説明

リポソーム製剤の製造方法

本発明は、リポソーム製剤の製造方法を提供する。本方法に基づき、脂質画分を、水混和性有機溶媒に溶解する。バルクリポソーム製剤を形成する条件下、脂質画分を含むこの溶液は、水溶液に加えられ混合される。望ましくは、該製剤は1種以上の活性成分を含み得る。バルクリポソーム製剤は、所望される場合、更に加工され得る。例えば、サイズ分画もしくは減少、水混和性有機溶媒の除去、凍結乾燥、又は他の処理である。本方法は、大規模又は市販規模でのリポソーム製剤の製造を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年2月11日出願の同時係属中の米国仮特許出願60/446,895に対する優先権を主張する。この出願の全体が、引用により本明細書に含まれるものとする。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、リポソーム製剤の製造方法、及びこれらの方法によって製造されるリポソーム製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
種々の活性成分(典型的には、抗腫瘍剤、抗真菌剤など)のリポソーム製剤を製造するための多くの公知の方法が存在する。このような方法として、例えば、エタノール希釈、薄フィルム水和、塩化メチレン法などが挙げられる。
【0004】
凍結乾燥によって乾燥脂質粉末を製造するためにリポソーム形成脂質を溶解するのにt−ブタノールを伴う、他の方法が提案された(参照、例えば、米国特許第6,146,659号及び同第6,090,407号)。乾燥脂質粉末の、適切な水性媒質による水和により、多層膜リポソームが形成され、このリポソームは、投与のために超音波処理と噴霧によりサイズが減少される。しかし、主に以下に起因して、リポソーム製造のための第1選択溶媒としてt−ブタノールは使用されていない:i)t−ブタノール中の脂質(特にコレステロール)溶解性が限定される。ii)非経口投与剤型における医薬用賦形剤としてのt−ブタノールの許容性。iii)リポソーム製剤からのt−ブタノールの除去の必要性。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小規模では有効であるが、現在の方法は、一般的に、多くの活性成分(特に、パクリタキセル及び他の抗癌剤)のリポソーム製剤の大量製造に不適当である。結果として、リポソーム製剤を製造するための現在の方法は、多くの医薬のリポソーム製剤の市販されている量を提供するのに十分ではない。従って、大規模又は市販規模で使用できる、活性成分のリポソーム製剤の製造方法の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
本発明は、リポソーム製剤の製造方法を提供する。本方法の1つの局面に従って、脂質画分は、水混和性有機溶媒に溶解される。脂質画分を含むこの溶液は、バルクリポソーム製剤を形成するのに適切な制御された条件下で、水溶液に添加され混合され得る。
【0007】
望ましくは、該製剤は1種以上の活性成分を含み得る。本発明方法の別の局面に従って、少なくとも1種の活性成分と脂質画分が水混和性有機溶媒に溶解される。活性成分と脂質画分を含むこの溶液は、バルクリポソーム製剤を形成するのに適切な制御された条件下で、水溶液に添加され、混合される。
【0008】
バルクリポソーム製剤は、所望される場合、例えば、サイズ分画もしくは減少、水混和性有機溶媒の除去、膜濾過による滅菌、凍結乾燥、又は他の処理により、更に処理され得る。
【0009】
本発明は更に、本発明の製造方法によって製造されるリポソーム製剤、及びこのような製剤の使用方法を提供する。
【0010】
本方法は、市販規模でのリポソーム製剤の製造を可能とする。本発明のこれらの利点、及び更なる本発明の特徴は、以下の詳細な説明と付随の図面から明白である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本発明の方法に従って、水混和性有機溶媒は、脂質画分及び/又は1種以上の活性成分を溶解するために使用される。多くのこのような水混和性有機溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、エタノール、及びメタノール)が、本発明の状況で使用できる。しかし、最も好ましい水混和性有機溶媒はt−ブタノールである。
【0012】
脂質画分は、リポソームを形成するために望まれる任意の適切な脂質(単数又は複数)を含み得る。脂質画分での好適な脂質として、例えば、コレステロール、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、テトラミリストイルカルジオリピン、及びトコフェリル酸サクシネートの1種以上が挙げられる。幾つかの実施態様では、テトラミリストイルカルジオリピンは、正に荷電したカチオン性カルジオリピン(例えば、1,3−ビス−(1,2−ビス−テトラデシロキシ−プロピル−3−ジメチルエトキシアンモニウムブロミド)−プロパン−2−オール[(R)−PCL−2]などで代用され得る。好ましくは、脂質画分は、トコフェリル酸サクシネートなどの抗酸化剤を含む。より好ましくは、脂質画分は、これらの化合物を少なくとも2種(例えば、3種以上)を含み、最も好ましくは、脂質画分は化合物のこの全群を含む。脂質画分の所望の組成に依存して、所望される場合、種々の脂質の量は調整され得る。しかし、脂質画分の好適な組成は、DOPCとして脂質の大部分を含む(例えば、DOPC:コレステロール:カルジオリピン 90:5:5(モル比))。抗酸化剤が含まれる場合、適切なモル比は、89:5:5:1 DOPC:コレステロール:カルジオリピン:トコフェリル酸サクシネートである。
【0013】
幾つかの実施態様では、有効な製剤は、水混和性有機溶媒に、脂質画分を形成する脂質の順次添加又は溶解によって製造できる。最も好ましくは、方法は、水混和性有機溶媒中に各々を溶解するために、コレステロール、DOPC、テトラミリストイルカルジオリピン、トコフェリル酸サクシネートの順次添加を含む。多くの実施態様では、脂質画分は、室温(即ち、約25℃)を超える温度で水混和性有機溶媒に溶解されるのが望ましい。従って、t−ブタノールが所望の溶媒である場合、脂質は、約35〜約65℃(例えば、約45〜約55℃)の温度で加えられ得る。
【0014】
脂質画分が水混和性有機溶媒に加えられた後、生じた溶液を水溶液に加えて、バルクリポソーム製剤を形成できる。この段階で、典型的には、バルクリポソーム製剤は、例えば、動的光散乱によって評価されるように、多層膜リポソームを含む。
【0015】
バルクリポソーム製剤の形成のための、水溶液量は変わり得るが、一般的には、それは、バッチサイズ(即ち、全リポソーム製剤の体積)の大部分である。好ましくは、水溶液量は、バッチサイズの少なくとも約80%であり、そして水溶液量は、より好ましくは、バッチサイズの少なくとも約90%である。幾つかの実施態様では、水溶液量は、バッチサイズを超え得る。
【0016】
