説明

リレーアーム本体の製造方法

【課題】 短時間で生産でき、コスト的にも有利なリレーアーム本体の製造方法を提供する。
【解決手段】 板材20から軸受を支持する部位の下穴22をプレスにより打ち抜く第1ブランク工程と、該第1ブランク工程により形成した下穴22をバーリング加工により円筒状のフランジ27に形成するバーリング工程と、該バーリング工程によりフランジ27が形成された板材20から基板21の外形を打ち抜く第2ブランク工程と、前記バーリング工程により形成した円筒状のフランジ部27に軸受を支持するパイプ28a,28bを圧入するパイプ圧入工程からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車の後輪懸架装置に用いるリレーアーム、特にリレーアーム本体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車の後輪懸架装置の主要部は、図6に示すように、後端に後輪1を支持するスイングアーム2とショックアブソーバ(クッションユニット)3とをリレーアーム(クッションレバー)4を介して結合したものである。スイングアーム2は、前端部5が車体フレーム6に揺動自在に支持され、後端側に後輪1を回動自在に支持する。ショックアブソーバ3は、上端側が車体フレーム6側に回動自在に支持され、下端側がリレーアーム4に回動自在に支持される。また、リレーアーム4は、前端部7が車体フレーム6側に揺動自在に支持され、後端部8がショックアブソーバ3の下端側を回動自在に支持し、中央部9がスイングアーム2の下端10に一端が支持されたクッションロッド11の他端に回動自在に支持される。
【0003】
かかる自動二輪車の後輪懸架装置において、自動二輪車の走行によりスイングアーム2がその前端部5の軸を中心に上下に揺動すると、この動きがクッションロッド11を介してリレーアーム4の中央部9に伝えられ、リレーアーム4をその前端部7の軸を中心にして回動させ、これによってリレーアーム4の後端部8にその下端側が回動自在に支持されたショックアブソーバ3を圧縮、伸長させて緩衝作用を行うことになる。
【0004】
かかる後輪懸架装置に用いるリレーアーム4は、従来一般に、アルミニウムの鋳造によって製造されている。鋳造によって製造する場合、高価な金型を必要とすること、溶融したアルミニウムを金型へ鋳入し、冷却後金型から取り外し、軸受取付け部を切削加工した後、軸受を嵌合して完成品とすることから、コストがかかり、また製造に時間を要し生産性に劣るものであった。
また、溶接により製造する方法もある。この方法は、プレス加工により板材から基板の外形と軸受取付け部位を少し大きめに打ち抜く。打ち抜いた穴部に軸受を支持するパイプを挿入して溶接により取り付ける。次いで、取り付けたパイプ内周を切削加工し、軸受を嵌合して完成品とする。この溶接による製造方法の場合、パイプの溶接箇所は一対の基板1枚につき3箇所あるので、計6箇所溶接する必要があり、時間を要し、生産性が低いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−104266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、短時間で生産でき、コスト的にも有利なリレーアーム本体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明によるリレーアーム本体の製造方法は、板材から軸受を支持する部位の下穴をプレスにより打ち抜く第1ブランク工程と、該第1ブランク工程により形成した下穴をバーリング加工により円筒状のフランジに形成するバーリング工程と、該バーリング工程によりフランジが形成された板材から基板の外形を打ち抜く第2ブランク工程と、前記バーリング工程により形成した円筒状のフランジ部に軸受を支持するパイプを圧入するパイプ圧入工程からなること、を特徴としている。
また、本発明の他の態様によるリレーアーム本体の製造方法は、板材から基板の外形と軸受を支持する部位の下穴とをプレスにより打ち抜くブランク工程と、該ブランク工程により形成した下穴をバーリング加工により円筒状のフランジに形成するバーリング工程と、該バーリング工程により形成した円筒状のフランジ部に軸受を支持するパイプを圧入するパイプ圧入工程からなること、を特徴としている。
