説明

リファマイシン誘導体

抗菌性を有するリファマイシン誘導体を含む化合物が開示され、ここで、この化合物は、以下の一般式(I):


(式中、Rは水素又はアセチルであり;R及びRは、独立して、水素、(C1−4)アルキル、ベンジルオキシ、モノ−及びジ−(C1−3)アルキルアミノ−(C1−4)アルキル、(C1−3)アルコキシ、(C1−4)アルキル、ヒドロキシ−メチル、ヒドロキシ−(C2−4)−アルキル、及びニトロからなる群より選択されるか;あるいはR及びRは、ピリジン核の連続する2つの炭素原子とともに、任意に1つ又は2つのメチル又はエチル基によって置換されたベンゼン環を形成し;かつRはヒドロキシアルキル(C1−4)である)を有する。さらに、これらの化合物を得るための方法が記載される。これらの化合物は抗菌性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、医薬組成物の分野、特に炎症性腸疾患の治療のための経口処方物の分野にある。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
リファキシミン(INN;メルクインデックス第13版(The Merck Index、XIII Ed.)、8304(非特許文献1)参照)はリファマイシン系に属する抗生物質であり、イタリア国特許IT 1154655(特許文献1)に記載され、特許請求されたピリド−イミダゾリファマイシンである。欧州特許EP 0161534(特許文献2)には、リファマイシンO(メルクインデックス第13版(The Merck Index、XIII Ed.)、8301(非特許文献2))を出発物質としてリファキシミンを製造する方法が記載されている。リファキシミンの多形体(polymorphic forms)を作製するための方法は、ヴィスコミ(Viscomi)らによる米国特許出願公開第2008−0262232号公報(特許文献3)に記載されており、この文献の全内容は、言及することにより本明細書に組み入れられる。
【0003】
リファキシミンは、グラム陽性及びグラム陰性菌による急性及び慢性の腸感染を治療するため、並びに高アンモニア血症の治療における補助薬として使用されてきた。リファキシミンは、非侵襲性大腸菌株によって生じる旅行者下痢症に対する治療のためにXIFAXAN(商標)として米国において市販されている。リファキシミンはまた、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridum difficile)関連下痢、クローン病、憩室(diverticular)疾患、肝性脳症、ヘリコバクター・ピロリ根絶、感染性下痢、過敏性腸症候群、回腸嚢炎(pouchitis)、胃腸(GI)手術のための予防、小腸細菌過剰増殖(small bowel overgrowth)、旅行者下痢症及び潰瘍性大腸炎を治療するために使用されてきた。3,4−位で縮合された複素環を有するリファマイシン誘導体は、当該分野において公知である。例えば、米国特許第4,263,404号(特許文献4)及び米国特許第4,341,785号(特許文献5)には、リファマイシン及びイミダゾ−リファマイシン誘導体が記載されている。リファマイシンは抗菌性を有し、微生物培養の二次代謝産物から得られ、感染の治療、特に、センシ P(Sensi P)、Farmaco [Sci] (1959); 14: 146-7(非特許文献3)及びミトニック C.D.(Mitnick C. D.)ら、Expert Opin. Pharmacother. (2009); 10: 381-401(非特許文献4)に記載されるように、結核に有用である。近年、リファマイシン誘導体は、プレグナン受容体X(PRX)の活性化剤として同定された。Natl. Acad. Sci. USA (1998), 95: 12208-12213(非特許文献5)に記載されるように、プレグナン受容体X(PRX)は核内受容体のファミリーの一員であり、化学的刺激に対する哺乳類の応答に関与する代謝酵素発現を調節する。
【0004】
リファマイシンは、プレロング,V(Prelong, V.)ら、Helv. Chim. Acta (1973); 56: 2279(非特許文献6)に記載されるように、脂肪族環とともに環状構造を形成する1又は複数の縮合芳香族環から構成される化学構造によって特徴付けられる。リファマイシン類似体は、センシ P(Sensi P)、Research Progresss in Organic Biological and Medicinal Chemistry (1964), 1, 337-421(非特許文献7)に記載されているように、この分子の芳香族又は脂肪族部分の化学修飾によって得られる。
【0005】
マルチネリ E(Martinelli E)ら、J. Antibiot. 31(10), 949, 1978(非特許文献8)には、リファマイシンの産生元(producer)であるNocardia mediterraneaの変異から得られたリファマイシンRが記載されているが、この化合物の生物活性は報告されていない。リファマイシンは、結核治療において用いられる抗生物質であり、リファマイシンに対していかなる抵抗性(抗生物質に対する抵抗性)も有しない新たな抗生物質を得ることが重要である。本発明はこの問題を解決し、抗生物質活性(antibiotic activity)を有する新たな置換リファキシミンをリファマイシンOから得たが、その活性はリファマイシンOとは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】イタリア国特許IT 1154655
【特許文献2】欧州特許EP 0161534
【特許文献3】米国特許出願公開第2008−0262232号公報
【特許文献4】米国特許第4,263,404号
【特許文献5】米国特許第4,341,785号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】メルクインデックス第13版(The Merck Index、XIII Ed.)、8304
【非特許文献2】メルクインデックス第13版(The Merck Index、XIII Ed.)、8301
【非特許文献3】Farmaco [Sci] (1959); 14: 146-7
【非特許文献4】Expert Opin. Pharmacother. (2009); 10: 381-401
【非特許文献5】Natl. Acad. Sci. USA (1998), 95: 12208-12213
【非特許文献6】Helv. Chim. Acta (1973); 56: 2279
【非特許文献7】Research Progresss in Organic Biological and Medicinal Chemistry (1964), 1, 337-421
【非特許文献8】J. Antibiot. 31(10), 949, 1978
【発明の概要】
【0008】
(発明の説明)
本明細書は、式Iの化合物を開示する。
【0009】
【化1】

【0010】
式中、Rは水素又はアセチルであり、
及びRは、各々独立して、水素、(C1−4)アルキル、ベンジルオキシ、モノ−又はジ−(C1−3)アルキルアミノ(C1−4)アルキル、(C1−3)アルコキシ−(C1−4)アルキル、ヒドロキシ−メチル、ヒドロキシ−(C2−4)−アルキル及びニトロからなる群より選択されるか;あるいはR及びRは、ピリジン環の連続する(又は隣り合う)2つの炭素原子とともに、無置換のベンゼン環又は1つもしくは2つのメチルもしくはエチル基によって置換された一もしくは二置換のベンゼン環を形成し;かつ
はヒドロキシアルキル(C1−4)である。
【0011】
いくつかの実施形態において、Rはアセチル基であり、R及びRは独立して水素又はメチルであり、かつRはヒドロキシアルキル(C1−4)である。他の実施形態において、Rはアセチル基であり、Rは水素であり、Rはメチルであり、かつRはヒドロキシメチルである。
【0012】
他の態様において、本明細書は、式IIの化合物:
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、Rは水素又はアセチルであり、及びRはヒドロキシアルキル(C1−4)である)を製造するための方法を開示し、この方法は、
リファマイシンB誘導体の産生に適した微生物水溶液と栄養剤とを含む生物学的培養菌(biological culture)を得る工程;並びに
得られた培養菌を酸化剤で酸化する工程
を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、酸化剤は、亜硝酸ナトリウム、重クロム酸カリウム水溶液、過硫酸アンモニウム又は過ヨウ素酸ナトリウムの1又は複数から選択される。特定の実施形態では、Rは水素又はアセチルであり、かつRはヒドロキシアルキル(C1−4)である。さらなる実施形態では、Rはアセチルであり、かつRはヒドロキシメチルである。
【0016】
他の観点において、本明細書は、請求項1の化合物を合成するための方法を開示し、この方法は、式IIの化合物:
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、Rは水素又はアセチルであり、かつRはヒドロキシアルキル(C1−4)である)
と、式IIIの化合物:
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、R及びRは、各々独立して、水素、(C1−4)アルキル、ベンジルオキシ、モノ−又はジ−(C1−3)アルキルアミノ(C1−4)アルキル、(C1−3)アルコキシ−(C1−4)アルキル、ヒドロキシ−メチル、ヒドロキシ−(C2−4)アルキル及びニトロからなる群より選択されるか;あるいはR及びRは、ピリジン環の連続する(又は隣り合う)2つの炭素原子とともに、無置換のベンゼン環又は1つもしくは2つのメチルもしくはエチル基によって置換された一もしくは二置換のベンゼン環を形成する)
とを、有機溶媒、1より多い有機溶媒の混合物又は有機溶媒と水との混合物の存在下、雰囲気温度(又は室温)(ambient temperature)〜60℃の温度で1〜100時間反応させる工程を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、有機溶媒は、芳香族炭化水素類、脂肪族アルカノール、ハロゲン化炭化水素類、低級脂肪族酸の低級アルキルエステル、グリコール類、アセトニトリル、ジオキサン、テトラヒドロフラン及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるか、又は種々の体積比での水との混合物である。特定の実施形態では、約0.1〜約1モル当量のヨウ素又はヨウ素/酸化剤の組み合わせが、それぞれモル当量の式IIの化合物に対して用いられる。さらなる実施形態では、式IIIの化合物は2−アミノ−4−メチル−ピリジンである。
【0022】
他の態様において、本明細書は、請求項1記載の化合物を合成するための方法を開示し、この方法は、水溶液中でリファマイシンB誘導体の産生に適した微生物及び栄養剤を含む生物学的培養菌を得る工程;得られた培養菌を酸化剤で酸化して酸化生成物を得る工程;並びに前記酸化生成物と2−アミノ−ピリジン誘導体とを反応させる工程を含む。
【0023】
さらに他の観点において、本明細書は、治療的に効果のある量の式Iの化合物と1又は複数の薬学的に許容可能な成分とを組み合わせて含む医薬組成物を開示する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、抗菌剤として有用である。
【0024】
さらなる態様において、本明細書は、1もしくは複数の式Iの化合物、又は1もしくは複数の式Iの化合物と1もしくは複数の式IIの化合物との組み合わせ、及び薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物を開示する。いくつかの実施形態において、組成物は、単回投与形態(single dosage form)で投与され、他の実施形態において、組成物は、分離投与形態(又は複数回投与形態)(separate dosage form)で投与される。他の実施形態では、医薬組成物は、さらに、リファマイシン誘導体又はネオマイシンを含む。いくつかの実施形態では、リファマイシン誘導体はリファキシミンである。特定の実施形態において、式Iの化合物は、リファキシミンに対して約0.01〜100%(w/w)の割合である。
【0025】
他の観点において、本明細書は、腸関連障害の患者における細菌過剰増殖(bacterial overgrowth)を治療、予防又は緩和する方法を開示し、この方法は、治療を必要とする被験体を識別又は特定する工程と、有効量の1又は複数の式Iの化合物と1又は複数のさらなる抗生物質とをこの被験体に併用投与する工程とを含む。いくつかの実施形態では、1又は複数のさらなる抗生物質は、リファマイシン、リファキシミン又はネオマイシンの1又は複数を含む。特定の実施形態では、腸関連障害は、過敏性腸症候群、旅行者下痢症、小腸細菌過剰増殖、クローン病、慢性膵炎、膵不全、肝性脳症、憩室炎、腸炎又は大腸炎の1又は複数である。
【0026】
さらに他の態様において、本明細書は、細菌過剰増殖を低減させる腸関連障害治療の有効性を評価し、腸関連障害を治療している被験体の経過を監視(モニタリング)し、又は腸障害治療のための被験体を選択する方法を開示し、この方法は、細菌過剰増殖に起因する腸関連障害を患う被験体における細菌過剰増殖の治療前レベル(pre-treatment level)を測定する工程;治療的有効量の式Iの化合物とリファキシミンとを被験体に併用投与する工程;初期段階(initial period)の治療後の被験体における細菌過剰増殖の治療後レベル(post-treatment level)を測定する工程;並びに治療前測定と治療後測定との間の被験体における細菌過剰増殖のレベルの変化を求める工程を含む。いくつかの実施形態において、細菌過剰増殖のレベルの変化は治療の有効性を示し、細菌過剰増殖のレベルの減少は治療が有効であることを示す。又は、細菌過剰増殖のレベルの変化は、被験体が治療に対して有利な臨床的応答を有しうると考えられる指標である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、Rがアセチルであり、かつRがヒドロキシメチルである式IIの化合物のHPLCクロマトグラムを示す。
【図2】図2は、Rがアセチルであり、かつRがヒドロキシメチルである式IIの化合物のH NMRスペクトルを示す。
【図3】図3は、Rがアセチルであり、Rが水素であり、Rがメチルであり、かつRがヒドロキシメチルである式Iの化合物のHPLCクロマトグラムを示す。
【図4】図4は、Rがアセチルであり、Rが水素であり、Rがメチルであり、かつRがヒドロキシメチルである式Iの化合物のIRスペクトルを示す。
【図5】図5は、Rがアセチルであり、Rが水素であり、Rがメチルであり、かつRがヒドロキシメチルである式Iの化合物のH NMRスペクトルを示す。
【図6】図6は、Rがアセチル基であり、Rが水素であり、Rがメチルであり、かつRがヒドロキシメチルである式Iの得られた化合物の13C NMRスペクトルを示す。
【図7】図7は、Rがアセチル基であり、Rが水素であり、Rがメチルであり、かつRがヒドロキシメチルである式Iの化合物のEIMSスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
一態様において、本明細書は、式I:
【0029】
【化5】

