、軸方向に沿って延びる案内面119が形成されており、案内面119によって円筒ころ103の他端面が軸方向に沿って案内されるようになっている。したがって、転動体転動路113内の円筒ころ103は、両案内面115a,119の間に介在されていて、両案内面115a,119によって軸方向に沿って案内される。
【0009】
また、このリニアガイド装置においては、保持器115の湾曲を防止するために、保持器115の軸方向中央近傍部がスライダ本体102Aにねじ留めされている(図7を参照)。すなわち、スライダ本体102Aの腕部106に、その内側面と外側面とを連通する(すなわち、軸方向に直交する方向(図6,7では左右方向)に貫通する)ねじ穴130が設けられているとともに、保持器115の軸方向中央近傍部にも、軸方向に直交する方向(図6,7では左右方向)に貫通するねじ穴132が設けられていて、これら両ねじ穴130,132に挿通されたボルト134の先端にナット136が取り付けられている。これにより、保持器115の軸方向中央近傍部がスライダ本体102Aの腕部106の内側面に密着するので、保持器115の湾曲が防止される。
【0010】
スライダ本体102Aのねじ穴130は、通常は腕部106の肉厚部分に形成されている上下2つの直線状路114の間に形成される。通常のサイズのリニアガイド装置であれば、特に問題は生じないが、小型のリニアガイド装置でスライダ102のサイズが非常に小さい場合(例えば、スライダ102の高さが25mm以下)は、上下2つの直線状路114の間隔が非常に小さいので、ねじ穴130と管状部材122が挿入される孔120とが一部分で重複してしまい、その結果、ボルト134と管状部材122とが干渉してしまうおそれがあった(図7を参照)。
このような問題点を解決する方法としては、上下2つの直線状路114の間隔を大きくする方法と、ねじ穴130の直径を小さくする方法とが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−248637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、スライダ102のサイズが非常に小さい場合に、直線状路114の間隔を大きくすると、スライダ本体102Aの腕部106の肉厚部分に、肉厚の薄い部分が発生してしまうおそれがあった。そのため、直線状路114の間隔を大きくする方法の採用は困難であった。
また、スライダ102のサイズが非常に小さい場合には、ねじ穴130の直径を非常に小さくする必要があるが、そのような小さいねじ穴に適合するボルトを安定的に入手することは容易ではないことに加えて、コストアップの要因となるという問題があった。
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、スライダのサイズが小さく、且つ、保持器の湾曲を抑制するためのねじ部材と転動体戻し路を構成する管状部材との干渉がないリニアガイド装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明の態様は、次のような構成からなる。すなわち、本発明の一態様に係るリニアガイド装置は、軸方向に延びる転動体軌道面を有する案内レールと、前記案内レールの転動体軌道面に対向する転動体軌道面を有するとともに軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、前記案内レールの転動体軌道面及び前記スライダの転動体軌道面の間に形成される転動体転動路内に転動自在に配された複数のころと、前記ころを前記転動体転動路の終点から始点へ送る転動体戻し路と、を備えるとともに、以下の10コの条件を満たすことを特徴とする。
【0014】
条件A:前記案内レールは断面形状略角形をなしており、軸方向に延びる4つの外面のうち平行な2つの外面のそれぞれに、複数の前記転動体軌道面が平行をなして形成されている。
条件B:前記スライダは、軸方向に延びる平板部と該平板部の両側部からそれぞれ同一方向に延びる腕部とからなって断面形状略コ字状をなしており、前記両腕部の間に前記案内レールを挟むように前記案内レールに取り付けられている。
【0015】
