説明

リリーフ弁

【課題】、比例ソレノイドを組み込んでいるリリーフ弁において、下流側の油路に気泡を生じている場合においても、チャタリングを抑制することが可能な構造を有するリリーフ弁を提供すること。
【解決手段】 リリーフ弁10は、上流側の油路に連通するダンパー室40を設けたので、ダンパー室40へ流入する油の粘性抵抗により弁体20の振動を抑制することができる。また、ダンパー室40と上流側連通路38a及び38bとを、小径部22、中径部23、小径部24及び中径部25の周側面とスリーブ32の小径部33の内周面との間に構成されるオリフィスによって連通しているので、下流側の油路とダンパー室とを連通させた従来技術のように、下流側の油路に気泡を生じている場合に気泡を押し潰すように気泡がある油路に向かって油が急激に流入してダンパー室への油の流入が十分でない状態となることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リリーフ弁に関し、特に比例ソレノイドを組み込んでいるリリーフ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
リリーフ弁は、油圧回路における圧力設定に利用される弁であり、スプリング又はソレノイドによって圧力を設定する。すなわち、上流(入力ポート)側の圧が所定の圧力を越えると、この圧によってスプリング又はソレノイドの付勢力に逆らって弁体を弁座から離隔させて、下流(出力ポート)側に圧油を送出し、回路内の油圧を低下させて所定圧力に保つものである。ソレノイドで設定するリリーフ弁は、比例ソレノイドからの入力によって設定圧力を可変制御するので設定圧力を随時変更でき、鉄道車輌などの減揺装置のダンパーなどに利用されることが多い。ところで、スプリングを利用するもの、ソレノイドを利用するものの双方のリリーフ弁において、弁体を弁座から離隔するときに発生するチャタリングの抑制が課題の1つになっている。
【0003】
以下に、チャタリングを抑制するための従来技術ついて説明する。図8は、従来技術に係るリリーフ弁の構造を示す断面図である。図8において、70はリリーフ弁、71はハウジング、72は弁体保持室、73aは大径部、73bは小径部、74は弁体、75aは大径部、75bは小径部、76はスプリング、77はシート部、78はダンパー室、79aは入力ポート、79b及び79cは出力ポートである。
【0004】
図8は、特開平11−325285公報に開示されているソレノイドを示している。リリーフ弁70は、ハウジング71に設けられた弁体保持室72に閉止位置と開成位置との間を進退可能に保持された弁体74と、弁体74を閉止位置へ向かって付勢するスプリング76とを備えている。弁体保持室72は、内径が大きい大径部73aと、これに連続して形成された内径が小さい小径部73bを備えている。また、弁体74は、弁体保持室72の大径部73a及び小径部73bにそれぞれ対応する径を有する大径部75a及び小径部75bを備えている。さらに、弁体保持室72の大径部73aと弁体74の小径部75bとの間には、弁体74の進退に伴って拡縮するダンパー室78が形成されるようにすると共に、ダンパー室78に流出入させる油路を確保するために、大径部73a及び小径部73bと大径部75a及び小径部75bとの間に所定のクリアランスを設けている。
【0005】
以上の構成において、弁体74への油圧が所定圧以上となり、この油圧によって弁体74に作用する力がスプリング76による弾性付勢力を越えると弁体74がシート部77から離隔し、入力ポート79aと出力ポート79b及び79cとが連通する。一方、弁体74の進退移動に伴い、スプリング76の保持空間が拡縮するが、弁体74が開成位置方向へ移動する時には、ダンパー室78が拡張する。これにより、スプリング76の保持空間より前述のクリアランスによる油路を通り、ダンパー室78に油が流入する。このときに油の粘性抵抗により弁体74が抵抗力を受けて弁体74に対するダンパーとして機能するので、チャタリングが抑制される。
【0006】
しかしながら、以上の構成では、油圧回路を長期間使用していなかったり、分解してメンテナンスを行ったりして、下流側の油路に気泡を生じている場合には、気泡を押し潰すように気泡がある油路に向かって油が急激に流入する。ダンパー室78は気泡がある油路よりも相対的に高圧となるので、ダンパー室78への油の流入が十分でない状態となり、ダンパーとしての機能が低下することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−325285公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、比例ソレノイドを組み込んでいるリリーフ弁において、下流側の油路に気泡を生じている場合においても、チャタリングを抑制することが可能な構造を有するリリーフ弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、弁座に接離することによって上流側の油路と下流側の油路との連通路を開閉するように設けられた弁体と