水溶液は水でありうるが、より典型的には、1種以上の更なる成分、例えば、糖、張性調整剤などを含む。適切な張性調整剤として、塩(好ましくは、塩化ナトリウム)や当業者に公知の他の薬剤が挙げられる。張性調整剤は、任意の適切な量で存在し得る;しかし、存在するとき、張性調整剤は、典型的には、水溶液の約2%未満、より典型的には、水溶液の約1%未満を表す。好ましくは、水溶液は、保護糖(例えば、トレハロース、スクロース、マルトース、ラクトース、グルコース、デキストランなど、並びにこれらの組合せ)を含む。このような保護糖の1種以上は、任意の適切な量で存在し得る。しかし、存在するとき、保護糖調整剤は、典型的には、溶液の少なくとも約5%であり、一般的には、水溶液の約20%未満である(より典型的には、水溶液の約15%未満)。この目的のために最も好適な水溶液は、10〜12%のスクロース及び0.4〜0.9%の塩化ナトリウムである。
【0017】
脂質画分を含む水混和性有機溶媒溶液は、バルクリポソーム製剤の形成を達成できる任意の方法によって、水溶液に加えられ得る。しかし、t−ブタノール中の脂質溶液を40℃未満に冷却すると、脂質が沈殿する。同様に、室温に維持された水相溶液への脂質溶液の添加によってもまた、脂質の沈殿及び(存在するとき)活性成分の沈殿が起こり得る。従って、水混和性有機溶媒溶液は、(例えば、通常のミキサー(Labmasterによって製造されるミキサーなど)を用いて)混合しながら、例えば、30℃を超える温度に維持しつつ(例えば、約30〜約40℃に水溶液を維持しつつ)、約300〜約400rpmで、水溶液に加えられるのが好ましい。また、約35℃の温度を維持しながら、脂質画分を含む水混和性有機溶媒溶液が水溶液に加えられることは、しばしば、リポソーム形成を助ける。例えば、水溶液に加えられるとき、水混和性有機溶媒は、約25℃〜約40℃、より好ましくは、約30℃〜約40℃、最も好ましくは、約30℃〜約35℃(特に、水混和性有機溶媒がt−ブタノールである場合)に維持できる。
【0018】
脂質画分を含む水混和性有機溶媒が水溶液に加えられる速度、及びこのような添加の間の水溶液の混合速度は、沈殿を伴わない脂溶性活性成分(パクリタキセル、ドセタキセル)を含むリポソーム製剤の形成を明白にする。例えば、t−ブタノールが水混和性有機溶媒として働く場合、t−ブタノール及び水溶液は、約5分〜約1時間、より典型的には約10〜約45分、典型的には、約15〜約30分混合しながら、混合され得る。大規模製造のために、添加の時間(即ち、混合時間)は、かなり長くてもよい(例えば、数時間以上)。また、混合速度は、必要とされる場合、上記のように、300rpmよりやや低いか、又は400rpmよりもやや高くてもよい(例えば、少なくとも約200rpm、又は少なくとも約500rpm及び約800rpmまで、又は、さらに、約1000rpmまで)。従って、混合速度は、約200〜約800rpmであってもよい(例えば、約500rpm〜約1000rpm)。大規模製造のために、好適な範囲は、約600rpm〜約800rpmである。
【0019】
あるいは、脂質画分を含む水混和性有機溶媒溶液の、水溶液への添加は、溶液を冷却しながら達成され得る。典型的には、これは、冷却しながら、水溶液に脂質画分を含む水混和性有機溶媒の添加の後に溶液を混合することを含む。例えば、脂質画分を含む水混和性有機溶媒溶液は、約25℃〜約30℃の温度に冷却しながら、水溶液に加えることができる。
【0020】
多くの適用で、リポソーム製剤が医学適用に使用されるのが好ましい。このような適用に関し、製剤は、1種以上の活性成分を含み得る。活性成分は、リポソーム製剤に製剤化されるのが望ましい任意の薬剤(又は薬剤の組合せ)(例えば、低分子、オリゴヌクレオチド、又は他の薬剤)であり得る。典型的には、活性成分は、少なくとも1種の抗腫瘍剤又は抗真菌剤を含む。好適な活性成分は、タキサン又は誘導体(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、及び関連化合物(例えば、エポチロンA及びB、エポチロン誘導体など))及び他の抗癌剤(例えば、ミトキサントロン、カンプトテシン、及び関連分子(例えば、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン(即ち、SN−38)、イリノテカンなど)及び誘導体、ドキソルビシン、ダウノルビシン、メトトレキセート、アドリアマイシン、タモキシフェン、トレミフェン、シスプラチン、エピルビシン、ゲムシタビシンHCl、ミクソタントロン、及び癌の治療に有用な他の公知の化学療法剤、及びアンチセンスオリゴヌクレオチド(癌遺伝子の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、配列5’−GTGCTCCATTGATGC−3’を有する15マー アンチ c−raf 1オリゴヌクレオチドを開示する、米国特許第6,559,129号及び同第6,333,314号、及び同第6,126,965後を参照)))などの薬剤であり得る。
【0021】
好ましくは、活性成分は、タキサン又は誘導体、及びカンプトテシン又は誘導体からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤を含む。誘導体又はアナログは、もとのままの薬剤と同じ活性、必要に応じて、より高いかもしくはより低い程度であるが、無効ではない活性を有することを当業者は認識する。このような化学修飾は、構造活性相関(SAR)又は分子モデリングに基づく。例えば、官能基は置換又は除去され得る。最も好ましい活性成分は、パクリタキセルである。
【0022】
所望される活性成分の任意の量が使用できるが、パクリタキセルを使用する場合、典型的には、バッチサイズに対して、少なくとも約1%重量の活性成分の量を、水混和性有機溶媒に溶解する。より典型的には、少なくとも、(バッチサイズに対し)1mg/mlパクリタキセルを使用する場合、パクリタキセルを、バッチサイズに対して、少なくとも5体積%のt−ブタノールに溶解する。幾つかの実施態様では、活性成分の量が、バッチサイズに対し約5体積%を超えることが可能である。同様に、10体積%までのt−ブタノール、又は1:1(体積比)かつ合計で10体積%を超えないt−ブタノールとエタノールとの混合物が使用できる。
【0023】
化合物の化学に適切な様式で、製剤化プロセスの間に、1種以上の活性成分が加えられる。例えば、水溶性成分(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、バルクリポソーム形成の前などに、水溶液に加えられ得る。水溶液への水溶性成分の添加は、リポソームに捕捉されるか又はリポソームに結合するように、水混和性有機溶媒の添加前に行われ得る。あるいは、溶媒除去の後、しかし、以下に記載するろ過滅菌及び凍結乾燥の工程の前に、サイズが減少したリポソームに幾つかの水溶性活性成分(例えば、SN38)を加えられ得る。更に、有機溶媒に可溶性であるような活性成分は、水混和性有機溶媒に溶解することによって添加され得る。好ましくは、有機溶媒に可溶性である活性成分は、脂質画分の添加前に、水混和性有機溶媒に加えられ得る。1種以上の活性成分は、脂質画分を含む水混和性有機溶媒と水溶液を混合する間、又はその後に加えられ得る。