【0030】
(式中、Rは水素又はアセチルであり;
及びRは、各々独立して、水素、(C1−4)アルキル、ベンジルオキシ、モノ−及びジ−(C1−3)アルキルアミノ−(C1−4)アルキル、(C1−3)アルコキシ、(C1−4)アルキル、ヒドロキシ−メチル、ヒドロキシ−(C2−4)アルキル及びニトロからなる群より選択されるか;あるいはR及びRは、ピリジン環の連続する2つの炭素原子とともにベンゼン環を形成し、ここで、ベンゼン環は無置換であるか、メチルもしくはエチルによって一置換もしくは二置換され;かつ
は(C1−4)ヒドロキシアルキルである)
のリファマイシン誘導体を開示する。
【0031】
式Iの化合物の一実施形態において、Rは水素又はアセチルであり、R及びRは、各々独立して、水素、(C1−4)アルキル、ベンジルオキシ、ヒドロキシ(C2−4)アルキル及びジ−(C1−3)アルキルアミノ−(C1−4)アルキルからなる群より選択されるか、あるいはR及びRは、ピリジン環の連続する2つの炭素原子とともにベンゼン環を形成し;かつRは(C1−4)ヒドロキシアルキルである。
【0032】
他の観点は、Rがアセチルであり、R及びRが、各々独立して、水素又は(C1−4)アルキルであるか、あるいはR及びRが、ピリジン環の連続する2つの炭素原子とともにベンゼン環を形成し、かつRが(C1−4)直鎖状ヒドロキシアルキルである式Iの化合物を含む。
【0033】
本明細書において使用されるように、用語「(C1−3)アルキル」、「(C2−4)アルキル」及び「(C1−4)アルキル」は、それぞれ、1〜3個又は2〜4個又は1〜4個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐鎖状アルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル又はter−ブチル)をいい、用語「(C1−3)アルコキシ」は、本質的に、メトキシ、エトキシ、プロポキシ又はイソプロポキシ基をいう。
【0034】
本明細書に提示された化合物は、得られることが所望される化合物の型(タイプ)に応じた方法に従って調製してもよい。例えば、R及びRが上記に規定される式Iの化合物は、式IIの化合物(米国特許第4,263,404号に記載される方法に類似の方法において中間生成物として得られる)と、以下に規定される式IIIの無置換又は置換2−アミノ−ピリジン化合物とを反応させることによって調製してもよい。
【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
(式中、R、R及びRは前記に同じ)
式IIの化合物は、酸化剤(亜硝酸ナトリウム、重クロム酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過ヨウ素酸ナトリウムなど)の存在下、ストレプトマイセス・メディテラネイ(Streptomyces mediterranei)又はノカルディア・メディテラネア(Nocardia mediterranea)などの微生物の適切な生物学的培養菌から得てもよい。一般に、式IIの化合物(特に、RがHであり、Rがメチルであり、Rがアセチルであり、かつRがヒドロキシメチルである場合)は、上記生物学的培養菌から得られた混合物の精製方法によって得ることができる。精製技術は、例えば、クロマトグラフィ、結晶化及び有機溶媒抽出であってもよい。得られた化合物を同定するため及び特徴付けるために有用な分析技術は、H−NMR、IR分光法、EIMS分光分析法及びクロマトグラフィ(HPLC)である。得られた式IIの化合物は、適切な溶媒系中で過剰モル量の式IIIの選択されたアミノ−ピリジン誘導体と反応させることができ、当業者に公知の技術を用いて、式Iの所望の最終生成化合物を回収する。過剰モル量は、約2〜約8又はそれ以上の当量まで様々であり、当量は、式IIの化合物に基づいて計算される。
【0038】
反応は、例えば、溶媒又は溶媒系の存在下で行われてもよく、溶媒又は溶媒系は、一般に、リファマイシン化学において広く使用されるものの中から選択される。例えば、芳香族炭化水素類(ベンゼン又はトルエンなど)、低級ハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロ−エタン及び類似のものなど)、低級アルカノール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール又はn−ブタノールなど)を使用してもよい。低級脂肪族酸の低級アルキルエステル類、グリコール類、アセトニトリル、ジオキサン及びテトラヒドロフランもまた、好都合に用いることができる。これらの溶媒は、単独で又は2もしくはそれ以上の上記溶媒を含む混合物で使用でき、又は種々の体積比での水との混合物においても使用できる。好ましい溶媒としては、ベンゼン、トルエン、低級ハロゲン化炭化水素類、低級アルカノール類の単一溶媒もしくは水との混合物、又はアセトニトリル、グリコール類、ジオキサン及びテトラヒドロフランの単一溶媒、これらの混合物、もしくは水との混合物が挙げられる。
【0039】
反応は、雰囲気圧力又は常圧(ambient pressure)で広範囲の温度内(例えば、室温と反応混合物の沸点との間)で行われてもよい。室温(例えば、20℃)と約60℃との間の温度範囲は、本明細書に記載された化合物を調製するために有用であることが見出された。反応は、式IIIのアミノピリジン基質の性質及び反応が実施された条件に依存して様々な期間内で完了した。一般に、所望の収量で式Iの化合物の最終生成物を得るためには、約1〜約100時間が必要であった。反応経路は、反応自体がヨウ素又は適当なヨウ素/酸化剤の存在下で行われる場合に有利であることが見出され;ヨウ素は、例えば、アルカリ又はアルカリ土類金属のヨウ化物(iodine)及び同じ出発物質ピリジン誘導体のヨウ化水素酸塩(hydroiodine)であってもよく、酸化剤は、反応混合物中にヨウ素を放出するために、反応条件下でヨウ素イオンを酸化できる物質であってもよい。ヨウ素又はヨウ素/酸化剤は、式IIで表される出発化合物の各モルについて、それぞれ、約0.1〜約1モル当量のヨウ素量で反応混合物中に存在させることができる。しかし、このような場合、反応溶液を、適切な還元剤(例えば、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸又はジヒドロキシアセトン(dihydroxiacetone))で実質的に処理してもよい。
【0040】
得られた化合物は、他の式Iの化合物を調製するために、さらなる化学反応を受けてもよい。従って、例えば、得られた化合物を適切な還元剤(例えば、L(−)アスコルビン酸など)で処理することによって、式Iの化合物(式中、R、R、R及びRは前記に同じ)を得てもよい。
【0041】
Rが水素である式Iの化合物は、Rがアセチルである対応する化合物をアルカリ条件下で加水分解することによって調製してもよい。
【0042】
本明細書に提示された化合物は、例えば、当業者によく知られた技術によって、反応媒体から回収してもよい。これらの技術は、適切な有機溶媒(例えば、酢酸エチル、クロロホルム、塩化メチレン及びそれらの類似物又は混合物)による抽出、有機溶媒の蒸発乾固、及び最終生成物が分離する適当な溶媒による残渣の取り上げ(taking up)を含む。あるいは、混合物は、直接的に蒸発乾固でき、次いで、得られた残渣を、最終生成物が分離する適切な溶媒を用いて取り上げるか、又は結晶化もしくはクロマトグラフィに供する。有利に用いられ得る溶媒は、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ヘキサン、酢酸エチル、メチレンクロロホルム(methylene chloroform)、エチレングリコールモノメチルエーテル、またはそれらの混合物から選択される。
【0043】
本明細書に提示された化合物は、例えば、クロマトグラフィなどの当該分野において公知の精製技術によって反応生成物から90%より高い純度で得てもよい。
【0044】
本明細書に提示された化合物は、抗菌剤として有用である。これらの化合物は、グラム陽性菌及びグラム陰性菌の両方に対するin vitro活性を有する。これらの化合物は、病理学的条件において、腸内細菌叢中に見出すことができる臨床サンプルから単離された菌に対する抗菌作用を有する。
【0045】
式Iの化合物の抗菌性は、in vitroでの病原菌の成長を阻害できる活性物質の最小濃度(MIC)を測定することによって実証された。この値は、培地1リットルあたりの物質のミリグラムとして表される。
【0046】
より代表的な化合物の一つ(式中、Rがアセチル基であり、R及びRが、独立して、水素又はメチル基であり、かつRがヒドロキシメチルである)の抗菌性を、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、非腸内細菌科グラム陰性、ブドウ球菌(Staphylococcus)などの様々な科に属する多数の菌種(菌株)において測定した。MIC値は、0.06〜128mg/lであり、これらの値は、式Iの化合物の抗菌効果を示す。
【0047】
他の態様において、本明細書に提示された化合物は、抗菌剤として使用でき、医薬組成物中へ組み込んでもよい。これらの化合物は、単独で又は他の抗生物質(リファンピシン、リファマイシン、ネオマイシン及び/又はリファキシミンなど)と組み合わせて、広範囲の重量割合(好ましくは0.01〜100重量%)において使用できる。
【0048】
他の観点において、医薬製剤は、式Iの化合物と、薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤とを含む。
【0049】
従って、本明細書に提示された化合物は、いくつかの経路(例えば、経口、局所又は非経口経路)によって投与できる。このような投与の場合、これらの物質は、従来の医薬投薬量処方物で具体的に表される。これらの処方物は、通常の添加剤とともに、式Iの化合物を単独で、又は式IIの化合物もしくは他の医薬活性成分(有効成分)との混合物の形態で含んでいてもよい。通常の添加剤としては、例えば、甘味料(甘味剤)、矯味剤、着色料(着色剤)、被覆剤(コーティング剤)及び防腐剤、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム又は炭酸ナトリウム、ラクトース及びタルクなど)、結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン及びポリビニルピロリドン)、懸濁化剤(例えば、メチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethycellulose))並びに湿潤剤(例えば、レシチン、ステアリン酸ポリオキシエチレン及びソルビタンモノオレイン酸ポリオキシメチレン)などが例示できる。
【0050】
局所及び非経口投与のために有用な製剤は、パイロジェン(発熱物質)フリーの蒸留水中に溶解又は懸濁した活性成分を含んでいてもよく、慣用の薬学的担体と混合して含んでもよい。
【0051】
本発明の他の態様は、細菌感染を治療又は予防するための、式Iの化合物の単独、又は他の式Iの化合物との組み合わせ、又は式IIの化合物との組み合わせ、又は他の薬学的活性剤との組み合わせでの使用である。特に、ここに開示された医薬組成物は、腸関連障害の患者を治療するために使用できる。腸関連障害としては、1又は複数の過敏性腸症候群、下痢、細菌関連下痢、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)関連下痢、旅行者下痢症、小腸細菌過剰増殖、クローン病、慢性膵炎、膵不全、大腸炎、肝性脳症、憩室炎及び回腸嚢炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
本発明の他の観点において、本明細書に開示された化合物は抗菌性を有し、プレグナンX受容体(PRX)の活性化において役割を果たす。プレグナンX受容体(PRX)は、生体異物(xenobiotic)及び制限された内部寄生性(limited endobiotic)沈着及び解毒に関与する遺伝子を調節する核内受容体である。
