説明

リニアゲージ

【課題】測定レンジの異なるリニアゲージを小型かつ簡易に構成可能とする。
【解決手段】シャフト33をボールスプライン34で直動可能にフレーム31に支持した可動機構アッセンブリ3のスリット板ホルダ38にスリット板5を固定した上で、可動機構アッセンブリ3と、スリット板5の変位を非接触で検出するための光学、電気部材を固定した変位検出アッセンブリ1とを連結部材6を用いて連結しケース7に収容してリニアゲージを構成する。連結部材6とスリット板5の長さは、構成するリニアゲージの測定レンジに応じたスリット板5のストローク量が確保され、かつ、変位検出ブロックの変位検出範囲内にスリット板5が位置するように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被計測物の直動方向の変位を測定するリニアゲージの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リニアゲージにおいて、測定子が先端に設けられたシャフトを支持する構造として、シャフトをリニアボールベアリングを用いて支持する構造が知られている(たとえば、特許文献1)。また、リニアゲージにおける変位検出の技術として、シャフトに固定したスリット板に照射した光の反射光や透過光より、シャフトの変位の検出を行う技術も知られている(たとえば、特許文献2)。
【特許文献1】特開平8-278121号公報
【特許文献2】特開2000-193491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さて、リニアゲージは、測定レンジを大きくするためには、シャフトその他の可動部のストローク量を大きく確保する必要があるため、測定レンジの拡大とリニアゲージの小型化はトレードオフの関係にある。
このため、従来は、リニアゲージをできるだけ小型化するために、測定レンジ毎の専用の設計でリニアゲージを構成することが一般的であり、このことがリニアゲージ製作の各種負担を引き上げる一因となっていた。
そこで、本発明は、測定レンジの異なるリニアゲージを、小型かつ簡易に構成することのできるリニアゲージの構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題達成のために、本発明は、被計測物の一軸方向の変位を計測するリニアゲージとして、可動機構アッセンブリと、変位検出アッセンブリと、ゲージと、連結部材と、ケースとを備えたリニアゲージを提供する。ここで、前記可動機構アッセンブリは、フレームと、フレームに固定されたボールスプラインと、前記ボールスプラインに直動可能に支持されたシャフトと、シャフトの一端に固定された測定子と、シャフトの前記一端とは反対側の他端に固定されたゲージホルダとを備えたものであり、前記変位検出アッセンブリは、光源と投光光学系を保持したホルダと、当該ホルダに固定された、受光した光より前記投光光学系との間に配置された前記ゲージの変位を検出する検出装置が搭載された、回路基盤とを備えたものである。そして、リニアゲージは、前記可動機構アッセンブリのゲージホルダに前記ゲージを固定し、前記可動機構アッセンブリのフレームと、前記変位検出アッセンブリのホルダと回路基盤とのうちの少なくとも一方とを前記連結部材を用いて、前記ゲージの少なくとも一部が前記投光光学系と前記検出装置との間に配置されるように、連結した上で、前記ケースに収容することにより構成されるものである。
【0005】
このようなリニアゲージの構造によれば、異なる測定レンジのリニアゲージを、可動機構アッセンブリと変位検出アッセンブリとを共用して、その大部分を専用設計とすることなく簡易、かつ、小型に構成することができる。
すなわち、このような構造によれば、所望の測定レンジのリニアゲージを、可動機構アッセンブリと変位検出アッセンブリとを作成するステップと、製造するリニアゲージの測定レンジに応じて選択した長さのゲージを選定し、前記可動機構アッセンブリのゲージホルダに、選定したゲージを固定するステップと、製造するリニアゲージの測定レンジに応じた前記ゲージのストローク量が確保されるように選択した長さの連結部材を用いて、前記可動機構アッセンブリのフレームと、前記変位検出アッセンブリのホルダと回路基盤とのうちの少なくとも一方とを連結した上で、前記ケースに収容するステップとによって製造することができる。ただし、製造するリニアゲージの測定レンジに応じたゲージの長さの選択は、前記連結部材による連結を行った状態で、前記ゲージの少なくとも一部が前記投光光学系と前記検出との間に配置されるようにゲージの長さを選択することにより行うものとする。
【発明の効果】
【0006】
以上のように、本発明によれば、測定レンジの異なるリニアゲージを簡易に構成することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本実施形態に係るリニアゲージは、変位検出アッセンブリ、連結部材、可動機構アッセンブリ、ケース、スリット板とより構成される。
そして、変位検出アッセンブリと、可動機構アッセンブリとは、測定レンジの異なるリニアゲージに共用され、連結部材、ケース、スリット板は、測定レンジ毎にそれぞれ専用のものが用いられる。
まず、変位検出アッセンブリの構成について説明する。
図1a1に変位検出アッセンブリの分解図を、図1a2に変位検出アッセンブリの組立図を示す。