【0024】
多くの実施態様では、1種以上の活性成分(水溶性薬剤を除外)は、室温を超える温度(例えば、約35℃)で、水混和性有機溶媒、特にt−ブタノールに溶解するのが望ましい。従って、例えば、パクリタキセルが所望の活性成分である場合、それは、約35℃〜約65℃(例えば、約40℃〜約55℃)の温度で、t−ブタノールなどの水混和性有機溶媒に溶解され得る。他の活性成分がt−ブタノール又は他の水混和性有機溶媒に溶解され得る温度は、活性成分の性質に依存して変わり得るが、溶解の適切な温度を選択することは当業者の通常の技術内である。上記のように、温度を維持しながら、脂質画分と活性成分を含む水混和性有機溶媒を、水溶液に加えるのがしばしば望ましい。
【0025】
これらの方法によって形成されたバルクリポソーム製剤は、サイズ減少、又は分画、又は他の制御を受けるのがしばしば好ましい。このようなサイズ処理は、好ましくは、リポソームの粒子サイズをより均一にするように適用される。リポソーム製剤の平均サイズは、例えば、動的光散乱技術で測定した場合に、約50nm〜約200nm、好ましくは100〜180nm、より好ましくは100〜160nmであり得る。更に、サイズが減少したリポソームの99パーセンタイル分布(D99)は、例えば、動的光散乱技術で測定した場合、約100nm〜約400nm、好ましくは150〜300nm、より好ましくは180〜250nmであり得る。これを達成する代表的方法は、予め選択されたサイズ(例えば、0.2μm、0.1μmなど)のポリカーボネートフィルターなどの篩いを通す押出しによって、バルクリポソーム製剤を処理することである。好ましくは、リポソームは、製剤からの活性成分の沈殿無しに、典型的には約200psiまでの圧力で0.2μm及び0.1μmのポリカーボネートフィルターを通した押出しによってサイズが減少される。大規模製造に関し、圧力は、約200psiを超え得る(例えば、約200〜約800psi)。
【0026】
バルクリポソーム製剤(又はサイズが減少した製剤)は、脂質画分を溶解するのに最初に使用した水混和性有機溶媒の大部分を含む。多くの適用に関し(主として医学用途)、バルク又はサイズが減少したリポソーム製剤から溶媒を実質的に除去する(そして、より望ましくは、溶媒を完全除去する)ことが望ましい。更に、製剤が凍結乾燥されるのならば、凍結乾燥工程の間、リポソームサイズを保ち、かつリポソーム中の活性成分を維持するために、水混和性有機溶媒(t−ブタノール)を実質的に除去(好ましくは、完全除去)するのが必須である。リポソーム製剤から水混和性有機溶媒(特にt−ブタノール)を実質的に除去する1つの好適な方法は、タンジェンシャルフローろ過プロセスを用いるダイアフィルトレーションを含む。
【0027】
1例として、サイズが減少したリポソーム製剤は、1000ダルトン未満の低分子の通過を可能とする、0.1平方メートル〜数百平方メートルの範囲の表面積を有する、見かけの分画分子量(MWCO)(10,000ダルトン〜500,000ダルトンの範囲)のメンブランフィルターカセット又はカートリッジを通して再循環され得る。これらのメンブランフィルターを通すリポソーム溶液の再循環によって、そして出口流の制限によって、膜貫通圧力は、低分子(例えば、10%糖溶液及びt−ブタノール)が通過するのを可能とする膜の孔に対し生じ得る。この方法は、連続様式又は濃縮様式のいずれかで行われ得る。連続様式では、リポソーム製造で使用される水相を、濾液が除去されるのと同じ速度で、再循環しているリポソームに加える。濃縮−希釈様式では、t−ブタノールを含む水相は、サイズが減少したリポソームから除去され、所望の体積にリポソーム溶液を濃縮し(好ましくは、最初の体積の50%)、次いで、開始体積に戻すために、リポソーム製造で使用された水相を加える。水混和性溶媒(例えば、t−ブタノール)が所望レベルまで(好ましくは、全体積の1%未満)まで除去されるまで、この方法は、反復様式で繰り返され得る。連続又は濃縮−希釈様式のいずれかで、最小で水相の4体積(最初の開始体積)が交換されて、許容できるレベルまでt−ブタノールを除去する。
【0028】
リポソーム製品のろ過滅菌は、通常の滅菌方法(最後の加熱滅菌(オートクレーブなど)、ガンマ線照射、エチレンオキシド処理)の代替であり、それは、医療適用の全ての非経口投与形態の必要条件(法的な要求事項)である。リポソームを、0.22μ滅菌フィルターに通過させることによって、全ての生存微生物はリポソーム製品から除去される。ろ過滅菌は、無菌条件下で、滅菌された容器内に該製品を充填する前に行われる。
【0029】
製造、及び(所望ならば)サイズ制御及び/又は水混和性有機溶媒の除去の後、バルク又はサイズが減少した脂質製剤は、好ましくは、凍結乾燥される。任意の適切なデバイス又は方法が使用され得る。好適なデバイスは、Genesis−25EL(Virtisにより製造される)及び任意の適切なサイズの凍結乾燥機(例えば、Virtis,Edwards,and Hull Corp.により製造されるものなど)である。バルク又はサイズが減少したリポソーム製剤は、長期間(例えば、少なくとも約数ヶ月又は数年など)、凍結乾燥形態(例えば、約−2〜8℃での低温保存)で維持され得る。
【0030】
使用に関し、凍結乾燥バルク又はサイズ分画されたリポソーム製剤は、適切な体積の再構成溶液で再構成され得る。再構成溶液は、好ましくは、極性溶媒、最も好ましくは、水系であり、それは、脱イオン水又は滅菌水又は適切な生理食塩水溶液であり得る。任意の適切な体積の再構成溶液が使用できる。例えば、約1ml〜約50ml、より典型的には約3〜約25ml。使用に関し、リポソーム製剤は、所望される場合、例えば、適切な生理学的に適合性の緩衝液又は生理食塩水溶液などに希釈され得る。再構成を助けるために、製剤は、所望される場合、温和に又は激しく撹拌(親指と人差し指を用いてスナップする動き)され得る。
【0031】
本発明は更に、本明細書記載の製造方法によって製造されるリポソーム製剤、及びこのような製剤の使用方法を提供する。本発明のリポソーム製剤は、典型的には、ヒト又は動物患者への投与のために製剤化され得る。このような使用に関し、本発明製剤は、活性剤のリポソーム製剤に加えて、非毒性の、不活性な医薬として適切な賦形剤を含み得る。医薬として適切な賦形剤として、固体、半固体、又は液体の、希釈剤、充填剤、及び全ての種類の製剤化補助剤が挙げられる。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬、顆粒、座薬、溶液、懸濁剤やエマルション、ペースト、軟膏、ゲル、クリーム、ローション、散剤、スプレーは、適切な医薬製剤であり得る。座薬は、リポソームの活性剤に加えて、適切な水溶性又は水不溶性賦形剤を含み得る。適切な賦形剤は、本発明のリポソームの活性剤が治療用途を可能にするために十分に安定である賦形剤(例えば、ポリエチレングリコール、特定の脂肪、及びエステル、又はこれらの物質の混合物)である。軟膏、ペースト、クリーム、ゲルもまた、リポソームの活性剤が安定である適切な賦形剤を含み得る。適用の所望の様式(例えば、非経口、局所、経口など)に依存して、リポソーム製剤を製剤化することは当業者の通常の技術の範囲内である。
