説明

リング型スピーカーおよびその製造方法

【課題】 不要な振動および異音の抑制を含む周波数特性等の音響特性の改善と、組立の容易化や工数の削減を、両立させることができるリング型スピーカーおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 リング型スピーカーは、リング振動板を固定する振動板固定部材を備え、イコライザーが、リング振動板の内周に配置されて円環状の磁性体からなる内周プレートをインサート成形された内周部と、リング振動板の外周に配置されて円環状の磁性体からなる外周プレートをインサート成形された外周部と、内周部および外周部を一体に連結する複数の連結アーム部と、を備え、振動板固定部材の一方が、イコライザーの内周プレートとの間にリング振動板の内周端部を磁力で狭持する内周固定磁石であり、振動板固定部材の他方がイコライザーの外周プレートとの間にリング振動板の外周端部を磁力で狭持する外周固定磁石である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円環状のリング振動板を備えるリング型スピーカーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリング型スピーカーにおいては、周波数特性および指向特性等の音響特性を改善するために、円環状のリング振動板の前面にイコライザー、ホーン等を取り付けるものがある。円環状のリング振動板を備えたリング型スピーカーは、多くは高音域用のツィーターとして使用される。リング振動板は、内周を固定支持され、リング振動板の内周にリング振動板の外周直径に匹敵するような大きさの砲弾状のイコライザーを配置することにより、高音域における音響特性を改善する(特許文献1)。
【0003】
本願発明の出願人による従来のリング型スピーカーでは、不要な振動および異音の抑制を含む周波数特性等の音響特性の改善と、組立の容易化や部品点数および工数の削減とを、両立させることを目的にして、磁気回路と、磁気回路の磁気空隙に配されるボイスコイルと、ボイスコイルが連結する円環状のリング振動板と、リング振動板の内周に配置される砲弾状イコライザーと、リング振動板の外周に配置される環状イコライザーと、砲弾状イコライザーおよび環状イコライザーを連結する複数の半径方向に延設された板状の連結アームと、を備えるリング型スピーカーであって、連結アームが、半径方向の断面形状において砲弾状イコライザーの頭頂端を通る円弧で表される第1稜線と、半径方向の断面形状において砲弾状イコライザーの底面端を通る円弧で表される第2稜線と、第1稜線および第2稜線を連結する板状部と、を備えるようにしたものがある(特許文献2)。
【0004】
特に、砲弾状イコライザー、連結アームおよび環状イコライザーが一体に樹脂成形された連結イコライザーを備えるリング型スピーカーでは、連結アームによって連結イコライザーが一体に樹脂成形されているので、さらなる組立の容易化と部品点数および工数の削減とを実現することができる。しかしながら、従来技術のリング型スピーカーでは、音響特性の改善と、組立の容易化や部品点数および工数の削減とを、両立させることが困難な場合がある。連結イコライザーを備えるリング型スピーカーであっても、円環状のリング振動板の内周端部および外周端部の固定方法によっては、分割振動が低い周波数で発生して再生周波数帯域を規定する高域限界周波数fhが低下する等の問題を生じ、場合によっては、不要な振動が励起され、振動に起因する異音が発生する、あるいは、音質が劣化するという問題がある。
【0005】
また、円環状のリング振動板の内周端部および外周端部の固定方法は、リング振動板を特許文献2の実施例に記載のようにイコライザーの底面および磁気回路に取り付けられた固定支持部材で挟み込む場合の他、接着剤で接着する場合がある。あるいは、従来には、電磁型サウンダにおいて、サスペンションの外周上に磁性材料である押え材を配置したものがある(特許文献3)。磁性材料であるリング状の押え材7aは、マグネット2による磁気的な吸引によってもサスペンション7の外周の浮きを抑制する。
【0006】
【特許文献1】実開昭57−158285号公報 (第2図)
【特許文献2】特開2006−100879号公報 (第1図、第6図)
【特許文献3】特開2001−209388号公報 (第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、不要な振動および異音の抑制を含む周波数特性等の音響特性の改善と、組立の容易化や工数の削減を、両立させることができるリング型スピーカーおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のリング型スピーカーは、磁気回路と、磁気回路の磁気空隙に配されるボイスコイルと、ボイスコイルが連結する円環状のリング振動板と、二つの着磁された円環状磁石であってリング振動板を固定する振動板固定部材と、磁気回路と連結する樹脂で成形されたイコライザーと、を備えるリング型スピーカーであって、イコライザーが、リング振動板の内周に配置されて円環状の磁性体からなる内周プレートをインサート成形された内周部と、リング振動板の外周に配置されて円環状の磁性体からなる外周プレートをインサート成形された外周部と、内周部および外周部を一体に連結する複数の連結アーム部と、を備え、振動板固定部材の一方が、イコライザーの内周プレートとの間にリング振動板の内周端部を磁力で狭持する内周固定磁石であり、振動板固定部材の他方がイコライザーの外周プレートとの間にリング振動板の外周端部を磁力で狭持する外周固定磁石である。
【0009】
好ましくは、本発明のリング型スピーカーは、磁気回路が、磁気空隙が規定する空間の内側に、リング振動板の内周端、ならびに、振動板固定部材の内周固定磁石の内周端、ならびに、イコライザーの内周プレートの内周端、が嵌合する位置決め凸状部を備える。
