説明

リフロー加熱方法及びリフロー加熱装置

【課題】リフロー炉内に並列に設けた複数の搬送レーンのうち、一部の搬送レーンのみに実装基板を載せて搬送してリフロー加熱する場合でも、リフロー炉内の温度プロファイルのずれを少なくして、リフローはんだ付けの品質低下を防止できるようにする。
【解決手段】リフロー炉11内には、実装基板12を搬送する複数の搬送レーン13を並列に設け、一部の搬送レーン13(L)のみに実装基板12を載せて搬送してリフロー加熱する場合は、実装基板12を載せない搬送レーン13(R)に、上記一部の搬送レーン13(L)に載せた実装基板12と熱吸収特性(熱容量、熱伝導率等)が類似するダミー被加熱体14を載せて搬送する。この場合、リフロー炉11内でダミー被加熱体14が吸収する熱量が実装基板12が吸収する熱量とほぼ同じになるようにダミー被加熱体14を形成すれば良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフロー炉内に複数の搬送レーンを並列に設け、各搬送レーンで実装基板を同時に搬送してリフロー加熱するリフロー加熱方法及びリフロー加熱装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
近年、リフローはんだ付け工程の生産能率を向上させるために、特許文献1(特開平10−163623号公報)に記載されているように、リフロー炉内に複数の搬送レーンを並列に設け、各搬送レーンで実装基板を同時に搬送してリフロー加熱するようにしたものがある。
【特許文献1】特開平10−163623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
複数の搬送レーンを並列に設けたリフロー炉は、全ての搬送レーンに実装基板を載せてリフロー加熱したときに、リフロー炉内の温度プロファイルが最適となるように設計されている。しかし、常に、全ての搬送レーンに実装基板を載せてリフロー加熱するとは限らず、多品種少量生産等では、複数の搬送レーンのうち、一部の搬送レーンのみに実装基板を載せてリフロー加熱する場合があるが、このような場合に、次のような問題が生じる。
【0004】
リフロー炉内では、搬送レーンに載せた実装基板が熱を吸収する吸熱源となるため、一部の搬送レーンのみに実装基板を載せた場合は、全ての搬送レーンに実装基板を載せた場合と比較して、リフロー炉内の各実装基板による合計吸熱量が少なくなるだけでなく、リフロー炉内での吸熱源の分布がアンバランスにもなる。このため、図2に示すように、リフロー炉内の温度プロファイルが最適な温度プロファイルからずれてしまい、この温度プロファイルのずれがリフローはんだ付けの品質を低下させる要因となる。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、リフロー炉内に並列に設けた複数の搬送レーンのうち、一部の搬送レーンのみに実装基板を載せて搬送してリフロー加熱する場合でも、リフロー炉内の温度プロファイルのずれを少なくすることができて、リフローはんだ付けの品質低下を防止できるリフロー加熱方法及びリフロー加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、リフロー炉内に複数の搬送レーンを並列に設け、各搬送レーンで実装基板を同時に搬送してリフロー加熱する方法において、前記複数の搬送レーンのうち、一部の搬送レーンのみに実装基板を載せて搬送してリフロー加熱する際に、実装基板を載せない搬送レーンに、前記一部の搬送レーンに載せた実装基板と熱吸収特性(熱容量、熱伝導率等)が類似するダミー被加熱体を載せて搬送するようにしたものである。
【0007】
この方法では、実装基板を載せない搬送レーンに、実装基板と熱吸収特性(熱容量、熱伝導率等)が類似するダミー被加熱体を載せることで、全ての搬送レーン上に熱吸収特性が類似する吸熱源(実装基板又はダミー被加熱体)を載せることができる。これにより、一部の搬送レーンのみに実装基板を載せてリフロー加熱する場合でも、リフロー炉内の温度プロファイルを全ての搬送レーンに実装基板を載せた場合とほほ同様の温度プロファイルとすることができて、リフロー炉内の温度プロファイルのずれを少なくすることができ、リフローはんだ付けの品質低下を防止することができる。