【0053】
本明細書には、腸関連障害を治療、予防又は緩和する方法が提供され、この方法は、治療を必要とする被験体に本明細書に開示された1又は複数の化合物を治療的有効量で投与する工程を含む。腸関連障害としては、1又は複数の過敏性腸症候群、下痢、細菌関連下痢、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)関連下痢、旅行者下痢症、小腸細菌過剰増殖、クローン病、慢性膵炎、膵不全、大腸炎、肝性脳症、憩室炎及び回腸嚢炎が挙げられる。
【0054】
特定の腸障害のための治療の長さは、その障害にある程度依存する。例えば、旅行者下痢症は12〜約72時間の治療期間を必要とするに過ぎないであろうが、クローン病は約2日〜3か月の治療期間を必要とするであろう。投薬量も、疾患の状態に依存して様々である。適切な投薬量範囲は、本明細書において後述される。
【0055】
本明細書には、生物兵器剤に曝露されていることが疑われる患者における病理学的状態を治療又は予防する方法が提供される。
【0056】
腸障害のための予防的治療を必要とする患者の同定は、十分に当業者の能力及び知識の範囲内である。本明細書に開示された方法によって処置できる腸障害を発症する危険性を有する患者を同定するためのいくつかの方法として、被験体患者における家族歴、旅行歴、予定される旅行計画、疾患状態の発症に関連する危険因子の存在などが、医学分野において理解されている。当該分野の臨床医は、このような患者になりそうな人を、例えば、臨床試験、身体検査及び病歴/家族歴/旅行歴によって容易に同定できる。
【0057】
被験体における治療の有効性を評価する方法としては、当該分野において周知の方法(例えば、水素呼気検査、生検、腸内細菌のサンプリングなど)によって腸内細菌過剰増殖の治療前レベルを測定し、次いで治療的有効量の本明細書に提示された化合物を被験体に投与する方法が挙げられる。化合物の投与から適切な期間の後(例えば、初期段階の治療の後)、例えば、2時間、4時間、8時間、12時間又は72時間後、細菌過剰増殖のレベルを再び測定する。細菌レベルの変化(modulation)は、治療の有効性を示す。細菌過剰増殖のレベルは、治療の間中、定期的に測定してもよい。例えば、治療のさらなる有効性を評価するために、細菌過剰増殖を、数時間、数日又は数週間毎にチェックしてもよい。細菌過剰増殖の減少は、治療が有効であることを示す。記載された方法を用いて、本明細書に提示された化合物を用いる治療から恩恵を受け得る患者を選抜又は選択してもよい。さらに他の態様において、腸障害に罹患しているか又は罹患しやすい被験体を治療する方法は、治療を必要とする被験体に、治療的有効量の本明細書に提示された化合物を投与して、それにより被験体を治療することを含む。腸障害に罹患しているか又は罹患しやすい被験体の同定の際に、例えば、IBS、本明細書に提示された1又は複数の化合物を投与する。
【0058】
一観点において、本明細書に提示された化合物又は他の活性成分との混合物を被験体に用いる治療の有効性を評価する方法は、細菌過剰増殖の治療前レベルを測定する工程、治療的有効量の式I又はIIの化合物を単独で又は他の活性成分と組み合わせてのいずれかで被験体に投与する工程、及び本明細書に提示された化合物を用いる治療の初期段階の後に細菌過剰増殖を測定する工程を含み、ここで、細菌過剰増殖の変化は、抗菌治療の有効性を示す。
【0059】
治療の有効性を、例えば、細菌過剰増殖の低減として評価(measure)してもよい。また、有効性を、腸障害に関連する症状の低減、症状の安定化、又は腸障害に関連する症状の停止(cessation)(例えば、悪心、鼓脹、下痢などの低減)の観点から評価してもよい。
【0060】
一態様において、本明細書に提示された化合物で治療される被験体の経過を監視する方法は、細菌過剰増殖の治療前レベルを測定する工程、治療的有効量の本明細書に提示された化合物を被験体に投与する工程、及び本明細書に提示された化合物を用いる治療の初期段階の後に細菌過剰増殖を測定する工程を含み、ここで、細菌過剰増殖の変化は、抗菌治療の有効性を示す。
【0061】
本発明の他の態様は、例えば、薬学的に許容可能な担体中に有効量のリファマイシン誘導体を単独で又は他の医薬活性成分とともに含む医薬製剤である。さらなる実施形態において、有効量は、細菌感染、例えば、小腸細菌過剰増殖、クローン病、肝性脳症、抗生物質関連大腸炎及び/又は憩室疾患を治療するために有効である。
【0062】
旅行者下痢症を治療するための使用の例については、インファンテ RM(Infante RM)、エリクソン CD(Ericsson CD)、ジドン J(Zhi-Dong J)、ケ S(Ke S)、ステフェン R(Steffen R)、リオペル L(Riopel L)、サック DA(Sack DA)、デュポン,HL(DuPont, HL)、Enteroaggregative Escherichia coli Diarrhea in Travelers: Response to Rifaximin Therapy. Clinical Gastroenterology and Hepatology. 2004; 2: 135-138;及びステフェン R(Steffen R)医学博士(M.D.)、サック DA(Sack DA)医学博士(M.D.)、リオペル L(Riopel L)博士(Ph.D.)、ジドン J(Zhi-Dong J)博士(Ph.D.)、スターチラー M(Sturchler M)医学博士(M.D.)、エリクソン CD(Ericsson CD)医学博士(M.D.)、ロウ B(Lowe B)修士(M.Phil.)、ワイヤキ P(Waiyaki P)博士(Ph.D.)、ホワイト M(White M)博士(Ph.D.)、デュポン HL.(DuPont, HL.)医学博士(M.D.)、Therapy of Traveler’s Diarrhea With Rifaximin on Various Continents. The American Journal of Gastroenterology. 2003年5月、第98巻、第5号を参照のこと。これらの文献の全内容は、言及することにより本明細書に組み入れられる。
【0063】
医薬組成物は、1又は複数の式I又はIIの化合物を含んでもよく、同じ式で表される1より多い化合物の混合物もしくは式Iの化合物と式IIの化合物との混合物、又は他の薬学的に活性な成分との混合物を含んでもよい。混合物は、例えば、全身性吸着(systemic adsorption)の所望量、溶解プロフィール、治療される消化管の所望の位置(部位)などに基づいて選択してもよい。医薬組成物は、さらに担体を含んでもよく、担体としては、例えば、1又は複数の希釈剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、着色料、矯味剤又は甘味料が挙げられる。組成物は、選択されたコーティング錠剤(被覆錠剤)及び素錠剤(非被覆錠剤)、硬及び軟ゼラチンカプセル剤、糖衣丸剤、ロゼンジ(lozenge)、ウエハシート、ペレット並びに密封小包中の散剤用に処方されてもよい。例えば、組成物は、局所使用(例えば、軟膏剤、ポマード剤、クリーム剤、ゲル剤及びローション剤)のために処方されてもよい。
【0064】
リファマイシン誘導体は、薬学的に許容可能な処方物(例えば、被験体に投与された後少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、一週間、二週間、三週間又は四週間、被験体に持続的に送達される薬学的に許容可能な処方物)を用いて被験体に投与される。
【0065】
これらの医薬組成物は、被験体への局所又は経口投与に適している。他の実施形態において、以下に詳述されるように、本明細書において提示された医薬組成物は、特に、固体又は液体形態での投与のために処方されてもよく、これらの形態としては、以下に適合させた形態が挙げられる:(1)経口投与、例えば、ドレンチ(drenches)(水性又は非水性の溶液剤(solutions)又は懸濁剤)、錠剤、ボーラス、散剤、顆粒剤、パスタ剤;(2)非経口投与、例えば、滅菌溶液又は懸濁液などとしての皮下、筋内又は静脈内注射による投与;(3)局所適用、例えば、皮膚に適用されるクリーム剤、軟膏又はスプレーとしての投与;(4)膣内又は直腸内、例えば、ペッサリー、クリーム剤又は泡剤としての投与;又は(5)エアゾール、例えば、この化合物を含む水性エアゾール、リポソーム製剤又は固体粒子としての投与。
【0066】
句「薬学的に許容可能な」とは、適切な医学的判断(sound medical judgment)の範囲内で、ヒト及び動物の組織との接触における使用に適している本明細書に提示された化合物、このような化合物を含む組成物及び/又は剤形であって、過剰の毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題もしくは合併症を伴わず、合理的な損益比(benefit/risk ratio)に見合ったものをいう。
【0067】
句「薬学的に許容可能な担体」には、ある器官もしくは体の一部から他の器官もしくは体の一部への対象化学物質の運搬又は輸送に関与する、薬学的に許容可能な物質、組成物又はベヒクル(vehicle)(液体又は固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又はカプセル材など)を含む。各担体は、好ましくは、処方物の他の成分と適合するが患者に有害でないという意味で、「許容可能」である。薬学的に許容可能な担体として働くことができる物質のいくつかの例としては:(1)ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖類;(2)トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン類;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどのセルロース及びその誘導体;(4)トラガント粉末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオバター及び坐剤ワックスなどの賦形剤;(9)ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油などの油類;(10)プロピレングリコールなどのグリコール類;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなどのポリオール類;(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル類;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)パイロジェン(発熱物質)フリーの水;(17)等張食塩水;(18)リンガー液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;及び(21)医薬処方物において使用される他の非毒性の適合(compatible)物質。
【0068】
湿潤剤、乳化剤及び潤滑剤(ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなど)並びに着色料、離型剤、被覆剤、甘味料、矯味剤及び香料、防腐剤及び酸化防止剤もまた、組成物中に存在してもよい。
【0069】
薬学的に許容可能な酸化防止剤の例としては、(1)アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性酸化防止剤;(2)アスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなどの油溶性酸化防止剤;及び(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤が挙げられる。
【0070】
