説明

リミットスイッチの動作タイミング調整装置

【課題】ガイドベーンを開閉する回動軸に対するカム部材の取付け角度を調整することによって、ガイドベーンの開閉状態検知精度を高める作業を行う場合に、手作業によってカム部材の取付け角度を調整する際の不具合である調整精度の低下という不具合を解消する。
【解決手段】操作対象物を作動させる回動操作軸2と、回動操作軸により支持されかつ外周にリミットスイッチのアクチュエータ52が当接するカム面12を有したカム部材10と、回動操作軸に対するカム部材の回動方向角度を調整する調整機構30と、を備え、調整機構は、カム部材と一体回動するウォームホイール31と、ギヤホルダ40と、ウォームホイールと常時噛合した状態でギヤホルダによって正逆回転自在に軸支されたウォームギヤ35と、ギヤホルダに支持されて前記ウォームギヤを回転操作するための操作部45と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種機器に装備されて可動部品の位置決めに使用されるリミットスイッチの動作タイミングを調整する技術に関し、例えば水力発電機の導水管中に配置されてタービンへの供給水量を調整するために開閉するガイドベーンとその開閉軸との位置関係を調整するためのリミットスイッチの動作タイミング調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電施設では、例えばダム等の調整池から導水管を介して供給された水によりタービン(水車ランナ)を回転させることによって発電機を運転している。タービンへ供給する水量を細かく調整する手段としては、導水管中に回動自在に軸支されたガイドベーンが用いられる。ガイドベーンは、回動軸を中心として約30度程度の範囲内で正逆回動することにより、導水管内を全閉状態(発電機の停止)、全開状態(発電機の起動)、或いは任意の開放状態(運転出力の調整)にすることができる。
ところで、ガイドベーンの開閉状態や開放角度を知る手段として、回動軸に固定されて一体回転するカム部材と、このカム部材の周面にアクチュエータを接触させることによってカム部材が一回転する間にオンオフするリミットスイッチと、から成る検知機構が用いられている。
【0003】
図3(a)及び(b)は従来の検知機構の構成を示す斜視図、及び側面図である。
この検知機構は、操作対象物としての図示しないガイドベーンを回動させる回動軸100に軸穴102aを挿通させた状態でビス103によって回動軸に固定された略円盤状のカム部材102と、固定部材120に固定されたリミットスイッチ110と、を備えている。
リミットスイッチ110は、固定部材に固定されたスイッチ本体111と、スイッチ本体111によって一端部を軸支されて矢印方向へ開閉するアクチュエータ112と、アクチュエータの先端部に回転自在に軸支されたローラ113と、を備える。アクチュエータは外力が加わらない時には図示しない弾性部材によって開放方向へ付勢されてスイッチ本体111内の接点を開放する一方で、アクチュエータが押圧されて閉じた場合には接点を閉じる。
カム部材102の外周には緩やかに外径が変化する段差部104が設けられており、リミットスイッチのアクチュエータ先端のローラ113はカム部材の回転に伴ってその周面に沿って転動する。ガイドベーンが約30度の回動角度で全開・全閉すると,その駆動力はギヤ等を介して回動軸100が約180度の範囲内で正逆転する。
【0004】
回動軸100の正逆転に伴ってこれと一体のアクチュエータが正逆転すると、アクチュエータのローラ113は段差部104を通過するようにカム部材外周面を移動することとなる。
回動軸100からカム部材の外周面までの径方向長は、段差部104の前後で異なっており、図3(a)に示した最大外径部D1にローラ113がある時にはアクチュエータ112が閉じて接点をONにしている。また、ローラ113が回動軸100からの径方向長が短いカム部材外周面(最小外径部D2)上に位置している時にはアクチュエータ112は開放されて接点をオフにした状態にある。
アクチュエータがオンオフすることによって生成された検知信号は、図示しない制御装置に送信され、制御装置はガイドベーンの開閉状態を知ることができる。
【0005】