【0008】
また、本発明は、請求項2,3のように、リフロー炉内に複数の搬送レーンを並列に設け、各搬送レーンで実装基板を同時に搬送してリフロー加熱するものにおいて、前記各搬送レーンにそれぞれ吸熱量を制御可能な吸熱手段を設置し、前記複数の搬送レーンのうち、一部の搬送レーンのみに実装基板を載せて搬送してリフロー加熱する際に、実装基板を載せていない搬送レーンの吸熱手段を吸熱動作させると共に、その吸熱量を前記一部の搬送レーンに載せた実装基板の熱吸収特性(熱容量、熱伝導率等)に応じて制御するようにしても良い。
【0009】
このように、実装基板を載せていない搬送レーンの吸熱手段を吸熱動作させると共に、その吸熱量を実装基板の熱吸収特性(熱容量、熱伝導率等)に応じて制御するようにすれば、実装基板を載せていない搬送レーンでも、実装基板を載せた搬送レーンと同様の吸熱量を吸熱手段によって確保することができる。これにより、一部の搬送レーンのみに実装基板を載せてリフロー加熱する場合でも、吸熱手段によってリフロー炉内の温度プロファイルを全ての搬送レーンに実装基板を載せた場合とほほ同様の温度プロファイルとすることができて、リフロー炉内の温度プロファイルのずれを少なくすることができ、リフローはんだ付けの品質低下を防止することができる。しかも、ダミー被加熱体を準備したり、ダミー被加熱体を搬送レーンに載せる作業を行う必要がないため、生産性を低下させずに済む利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体化した2つの実施例1,2を説明する。
【実施例1】
【0011】
本発明の実施例1を図1及び図2に基づいて説明する。
まず、図1に基づいてリフロー加熱装置の構成を説明する。
リフロー炉11内には、実装基板12を搬送する2台の搬送レーン13が並列に設けらている(3台以上の搬送レーン13を並列に設けても良い)。リフロー炉11内には、各搬送レーン13の上方部等に、実装基板12を加熱する遠赤外線ヒータ等の加熱手段16が設けられている。
【0012】
リフロー炉11内の2台の搬送レーン13のうち、片方の搬送レーン13(L)のみに実装基板12を載せて搬送してリフロー加熱する場合は、実装基板12を載せない搬送レーン13(R)に、上記片方の搬送レーン13(L)に載せた実装基板12と熱吸収特性(熱容量、熱伝導率等)が類似するダミー被加熱体14を載せて搬送する。このダミー被加熱体14は、実装基板12と同等の材料で形成されたものを用いても良いし、実装基板12とは異なる材料で形成されたものを用いても良く、また、ダミー被加熱体14の形状も、実装基板12とほぼ同じ形状であっても良いし、異なる形状であっても良い。要は、リフロー炉11内でダミー被加熱体14が吸収する熱量が実装基板12が吸収する熱量とほぼ同じになるように形成すれば良い。
【0013】
また、一方の搬送レーン13(L)のみに実装基板12を載せ、他方の搬送レーン13(R)にダミー被加熱体14を載せる場合は、実装基板12の数と同じ数のダミー被加熱体14を他方の搬送レーン13(R)に載せても良いし、実装基板12の数とダミー被加熱体14の数が異なっても良い。
【0014】
実装基板12の数と同じ数のダミー被加熱体14を他方の搬送レーン13(R)に載せる場合は、リフロー炉11内での各ダミー被加熱体14の吸熱量が各実装基板12の吸熱量とほぼ同一となるように形成すると共に、各ダミー被加熱体14の搬送間隔を各実装基板12の搬送間隔と同じにすれば良い。
【0015】
実装基板12の数とダミー被加熱体14の数が異なっている場合は、リフロー炉11内での全ダミー被加熱体14の合計吸熱量がリフロー炉11内での全実装基板12の合計吸熱量とほぼ同一となるように(又は両者の合計吸熱量の差が小さくなるように)、ダミー被加熱体14の数を設定すると共に、リフロー炉11内でのダミー被加熱体14の数が少ないほどダミー被加熱体14の搬送間隔を長くするように設定すれば良い。
【0016】