【0010】
好ましくは、本発明のリング型スピーカーは、イコライザーが、その内周プレートに嵌合して突出する位置決め凸状部を備え、位置決め凸状部が、リング振動板の内周端、ならびに、振動板固定部材の内周固定磁石の内周端、に嵌合する。
【0011】
さらに好ましくは、本発明のリング型スピーカーは、磁気回路が、ボイスコイルが規定する円筒空間の内側に位置する主マグネットを含む内磁型磁気回路であり、主マグネットの上面側に配置されるプレートと、プレートとの間に磁気空隙を規定するヨークと、を備え、振動板固定部材の内周固定磁石が、プレートの上面側に配置され、主マグネットとともに磁気空隙に反発磁界を形成する。
【0012】
また、好ましくは、本発明のリング型スピーカーは、磁気回路が、ボイスコイルが規定する円筒空間の外側に位置する主マグネットを含む外磁型磁気回路であり、主マグネットの上面側に配置されるプレートと、プレートとの間に磁気空隙を規定するポールと、を備え、振動板固定部材の外周固定磁石が、プレートの上面側に配置され、主マグネットとともに磁気空隙に反発磁界を形成する。
【0013】
さらに好ましくは、本発明のリング型スピーカーは、振動板固定部材の内周固定磁石および外周固定磁石が、円環状磁石の一部を覆う非磁性体リングをさらに備える。
【0014】
また、本発明のリング型スピーカーの製造方法は、磁気回路と、磁気回路の磁気空隙に配されるボイスコイルと、ボイスコイルが連結する円環状のリング振動板と、二つの着磁された円環状磁石であってリング振動板を固定する振動板固定部材と、磁気回路と連結する樹脂で成形されたイコライザーと、を備えるリング型スピーカーの製造方法であって、リング振動板の内周に配置される内周部と、リング振動板の外周に配置される外周部と、内周部および外周部を一体に連結する複数の連結アーム部と、を備えたイコライザーを形成し、その内周部および外周部にそれぞれ円環状の磁性体からなる内周プレートならびに外周プレートをインサート成形する工程と、振動板固定部材の一方である内周固定磁石とイコライザーの内周プレートとの間に、リング振動板の内周端部を磁力で狭持する工程と、振動板固定部材の他方である外周固定磁石とイコライザーの外周プレートとの間に、リング振動板の外周端部を磁力で狭持する工程と、を含む。
【0015】
以下、本発明の作用について説明する。
【0016】
本発明のリング型スピーカーは、磁気回路と、磁気回路の磁気空隙に配されるボイスコイルと、ボイスコイルが連結する円環状のリング振動板と、リング振動板を固定する振動板固定部材と、磁気回路と連結する樹脂で成形されたイコライザーと、を備える。ボイスコイルに音声信号電流が供給されると、磁気回路の磁気空隙中のボイスコイルに駆動力が発生し、リング振動板が振動して音声が再生される。イコライザーは、振動板固定部材とともにリング振動板を固定する一方で、再生音声の音波の波面を整えて周波数特性のピーク・ディップを抑制する。
【0017】
イコライザーは、リング振動板の内周に配置されて円環状の磁性体からなる内周プレートをインサート成形された内周部と、リング振動板の外周に配置されて円環状の磁性体からなる外周プレートをインサート成形された外周部と、内周部および外周部を一体に連結する複数の連結アーム部と、を備える。樹脂成形されるイコライザーは、内周部および外周部が複数の連結アームで連結されるので、イコライザーにおける不要な振動および異音の発生を抑制して、組立の容易化や部品点数および工数を削減することができる。
【0018】
リング振動板の内周に配置されるイコライザーの内周部は、円環状の磁性体からなる内周プレートをインサート成形されている。また、リング振動板の外周に配置されるイコライザーの外周部は、円環状の磁性体からなる外周プレートをインサート成形されている。また、振動板固定部材は、二つの着磁された円環状磁石であって、磁気回路もしくはイコライザーに対してリング振動板の内周端部および外周端部を固定する。振動板固定部材の一方は内周固定磁石であり、インサート成形されているイコライザーの内周プレートとの間にリング振動板の内周端部を磁力で狭持する。また、振動板固定部材の他方は外周固定磁石であり、インサート成形されているイコライザーの外周プレートとの間にリング振動板の外周端部を磁力で狭持する。接着剤を使用する必要が無くなるので、塗布した接着剤がリング振動板の振動すべき部分に染み出して固化することなくなり、リング振動板の内周端部および外周端部の固定が強固になり、リング振動板の固定される部分と振動可能な部分が明確に区別され、その結果、分割振動が発生する高域限界周波数fhを上昇させて、再生周波数帯域を高く延ばすことができ、音響特性の改善を図ることができる。
【0019】
さらに、リング型スピーカーの製造方法において、インサート成形したイコライザーと、振動板固定部材とを設けることで、組立の容易化と工数の削減とを実現できる。振動板固定部材は、二つの着磁された円環状磁石であるので、イコライザーのインサート成形されている内周プレートおよび外周プレートを磁力で吸引し、リング振動板の内周端部ならびに外周端部を磁力で狭持するので、接着剤を使用する必要が無くなり、組立が容易になり、接着剤の乾燥に要する工数をも削減することができる。振動板固定部材を設けることで、イコライザーおよび磁気回路の不要な振動も抑制されるので、振動に起因する異音が発生する、あるいは、音質が劣化するという問題を低減できる。
【0020】
また、好ましくは、本発明のリング型スピーカーでは、磁気回路もしくはイコライザーが、リング振動板の内周端、ならびに、振動板固定部材の内周固定磁石の内周端と嵌合する位置決め凸状部を備える。位置決め凸状部は、リング振動板および振動板固定部材の固定位置を規制するので、リング型スピーカーの製造工程において組立治具が不要になり、組立の容易化と工数の削減とを実現できる。
【0021】