ところで、例えばガイドベーンを含む機器類のメンテナンス時に回動軸及びカム部材がリミットスイッチに対して取り外された場合には、メンテナンス終了後の組立時にリミットスイッチに対するカム部材の適正位置関係を高精度で再現するための手作業による調整作業がその都度必要となる。この調整作業に際しては、安全確保のために水力発電機を停止させて作業中に回動軸が回転する虞をなくする必要がある一方で、カム部材とリミットスイッチとの位置関係の調整(リミットスイッチの動作タイミングの調整)が正確に完了したか否かを確認するためには水力発電機を運転した上での確認作業が必要となる。一回目の調整作業において発電機を運転させた際に、リミットスイッチによるガイドベーンの開閉状態の検知が適正でないことが判明した場合には、発電機の運転を停止させた上での再度の調整作業が必要となる。調整作業が完了するまでこの作業を繰り返すことになり、調整に要する時間が長期化し、且つ発電機の頻繁な停止によって稼働率が著しく低下することとなる。調整作業中は、発電に供し得る多量の水を無駄に廃棄せざるを得なくなる。
【0006】
また、回動軸100に対するカム部材102の固定はビス103によって行っているため、調整時には工具を用いてビスを緩めて回動軸に対するカム部材の固定を解除した上で、カム部材を手作業で回動軸に対して所定量回動させてリミットスイッチと位置合わせしてからビス固定する必要がある。しかも、カム部材とリミットスイッチとの位置関係の調整は1mm単位の精度でカム部材を手作業で回動させる微調整となるため、熟練した作業員であっても作業性が悪く、長い時間を要していた。
特許文献1には、リミットスイッチの動作点を調整する機構として、スイッチの操作突起をオンオフする操作軸に対する操作レバーの取付け角度をウォームホイールとウォームギヤからなる螺子機構によって調整する構成が開示されている。
しかし、特許文献1は、あくまでリミットスイッチ自体の構造の改良に関するものであり、リミットスイッチ側を調整せずに、回動軸に対するカム部材の取付け角度だけを調整することによってガイドベーンの開閉状態検知精度を高める必要がある場合には適用することができない。
また、既存のリミットスイッチを特許文献1のタイプに交換したとしても、リミットスイッチ側だけの調整によってガイドベーンの開閉状態検知精度を微調整することは難しく、回動軸に対するカム部材の組付け角度の調整がどうしても必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−176290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、ガイドベーンを開閉する回動操作軸に対するカム部材の取付け角度を調整することによって、ガイドベーンの開閉状態検知精度(リミットスイッチの動作タイミング精度)を高める作業を行う場合に、手作業によってカム部材の取付け角度を調整する際の不具合である調整精度の低下という不具合を解消することができるリミットスイッチの動作タイミング調整装置を提供することを目的としている。
特に、ガイドベーンを含む機器の稼動を停止せずに、しかも非熟練作業員であっても苦労せずにカム部材を微調整することができる技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係るリミットスイッチの動作タイミング調整装置は、操作対象物を作動させるための回動操作軸と、該回動操作軸を挿通する軸穴を有し該回動操作軸に対して相対回転可能であり且つ外周にリミットスイッチのアクチュエータが当接するカム面を有したカム部材と、前記回動操作軸に対する前記カム部材の回動方向角度を調整する調整機構と、を備えたリミットスイッチの動作タイミング調整装置であって、前記調整機構は、前記回動操作軸を挿通する挿通孔を軸心部に有し、且つ前記カム部材と一体回動するウォームホイールと、前記回動操作軸に軸心部を挿通固定されたギヤホルダと、前記ウォームホイールのギヤ部と常時噛合した状態で前記ギヤホルダによって正逆回転自在に軸支されたウォームギヤと、前記ギヤホルダに支持されて前記ウォームギヤを回転操作するための操作部と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
回動操作軸の回動角度に応じて所定量ずつ開閉動作する操作対象物の開閉状態(全開、全閉、開放角度)を検知する手段として、回動操作軸に中心部をビス止め固定されたカム部材と、カム部材の周面にアクチュエータを接触させたリミットスイッチとからなる調整機構を用いる場合、操作対象物を含む機器をメンテナンス、或いは修理するために分解し、その後組みたてる場合には、カム部材とリミットスイッチとの位置関係の調整がその都度必要となる。
この調整作業は回動操作軸に対するカム部材の取付け角度を調整することによって実施されるのが一般であり、ビスを緩めて回動操作軸に対してカム部材を相対回動可能な状態にしてから手作業によってカム部材の取付け角度を1度程度の微小単位で微調整する必要があった。
しかし、このような作業には種々の不具合があり、改善が求められていた。特に、カム部材の微調整作業は熟練者であっても試行錯誤を必要とする時間と労力を要する作業であり、機器の稼動停止が必要であった。