リファマイシン誘導体を含む組成物としては、経口、経鼻、局所(頬及び舌下を含む)、経直腸、経膣、エアゾール及び/又は非経口投与に適した組成物が挙げられる。組成物は、好都合に、単位投与形態(unit dosage form)で存在してもよく、製薬学の分野において周知の任意の方法によって調製されてもよい。単回投与形態を生成するために担体物質と組み合わせることのできる活性成分の量は、治療されるホスト(宿主)、投与の特定の様式に依存して様々であろう。単回投与形態を生成するために担体物質と組み合わせることのできる活性成分の量は、一般に、治療効果をもたらす化合物の量であろう。一般に、100%のうち、この量は、活性成分の約1%〜約99%、好ましくは約5%〜約70%、最も好ましくは約40%〜約70%の範囲であろう。
【0071】
これらの組成物を調製する方法は、リファマイシン誘導体単独又は他の活性成分との混合物を、担体及び任意に1又は複数の副成分と組み合わせる工程を含んでもよい。一般に、処方物は、リファマイシン誘導体単独又は他の活性成分との混合物を、液状担体又は細粒の固体状担体又はその両方と均一にかつ密に組み合わせ、次いで、必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0072】
経口投与に適切な本明細書に提示された組成物は、カプセル剤、サシェ(cachets)、丸剤、錠剤、ロゼンジ(味付き基剤、通常、スクロース及びアカシア又はトラガントを用いる)、散剤、顆粒剤の形態、あるいは水性もしくは非水性液体の溶液もしくは懸濁液、又は水中油型もしくは油中水型液状乳液、又はエリキシル剤もしくはシロップ、又は香錠(ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアなどの不活性基剤を用いる)、及び/又は洗口剤などとしてもよく、これらの各々は、所定量の式Iのリファマイシン誘導体を単独で又は他の活性成分との混合物として含む。化合物はまた、ボーラス、舐剤又はパスタ剤として投与されてもよい。
【0073】
リファマイシン誘導体は、経口使用及び局所使用の両方について抗生物質活性を有する調合薬剤(medical preparation)の製造において有利に用いることができる。経口使用のための調合薬剤は、通常の賦形剤、例えば、マンニトール、ラクトース及びソルビトールなどの希釈剤;デンプン、ゼラチン、糖、セルロース誘導体、天然ガム及びポリビニルピロリドンなどの結合剤;タルク、ステアレート(ステアリン酸塩又はエステル)、硬化植物油類、ポリエチレングリコール及びコロイド状二酸化ケイ素などの潤滑剤;デンプン、セルロース、アルギナート(アルギン酸塩又はエステル)、ガム及び網状ポリマーなどの崩壊剤;着色料、矯味剤及び甘味料とともにリファマイシン誘導体を含んでもよい。
【0074】
本明細書に提示された化合物は、経口経路によって投与可能な固形製剤、例えば、コーティング錠剤及び素錠剤、硬及び軟ゼラチンカプセル剤、糖衣丸剤、ロゼンジ、ウエハシート、ペレット並びに密封小包又は他の容器中の散剤を含む。
【0075】
局所使用のための調合薬剤は、式Iのリファマイシン誘導体を、単独で、又は式Iのリファマイシン誘導体の混合物の形態で、又は式IIの化合物とともに、又は式IIの化合物と他の活性成分との混合物の形態で、通常の賦形剤(白色ワセリン、白蝋、ラノリン及びその誘導体、ステアリルアルコール(stearich alcohol)、プロピレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪族ポリオキシエチレンアルコールのエーテル、脂肪族ポリオキシエチレン酸のエステル、モノステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウム(colloidal aluminum and magnesium silicate)、アルギン酸ナトリウムなど)と一緒に含んでもよい。
【0076】
本明細書に提示された化合物は、種々の処方物、例えば、軟膏剤、ポマード剤、クリーム剤、ゲル剤及びローション剤などの局所用製剤に調製されてもよい。
【0077】
経口投与のために本明細書に提示された固形(固体)剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖剤、散剤、顆粒剤など)において、活性成分は、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム及び/又は以下の(1)〜(10)のいずれかなどの1又は複数の薬学的に許容可能な担体と混合される:(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及び/又はケイ酸などの充填剤又は増量剤;(2)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及び/又はアカシアなどの結合剤;(3)グリセロールなどの保湿剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のシリケート(ケイ酸塩又はエステル)及び炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(5)パラフィンなどの溶液遅延剤;(6)四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(7)例えば、アセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;(8)カオリン及びベントナイトクレーなどの吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びそれらの混合物などの潤滑剤;並びに(10)着色料。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合、医薬組成物はまた、緩衝剤を含んでもよい。類似のタイプの固形組成物は、ラクトース又は乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を用いた軟及び硬充填ゼラチンカプセル剤における充填剤として使用されてもよい。
【0078】
錠剤は、任意に1又は複数の副成分とともに圧縮又は成形することによって作製されてもよい。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム又は架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤又は分散剤を用いて調製されてもよい。成形錠剤は、不活性な液体希釈剤で湿らせた活性成分粉末の混合物を適切な機械で成形することによって作製してもよい。
【0079】
本明細書に提示された化合物の医薬組成物の錠剤及び他の固形剤形(糖剤、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤など)は、任意に、腸溶性コーティング及び製剤処方の分野において周知の他のコーティングなどのコーティング及び外皮によって得られ又は調製されてもよい。これらの固形剤形はまた、所望の放出プロファイルを与える割合、他のポリマーマトリクス、リポソーム及び/又はミクロスフェアを様々にして、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて、その固形剤中の活性成分の放出を遅延又は制御させるように処方してもよい。固形剤形は、例えば、細菌保持フィルターによる濾過によって、又は滅菌水もしくは他の注射可能な滅菌媒体中に溶解できる滅菌固形組成物の形態で滅菌剤を使用直前に含有させることによって、滅菌されてもよい。これらの組成物はまた、任意に、不透明化剤(乳白剤)を含んでもよいし、随意的に遅延型様式で、単に又は優先的に胃腸管の特定部分に、活性成分(単数又は複数)を放出する組成物であってもよい。使用できる包埋(又は埋設)組成物(embedding composition)の例としては、高分子物質及びワックスが挙げられる。活性成分は、適切な場合、1又は複数の上記賦形剤とともに、マイクロカプセルに包まれた形態であってもよい。
【0080】
式Iのリファマイシン誘導体を、単独で、又はこれらの誘導体の混合物の形態で、又は式IIの化合物とともに、又は式IIの化合物と他の活性成分との混合物の形態で経口投与するための液状剤形としては、薬学的に許容可能な乳剤、ミクロ乳剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ及びエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、液状剤形は、当該分野において慣用の不活性希釈剤、例えば、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤[エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油類(特に、綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール類及びソルビタンの脂肪酸エステル類並びにそれらの混合物など]を含んでもよい。
【0081】
不活性希釈剤に加えて、経口組成物は、湿潤剤、乳化及び懸濁化剤、甘味料、矯味剤、着色料、香料及び防腐剤などの補助薬を含むことができる。
【0082】
懸濁剤は、式Iの活性リファマイシン誘導体の単独物、又はこれらの誘導体の混合物、又は式IIの化合物との組み合わせ、又は式IIの化合物と他の活性成分との混合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール類、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル類、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天−寒天及びトラガント並びにそれらの混合物などの懸濁化剤を含んでもよい。
【0083】
直腸又は膣投与のための本明細書に提示された医薬組成物は、坐剤として提示されてもよい。坐剤は、1又は複数の適切な非刺激性賦形剤又は担体[例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール、坐剤ワックス又はサリチレート(サリチル酸塩又はエステル)を含む]と一緒に、1又は複数のリファマイシン誘導体を、単独で、又はこれらの誘導体の混合物の形態で、又は式IIの化合物とともに、又は式IIの化合物と他の活性成分との混合物の形態で混合することによって調製されてもよく、賦形剤又は担体が室温で固体であるが体温で液体であるので、直腸又は膣腔内で溶解して活性成分を放出することができる。
【0084】
膣投与に適切な本明細書に提示された組成物としては、当該分野において適当であることが公知であるような担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、パスタ剤、泡又は噴霧処方物も挙げられる。
【0085】
リファマイシン誘導体の局所又は経皮投与のための剤形としては、散剤、噴霧剤、軟膏剤、パスタ剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、溶液剤、パッチ剤及び吸入剤が挙げられる。活性リファマイシン誘導体は、滅菌条件下で、薬学的に許容可能な担体、及び要求され得る任意の防腐剤、緩衝剤又は噴射剤(プロペラント)と混合してもよい。
【0086】
軟膏剤、パスタ剤、クリーム剤及びゲル剤は、本明細書に提示されたリファマイシン誘導体に加えて、動物性及び植物性脂肪類、油類、ワックス類、パラフィン、デンプン、トラガント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール類、シリコーン類、ベントナイト類、ケイ酸、タルク及び酸化亜鉛又はそれらの混合物などの賦形剤を含んでもよい。
【0087】
散剤及び噴霧剤は、リファマイシン誘導体の単独物、又はこれらの誘導体の混合物、又は式IIの化合物との組合せ、又は式IIの化合物と他の活性成分との混合物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物などの賦形剤を含んでもよい。噴霧剤は、さらに、クロロフルオロ−炭化水素類及び揮発性無置換炭化水素類(ブタン及びプロパンなど)などの慣例の噴射剤を含んでもよい。