ここで、円筒状のフランジの内径をパイプ圧入部のパイプの外径よりも若干小径とするとよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のリレーアーム本体の製造方法によれば、板材から下穴を打ち抜く第1ブランク工程と、下穴をバーリング加工により円筒状のフランジに形成するバーリング工程と、フランジが形成された板材から基板の外形を打ち抜く第2ブランク工程と、円筒状のフランジ部にパイプを圧入するパイプ圧入工程からなるので、短時間で作業が行え、生産性が高く低コストで製造できる。さらに、板材から基板の外形を打ち抜く第2ブランク工程の前にバーリング加工により円筒状のフランジに形成するようにしたので、円筒状のフランジが均等に形成できる。
また、本発明の他の態様によるリレーアーム本体の製造方法によれば、基板の外形と下穴とを打ち抜くブランク工程と、下穴をバーリング加工により円筒状のフランジに形成するバーリング工程と、円筒状のフランジ部にパイプを圧入するパイプ圧入工程からなるので、前記の製造方法より1工程少なく、より短時間で作業が行え、生産性が高く低コストで製造できる。
また、円筒状のフランジの内径をパイプ圧入部のパイプの外径よりも若干小径とすれば、締まりばめとなり、基板のフランジ部にパイプを強固に結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施例における第1ブランク工程とバーリング工程と第2ブランク工程の説明図である。
【図2】円筒状のフランジが形成された基板の説明図である。
【図3】基板へのパイプの圧入工程の説明図である。
【図4】本発明の方法により製造したリレーアーム本体の説明図である。
【図5】本発明の第2実施例におけるブランク工程とバーリング工程の説明図である。
【図6】従来例による自動二輪車の後輪懸架装置の要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。本発明の第1実施例によるリレーアーム本体の製造方法は、第1ブランク工程とバーリング工程と第2ブランク工程とパイプ圧入工程からなる。図1において、第1ブランク工程は、素材となる板材20から下穴部22をプレス加工により打ち抜く工程(図1(a))である。下穴22は軸受を支持する部位3箇所に形成する。ここで、板材20は、下穴22と板材端部との距離が十分に確保できる大きさのものとしてある。
【0011】
バーリング工程は、下穴22の形成された板材20を上下から押さえ具25a,25bで挟持し、バーリングパンチ26で下穴22の縁を広げながら立て円筒状のフランジ27を形成する(図1(b)(c))工程である。このとき、形成されるフランジ27の内径は後述するパイプ28a,28b(図3(a))の外径よりも若干小径となるように、バーリングパンチ26の外径を設定する。こうして、軸受を支持する部位に円筒状のフランジ27の形成された板材20(図1(c))を一対製造する。
【0012】
第2ブランク工程は、円筒状のフランジ27の形成された板材20から基板21の外形を打ち抜く工程(図1(d))である。このとき、基板21の軽量化を図るための穴24も同時に打ち抜いている。この穴24の大きさや形状は適宜設定する。こうして、軸受を支持する部位に円筒状のフランジ27の形成された基板21(図1(d)、図2)を一対製造する。
【0013】
パイプ圧入工程は、図3(a)に示すように、一対の基板21,21の各円筒状フランジ部27側とパイプ28a,28b端面とを対向させて配置し、パイプ28a,28bをフランジ部27に圧入して、一対の基板21,21にパイプ28a,28bを圧入固定する工程である。これにより、図4に示すように、一対の基板21,21を3箇所のパイプ28a,28a,28bを介して連結されたリレーアーム本体30が完成する。次いで、パイプ28a,28b内周に軸受けを嵌合すれば、リレーアームの完成品となる。
ここで、圧入部のパイプ28a,28bの外径は円筒状フランジ部27の内径より若干大径に設定し、締まりばめとなるようにして強固に結合する。軸受を支持するパイプ28a,28bは、予め内周に軸受を嵌合できるように仕上げ加工しておいてもよいし、パイプを圧入固定した後に仕上げ加工するようにしてもよい。なお、中間部31に用いるパイプ28bの軸方向の長さは、図においては、他の2箇所(前端部32,後端部33)に用いるパイプ28aの軸方向の長さの3倍程度としてあるが、適宜変更可能であることは勿論である。
【0014】
