説明

リング精紡機用駆動ユニット

リング精紡機の駆動スタンド1の機能検査を事前に製造工場で実施可能とするとともに、買い手での組み立てを軽減するために、リング精紡機の主な駆動ユニット7,13,19、制御装置22及び操作ユニット24,25をフレーム2内で組み立てておくものと規定する。このフレーム内おいて、構成部品の配線を行って、その機能を検査しておくこともできる。買い手では、この構成でフレーム2を配備し、調整することができ、そのため、現場での組み立てを大幅に簡単化、加速するとともに、新ためて機能を検査する必要がなくなる。フレーム2にリング精紡機の第一の中間スタンド28をフランジにより連結し、その中間スタンドに、リング精紡機の縦方向部材28を接続することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の目的とすることは、ドラフト装置、リングレール、並びに埃、浮遊物及び切れた粗紡や糸を除去するための吸引装置を駆動するためのユニットを備えたリング精紡機用駆動スタンドである。
【背景技術】
【0002】
リング精紡機の基本的な動作機関は、ドラフト装置、スピンドル、リングレール、並びに埃、浮遊物及び切れた粗紡や糸を除去するための吸引装置である。リングレールを動かすための巻取ユニット、負圧を生成して、吸気を清浄化するための吸引装置、並びにスピンドルとドラフト装置の駆動部は、通常リング精紡機の終端スタンドと駆動スタンドに配置されている。それらは、一般的に電気モーターを備えている。スピンドルの駆動部をリング精紡機に沿って分散された複数の駆動モーターに分割したリング精紡機が知られている。即ち、始端又は終端スタンドは、モーター又はその他のスピンドル駆動用伝動装置を備えていない。
【0003】
リング精紡機の始端スタンド及び終端スタンドに動作機関を分散して配分することは、その構造を複雑化させ、組み立てに時間がかかるとともに、機械全体に沿った大規模な配線を必要とする。そのような配線では、場所と位置の特定が難しい誤りが起きる可能性が有る。実際には、製造工場において、相異なる動作機関の機能的に正しい協働動作が間違い無く動作するかを検査することも不可能である。
【0004】
特許文献1により、終端スタンドに、詳しくは、終端スタンドの機械中心と逆側の壁面の下方領域に有るフィルターボックスの下に主モーターを配置したリング精紡機が知られている。そうすることによって、終端スタンドのコンパクトな構造形式が可能となる。しかし、そうすることによって、個々の動作機関の機能検査は、軽減されていない。
【特許文献1】ドイツ特許公開第3244089号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のことから、この発明の課題は、従来から周知のリング精紡機の前記の欠点及び出来る限り別の欠点も防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1に挙げた特徴によって解決される。
【0007】
リング精紡機の駆動部及び制御部の主要なユニットを移動可能な駆動スタンドのフレーム内に一体化することをここに提案する解決策によって、それらのユニットを製造工場で組み立て、調整し、機能的に正しく動作することを検査しておくことができる。買い手では、組み立てを完了した駆動スタンドの配備が大幅に加速、簡単化されるとともに、もはや殆ど誤動作が起こり得ないこととなる。
【0008】
基本的に、買い手に必要なことは、事前に組み立てられた機械を所要のエネルギー供給部(電力供給部等)と接続するだけである。
【0009】
この発明の特に有利な改善構成は、請求項3に記載されている。
【0010】
請求項4にもとづき、当該のユニットを駆動スタンドの段に配備するのが、この発明の目的に適っている。その場合、ストローク運動のリングレールへの伝達が、下段から周知の柔軟なテンション部材を介して容易に実現することができるので、コップ、即ち、リングレール用の巻取機ユニットを駆動スタンドの下段に配置するものと規定するのが有利である。駆動スタンドの中段には、通常その高さに吸引装置のユニットのエアダクトが有るので、吸引装置のユニットを配備するものとする。その段には、そこが操作に関して人間工学的に有利な高さに有るので、ダイアローグユニット又は操作ユニットを配置することもできる。しかし、場合によっては、それを上段に配置することもできる。さもなければ、上段は、ドラフトロールの駆動ユニット及び制御ユニットのために確保して置くべきである。
【0011】
段面の構成では、人間工学的な要件を考慮すべきであり、人間工学的に理想的な条件を実現することを追求すべきである。従って、当然のことながら、操作ユニットが、リング精紡機のそれ以外の構成のために、操作員の目の高さに来るのであれば、中段ではなく、上段に操作ユニットを収納することができる。