、前記弁体の一部又は全部が挿入されると共に収納可能に保持するスリーブと、前記弁体に直接的又は間接的に接続されると共に中心軸に沿って摺動することによって前記弁体を前記弁座に接離させるように設けられたプランジャとを有するリリーフ弁において、前記弁体の周側面と前記スリーブの内周面とにおいて、互いに対向する部位の一方又は両方に形成された凹部によってなされたダンパー室と、前記連通路の上流側の前記油路と前記ダンパー室とを連通するように形成されたオリフィスとを有することを特徴とするリリーフ弁である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記スリーブは、略円筒形状に形成され、前記プランジャ側の部分の内径が前記弁座側の部分の内径よりも大きくなるようになされ、これらの部分の境界領域に前記凹部が形成されていることを特徴とするリリーフ弁である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記弁体は、略円柱形状に形成され、前記プランジャに接続された側の部分の径が前記弁座に接離する側の部分の径よりも大きくなるようになされ、これらの部分の境界領域に前記凹部が形成されていることを特徴とするリリーフ弁である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記弁体は、前記凹部を形成した部位よりも弁座に接離する側を、前記スリーブの前記弁座側の部分の内径よりも僅かに小さい第1の径と、該第1の径よりもさらに小さい第2の径からなるものとし、前記弁体の前記凹部を形成した部位よりも弁座に接離する側の周側面と、前記スリーブの前記凹部を形成した部位よりも前記弁座側の内周面とが前記オリフィスを構成していることを特徴とするリリーフ弁である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の発明において、さらに、前記連通路が内部に形成されると共に、前記連通路の一部が前記弁座を構成するようになされた連通路構成材を有し、前記スリーブは、前記弁座側の外周面の全周又は一部を切削することによって前記連通路構成材との間に空間が形成され、該空間と前記ダンパー室とを連通する貫通孔が形成され、前記溝と前記貫通孔とが前記オリフィスを構成していることを特徴とするリリーフ弁である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、スリーブと弁体との間にダンパー室と、上流側の油路とダンパー室とを連通するオリフィスを有するので、上流側の油路が所定圧に達したときにダンパー室が作用するようにできる。また、下流側の油路に気泡を生じている場合でも、上流側の油路からダンパー室へ流入する油の流れを生じるので、ダンパー機能の低下を招くことがない。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、プランジャ側への油の漏出を低減するためにスリーブの内周面に形成している段差部をダンパー室として利用するので、弁体やプランジャの内部にダンパー室を設ける場合などのように、ダンパー室を考慮に入れた径とする必要がなく、リリーフ弁の小型化を進める上で障害となることがない。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、プランジャ側への油の漏出を低減するために弁体の周側面に形成している段差部をダンパー室として利用するので、弁体やプランジャの内部にダンパー室を設ける場合などのように、ダンパー室を考慮に入れた径とする必要がなく、リリーフ弁の小型化を進める上で障害となることがない。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、スリーブにオリフィス用の貫通孔を形成する必要がないので、スリーブの加工コストを低減することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、スリーブと弁体との間のオリフィスに加えて、スリーブに貫通孔を形成してオリフィスとするので、ダンパー室に流出入する油の流量を増大させることができ、大型のリリーフ弁に適用することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るリリーフ弁の連通路の周辺部の構造を示す部分断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るリリーフ弁の開弁時における連通路の周辺部の状態を示す部分断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るリリーフ弁を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るリリーフ弁の実施例における電流値と油圧との関係を示す断面図である。
