リミットスイッチ
【課題】 ホルダーの回転ストロークを利用して、固定接点に対する可動接点の接触スライド移動量を大きくして、安定かつ確実な通電が得られるリミットスイッチを提供する。
【解決手段】 スイッチボックス11の内部に収容固定された固定接点12と、枢支ボルト13を中心に回転自在に設けられたホルダー14と、基端部がホルダーに固定されて、先端部の可動接点部15cが固定接点部12aに対してスライド自在に離接する可動接点15とを備えている。また、コイルスプリング16のばね力によってレバー部材17と前記ホルダーを介して前記可動接点を固定接点側へ付勢している。前記可動接点の基端部の前記ホルダー本体14aに対する結合位置を、枢支ボルトの枢支点Pよりもホルダー回転方向の後方側に設定して、可動接点のスライド量を大きくした。
【解決手段】 スイッチボックス11の内部に収容固定された固定接点12と、枢支ボルト13を中心に回転自在に設けられたホルダー14と、基端部がホルダーに固定されて、先端部の可動接点部15cが固定接点部12aに対してスライド自在に離接する可動接点15とを備えている。また、コイルスプリング16のばね力によってレバー部材17と前記ホルダーを介して前記可動接点を固定接点側へ付勢している。前記可動接点の基端部の前記ホルダー本体14aに対する結合位置を、枢支ボルトの枢支点Pよりもホルダー回転方向の後方側に設定して、可動接点のスライド量を大きくした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエレベータ装置の乗りかごの昇降位置を検出するリミットスイッチの改良する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、エレベータの昇降路内のガイドレールには、乗りかごの過度な上昇位置と下降位置を検出する複数のリミットスイッチが設けられおり、この従来のリミットスイッチとしては、以下の特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
図19に基づいて概略を説明すれば、このリミットスイッチは、スライド式のものであって、昇降路内に設置された図外のガイドレールに取り付けられたスイッチボックス1内の一端側に、固定接点2が収容固定されていると共に、該固定接点2と対向した他端側に可動接点3が配置されている。
【0004】
この可動接点3は、平板なばね鋼からなり、基端部3aが枢軸4によって回動自在に支持されたホルダー5にねじ止め固定されていると共に、先端部に前記固定接点2の固定接点部2aと離接可能な可動接点部3bが設けられている。
【0005】
また、前記ホルダー5には、動作レバー6の一端部が結合されており、この動作レバー6は、スイッチボックス1の外側面から斜めに突出した他端部にローラ7が回転自在に設けられていると共に、スイッチボックス1内に弾装された図外のばね部材によって図19中、反時計方向(矢印方向)へ付勢されることによってホルダー5を介して前記可動接点部3bが固定接点部2aに接触して通電(スイッチオン)するようになっている。
【0006】
そして、乗りかごが、前記ガイドレールに沿って昇降移動して過度に上昇し、あるいは過度に下降した場合には、該乗りかごの外面に固定されたカムが、前記ローラ7に当接しつつ動作レバー6の他端部を時計方向(破線矢印方向)へ押圧することによってホルダー5を同方向へ回動させる。これにより、前記両接点部2a、3bが離間して、通電を遮断する(スイッチオフ)ようになっている。これによって、制御装置が乗りかごの昇降移動を停止させるようになっている。
【0007】
また、乗りかごを前記過度な上昇位置あるいは下降位置から移動させて、カムが前記動作レバー6のローラ7から離れると、ホルダー5が、図19及び図20に示すように、ばね部材のばね力によって元の位置に回動して、可動接点部3bの端面が固定接点部2aの対向端面にスライドしながら接触して再び通電されるようになっている。
【特許文献1】特開平11−154444号公報など
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来のリミットスイッチにあっては、前記可動接点3の基端部3aの前記ホルダー5に対する固定位置が、該ホルダー5の回転方向の前方側(固定接点2側)、つまり、枢軸4の枢支点よりも固定接点2側に設定されていることから、前記可動接点部3bの端面が、固定接点部2aの対向端面上を図19に示す位置から図20に示す位置までスライドする移動量Lが小さくなってしまい、このスライド移動量Lが例えば約0.75mmになっている。
【0009】
このため、可動接点部3bと固定接点部2aとの接触性能が低下して通電の不安定化を招くおそれがある。
【0010】
本発明は、前記従来のスライド式リミットスイッチの技術的課題に鑑みて案出されたもので、固定接点部と可動接点部との接触時におけるスライド移動量を増加させて接触性能を向上させることにより、安定した通電を確保し得るリミットスイッチを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、スイッチボックスの内部に収容固定された固定接点と、前記スイッチボックスの内部に枢支点を中心に回転自在に設けられたホルダーと、基端部が前記ホルダーに固定されて、先端部が前記固定接点に対してスライド自在に離接する可動接点と、前記可動接点を前記固定接点に対して接触する方向へ付勢する付勢手段と、一端部が前記ホルダーに結合されていると共に、他端部が所定部材に当接して回動することにより前記ホルダーを介して前記可動接点を前記付勢力に抗して固定接点から離間させるレバー部材と、を備え、前記可動接点の基端部の前記ホルダーに対する結合位置を、前記枢支点よりも前記ホルダー回転方向の後方側に設定したことを特徴としている。
【0012】
この発明によれば、可動接点のホルダーに対する固定位置を、ホルダー回転方向の後方側に設定したため、可動接点がホルダーを介して固定接点方向に回動した際の回転ストローク(回転角度)が大きくなる。このため、可動接点の端面が固定接点の対向端面に当接した時点からの該可動接点のスライド移動量が大きくなる。これによって、可動接点と固定接点の接触移動面積が大きくなって、確実な通電作用が得られる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記スイッチボックスを前後方向に長いボックス状に形成すると共に、該スイッチボックスの長手方向の後端に上下方向に沿って固定用の保持溝を形成し、かつ該保持溝にスライド嵌合保持される保持部材を設け、前記固定接点を、前記保持部材の下部両側に幅方向に沿って形成されたスリットに横方向から係入する端子板と、該端子板の一端側に固定された固定接点部とによって構成したことを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、固定接点をスイッチボックスに組み付けるには、予め固定接点を保持部材のスリット内に係入した状態で該保持部材を前記スライド溝を介してスイッチボックスに嵌合保持すれば、該固定接点を簡単にスイッチボックスに取り付けることが可能になる。したがって、固定接点の取付作業能率の向上が図れる。