また、本発明のリング型スピーカーでは、磁気回路が内磁型磁気回路である場合でも、また、外磁型磁気回路である場合でも、振動板固定部材の一方である内周固定磁石、あるいは、振動板固定部材の他方である外周固定磁石が、主マグネットとともに磁気空隙に反発磁界を形成するように着磁されて、取り付けられる。具体的には、主マグネットおよび振動板固定部材が、磁気回路のプレートを挟んで同一の磁極が近接するように取り付けられている。したがって、振動板固定部材を設けることで、組立の容易化を図るだけではなく、主マグネットのみを備える磁気回路の場合に比べて、磁気空隙の反発磁界は磁束密度を高め、能率のよいリング型スピーカーを実現できる。
【0022】
また、リング型スピーカーが、振動板固定部材の内周固定磁石および外周固定磁石が、円環状磁石の一部を覆う非磁性体リングをさらに備える場合には、ボイスコイルに供給される音声信号電流に起因する交流磁束が、非磁性体リングに交叉して非磁性体リングの表面に渦電流を生じさせる。その結果、ヒステリシス特性を有する強磁性体としての磁石である振動板固定部材を通過する交流磁束が減少するので、電流歪が低減されて歪特性に優れるリング型スピーカーを実現できる。振動板固定部材によって異音の発生を低減することができるだけでなく、再生音質の改善と、高調波歪等の音響特性の改善を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のリング型スピーカーおよびこれを用いたスピーカーシステムは、不要な振動および異音の抑制を含む周波数特性等の音響特性の改善と、組立の容易化および工数の削減とを、両立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明のリング型スピーカーは、不要な振動および異音の抑制を含む周波数特性等の音響特性の改善と、組立の容易化および工数の削減とを、両立させるという目的を、磁気回路と、磁気回路の磁気空隙に配されるボイスコイルと、ボイスコイルが連結する円環状のリング振動板と、二つの着磁された円環状磁石であってリング振動板を固定する振動板固定部材と、磁気回路と連結する樹脂で成形されたイコライザーと、を備えるリング型スピーカーであって、イコライザーが、リング振動板の内周に配置されて円環状の磁性体からなる内周プレートをインサート成形された内周部と、リング振動板の外周に配置されて円環状の磁性体からなる外周プレートをインサート成形された外周部と、内周部および外周部を一体に連結する複数の連結アーム部と、を備え、振動板固定部材の一方が、イコライザーの内周プレートとの間にリング振動板の内周端部を磁力で狭持する内周固定磁石であり、振動板固定部材の他方がイコライザーの外周プレートとの間にリング振動板の外周端部を磁力で狭持する外周固定磁石であるようにすることにより、実現した。
【0025】
以下、本発明の好ましい実施形態によるリング型スピーカーおよびその製造方法について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるリング型スピーカー1について説明する図である。図1(a)は、リング型スピーカー1を正面方向から見た斜視図であり、図1(b)は、リング型スピーカー1について説明する分解展開図である。本実施例のリング型スピーカー1は、高音域再生用のツィーターとして用いられる呼口径3cmのスピーカーである。リング型スピーカー1は、正面側に露出する樹脂で成形されたイコライザー2と、円環状のリング振動板3と、リング振動板3に連結するボイスコイル4と、円環状磁石であってリング振動板3を固定する振動板固定部材5および6と、磁気回路10と、を備えている。
【0027】
図2は、磁気回路10と、振動板固定部材5および6と、について説明する斜視図である。磁気回路10は、プレート11の背面側に隠れて表面に露出していないマグネット14を備える内磁型磁気回路であり、プレート11とヨーク12との間に円環状の磁気空隙13を有している。したがって、プレート11は、磁気空隙13が規定する円筒状の仮想空間の内側に位置している。また、プレート11は、振動板固定部材である内周固定磁石5の内周端が嵌合する位置決め凸状部11pを備える。位置決め凸状部11pは、プレート11の中心部から突出する円筒形状の凸部であればよい。その結果、磁気回路10の磁気空隙13には、直流磁界が形成されており、後述するように、リング型スピーカー1が組み立てられると、リング振動板3に連結するボイスコイル4が配置される。なお、プレート11、ヨーク12、および、マグネット14は、接着剤で連結固定されている。
【0028】
振動板固定部材5および6は、それぞれ二つの着磁された円環状磁石であって、磁気回路10のプレート11およびヨーク12にそれぞれ接着剤で連結固定されている。つまり、振動板固定部材の一方が内周固定磁石5であり、振動板固定部材の他方が外周固定磁石6である。後述するように、リング型スピーカー1が組み立てられると、内周固定磁石5および外周固定磁石6は、リング振動板3の内周端部および外周端部を、それぞれ磁力で固定する。内周固定磁石5および外周固定磁石6は、マグネット14とともに磁気空隙13に反発磁界を形成するように着磁されている。本実施例の場合には、マグネット14および内周固定磁石5が、磁気回路10のプレート11を挟んで同一の磁極が近接するように取り付けられている。また、外周固定磁石6は、磁気空隙13に近い側が反対の磁極となるように着磁されて取り付けられている。
【0029】