【図5】比較例となるリリーフ弁における電流値と油圧との関係を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るリリーフ弁の連通路の周辺部の構造を示す部分断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るリリーフ弁の連通路の周辺部の構造を示す部分断面図である。
【図8】従来技術に係るリリーフ弁の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明の第1の実施の形態に係るリリーフ弁の全体構成について説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態に係るリリーフ弁を示す断面図である。図3において、10はリリーフ弁、20は弁体、27は大径部、29は基端部、31は連通路部材、32はスリーブ、33は小径部、35は中径部、36は弁座部材、38a及び38bは上流側連通路、38cは下流側連通路、38dは環状空間、40はダンパー室、41は基端部、42はスプリング、43はベース、44は鍔部、45はかしめ部、46はシャフト、47は軸受、49はOリング、50はプランジャ、51は基端部、52はケース、53はかしめ部、54はスリーブ、55はボビン、56はコイル、57は軸受、58はエンドキャップ、59はブッシング、60はケーブルである。
【0021】
図3に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るリリーフ弁10は、比例ソレノイドによって作動するものであり、ケース52にベース43が嵌合され、さらにベース43が連通路部材31を支持する構造となっている。ケース52は、比例ソレノイドとしての構成品を収納する筐体としての機能と、ベース43を支持する機能を併せ持っている。すなわち、ケース52は、全体が略有底円筒形状に形成されており、底に相当する部分がリリーフ弁10の先端側に位置し、底がない側がリリーフ弁10の基端側に位置している。さらに、この底に相当する部分の中央は大きく開口しており、この部分にベース43が嵌合される。内部には、ボビン55と、ボビン55に巻回されたコイル56が挿入されている。さらに、エンドキャップ58がボビン55を押圧するように挿入され、くわえてかしめ部53によって固定されている。したがって、ボビン55及びコイル56も固定された状態となっている。なお、ケース52の内周面の基端側開口部の近くには、エンドキャップ58の位置決め用の段差部が形成されており、エンドキャップ58はこの段差部に当接した状態でかしめられている。
【0022】
また、コイル56の端部は、ケーブル60に接続されている。ケーブル60は、エンドキャップ58に嵌合されたブッシング59に挿通され、ブッシング59を介して外部に導出されている。また、エンドキャップ58の先端側の外周面はスリーブ54に嵌合されており、さらにスリーブ54の先端側にはベース43の基端部51が嵌合されている。したがって、エンドキャップ58とベース43とは、スリーブ54を介して一体になっている。また、エンドキャップ58の凹陥部には軸受57が嵌合されている。軸受57は、シャフト46の基端側を摺動可能な状態で支持している。なお、ケース52、ボビン55、エンドキャップ58、ブッシング59、ケーブル60の形状、構造又は大きさは比例ソレノイドを構成するのであればどのようなものであってもよく、図3に示した形状、構造又は大きさに限られるものではない。
【0023】
ベース43は、連通路とこれを開閉する構成品を支持する機能を持つ。すなわち、前述のように、鍔部44よりも基端側がケース52の内部に位置すると共にスリーブ54に嵌合されている。また、中心軸に沿って貫通孔が形成されており、この貫通孔の先端側には軸受47が嵌合されている。軸受47は、シャフト46の基端側を摺動可能な状態で支持している。くわえて、貫通孔のさらに先端側には径の大きい孔が形成されており、この径の大きい連通路部材31が挿入され、かつ、かしめ部45によって連通路部材31を固定している。また、この貫通孔の基端側は、軸受47と軸受57とによって支持されたシャフト46が摺動するためのスペースとなっている。シャフト46は、中間部にプランジャ50が固定されている。プランジャ50は両端面に形成した切れ目をかしめることによってシャフト46に固定されており、またコイル56への通電時には、ベース43の基端部51に吸着される。
【0024】
さらに、連通路部材31などの連通路に関する構成について部分拡大した図に基づいて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係るリリーフ弁の連通路の周辺部の構造を示す部分断面図である。図1において、21は先端部、22は小径部、23は中径部、24は小径部、25は中径部、26は小径部、28は小径部、30a及び30bは連通孔、34は大径部、37はシート面、39は基体部、48は基端側スペースである。また、図2は、本発明の第1の実施の形態に係るリリーフ弁の開弁時における連通路の周辺部の状態を示す部分断面図である。図2において用いた符号は、すべて図1及び図3と同じものを示す。
【0025】