【0088】
リファマイシン誘導体は、単独で、又はこれらの誘導体の混合物の形態で、又は式IIの化合物とともに、又は式IIの化合物と他の活性成分との混合物の形態で、エアゾールによって投与できる。この投与は、この化合物を含む水性エアゾール、リポソーム製剤又は固体粒子を調製することによって達成される。非水性(例えば、フッ化炭素噴射剤)懸濁液を使用してもよい。音波ネブライザー(sonic nebulizer)は、化合物の分解をもたらす剪断に化合物をさらすことを最小限にするので、好ましい。
【0089】
通常、水性エアゾールは、薬剤の水溶液又は懸濁液を、慣用の薬学的に許容可能な担体及び安定剤とともに処方することによって作製される。担体及び安定剤は、個々の化合物の要件によって様々であるが、典型的には、非イオン性界面活性剤(Tweens、Pluronics又はポリエチレングリコール)、無害のタンパク質[血清アルブミン、ソルビタンエステル類、オレイン酸、レシチン、アミノ酸類(グリシンなど)、緩衝剤、塩類、糖類又は糖アルコール類など]が挙げられる。エアゾールは、一般に、等張液から調製される。
【0090】
経皮パッチ剤は、リファマイシン誘導体を、単独で、又はこれらの誘導体の混合物の形態で、又は式IIの化合物とともに、又は式IIの化合物と他の活性成分との混合物の形態で、身体へ制御的に送達するというさらなる利点を有する。このような剤形は、薬剤を適切な媒体中に溶解又は分散することによって調製できる。吸収増強剤を使用して、皮膚を横切る活性成分の流動を増加させることもできる。このような流動速度は、速度制御膜を備えるか又はポリマーマトリクスもしくはゲル中に活性成分を分散するかのいずれかによって制御できる。
【0091】
眼用処方物、眼軟膏剤、散剤、溶液剤などもまた、本明細書に提示された範囲内にあるように考慮される。
【0092】
非経口投与に適切な本明細書に提示された医薬組成物は、1又は複数の薬学的に許容可能な滅菌等張水溶液もしくは非水溶液、分散液、懸濁液もしくは乳液、又は使用直前に注射可能な滅菌溶液もしくは分散液に再構成できる滅菌粉末と組み合わせて、1又は複数のリファマイシン誘導体を、単独で、又はこれらの誘導体の混合物の形態で、又は式IIの化合物とともに、又は式IIの化合物と他の活性成分との混合物の形態で含んでおり、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、処方物を所定の受容者の血液と等張にする溶質、又は懸濁化剤もしくは増粘剤を含んでもよい。
【0093】
本明細書に提示された薬学的組成物において使用できる適切な水性及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール類(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)及びこれらの適切な混合物、植物油類(オリーブ油など)並びに注射可能な有機エステル類(オレイン酸エチルなど)が挙げられる。適切な流動性は、例えば、被覆材料(レシチンなど)の使用、分散液の場合には要求される粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持できる。
【0094】
これらの化合物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などの補助薬を含んでもよい。微生物の作用は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの種々の抗菌剤及び抗真菌剤を含有させることによって防止してもよい。組成物中に等張化剤(例えば、糖類、塩化ナトリウムなど)を含むことが所望されてもよい。さらに、注射可能な薬学的形態の長期間の吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅延する薬剤を含有させることによってもたらされてもよい。
【0095】
場合によっては、薬物の効果を延長させるために、皮下又は筋内注射からの薬物の吸収を遅延させることが望ましい。注射可能なデポー(depot)形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に、リファマイシン誘導体のマイクロカプセルマトリクス(microencapsule matrices)を、リファマイシン誘導体単独で、又はこれらの誘導体の混合物の形態で、又は式IIの化合物とともに、又は式IIの化合物と他の活性成分との混合物の形態で形成することによって作製される。薬物とポリマーとの比、及び使用された特定のポリマーの性質に依存して、薬物放出の速度を制御できる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射(蓄積注射)可能な処方物はまた、体内組織と適合可能なリポソーム又はミクロ乳剤中に薬物を取り込むことによって調製される。
【0096】
式Iのリファマイシン誘導体を、単独で、又はこれらの誘導体の混合物の形態で、又は式IIの化合物とともに、又は式IIの化合物と他の活性成分との混合物の形態で、医薬品としてヒト及び動物に投与する場合、それら自体で投与することもできるし、例えば、0.1〜99.5%(より好ましくは0.5〜90%)の活性成分を薬学的に許容可能な担体と組み合わせて含む医薬組成物として投与することもできる。
【0097】
選択された投与の経路にかかわらず、適切な水和形態で使用できる式Iのリファマイシン誘導体の単独物、もしくはこれらの誘導体の混合物、もしくは式IIの化合物との組み合わせ、もしくは式IIの化合物と他の活性成分との混合物、及び/又は本明細書に提示された医薬組成物は、当業者に公知の慣用の方法によって、薬学的に許容可能な剤形に処方される。
【0098】
本明細書に提示された医薬組成物中の活性成分の投与における実際の投薬量レベル及び時間的経過は、個々の患者に対して毒性を有することなく、患者、組成及び投与の様式について所望の治療的応答を達成するのに有効な活性成分の量を得るために変化させてもよい。典型的な用量範囲は、1日につき1〜3000mgである。
【0099】
本明細書に提示された式Iのリファマイシン誘導体の好ましい用量は、患者が深刻な副作用を発症することなく耐えられ得る最大値である。一実施形態において、本明細書に提示されたリファマイシン誘導体は、体重1kgあたり約1mg〜約200mg、体重1kgあたり約10〜約100mg又は体重1kgあたり約40mg〜約80mgの濃度で投与される。上記値の中間の範囲もまた、本発明の範囲内である。
【0100】
併用治療において、本明細書に提示された化合物と他の薬剤(単数又は複数)とを、慣用の方法によって哺乳動物(例えば、ヒト、男性又は女性)に投与する。薬剤は、単回投与形態又は分離投与形態(separate dosage forms)で投与してもよい。他の治療剤の有効量は、当業者に周知である。しかし、他の治療剤の有効量の最適な範囲を決定することは、十分に当業者の権限(設計範囲(purview))内にある。別の治療剤が動物に投与される本明細書に提示された一実施形態において、本明細書に提示された化合物の有効量は、他の治療剤が投与されない場合の有効量よりも少ない。別の実施形態において、従来の薬剤の有効量は、本明細書に提示された化合物が投与されない場合の有効量よりも少ない。このように、高用量のいずれかの薬剤に伴う望まれない副作用を最小限にしてもよい。他の潜在的な効果(制限ない用量レジメンの改善及び/又は薬物コストの低減を含む)は、当業者に明らかであろう。
【0101】
種々の実施形態において、療法(therapies)(例えば、予防又は治療剤)は、5分未満の間隔で、30分未満の間隔で、1時間間隔で、約1時間間隔で、約1〜約2時間間隔で、約2時間〜約3時間間隔で、約3時間〜約4時間間隔で、約4時間〜約5時間間隔で、約5時間〜約6時間間隔で、約6時間〜約7時間間隔で、約7時間〜約8時間間隔で、約8時間〜約9時間間隔で、約9時間〜約10時間間隔で、約10時間〜約11時間間隔で、約11時間〜約12時間間隔で、約12時間〜18時間間隔で、18時間〜24時間間隔で、24時間〜36時間間隔で、36時間〜48時間間隔で、48時間〜52時間間隔で、52時間〜60時間間隔で、60時間〜72時間間隔で、72時間〜84時間間隔で、84時間〜96時間間隔で、又は96時間〜120時間間隔で投与される。好ましい実施形態において、2又はそれ以上の療法剤が、同一患者の往診中に投与される。
【0102】
特定の実施形態において、本明細書に提示された1又は複数の化合物及び1又は複数の他の療法(例えば、予防又は治療剤)は、循環的に投与される。サイクル治療(cycling therapy)は、一時期の間の第1の治療(例えば、第1の予防又は治療剤)の投与、次いで、一時期の間の第2の治療(例えば、第2の予防又は治療剤)の投与、任意に次いで、一時期の間の第3の治療(例えば、予防又は治療剤)の投与などを含み、この一連の投与、すなわち、このサイクルを、療法の一つに対する抵抗性の発生を低減し、療法の一つの副作用を回避もしくは低減し、及び/又は療法の有効性を改善するために繰り返す。
【0103】
特定の実施形態において、本明細書に提示された同じ化合物の投与を繰り返してもよく、この投与は、少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2か月、75日、3か月又は少なくとも6か月離れていてもよい(又は間隔をあけてもよい)。他の実施形態において、リファマイシン誘導体以外の同じ療法(例えば、予防又は治療剤)の投与を繰り返してもよく、この投与は、少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2か月、75日、3か月又は少なくとも6か月離れていてもよい。
【0104】
ある兆候は、より長い治療時間を必要とするかもしれない。例えば、旅行者下痢症の治療は約12時間〜約72時間続けるだけでもよいが、クローン病のための治療は、約1日〜約3か月であってもよい。
【0105】
キット(例えば、被験体の腸障害を治療するためのキット)もまた、本明細書において提供される。キットは、例えば、1もしくは複数のリファマイシン誘導体を、単独で、又はリファマイシン誘導体の混合物の形態で、又は式IIの化合物とともに、又は式IIの化合物と他の活性成分との混合物の形態で、使用説明書と一緒に含んでもよい。使用説明書は、処方情報(prescribing information)、投薬量情報、保存情報などを含んでもよい。
【0106】
包装された組成物もまた提供され、治療的有効量の1もしくは複数のリファマイシン誘導体を、単独で、又は式IIの化合物とともに、又は式IIの化合物と他の活性成分及び薬学的に許容可能な担体もしくは希釈剤との混合物で構成してもよく、ここで、この組成物は、腸障害に罹患しているか又は罹患しやすい被験体を治療するために処方され、腸障害に罹患しているか又は罹患しやすい被験体を治療するための説明書とともに包装される。
【実施例】
【0107】
実施例1
(12’Z,14’E,24’E)−5’,17’,19’−トリヒドロキシ−12’−(ヒドロキシ−メチル)−23’−メトキシ−2’,4’,16’,18’,20’,22’−ヘキサメチル−1’,4,6’11’テトラ−オキソ−1’,2’−ジヒドロ−6’H−スピロ[1,3−ジオキソラン−2,9’−[2,7]エポキシペンタデカ[1,11,13]トリエノイミノ)ナフト[2,1−b]フラン]−21’−イル=アセテート(アセタート(acetate))の合成
この実施例は、Rがアセチルであり、Rが水素であり、Rがp−メチルであり、かつRがヒドロキシメチルである式IIの化合物を作製するための一つの方法を提供する。
【0108】
Nocardia mediterranea(ATCC 31064)の培養菌を、ベネットの寒天(Benett’s agar)上に6〜8日間繁殖させ、28℃で培養した。2つの500ml三角フラスコに、滅菌条件下で、この寒天斜面から得られた培養菌を接種した。これらのフラスコは、表1に記載される100mlの栄養培地(vegetative medium)組成物を含んでいた。
【0109】
【表1】