本発明では、ウォームホイールとウォームギヤを含めた格別の調整機構を設けることによって、非熟練者であっても容易にカム部材の取付け角度を微調整することができるようにした。また、機器の稼動を停止せずに調整作業を実施できる点も特徴的である。つまり、操作部は、回動操作軸とは離間した箇所にあるため、操作部を操作しているときに回動操作軸が作動したとしても作業員が怪我をすることがない。
【0011】
請求項2の発明は、前記操作対象物は前記回動操作軸の回動角度に応じて回動することによって導水管内を開閉するガイドベーンであり、前記カム部材のカム面には外径が変化する段差部が設けられており、前記リミットスイッチのアクチュエータは前記カム部材の正逆回動に伴って前記段差部を中心として正逆両方向へ所定の角度範囲内でカム部材外周面を相対的に移動し、前記アクチュエータが前記カム面の最大外径部と接した時に前記リミットスイッチはオンとなり、最小外径部と接したときにオフとなり、前記調整機構による調整作業は、前記リミットスイッチのオン、又はオフの時に、前記ガイドベーンが全開又は全閉、或いは全閉又は全開、となるように実施されることを特徴とする。
操作対象物としては、水力発電機に使用されるガイドベーンを挙げることができる。
【0012】
請求項3の発明は、前記ウォームギヤの端面から突出した中心軸に設けた雄螺子部を前記ギヤホルダに設けたナットの雌螺子部と螺合させた状態で、該中心軸の端部を前記ギヤホルダ外部に突出させ、前記中心軸の端部を前記操作部としたことを特徴とする。
操作部は、ギヤホルダの外部に位置しているため、操作が容易である。
請求項4の発明は、前記カム部材を前記回動操作軸に対して相対回転可能にしたり、相対回転不能に固定する固定手段を備えていることを特徴とする。
ウォームホイールとウォームギヤとからなる微調整ギヤ機構を用いているため、格別の固定手段を設けなくても、回動操作軸とカム部材とは位置ずれすることはないが、万が一のことを想定して、両部材を固定手段によって固定できるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、操作対象物(例えば、ガイドベーン)を開閉する回動操作軸に対するカム部材の取付け角度を調整することによって、ガイドベーンの開閉状態検知精度(リミットスイッチの動作タイミング精度)を高める作業を行う場合に、従来のようにビスによって回動操作軸とカム部材との固定を解除した上で、手作業によってカム部材の取付け角度を調整するという煩雑な作業を不要としたため、調整精度を高めつつ作業性を高めることができる。
即ち、本発明では回動操作軸とカム部材とを固定するビスを解除した上でカム部材を回動させるという従来の手法を採用せずに、ウォームホイールとウォームギヤとから成る格別の調整機構を用いて調整するようにしたので、調整精度を高めるとともに、調整作業中に回動操作軸が回動するようなことがあっても作業員の手などを怪我することがない。このため、操作対象物を含む機器の稼動を停止しないで調整作業を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係るリミットスイッチの動作タイミング調整装置の構成を示す外観斜視図、及び一部断面側面図である。
【図2】正面縦断面図である。
【図3】(a)及び(b)は従来の検知機構の構成を示す斜視図、及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係るリミットスイッチの動作タイミング調整装置の構成を示す外観斜視図、及び一部断面側面図であり、図2は正面縦断面図である。
リミットスイッチの動作タイミング調整装置1は、図示しない駆動源によって回動駆動され且つ操作対象物としてのガイドベーンを作動させるための回動操作軸2と、回動操作軸2を挿通する軸穴11を有し、且つ外周にリミットスイッチ50のアクチュエータ52が当接するカム面12を有したカム部材10と、カム部材10を回動操作軸2に対して相対回転不能に固定したり相対回転可能に非固定にする固定手段(ビス)20と、回動操作軸2に対するカム部材10の回動方向位置(回動方向角度)を調整する調整機構30と、を備えている。
本実施形態における操作対象物は、回動操作軸2の回動角度に応じて所定角度ずつ回動することによって水力発電所に装備される導水管内を開閉するガイドベーンである。
【0016】
カム部材10のカム面12には外径が変化する段差部15が設けられている。リミットスイッチのアクチュエータ52は、カム部材の正逆回動に伴って段差部を中心として正逆両方向へ所定の角度範囲内でカム部材外周面を相対的に摺接移動し、アクチュエータ先端部がカム面の最大外径部D1と接した時にリミットスイッチはオンとなり、最小外径部D2と接したときにオフとなる。調整機構30による調整作業は、リミットスイッチがオン、又はオフする時に、ガイドベーンが最適のタイミングで全開、又は全閉(全閉、又は、全開)となるように実施される。