図3は、リング振動板3と、ボイスコイル4と、を連結する工程を説明する図である。リング振動板3は、平坦な形状を有する内周端部3aと、平坦な形状を有する外周端部3bと、内周端部3aおよび外周端部3bの間に規定されて振動可能に支持される振動部3cと、を有し、内周端部3aの中心には円孔3dが形成されている。また、ボイスコイル4は、円筒形状に形成されたボビン4aと、ボビン4aに巻回されたコイル4bと、を有する。本実施例の場合には、リング振動板3およびボイスコイル4は、貼り合わせ治具JaおよびJbを使って相対的な位置を固定されて、予め接着剤で連結固定される。具体的には、断面形状において連結した二つのロールで規定される振動部3cの中央付近に、ボビン4aの一方端が接着剤で連結固定される。リング振動板3は、例えば、アクリル、ウレタン等の樹脂コートを施した合成繊維の織布を基材とした振動板である。
【0030】
図4は、イコライザー2を説明する図であり、図4(a)は、背面側から見た斜視図であり、図4(b)は、その要部を説明する断面拡大図である。例えば、イコライザー2を形成する樹脂は、成形性に優れるABS樹脂であり、イコライザー2は、正面側に凸状の外観形状を有して砲弾状イコライザーを形成する内周部21と、環状イコライザーを形成する外周部22と、これらを一体に連結する連結アーム部23と、を備え、これらが一体に樹脂成形されており、その結果、放射孔20が形成されている。具体的には、連結アーム部23は、内周部21および外周部22を一体に連結する半径方向に延設された4本の板状の連結アームである。また、イコライザー2の外周部22には、リング型スピーカー1のネジ取付孔の他に、磁気回路10と連結する爪が突出する連結部24が延設されている。なお、リング型スピーカー1として組み立てられた場合には、ボイスコイル4のコイル4bに電流が印加されると、放射孔20から露出するリング振動板3が振動し、音波が放射される。イコライザー2は、上記特許文献2のリング型スピーカーが有する連結イコライザーと同様に、再生周波数特性等の音響特性を改善し、不要な振動および異音を抑制するように作用する。
【0031】
樹脂で成形されるイコライザー2は、その内周部21に円環状の磁性体からなる内周プレート25を、そして、その外周部22に円環状の磁性体からなる外周プレート26を、それぞれインサート成形されている。内周プレート25および外周プレート26は、例えば、磁気回路10を構成するプレート11等と同等の鉄を含む磁性材料であれば良い。後述するように、内周プレート25および外周プレート26は、振動板固定部材5および6とともにリング振動板3を磁力で固定する。なお、本実施例では、内周プレート25および外周プレート26は、イコライザー2の背面側に平面部が露出するようにインサート成形されているが、放射孔20に近接して配置されていれば、必ずしも露出していなくても良い。イコライザー2は、磁気回路10およびリング振動板3と接する重要寸法部分に、鉄等の磁性材料からなる内周プレート25および外周プレート26をインサート成形することで、製造ロット毎による成形条件のバラツキや経時変化等による寸法膨収縮が生じにくくなる。したがって、イコライザー2を含むリング型スピーカー1は、組み立てられた場合に安定した性能を得ることができる。
【0032】
図5は、本実施例のリング型スピーカー1を説明する断面図であり、対称な中心軸から左半分を省略して図示した拡大図である。リング型スピーカー1の製造方法は、上記の磁気回路10、ならびに、振動板固定部材5および6を予め連結固定する工程と、リング振動板3およびボイスコイル4を予め連結する工程と、内周プレート25および外周プレート26をインサート成形したイコライザー2を予め形成する工程と、をそれぞれ経て、これらの部品を組み立てる工程を含む。したがって、リング型スピーカー1のリング振動板3は、イコライザー2のインサート成形された内周プレート25および外周プレート26と、振動板固定部材である内周固定磁石5および外周固定磁石6との間に磁力で狭持されて固定される。
【0033】
つまり、本実施例のリング型スピーカー1では、磁気回路10に連結されている内周固定磁石5および外周固定磁石6は、予め着磁されて磁力を有しているので、イコライザー2のインサート成形された磁性体である内周プレート25および外周プレート26を磁力で吸引して、その結果、リング振動板3の固定部分である内周端部3aおよび外周端部3bをこれらの間に狭持して、隙間を有することなくリング振動板3を固定することができる。すなわち、リング振動板3の内周端部3aは、内周固定磁石5の上面部とイコライザー2の内周プレート25との間に狭持される。また、リング振動板3の外周端部3bは、外周固定磁石6の上面部とイコライザー2の外周プレート26との間に狭持される。したがって、リング振動板3の固定に際して、接着剤を使用する必要が無く、内周端部3aおよび外周端部3bに接着剤がはみ出して固化することもなく、接着剤の乾燥に要する工数をも削減することができる。
【0034】
樹脂成形されるイコライザー2は、内周部21および外周部22が4本の連結アーム部23で連結されているので、リング型スピーカー1の組立に際してイコライザー2を磁気回路10に連結すれば、リング振動板3を内周固定磁石5および外周固定磁石6の磁力で固定するとともに、ボイスコイル4を磁気回路10の磁気空隙13に配置することができる。したがって、リング型スピーカー1の部品点数および工数を、従来よりも削減することができる。また、振動板固定部材5および6を設けることで、イコライザー2および磁気回路10が強く連結するので、不要な振動も抑制され振動に起因する異音が発生する、あるいは、音質が劣化するという問題を低減でき、音響特性の改善を図ることができる。
【0035】
なお、磁気回路10のプレート11には、振動板固定部材である内周固定磁石5の内周端が嵌合する位置決め凸状部11pが形成されている。位置決め凸状部11pは、リング振動板3の内周端3aに形成されている円孔3d、ならびに、イコライザー2の内周部21にインサート成形された内周プレート25とも嵌合する。すなわち、リング振動板3にはボイスコイル4が予め連結固定されているので、リング振動板3の内周端3aに形成されている円孔3dを位置決め凸状部11pに嵌合させると、ボイスコイル4が磁気回路10の磁気空隙13に配置される。また、イコライザー2の内周プレート25および連結部24により磁気回路10を連結取付する位置が規制される。したがって、位置決め凸状部11pは、リング型スピーカー1の製造工程において、リング振動板3およびイコライザー2の固定位置を規制し、組立治具を不要にして、組立の容易化と工数の削減とを実現することができる。