【0015】
しかも、固定接点を予めスイッチボックスなどに成形が複雑なインサート成形をする必要がなくなるので、かかる製造作業能率の向上が図れる。
【0016】
請求項3に記載の発明にあっては、前記可動接点は、ばね板をほぼ長方形状に形成されてなり、基端部の両側縁に形成されてそれぞれ形状の異なる複数の嵌合部と、先端部に設けられて、前記固定接点に離接する可動接点部とを備える一方、前記ホルダーの所定外面に前記可動接点の基端部が嵌着する嵌着溝を形成すると共に、該嵌着溝の両側壁に前記各嵌合部が嵌合する嵌挿部を設けたことを特徴としている。
【0017】
この発明によれば、前記可動接点をホルダーに取り付ける際に、もし誤って表裏を逆した状態で、取り付けようとすると、各嵌合部が嵌挿部とその外形状が合致しないことから、嵌合できなくなるので、該可動接点の誤取り付けの発生を防止することが可能になる。これによって、該可動接点の取付作業が容易になる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、前記嵌合部を、それぞれ半径の異なる円弧状の嵌合凹部によって形成する一方、前記嵌挿部を前記各嵌合凹部がそれぞれ係合する嵌合凸部によって形成したことを特徴としている。
【0019】
簡単な形状の嵌合凸部と嵌合凹部の容易な成形作業を確保しつつ可動接点の誤取り付けを防止できる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、前記可動接点の長手方向の所定位置に、撓み調整用孔を形成したことを特徴としている。
【0021】
撓み調整用孔の大きさを任意に設定することによって可動接点本体の撓み量を自由に変更することができることから、固定接点との最適な接触荷重を得ることが可能になる。
【0022】
すなわち、可動接点のスライド移動量が大きくなると、両者が摩耗し易くなるが、撓み調整用孔によって可動接点と固定接点との接触荷重を小さくかつ最適に調整できるので、互いの摩耗量を可及的に小さくすることができる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、前記ホルダーの外端部に、前記可動接点の下面を支持するアームを設けたことを特徴としている。
【0024】
可動接点が固定接点と離間する際に、可動接点をアームによって強制的に離間する方向へ押し上げることから、固定接点との焼き付けなどによる固着を防止できる。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に記載の発明によれば、可動接点がホルダーを介して固定接点方向に回動した際の基端部の回転ストローク量が大きくなるため、可動接点の端面が固定接点の対向端面に当接した時点からの該可動接点のスライド移動量が大きくなる。これによって、可動接点と固定接点の接触移動面積が大きくなって、確実な通電作用が得られる。
【0026】
請求項2に記載の発明によれば、固定接点を簡単にスイッチボックスに取り付けることが可能になるので、固定接点の取付作業能率の向上が図れる。
【0027】
しかも、固定接点を予めスイッチボックスなどに成形が複雑なインサート成形をする必要がなくなるので、かかる製造作業能率の向上が図れる。
【0028】
請求項3に記載の発明によれば、可動接点の誤取り付けの発生を防止することが可能になり、これによって、該可動接点の取付作業が容易になる。
【0029】
請求項4に記載の発明によれば、簡単な形状の嵌合凹部と嵌合凸部の容易な成形作業を確保しつつ可動接点の誤取り付けを防止できる。
【0030】
請求項5に記載の発明によれば、撓み調整用孔の大きさを任意に設定することによって可動接点の撓み量を自由に変更することができることから、固定接点との最適な接触荷重を得ることが可能になる。
【0031】
これによって、可動接点と固定接点の互いの摩耗量を可及的に小さくすることができ、耐久性の向上が図れる。
【0032】
請求項6に記載の発明によれば、可動接点が固定接点と離間する際に、可動接点をアームによって強制的に離間する方向へ押し上げることから、固定接点との焼き付けなどによる固着を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明に係るリミットスイッチを従来と同じくエレベータ装置に適用された実施形態を図面に基づいて詳述する。
【0034】
すなわち、このリミットスイッチは、図1〜図3に示すように、昇降路内のガイドレールに固定されたスイッチボックス11と、該スイッチボックス11の内部一端側に収容固定された固定接点12と、前記スイッチボックス11の内部他端側に枢軸である枢支ボルト13を中心に回転自在に設けられたホルダー14と、該ホルダー14に固定されて、前記固定接点12に対してスライド自在に離接する可動接点15と、該可動接点15を前記固定接点12に対して接触する方向へ付勢する付勢手段であるコイルスプリング16と、一端部が前記ホルダー14に結合されていると共に、他端部が前記スイッチボックス11の外側面から傾斜状に突出したレバー部材17とから主として構成されている。
【0035】
前記スイッチボックス11は、ほぼ長方体に形成されて、底壁11aの両側縁から立ち上がった両側壁11b、11bによって隔成されていると共に、後端側の開口が横断面ほぼコ字形状のリアカバー18によって長手方向から閉塞されている。また、スイッチボックス11は、その上端開口が2本のビス19、19によって上端部に固定される細長いアッパカバー20によって閉塞されている。
【0036】
前記スイッチボックス11は、両側壁11b、11bの後端側内面に前記リアーカバー18の前端縁に突設された一対の係止爪18a、18aが係止する係止溝11c、11cが上下方向に沿って形成されていると共に、両側壁11b、11bのほぼ中央内面に横断面ほぼコ字形状に突設された壁部間に保持溝が11d、11dが上下方向に沿って形成されている。また、前端部側には、前記コイルスプリング16を収容する収容室11eが隔成されている。
【0037】
前記一側壁11bの前端部には、後述するブッシュ31が回転自在に保持される支持孔11fが貫通形成されていると共に、該一側壁11bの下部前端位置及び中央位置に、前記レバー部材17の最大回動位置を規制する規制凸部11g、11hがそれぞれ設けられている。
【0038】
前記各固定接点12は、図1及び図4〜図6に示すように、それぞれ細長い金属片(端子板)をほぼ中央からクランク状に折曲形成されてなり、前端片に銀材によって円柱状に形成された固定接点部12aがそれぞれカシメ固定されていると共に、各後端片12bが図外の電気コネクタに差し込まれる端子部として構成されている。
【0039】
また、この各固定接点12は、前記両保持溝11d、11dに両端部が上方からスライド嵌合して保持される保持部材21によって固定支持されている。
【0040】