リフロー炉11を設置する基台17内には、各搬送レーン13で搬送したダミー被加熱体14をリフロー炉11の出口側から入口側に返送するための返送コンベア15が設けられている。この基台17内の返送コンベア15がリフロー炉11内の加熱手段16で加熱されないように基台17とリフロー炉11との間が断熱壁で仕切られ、返送コンベア15でダミー被加熱体14を返送する際に該ダミー被加熱体14を放熱させて温度低下させるようになっている。尚、基台17内にダミー被加熱体14を強制冷却するための冷却ファン等の強制冷却手段を設けても良い。
【0017】
このリフロー炉11は、全ての搬送レーン13に実装基板12を載せてリフロー加熱したときに、リフロー炉11内の温度プロファイル(図2参照)が最適となるように加熱手段16の発熱量や配置場所が設定されている。従って、全ての搬送レーン13に実装基板12を載せてリフロー加熱する場合は、ダミー被加熱体14を使用せずに、実装基板12をリフロー加熱すれば良い。
【0018】
リフロー炉11内では、搬送レーン13に載せた実装基板12が熱を吸収する吸熱源となるため、片方の搬送レーン13(L)のみに実装基板12を載せた場合は、両方の搬送レーン13(L,R)に実装基板12を載せた場合と比較して、リフロー炉11内の各実装基板12による合計吸熱量が少なくなるだけでなく、リフロー炉11内での吸熱源の分布がアンバランスにもなる。このため、ダミー被加熱体14を使用しない場合は、図2に示すように、リフロー炉11内の温度プロファイルが最適な温度プロファイルからずれてしまい、この温度プロファイルのずれがリフローはんだ付けの品質を低下させる要因となる。
【0019】
そこで、本実施例1では、片方の搬送レーン13(L)のみに実装基板12を載せてリフロー加熱する場合は、実装基板12を載せない搬送レーン13(R)にダミー被加熱体14を載せて搬送する。この際、リフロー炉11内での全ダミー被加熱体14の合計吸熱量がリフロー炉11内での全実装基板12の合計吸熱量とほぼ同一となるように(又は両者の合計吸熱量の差が小さくなるように)、ダミー被加熱体14の使用数を算出して、その使用数に応じた搬送間隔でダミー被加熱体14を搬送する。
【0020】
このようにすれば、片方の搬送レーン13(L)のみに実装基板12を載せてリフロー加熱する場合でも、リフロー炉11内の温度プロファイルを両方の搬送レーン13(L,R)に実装基板12を載せた場合とほほ同様の温度プロファイルとすることができて、リフロー炉11内の温度プロファイルのずれを少なくすることができ、リフローはんだ付けの品質低下を防止することができる。
【実施例2】
【0021】
次に、図3を用いて本発明の実施例2を説明する。但し、上記実施例1と実質的に同じ部分は同じ符号を付して説明を簡略化し、主として異なる部分を説明する。
本実施例2においても、リフロー炉11内には、2台(又は3台以上)の搬送レーン13が並列に設けらている。本実施例2では、ダミー被加熱体14を使用しないため、基台17内には、返送コンベア15が設けられていない。
【0022】
本実施例2では、各搬送レーン13に、それぞれ吸熱量を電気的に制御可能な吸熱手段18が設置されている。この吸熱手段18は、例えばペルチェ素子を用い、その吸熱面側を上向きとして加熱手段16側に露出させ、発熱面側を下向きにした状態で設置されている。各搬送レーン13の吸熱手段18は、実装基板12の搬送・加熱を妨げない位置に各搬送レーン13の入口側から出口側までの搬送区間をほぼ均等に吸熱できるように配置されている。各吸熱手段18の発熱面側(下面側)にヒートパイプ等の熱輸送手段(図示せず)を設けて、各吸熱手段18からの放熱をリフロー炉11内の上部に輸送してリフロー加熱の熱源の一部として再利用するようにしても良い。或は、各吸熱手段18の発熱面側(下面側)にヒートシンク等の放熱手段(図示せず)を設けて、当該放熱手段からリフロー炉11の外部に放熱させるようにしても良い。
【0023】
各搬送レーン13毎に吸熱手段18の印加電圧又は電流をコントローラ(制御手段)で制御することで、各搬送レーン13毎に吸熱手段18の吸熱量を独立して制御できるようになっている。