図示するように、変位検出アッセンブリは、光学ホルダ11、LED12、レンズ13、スペーサ14、固定プレート15、受光素子や信号処理回路を搭載した回路基盤16、固定スリット板17、固定ホルダ18とを有する。
そして、光学ホルダ11に設けられた孔部にLED12とレンズ13とスペーサ14とを所定の順序で挿入した上で、固定プレート15を光学ホルダ11にネジ19を用いて固定することにより、LED12とレンズ13とは所定の間隔をおいて光学ホルダ11に組み付けられる。
【0008】
また、固定スリット板17は、固定ホルダ18を回路基盤16にネジ20によって固定することにより、回路基盤16に対して固定される。また、このネジ20によって、併せて、LED12とレンズ13とが組み付けられた光学ホルダ11を回路基盤16に固定することにより、変位検出アッセンブリの全体が一体化される。
【0009】
ここで、光学ホルダ11は、回路基盤16に固定された状態で、固定スリット板17と、光学ホルダ11に固定されたレンズ13との間に、間隙が生じるよう形状を有しており、図1bに示すように、LED12から出射された光はレンズ13、固定スリット板17とレンズ13との間の間隙21、固定スリット板17を順次通過して、回路基盤16の受光素子に入射する。
【0010】
以上、変位検出アッセンブリについて説明した。
次に、可動機構アッセンブリの構成について説明する。
図2a1に可動機構アッセンブリの分解図を、図2a2に可動機構アッセンブリの組立図を示す。
図示するように、可動機構アッセンブリは、フレーム31と、測定子32、シャフト33と、シャフト33の軸回りの回動を抑止し軸方向の直動を案内するボールスプライン34と、取付ステム35、ステム蓋36、防塵カバー37、スリット板ホルダ38、バネ39、ネジ40とを有する。なお、ボールスプライン34には、シャフト33がボールスプライン34から抜け落ちないようにするための抜け止めも設けられている。
【0011】
そして、測定子32はシャフト33の一端に固定される。また、測定子32が固定されたシャフト33が挿入されたボールスプライン34は、取付ステム35内に収容され、取付ステム35内にステム蓋36によって固定される。また、シャフト33の軸方向に伸縮自在な防塵カバー37の両端が測定子32とステム蓋36に各々固定され、当該防塵カバー37によって測定子32とステム蓋36の間のシャフト33が覆われる。
【0012】
そして、ボールスプライン34を収容した取付ステム35は、フレーム31に設けられた孔に、測定子32が設けられている側と反対側の端が挿入された形態で、ネジ40によってフレーム31に固定される。また、図2bに示すように、シャフト33の測定子32が固定された端と逆側の端に、スリット板ホルダ38が接着剤などにより固定されると共に、バネ39の両端が、フレーム31とスリット板ホルダ38とに各々固定され、これにより、スリット板ホルダ38は、測定子32方向に付勢される。
【0013】
ここで、このような可動機構アッセンブリの構成によれば、図2cに示すように、一端に測定子32が他端にスリット板ホルダ38が固定されたシャフト33を、バネ39による測定子32方向の付勢力を与えつつ、シャフト33の軸方向の直動のみが許容されるようにフレーム31に固定することができる。
【0014】
以上、可動機構アッセンブリについて説明した。
次に以上のような変位検出アッセンブリと可動機構アッセンブリを用いたリニアゲージの構造について説明する。
図3a1に比較的測定レンジの小さいリニアゲージの分解図を、図3a2に比較的測定レンジの小さいリニアゲージの組立図を示す。また、図3b1に比較的測定レンジの大きいリニアゲージの分解図を、図3b2に比較的測定レンジの大きいリニアゲージの組立図を示す。
図示するように、リニアゲージは、可動機構アッセンブリ3のスリット板ホルダ38にスリット板5を固定した上で、可動機構アッセンブリ3のフレーム31と、変位検出アッセンブリ1の光学ホルダ11とを連結部材6を用いて連結し、ケース7に収容して構成する。
【0015】
ただし、連結部材6は、測定レンジが大きいほど長いものを用い、可動機構アッセンブリ3と変位検出アッセンブリ1との間の間隔が大きくなり、リニアゲージの測定レンジに応じたスリット板5のストローク量が確保されるようにする。また、図3b1、b2に示すように、測定レンジを大きくする場合は、回路基盤16とフレーム31とを連結する連結部材6も併用するようにしてもよい。
【0016】
次に、スリット板5の長さは、測定レンジに合わせて、図3c1、c2に測定レンジの小さいリニアゲージ(図3a1、a2のリニアゲージ)について、図3d1、d2に測定レンジの大きいリニアゲージ(図3b1、b2のリニアゲージ)について示すように、スリット板5の一部が、上述した固定スリット板17とレンズ13との間の間隙21に挿入され、シャフト33の直動に伴ってスリット板5が、固定スリット板17とレンズ13との間で直動するように、測定レンジが大きいほど長いものを用いる。
【0017】
さて、ここで、スリット板5には複数のスリットが設けられており、当該スリットで、スリット板5を透過する光を、スリット板5の変位量に応じて空間的にエンコードすることによりゲージの役割を果たす。また、固定スリット板17には、スリット板5で空間的にエンコードされた後に固定スリット板17を透過する光を、スリット板5の変位量を強度で、スリット板5の移動方向を位相で表す光にデコードするための複数のスリットが設けられている。