【0032】
本発明はまた、投与単位の医薬製剤を含む。このことは、以下を意味する:製剤は個々のパーツ(例えば、バイアル、シリンジ、カプセル、丸薬、座薬、又はアンプル)の形態である。活性剤のリポソーム製剤の内容物は、個々の投与量の分数又は倍数に対応する。投与単位は、例えば、個々の投与量の1、2、3、又は4倍、又は個々の投与量の1/2、1/3、又は1/4を含み得る。個々の投与量は、好ましくは、1投与で与えられ、通常、1日投与量の全部、半分、1/3、又は1/4に対応する活性剤の量を含む。
【0033】
本発明製剤(特に活性剤を含むもの)は、脊椎動物(例えば、ヒト又は非ヒト動物)での疾患を処置する方法を容易にし、この方法は、本明細書中に記載される医薬製剤(典型的には、疾患の処置に特定された治療剤を含む)を患者に投与する工程を含む。本発明の方法に従って、本明細書中に記載される製剤(望ましくは、活性剤を含む)は、脊椎動物における疾患を処置するのに十分な量と位置で、処置が必要な脊椎動物に投与される。この医薬製剤は、製剤の型に適当な様式(例えば、公知又は開発されている方法などによって、静脈内、皮下、局部、局所(例えば、皮膚又は真皮組織に対して、或は粘膜組織に対して)、経口、非経口、腹腔内、直腸、腫瘍もしくは処置の必要な部位への直接注射によってなど)で患者に投与される。
【0034】
1実施態様では、本方法の疾患は癌であり、この例では、医薬製剤は、適切な抗癌剤(本明細書中に記載されるものなど)を含み得る。別の実施態様では、疾患は、感染(ウイルス感染、細菌感染、又は真菌感染など)である。本発明の方法に従って、疾患の有効な処置は、望ましくは疾患又はその症状をなくすが、疾患の影響を完全になくす必要は無いことを理解すべきである。実際、本発明の方法に従う首尾良い治療は、疾患、感染の重篤度の減少、又は疾患が患者において進行する速度の減少によって測定できる。
【実施例】
【0035】
本実施例は、本発明のリポソーム製剤の製造方法を示す。本実施例は、当業者への更なるガイドとして提供され、本発明を限定するものとして決して解釈すべきではない。
【0036】
材料及び方法
下記の実施例で、DOPC、コレステロール、テトラミリストイルカルジオリピンは、Avanti Polar Lipids, Inc., Alabaster, ALから得た。パクリタキセルは、Hande Tech, Austin, TXから得た。t−ブタノールとエタノールは、J. T. Bakerから得た。スクロースはMallinckrodtから得た。D−アルファトコフェリル酸サクシネートはSigmaから得た。
【0037】
リポソームサイズ測定は、Partcile Sizing Systems(PSS, CA)Z-380装置を用いて行った。凍結乾燥は、Genesis 25-EL(VirTis製)を用いて行った。Pellicon 2タンジェンシャルフローろ過システム及び100 kD MWCOポリエーテルスルホンメンブランカセットは、Millipore Corporation, Bedford, MAから得た。
【0038】
凍結割断電子顕微鏡に関し、低温固定処理の間、氷結晶生成と人為的な結果を避けるために、1秒当たり10,000ケルビンの冷却速度で、液体窒素冷却プロパン中でのサンドイッチ技術を用いてサンプルを急冷した。低温固定されたサンプルは、JEOL-JED-9000フリーズエッチング装置を用いて割断し、暴露された割断面を、25〜35°の角度で30秒間、白金で影付けし、35秒間炭素で被覆した。レプリカを洗浄し、Philips CM 10電子顕微鏡を用いて試験した。
【0039】
本発明の方法による、t−ブタノール溶媒を用いるリポソームパクリタキセル製剤の製造:
活性成分1mg/mlの、リポソームパクリタキセル製剤の200ml及び500mlバッチは、本発明の方法によって下記のように製造した。本実施例の目的のため、方法を、1例として、200mlバッチに関して詳細に記載する。
表1は製剤組成及び製剤で使用されるバッチ量を列挙する。
【0040】
【表1】

【0041】
製剤中の、成分の最終的に意図する濃度
** 比重0.789g/ml。工程中に除去される。
【0042】
8.0gのt−ブタノール溶媒(35〜40℃で溶媒容器を維持後)を、最初に、撹拌子を有する、予め重量を測ったビーカー中で秤量した。
【0043】
ホットプレート上の加熱によって35℃を超える溶媒温度を維持しながら、パクリタキセル200mgを秤量し、混合しながらt−ブタノールに加えた。ビーカーをアルミホイルで覆い、溶媒の蒸発による消失を防止した。
【0044】
パクリタキセルが完全に溶解した後(時間約15〜20分)、コレステロール150mgを別個に秤量し、パクリタキセルを含むt−ブタノール溶液に加え、完全に溶解するまで混合した(時間3〜5分)。
【0045】
テトラミリストイルカルジオリピン490mg、DOPC 5.4g、トコフェリル酸サクシネート62mgを個々に秤量し、この順序でt−ブタノール溶液に加え、溶液温度を約40〜50℃に維持しながら、溶液から溶解しなかった脂質が無くなるまで混合した。溶液へ加えた成分の溶解のための総時間は約45分であり、溶液温度は約48℃であった。
【0046】
脱イオン水溶液(Milli Qシステム)中にスクロース400g及び塩化ナトリウム36gを溶解することによって、10%スクロース及び0.9%塩化ナトリウムの水相溶液(4000ml)を調製し、この溶液をMilliPak 20滅菌フィルターを通し濾過した。
【0047】
濾過したスクロース溶液190gを、36℃に温度を維持するように設定した循環水浴を装着した、予め秤量したジャケット付きガラス容器中に秤量した。
【0048】
スクロース溶液を、300rpmで10分、Labmaster lightninミキサーを用いて混合し、溶液温度を35℃に平衡化した。
【0049】
パクリタキセルと脂質画分を含むt−ブタノール溶液を、安定流で300rpmで混合しながら、1分以内に水溶液に加えた。加えた脂質画分の重量(溶液として)は、約15gであった。
【0050】
得られた溶液は、t−ブタノール溶液の添加の完了後直ちに、リポソーム製剤に特徴的な僅かな半透明を有して、濁った。形成直後、バルクリポソーム溶液の温度は36℃であると測定され、そして、この溶液を300rpmで更に10分間混合した。バルクリポソームを25℃に冷却しながら、混合速度を、更に30分間、500rpmに増大させた。
【0051】
バルクリポソームのリポソームサイズ測定は、それらが、平均サイズ1.3ミクロンを有する多層膜リポソームであることを示した。バルクリポソームのpHは、4.63であると測定された。
【0052】
バルクリポソームを、100−200psiの圧力で、0.2μ及び0.1μ孔サイズのポリカーボネートメンブランフィルターを通す押出しによって、サイズ減少させた。フィルター上のサイズ減少処理の間、薬剤沈殿は観察されず、活性成分であるパクリタキセルはリポソームに捕捉されていることが立証された。表2は、サイズ減少後のリポソームベースのパクリタキセルの粒子サイズデータを示す。図1は、PSS装置を用いる動的光散乱によって測定した、サイズが減少したリポソームのサイズ分布を示す。平均直径は、120.7nm(標準偏差=37.3nm)と測定され、分布は以下のようであった:25%<86.8nm、50%<107.2nm、75%<132.3nm、90%<158.8nm、及び99%<219.7nm。
