説明

リフタ機構付き車両用シート

【課題】シートクッションを高い安定性で支持することができるリフタ機構付き車両用シートを提供すること。
【解決手段】シートクッションの前側と後側に左右一対の高さ調節手段からなるリフタ機構が車両床面とシートクッションの間に設けられる。四つの高さ調節手段は、それぞれ、上端部がシートクッション側に取り付けられ、下端部が車両床面側に取り付けられるリフタリンク部材を有する。各リフタリンク部材にはギア歯が形成され、床面側又はシートクッション側に軸回転可能に取り付けられた歯車と噛み合っている。一対の前側高さ調節手段の歯車の回転は伝達機構によって相互に同期され、一対の後側高さ調節手段の歯車の回転も伝達機構によって相互に同期されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、さらに詳しくは、車両内で乗員が着座するシートクッションの高さを車両床面に対して調節することができるリフタ機構を有する車両用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来一般の車両用シートにおいてシート本体の高さを調節するための高さ調節装置が例えば特許文献1に開示されるが、図6に示すように、左右一対の前側リフタリンク480と、左右一対の後側リフタリンク490がスライド手段460のアッパーレール461とシートクッション420のロアアーム440の間にそれらに対して回転可能に取り付けられる。さらに後側リフタリンク490の一つにはセクタギア490cが一体に形成され、セクタギアに噛み合わされたピニオンギア490bを回転させることにより、リフタリンク490が傾動される。通常、セクタギア及びピニオンギアからなるロック機構は、後側リフタリンクのうち一方にのみ設けられる。もう一方の後方のリフタリンク及び前方の一対のリフタリンクには、ロック機構が設けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−173496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなリフタ機構においては、四つのリフタリンクのうち一つにしかリフタリンクの傾きを固定するためのロック機構が設けらず、シートクッションに与えられる荷重をシートクッション後側の一箇所で負担している状態である。このため、シートクッションの支持が非常に不安定であり、着座者に揺動感を与えることもある。この状況において、シートクッション及びリフタ機構の安定性を増すために、シートクッションの左右のクッションフレーム420や、それらの間を連結する連結部材420a、420bの剛性を高めることが行われるが、それらによってシートクッションの安定性を向上させるには限界がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、シートクッションがアンダーフレームにリフタ機構を介して上下動可能に支持された車両用シートにおいて、シートクッションに与えられる荷重を安定的に負担することができるリフタ機構付き車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1にかかるリフタ機構付き車両用シートは、シートクッションが前記シートクッションを支持するアンダーフレームにリフタ機構を介して上下動可能に支持され、前記リフタ機構には左右一対のシートクッションの前部の高さ位置を調節するための前側高さ調節手段が備えられ、さらに該前側高さ調節手段よりも後方には左右一対のシートクッションの後部の高さ位置を調節するための後側高さ調節手段が備えられ、前記前側高さ調節手段と前記後側高さ調節手段はそれぞれ、上端部が前記シートクッションに取り付けられ、下端部が前記アンダーフレームに取り付けられたリフタリンク部材を備え、前期リフタリンク部材の一端側には、前記アンダーフレーム又は前記シートクッションに軸回転可能に取り付けられた歯車と噛合するギア歯を備え、前記両前側高さ調節手段の両歯車は第一伝達機構によって相互に同期回転され、前記両後側高さ調節手段の両歯車の回転は第二伝達機構によって相互に同期回転されるように構成されていることを要旨とする。
【0007】