条件C:前記スライダの前記両腕部の内側面に、前記案内レールの転動体軌道面と同数の前記転動体軌道面が平行をなして形成されている。
条件D:前記転動体戻し路は、軸方向に延びる第一戻し路と、前記第一戻し路と前記転動体転動路とを連通する湾曲状の第二戻し路と、で構成され、前記転動体転動路と同数設けられており、前記第一戻し路は前記腕部の内部に形成されている。
【0016】
条件E:前記ころの形状に沿う断面形状の内面を有する管状部材が、前記腕部に形成された軸方向に延びる孔内に挿入されており、前記内面で形成される直線孔により前記第一戻し路が構成されている。
条件F:前記転動体転動路内の前記ころの一端面を軸方向に沿って案内する保持器が、前記腕部の内側面に沿うように前記スライダに取り付けられている。
【0017】
条件G:前記保持器の軸方向中央部又は軸方向中央近傍部は、前記保持器の湾曲を抑制するように、前記腕部にねじ留めされている。
条件H:前記腕部の内側面と外側面とを貫通するねじ穴が形成されており、前記ねじ留めのためのねじ部材が前記ねじ穴に挿通されている。
条件I:前記ねじ穴は、隣接する前記第一戻し路同士の間を通るとともに、前記管状部材が挿入される前記孔と一部分が重複している。
条件J:前記管状部材の外周面の前記重複部分に対応する位置には、前記ねじ部材との干渉を避けるための凹み部が形成されている。
このような本発明の一態様に係るリニアガイド装置においては、前記凹み部は、前記管状部材の外周面の周方向に延びる溝であり、該溝は前記管状部材の外周面の周方向全体又は一部分に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のリニアガイド装置は、転動体戻し路の第一戻し路を構成する管状部材の外周面に、凹み部が形成されているので、スライダのサイズが小さい場合であっても、保持器の湾曲を抑制するためのねじ部材と管状部材との干渉が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るリニアガイド装置の一実施形態の構造を示す斜視図である。
【図2】図1のリニアガイド装置を軸方向から見た図である。
【図3】図1のリニアガイド装置の転動体循環路を示す部分断面図である。
【図4】図1のリニアガイド装置の要部を説明するスライダの部分断面図である。
【図5】管状部材の外周面に形成された凹み部を説明する図である。
【図6】従来のリニアガイド装置を軸方向から見た図である。
【図7】従来のリニアガイド装置の要部を説明するスライダの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るリニアガイド装置の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係るリニアガイド装置の一実施形態の構造を示す斜視図である。また、図2は、図1のリニアガイド装置を軸方向から見た図であるが、右側半分は正面図であり、左側半分は軸方向に直交する平面で切断した場合の断面図である。さらに、図3は、図1のリニアガイド装置の転動体循環路を示す部分断面図(軸方向に沿う水平面で切断した場合の断面図)である。さらに、図4は、管状部材22及びねじ穴30の周辺部分を示すスライダ2の部分断面図である。さらに、図5は、管状部材22の外周面に形成された凹み部22aを説明する図である。
【0021】
なお、これらの各図においては、同一又は相当する部分には、同一の符号を付してある。また、これ以降の説明において「断面」と記した場合は、特に断りがない限り、軸方向に直交する平面で切断した場合の断面を意味する。さらに、これ以降の説明における上,下,左,右等の方向を示す用語は、特に断りがない限り、説明の便宜上、図2におけるそれぞれの方向を意味するものである。
【0022】
軸方向に延びる断面形状略角形の案内レール1の上に、断面形状略コ字状のスライダ2が軸方向に移動可能に組み付けられている。この案内レール1は、軸方向両端面の他に、軸方向に延びる4つの外面を有するが、前記4つの外面のうち平行をなす左右両側面1a,1aのそれぞれには、軸方向に延びる凹部がそれぞれ形成されている。そして、それら凹部内には、軸方向に延びる上下2つの傾斜面が略ハ字状にそれぞれ形成されていて、左右合計4つの傾斜面はそれぞれ転動体軌道面10をなしている。