【0024】
全ての搬送レーン13に実装基板12を載せてリフロー加熱する場合は、全ての搬送レーン13の吸熱手段18への通電を全て停止(OFF)して、全ての搬送レーン13の吸熱手段18が吸熱動作しないようにする。
【0025】
これに対して、一部の搬送レーン13(L)のみに実装基板12を載せてリフロー加熱する場合は、実装基板12を載せない搬送レーン13(R)のみ、吸熱手段18に通電して吸熱動作させると共に、該吸熱手段18の吸熱量(印加電圧又は電流)をコントローラ(制御手段)で実装基板12の熱吸収特性に応じて制御する。具体的には、実装基板12を載せない搬送レーン13(R)の吸熱手段18の合計吸熱量がリフロー炉11内での全実装基板12の合計吸熱量とほぼ同一となるように(又は両者の合計吸熱量の差が小さくなるように)、該吸熱手段18の吸熱量(印加電圧又は電流)を制御する。
【0026】
このようにすれば、一方の搬送レーン13(L)のみに実装基板12を載せてリフロー加熱する場合でも、他方の搬送レーン13(R)の吸熱手段18の吸熱動作によってリフロー炉11内の温度プロファイルを両方の搬送レーン13(L,R)に実装基板12を載せた場合とほほ同様の温度プロファイルとすることができて、リフロー炉11内の温度プロファイルのずれを少なくすることができ、リフローはんだ付けの品質低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1のリフロー炉の構成を概略的に示す縦断面図である。
【図2】リフロー炉内の温度プロファイルの一例を説明する図である。
【図3】本発明の実施例2のリフロー炉の構成を概略的に示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
11…リフロー炉、12…実装基板、13…搬送レーン、14…ダミー被加熱体、15…返送コンベア、16…加熱手段、17…基台、18…吸熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフロー炉内に複数の搬送レーンを並列に設け、各搬送レーンで実装基板を同時に搬送してリフロー加熱する方法において、
前記複数の搬送レーンのうち、一部の搬送レーンのみに実装基板を載せて搬送してリフロー加熱する際に、実装基板を載せない搬送レーンに、前記一部の搬送レーンに載せた実装基板と熱吸収特性が類似するダミー被加熱体を載せて搬送することを特徴とするリフロー加熱方法。
【請求項2】
リフロー炉内に複数の搬送レーンを並列に設け、各搬送レーンで実装基板を同時に搬送してリフロー加熱する方法において、
前記各搬送レーンにそれぞれ吸熱量を制御可能な吸熱手段を設置し、
前記複数の搬送レーンのうち、一部の搬送レーンのみに実装基板を載せて搬送してリフロー加熱する際に、実装基板を載せていない搬送レーンの吸熱手段を吸熱動作させると共に、その吸熱量を前記一部の搬送レーンに載せた実装基板の熱吸収特性に応じて制御することを特徴とするリフロー加熱方法。
【請求項3】
リフロー炉内に複数の搬送レーンを並列に設け、各搬送レーンで実装基板を同時に搬送してリフロー加熱するリフロー加熱装置において、
前記各搬送レーンにそれぞれ設置され、吸熱量を制御可能な吸熱手段と、
前記各搬送レーンの吸熱手段の吸熱量を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記複数の搬送レーンのうち、一部の搬送レーンのみに実装基板を載せて搬送してリフロー加熱する際に、実装基板を載せていない搬送レーンの吸熱手段を吸熱動作させると共に、その吸熱量を前記一部の搬送レーンに載せた実装基板の熱吸収特性に応じて制御することを特徴とするリフロー加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−200188(P2009−200188A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39513(P2008−39513)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】