この保持部材21は、合成樹脂材によってほぼ平板状に一体に形成され、下端から前方に延びた底壁21aと、該底壁21aと後端面との幅方向のほぼ中央位置に突設された突出壁21bとを一体に備えている。この突出壁21bを挟んだ下端部両側には、前記固定接点12の折曲中央基部を横方向から嵌入保持する第1スリット21c、21cと、この第1スリット21c、21cの上方位置に平行に形成された第2スリット21d、21dがそれぞれ設けられている。また、前記底壁21aの上面幅方向には、前記固定接点12、12を前記第1スリット21c、21cに嵌入した際に、前記各固定接点部12a,12aの下端カシメ部12c、12cの逃げ部となるほぼU字形状の逃げ溝21e、21eがそれぞれ形成されている。
【0041】
前記ホルダー14は、図1及び図7〜図9に示すように、合成樹脂材によって一体に形成され、ほぼ円柱状のホルダー本体14aと、該ホルダー本体14aの後端に一体に有する平板状のアーム14bとから構成されている。
【0042】
前記ホルダー本体14aは、内部軸方向に前記枢支ボルト13が挿通するボルト挿通孔22が形成されていると共に、該ボルト挿通孔22の孔縁に楕円状の係止孔23が形成されている。また、前記ホルダー本体14の前記係止孔23とほぼ反対側の外周部に前記枢支ボルト13に螺着するナット24をボルト挿通孔22側に挿通させるナット挿通孔25が形成されている。
【0043】
さらに、ホルダー本体14aの上端面には、前記可動接点15の一端部(基端部)15aを嵌合する嵌合溝26が形成されている。この嵌合溝26は、前記基端部15aの外形に沿って形成され、その深さが可動接点15の肉厚よりも十分に大きく設定されていると共に、対向両側面のほぼ中央に半径長さの大小異なるほぼ半円形状の嵌挿部である嵌合凸部27a、27bが一体に形成されている。また、この嵌合溝26の底面ほぼ中央には、ホルダー本体14aの下部方向から上方へ固定ボルト28が挿通されるボルト孔29が貫通形成されている。
【0044】
前記アーム14bは、ホルダー本体14aの下端側部から後端方向へ延設されて、先端部に可動接点15の先端側下面に当接する凸状の当接部14cが一体に設けられている。また、該アーム14bの幅方向の中央上面には、前記ホルダー本体14aから前記当接部14cまで延設されて、上端面で前記可動接点15の中央下面を支持するリブ状の支持片14dが一体に設けられている。
【0045】
前記係止孔23には、図1及び図10にも示すように、カラー30を介して回り止め用のブッシュ31の楕円形の先端部31aが係合している。このブッシュ31は、ホルダー14と前記レバー部材17とを、相対回転しないように連結するものであって、前記先端部31aと反対側の円板状の頭部外面中央にほぼ矩形状の係合突部31bが設けられていると共に、内部軸方向に前記枢支ボルト13が挿通するボルト挿通孔31cが貫通形成されている。
【0046】
前記可動接点15は、図7〜図9にも示すように、平板状のばね鋼によってほぼ長方形状に形成され、基端部15aのほぼ中央位置に前記固定ボルト28が挿通するボルト孔15dが穿設されていると共に、先端側の二股に分かれた細幅の可動片15b、15bの先端下部には、2つの可動接点部15c、15cがそれぞれカシメによって固定されている。
【0047】
前記基端部15aの両側縁には、前記各凸部27a、27bにそれぞれ対応して嵌合する半径が大小異なる2つの嵌合部である嵌合凹部32a、32bが形成されており、該基端部15aが、これらの嵌合を得ながら、固定ボルト28とナット33によってホルダー本体14aの上端部に固定されている。
【0048】
また、可動接点15の長手方向のほぼ中央位置には、撓み調整用孔34が長手方向に沿って長孔状に穿設されている。
【0049】
前記レバー部材17は、金属プレートをプレス成形によってほぼ長方形状に形成され、スイッチボックス1の外側面に配置された基片部17aと、該基片部17aの先端側に一体に有するほぼクランク状に折曲された先端片17bとを備えている。
【0050】
前記基片部17aには、長手方向のほぼ中央位置に前記ブッシュ31の係合凸部31bが係合する矩形状の係合孔17aが穿設されていると共に、該係合孔17aより先端側の位置に、図12及び図13に示すように、前記コイルスプリング16の上端部を弾持する支持片17cがほぼ直角に折曲形成されている。したがって、レバー部材17は、前記支持片17cを介してコイルスプリング16のばね力によって先端片17b側が上方へ回動付勢されるようになっている。また、前記先端片17bには、回転軸35に回転自在に支持されたローラ36が設けられており、このローラ36は、乗りかごの外面に設けられたカムに当接して転動するようになっている。
【0051】
そして、前記可動接点15は、前記基端部15aの前記ホルダ本体14aに対する固定位置が図14及び図15などにも示すように、前記枢支ボルト13の枢支点Pよりも前記ホルダー14の回転方向の後方側へ僅かにずれた位置に設定されている。
【0052】
すなわち、基端部15aの固定位置は、前記ローラ36が乗りかごのカムから離間した際に、ホルダー14がコイルスプリング16のばね力によって枢支ボルト13を中心に図14中、反時計方向(矢印方向)へ回転するが、この回転方向に対して前記枢支点Pよりも回転方向の後方側へ僅かにずれた位置に設定されている。これによって、可動接点15は、ホルダー14の回転ストローク(回転角度)を利用して固定接点12方向への大きなスライド移動量を確保するようになっている。
【0053】
以下、本実施形態の作用について説明する。まず、乗りかごが通常の上昇位あるいはと下降移動を行っている場合には、図16に示すように、レバー部材17がコイルスプリング16のばね力によって反時計方向に回転付勢されて、ホルダー14もこれに同期して反時計方向へ回動しており、したがって、可動接点15の両可動接点部15cが固定接点12の両固定接点部12aにそれぞれ弾接して通電状態になっている。
【0054】
次に、乗りかごが、例えば規定外の過度な上昇位置に移動すると、図17に示すように、乗りかごのカムがローラ36に当接して該ローラ36をコイルスプリング16のばね力に抗して下方に押圧し、レバー部材17を時計方向へ回転させる。すると、ホルダー14も同方向へ同期回転して可動接点15が後方へスライド移動する。
【0055】
さらにローラ36が下方へ押圧されると、図18に示すように、レバー部材17を介してホルダー14が時計方向へさらに回転して可動接点15の各可動接点部15cが固定接点12の各固定接点部12aから離間し、これによって、通電が遮断される。これによって、制御装置によって乗りかごの移動が規制される。
【0056】
このとき、可動接点15は、その下面のほぼ全体がホルダー14のアーム14bによって下方から押し上げられることから、各可動接点部15cが各固定接点部12aから強制的に引き離される。このため、該両接点部15c、12aとの焼き付きなどによる固着の発生が確実に防止できる。
【0057】
続いて、乗りかごが過度な上昇位置から下降してカムとローラ36との当接が解除されると、レバー部材17がコイルスプリング16のばね力によって、図14に示すように、反時計方向へ回動してホルダー14の同方向へ回転し、可動接点15の各可動接点部15cの端面が各固定接点部12cの対向端面に当接する。ここから、ホルダー14が、コイルスプリング16のばね力によってさらに回転すると、各可動接点部15cの端面は各固定接点部12aの対向端面上をスライドしながら前方へ移動する。