【0023】
また、スライダ2は、案内レール1が有する前記4つの外面のうち上面1bに沿う平板部7と、平板部7の左右両側部からそれぞれ下方に延び側面1aに沿う2つの腕部6,6と、からなり、平板部7と腕部6,6とのなす角度は直角であるため、スライダ2の断面形状は略コ字状をなしている。そして、スライダ2は、両腕部6,6の間に案内レール1を挟むようにして、案内レール1に移動可能に取り付けられている。
【0024】
このようなスライダ2は、スライダ本体2Aと、その軸方向両端部に着脱可能に取り付けられたエンドキャップ2B,2Bと、で構成されている。さらに、スライダ2の両端部(各エンドキャップ2Bの端面)には、案内レール1とスライダ2との間の隙間の開口をシールするサイドシール5,5が装着されており、スライダ2の下部には、案内レール1とスライダ2との間の隙間の開口をシールするアンダーシール(図示せず)が装着されている。
【0025】
さらに、スライダ本体2Aの左右両腕部6,6の内側面には、軸方向に延びる凸部が、案内レール1に向かって突出するように形成されている。そして、それら凸部上には、軸方向に延びる上下2つの傾斜面が略ハ字状にそれぞれ形成されていて、左右合計4つの傾斜面は、それぞれ案内レール1の転動体軌道面10,10,10,10に対向する転動体軌道面11,11,11,11をなしている。すなわち、案内レール1の転動体軌道面10とスライダ2の転動体軌道面11との数は同数である。
【0026】
そして、案内レール1の転動体軌道面10,10,10,10とスライダ2の転動体軌道面11,11,11,11との間に、断面形状略矩形の転動体転動路13,13,13,13がそれぞれ形成されていて、これらの転動体転動路13,13,13,13は軸方向に延びている。なお、案内レール1及びスライダ2が備える転動体軌道面10,11の数はそれぞれ複数であればよく、片側二列に限らず片側三列などであってもよい。
この転動体転動路13内には、転動体である多数の円筒ころ3が転動自在に装填されていて、これらの円筒ころ3の転動を介してスライダ2が案内レール1に沿って軸方向に移動するようになっている。なお、ころの種類は円筒ころに限定されるものではなく、円すいころ,針状ころ等の他種のころも使用可能である。
【0027】
さらに、スライダ2は、スライダ本体2Aの左右両腕部6,6の肉厚部分の上部及び下部に、転動体転動路13,13,13,13と平行をなして軸方向に貫通する断面形状略矩形の直線孔からなる直線状路14,14,14,14を備えている。すなわち、両腕部6に形成された軸方向に延びる孔20内に、円筒ころ3の形状に沿う断面形状の内面を有する管状部材22が挿入されており、この管状部材22の内面で形成される直線孔により直線状路14が構成されている。
【0028】
一方、エンドキャップ2Bは、例えば樹脂材料の射出成形品からなり、断面形状が略コ字状に形成されている。また、エンドキャップ2Bの裏面(スライダ本体2Aとの当接面)の左右両側には、断面形状略矩形の湾曲路16(半ドーナツ形状)が上下二段に形成されている。このエンドキャップ2Bをスライダ本体2Aに取り付けると、湾曲路16によって転動体転動路13と直線状路14とが連通される。
【0029】
これら直線状路14と両端の湾曲路16,16とで、円筒ころ3を転動体転動路13の終点から始点へ送る転動体戻し路17が構成され(転動体戻し路17は、転動体転動路13と同数設けられている)、転動体転動路13と転動体戻し路17とで、略環状の転動体循環路が構成される。そして、この略環状の転動体循環路は、案内レール1を挟んで左右両側に形成される。なお、直線状路14が本発明の構成要件である第一戻し路に相当し、湾曲路16が本発明の構成要件である第二戻し路に相当する。
【0030】
案内レール1に組みつけられたスライダ2が案内レール1に沿って軸方向に移動すると、転動体転動路13内に装填されている円筒ころ3は、転動体転動路13内を転動しつつ案内レール1に対してスライダ2と同方向に移動する。そして、円筒ころ3が転動体転動路13の終点に達すると、転動体転動路13からすくい上げられ湾曲路16へ送られる。湾曲路16に入った円筒ころ3はUターンして直線状路14に導入され、直線状路14を通って反対側の湾曲路16に至る。ここで再びUターンして転動体転動路13の始点に戻り、このような転動体循環路13内の循環を無限に繰り返す。