【0110】
1MのNaOHを用いてpHを7.3に調整した。このように接種したフラスコを、別の振盪器上に28℃で72時間置いた。これらの2つの三角フラスコの内容物を、上記栄養培地を4リットル含む10リットルの予備発酵槽(pre-fermenter)中に注いで、接種材料として使用した。培養を、28℃で300r.p.m.の攪拌及び1v/v/mの曝気により行った。48時間の増殖後、7〜10%のヘマトクリット値を得た。
【0111】
次の段階において、細胞を、以下及び表2に記載される媒体組成物を4リットル含む10リットルのガラス発酵槽中で、接種材料として使用した。
【0112】
【表2】

【0113】
NaOHを用いてpHを7.8に調整し、60分間120℃で滅菌した。滅菌後、pHは6.4であった。発酵槽の内容物の5%に等しい予備発酵槽の内容物の量を、接種材料として使用した。発酵は、28℃で750r.p.m.の攪拌及び1/v/v/mの速度での曝気をしながら行った。シリコーンAを、消泡剤として使用した。培養ブロス(culture broth)は、発酵の間に特徴的な赤褐色(red-brown color)に変わった。約200時間の増殖後、ヘマトクリット値を得た。このブロスのpHは7.5であり、次いで、このブロスを採取し、細胞を除去した。
【0114】
菌糸体を濾過によって除去して廃棄した。濾液を10%(v/v)塩酸でpH2.0に調整し、等容量の酢酸エチルで3回抽出した。抽出物を合わせて、35℃での真空乾燥により濃縮し、残渣をpH7.5の0.005Mリン酸ナトリウム緩衝液中に溶解した。亜硝酸ナトリウムを添加して、最終濃度0.2%(w/v)を得た。室温で30分間攪拌後、緩衝液を等容量の酢酸エチルで3回抽出した。有機抽出物を合わせて、35℃での真空乾燥により濃縮した。抽出物を、比40/1(v/v)のジクロロメタン/メタノール溶媒混合物を用いて、線速度(liner velocity)2.65cm/分、1グラムの混合物の荷重(loading capacity)で、定組成溶離条件(isocratic condition of elution)でシリカゲルカラムクロマトグラフィを用いて精製し、13ミリリットルの固定相に分離した。
【0115】
得られた化合物を、長さ250mm、直径4.4mmの寸法を有するHypersil ODSカラムを用いて、比1/1(v/v)、流速1ml/分でアセトニトリル/0.025Mリン酸ナトリウム二酸(bi-acid)pH7.0緩衝剤で定組成条件において溶離し、HPLCで分析した。90%より高い純度を有するクロマトグラフ画分を回収し、溶媒を真空乾燥により濃縮した。保持時間(RT)7.45分によって特徴付けられる、Rがアセチルであり、Rが水素であり、Rがp−メチルであり、かつRがヒドロキシメチルである式IIの化合物のクロマトグラフプロファイルは図1である。この化合物をH NMRによって同定し、そのスペクトルを図2に示す。
【0116】
実施例2
(16Z,18E,28E)−25−(アセチルオキシ)−5,21,23−トリヒドロキシ−16−(ヒドロキシメチル)−27−メトキシ−2,4,11,20,22,24,26−ヘプタメチル−1,15−ジオキソ−1,13−ジヒドロ−2H−2,7−(エポキシペンタデカ[1,11,13]トリエノイミノ)フロ[2’’,3’’:7’,8’]ナフト[1’,2’:4,5]イミダゾ[1,2−a]ピリジン−8−イウム−6−オラート(olate)の合成
この化合物は、Rがアセチルであり、Rが水素であり、Rがp−メチルであり、かつRがヒドロキシメチルである式Iの化合物である。
【0117】
実施例1に記載されるように得られた(12’Z,14’E,24’E)−5’,17’,19’−トリヒドロキシ−12’−(ヒドロキシメチル)−23’−メトキシ−2’,4’,16’,18’,20’,22’−ヘキサ(hesa)メチル−1’,4,6’11’テトラオキソ−1’,2’−ジヒドロ−6’H−スピロ[1,3−ジオキソラン−2,9’−[2,7]エポキシペンタデカ[1,11,13]トリエノイミノ)ナフト[2,1−b]フラン]−21’−イル=アセテートの200mgの溶液を0.6mlの蒸留水に溶解し、0.5mlのエタノールを、82mgの2−アミノ−4−メチル−ピリジンとともに、室温で攪拌下において添加した。反応混合物を、実施例1において同様に報告されたHPLC分析により式IIの試薬が完全に消失するまで、47℃で約5時間維持した。この溶液を雰囲気温度にして、5mgのアスコルビン酸を添加した。この溶液を濃HClでpH2.0まで酸性にし、次いで、この溶液をエチレンアセテート約1.0mlずつで2回抽出した。溜まった有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、蒸発乾固した。
【0118】
得られた化合物は実施例1と同じ条件下でHPLC分析され、95%に対応する純度でRT6.2分によって特徴付けられ、そのクロマトグラムは図3である。得られた化合物を、FT−IR、H−NMR、13C−NMR分光法及びEIMS分光法で測定された分子量において同定した。
【0119】
I.Rスペクトル−特性吸収帯を、NaClフィルムを用いて得られた以下の周波数(cm−1)で観察した:3400、2972、2929.6、1717.7、1654.3、1690.0、1543.6、1508.5、1475.7、1454.5、1373.8、1322.9、1233.4、1157.3、1106.4、1059.7、1021.5、974.8、949.3、877.2、800.8、732.8。このスペクトルは図4に示され、データは提示された構造と一致する。
【0120】
H−N.M.R.スペクトル−特性共鳴ピークを以下のδで観察した(p.p.m.で表す):0.34(d,3H)、0.76(d,3H)、0.97(d,3H)、1.27、(m,1H)、1.44(m,1H)、1.63(m,1H)、1.89(s,3H)、1.99(s,3H)、2.09(s,3H)、2.32(m,1H)、2.59(s,3H)、2.91(m,1H)、3.02(s,3H)、3.37(d,1H)、3.73(m,2H)、3.95(m,2H)、4.50(d,1H)、4.63(d,1H)、4.95(d,1H)、5.01(d,1H)、6.06(d,1H)、6.18(d,1H)、6.49(d,1H)、6.92(d,1H)、7.05(d,1H)、7.39(s,1H)、8.53(d,1H)、9.13(s,1H)、14.73(s,1H)、16.89(s、1H)。ここで、s=一重項、d=二重項、m=多重項である。このスペクトルは図5に示され、データは提示された構造と一致する。
【0121】
13C−N.M.R.スペクトル−特性共鳴ピークを以下のδで観察した(p.p.m.で表す):7.14、7.47、8.75、10.90、17.25、20.79、22.33、32.81,36.87,38.14、38.35、57.24、65.13、72.35、74.31、77.16、77.62、97.51、103.98、104.53、108.43,109.58、111.77、114.29、114.29、114.37、117.74、119.09、122.77、125.39、129,26、139,09、139.28、141.15、144.54、147.93、153.59、169.05、172.08、172.14、181.82、189.19。このスペクトルは図6に示され、データは提示された構造と一致する。
【0122】
EIMS:分子量を、チューニングパラメータESI+及びESI−、キャピラリ3.00KV、コーン25V及び抽出器3KVで決定した。このスペクトルは図7であり、得られた化合物は801に相当する分子量を有していた。
【0123】
実施例3
病原菌のインビトロ(in vitro)増殖を阻害できる活性物質の最小濃度(MIC)
病原菌のインビトロ(in vitro)増殖を阻害できる活性物質の最小濃度(MIC)を、National Committee for Clinical Laboratory Standards NCCLS, 2003に記載される微量希釈法によって測定し、E.coli(ATCC 25922)、P.aeruginosa(ATCC 27853)、S.aureus (ATCC 29213)、E.faecalis(ATCC 29212)を、対照基準(control standard)として挿入した。
【0124】
表3は、様々なグラム陰性菌株に対するインビトロ増殖の阻害の最小濃度の結果を記載する。
【0125】
表4は、Staphylococcus spp及びEnterococus sppの様々な菌株に対するインビトロ増殖の阻害の最小濃度の結果を記載する。
【0126】
【表3】