【0058】
このとき、可動接点15は、前記ホルダー基端部14aの特異な固定位置に起因して、該ホルダー14の回転ストロークを利用し前方へ大きく移動する。これによって各可動接点部15cは、固定接点部12aの対向端面上を、従来よりも大きくスライド移動し、このスライド移動量L1が約1.12mm程度になる。
【0059】
このため、これによって、可動接点と固定接点の接触移動面積が大きくなって、安定かつ確実な通電作用が得られる。
【0060】
また、この実施形態によれば、各固定接点12をスイッチボックス11に組み付けるには、図4に示すように、予め各固定接点12を前記保持部材21の各スリット21d内に外側横方向から係入した状態で、該保持部材21を前記
保持溝11d、11dを介してスイッチボックス11に嵌合保持すれば、該各固定接点12を簡単にスイッチボックス11に取り付けることが可能になる。したがって、各固定接点12の取付作業能率の向上が図れる。
【0061】
しかも、この各固定接点12を予めスイッチボックス11などに成形が複雑なインサート成形をする必要がなくなるので、かかる製造作業能率の向上が図れる。
【0062】
また、前記可動接点15の基端部15a側をホルダー14に取り付ける際には、該ホルダー14の形状の異なる嵌合凸部27a、27bに、基端部15aの形状対応する各嵌合凹部32a、32bを嵌合するようになっているので、誤取り付けを防止できる。つまり、もし誤って可動接点15の表裏を逆した状態で、取り付けようとすると、各嵌合凸部27a、27bと各嵌合凹部32a、32bの外形状が合致しないことから、嵌合できなくなるので、該可動接点15の誤取り付けの発生を防止することが可能になる。これによって、該可動接点15の取付作業が容易になる。
【0063】
また、前記嵌合凸部27a、27bと嵌合凹部32a、32bは、簡単な形状であるから成形作業が容易である。
【0064】
また、前記可動接点15には、撓み調整用孔34が形成されていることから、かかる撓み調整用孔34の大きさを任意に設定することによって可動接点15の撓み量を自由に変更することができる。したがって、固定接点12との最適な接触荷重を得ることが可能になる。すなわち、可動接点15のスライド移動量が大きくなると、両者が摩耗し易くなるが、可動接点部15cと固定接点部12aとの接触荷重を小さくかつ最適に調整できるので、互いの摩耗量を可及的に小さくすることができる。この結果、各接点部12a、15cの耐久性の向上が図れる。
【0065】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、可動接点15の肉厚を変更して、撓み調整用孔34と共に弾性変形量を変更することも可能である。
【0066】
また、このリミットスイッチは、エレベータ装置だけに適用されるものではなく、他の装置に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係るリミットスイッチの一実施形態の分解斜視図である。
【図2】本実施形態のリミットスイッチの側面図である。
【図3】本実施形態のリミットスイッチの斜視図である。
【図4】本実施形態に供される固定接点や保持部材を示す分解斜視図である。
【図5】同固定接点を保持部材に組み付けた状態を示す斜視図である。
【図6】同固定接点を保持部材に組み付けた状態を示す側面図である。
【図7】本実施形態に供されるホルダーと可動接点の分解斜視図である。
【図8】同ホルダーと可動接点を組み付けた状態を示す斜視図である。
【図9】同ホルダーと可動接点を組み付けた状態を示す平面図である。
【図10】同ホルダーと可動接点を組付体とレバー部材とを示す斜視図である。
【図11】同ホルダーと可動接点の組付体にレバー部材を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図12】本実施形態の要部俯瞰図である。
【図13】本実施形態の要部斜視図である。
【図14】本実施形態における可動接点の固定接点に対する当接初期位置を示す作用説明図である。
【図15】本実施形態における可動接点が固定接点にスライド移動した状態を示す作用説明図である。
【図16】本実施形態における作用説明図である。
【図17】本実施形態における作用説明図である。
【図18】本実施形態における作用説明図である。
【図19】従来のリミットスイッチの作用説明図である。
【図20】同じく従来のリミットスイッチの作用説明図である。
【符号の説明】
【0068】
11…スイッチボックス
12…固定接点
12a…固定接点部
13…枢支ボルト(枢支点)
14…ホルダー
14a…ホルダー本体
14b…アーム
15…可動接点
15c…可動接点部
16…コイルスプリング(付勢手段)
17…レバー部材
17c…支持片
26…嵌着溝
27a、27b…嵌合凸部
32a、32b…嵌合凹部
34…撓み調整用孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエレベータ装置の乗りかごの昇降位置を検出するリミットスイッチの改良する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、エレベータの昇降路内のガイドレールには、乗りかごの過度な上昇位置と下降位置を検出する複数のリミットスイッチが設けられおり、この従来のリミットスイッチとしては、以下の特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
図19に基づいて概略を説明すれば、このリミットスイッチは、スライド式のものであって、昇降路内に設置された図外のガイドレールに取り付けられたスイッチボックス1内の一端側に、固定接点2が収容固定されていると共に、該固定接点2と対向した他端側に可動接点3が配置されている。
【0004】
この可動接点3は、平板なばね鋼からなり、基端部3aが枢軸4によって回動自在に支持されたホルダー5にねじ止め固定されていると共に、先端部に前記固定接点2の固定接点部2aと離接可能な可動接点部3bが設けられている。
【0005】
また、前記ホルダー5には、動作レバー6の一端部が結合されており、この動作レバー6は、スイッチボックス1の外側面から斜めに突出した他端部にローラ7が回転自在に設けられていると共に、スイッチボックス1内に弾装された図外のばね部材によって図19中、反時計方向(矢印方向)へ付勢されることによってホルダー5を介して前記可動接点部3bが固定接点部2aに接触して通電(スイッチオン)するようになっている。
【0006】
そして、乗りかごが、前記ガイドレールに沿って昇降移動して過度に上昇し、あるいは過度に下降した場合には、該乗りかごの外面に固定されたカムが、前記ローラ7に当接しつつ動作レバー6の他端部を時計方向(破線矢印方向)へ押圧することによってホルダー5を同方向へ回動させる。これにより、前記両接点部2a、3bが離間して、通電を遮断する(スイッチオフ)ようになっている。これによって、制御装置が乗りかごの昇降移動を停止させるようになっている。
【0007】