調整機構30は、回動操作軸2を挿通する挿通孔32を軸心部に有し、且つカム部材10と一体回動するウォームホイール31と、回動操作軸2に軸心部を挿通固定されたギヤホルダ40と、ギヤホルダ40を回動操作軸に対して相対回転不能に固定したり相対回転可能に非固定にする固定手段(ビス)42と、ウォームホイール31のギヤ部と常時噛合した状態でギヤホルダ40によって正逆回動自在に軸支されたウォームギヤ35と、ギヤホルダ40の外部に設けられてウォームギヤ35を回動操作するための操作部45と、を備えている。
【0017】
図2の断面図に示すように、ギヤホルダ40は、ウォームホイール31の外周の少なくとも一部を包囲する外周部40aを備えている。ウォームギヤ35の軸方向両端面から延びる中心軸36は外周に雄螺子を有した螺子棒であり、ギヤホルダ40の外周部40aに固定したナット部材37の雌螺子部に挿通(螺合)されてその両端部をギヤホルダ外部に突出させている。中心軸36の両端部には多角柱状の金属材料から成る操作部45が固定されており、レンチ等の工具を用いて操作部45を回動させることによってウォームギヤ35を回動させてウォームホイール31を回動させることができる。なお、本例では中心軸の両端部に操作部45を設けたが、中心軸の一端だけに設けても良い。
【0018】
固定手段20による固定を解除して回動操作軸2に対してカム部材10を相対回転可能にした状態で、操作部45を所定方向に所定角度回動させることによってウォームギヤ35が中心軸36と一体的に回動し、ウォームギヤ35と噛合するウォームホイール31を回動させることができる。ウォームホイール31はカム部材10と一体化されているため、操作部45を操作することによってカム部材10を任意の方向へ、任意の角度だけ回動させることができる。ウォームギヤ35とウォームホイール31とのギヤ比を、ウォームギヤ35の回動角度に対するウォームホイール31の従動回動角度が大幅に小さくなるように設定することにより、例えばウォームホイール31の回動角度を1度単位で微調整することが可能となる。
なお、ウォームホイール31からウォームギヤ35に駆動力が逆入力する場合に、ウォームギヤ35を回動させることはできない。言い換えれば、ウォームホイールを回動させようとしてもウォームギヤは回動せず、ウォームギヤ自体を回動させない限りウォームホイール、及び回動操作軸は回動しない。ウォームホイール31とウォームギヤ35との噛合によるこのようなロック機能があるため、固定手段20を設けなくとも回動操作軸とカム部材とをロックさせることが可能である。
【0019】
リミットスイッチ50は、固定部材60に固定されたスイッチ本体51と、スイッチ本体51によって一端部を軸支されて矢印方向へ開閉するアクチュエータ52と、アクチュエータの先端部に回転自在に軸支されたローラ53と、を備える。アクチュエータ52は外力が加わらない時には図示しない弾性部材によって開放方向へ付勢されてスイッチ本体51内の接点を開放する一方で、アクチュエータが押圧されて閉じた場合には接点が閉じるように構成されている。
リミットスイッチ50がオン、オフすることによって生成された検知信号は、図示しない制御装置に送信され、制御装置はガイドベーンが全開状態か全閉状態であることを知ることができる。制御装置は、リミットスイッチがオン、又はオフされた位置を基準として、図示しない駆動源によって回動操作軸2を回動させた角度に基づいてガイドベーンの現在の開放角度を知ることができる。
【0020】
カム部材10の外周には緩やかに外径が変化する段差部15が設けられており、リミットスイッチのアクチュエータ先端のローラ53はカム部材の正逆回動に伴ってその周面に沿って転動する。
ガイドベーンが約30度の回動角度で全開・全閉すると,その駆動力はギヤ等を介して回動軸100が約180度の範囲内で正逆転する。
回動操作軸2の正逆転に伴ってこれと一体のアクチュエータが正逆転すると、アクチュエータのローラ53は段差部15を通過するようにカム部材外周面を移動することとなる。ローラ53が段差部15を通過する際にアクチュエータがON,OFF動作する。
回動操作軸2からカム部材10の外周面までの径方向長は、段差部15の前後で異なっており、図1(a)に示した周面位置にローラ53がある時にはアクチュエータ52が閉じて接点をONにしている。また、ローラ53が回動操作軸2からの径方向長が短いカム部材外周面上に位置している時にはアクチュエータ52は開放されて接点をオフにした状態にある。
【0021】