【0036】
図6は、比較例としての従来のリング型スピーカー101を説明する断面図であり、図5と同様に対称な中心軸から左半分を省略して図示した拡大図である。比較例のリング型スピーカー101は、本実施例のリング型スピーカー1に対してリング振動板3の固定方法を従来の接着剤による固定方法に変更した比較例であって、内周プレート25および外周プレート26をインサート成形されたイコライザー2と、振動板固定部材である内周固定磁石5および外周固定磁石6と、を備えていない代わりに、それぞれ樹脂成形されたイコライザー102と、位置決め凸状部を有しないプレート111を含む磁気回路100と、を備えている。すなわち、リング振動板3の内周端部3aは、イコライザー102の内周部121の背面側の平面に接着剤で接着固定され、リング振動板3の外周端部3bは、イコライザー102の外周部122の背面側の平面に接着剤で接着固定されており、磁気回路100とは直接に接しておらず、隙間を有している。
【0037】
図7は、リング型スピーカーの軸上1m音圧周波数特性を表すグラフである。図7(a)は本実施例のリング型スピーカー1の場合であり、図7(b)は比較例のリング型スピーカー101の場合である。本実施例のリング型スピーカー1の場合は、10000Hz以上の再生帯域において、約60000Hz以上での高域限界周波数fhのピークに至るまでの間にはピーク・ディップが生じず、平坦な周波数特性を示している。一方、比較例のリング型スピーカー101の場合は、約15000Hz〜約80000Hzの帯域で顕著なピーク・ディップが生じており、リング振動板3が分割振動していることがわかる。すなわち、本実施例のリング型スピーカー1のように、リング振動板3の内周端部3aおよび外周端部3bを、イコライザー2と内周固定磁石5および外周固定磁石6の間に作用する磁力で隙間無く狭持して強固に固定することにより、リング振動板3の高域での不要な分割振動を抑制して、比較的にフラットな音圧周波数特性を得ることができる。これは、リング振動板3の固定されるべき部分と、振動可能な部分である振動部3cとが明確に区別され、その結果、分割振動が発生する高域限界周波数fhを上昇させているからである。このように、本実施例のリング型スピーカー1では、再生周波数帯域を広くすることができ、音響特性の改善を図ることができる。
【0038】
また、本実施例のリング型スピーカー1の磁気回路10の磁気空隙13における直流磁界は、比較例のリング型スピーカー101の磁気回路100の磁気空隙113における直流磁界よりも磁界の強さが強くなる。すなわち、本実施例のリング型スピーカー1の場合には、内周固定磁石5および外周固定磁石6が、マグネット14とともに磁気空隙13に反発磁界を形成するように作用するので、磁気空隙13の磁束密度分布は、比較例の場合よりも高い値を示す。比較例のリング型スピーカー101の場合には、磁気空隙113での磁束密度の最大値が約1.44[T]であるのに対して、本実施例のリング型スピーカー1の場合には、磁気空隙13での磁束密度の最大値が約1.50[T]となり、約4%増加する。したがって、本実施例のリング型スピーカー1では、能率が向上して再生音圧レベルを高くする改善を図ることができる。
【0039】
なお、本発明のリング型スピーカー1では、イコライザー2を形成する樹脂がABS樹脂である場合を示したが、内周プレート25および外周プレート26をインサート成形することができるものであれば、他の熱可塑性合成樹脂、例えば、PS、PP、PET、PPE、PA、PC等の樹脂であっても良い。また、イコライザー2の連結アーム部23が4本である場合を説明したが、本発明の連結アーム部23は、イコライザーの内周部および外周部を一体に連結する半径方向に延設されたものであればよい。
【実施例2】
【0040】
図8は、本発明の他の好ましい実施形態である(図示しない)リング型スピーカー1Bに用いる磁気回路ならびに振動板固定部材を説明する図である。すなわち、本実施例の場合には、振動板固定部材として先の実施例の内周固定磁石5および外周固定磁石6が、さらにその表面の一部を覆う非磁性体リング7および3をそれぞれ備える。図8(a)の場合には、内周固定磁石5および外周固定磁石6の一部を覆う略L字断面形状の非磁性体リング7Aおよび8Aが、さらに設けられている。また、図8(b)の場合には、内周固定磁石5および外周固定磁石6の一部を覆う略U字断面形状の非磁性体リング7Bおよび8Bが、さらに設けられている。なお、本実施例のリング型スピーカー1Bは、先の実施例で示したイコライザー2、リング振動板3およびボイスコイル4を備える点で共通するので、図示並びに説明を省略する。
【0041】
振動板固定部材である内周固定磁石5および外周固定磁石6は、内周プレート25および外周プレート26をインサート成形したイコライザー2との間に磁力を作用させて、リング振動板3の内周端部3aおよび外周端部3bを隙間無く狭持して強固に固定する。図8(a)および図8(b)に示すように、内周固定磁石5および外周固定磁石6のイコライザー2と接する上面側は、非磁性体リング7および8で覆われておらず、先の実施例の場合と同様に露出しているからである。したがって、本実施例のリング型スピーカー1Bにおいても、リング振動板3の固定されるべき部分と、振動可能な部分である振動部3cとが明確に区別され、その結果、音響特性の改善を図ることができる。
【0042】