次に、本発明の第2実施例によるリレーアーム本体の製造方法は、ブランク工程とバーリング工程とパイプ圧入工程からなる。図5において、ブランク工程は、素材となる板材20から基板21の外形と下穴部22とをプレス加工により打ち抜く工程(図5(a)(b))である。このとき、基板21の軽量化を図るための穴24も同時に打ち抜いている。この穴24の大きさや形状は適宜設定可能なことは第1実施例と同様である。下穴22は、軸受を支持する部位3箇所に形成することは第1実施例と同様である。かかる下穴の形成された基板21は一対設ける。
【0015】
バーリング工程は、外形と下穴22の形成された基板21を上下から押さえ具25a,25bで挟持し、バーリングパンチ26で下穴22の縁を広げながら立て円筒状のフランジ27を形成する(図5(c)(d))工程である。このとき、形成されるフランジ27の内径は第1実施例と同様、パイプ28a,28b(図3(a))の外径よりも若干小径となるように、バーリングパンチ26の外径を設定する。こうして、軸受を支持する部位に円筒状のフランジ27の形成された基板21(図5(d)、図2)を一対製造する。
【0016】
第2実施例におけるパイプ圧入工程は、第1実施例において説明したものと同様であるので、説明は省略する。
【0017】
上記第1実施例によるリレーアーム本体30の製造方法によれば、下穴22を形成した板材20の状態でバーリング加工を行うようにしたので、下穴22から板材20端部までの距離が確保でき、バーリング加工によって形成される円筒状のフランジ27は、均等な円筒状に形成することができる。
これに対して、第2実施例による製造方法では、第1実施例における第1ブランク工程と第2ブランク工程とを一工程で行うため、工程数が少なく、より短時間に製造できることになる。ただ、基板21の外形が形成された状態でバーリング加工を行うため、下穴22から基板21端部までの距離が不十分となり、バーリング加工により形成されるフランジ27が均等な円筒状ではなく楕円状に形成されてしまう可能性がある。
【0018】
かかる方法により製造されたリレーアーム本体30のパイプ28a,28b内周に軸受けを嵌合して完成品としたリレーアームは、前端部32が車体フレーム6に回動自在に支持され、中間部31がクッションロッド11に回動自在に支持され、後端部33がショックアブソーバ3の下端を回動自在に支持することになる。ここで、各支持軸には、基板21に対してこじれる方向の負荷はほとんどかからないので、使用中にパイプ圧入部が緩む恐れはなく、十分な強度をもつことが、耐久テストにより分かった。
【0019】
本発明の方法によれば、ブランク工程(第1及び第2ブランク工程)、バーリング工程、パイプ圧入工程のいずれも短時間で作業が完了し、生産性に優れ、安定した品質の製品を製造可能である。
【符号の説明】
【0020】
20 板材
21 基板
22 下穴
24 穴
25a,25b 押さえ具
26 バーリングパンチ
27 フランジ
28a,28b パイプ
30 リレーアーム本体
31 中間部
32 前端部
33 後端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材から軸受を支持する部位の下穴をプレスにより打ち抜く第1ブランク工程と、該第1ブランク工程により形成した下穴をバーリング加工により円筒状のフランジに形成するバーリング工程と、該バーリング工程によりフランジが形成された板材から基板の外形を打ち抜く第2ブランク工程と、前記バーリング工程により形成した円筒状のフランジ部に軸受を支持するパイプを圧入するパイプ圧入工程からなることを特徴とするリレーアーム本体の製造方法。
【請求項2】
板材から基板の外形と軸受を支持する部位の下穴とをプレスにより打ち抜くブランク工程と、該ブランク工程により形成した下穴をバーリング加工により円筒状のフランジに形成するバーリング工程と、該バーリング工程により形成した円筒状のフランジ部に軸受を支持するパイプを圧入するパイプ圧入工程からなることを特徴とするリレーアーム本体の製造方法。
【請求項3】
円筒状のフランジの内径はパイプ圧入部のパイプの外径よりも若干小径とした請求項1又は2に記載のリレーアーム本体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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