固定手段20を緩めて回動操作軸2に対してカム部材10を相対回転可能にした状態で、操作部36aを操作して回動操作軸2に対するカム部材10の回動方向角度を調整し終わった際には、固定手段20を締め付けて回動操作軸とカム部材とを一体化する。
回動操作軸2に対するカム部材10の固定角度が基準角度からずれている場合には、アクチュエータ52の先端部とカム部材の外周面(段差部15)との周方向位置関係にもずれが発生しているため、リミットスイッチからの検知信号に基づいてガイドベーンの開閉状態、開放角度を制御装置が正確に知ることが不可能となる。
ガイドベーンを含む機器類のメンテナンス時に、回動操作軸及びカム部材をリミットスイッチに対して取り外した場合には、メンテナンス終了後の組立時にリミットスイッチに対するカム部材の適正位置関係を再現(復旧)するための調整作業が必要となる。
本発明では、固定手段20による固定を解除して、回動操作軸2に対してカム部材10及びウォームホイール31を相対回転可能にした状態で、調整機構30を操作した調整作業を実施することとなる。
【0022】
調整機構30を用いた調整作業においては、レンチ等の工具を用いて操作部45を回動させることによってウォームギヤ35を任意の方向へ任意の角度だけ回動させてウォームホイール31及び回動操作軸2を回動させることができる。
固定手段20による固定を解除して回動操作軸2に対してカム部材10を相対回転可能にした状態で、操作部45を所定方向に所定角度回動させることによってウォームギヤ35が中心軸36と一体回動し、ウォームギヤ35と噛合するウォームホイール31を回動させることができる。ウォームホイール31はカム部材10と一体化されているため、操作部36aを操作することによってカム部材10を任意の方向へ、任意の角度だけ、例えば1度程度の微小単位で回動させることができる。
操作部45による調整後に、固定手段20による固定を解除したまま回動操作軸2を駆動してリミットスイッチをオンオフさせることにより、ガイドベーンの全開、全閉状態とリミットスイッチのオンオフタイミングとが一致しているか否かを知ることができる。一致していない場合には、固定手段20による固定を解除したまま再び操作部45を操作してカム部材の角度を微調整した上で回動操作軸2を駆動してリミットスイッチのオンオフタイミングがガイドベーンの全開、全閉状態と一致しているか否かを判定する。判定の結果、一致している場合には固定手段20によって回動操作軸2とカム部材10とを固定する。
【0023】
ウォームホイール31(回動操作軸2)からウォームギヤ35に駆動力が逆入力する場合に、ウォームホイール31はウォームギヤ35を回動させることができないため、固定手段20による固定を解除したままであっても回動操作軸2とカム部材10とが一体化しており、上記の如き調整作業が可能となる。
このように本発明のリミットスイッチの動作タイミング調整装置では、固定手段20による回動操作軸2とカム部材10との固定を解除した状態であっても、回動操作軸2を駆動させてガイドベーンの全開、全閉状態と、リミットスイッチのオンオフタイミングとの対応関係を把握することが可能となる。従って、ガイドベーンの全開、全閉状態を、リミットスイッチのオンオフタイミングが正確に反映していない場合には、固定手段20による固定を解除したままで調整機構30を用いて回動操作軸に対するカム部材の位置関係を微調整することが可能となる。この調整作業中、ガイドベーンを含む水力発電機器の稼動を停止する必要がないため、従来のように発電機の頻繁な停止によって稼働率が著しく低下することがなくなり、しかも発電に供し得る水を無駄に廃棄する必要がなくなる。
【0024】
また、調整作業は、操作部45を回転させるだけでよいので、非熟練者であっても微調整作業を作業性よく容易、且つ正確に実施することができる。操作部は、ギヤホルダの外部に位置しているため、操作が容易である。
水力発電機器を稼動させながらの調整作業が可能となる。即ち、従来はビスを解除してカム部材を回動操作軸に相対回動可能にしたり、或いはビスを締結して相対回動不能にする作業が必要であったために、作業中に回動操作軸が回動すると、作業員が手を怪我することがあった。これに対して、本発明では、調整機構側の操作部45を調整する作業のみで調整作業が進行するので、作業中に回動操作軸が回動したとしても怪我をする虞がなくなる。
調整作業終了時に固定手段20を固定して回動操作軸とカム部材とを固定することにより作業が完了する。
【0025】
なお、ウォームホイール31(回動操作軸2)からウォームギヤ35に駆動力が逆入力する場合に、ウォームホイール31はウォームギヤ35を回動させることができない構造であるため、固定手段20を省略することも可能である。即ち、固定手段によって回動操作軸に対してカム部材を固定しない状態にしたとしても、ウォームギヤ35を回動させない限り、ウォームホイール31(回動操作軸2)は回動しないため、2つのギヤを介して回動操作軸とカム部材とが固定された状態となるからである。