【0053】
【表2】

【0054】
χがあまりに大きい。Nicomp分布は、リポソームの大部分が1μ(1000nm)より大きいことを示す。
【0055】
サイズ減少後、リポソームに、タンジェンシャルフローろ過(TFF)手順を用いてt−ブタノール溶媒除去を行った。この目的のために、0.1平方メートルの表面積のポリエーテルスルホン(PES)メンブランカセットと共に組立てられたPellicon 2 TFFシステム(Millipore Corp. Bedford, MA)を用いた。バルクリポソーム又はサイズが減少したリポソームから、これらの形成に使用されるt−ブタノールを除去するために使用されるTFFシステムの模式図を図2に示す。使用した特別なメンブランカセットは、100,000ダルトン(分子量カットオフ即ちMWCO 100kD)よりも大きい溶質分子(例えば、蛋白質)又はリポソームなどの組織化構造を保持できるが、より小さな溶質分子(スクロースやt−ブタノールなど)がメンブランを通過させる、制限されたチャネルスクリーン(C型)と共に組立てられる。サイズが減少したリポソームは、溶媒除去のために、TFFシステムに導入される前に、10%スクロース溶液約200gの添加によって、最初に2倍に希釈された。入口流、入口圧、出口圧(即ち、背圧)、及び濾液流を、工程の間監視し、そして、これらを表3に示す。合計7回の反復(interations)(7体積の濾液が集められた)が、濃縮−希釈様式の操作で行われた。
【0056】
【表3】

【0057】
t−ブタノール含有水相は、2つの別個の実験で濾液として除去される(供給及び流出様式)ので、500mlバッチの場合、タンジェンシャルフローろ過プロセスによる溶媒除去は、濃縮−希釈様式、並びに水相の連続注入の両方で行った。600ml/分までのリポソーム供給速度を用いて、20psiまでのより高い入口圧力を生じさせた。溶媒除去の大規模プロセスは、50psiまでの入口圧力を生じさせる、100 l/分までの流速を使用し得る。より大きな表面積(1000平方メートルまで)を有する、同様(100 kD)のMWCO、より小さい(10 kD)のMWCO、又はより大きい(300 kD)MWCOのTFFメンブランカセットを、t−ブタノールを除去する商業スケール製造に使用し得る。しかし、100 kD MWCOメンブランカセットは、リポソームからt−ブタノールを除去するために使用される好適なサイズである。300 kDや500 kDなどのより大きなMWCOメンブランカセットは、この機能を行うことができるが、いくらかのリポソームはまた、プロセス中に濾液へと流され得る。図2のフローチャートは、200 mlスケールバッチから200 lスケールの、バルクリポソーム形成において使用される水混和性有機溶媒(t−ブタノール及びエタノール)の除去のために使用され得る。本実施例で記載される濃縮−希釈様式は、小スケール(1000mlまで)が実用的であるが、連続様式(供給及び流出)では、大スケールで実施される。
【0058】
TFFプロセスによる溶媒除去後、リポソームの粒子サイズ測定は以下を示した:リポソームサイズは、溶媒除去プロセスの間、影響されない(図3参照)。平均直径は115.6nm(標準偏差=33.6nm)と測定され、分布は以下のようであった:25%<84.6nm、50%<103.2nm、75%<125.9nm、90%<150.2nm、及び99%<202.6nm。
【0059】
溶媒除去後、リポソームを、凍結乾燥前に、MilliPak 20滅菌フィルターを通しろ過滅菌した。ろ過滅菌されたリポソームを、20mlガラス(1バイアル当たり10.5ml)に充填し、凍結乾燥した。凍結乾燥リポソームを、脱イオン水10mlで再構成した。再構成したリポソームを、リポソームサイズ、パクリタキセル、DOPC、コレステロール、カルジオリピン含量について分析した。凍結乾燥後再構成したパクリタキセル含有リポソームのサイズ分布(図4参照)は有意な変化を示さず、リポソームの完全性は、凍結乾燥工程の間、保持されることが示されている。平均直径は、117.6nm(標準偏差=40.2nm)と測定され、分布は以下のようであった:25%<81.7nm、50%<103.3nm、75%<130.3nm、90%<160.4nm、及び99%<230.5nm。
【0060】
これらのリポソームをまた、上記手順を用いて、凍結割断電子顕微鏡によって評価した。得られた電子顕微鏡像は、20〜150nmの範囲の直径をもった、単一の二重層(また、単ラメラ小胞、又は略記でSUV)の、殆ど球形のリポソームの均一分布を示す。リポソームの主要組成は、個別であり、会合も凝集もしていない(図5参照)。
【0061】
サイズ減少後、溶媒除去後のろ過滅菌後のバルクリポソームの分析の結果(表4)は、本発明の方法が、t−ブタノールを用いて、パクリタキセルなどの水不溶性活性成分を含有するリポソームを製造するために使用できることを立証する。
【0062】
【表4】

【0063】
特許、特許出願、及び刊行物を含む本明細書で引用した全ての参考文献は、引用によりその全体が本明細書に含まれる。
【0064】
好適実施態様を強調して本発明を記載したが、好適実施態様のバリエーションが使用でき、本発明が、本明細書に具体的に記載されたものとは異なるように実施できることは、当業者に明白である。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲で規定される本発明の思想と範囲に包含される全ての改変を含む。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、サイズ減少後の、t−ブタノール処理によって製造されたパクリタキセル含有リポソームのサイズ分布を示すヒストグラムである。
【図2】図2は、タンジェンシャルフローろ過による溶媒除去のためのフローチャートである。
【図3】図3は、サイズ減少及びタンジェンシャルフローろ過による溶媒除去後の、t−ブタノール処理によって製造されたパクリタキセル含有リポソームのサイズ分布を示すヒストグラムである。
【図4】図4は、t−ブタノール処理によって製造された(凍結乾燥後に再構成された)パクリタキセル含有リポソームのサイズ分布を示すヒストグラムである。
【図5】図5は、t−ブタノール処理によって製造された(凍結乾燥後に再構成された)パクリタキセル含有リポソームの凍結割断電子顕微鏡像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポソーム製剤の製造方法であって、
(a)脂質画分を水混和性有機溶媒に溶解すること、
(b)バルクリポソーム製剤を形成するのに適した条件下、脂質画分を含む水混和性有機溶媒溶液を水溶液と混合すること、
を含む方法。
【請求項2】
1種以上の活性成分を加えることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