ここで、請求項2に記載の車両用シートはさらに、フロア面に固定されたロアレールと、前後方向に摺動可能に該ロアレールに係合したアッパーレールとをそれぞれ有する左右一対のスライド手段を備え、前記アッパーレールの上には前記アンダーフレームが固定され、前記ロアレールの上面外側には上向きの第一ギア歯が形成され、前記アンダーフレームには同軸上に一体的に固定された第一歯車と第二歯車が軸回転可能に取り付けられ、前記第一歯車は前記第一ギア歯と噛合され、前記リフタリンク部材は、中途部位に設けられた屈曲部がシートクッションに連結され、前記屈曲部から後方下向きに延出した後側リンクバーの端部前面には第二ギア歯が一体に形成されて前記第二歯車と噛合され、前記屈曲部から前方下向きに延出した前側リンクバーの端部はガイド部材を介して長手方向に摺動可能かつ前記リフタリンク部材を含む面内で回転可能に前記アッパーレールに取り付けられ、左右のアッパーレールがロアレールに対して前後方向に移動したとき、前記一対の前側高さ調節手段の第一歯車と前記一対の後側高さ調節手段の第一歯車とがそれぞれ左右で同期的に回転されるように構成される。
【発明の効果】
【0008】
本願請求項1に記載のリフタ機構付き車両用シートによれば、歯車とギア歯の噛合構造がリフタリンク部材の運動を固定するロック機構として作用し、そのようなロック機構がシートクッションの四箇所に設けられることで、シートクッションに与えられる荷重を四箇所に分散させて負担することができる。これにより、クッションシートが安定に保持され、一箇所にのみロック機構が設けられる場合に比べて着座者に与える揺動感が大幅に減少する。また、左右一対の歯車の回転が相互に同期されることにより、左右の高さ調節手段を個別に操作する必要がなく、操作性に優れる。
【0009】
また、本願請求項2に記載のリフタ機構付き車両用シートによれば、スライド手段のアッパーレールをロアレールに対してスライドさせるだけで、四つの高さ調節手段を動作させることができ、レバー、モータ等のリフタ調節デバイスを使用せずにシートクッションを上下動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかるリフタ機構付き車両用シートの斜視図である。
【図2】本発明の第二の実施形態にかかるリフタ機構付き車両用シートの斜視図である。
【図3】図2における高さ調節手段の側面図である。
【図4】本発明の第三の実施形態にかかるリフタ機構付き車両用シートの側面図である。
【図5】(a)は図4における高さ調節手段の拡大側面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図6】従来の車両用シートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係るリフタ機構付き車両用シートについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に示される第一の実施形態にかかるリフタ機構付き車両用シート1はシートクッション2と、その後方にシートバック3を有する。
【0012】
シートクッション2は左右部において前後方向に延出するロアアーム4等よりなるフレームを有する。フレームには図示しないパッドが装着される。左右のロアアーム4は、連結部材2a、2bによって、連結されている。ロアアーム4の下側には、車両床面に固定されたロアレール52と、ロアレール52に摺動可能に係合されたアッパーレール51を有するスライド手段5が設けられる。アッパーレール51の上面にはアンダーフレーム6が固定され、アンダーフレーム6とロアアーム4の間には、リフタ機構7が取り付けられる。
【0013】
リフタ機構7は、シート前方に左右一対の前側高さ調節手段8と、シート後方に左右一対の後側高さ調節手段9を備える。一対の前側高さ調節手段8及び一対の後側高さ調節手段9は全て同様の構成を有する。一方の後側高さ調節手段9を例としてその構成を説明する。高さ調節手段9はリフタリンク9aを有し、該リフタリンク9aは、上端部がロアアーム4に回転可能に取り付けられ、下端部がアンダーフレーム6に回転可能に連結される。さらに、リフタリンク9aの前側端部には歯が前側に設けられた略扇形のセクタギア9cが一体に形成されている。セクタギア9cは、ロアアーム4に軸回転可能に取り付けられたピニオンギア9bと噛合されている。この噛合構造により、リフタリンク9aの傾動がロックされる。リフタ機構7は四箇所にロック機構を有するため、シートクッション2に与えられる荷重が高い安定性をもって支持される。
【0014】
さらに、シートの左右に設置された一対の後側高さ調節手段9のピニオンギア9bの軸は、直線状の軸連結部材91によって連結され、軸が連結された二つのピニオンギア9bの一方に、ハンドル92が接続されている。ハンドル92を操作することにより、左右一対の高さ調節手段のピニオンギア9bが同期して回転される。このピニオンギア9bの回転により、左右それぞれのセクタギア9cが回転され、左右それぞれのリフタリンク9aが傾動される。一対の前側高さ調節手段8のピニオンギアの軸も同様に相互に連結され、一方のピニオンギアにハンドル82が接続されている。これにより、前後一箇所ずつのハンドルを操作すれば、シート全体を昇降させることができる。ここで、前後の高さ調節手段8、9にはハンドルの代わりにモータが接続されていてもよい。