【0031】
このリニアガイド装置には、軸方向に延びる断面略三角形状の柱状部材である保持器15が備えられている。この保持器15は、例えばエンドキャップ2Bに直接固定されることにより、腕部6の内側面に沿うようにスライダ2に取り付けられている。例えば、エンドキャップ2Bに設けた凸部(図示せず)と保持器15の両端部に設けた凹部(図示せず)とを嵌め合わせることにより、保持器15をエンドキャップ2Bに固定するとよい。反対に、エンドキャップ2Bに設けた凹部と保持器15の両端部に設けた凸部とを嵌め合わせてもよい。
【0032】
この保持器15には、円筒ころ3の一端面に接して円筒ころ3を軸方向に案内する案内面15a,15aが軸方向に沿って形成されている。一方、スライダ本体2Aには、軸方向に沿って延びる案内面19が形成されており、案内面19によって円筒ころ3の他端面が軸方向に沿って案内されるようになっている。したがって、転動体転動路13内の円筒ころ3は、両案内面15a,19の間に介在されていて、両案内面15a,19によって軸方向に沿って案内される。
【0033】
また、このリニアガイド装置においては、保持器15の湾曲を抑制するために、保持器15の軸方向中央部又は軸方向中央近傍部がスライダ本体2Aの腕部6にねじ留めされている(図4を参照)。すなわち、スライダ本体2Aの腕部6の軸方向中央部又は軸方向中央近傍部に、その内側面と外側面とを連通する(すなわち、軸方向に直交する方向(図2,4では左右方向)に貫通する)ねじ穴30が設けられているとともに、保持器15の軸方向中央部又は軸方向中央近傍部にも、軸方向に直交する方向(図2,4では左右方向)に貫通するねじ穴32が設けられていて、これら両ねじ穴30,32に挿通されたボルト34(本発明の構成要件であるねじ部材に相当する)の先端にナット36を取り付けることにより、保持器15が腕部6にねじ留めされている。これにより、保持器15の軸方向中央部又は軸方向中央近傍部がスライダ本体2Aの腕部6の内側面に密着するので、保持器15の湾曲が防止される。
【0034】
スライダ本体2Aのねじ穴30は、腕部6の肉厚部分に形成されている上下2つの直線状路14の間を通るように形成されている。このとき、小型のリニアガイド装置でスライダ2のサイズが非常に小さい場合(例えば、スライダ2の高さが25mm以下)は、上下2つの直線状路14の間隔が非常に小さいので、ねじ穴30と管状部材22が挿入される孔20とが一部分で重複している。したがって、このような孔20との重複部分を有するねじ穴30にボルト34を挿入すると、ボルト34と管状部材22とが干渉してしまうおそれがあった。
【0035】
しかしながら、本実施形態のリニアガイド装置においては、上下2つの管状部材22,22の外周面の前記重複部分に対応する位置(すなわち、軸方向位置及び周方向位置が前記重複部分と同一)に、凹み部22aが形成されているので、ねじ穴30に挿通されたボルト34は、前記重複部分において凹み部22a内を通る。したがって、スライダ2のサイズが非常に小さい場合であっても、ボルト34と管状部材22との干渉が避けられる(図5を参照)。
【0036】
また、凹み部22aが形成されているので、ボルト34と管状部材22との干渉を避けるために、上下2つの直線状路14の間隔を大きくする必要がない。よって、スライダ2のサイズ,形状等の制限から直線状路14の間隔を大きくすることができない場合であっても、ボルト34と管状部材22との干渉が避けられる。
さらに、凹み部22aが形成されているので、ねじ穴30の直径を小さくし、そのような小さいねじ穴に適合するボルトを用いる必要がない。よって、一般的なサイズのボルトを用いることができるから、ボルトを安定的に入手することが容易であるとともに、リニアガイド装置の製造コストを抑えることができる。
凹み部22aが形成されることにより管状部材22の肉厚は薄くなるが、凹み部22aが形成されているのは管状部材22の外周面のうち一部であるため、凹み部22aの形成により管状部材22の機能に支障が出るおそれはほとんどない。
【0037】
