説明

リボンユニットを含むチューブ密閉型光ケーブル

【課題】光ケーブルの防水能力及び圧縮特性を向上させると同時に、光ケーブルの製造工程を簡略化することができ、工程の経済性を向上させることができるリボンユニットを含むチューブ集合型光ケーブルを提供する。
【解決手段】リボンユニットを含むチューブ密閉型光ケーブルの構造において、ケーブルの中心部材を吸水性物質でコーティングする光ケーブル及び中心部材の周囲を囲む一つ以上のチューブと、チューブを囲む外皮の間の空いた空間に吸水性物質でコーティングされた介在物を挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リボンユニットを含むチューブ密閉型光ケーブルの構造に関するもので、より詳細には、ケーブルの中心部材を吸水性物質でコーティングする光ケーブル及び中心部材の周囲を囲む一つ以上のチューブと、チューブを囲む外皮の間の空いた空間に吸水性物質でコーティングされた介在物を挿入する光ケーブルを提供することによって、光ケーブルの防水能力及び圧縮特性を向上させると同時に、光ケーブルの製造工程を簡略化し、工程の経済性を向上させることができるリボンユニットを含むチューブ密閉型光ケーブルの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ケーブルは、テレビ、コンピュータ、電話などの電気、電子的な信号を伝達することに幅広く使われており、特に、従来の同軸ケーブルに比べて膨大な情報をスピーディーに伝達でき、益々脚光を浴びている。しかし、このような光ケーブルに使われる光ファイバーは微小な直径を持って、衝撃に弱く、特に水分との接触により損傷しやすい特性を持っている。このような光ファイバーを水分及び外部の衝撃から保護できる構造を持つ光ケーブルが切実に要求されてきており、これに伴い多様な構造を持つ光ケーブルが開発されてきた。
【0003】
従来の光ケーブル構造の一例として、図1は米国特許第5,229,851号明細書(特許文献1)に開示された光ケーブルの構造を示す。図1に示すように、光ケーブルは中心部材10、中心部材周囲を所定の距離を置いて方向を変える螺旋構造(hand helix)で巻いている一つ以上の液体不透性チューブ16、チューブの内部に緩く受容される一つ以上のリボンユニット14及び液体不侵透性チューブを覆っているプラスチック材質の外皮20を含んでおり、光ファイバーを水分及び外部の衝撃から保護するために、外皮の内膜とチューブとの間、及びチューブ間の全ての空いた空間にジェリー形態の防水物質12を充填している。
【0004】
しかし、実際ケーブルを連結して使用するためには、光ケーブルから光ファイバーを取り出す必要がある。前述したようにジェリー形態の防水物質をケーブル内に充填すると、光ファイバーを取り出すためにジェリーも同様にケーブルから除去しなくてはならない。したがって、ジェリーにより手や装備が汚染されるという短所があり、ジェリー自体の粘性によってこれを充填する工程に時間が多くかかるようになる。これは工程全体の収率及び経済性の低下につながる。また、ジェリーがチューブ間の空いた空間に完全に満たされず、満足すべき圧力特性を得られなかったのが事実である。
【0005】
このため、前述したような欠点を補完するための研究が継続的に行われてきたのであり、その結果図2及び図3に示すような構造を持つ光ケーブルが開発された。図2及び図3に示す光ケーブルは、米国特許第5,621,841号明細書(特許文献2)に開示されたものである。まず、図2の光ケーブルは図1に示すように、中心部材10、中心部材を交互のハンドヘリックス構造で巻いているチューブ16、チューブ内に位置するリボンユニット14及びチューブ16の周囲を覆っている外皮20を含む。この光ケーブルにおいて、チューブ間の空間を防水糸24で満たし、チューブ16をまず防水テープ22で巻いてから、その周囲をプラスチック材質の外皮20で覆う構造を持つ。
【0006】
すなわち、この光ケーブルではジェリー形態の防水物質の代わりに防水糸及びリボンを覆う防水テープを使用することによって、ジェリー形態の防水物質を使用した場合に現れる問題点を解決している。しかし、防水糸は高吸水性ポリマーを含む粉末または微細糸で構成されるが、前述したように光ケーブルにおいては、このような防水糸がケーブルの組立て工程中外部に露出されている。チューブが防水糸の表面に摩擦されることがあるので、粉塵が発生するようになる。このような粉塵は製品不良及び工場内清潔性を阻害する要素となるので、工程の経済性及び収率が低下するおそれがあるという問題点がある。