【0015】
図2は、第二の実施形態にかかるリフタ機構付き車両用シート100を示している。第一の実施形態において前側高さ調節手段及び後側高さ調節手段が傾動するリフタリンクとセクタギア、ピニオンギアを備えた構成を有するのに代わり、一対の前側高さ調節手段180及び一対の後側高さ調節手段190は、略L字型の屈曲リフタリンクとラック・ピニオンギアを備えた構成を有する。
【0016】
四箇所の高さ調節手段は全て同じ構成を有するので、以下後側高さ調節手段190を例として図2及び図3を参照しながらその構成を説明する。屈曲リフタリンク191は、中途の部位で屈曲され、屈曲部191aの両側にリンクバー191b、191cが延出した略L字型の形状をとっている。本実施例においては、この屈曲角は90°である。前側リンクバー191b及び後側リンクバー191cはともに車両床面に対して垂直な面内にある。
【0017】
屈曲リフタリンク191の上端部である屈曲部191aは、ピン部材191fによってロアアーム140に連結されている。一方、後側リンクバー191cの端部にはラックギア191dが一体に形成され、アンダーフレーム160に軸回転可能に取り付けられたピニオンギア192と噛合している。ラックギア191dは、ピン部材191gでアンダーフレーム160に面内回転可能に取り付けられた保持部材191eによってピニオンギア192と噛合する位置に保持される。
【0018】
前側リンクバー191bの端部はアンダーフレーム160に取り付けられたガイド部材193に挿通されている。ガイド部材193は、前側リンクバー191bの挿通方向に垂直な断面の形状が略コの字形であるブラケット193aによって、二側面から支持されている。ブラケット193aは、ガイド部材193の奥側の面において図示されないピン部材によってアンダーフレーム160に回転可能に取り付けられている。この構成により、ガイド部材193は、屈曲リフタリンク191を含む面内で回転可能であり、かつ挿通された前側リンクバー191bの摺動が可能である。
【0019】
さらに、シートクッションの左右に設置された一対の後側高さ調節手段190のピニオンギア192の軸は、直線状の軸連結部材194によって連結され、軸が連結された二つのピニオンギア192の一方に、ピニオンギア192を駆動するためのハンドル195が接続されている。ここで、ハンドル195の代わりにモータが接続されていてもよい。
【0020】
ラックギア191dとピニオンギア192の噛合により、屈曲部191aの位置がロックされている。ピニオンギア192を軸回転させると、ラックギア191dが並進運動する。ラックギア191dが前方上向きに並進運動すると、屈曲部191aの高さ位置が上方に移動する。このとき、アンダーフレーム160上におけるラックギア191dとピニオンギア192の噛合部の位置及びガイド部材193の位置が規定されており、かつ、二つのリンクバー191b、191cが屈曲部191aにおいてなす角が固定されているため、屈曲部191aの運動軌跡は制限される。固定された二点を斜辺とする直角三角形の直角の頂点は、常に該二点の中点を中心とする円弧上に存在する。つまり、屈曲リフタリンクの屈曲部191aが、ラックギア191dとピニオンギア192の噛合位置とガイド部材193の位置の中点を中心とする仮想的な円弧上を移動する。
【0021】
ピニオンギア192を駆動することでラックギア191dを並進運動させ、屈曲部191aからラックギア191dとピニオンギア192の噛合位置までの後側リンクバー191cの長さを変化させたときに、屈曲部191aを円弧上に保つため、ピニオンギア192とラックギア191dの噛合部を中心に、後側リンクバー191cが前後方向に回転される。この回転運動は、保持部材191eがアンダーフレーム160に回転可能に取り付けられていることにより実現されている。
【0022】
このようなラックギア191dの並進運動と回転運動に従動して、屈曲部191aが円弧上に保たれるように、ガイド部材193がブラケット193aとともに回転し、さらにガイド部材193に挿通された前側リンクバー191bの摺動が起こる。このようにラック−ピニオンギア192とガイド部材193との協働により、屈曲部191aが円弧上を回動する。このとき、屈曲部191aの上下方向の位置が変化することにより、シートが昇降される。