連通路部材31は、ベース43の先端側の径の大きい孔に挿入され、かつ、かしめ部45によって固定されている。なお、両者の間隙から油が漏出することを防水するために、両者の間に介在するようにOリング49を設けている。また、連通路として連通路部材31の中心軸方向と、中心軸に直交する上下方向に貫通孔を形成してある。上下方向の貫通孔と、中心軸方向の貫通孔のうち上下方向の貫通孔から先端部に開口している部分は、外部の油路との連通路となる。すなわち、上流側連通路38a及び38bは図示していない上流側の油路に接続されており、下流側連通路38cは図示していない下流側の油路に接続されている。さらに、中心軸方向の貫通孔のうち上下方向の貫通孔から基端部に開口している部分、つまり環状空間38d側は、スリーブ32を嵌合するために形成されている。なお、スリーブ32の基端側には基端部近傍の径が僅かに大きくなるような段差部が形成されている。
【0026】
スリーブ32は、弁体20を摺動可能に保持すると共に、オリフィスを構成している。すなわち、スリーブ32には中心軸方向に貫通孔が形成されており、この貫通孔に弁体20が摺動可能な状態で挿入されている。また、中心軸方向の貫通孔は、弁体20の後述する形状に対応して、先端側に内径が小さい小径部33と、基端側に小径部33よりも内径が大きい中径部35を形成している。また、小径部33と中径部35との境界となる部分に、中径部35よりも内径が大きい大径部34を形成している。大径部34は、後述するようにダンパー室を構成するものである。なお、これらの具体的な径の大きさは、油の流量などによって決定されるものであり、適宜変更することが可能である。くわえて、最も基端側には中径部35よりも内径が大きい基端部41を形成している。また、小径部33と連通路部材31との間には、環状空間38dが形成されており、油が滞留するスペースとなっている。
【0027】
スリーブ32の基端部41は、中径部35よりも外周面においても径が大きく、内周面と外周面とにそれぞれ段差部が形成されている。基端部41の内周面側には、スプリング42が挿入されており、スプリング42の先端側がこの段差部に接した状態で保持されている。また、外周面における中径部35と基端部41の段差部は、スリーブ32を連通路部材31に圧入して嵌合する際に、圧入の完了位置となるものである。くわえて、基端部41の外周面はOリング49に圧接しており、この部位で油を封止している。また、スリーブ32の小径部33と中径部35との間の外周面にも段差部が形成されており、これら2つの段差部によってシャフト46側への油の漏出を低減させている。
【0028】
弁体20は、スリーブ32の貫通孔の内部に摺動可能な状態で配置されており、先端側から先端部21、小径部22、中径部23、小径部24、中径部25、小径部26、大径部27、小径部28及び基端部29の順に構成されている。先端部21は、連通路部材31に嵌合された弁座部材36のシート面37に接離して、上流側連通路38a及び38bと下流側連通路38cとの間を開閉するものであり、図2に示すように、文字通り弁体として機能するものである。小径部22、中径部23、小径部24及び中径部25は、異なる径の部分を交互に配置することによって、これらの周側面とスリーブ32の小径部33の内周面との間でオリフィスを構成するようにしている。例えば、小径部22及び小径部24の周側面と小径部33の内周面との間隙を0.2〜0.4mmとし、中径部23及び中径部25と小径部33の内周面との間隙を1.0〜1.4mmとする。このように構成することによって、上流側連通路38aと後述するダンパー室40とを連通している。したがって、スリーブ32に別途貫通孔を形成する必要がなく、リリーフ弁の製造コストを増大させることがない。
【0029】
また、図1に示すように、先端部21が弁座部材36のシート面37に接しているときに、弁体20の小径部26の周側面とスリーブ32の小径部33の内周面とが所定の間隙をおいて対向している状態となり、この領域がダンパー室40を構成する。ダンパー室40は、開弁状態にあるときには、所定の間隙をおいて対向している領域の面積が拡がる、言い換えるとダンパー室40の容量が大きくなるように構成されている。また、大径部27よりも基端側には小径部28が形成されており、さらに基端側が基端部29となっている。基端部29は、大径部27よりも径が大きく、鍔状に形成されている。また、スリーブ32の基端部41内周面側の段差部と基端部29との間にスプリング42が押し縮めた状態で、かつ、その中心軸が弁体20の中心軸と位置するように配置されている。スリーブ32は連通路部材31を介してベース43に固定されているので、弁体20は、スプリング42によってシャフト46側に付勢力が常時加わっている。さらに、弁体20には、中心軸に貫通している連通孔30aと、小径部28において上下方向に貫通している連通孔30bが形成されている。連通孔30a及び30bは、基端側スペース48や小径部28近傍と下流側連通路38cとの圧力差を緩和し、閉弁時に弁体20の作動速度が角に遅くならないようにするものである。
【0030】