また、乗りかごを前記過度な上昇位置あるいは下降位置から移動させて、カムが前記動作レバー6のローラ7から離れると、ホルダー5が、図19及び図20に示すように、ばね部材のばね力によって元の位置に回動して、可動接点部3bの端面が固定接点部2aの対向端面にスライドしながら接触して再び通電されるようになっている。
【特許文献1】特開平11−154444号公報など
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来のリミットスイッチにあっては、前記可動接点3の基端部3aの前記ホルダー5に対する固定位置が、該ホルダー5の回転方向の前方側(固定接点2側)、つまり、枢軸4の枢支点よりも固定接点2側に設定されていることから、前記可動接点部3bの端面が、固定接点部2aの対向端面上を図19に示す位置から図20に示す位置までスライドする移動量Lが小さくなってしまい、このスライド移動量Lが例えば約0.75mmになっている。
【0009】
このため、可動接点部3bと固定接点部2aとの接触性能が低下して通電の不安定化を招くおそれがある。
【0010】
本発明は、前記従来のスライド式リミットスイッチの技術的課題に鑑みて案出されたもので、固定接点部と可動接点部との接触時におけるスライド移動量を増加させて接触性能を向上させることにより、安定した通電を確保し得るリミットスイッチを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、スイッチボックスの内部に収容固定された固定接点と、前記スイッチボックスの内部に枢支点を中心に回転自在に設けられたホルダーと、基端部が前記ホルダーに固定されて、先端部が前記固定接点に対してスライド自在に離接する可動接点と、前記可動接点を前記固定接点に対して接触する方向へ付勢する付勢手段と、一端部が前記ホルダーに結合されていると共に、他端部が所定部材に当接して回動することにより前記ホルダーを介して前記可動接点を前記付勢力に抗して固定接点から離間させるレバー部材と、を備え、前記可動接点の基端部の前記ホルダーに対する結合位置を、前記枢支点よりも前記ホルダー回転方向の後方側に設定したことを特徴としている。
【0012】
この発明によれば、可動接点のホルダーに対する固定位置を、ホルダー回転方向の後方側に設定したため、可動接点がホルダーを介して固定接点方向に回動した際の回転ストローク(回転角度)が大きくなる。このため、可動接点の端面が固定接点の対向端面に当接した時点からの該可動接点のスライド移動量が大きくなる。これによって、可動接点と固定接点の接触移動面積が大きくなって、確実な通電作用が得られる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記スイッチボックスを前後方向に長いボックス状に形成すると共に、該スイッチボックスの長手方向の後端に上下方向に沿って固定用の保持溝を形成し、かつ該保持溝にスライド嵌合保持される保持部材を設け、前記固定接点を、前記保持部材の下部両側に幅方向に沿って形成されたスリットに横方向から係入する端子板と、該端子板の一端側に固定された固定接点部とによって構成したことを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、固定接点をスイッチボックスに組み付けるには、予め固定接点を保持部材のスリット内に係入した状態で該保持部材を前記スライド溝を介してスイッチボックスに嵌合保持すれば、該固定接点を簡単にスイッチボックスに取り付けることが可能になる。したがって、固定接点の取付作業能率の向上が図れる。
【0015】
しかも、固定接点を予めスイッチボックスなどに成形が複雑なインサート成形をする必要がなくなるので、かかる製造作業能率の向上が図れる。
【0016】
請求項3に記載の発明にあっては、前記可動接点は、ばね板をほぼ長方形状に形成されてなり、基端部の両側縁に形成されてそれぞれ形状の異なる複数の嵌合部と、先端部に設けられて、前記固定接点に離接する可動接点部とを備える一方、前記ホルダーの所定外面に前記可動接点の基端部が嵌着する嵌着溝を形成すると共に、該嵌着溝の両側壁に前記各嵌合部が嵌合する嵌挿部を設けたことを特徴としている。
【0017】
この発明によれば、前記可動接点をホルダーに取り付ける際に、もし誤って表裏を逆した状態で、取り付けようとすると、各嵌合部が嵌挿部とその外形状が合致しないことから、嵌合できなくなるので、該可動接点の誤取り付けの発生を防止することが可能になる。これによって、該可動接点の取付作業が容易になる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、前記嵌合部を、それぞれ半径の異なる円弧状の嵌合凹部によって形成する一方、前記嵌挿部を前記各嵌合凹部がそれぞれ係合する嵌合凸部によって形成したことを特徴としている。
【0019】
簡単な形状の嵌合凸部と嵌合凹部の容易な成形作業を確保しつつ可動接点の誤取り付けを防止できる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、前記可動接点の長手方向の所定位置に、撓み調整用孔を形成したことを特徴としている。
【0021】
撓み調整用孔の大きさを任意に設定することによって可動接点本体の撓み量を自由に変更することができることから、固定接点との最適な接触荷重を得ることが可能になる。
【0022】
すなわち、可動接点のスライド移動量が大きくなると、両者が摩耗し易くなるが、撓み調整用孔によって可動接点と固定接点との接触荷重を小さくかつ最適に調整できるので、互いの摩耗量を可及的に小さくすることができる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、前記ホルダーの外端部に、前記可動接点の下面を支持するアームを設けたことを特徴としている。
【0024】
可動接点が固定接点と離間する際に、可動接点をアームによって強制的に離間する方向へ押し上げることから、固定接点との焼き付けなどによる固着を防止できる。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に記載の発明によれば、可動接点がホルダーを介して固定接点方向に回動した際の基端部の回転ストローク量が大きくなるため、可動接点の端面が固定接点の対向端面に当接した時点からの該可動接点のスライド移動量が大きくなる。これによって、可動接点と固定接点の接触移動面積が大きくなって、確実な通電作用が得られる。
【0026】
請求項2に記載の発明によれば、固定接点を簡単にスイッチボックスに取り付けることが可能になるので、固定接点の取付作業能率の向上が図れる。
【0027】
しかも、固定接点を予めスイッチボックスなどに成形が複雑なインサート成形をする必要がなくなるので、かかる製造作業能率の向上が図れる。
【0028】
請求項3に記載の発明によれば、可動接点の誤取り付けの発生を防止することが可能になり、これによって、該可動接点の取付作業が容易になる。
【0029】
請求項4に記載の発明によれば、簡単な形状の嵌合凹部と嵌合凸部の容易な成形作業を確保しつつ可動接点の誤取り付けを防止できる。
【0030】