図8(a)もしくは図8(b)に図示した磁気回路10ならびに内周固定磁石5および外周固定磁石6は、ボイスコイル4に供給される音声信号電流に起因する交流磁束が交叉する非磁性体リングを備えるので、非磁性体リングの表面に渦電流を生じてヒステリシス特性を有する強磁性体としての磁石である内周固定磁石5および外周固定磁石6を通過する交流磁束が減少する。また、これらの非磁性体リングをさらに備えることで、磁気回路10を構成するプレート11、ポール12、マグネット14等のヒステリシス特性を有する磁性体材料を通過する交流磁束も減少する。したがって、本実施例のリング型スピーカーは、電流歪が低減されて歪特性に優れ、さらに音響特性が改善されたリング型スピーカーを実現できる。
【0043】
なお、内周固定磁石5および外周固定磁石6の表面の一部を覆う非磁性体リング7および8の形状は、上記の7A、7B、8A、および、8Bの場合に限られない。非磁性体リング7および8は、イコライザー2に接する上面側を覆うものであってもよい。本実施例では、非磁性体リングは銅を含む合金からなる銅リングであるが、他の非磁性体材料であっても良く、アルミリングであっても良い。
【実施例3】
【0044】
図9は、本発明の他の好ましい実施形態であるリング型スピーカー1Cに用いるイコライザー9を説明する図であり、樹脂で成形されたイコライザー9を背面側から見た斜視図である。本実施例のイコライザー9は、先の実施例で説明したイコライザー2と同様に、正面側に凸状の外観形状を有して砲弾状イコライザーを形成する内周部91と、環状イコライザーを形成する外周部92と、これらを一体に連結する連結アーム部93と、を備え、これらが一体にABS樹脂で樹脂成形されており、その結果、放射孔90が形成され、外周部92から連結部94が延設されている。イコライザー9は、先の実施例のイコライザー2と同様に、再生周波数特性等の音響特性を改善し、不要な振動および異音を抑制するように作用する。
【0045】
樹脂で成形されるイコライザー9は、先の実施例で説明したイコライザー2と同様に、その内周部91に円環状の磁性体からなる内周プレート95を、そして、その外周部92に円環状の磁性体からなる外周プレート96を、それぞれインサート成形されている。内周プレート95および外周プレート96は、例えば、鉄を含む磁性材料であれば良い。したがって、本実施例のリング型スピーカー1Cでは、内周プレート95および外周プレート96は、振動板固定部材5および6とともにリング振動板3を磁力で固定する。
【0046】
本実施例のイコライザー9は、内周部91から背面方向に突出した円筒状の軸である位置決め凸状部9pを備えている。位置決め凸状部9pは、円筒状の部材を内周部91の背面側に固着してもよいが、好ましくは、砲弾状のイコライザーを形成する内周部91から、内周プレート95を含んで一体に成形するのがよい。後述するように、位置決め凸状部9pは、リング振動板3の内周端部3aの円孔3dと、振動板固定部材である内周固定磁石5の内周端と嵌合する。したがって、位置決め凸状部9pが、リング振動板3および内周固定磁石5の固定位置を規制し、その結果、リング型スピーカー1Cの製造工程において組立治具が不要になる。先の実施例では、貼り合わせ治具JaおよびJbを使ってリング振動板3およびボイスコイル4を、予め接着剤で連結固定していたが、本実施例のリング型スピーカー1Cでは、イコライザー9の位置決め凸状部9pを利用して、先の実施例より少ない工程で組み立てることができる。
【0047】
図10は、リング振動板3と、ボイスコイル4と、を連結し、そして、リング型スピーカー1Cを組み立てる製造工程を説明する図である。図10で示すように、位置決め凸状部9pを備えるイコライザー9の背面側から、リング振動板3をその内周端部3aの円孔3dが位置決め凸状部9pに嵌合するように挿入する。リング振動板3の内周端部3aがイコライザー9の内周プレート95に乗せられて、リング振動板3の外周端部3bがイコライザー9の外周プレート96に乗せられて、その結果、リング振動板3の振動部3cが放射孔90から露出するようになる。次に、内周固定磁石5の内周端をイコライザー9の位置決め凸状部9pに嵌合させて、リング振動板3の内周端部3aの上に予め着磁した内周固定磁石5を載置する。イコライザー9の内周プレート95と内周固定磁石5の間に磁力が作用するので、リング振動板3の内周端部3aは、イコライザー9に対して隙間無く強固に固定される。同様に、外周固定磁石6の外周端をイコライザー9の連結部94に嵌合させて、リング振動板3の外周端部3bの上に予め着磁した外周固定磁石6を載置する。イコライザー9の外周プレート96と外周固定磁石6の間に磁力が作用するので、リング振動板3の外周端部3bも、イコライザー9に対して隙間無く強固に固定される。なお、内周固定磁石5および外周固定磁石6は、後述する磁気回路10Cと組み合わせた場合に、磁気空隙13Cに反発磁界を形成するように着磁方向を確認した上で載置する。
【0048】
次に、リング振動板3の振動部3cに接着剤を所定量塗布し、ボイスコイル4を保持する保持治具Jcを使ってボイスコイル4を接着剤で連結固定する。イコライザー9の位置決め凸状部9pに嵌合する内径部を有する保持治具Jcにボイスコイル4を挿入し、この保持治具Jcを位置決め凸状部9pに嵌合させて、接着剤が固化した段階で保持治具Jcを取り外せば、リング振動板3およびボイスコイル4が連結して、さらに、振動板固定部材である内周固定磁石5および外周固定磁石6によりイコライザー9に対して固定された振動系が構成される。したがって、その後にイコライザー9の位置決め凸状部9pに嵌合する嵌合孔を有する磁気回路10Cを背面側から載置して、接着剤等でイコライザー9と固定すれば、本実施例の本実施例のリング型スピーカー1Cを組み立てることができる。
【0049】