ウォームホイールと一体化されたカム部材の軸穴11の径を既存の回動操作軸に取付け可能な寸法設定とすることにより、既存の回動操作軸に対して本発明のカム部材及びウォームホイールと、調整機構を組み付けることにより、回動操作軸、及びリミットスイッチの交換、改造が不要となる。
【0026】
以上のように、本発明によれば、操作対象物(例えば、ガイドベーン)を開閉する回動操作軸2に対するカム部材10の取付け角度を調整することによって、ガイドベーンの開閉状態検知精度(リミットスイッチの動作タイミング精度)を高める作業を行う場合に、従来のようにビスによって回動操作軸とカム部材との固定を解除した上で、手作業によってカム部材の取付け角度を調整するという煩雑な作業を不要としたため、調整精度を高めつつ作業性を高めることができる。
即ち、本発明では回動操作軸とカム部材とを固定するビスを解除した上でカム部材を回動させるという従来の手法を採用せずに、ウォームホイールとウォームギヤとから成る格別の調整機構を用いて調整するようにしたので、調整精度を高めるとともに、調整作業中に回動操作軸が回動するようなことがあっても作業員の手などを怪我することがない。このため、操作対象物を含む機器の稼動を停止しないで調整作業を実施できる。
【符号の説明】
【0027】
1…リミットスイッチの動作タイミング調整装置、2…回動操作軸、10…カム部材、11…軸穴、12…カム面、15…段差部、20…固定手段、30…調整機構、31…ウォームホイール、32…挿通孔、35…ウォームギヤ、36…中心軸、37…ナット部材、40…ギヤホルダ、45…操作部、50…リミットスイッチ、51…スイッチ本体、52…アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作対象物を作動させるための回動操作軸と、該回動操作軸を挿通する軸穴を有し該回動操作軸に対して相対回転可能であり且つ外周にリミットスイッチのアクチュエータが当接するカム面を有したカム部材と、前記回動操作軸に対する前記カム部材の回動方向角度を調整する調整機構と、を備えたリミットスイッチの動作タイミング調整装置であって、
前記調整機構は、前記回動操作軸を挿通する挿通孔を軸心部に有し、且つ前記カム部材と一体回動するウォームホイールと、前記回動操作軸に軸心部を挿通固定されたギヤホルダと、前記ウォームホイールのギヤ部と常時噛合した状態で前記ギヤホルダによって正逆回転自在に軸支されたウォームギヤと、前記ギヤホルダに支持されて前記ウォームギヤを回転操作するための操作部と、を備えていることを特徴とするリミットスイッチの動作タイミング調整装置。
【請求項2】
前記操作対象物は前記回動操作軸の回動角度に応じて回動することによって導水管内を開閉するガイドベーンであり、
前記カム部材のカム面には外径が変化する段差部が設けられており、前記リミットスイッチのアクチュエータは前記カム部材の正逆回動に伴って前記段差部を中心として正逆両方向へ所定の角度範囲内でカム部材外周面を相対的に移動し、
前記アクチュエータが前記カム面の最大外径部と接した時に前記リミットスイッチはオンとなり、最小外径部と接したときにオフとなり、
前記調整機構による調整作業は、前記リミットスイッチのオン、又はオフの時に、前記ガイドベーンが全開又は全閉、或いは全閉又は全開、となるように実施されることを特徴とする請求項に係る請求項1に記載のリミットスイッチの動作タイミング調整装置。
【請求項3】
前記ウォームギヤの端面から突出した中心軸に設けた雄螺子部を前記ギヤホルダに設けたナットの雌螺子部と螺合させた状態で、該中心軸の端部を前記ギヤホルダ外部に突出させ、前記中心軸の端部を前記操作部としたことを特徴とする請求項1又は2に記載のリミットスイッチの動作タイミング調整装置。
【請求項4】
前記カム部材を前記回動操作軸に対して相対回転可能にしたり、相対回転不能に固定する固定手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のリミットスイッチの動作タイミング調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−159057(P2012−159057A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20921(P2011−20921)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】