【0007】
また、図3に示す光ケーブルにおいても、リボン型光ケーブルは中心部材10、チューブ16、リボンユニット及び外皮20からなり、中心部材の周囲を防水テープ26で縦巻し、チューブ間の空いた空間を防水糸で充填する構造を持っている。これもまた図2による光ケーブルで現れる問題点を解決することができず、しかも図3による構造によれば、ケーブルの組立て工程において防水テープを縦巻するための別の装置及び工程が必要になる。また、作業中に防水テープの入替え作業が必要なため、連続作業が難しくなって、工程の経済性を低下させる。さらに、テープを縦巻する場合、テープ間に隙間が生じるおそれがあり、ケーブルの防水特性が低下する問題点がある。
【0008】
図2及び図3の光ケーブルで圧力特性及び屈曲特性が低下する問題点を解決するための構造として、図4に示すような構造を持つ米国特許第6,014,487号明細書(特許文献3)による光ケーブルがある。図4を参考にすれば、リボン型光ケーブルは中心部材10、ジェリー型防水物質12が充填されたチューブ16、リボンユニット14及び外皮20からなり、チューブ16間の空いた空間にケーブルの圧力特性を向上させるための介在物28を挿入し、介在物の周囲に水膨潤可能部材24を配置する構造を持っている。プラスチック材質の介在物を挿入することによって、ケーブルの圧力特性を向上させることができ、介在物周囲の防水部材を通じてケーブルに水分が吸収されるのを防ぐことはできる。しかし、介在物自体は何の防水特性をも持つことができないので、ケーブルの充分な防水特性を得ることができない。また、防水部材として糸を使用することによって、ケーブルの組立て工程の間、糸による粉塵が発生するおそれがある。また、チューブ、介在物及び防水部材を同時に配置する複雑な作業が必要になって、生産性が低下する問題がある。
【0009】
このような従来技術の問題点によって、優れた防水特性及び圧力特性を持ちながらも、工程が簡便で、汚染物質が発生せず、経済性を最大にできる構造を持つ光ケーブルが切実に要求されている。
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,229,851号明細書
【特許文献2】米国特許第5,621,841号明細書
【特許文献3】米国特許第6,014,487号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで本発明の目的は、従来の光ケーブルの問題点を解決するために、中心部材に吸水性物質自体をコーティングして、らせん状チューブとポリエチレン外皮との間に非ジェリー物質の水膨潤可能部材を形成することにより、優れた防水特性を持ちながらも、簡単な工程で生産が可能であり、防水糸による粉塵の発生などを防止できるリボンユニットを含む光ケーブルを提供することにある。
【0012】
本発明のもう一つの目的は、チューブとプラスチック材質の外皮間の空いた空間に吸水性物質がコーティングされた介在物を挿入することで、優れた圧力特性及び防水特性を持ちながらも、工程が簡単で、防水糸による粉塵の発生などを防止できるリボンユニットを含むチューブ密閉型光ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため本発明に係る光ケーブルは、吸水性物質で表面をコーティングされた中心部材、内部に水分の侵入を防止できる防水物質で充填され、少なくとも一つ以上の光ファイバーを含み、前記中心部材の周囲を所定の距離を置いて方向を変える螺旋構造(hand helix)で巻いている少なくとも一つ以上のチューブ、前記一つ以上のチューブ全体を覆っているプラスチック材質の外皮、及び前記らせん状チューブと外皮との間に形成されてケーブル内部への水分侵入を防ぐ非ジェリー(non−jelly)物質からなる水膨潤可能部材とから構成されるリボンユニットを含むチューブ密閉型光ケーブルとする。
【0014】
本願発明の他の目的及び態様については、添付する図に関連した以下の実施形態の記載から明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図5に示すように、本発明の光ケーブルは、吸水性物質114が表面にコーティングされた中心部材100と、内部に水分の侵入を防止できる防水物質102で充填され、少なくとも一つ以上の光ファイバを含んで、中心部材の周囲を所定の距離を置いて、方向を変える螺旋構造で巻いている少なくとも一つ以上のチューブ106と、チューブ106を覆っているプラスチック材質の外皮112と、及びらせん状チューブと外皮との間に形成されてケーブル内部への水分侵入を防止する非ジェリー(non−jelly)物質の水膨潤可能部材108とからなる。