図11は、本実施例のリング型スピーカー1Cを説明する断面図であり、対称な中心軸から左半分を省略して図示した拡大図である。リング型スピーカー1Cの製造方法は上記の通りであり、イコライザー9の位置決め凸状部9pと、磁気回路10Cの嵌合孔とが嵌合し、また、イコライザー9の連結部94と、磁気回路10Cの外径部とが嵌合して、リング型スピーカー1Cを構成している。磁気回路10Cは、プレート11Cと、ヨーク12Cと、マグネット14Cと、から構成され、これらはそれぞれ中心に嵌合孔を有しているからである。また、本実施例のリング型スピーカー1Cのリング振動板3は、先の実施例の場合と同様に、イコライザー9のインサート成形された内周プレート95および外周プレート96と、振動板固定部材である内周固定磁石5および外周固定磁石6との間に磁力で狭持されて固定されている。
【0050】
本実施例のリング型スピーカー1Cでは、リング振動板3の固定に際して、接着剤を使用する必要が無く、内周端部3aおよび外周端部3bに接着剤がはみ出して固化することもなく、音響特性の改善を図ることができる。また、組立に必要な治具の使用をさらに減らして組立を容易にし、組み立て工数ならびに製造コストを削減することができる。すなわち、図3に説明した先の実施例でのリング振動板3とボイスコイル4との接着方法では、リング振動板3に接着剤を塗布する際、リング振動板3がずれたり回転したりする可能性があるが、本実施例の場合では、リング振動板3の内周端部3aおよび外周端部3bを、内周プレート95および外周プレート96と、内周固定磁石5および外周固定磁石6とで挟み込んでしまうので、リング振動板3のズレおよび回転を抑制して安定して接着することができる。また、上記の保持治具Jcのみで組立てられるので、治具コストを低減する点を含めて製造効率を向上させられる利点がある。
【実施例4】
【0051】
図12は、本発明の他の好ましい実施形態であるリング型スピーカー1Dを説明する図であり、対称な中心軸から左半分を省略して図示した拡大図である。先の実施例のリング型スピーカー1を構成する磁気回路10が内磁型磁気回路であるのに対して、本実施例のリング型スピーカー1Dは、これを構成する磁気回路10Dが外磁型磁気回路である点で相違する。したがって、共通するイコライザー2と、リング振動板3と、ボイスコイル4については、説明を省略する。
【0052】
本実施例のリング型スピーカー1Dに用いられる外磁型の磁気回路10Dは、プレート11Dと、ポール12Dと、マグネット14Dと、を備え、プレート11Dおよびポール12Dが円周状の磁気空隙13Dを規定している。磁気回路10Dは外磁型磁気回路であるので、磁気空隙13Dが規定する円筒状の空間の外側にプレート11Dおよびマグネット14Dが位置し、磁気空隙13Dが規定する円筒状の空間の内側にポール12Dが位置している。そして、ポール12Dは、リング振動板3の内周端部3aが有する円孔3d、ならびに、振動板固定部材である内周固定磁石5の内周端、ならびに、イコライザー2の内周プレート25の内周端、が嵌合する位置決め凸状部12pを備える。したがって、リング型スピーカー1Dの製造工程において、先の実施例の場合と同様に、位置決め凸状部12pが、リング振動板3およびイコライザー2の固定位置を規制し、組立治具を不要にして、組立の容易化と工数の削減とを実現することができる。
【0053】
また、振動板固定部材である内周固定磁石5および外周固定磁石6は、本実施例のリング型スピーカー1Dの磁気回路10Dの磁気空隙13Dに反発磁界を形成する。外周固定磁石6は、外磁型の磁気回路10Dのマグネット14Dと、プレート11Dを挟んで同一の磁極が近接するように取り付けられており、内周固定磁石5も、磁気空隙13Dに近い側が同一の磁極になるように着磁されて取り付けられている。したがって、磁気空隙13Dにおける直流磁界は、外磁型の磁気回路10Dのマグネット14Dのみである場合に比べて、磁界の強さが強くなる。本実施例のリング型スピーカー1では、能率が向上して再生音圧レベルを高くする改善を図ることができる。
【0054】
なお、上記の本発明のリング型スピーカーでは、樹脂で成形されるイコライザーにインサート成形される内周プレートおよび外周プレートは、鉄等の磁性材料であるとしたが、これらをマグネット等の強磁性体に代えてもよい。このように内周プレートおよび外周プレートが磁力を有する磁石である場合には、リング振動板3の内周端部3aを狭持するイコライザーの内周プレートの磁石と内周固定磁石の磁極性がそれぞれ異なるようにして、磁力で引き合うようにすればよい。また、リング振動板3の外周端部3bを狭持するイコライザーの外周プレートの磁石と外周固定磁石の磁極性がそれぞれ異なるようにして、磁力で引き合うようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のリング型スピーカーは、高音域再生用のツィーターに限られず、フルレンジスピーカーや、中低音域再生用の他のスピーカーにも適用が可能である。リング振動板の内周側には砲弾状のイコライザーが配置され、リング振動板の外周側には環状のイコライザーが配置され、これらを連結する連結アームを供えるスピーカーに適する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるリング型スピーカー1について説明する図である。(実施例1)
【図2】本発明の好ましい実施形態によるリング型スピーカー1の磁気回路10と、振動板固定部材5および6と、について説明する斜視図である。(実施例1)
【図3】本発明の好ましい実施形態によるリング型スピーカーのリング振動板3と、ボイスコイル4と、を連結する工程を説明する図である。(実施例1、2)
【図4】本発明の好ましい実施形態によるリング型スピーカーのイコライザー2を説明する図である。(実施例1、2、4)
【図5】実施例のリング型スピーカー1を説明する断面図である。(実施例1)
【図6】従来のリング型スピーカー101を説明する断面図である。(比較例)