以上の構成において、コイル56への電流値を低下させてスプリング42の付勢力がプランジャ50からの力に打ち勝つと、弁体20がシート面37から離隔して開弁する、つまり図1に示す状態から図2に示す状態になる。この時、ダンパー室40の容量が大きくなることによって、上流側連通路38aから前述のオリフィス油路を通ってダンパー室40に油が流入する。したがって、弁体20の急激な作動が油の粘性抵抗によって妨げられるので、チャタリングが抑制される。また、逆方向に動作するときには、ベース43にプランジャ50が吸引される力がスプリング42の付勢力に打ち勝って、弁体20がシャフト46に押圧される。そして、弁体20がシート面37に接して閉弁する。
【0031】
以上説明した本発明の第1の実施の形態に係るリリーフ弁におけるチャタリング抑制の確認実験について説明する。図4は、本発明の第1の実施の形態に係るリリーフ弁の実施例における電流値と油圧との関係を示す断面図である。また、図5は、比較例となるリリーフ弁における電流値と油圧との関係を示す断面図である。
【0032】
図1、図2及び図3で開示したリリーフ弁を実施例とし、この実施例のリリーフ弁とほぼ同じ構造であるが、弁体20の小径部26とスリーブ32の小径部33とを形成せずにダンパー室40が存在しない構成としたリリーフ弁を比較例とした。そして、コイルの電流値を0から所定値まで上昇させ、再び0に戻るまで過程において、開弁時における上流側油路の圧力を測定した。その結果、実施例においては、図4に示すように、圧力がなめらかに変化しており、チャタリングは発生しなかった。これに対して、比較例においては、図5に示すように、圧力が約2.5Mpa以上の時に脈動するような圧力の変化、つまりチャタリングが継続的に発生した。したがって、図1、図2及び図3で開示した実施例において、チャタリングを相当に抑制する効果があることが確認できた。
【0033】
以上のように、本発明の第1の実施の形態に係るリリーフ弁10は、ダンパー室40を設けたので、ダンパー室40に対して油が流入するときに油の粘性抵抗により弁体20が抵抗を受けるようになる。したがって、弁体20の細かい振動がこの抵抗によって抑制され、チャタリングが抑制されたリリーフ弁を提供することが可能となる。また、この実施の形態に係るリリーフ弁10は、ダンパー室40と上流側連通路38a及び38bとを、小径部22、中径部23、小径部24及び中径部25の周側面とスリーブ32の小径部33の内周面との間に構成されるオリフィスによって連通しているので、下流側の油路とダンパー室とを連通させた従来技術のように、下流側の油路に気泡を生じている場合に気泡を押し潰すように気泡がある油路に向かって油が急激に流入して、ダンパー室への油の流入が十分でない状態となることを防止できる。また、ダンパー室40を弁体20の小径部26と大径部27との段差部、及び、スリーブ32の小径部33と中径部35との段差部を利用して形成している。弁体20などの一部を切削してダンパー室となるスペースを形成する場合よりも製造コストの面で有利である上に、リリーフ弁の小型化を妨げることがない。
【0034】
さらに、本発明の第2の実施の形態に係るリリーフ弁について説明する。図6は、本発明の第2の実施の形態に係るリリーフ弁の連通路の周辺部の構造を示す部分断面図である。図6において、61は中径部であり、その他の符号は図1と同じものを示す。
【0035】
本発明の第2の実施の形態に係るリリーフ弁は、本発明の第1の実施の形態に係るリリーフ弁10の小径部24を省略し、中径部23及び25を一体にした中径部61としている。この実施の形態に係るリリーフ弁のその他の構成は、第1の実施の形態に係るリリーフ弁10と同じである。以上の構成にすることによって、リリーフ弁に要求される油の流量などによっては、構成の一部を第1の実施の形態に係るリリーフ弁10よりも簡便化して製造コストを低減することができる。
【0036】
続けて、本発明の第3の実施の形態に係るリリーフ弁について説明する。図7は、本発明の第2の実施の形態に係るリリーフ弁の連通路の周辺部の構造を示す部分断面図である。図7において、62はオリフィスであり、その他の符号は図1と同じものを示す。
【0037】
本発明の第3の実施の形態に係るリリーフ弁は、本発明の第1の実施の形態に係るリリーフ弁10の構造において、スリーブ32の小径部33に貫通孔を形成し、ダンパー室40と環状空間38dを連通する新たなオリフィス62を設けている。この実施の形態に係るリリーフ弁のその他の構成は、第1の実施の形態に係るリリーフ弁10と同じである。以上の構成にすることによって、リリーフ弁に要求される油の流量が第1の実施の形態に係るリリーフ弁10よりも大きい場合、オリフィス62を設けることによってより大きな流量に対応することが可能になる。
【0038】