【0023】
さらに、シートの左右に設置された一対の後側高さ調節手段190のピニオンギア192の軸が直線状の軸連結部材194によって連結されていることで、ハンドル195を操作したときに、左右一対の後側高さ調節手段190のピニオンギア192が同期して回転される。そして、左右それぞれの屈曲リフタリンク191の屈曲部191aの上下方向の位置が同期して変化する。一対の前側高さ調節手段180のピニオンギア軸も同様に連結され、一方のピニオンギアにハンドル185が接続されている。これにより、前後一箇所ずつのハンドルを操作すれば、シート全体を昇降させることができる。
【0024】
ここで、第一実施形態にかかる傾動型リフタリンクを使用する高さ調節手段9においては、シートクッションに与えられる荷重を全てセクタギア9cとピニオンギア9bの噛合部で負担する必要があるのに対し、本実施形態にかかる屈曲リフタリンク191を使用する場合には、荷重が後側リンクバー191cを長手方向に圧縮する方向にかけられるので、後側リンクバー191c全体で荷重を支持することができる。よって、本実施形態にかかるリフタ機構の方が一層、シート保持の安定性において優れている。
【0025】
図4は本発明の第三の実施形態にかかるリフタ機構付き車両用シート200を示している。リフタ機構270はシートの前方に設置された左右一対の前側高さ調節手段280と、シート後方に設置された左右一対の後側高さ調節手段290とに加え、左右一対のスライド手段250のロアレール252の上面に形成された上向きの第一ギア歯252aを備える。左右のロアレール252に形成される第一ギア歯252aは、同じ歯数を有する。
【0026】
前側及び後側高さ調節手段280、290は同じ構成を有するので、後側高さ調節手段290を例としてその構成を説明する。後側高さ調節手段290は、第二の実施形態において使用されたのと同様の屈曲リフタリンク291と、ガイド部材293とを有する。屈曲リフタリンク291の屈曲部291aはロアアーム240に連結され、前側リンクバー291bは長手方向に摺動可能にガイド部材293に挿通され、ガイド部材293は、第二の実施例におけるブラケット193aと同様の断面略コの字形のブラケット293aを介して屈曲リフタリンク291を含む面内で回転可能にアンダーフレーム260に取り付けられている。
【0027】
図5に後側リンクバー291c端部近傍の拡大図を示すが、高さ調節手段290はさらに、第一歯車294と、第一歯車294と同軸上に支持されて第一歯車294と一体的に回転する第二歯車295とを有する。第一歯車294及び第二歯車295は、抜け止め部を有するピン294aによって、アッパーレール251に固定されたアンダーフレーム260に軸回転可能に取り付けられている。第一歯車294は、第一ギア歯252aと噛合している。さらに、後側リンクバー291c端部の前側端縁には長手方向に第二ギア歯291dが形成されており、第二歯車295と噛み合っている。これら二箇所の噛合により、後側リンクバー291cの長手方向の並進運動がロックされ、屈曲部291aの高さ位置が固定されている。
【0028】
アッパーレール251がロアレール252上で前方へ摺動されたとき、アッパーレール251に固定されたアンダーフレーム260に第一歯車294が軸回転可能に取り付けられているので、ロアレール252上の第一ギア歯252aと噛合した第一歯車294は前方に軸回転する。このとき、第二歯車295は第一歯車294と一体に前方へ回転する。第二歯車295の回転によって、第二歯車295と噛合した第二ギア歯291dが長手方向に沿って前方上向きに並進運動する。つまり、後側リンクバー291cが第二歯車295と第二ギア歯291dの噛合部から前方上向きに繰り出され、屈曲部291aが前側上方に移動する。
【0029】
このとき、第二の実施形態と同様に、屈曲リフタリンク291の屈曲部291aは、円弧上を移動するので、繰り出された後側リンクバー291cの長さに応じて後側リンクバー291cが屈曲リフタリンク291を含む面内で回転する。第二ギア歯291dは、第二歯車295との噛合を維持するために、噛合部の反対側から保持具296によって支持されているが、このような後側リンクバーの回転を実現するためは保持具296もそれに伴って回動する必要がある。
【0030】