そして、回路基盤16に搭載された信号処理回路は、LED12から出射され、スリット板5、固定スリット板17を透過した光を、受光素子で検出し、検出した光よりスリット板5の移動速度や移動方向を検出する。
したがって、以上のような構成によれば、測定子32を測定対象物に当接させると、測定対象物の測定子32との当接箇所のシャフト33の軸方向の変位に倣ってスリット板5がシャフト33の軸方向に変位し、この変位が、回路基盤16に搭載された信号処理回路で測定されることになる。
【0018】
そして、このようにスリット板5をスリット板ホルダ38に固定し、連結部材6を用いて連結した可動機構アッセンブリ3と可動機構アッセンブリ3とを、これらを収容可能なできるだけ小さなサイズのケース7に収容してリニアゲージの全体が一体として構成される。
【0019】
以上、本発明の実施形態について説明した。
以上のように、本実施形態によれば、異なる測定レンジのリニアゲージを、可動機構アッセンブリ3と変位検出アッセンブリ1とを共用して、その大部分を専用設計とすることなく簡易、かつ、小型に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るリニアゲージの変位検出アッセンブリの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るリニアゲージの可動機構アッセンブリの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るリニアゲージの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1…変位検出アッセンブリ、3…可動機構アッセンブリ、5…スリット板、6…連結部材、7…ケース、11…光学ホルダ、12…LED、13…レンズ、14…スペーサ、15…固定プレート、16…回路基盤、17…固定スリット板、18…固定ホルダ、31…フレーム、32…測定子、33…シャフト、34…ボールスプライン、35…取付ステム、36…ステム蓋、37…防塵カバー、38…スリット板ホルダ、39…バネ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測物の一軸方向の変位を計測するリニアゲージであって、
可動機構アッセンブリと、変位検出アッセンブリと、ゲージと、連結部材と、ケースとを有し、
前記可動機構アッセンブリは、フレームと、フレームに固定されたボールスプラインと、前記ボールスプラインに直動可能に支持されたシャフトと、シャフトの一端に固定された測定子と、シャフトの前記一端とは反対側の他端に固定されたゲージホルダとを有し、
前記変位検出アッセンブリは、光源と投光光学系を保持したホルダと、当該ホルダに固定された、受光した光より前記投光光学系との間に配置された前記ゲージの変位を検出する検出装置が搭載された回路基盤とを有し、
前記リニアゲージは、前記可動機構アッセンブリのゲージホルダに前記ゲージを固定し、前記可動機構アッセンブリのフレームと、前記変位検出アッセンブリのホルダと回路基盤とのうちの少なくとも一方とを前記連結部材を用いて、前記ゲージの少なくとも一部が前記投光光学系と前記検出装置との間に配置されるように連結した上で、前記ケースに収容することにより構成されることを特徴とするリニアゲージ。
【請求項2】
異なる測定レンジのリニアゲージを、共通の部材を用いて製造する製造方法であって、
前記共通部材として、
フレームと、フレームに固定されたボールスプラインと、前記ボールスプラインに直動可能に支持されたシャフトと、シャフトの一端に固定された測定子と、シャフトの前記一端とは反対側の他端に固定されたゲージホルダとを備えた可動機構アッセンブリと、
光源と投光光学系を保持したホルダと、当該ホルダに固定された、受光した光より前記投光光学系との間に配置された前記ゲージの変位を検出する検出装置が搭載された回路基盤とを備えた変位検出アッセンブリと、
を作成するステップと、
製造するリニアゲージの測定レンジに応じて選択した長さのゲージを選定し、前記可動機構アッセンブリのゲージホルダに、選定したゲージを固定するステップと、
製造するリニアゲージの測定レンジに応じた前記ゲージのストローク量が確保されるように選択した長さの連結部材を用いて、前記可動機構アッセンブリのフレームと、前記変位検出アッセンブリのホルダと回路基盤とのうちの少なくとも一方とを連結した上で、前記ケースに収容するステップとを有し、
製造するリニアゲージの測定レンジに応じたゲージの長さの選択は、前記連結部材による連結を行った状態で、前記ゲージの少なくとも一部が前記投光光学系と前記検出との間に配置されるようにゲージの長さを選択することにより行うことを特徴とするリニアゲージの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−25874(P2010−25874A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190487(P2008−190487)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)
【Fターム(参考)】