【0016】
本発明のリボンユニット114を含むチューブ密閉型光ケーブルは、従来技術とは異なり、吸水性物質を中心部材100の周囲にコーティングして、非ジェリー物質の水膨潤可能部材108を形成することによって、製造工程を簡単にでき、防水糸による粉塵の発生を防止できると同時に、テープを縦巻した時に起こりうる防水特性の低下が発生しないで、優れた防水特性を持つことができる。
【0017】
前述したように光ケーブルにおいて、吸水性物質としては、少量の吸水性ポリマーが結びついた熱可塑性樹脂を使用することが望ましく、特に熱可塑性樹脂にはポリオレフィン樹脂を使用することが好ましい。
【0018】
しかし、ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン樹脂等一般的な樹脂をすべて使用できるが、好ましくはポリエチレンを使用することができ、前述したようにポリエチレン樹脂に吸水性ポリマーが結びついた吸水性物質の代表的な例としては、下記化学式(1)によるポリエチレン・ビニールアセテイト共重合体がある。
【0019】
【化1】

【0020】
前述したように、吸水性ポリマーが結びついた熱可塑性物質を吸水性物質に使用することによって、中心部材に吸水性物質を圧出する方法を通じて、吸水性物質を簡単にコーティングでき、防水テープを縦巻する場合のような別の工程もしくはシステムを必要としなくなり、圧出後非常に早く凝固できるので、中心部材のコーティング工程と、中心部材周囲のチューブ密閉作業をほとんど同時に進行できるようになる。したがって、光ケーブルの製造工程を簡単にできる。
【0021】
このような吸水性物質が水分を吸収するメカニズムを化学式(1)による物質をもって簡略に見てみる。まず物質が水分子と接触すればアセテイト基の酸素原子に結びついていたナトリウムイオンが水分子の酸素に配位結合し、下記化学式(2)の構造を持つようになるが、このようなメカニズムを通じて水分を吸収するようになる。特に、化学式(1)の物質は水分吸収時、いかなる副産物も発生せず、汚染物質の発生を最小化できて、光ケーブルの防水特性を最大にできる。
【0022】
【化2】

【0023】
前述したような光ケーブルにおいて、チューブと外皮との間に形成される非ジェリー物質の防水材としては、従来の防水材に使われた物質をすべて使用することができるが、特に、防水テープまたは高吸水性ポリマーを含む非金属引張線を使用することが好ましい。このような防水材を使用することによって、従来の防水糸を使用する際、発生しうる粉塵の発生を防止できて、ケーブルの防水特性を最大化できる。
【0024】
また、図6に示すように、前述したような光ケーブルの圧力特性を向上させるために、本発明の光ケーブルは、非ジェリー成分の防水物質で囲まれた中心部材100と、リボンユニット104内部に水分の侵入を防止できる防水物質102で充填され、少なくとも一つ以上の光ファイバーを含んで、中心部材100の周囲を所定の距離を置いて、方向を変える螺旋構造で巻いている少なくとも一つ以上のチューブ106と、チューブ106を覆っているプラスチック材質の外皮112と、及びチューブと外皮との間の空いた空間に位置し、吸水性物質114でコーティングされたプラスチック材質の介在物116とからなる。
【0025】
光ケーブルはプラスチック材質の介在物が含まれることによって、ケーブルの圧縮特性を向上させることができると同時に、介在物自体を吸水性物質でコーティングすることによって、従来技術と同じように別の防水材を介在物の周囲に配置する必要がなく、工程が簡単になりえる。また、介在物自体が防水特性を持つことによって、ケーブルの浸透防止能力を向上させることができ、防水糸による粉塵の発生を防止できる。
【0026】
光ケーブルにおいて、中心部材を囲む非ジェリー成分の防水物質としては、防水糸、防水テープ、吸水性物質からなるグループで選択されたいずれかを使用することが好ましい。
【0027】
また、介在物にコーティングされる吸水性物質または中心部材を覆っている吸水性物質としては、本発明の第一の実施形態で使われた物質と同一の物質を使用することができる。
【0028】
そして、介在物の材質には、一般的なプラスチックをすべて使用することができるが、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂からなるグループで選択されたいずれかの物質を使用することができる。