なお、本発明は以上に説明した内容に限定されるものではなく、例えば、リリーフ弁の仕様によっては、弁体20の小径部26とスリーブ32の大径部34とのいずれかを設けずにダンパー室40を形成してもよい。つまり、本発明の第1の実施の形態に係るリリーフ弁10では、弁体20の周側面とスリーブ32の内周面との両方に凹部を形成し、これらの凹部をダンパー室40としたが、弁体の周側面とスリーブの内周面との互いに対向する部位の一方にのみ凹部を形成し、この凹部をダンパー室としてもよい。また、本発明の第3の実施の形態に係るリリーフ弁10において、小径部22、中径部23、小径部24及び中径部25は、異なる径の部分を交互に配置することによって、これらの周側面とスリーブ32の小径部33の内周面との間でオリフィスを構成するようにせず、オリフィス62だけを設けるようにしてもよい。また、オリフィス62を設けない場合には、環状空間38dを設けない構成であってもよい。また、シャフト46を設けずに、プランジャ50の弁体20側の部分をシャフト状に形成して、弁体20をプランジャ50で直接的に押圧してもよい。このように、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限りにおいて種々の変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 リリーフ弁
20 弁体
21 先端部
22 小径部
23 中径部
24 小径部
25 中径部
26 小径部
27 大径部
28 小径部
29 基端部
30a 連通孔
30b 連通孔
31 連通路部材
32 スリーブ
33 小径部
34 大径部
35 中径部
36 弁座部材
37 シート面
38a 上流側連通路
38b 上流側連通路
38c 下流側連通路
38d 環状空間
39 基体部
40 ダンパー室
41 基端部
42 スプリング
43 ベース
44 鍔部
45 かしめ部
46 シャフト
47 軸受
48 基端側スペース
49 Oリング
50 プランジャ
51 基端部
52 ケース
53 かしめ部
54 スリーブ
55 ボビン
56 コイル
57 軸受
58 ブッシング
59 ケーブル
60 エンドキャップ
61 中径部
62 オリフィス
70 リリーフ弁
71 ハウジング
72 弁体保持室
73a 大径部
73b 小径部
74 弁体
75a 大径部
75b 小径部
76 スプリング
77 シート部
78 ダンパー室
79a 入力ポート
79b 出力ポート
79c 出力ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座に接離することによって上流側の油路と下流側の油路との連通路を開閉するように設けられた弁体と、前記弁体の一部又は全部が挿入されると共に収納可能に保持するスリーブと、前記弁体に直接的又は間接的に接続されると共に中心軸に沿って摺動することによって前記弁体を前記弁座に接離させるように設けられたプランジャとを有するリリーフ弁において、
前記弁体の周側面と前記スリーブの内周面とにおいて、互いに対向する部位の一方又は両方に形成された凹部によってなされたダンパー室と、
前記連通路の上流側の前記油路と前記ダンパー室とを連通するように形成されたオリフィスとを有することを特徴とするリリーフ弁。
【請求項2】
前記スリーブは、略円筒形状に形成され、前記プランジャ側の部分の内径が前記弁座側の部分の内径よりも大きくなるようになされ、これらの部分の境界領域に前記凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のリリーフ弁。
【請求項3】
前記弁体は、略円柱形状に形成され、前記プランジャに接続された側の部分の径が前記弁座に接離する側の部分の径よりも大きくなるようになされ、これらの部分の境界領域に前記凹部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のリリーフ弁。
【請求項4】
前記弁体は、前記凹部を形成した部位よりも弁座に接離する側を、前記スリーブの前記弁座側の部分の内径よりも僅かに小さい第1の径と、該第1の径よりもさらに小さい第2の径からなるものとし、
前記弁体の前記凹部を形成した部位よりも弁座に接離する側の周側面と、前記スリーブの前記凹部を形成した部位よりも前記弁座側の内周面とが前記オリフィスを構成していることを特徴とする請求項3に記載のリリーフ弁。
【請求項5】
さらに、前記連通路が内部に形成されると共に、前記連通路の一部が前記弁座を構成するようになされた連通路構成材を有し、
前記スリーブは、前記弁座側の外周面の全周又は一部を切削することによって前記連通路構成材との間に空間が形成され、該空間と前記ダンパー室とを連通する貫通孔が形成され、前記溝と前記貫通孔とが前記オリフィスを構成していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のリリーフ弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−44340(P2013−44340A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180410(P2011−180410)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(302038741)新電元メカトロニクス株式会社 (38)
【Fターム(参考)】