図5(a)に示されるように、第一歯車294には、略円弧形状の保持具設置穴297が設けられ、保持具296が保持具設置穴297に挿通された状態でアンダーフレーム260に取り付けられている。図5(b)のA−A断面図に示されるように、保持具296は、厚み方向に手前側部296a、中央部296b、奥側部296cの三つの部分からなる。中央部296bの第一歯車294の径方向つまりA−A方向の幅は、手前側部296a及び奥側部296cの幅よりも狭くなっている。また、保持具設置穴297もA−A方向の幅の異なる三つの部分からなり、それぞれA−A方向に保持具296の三つの部分296a、296b、296cと略同一の幅を有する。これらの構成により、保持具296は保持具設置穴297に対して抜け止めされながらも、略円弧状の保持具設置穴297の中を回動することができるので、後側リンクバー291cの端部が第一歯車294及び第二歯車295の軸を中心に回転したときに、この回転運動に追随して移動し、第二ギア歯291dを第二歯車295と噛合した状態に保持することができる。このような構成によれば、後側リンクバー291cが繰り出されたときに、後側リンクバー291cは第二ギア歯291dと第二歯車295の間の噛合を維持したまま屈曲部291aを円弧上に保つのに必要な角度だけ前方に回転することができる。
【0031】
後側リンクバー291cの後端部がこのように並進運動及び回転運動したとき、それに従って屈曲部291aからガイド部材293の位置までの前側リンクバー291bの長さが短くなるように、前側リンクバー291bがガイド部材293中で摺動する。同時に、前側リンクバー291bはガイド部材293を中心に前方に回転される。このようにして、アッパーレール251をロアレール252に対して前方にスライドさせることで、屈曲リフタリンク291の屈曲部291aが上方に移動する。また、反対にアッパーレール251を後方にスライドさせることにより、屈曲リフタリンク291の屈曲部291aが下方に移動する。
【0032】
前側高さ調節手段280は、後側高さ調節手段290と同一の構造を備える。ロアレール252上に形成された第一ギア歯252aを後側高さ調節手段290と共有し、第一歯車に噛合させている。アッパーレール251がロアレール252に対して前側にスライドされたとき、前側高さ調節手段280の第一歯車と後側高さ調節手段290の第一歯車が同期して回転するので、前側高さ調節手段280の屈曲部と後側高さ調節手段290の屈曲部は上方に同じ距離だけ移動する。アッパーレール251をロアレール252に対して後側にスライドさせたときも同様に、両屈曲部は同じ距離だけ下方へ移動する。
【0033】
左右それぞれの前側高さ調節手段280と後側高さ調節手段290の第一歯車が第一ギア歯252aと噛合しているため、スライド手段250におけるアッパーレール251の摺動により、左右それぞれの前側高さ調節手段280と後側高さ調節手段290の第一歯車の回転が同期される。さらに、左右のロアレール252に形成された第一ギア歯252が同じ歯数を有するため、スライド手段250におけるアッパーレール251の摺動により、一対の前側高さ調節手段280の第一歯車の回転が相互に同期され、一対の後側高さ調節手段290の第一歯車の回転が相互に同期される。つまり、四箇所全ての高さ調節手段の第一歯車の回転がスライド手段250におけるアッパーレール251の摺動によって同期され、四つの屈曲リフタリンクの屈曲部が同時に同じ距離だけ上下運動し、シートクッションを床面に対して昇降させる。
【0034】
リフタ機構270においては、このように四個全ての高さ調節手段がロック機構を有するので、シートクッションに与えられる荷重を高い安定性をもって支持することができる。また、四個全ての高さ調節手段における屈曲部の上下運動が同期されている。しかも、ロアレール252に対するアッパーレール251の摺動だけでこの同期が達成され、高さ調節手段を相互に接続する接続部材を別途備える必要がなく、レバー、モータ等の高さ調節デバイスも必要としない。いわば、第一ギア歯252aを備えるロアレール252上でのアッパーレール251のスライド動作が第一伝達機構及び第二伝達機構として機能する。これらの点において、本実施形態にかかるリフタ機構270は、第一の実施形態及び第二の実施形態におけるリフタ機構に比べて優れている。
【0035】
本実施形態にかかるリフタ機構270の構成によると、シートを昇降運動させるときに、必然的にシートの前後運動を伴うことになる。しかし、運転席にこのようなリフタ機構付きシートが設置される場合には、低身長の運転者はシートの上方への移動と前方への移動を必要とし、高身長の運転者はシートの下方への移動と後方への移動を必要とするのが通常であるため、シートの昇降運動に前後運動を伴うことは問題とならない。
【0036】