【0012】
請求項6にもとづき、スピンドルレール、ドラフト装置支持体、クリールなどのリング精紡機の縦方向部材を接続することができる、リング精紡機の第一の中間スタンドを駆動スタントに接続する、例えば、フランジにより連結するものと規定するのが、この発明の目的に適っている。
【0013】
この発明の別の有利な細部及び実施形態も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図面には、この発明の実施例を模式的に図示している。
【0015】
リング精紡機の駆動スタンド1は、有利には、鋼鉄製の四角い輪郭3から成るフレーム2で構成されており、ここでは取り去って図示されていない、一部を固定された壁面とし、一部を開くドアとする形のカバーパネルによって閉じられている。これらのドアは、駆動スタンド1内に取り付けられた動作機関にアクセスする必要の有る領域に配置されている。
【0016】
フレーム2は、上下に配置された三つの段4,5,6を有し、それらの段は、底板を差し込むことによって、互いに分離することができる。ここでは、下段4と上段6は、中段5よりも低く実現されているが、高さの配分は、所要スペースに応じて違った形で選定することも可能である。
【0017】
下段4には、巻取ユニット7が配置されており、それによって、コップの構成を機能的に正しく制御する形でリング精紡機のリングレールを動かすことが可能である。そのために、巻取ユニットは、例えば、位置を固定した回転可能なシャフト8を有し、そのシャフトは、駆動モーター9によって、ウオーム歯車伝動機構10を介して回転させることが可能である。モーター9は、制御装置によって、回転数を変更することが可能であるとともに、回転方向を切り換えることが可能である。シャフト8には、巻取ドラム11が固定されており、そのドラムには、柔軟なテンション部材12が継手により接続されている。リターンローラーを介して案内された、これらのテンション部材には、リングレールが吊り下げられている。そのようなドラムには、大抵柔軟なテンション部材を介して、リング精紡機のバルーンコントロールリング及び動き回るヤーンガイドも吊り下げられている。
【0018】
中段5は、吸引ユニット13、即ち、吸引ユニットのフィルターボックス14と換気扇15のために配備されている。フィルターボックスは、通常容積が大きくなるので、中段は高く実現されている。しかし、換気扇15の駆動モーター16は、スペース上の理由から、ここでは上段6に配置されており、ベルト駆動式中間軸17を介して換気扇を駆動している。しかし、多くの場合、同じく中段5に駆動モーターを収納することができる。フィルターボックス内には、排気内の塵、浮遊物及び糸屑を清浄化する、少なくとも一つの篩18が配置されている。
【0019】
この篩18は、頻繁に清浄化する必要が有り、そのため、容易にアクセスすることが可能でなければならない、リング精紡機の各動作機関に取り付けられている。従って、例えば、詳しく図示されていない手法で、フレーム2に開くドアを組み込んだ各動作機関に取り付けられている。
【0020】
フレーム2の上段6には、換気扇15の駆動モーター16の他に、ドラフト装置伝動ユニット19とその駆動モーター20が配置されている。この伝動ユニットは、リング精紡機の両側に、ドラフトロール21の段階的な駆動のための歯車式変速機と換え歯車を有する。伝動機構が、複数の駆動モーターを備えることができ、それらを用いて、ドラフトロール21間の回転数の比とそのためドラフト比を変更することが可能であることは明らかである。
【0021】
更に、上段6は、制御ユニット22を収容しており、それを用いて、リング精紡機の相異なる動作機関の協働動作を互いに機能的に正しく調整することができる。
【0022】
フレーム2の断面を図示した壁面部分23の中の一つには、中段5又は上段6の高さに、表示パネル24とキーボードパネル25が配置されており、それにより、操作員が、機械の制御部、特に、制御装置22との間でダイアローグを行って、リング精紡機の動作に関するコマンドを投入することができる。しかし、操作に有利と考えられる場合には、段の高さに応じて、操作ユニット24/25を上段6の高さに配置することもできる。
【0023】
換気扇15によって上方に紡績室内に運ばれて来る清浄化された排気の出口は、符号26で表示されている。側方又は下段4を通して、紡績室の底部内を延びる収集ダクトに排気の排出を行うことができることも明らかである。吸引ユニットは、有利には、その回転によってのみ排気を上方又は下方に排出させることができるように構成される。
【0024】
リング精紡機の動作機関をフレーム2内に集約することが、これらの動作機関の例示した実施構成に拘束されるものではないことも明らかである。それらは、別の実施構成とすることもできる。