活性成分を、水混和性有機溶媒に加える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
活性成分を、脂質画分の添加前に水混和性有機溶媒に加える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
活性成分を、水溶液に加える、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
活性成分を、工程(b)の前に水溶液に加える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
活性成分を、工程(b)の間、又はその後に加える、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
活性成分のリポソーム製剤の製造方法であって、
(a)少なくとも1種の活性成分を水混和性有機溶媒に溶解すること、
(b)脂質画分を水混和性有機溶媒に溶解すること、
(c)バルクリポソーム製剤を形成するのに適した条件下、活性成分と脂質画分を含む水混和性有機溶媒溶液を水溶液と混合すること、
を含む方法。
【請求項9】
水混和性有機溶媒が、t−ブタノールである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
活性成分は、少なくとも1種の抗腫瘍剤又は抗真菌剤を含む、請求項2〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
活性成分が、タキサン又は誘導体、及びカンプトテシン又は誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤を含む、請求項2〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
活性成分が、パクリタキセル又はドセタキセルを含む、請求項2〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
活性成分を、約35℃を超える温度で水混和性有機溶媒に溶解する、請求項3〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
活性成分を、約40〜約55℃の温度で水混和性有機溶媒に溶解する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
水混和性有機溶媒が、t−ブタノールである、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
脂質画分が、コレステロール、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、テトラミリストイルカルジオリピン、及びトコフェリル酸サクシネートの1種以上を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
脂質画分が、コレステロール、DOPC、テトラミリストイルカルジオリピン、及びトコフェリル酸サクシネートの3種以上を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
DOPCが、脂質画分の大部分を構成する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
脂質画分が、約90:5:5のモル比で、少なくともDOPC、コレステロール、及びテトラミリストイルカルジオリピンを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
水溶液が、全リポソーム製剤の体積の少なくとも約90%である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
水溶液が、約10%スクロースと約0.4−0.9%塩化ナトリウムである、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
工程(a)が、約35〜約65℃での、水混和性有機溶媒への、活性成分、パクリタキセル又はドセタキセルなどの任意の他のタキサンの添加によって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
工程(a)が、約35〜約65℃での、水混和性有機溶媒中への、脂質画分を含む、脂質成分、コレステロール、カルジオリピン、DOPC、及びトコフェリル酸サクシネートの順次添加によって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
工程(b)が、水混和性有機溶媒中への、脂質画分を含む化合物の順次添加によって達成される、請求項8に記載の方法。
【請求項25】
工程(b)が、約30〜40℃で水相溶液を維持し、かつ300〜400rpmで混合しながら、水溶液に脂質画分を含む水混和性有機溶媒溶液を加えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
工程(c)が、混合しながら、水溶液に脂質画分を含む水混和性有機溶媒を添加することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項27】
工程(b)が、冷却しながら、水溶液に脂質画分を含む水混和性溶媒を添加した後、溶液を混合することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
工程(c)が、冷却しながら、水溶液に脂質画分を含む水混和性溶媒を添加した後、溶液を混合することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項29】
冷却が、約25〜約30℃の温度にすることである、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
バルクリポソーム製剤のサイズを減少させて、サイズが減少したリポソーム製剤を得ることを更に含む、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
サイズ減少が、ポリカーボネートフィルターを通じたバルクリポソーム製剤の押出しによって達成される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
サイズ減少が、0.2μm及び0.1μmのポリカーボネートフィルターを通じたバルクリポソーム製剤の押出しによって達成される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
サイズ減少が、約200psiまでの圧力でのバルクリポソーム製剤の押出しによって達成される、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
バルクリポソーム製剤が、少なくとも1種の活性成分を含む、請求項31〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