請求項5に記載の発明によれば、撓み調整用孔の大きさを任意に設定することによって可動接点の撓み量を自由に変更することができることから、固定接点との最適な接触荷重を得ることが可能になる。
【0031】
これによって、可動接点と固定接点の互いの摩耗量を可及的に小さくすることができ、耐久性の向上が図れる。
【0032】
請求項6に記載の発明によれば、可動接点が固定接点と離間する際に、可動接点をアームによって強制的に離間する方向へ押し上げることから、固定接点との焼き付けなどによる固着を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明に係るリミットスイッチを従来と同じくエレベータ装置に適用された実施形態を図面に基づいて詳述する。
【0034】
すなわち、このリミットスイッチは、図1〜図3に示すように、昇降路内のガイドレールに固定されたスイッチボックス11と、該スイッチボックス11の内部一端側に収容固定された固定接点12と、前記スイッチボックス11の内部他端側に枢軸である枢支ボルト13を中心に回転自在に設けられたホルダー14と、該ホルダー14に固定されて、前記固定接点12に対してスライド自在に離接する可動接点15と、該可動接点15を前記固定接点12に対して接触する方向へ付勢する付勢手段であるコイルスプリング16と、一端部が前記ホルダー14に結合されていると共に、他端部が前記スイッチボックス11の外側面から傾斜状に突出したレバー部材17とから主として構成されている。
【0035】
前記スイッチボックス11は、ほぼ長方体に形成されて、底壁11aの両側縁から立ち上がった両側壁11b、11bによって隔成されていると共に、後端側の開口が横断面ほぼコ字形状のリアカバー18によって長手方向から閉塞されている。また、スイッチボックス11は、その上端開口が2本のビス19、19によって上端部に固定される細長いアッパカバー20によって閉塞されている。
【0036】
前記スイッチボックス11は、両側壁11b、11bの後端側内面に前記リアーカバー18の前端縁に突設された一対の係止爪18a、18aが係止する係止溝11c、11cが上下方向に沿って形成されていると共に、両側壁11b、11bのほぼ中央内面に横断面ほぼコ字形状に突設された壁部間に保持溝が11d、11dが上下方向に沿って形成されている。また、前端部側には、前記コイルスプリング16を収容する収容室11eが隔成されている。
【0037】
前記一側壁11bの前端部には、後述するブッシュ31が回転自在に保持される支持孔11fが貫通形成されていると共に、該一側壁11bの下部前端位置及び中央位置に、前記レバー部材17の最大回動位置を規制する規制凸部11g、11hがそれぞれ設けられている。
【0038】
前記各固定接点12は、図1及び図4〜図6に示すように、それぞれ細長い金属片(端子板)をほぼ中央からクランク状に折曲形成されてなり、前端片に銀材によって円柱状に形成された固定接点部12aがそれぞれカシメ固定されていると共に、各後端片12bが図外の電気コネクタに差し込まれる端子部として構成されている。
【0039】
また、この各固定接点12は、前記両保持溝11d、11dに両端部が上方からスライド嵌合して保持される保持部材21によって固定支持されている。
【0040】
この保持部材21は、合成樹脂材によってほぼ平板状に一体に形成され、下端から前方に延びた底壁21aと、該底壁21aと後端面との幅方向のほぼ中央位置に突設された突出壁21bとを一体に備えている。この突出壁21bを挟んだ下端部両側には、前記固定接点12の折曲中央基部を横方向から嵌入保持する第1スリット21c、21cと、この第1スリット21c、21cの上方位置に平行に形成された第2スリット21d、21dがそれぞれ設けられている。また、前記底壁21aの上面幅方向には、前記固定接点12、12を前記第1スリット21c、21cに嵌入した際に、前記各固定接点部12a,12aの下端カシメ部12c、12cの逃げ部となるほぼU字形状の逃げ溝21e、21eがそれぞれ形成されている。
【0041】
前記ホルダー14は、図1及び図7〜図9に示すように、合成樹脂材によって一体に形成され、ほぼ円柱状のホルダー本体14aと、該ホルダー本体14aの後端に一体に有する平板状のアーム14bとから構成されている。
【0042】
前記ホルダー本体14aは、内部軸方向に前記枢支ボルト13が挿通するボルト挿通孔22が形成されていると共に、該ボルト挿通孔22の孔縁に楕円状の係止孔23が形成されている。また、前記ホルダー本体14の前記係止孔23とほぼ反対側の外周部に前記枢支ボルト13に螺着するナット24をボルト挿通孔22側に挿通させるナット挿通孔25が形成されている。
【0043】
さらに、ホルダー本体14aの上端面には、前記可動接点15の一端部(基端部)15aを嵌合する嵌合溝26が形成されている。この嵌合溝26は、前記基端部15aの外形に沿って形成され、その深さが可動接点15の肉厚よりも十分に大きく設定されていると共に、対向両側面のほぼ中央に半径長さの大小異なるほぼ半円形状の嵌挿部である嵌合凸部27a、27bが一体に形成されている。また、この嵌合溝26の底面ほぼ中央には、ホルダー本体14aの下部方向から上方へ固定ボルト28が挿通されるボルト孔29が貫通形成されている。
【0044】
前記アーム14bは、ホルダー本体14aの下端側部から後端方向へ延設されて、先端部に可動接点15の先端側下面に当接する凸状の当接部14cが一体に設けられている。また、該アーム14bの幅方向の中央上面には、前記ホルダー本体14aから前記当接部14cまで延設されて、上端面で前記可動接点15の中央下面を支持するリブ状の支持片14dが一体に設けられている。
【0045】
前記係止孔23には、図1及び図10にも示すように、カラー30を介して回り止め用のブッシュ31の楕円形の先端部31aが係合している。このブッシュ31は、ホルダー14と前記レバー部材17とを、相対回転しないように連結するものであって、前記先端部31aと反対側の円板状の頭部外面中央にほぼ矩形状の係合突部31bが設けられていると共に、内部軸方向に前記枢支ボルト13が挿通するボルト挿通孔31cが貫通形成されている。
【0046】
前記可動接点15は、図7〜図9にも示すように、平板状のばね鋼によってほぼ長方形状に形成され、基端部15aのほぼ中央位置に前記固定ボルト28が挿通するボルト孔15dが穿設されていると共に、先端側の二股に分かれた細幅の可動片15b、15bの先端下部には、2つの可動接点部15c、15cがそれぞれカシメによって固定されている。
【0047】
前記基端部15aの両側縁には、前記各凸部27a、27bにそれぞれ対応して嵌合する半径が大小異なる2つの嵌合部である嵌合凹部32a、32bが形成されており、該基端部15aが、これらの嵌合を得ながら、固定ボルト28とナット33によってホルダー本体14aの上端部に固定されている。
【0048】
また、可動接点15の長手方向のほぼ中央位置には、撓み調整用孔34が長手方向に沿って長孔状に穿設されている。
【0049】
前記レバー部材17は、金属プレートをプレス成形によってほぼ長方形状に形成され、スイッチボックス1の外側面に配置された基片部17aと、該基片部17aの先端側に一体に有するほぼクランク状に折曲された先端片17bとを備えている。