【0127】
【表4】

【0128】
【表5】

【0129】
【表6】

【0130】
【表7】

【0131】
【表8】

【0132】
【表9】

【0133】
【表10】

【0134】
【表11】

【0135】
【表12】

【0136】
【表13】

【0137】
【表14】

【0138】
【表15】

【0139】
【表16】

【0140】
【表17】

【0141】
【表18】

【0142】
【表19】

【0143】
【表20】

【0144】
【表21】

【0145】
【表22】

【0146】
【表23】

【0147】
実施例4
細菌感染における(16Z,18E,28E)−25−(アセチルオキシ)−5,21,23−トリヒドロキシ−16−(ヒドロキシメチル)−27−メトキシ−2,4,11,20,22,24,26−ヘプタメチル−1,15−ジオキソ−1,13−ジヒドロ−2H−2,7−(エポキシペンタデカ[1,11,13]トリエノイミノ)フロ[2’’,3’’:7’,8’]の使用
細菌感染している患者を同定する。(16Z,18E,28E)−25−(アセチルオキシ)−5,21,23−トリヒドロキシ−16−(ヒドロキシメチル)−27−メトキシ−2,4,11,20,22,24,26−ヘプタメチル−1,15−ジオキソ−1,13−ジヒドロ−2H−2,7−(エポキシペンタデカ[1,11,13]トリエノイミノ)フロ[2’’,3’’:7’,8’]ナフト[1’,2’:4,5]イミダゾ[1,2−a]ピリジン−8−イウム−6−オラート(Rがアセチルであり、Rが水素であり、Rがメチルであり、かつRがヒドロキシメチルである化合物I)を含む医薬処方物をこの患者に投与する。上記の処方物を用いる10日の治療クールの後、患者の細菌感染レベルは低減する。
【0148】
実施例5
式Iの誘導体の合成
式Iの別の化合物を、以下の方法に従って合成する。特に、この方法を使用して、Rがアセチルであり、Rが(C1−4)アルキル、ベンジルオキシ、モノ−及びジ−(C1−3)アルキルアミノ(C1−4)アルキル、(C1−3)アルコキシ−(C1−4)アルキル、ヒドロキシ−メチル、ヒドロキシ−(C2−4)−アルキル、及びニトロのうちの一つであり、Rが(C1−4)アルキル、ベンジルオキシ、モノ−及びジ−(C1−3)アルキルアミノ(C1−4)アルキル、(C1−3)アルコキシ−(C1−4)アルキル、ヒドロキシ−メチル、ヒドロキシ−(C2−4)−アルキル、及びニトロのうちの一つであるか、あるいはR及びRが、ピリジン核の連続する2つの炭素原子とともに、無置換のベンゼン環又はメチルもしくはエチルによって置換された一もしくは二置換のベンゼン環を形成し、かつRがヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル又はヒドロキシブチルのうちの一つである式Iの化合物を調製する。
【0149】
実施例1において実質的に開示されるように生成した式IIの200mgの溶液を0.6mlの蒸留水に溶解し、0.5mlのエタノールを、式IIIの2−アミノ−ピリジン(82mg)とともに室温で攪拌下において添加する。ここで、式IIIの2−アミノ−ピリジンは、R位又はR位で以下の置換基[(C1−4)アルキル、ベンジルオキシ、モノ−及びジ−(C1−3)アルキルアミノ(C1−4)アルキル、(C1−3)アルコキシ−(C1−4)アルキル、ヒドロキシ−メチル、ヒドロキシ−(C2−4)−アルキル及びニトロ、かつRが(C1−4)アルキル、ベンジルオキシ、モノ−及びジ−(C1−3)アルキルアミノ(C1−4)アルキル、(C1−3)アルコキシ−(C1−4)アルキル、ヒドロキシ−メチル、ヒドロキシ−(C2−4)−アルキル、及びニトロの一つである。]の一つ又は二つによって置換されているか、あるいはR及びRが、ピリジン核の連続する2つの炭素原子とともに、無置換のベンゼン環又はメチルもしくはエチルによって置換された一もしくは二置換のベンゼン環を形成するように置換されている。反応混合物を、実施例1において同様に報告されたHPLA分析により式IIの試薬が消失するまで、47℃で約5時間維持する。この溶液を雰囲気温度にして、5mgのアスコルビン酸を添加する。この溶液を濃HClでpH2.0まで酸性にし、次いで、この溶液をエチレンアセテート約1.0mlずつで2回抽出する。溜まった有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、蒸発乾固する。得られた化合物を、実施例1に記載されるように、HPLCにおいて特徴付ける。完全に反応した後に得られた式Iの化合物を、RTによって特徴付ける。得られた化合物をFT−IR、H−NMR、13C−NMR分光法において同定し、その分子量をEIMS分光法で測定する。
【0150】
実施例6
式Iの誘導体の合成
式Iの別の化合物を、以下の方法に従って製造する。特に、この方法を使用して、Rがアセチルであり、Rが(C1−4)アルキル、ベンジルオキシ、モノ−及びジ−(C1−3)アルキルアミノ(C1−4)アルキル、(C1−3)アルコキシ−(C1−4)アルキル、ヒドロキシ−メチル、ヒドロキシ−(C2−4)−アルキル及びニトロのうちの一つであり、Rが(C1−4)アルキル、ベンジルオキシ、モノ−及びジ−(C1−3)アルキルアミノ(C1−4)アルキル、(C1−3)アルコキシ−(C1−4)アルキル、ヒドロキシ−メチル、ヒドロキシ−(C2−4)−アルキル及びニトロのうちの一つであるか、あるいはR及びRが、ピリジン核の連続する2つの炭素原子とともに、無置換のベンゼン環又はメチルもしくはエチルによって置換された一もしくは二置換のベンゼン環を形成し、かつRがヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル又はヒドロキシブチルのうちの一つである式Iの化合物を調製する。
【0151】
Nocardia mediterranea(ATCC 31064)の培養菌を、ベネットの寒天上に6〜8日間繁殖させ、28℃で培養する。寒天斜面から得られた培養菌を、2つの500ml三角フラスコに、滅菌条件下で接種する。これらのフラスコは、実施例1の表1に記載される100mlの栄養培地組成物を含む。
【0152】
1MのNaOHを用いてpHを7.3に調整する。このように接種したフラスコを、別の振盪器上に28℃で72時間置く。これらの2つの三角フラスコの内容物を、上記栄養培地を4リットル含む10リットルの予備発酵槽中に注いで、接種材料として使用する。培養を、28℃で300r.p.m.の攪拌及び1v/v/mの曝気により行う。48時間の増殖後、7〜10%のヘマトクリット値を得る。
【0153】
次の段階において、細胞を、以下及び実施例1の表2に記載される媒体組成物を4リットル含む10リットルのガラス発酵槽中で、接種材料として使用する。
【0154】
NaOHを用いてpHを7.8に調整し、60分間120℃で滅菌する。滅菌後、pHは6.4である。発酵槽の内容物の5%に等しい予備発酵槽の内容物の量を、接種材料として使用する。発酵は、28℃で750r.p.m.の攪拌及び1/v/v/mの速度での曝気をしながら行う。シリコーンAを、消泡剤として使用する。培養ブロスは、発酵の間に特徴的な赤褐色(red-brown color)に変わる。約200時間の増殖後、ヘマトクリット値を得る。このブロスのpHは7.5であり、次いで、このブロスを採取し、細胞を除去する。
【0155】
菌糸体を濾過によって除去して廃棄する。濾液を10%(v/v)塩酸でpH2.0に調整し、等容量の酢酸エチルで3回抽出する。抽出物を合わせて、35℃での真空乾燥により濃縮し、残渣をpH7.5の0.005Mリン酸ナトリウム緩衝液中に溶解する。亜硝酸ナトリウムを添加して、最終濃度0.2%(w/v)を得る。室温で30分間攪拌後、緩衝液を等容量の酢酸エチルで3回抽出する。有機抽出物を合わせて、35℃での真空乾燥により濃縮する。抽出物を、実施例1と同じ条件でシリカゲルカラムクロマトグラフィを用いて精製する。
【0156】
RT7.45分を有する得られた化合物を0.6mlの蒸留水に溶解し、0.5mlのエタノールを、82mgの2−アミノ−4−メチル−ピリジンとともに、室温で攪拌下において添加する。反応混合物を、実施例1において同様に報告されたHPLC分析により式IIの試薬が完全に消失するまで、47℃で約5時間維持する。この溶液を雰囲気温度にして、5mgのアスコルビン酸を添加する。この溶液を濃HClでpH2.0まで酸性にし、次いで、この溶液をエチレンアセテート約1.0mlずつで2回抽出する。溜まった有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、蒸発乾固する。
【0157】
得られた化合物を、実施例1と同じ条件でHPLCにおいて分析し、95%に対応する純度でRT6.2分によって特徴付けられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】