【図7】本発明および従来のリング型スピーカーの軸上1m音圧周波数特性を表すグラフである。(実施例1、比較例)
【図8】本発明の他の好ましい実施形態であるリング型スピーカー1Bに用いる磁気回路ならびに振動板固定部材を説明する図である。(実施例2)
【図9】本発明の他の好ましい実施形態であるリング型スピーカー1Cに用いるイコライザー9を説明する図である。(実施例3)
【図10】本発明の他の好ましい実施形態であるリング型スピーカー1Cを組み立てる製造工程を説明する図である。(実施例3)
【図11】本発明の他の好ましい実施形態であるリング型スピーカー1Cを説明する断面図である。(実施例3)
【図12】本発明の他の好ましい実施形態であるリング型スピーカー1Dを説明する断面図である。(実施例4)
【符号の説明】
【0057】
1 リング型スピーカー
2、9 イコライザー
3 リング振動板
4 ボイスコイル
5 内周固定磁石
6 外周固定磁石
7、8 非磁性体リング
10、10C、10D 磁気回路
11 プレート
12 ヨーク、ポール
13 磁気空隙
14 マグネット
20 放射孔
21 内周部
22 外周部
23 連結アーム部
24 連結部
25 内周プレート
26 外周プレート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気回路と、該磁気回路の磁気空隙に配されるボイスコイルと、該ボイスコイルが連結する円環状のリング振動板と、二つの着磁された円環状磁石であって該リング振動板を固定する振動板固定部材と、該磁気回路と連結する樹脂で成形されたイコライザーと、を備えるリング型スピーカーであって、
該イコライザーが、該リング振動板の内周に配置されて円環状の磁性体からなる内周プレートをインサート成形された内周部と、該リング振動板の外周に配置されて円環状の磁性体からなる外周プレートをインサート成形された外周部と、該内周部および該外周部を一体に連結する複数の連結アーム部と、を備え、
該振動板固定部材の一方が、該イコライザーの該内周プレートとの間に該リング振動板の内周端部を磁力で狭持する内周固定磁石であり、該振動板固定部材の他方が該イコライザーの該外周プレートとの間に該リング振動板の外周端部を磁力で狭持する外周固定磁石である、
リング型スピーカー。
【請求項2】
前記磁気回路が、前記磁気空隙が規定する空間の内側に、前記リング振動板の内周端、ならびに、前記振動板固定部材の前記内周固定磁石の内周端、ならびに、前記イコライザーの前記内周プレートの内周端、が嵌合する位置決め凸状部を備える、
請求項1に記載のリング型スピーカー。
【請求項3】
前記イコライザーが、その前記内周プレートに嵌合して突出する位置決め凸状部を備え、該位置決め凸状部が、前記リング振動板の内周端、ならびに、前記振動板固定部材の前記内周固定磁石の内周端、に嵌合する、
請求項1に記載のリング型スピーカー。
【請求項4】
前記磁気回路が、該ボイスコイルが規定する円筒空間の内側に位置する主マグネットを含む内磁型磁気回路であり、該主マグネットの上面側に配置されるプレートと、該プレートとの間に前記磁気空隙を規定するヨークと、を備え、
前記振動板固定部材の前記内周固定磁石が、該プレートの上面側に配置され、該主マグネットとともに該磁気空隙に反発磁界を形成する、
請求項1から3のいずれかに記載のリング型スピーカー。
【請求項5】
前記磁気回路が、該ボイスコイルが規定する円筒空間の外側に位置する主マグネットを含む外磁型磁気回路であり、該主マグネットの上面側に配置されるプレートと、該プレートとの間に前記磁気空隙を規定するポールと、を備え、
前記振動板固定部材の前記外周固定磁石が、該プレートの上面側に配置され、該主マグネットとともに該磁気空隙に反発磁界を形成する、
請求項1から3のいずれかに記載のリング型スピーカー。
【請求項6】
前記振動板固定部材の前記内周固定磁石および前記外周固定磁石が、前記円環状磁石の一部を覆う非磁性体リングをさらに備える、
請求項1から5のいずれかに記載のリング型スピーカー。
【請求項7】
磁気回路と、該磁気回路の磁気空隙に配されるボイスコイルと、該ボイスコイルが連結する円環状のリング振動板と、二つの着磁された円環状磁石であって該リング振動板を固定する振動板固定部材と、該磁気回路と連結する樹脂で成形されたイコライザーと、を備えるリング型スピーカーの製造方法であって、
該リング振動板の内周に配置される内周部と、該リング振動板の外周に配置される外周部と、該内周部および該外周部を一体に連結する複数の連結アーム部と、を備えた該イコライザーを形成し、その該内周部および該外周部にそれぞれ円環状の磁性体からなる内周プレートならびに外周プレートをインサート成形する工程と、
該振動板固定部材の一方である内周固定磁石と該イコライザーの該内周プレートとの間に、該リング振動板の内周端部を磁力で狭持する工程と、該振動板固定部材の他方である外周固定磁石と該イコライザーの該外周プレートとの間に、該リング振動板の外周端部を磁力で狭持する工程と、を含む、
リング型スピーカーの製造方法。

【図5】
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【図6】
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【図11】
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【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−171475(P2009−171475A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9972(P2008−9972)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】