【0025】
駆動スタンド1のフレーム2には、リング精紡機の第一の中間スタンド28が、スペーサー27により取り付けられており、その中間スタンドには、リング精紡機のスピンドルレール、ドラフト装置支持体、クリールなどの縦方向部材を接続することができる。
【0026】
駆動スタンド1内にリング精紡機の全ての主な動作機関の駆動部を収容することにより、機械の両側のドラフトロール21の駆動部19,20、リングレール用の巻取ユニット7、吸引装置13のフィルターボックス14及び換気扇15が既に組み立てられた状態に有り、僅かに駆動スタンドだけを配備、調整すればよいので、買い手でのリング精紡機の配備が著しく簡単となる。リング精紡機の制御装置22と表示パネル24及びキーボードパネル25を備えた、このような集合体の完全な配線も、既に実現されており、製造工場において、正しく機能することの検査を実施しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】リング精紡機の駆動スタンドの側面図
【図2】図1のリング精紡機の上段の平面図
【符号の説明】
【0028】
1 駆動スタンド
2 フレーム
3 四角い輪郭
4 下段
5 中段
6 上段
7 巻取ユニット
8 シャフト
9 巻取ユニットの駆動モーター
10 ウオーム歯車伝動機構
11 巻取ドラム
12 柔軟なテンション部材
13 吸引装置
14 フィルターボックス
15 換気扇
16 換気扇の駆動モーター
17 ベルト駆動式中間軸
18 篩
19 ドラフト装置伝動ユニット
20 ドラフト装置伝動ユニットの駆動モーター
21 ドラフトロール
22 制御装置
23 壁面部分
24 表示パネル
25 キーボードパネル
26 排気の出口
27 スペーサー
28 中間スタンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラフト装置及びリングレールの駆動ユニットと、塵、浮遊物及び切れた粗紡や糸を除去するための吸引装置とを備えたリング精紡機用駆動スタンドにおいて、
これらのユニット(7,13,19)は、それらの制御ユニット(22)及び操作ユニット(24/25)と共に纏めて、製造工場において駆動スタンド(1)に搭載して、配線するとともに、機能の検査を済ませておくことが可能であることを特徴とする駆動スタンド。
【請求項2】
当該のユニット(7,13,19)が、それらの制御ユニット(22)及び操作ユニット(24/25)と共に纏めて駆動スタンド(1)内に前もって組み立てておいた形で買い手に納入することが可能であることを特徴とする請求項1に記載の駆動スタンド。
【請求項3】
当該の駆動スタンドは、ユニット(7,13,19,22)を載せることができる段(4,5,6)を形成する、有利には、鋼鉄から成る、四角い輪郭(3)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動スタンド。
【請求項4】
駆動スタンド(1)の上下の段に、ユニット(7,13,19,22)を配置することができることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の駆動スタンド。
【請求項5】
リングレールの駆動ユニット(7)を駆動スタンド(1)の下段(4)に配置し、吸引装置のユニット(13)と操作ユニット(24/25)を中段(5)に配置し、ドラフト装置の駆動ユニット(19)と制御ユニット(22)を上段(6)に配置することができることを特徴とする請求項4に記載の駆動スタンド。
【請求項6】
リング精紡機の第一の中間スタンド(28)を駆動スタンド(1)に接続することができることを特徴とする請求項1に記載の駆動スタンド。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一つに記載の駆動スタンドの詳細。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−520843(P2008−520843A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541765(P2007−541765)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012193
【国際公開番号】WO2006/053702
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(504011069)ザウラー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディトゲゼルシャフト (17)
【Fターム(参考)】