サイズ減少が、活性成分の沈殿なしに達成される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
リポソーム製剤から水混和性有機溶媒を実質的に除去することを更に含む、請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
リポソーム製剤から水混和性有機溶媒を実質的に除去することを更に含む、請求項30〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
タンジェンシャルフローろ過プロセスを用いるダイアフィルトレーションとろ過滅菌によって、リポソーム製剤から水混和性有機溶媒が実質的に除去される、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
1種以上の活性成分を加えることを更に含む、請求項36〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
活性成分が水溶性成分であり、リポソーム製剤から水混和性有機溶媒を実質的に除去した後に加える、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
リポソーム製剤を、ろ過滅菌することを更に含む、請求項1〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
活性成分を、ろ過滅菌の前に製剤に加える、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
リポソーム製剤を、凍結乾燥することを更に含む、請求項1〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
活性成分を、リポソーム製剤を凍結乾燥する前に製剤に加える、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
請求項1〜37のいずれか1項に記載の方法によって製造されるリポソーム製剤。
【請求項46】
少なくとも1種の活性成分を含む、請求項45に記載のリポソーム製剤。
【請求項47】
活性成分が、少なくとも1種の抗腫瘍剤又は抗真菌剤を含む、請求項46のリポソーム製剤。
【請求項48】
活性成分が、タキサン又は誘導体、及びカンプトテシン又は誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤を含む、請求項46に記載の製剤。
【請求項49】
活性成分が、パクリタキセル又はドセタキセルを含む、請求項46に記載のリポソーム製剤。
【請求項50】
医薬として許容できる賦形剤を更に含む、請求項45〜49のいずれか1項に記載のリポソーム製剤。
【請求項51】
治療の必要のある患者での疾患の治療方法であって、該疾患を治療するように、患者に活性薬剤を送達するのに十分な量と位置で、請求項47〜50のいずれか1項に記載の組成物を患者に投与することを含む方法。
【請求項52】
疾患が癌である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
組成物を非経口投与する、請求項51又は52に記載の方法。
【請求項54】
組成物を局所投与する、請求項51又は52に記載の方法。
【請求項55】
組成物を、腫瘍に直接注射することによって投与する、請求項51又は52に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポソーム製剤の製造方法であって、
(a)脂質画分をt−ブタノール溶媒に溶解すること、
(b)脂質画分を含むt−ブタノール溶媒を水溶液に添加すること、
(c)約25℃〜約40℃の温度で、脂質画分を含むt−ブタノールを水溶液と混合して、バルクリポソーム製剤を形成すること、
を含む方法。
【請求項2】
リポソーム製剤の製造方法であって、
(a)脂質画分を、t−ブタノールとエタノールの混合溶媒に溶解すること、
(b)脂質画分を含むt−ブタノールとエタノールの溶媒を、水溶液に添加すること、
(c)約25℃〜約40℃の温度で、脂質画分を含むt−ブタノールとエタノールの溶媒を水溶液と混合して、バルクリポソーム製剤を形成すること、
を含む方法。
【請求項3】
脂質画分が、コレステロール、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、テトラミリストイルカルジオリピン、トコフェリル酸サクシネート、及び1,3−ビス−(1,2−ビス−テトラデシロキシ−プロピル−3−ジメチルエトキシアンモニウムブロミド)−プロパン−2−オール[(R)−PCL−2]からなる群より選択される1種以上の脂質を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
脂質画分が、コレステロール、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、テトラミリストイルカルジオリピン、トコフェリル酸サクシネートからなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
脂質画分が、コレステロール、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、テトラミリストイルカルジオリピン、トコフェリル酸サクシネートの順次添加によって形成される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
DOPCが、脂質画分の大部分を含む、請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
脂質画分が、約35〜約65℃の温度で溶媒に溶解される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
温度が、約45℃〜約55℃である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
水溶液が、バルクリポソーム製剤の少なくとも90%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
水溶液が、1種以上の張性調整剤を更に含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
水溶液が、1種以上の保護糖を更に含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
脂質画分を含む溶媒が、約30℃〜約40℃の温度で水溶液と混合される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
温度が約30℃〜約35℃である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
混合速度が、約200rpm及び約1000rpmである、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