【0050】
前記基片部17aには、長手方向のほぼ中央位置に前記ブッシュ31の係合凸部31bが係合する矩形状の係合孔17aが穿設されていると共に、該係合孔17aより先端側の位置に、図12及び図13に示すように、前記コイルスプリング16の上端部を弾持する支持片17cがほぼ直角に折曲形成されている。したがって、レバー部材17は、前記支持片17cを介してコイルスプリング16のばね力によって先端片17b側が上方へ回動付勢されるようになっている。また、前記先端片17bには、回転軸35に回転自在に支持されたローラ36が設けられており、このローラ36は、乗りかごの外面に設けられたカムに当接して転動するようになっている。
【0051】
そして、前記可動接点15は、前記基端部15aの前記ホルダ本体14aに対する固定位置が図14及び図15などにも示すように、前記枢支ボルト13の枢支点Pよりも前記ホルダー14の回転方向の後方側へ僅かにずれた位置に設定されている。
【0052】
すなわち、基端部15aの固定位置は、前記ローラ36が乗りかごのカムから離間した際に、ホルダー14がコイルスプリング16のばね力によって枢支ボルト13を中心に図14中、反時計方向(矢印方向)へ回転するが、この回転方向に対して前記枢支点Pよりも回転方向の後方側へ僅かにずれた位置に設定されている。これによって、可動接点15は、ホルダー14の回転ストローク(回転角度)を利用して固定接点12方向への大きなスライド移動量を確保するようになっている。
【0053】
以下、本実施形態の作用について説明する。まず、乗りかごが通常の上昇位あるいはと下降移動を行っている場合には、図16に示すように、レバー部材17がコイルスプリング16のばね力によって反時計方向に回転付勢されて、ホルダー14もこれに同期して反時計方向へ回動しており、したがって、可動接点15の両可動接点部15cが固定接点12の両固定接点部12aにそれぞれ弾接して通電状態になっている。
【0054】
次に、乗りかごが、例えば規定外の過度な上昇位置に移動すると、図17に示すように、乗りかごのカムがローラ36に当接して該ローラ36をコイルスプリング16のばね力に抗して下方に押圧し、レバー部材17を時計方向へ回転させる。すると、ホルダー14も同方向へ同期回転して可動接点15が後方へスライド移動する。
【0055】
さらにローラ36が下方へ押圧されると、図18に示すように、レバー部材17を介してホルダー14が時計方向へさらに回転して可動接点15の各可動接点部15cが固定接点12の各固定接点部12aから離間し、これによって、通電が遮断される。これによって、制御装置によって乗りかごの移動が規制される。
【0056】
このとき、可動接点15は、その下面のほぼ全体がホルダー14のアーム14bによって下方から押し上げられることから、各可動接点部15cが各固定接点部12aから強制的に引き離される。このため、該両接点部15c、12aとの焼き付きなどによる固着の発生が確実に防止できる。
【0057】
続いて、乗りかごが過度な上昇位置から下降してカムとローラ36との当接が解除されると、レバー部材17がコイルスプリング16のばね力によって、図14に示すように、反時計方向へ回動してホルダー14の同方向へ回転し、可動接点15の各可動接点部15cの端面が各固定接点部12cの対向端面に当接する。ここから、ホルダー14が、コイルスプリング16のばね力によってさらに回転すると、各可動接点部15cの端面は各固定接点部12aの対向端面上をスライドしながら前方へ移動する。
【0058】
このとき、可動接点15は、前記ホルダー基端部14aの特異な固定位置に起因して、該ホルダー14の回転ストロークを利用し前方へ大きく移動する。これによって各可動接点部15cは、固定接点部12aの対向端面上を、従来よりも大きくスライド移動し、このスライド移動量L1が約1.12mm程度になる。
【0059】
このため、これによって、可動接点と固定接点の接触移動面積が大きくなって、安定かつ確実な通電作用が得られる。
【0060】
また、この実施形態によれば、各固定接点12をスイッチボックス11に組み付けるには、図4に示すように、予め各固定接点12を前記保持部材21の各スリット21d内に外側横方向から係入した状態で、該保持部材21を前記
保持溝11d、11dを介してスイッチボックス11に嵌合保持すれば、該各固定接点12を簡単にスイッチボックス11に取り付けることが可能になる。したがって、各固定接点12の取付作業能率の向上が図れる。
【0061】
しかも、この各固定接点12を予めスイッチボックス11などに成形が複雑なインサート成形をする必要がなくなるので、かかる製造作業能率の向上が図れる。
【0062】
また、前記可動接点15の基端部15a側をホルダー14に取り付ける際には、該ホルダー14の形状の異なる嵌合凸部27a、27bに、基端部15aの形状対応する各嵌合凹部32a、32bを嵌合するようになっているので、誤取り付けを防止できる。つまり、もし誤って可動接点15の表裏を逆した状態で、取り付けようとすると、各嵌合凸部27a、27bと各嵌合凹部32a、32bの外形状が合致しないことから、嵌合できなくなるので、該可動接点15の誤取り付けの発生を防止することが可能になる。これによって、該可動接点15の取付作業が容易になる。
【0063】
また、前記嵌合凸部27a、27bと嵌合凹部32a、32bは、簡単な形状であるから成形作業が容易である。
【0064】
また、前記可動接点15には、撓み調整用孔34が形成されていることから、かかる撓み調整用孔34の大きさを任意に設定することによって可動接点15の撓み量を自由に変更することができる。したがって、固定接点12との最適な接触荷重を得ることが可能になる。すなわち、可動接点15のスライド移動量が大きくなると、両者が摩耗し易くなるが、可動接点部15cと固定接点部12aとの接触荷重を小さくかつ最適に調整できるので、互いの摩耗量を可及的に小さくすることができる。この結果、各接点部12a、15cの耐久性の向上が図れる。
【0065】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、可動接点15の肉厚を変更して、撓み調整用孔34と共に弾性変形量を変更することも可能である。
【0066】
また、このリミットスイッチは、エレベータ装置だけに適用されるものではなく、他の装置に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係るリミットスイッチの一実施形態の分解斜視図である。
【図2】本実施形態のリミットスイッチの側面図である。
【図3】本実施形態のリミットスイッチの斜視図である。
【図4】本実施形態に供される固定接点や保持部材を示す分解斜視図である。
【図5】同固定接点を保持部材に組み付けた状態を示す斜視図である。
【図6】同固定接点を保持部材に組み付けた状態を示す側面図である。
【図7】本実施形態に供されるホルダーと可動接点の分解斜視図である。
【図8】同ホルダーと可動接点を組み付けた状態を示す斜視図である。
【図9】同ホルダーと可動接点を組み付けた状態を示す平面図である。