また、上記の第三の実施形態では、四つ全ての高さ調節手段が同じ構成を有しているが、一対の前側高さ調節手段280と後側高さ調節手段290の第一ギア歯に対する第二ギア歯の減速比を異ならせておくことで、前側高さ調節手段280の屈曲部の上下移動の距離と、後側高さ調節手段290の屈曲部の上下移動の距離とを異ならせることができる。例えば、前側の高さ調節手段の第一ギア歯に対する第二ギア歯の減速比を後側の高さ調節手段のそれよりも小さなものにしておけば、アッパーレール251を前方にスライドさせた時に、前側高さ調節手段280の屈曲部の方が後側高さ調節手段290の屈曲部よりも長い距離だけ上方に移動することになる。つまり、シートの前方が後方に比べて持ち上がることになる。一般に、低身長の運転者にとっては、シートの前方が持ち上げられている方が運転動作を行いやすいので、このような構成とすることは好適である。
【0037】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、前方一対の高さ調節手段と後側一対の高さ調節手段を同一のものとする必要はなく、一対の前側高さ調節手段は第一の実施例と同様のものとし、一対の後側高さ調節手段は第二の実施例と同様のものとする構成が例示できる。
【符号の説明】
【0038】
2 シートクッション
4 ロアアーム
5 スライド手段
51 アッパーレール
52 ロアレール
6 アンダーフレーム
7 リフタ機構
8 前側高さ調節手段
9 後側高さ調節手段
9a リフタリンク
9b ピニオンギア
9c セクタギア
91 軸連結部材
140 ロアアーム
160 アンダーフレーム
170 リフタ機構
180 前側高さ調節手段
190 後側高さ調節手段
191 屈曲リフタリンク
191a 屈曲部
191b 前側リンクバー
191c 後側リンクバー
191d ラックギア
192 ピニオンギア
240 ロアアーム
250 スライド手段
251 アッパーレール
252 ロアレール
252a 第一ギア歯
260 アンダーフレーム
270 リフタ機構
280 前側高さ調節手段
290 後側高さ調節手段
291 屈曲リフタリンク
291a 屈曲部
291b 前側リンクバー
291c 後側リンクバー
291d 第二ギア歯
293 ガイド部材
294 第一歯車
295 第二歯車
296 保持具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションが前記シートクッションを支持するアンダーフレームにリフタ機構を介して上下動可能に支持された車両用シートにおいて、
前記リフタ機構には左右一対のシートクッションの前部の高さ位置を調節するための前側高さ調節手段が備えられ、さらに該前側高さ調節手段よりも後方には左右一対のシートクッションの後部の高さ位置を調節するための後側高さ調節手段が備えられ、
前記前側高さ調節手段と前記後側高さ調節手段はそれぞれ、上端部が前記シートクッションに取り付けられ、下端部が前記アンダーフレームに取り付けられたリフタリンク部材を備え、前期リフタリンク部材の一端側には、前記アンダーフレーム又は前記シートクッションに軸回転可能に取り付けられた歯車と噛合するギア歯を備え、
前記両前側高さ調節手段の両歯車は第一伝達機構によって相互に同期回転され、前記両後側高さ調節手段の両歯車の回転は第二伝達機構によって相互に同期回転されることを特徴とするリフタ機構付き車両用シート。
【請求項2】
前記車両用シートはさらに、フロア面に固定されたロアレールと、前後方向に摺動可能に該ロアレールに係合したアッパーレールとをそれぞれ有する左右一対のスライド手段を備え、前記アッパーレールの上には前記アンダーフレームが固定され、前記ロアレールの上面外側には上向きの第一ギア歯が形成され、前記アンダーフレームには同軸上に一体的に固定された第一歯車と第二歯車が軸回転可能に取り付けられ、前記第一歯車は前記第一ギア歯と噛合され、
前記リフタリンク部材は、中途部位に設けられた屈曲部がシートクッションに連結され、前記屈曲部から後方下向きに延出した後側リンクバーの端部前面には第二ギア歯が一体に形成されて前記第二歯車と噛合され、前記屈曲部から前方下向きに延出した前側リンクバーの端部はガイド部材を介して長手方向に摺動可能かつ前記リフタリンク部材を含む面内で回転可能に前記アッパーレールに取り付けられ、
左右のアッパーレールがロアレールに対して前後方向に移動したとき、前記一対の前側高さ調節手段の第一歯車と前記一対の後側高さ調節手段の第一歯車とがそれぞれ左右で同期的に回転されるように構成されることを特徴とする請求項1に記載のリフタ機構付き車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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