(式中、Rは水素又はアセチルであり、
及びRは、各々独立して、水素、(C1−4)アルキル、ベンジルオキシ、モノ−又はジ−(C1−3)アルキルアミノ(C1−4)アルキル、(C1−3)アルコキシ−(C1−4)アルキル、ヒドロキシ−メチル、ヒドロキシ−(C2−4)−アルキル及びニトロからなる群より選択されるか;あるいはR及びRは、ピリジン環の連続する2つの炭素原子とともに、無置換のベンゼン環又は1つもしくは2つのメチルもしくはエチル基によって置換された一もしくは二置換のベンゼン環を形成し;かつ
はヒドロキシアルキル(C1−4)である)。
【請求項2】
Rがアセチル基であり、R及びRが独立して水素又はメチルであり、かつRがヒドロキシアルキル(C1−4)である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Rがアセチル基であり、Rが水素であり、Rがp−メチルであり、かつRがヒドロキシメチルであり、(16Z,18E,28E)−25−(アセチルオキシ)−5,21,23−トリヒドロキシ−16−(ヒドロキシメチル)−27−メトキシ−2,4,11,20,22,24,26−ヘプタメチル−1,15−ジオキソ−1,13−ジヒドロ−2H−2,7−(エポキシペンタデカ[1,11,13]トリエノイミノ)フロ[2’’,3’’:7’,8’]ナフト[1’,2’:4,5]イミダゾ[1,2−a]ピリジン−8−イウム−6−オラートと命名される請求項2記載の化合物。
【請求項4】
式IIの化合物:
【化2】

(式中、Rは水素又はアセチルであり、かつRはヒドロキシアルキル(C1−4)である)を製造するための方法であって、
リファマイシンB誘導体の産生のための微生物水溶液と栄養剤とを含む生物学的培養菌(biological culture)を得る工程;並びに
得られた培養菌を酸化剤で酸化する工程
を含む方法。
【請求項5】
酸化剤が、亜硝酸ナトリウム、重クロム酸カリウム水溶液、過硫酸アンモニウム又は過ヨウ素酸ナトリウムの1又は複数から選択される請求項4記載の方法。
【請求項6】
Rが水素又はアセチルであり、かつRがヒドロキシアルキル(C1−4)である請求項4記載の方法。
【請求項7】
Rがアセチルであり、かつRがヒドロキシメチルである請求項6記載の方法。
【請求項8】
請求項1記載の化合物を合成するための方法であって、式IIの化合物:
【化3】

(式中、Rは水素又はアセチルであり、かつRはヒドロキシアルキル(C1−4)である)
と式IIIの化合物:
【化4】

(式中、R及びRは、各々独立して、水素、(C1−4)アルキル、ベンジルオキシ、モノ−又はジ−(C1−3)アルキルアミノ(C1−4)アルキル、(C1−3)アルコキシ−(C1−4)アルキル、ヒドロキシ−メチル、ヒドロキシ−(C2−4)アルキル及びニトロからなる群より選択されるか;あるいはR及びRは、ピリジン環の連続する2つの炭素原子とともに、無置換のベンゼン環又は1つもしくは2つのメチルもしくはエチル基によって置換された一もしくは二置換のベンゼン環を形成する)
とを、有機溶媒、1より多い有機溶媒の混合物又は有機溶媒と水との混合物の存在下、雰囲気温度〜60℃の温度で1〜100時間反応させる工程を含む方法。
【請求項9】
有機溶媒が、芳香族炭化水素類、脂肪族アルカノール、ハロゲン化炭化水素類、低級脂肪族酸の低級アルキルエステル、グリコール類、アセトニトリル、ジオキサン、テトラヒドロフラン及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるか、又は種々の体積比での水との混合物である請求項8記載の方法。
【請求項10】
約0.1〜約1モル当量のヨウ素又はヨウ素/酸化剤の組み合わせが、それぞれモル当量の式IIの化合物に対して用いられる請求項8記載の方法。
【請求項11】
式IIIの化合物が2−アミノ−4−メチル−ピリジンである請求項8記載の方法。
【請求項12】
請求項1記載の化合物を合成するための方法であって、
水溶液中でリファマイシンB誘導体の産生に適した微生物及び栄養剤を含む生物学的培養菌を得る工程;
得られた培養菌を酸化剤で酸化して酸化生成物を得る工程;並びに
前記酸化生成物と2−アミノ−ピリジン誘導体とを反応させる工程
を含む方法。
【請求項13】
治療的に効果のある量の式Iの化合物と1又は複数の薬学的に許容可能な成分とを組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項14】
抗菌剤としての使用のための請求項13記載の医薬組成物。
【請求項15】
1もしくは複数の式Iの化合物又は1もしくは複数の式Iの化合物と1もしくは複数の式IIの化合物との組み合わせ、及び
薬学的に許容可能な賦形剤
を含む医薬組成物。
【請求項16】
組成物が、単回投与形態であるか、又は分離投与形態(separate dosage form)である請求項15記載の医薬組成物。
【請求項17】
さらに、リファマイシン誘導体又はネオマイシンを含む請求項15記載の医薬組成物。
【請求項18】
リファマイシン誘導体がリファキシミンである請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
式Iの化合物が、リファキシミンに対して約0.01〜100%(w/w)の比である請求項18記載の医薬組成物。
【請求項20】
腸関連障害の患者における細菌過剰増殖(bacterial overgrowth)を治療、予防又は緩和する方法において、任意に1又は複数のさらなる抗生物質とともに使用する請求項15記載の医薬組成物。
【請求項21】
1又は複数のさらなる抗生物質が、リファマイシン、リファキシミン又はネオマイシンの1又は複数を含む請求項20記載の使用のための医薬組成物。
【請求項22】
腸関連障害が、過敏性腸症候群、旅行者下痢症、小腸細菌過剰増殖、クローン病、慢性膵炎、膵不全、肝性脳症、憩室炎、腸炎又は大腸炎の1又は複数である請求項20記載の使用のための医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−524060(P2012−524060A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505257(P2012−505257)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/IB2010/051183
【国際公開番号】WO2010/122436
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(304044793)アルファ ワッセルマン ソシエタ ペル アチオニ (8)
【氏名又は名称原語表記】ALFA WASSERMANN S.P.A.
【Fターム(参考)】