【図10】同ホルダーと可動接点を組付体とレバー部材とを示す斜視図である。
【図11】同ホルダーと可動接点の組付体にレバー部材を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図12】本実施形態の要部俯瞰図である。
【図13】本実施形態の要部斜視図である。
【図14】本実施形態における可動接点の固定接点に対する当接初期位置を示す作用説明図である。
【図15】本実施形態における可動接点が固定接点にスライド移動した状態を示す作用説明図である。
【図16】本実施形態における作用説明図である。
【図17】本実施形態における作用説明図である。
【図18】本実施形態における作用説明図である。
【図19】従来のリミットスイッチの作用説明図である。
【図20】同じく従来のリミットスイッチの作用説明図である。
【符号の説明】
【0068】
11…スイッチボックス
12…固定接点
12a…固定接点部
13…枢支ボルト(枢支点)
14…ホルダー
14a…ホルダー本体
14b…アーム
15…可動接点
15c…可動接点部
16…コイルスプリング(付勢手段)
17…レバー部材
17c…支持片
26…嵌着溝
27a、27b…嵌合凸部
32a、32b…嵌合凹部
34…撓み調整用孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチボックスの内部に収容固定された固定接点と、
前記スイッチボックスの内部に枢支点を中心に回転自在に設けられたホルダーと、
基端部が前記ホルダーに固定されて、先端部が前記固定接点に対してスライド自在に離接する可動接点と、
前記可動接点を前記固定接点に対して接触する方向へ付勢する付勢手段と、
一端部が前記ホルダーに結合されていると共に、他端部が所定部材に当接して回動することにより前記ホルダーを介して前記可動接点を前記付勢力に抗して固定接点から離間させるレバー部材と、
を備え、
前記可動接点の基端部の前記ホルダーに対する結合位置を、前記枢支点よりも前記ホルダー回転方向の後方側に設定したことを特徴とするリミットスイッチ。
【請求項2】
前記スイッチボックスを前後方向に長いボックス状に形成すると共に、該スイッチボックスの長手方向の後端に上下方向に沿って固定用の保持溝を形成し、かつ該保持溝にスライド嵌合保持される保持部材を設け、
前記固定接点を、前記保持部材の下部両側に幅方向に沿って形成されたスリットに横方向から係入する端子板と、該端子板の一端側に固定された固定接点部とから構成したことを特徴とする請求項1に記載のリミットスイッチ。
【請求項3】
前記可動接点は、ばね板をほぼ長方形状に形成されてなり、基端部の両側縁に形成されてそれぞれ形状の異なる複数の嵌合部と、先端部に設けられて、前記固定接点に離接する可動接点部とを備える一方、
前記ホルダーの所定外面に、前記可動接点の基端部が嵌着する嵌着溝を形成すると共に、該嵌着溝の両側壁に前記各嵌合部が嵌合する嵌挿部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のリミットスイッチ。
【請求項4】
前記嵌合部を、それぞれ半径の異なる円弧状の嵌合凹部によって形成する一方、前記嵌挿部を前記各嵌合凹部がそれぞれ嵌合する嵌合凸部によって形成したことを特徴とする請求項3に記載のリミットスイッチ。
【請求項5】
前記可動接点の長手方向の所定位置に、撓み調整用孔を形成したことを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載のリミットスイッチ。
【請求項6】
前記ホルダーの外端部に、前記可動接点の下面を当接支持するアームを設けたことを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載のリミットスイッチ。
【請求項1】
スイッチボックスの内部に収容固定された固定接点と、
前記スイッチボックスの内部に枢支点を中心に回転自在に設けられたホルダーと、
基端部が前記ホルダーに固定されて、先端部が前記固定接点に対してスライド自在に離接する可動接点と、
前記可動接点を前記固定接点に対して接触する方向へ付勢する付勢手段と、
一端部が前記ホルダーに結合されていると共に、他端部が所定部材に当接して回動することにより前記ホルダーを介して前記可動接点を前記付勢力に抗して固定接点から離間させるレバー部材と、
を備え、
前記可動接点の基端部の前記ホルダーに対する結合位置を、前記枢支点よりも前記ホルダー回転方向の後方側に設定したことを特徴とするリミットスイッチ。
【請求項2】
前記スイッチボックスを前後方向に長いボックス状に形成すると共に、該スイッチボックスの長手方向の後端に上下方向に沿って固定用の保持溝を形成し、かつ該保持溝にスライド嵌合保持される保持部材を設け、
前記固定接点を、前記保持部材の下部両側に幅方向に沿って形成されたスリットに横方向から係入する端子板と、該端子板の一端側に固定された固定接点部とから構成したことを特徴とする請求項1に記載のリミットスイッチ。
【請求項3】
前記可動接点は、ばね板をほぼ長方形状に形成されてなり、基端部の両側縁に形成されてそれぞれ形状の異なる複数の嵌合部と、先端部に設けられて、前記固定接点に離接する可動接点部とを備える一方、
前記ホルダーの所定外面に、前記可動接点の基端部が嵌着する嵌着溝を形成すると共に、該嵌着溝の両側壁に前記各嵌合部が嵌合する嵌挿部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のリミットスイッチ。
【請求項4】
前記嵌合部を、それぞれ半径の異なる円弧状の嵌合凹部によって形成する一方、前記嵌挿部を前記各嵌合凹部がそれぞれ嵌合する嵌合凸部によって形成したことを特徴とする請求項3に記載のリミットスイッチ。
【請求項5】
前記可動接点の長手方向の所定位置に、撓み調整用孔を形成したことを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載のリミットスイッチ。
【請求項6】
前記ホルダーの外端部に、前記可動接点の下面を当接支持するアームを設けたことを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載のリミットスイッチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2006−351302(P2006−351302A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−174484(P2005−174484)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(397003219)司ゴム電材株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(397003219)司ゴム電材株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
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