混合速度が、約500rpm及び約1000rpmである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
混合速度が、約600rpm及び約800rpmである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
脂質画分を含む溶媒が約5分〜1時間の時間で水溶液に添加される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
時間が、約10分〜約45分である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
時間が、約15分〜約30分である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
1種以上の活性成分を加えることを更に含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
1種以上の活性成分が、バルクリポソーム形成の前に添加される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
1種以上の活性成分が、有機溶媒に添加される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
1種以上の活性成分が、脂質画分の添加の前に、有機溶媒に添加される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
1種以上の活性成分が、35℃を超える温度で、有機溶媒に添加される、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
1種以上の活性成分が、約35℃〜約65℃の温度で、有機溶媒に添加される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
1種以上の活性成分が、約40℃〜約55℃の温度で、有機溶媒に添加される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
1種以上の活性成分が、水溶液に添加される、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
1種以上の活性成分が、工程(b)の前に、水溶液に添加される、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
1種以上の活性成分が、工程(c)の後に、水溶液に添加される、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
脂質画分を含む溶媒が、1種以上の活性成分の沈殿なしにリポソームを形成する速度で、水溶液と混合される、請求項20〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
1種以上の活性成分が、抗腫瘍剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、および抗真菌剤からなる群より選択される、請求項20〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
抗腫瘍剤が、タキサン、ミトキサントロン、カンプトテシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、メトトレキセート、タモキシフェン、トレミフェン、シスプラチン、エピルビシン、ゲムシタビシンHCl、及びそれらの誘導体からなる群より選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
タキサンが、パクリタキセルである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが、癌遺伝子を対象とする、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
癌遺伝子が、rafである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
バルクリポソーム製剤をサイズ減少して、サイズが減少したリポソーム製剤を得ることを更に含む、請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
サイズ減少が、沈殿なしに達成される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
サイズ減少が、ポリカーボネートフィルターを通じたバルクリポソーム製剤の押出しにより達成される、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
フィルターが、約0.2μm〜約0.1μmである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
サイズ減少が、約200psi〜約800psiの圧力でのバルクリポソーム製剤の押出しによって達成される、請求項36〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
水混和性有機溶媒を実質的に除去することを更に含む、請求項1〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
有機溶媒が、タンジェンシャルフローろ過プロセスを用いるダイアフィルトレーションにより、実質的に除去される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
1種以上の活性成分を添加することを更に含む、請求項1〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
活性成分が、水溶性活性成分である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
活性成分が、有機溶媒の除去の後に添加される、請求項43又は44に記載の方法。
【請求項46】
リポソーム製剤を濾過滅菌することを更に含む、請求項1〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
リポソーム製剤を凍結乾燥することを更に含む、請求項1〜46のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2006−517594(P2006−517594A)
【公表日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503621(P2006−503621)
【出願日】平成16年2月11日(2004.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2004/004555
【国際公開番号】WO2004/071466
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(503140078)ネオファーム、インコーポレイティッド (6)
【Fターム(参考)】