なお、凹み部22aは、ボルト34と管状部材22との干渉が避けられるならば、上下2つの管状部材22,22のうち一方のみに形成されていてもよい。また、凹み部22aの形状は特に限定されるものではないが、管状部材22の外周面の周方向に延びる溝としてもよい。そして、該溝は、管状部材22の外周面の周方向全体に形成された環状溝でもよいし、管状部材22の外周面の周方向の一部分に形成された円弧状溝でもよい。ただし、管状部材22の外周面の断面形状は円形に限定されるものではなく、楕円形や多角形でもよい。
さらに、凹み部22aの大きさ、すなわち幅(軸方向長さ)及び深さ(管状部材22の径方向長さ)は、前記重複部分の軸方向長さ及び上下方向長さよりも大きいことが好ましい。
【符号の説明】
【0038】
1 案内レール
1a 側面
1b 上面
2 スライダ
2A スライダ本体
2B エンドキャップ
3 円筒ころ
6 腕部
7 平板部
10 転動体軌道面
11 転動体軌道面
13 転動体転動路
14 直線状路
15 保持器
15a 案内面
16 湾曲路
17 転動体戻し路
20 孔
22 管状部材
22a 凹み部
30 ねじ穴
34 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる転動体軌道面を有する案内レールと、前記案内レールの転動体軌道面に対向する転動体軌道面を有するとともに軸方向に相対移動可能に前記案内レールに取り付けられたスライダと、前記案内レールの転動体軌道面及び前記スライダの転動体軌道面の間に形成される転動体転動路内に転動自在に配された複数のころと、前記ころを前記転動体転動路の終点から始点へ送る転動体戻し路と、を備えるとともに、以下の10コの条件を満たすことを特徴とするリニアガイド装置。
条件A:前記案内レールは断面形状略角形をなしており、軸方向に延びる4つの外面のうち平行な2つの外面のそれぞれに、複数の前記転動体軌道面が平行をなして形成されている。
条件B:前記スライダは、軸方向に延びる平板部と該平板部の両側部からそれぞれ同一方向に延びる腕部とからなって断面形状略コ字状をなしており、前記両腕部の間に前記案内レールを挟むように前記案内レールに取り付けられている。
条件C:前記スライダの前記両腕部の内側面に、前記案内レールの転動体軌道面と同数の前記転動体軌道面が平行をなして形成されている。
条件D:前記転動体戻し路は、軸方向に延びる第一戻し路と、前記第一戻し路と前記転動体転動路とを連通する湾曲状の第二戻し路と、で構成され、前記転動体転動路と同数設けられており、前記第一戻し路は前記腕部の内部に形成されている。
条件E:前記ころの形状に沿う断面形状の内面を有する管状部材が、前記腕部に形成された軸方向に延びる孔内に挿入されており、前記内面で形成される直線孔により前記第一戻し路が構成されている。
条件F:前記転動体転動路内の前記ころの一端面を軸方向に沿って案内する保持器が、前記腕部の内側面に沿うように前記スライダに取り付けられている。
条件G:前記保持器の軸方向中央部又は軸方向中央近傍部は、前記保持器の湾曲を抑制するように、前記腕部にねじ留めされている。
条件H:前記腕部の内側面と外側面とを貫通するねじ穴が形成されており、前記ねじ留めのためのねじ部材が前記ねじ穴に挿通されている。
条件I:前記ねじ穴は、隣接する前記第一戻し路同士の間を通るとともに、前記管状部材が挿入される前記孔と一部分が重複している。
条件J:前記管状部材の外周面の前記重複部分に対応する位置には、前記ねじ部材との干渉を避けるための凹み部が形成されている。
【請求項2】
前記凹み部は、前記管状部材の外周面の周方向に延びる溝であり、該溝は前記管状部材の外周面の周方向全体又は一部分に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のリニアガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−237395(P2012−237395A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107334(P2011−107334)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】