【0029】
また、前述したように光ケーブルにおいて、外皮とらせん状チューブとの間に非ジェリー成分の防水材を付加的に形成することによって、光ケーブルの防水特性をより一層向上させることができる。
【0030】
そして、非ジェリー成分の防水材としては、本発明の第一の実施形態で使用したものと同じ部材を使用することができる。
【0031】
本発明によれば、防水特性を向上させることができ、光ケーブルの製造工程を簡単にできて、粉塵の発生を防止することができ、ケーブルの長さに関係なく連続作業が可能なので、作業工程の生産性が向上し得る。また、光ケーブルの構造において、チューブ及び外皮間の空いた空間に吸水性物質でコーティングされたプラスチック材質の介在物を挿入することによって、別の付加工程なく光ケーブルの圧力特性及び防水特性を最大化できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来技術による光ケーブルの構造を示す図である。
【図2】従来技術による光ケーブルの構造を示す図である。
【図3】従来技術による光ケーブルの構造を示す図である。
【図4】従来技術による光ケーブルの構造を示す図である。
【図5】中心部材を吸水性物質でコーティングした、本発明に係る光ケーブルの構造を示す図である。
【図6】チューブとチューブを覆っている外皮間の空いた空間にコーティングされた介在物を挿入した、本発明に係る光ケーブルの構造を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ケーブルは非ジェリー成分の防水物質で覆われた中心部材と、
内部に水分の侵入を防止できる防水物質で充填され、少なくとも一つ以上の光ファイバーを含み、前記中心部材の周囲を所定の距離を置いて方向を変える螺旋構造で巻かれた少なくとも一つ以上のチューブと、
前記一つ以上のチューブ全体を覆っているプラスチック材質の外皮と、
前記チューブと外皮との間の空いた空間に位置し、吸水性物質でコーティングされたプラスチック材質の介在物とからなるリボンユニットを含むチューブ密閉型光ケーブル。
【請求項2】
前記非ジェリー成分の防水物質は、防水性テープ、防水糸、及び吸水性物質からなるグループの中で選択されたいずれかである請求項1に記載の光ケーブル。
【請求項3】
前記吸水性物質は、少量の吸水性ポリマーが結びついた熱可塑性樹脂である請求項1に記載の光ケーブル。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂はポリオレフィン樹脂である請求項3に記載の光ケーブル。
【請求項5】
前記ポリオレフィン樹脂はポリエチレンである請求項4に記載の光ケーブル。
【請求項6】
前記吸水性物質は下記の化学式(1)
【化1】

に表される物質である請求項1に記載の光ケーブル。
【請求項7】
前記介在物の材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂からなるグループの中から選択されたいずれかである請求項1ないし6のいずれかに記載の光ケーブル。
【請求項8】
前記外皮とらせん状チューブとの間に形成された非ジェリー成分の防水材をさらに含む請求項1ないし6のいずれかに記載の光ケーブル。
【請求項9】
前記非ジェリー物質の防水材は、防水テープまたは高吸水性ポリマーを含む非金属引張線である請求項8に記載の光ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−140538(P2007−140538A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336429(P2006−336429)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【分割の表示】特願2002−586058(P2002−586058)の分割
【原出願日】平成13年10月29日(2001.10.29)
【出願人】(503056975)エルジー ケーブル リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】LG CABLE LTD.
【住所又は居所原語表記】159,Samsung−dong,Kangnam−gu,135−090 Seoul,Republic of Korea
【Fターム(参考)】