説明

リンホトキシン経路インヒビターによる免疫学的腎障害の処置

本開示は、免疫グロブリンの沈着を伴う腎機能異常を含むがこれに限定されない、免疫障害の処置に関する。本開示はさらに、リンホトキシン経路に関する。リンホトキシン経路の阻害因子を含む組成物が記載される。本発明は、LT経路の阻害因子を含む組成物の有効量を哺乳動物に投与し、それによって哺乳動物を処置する工程を含む、腎臓の免疫障害を有している哺乳動物を処置する方法もまた提供する。その障害は、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、関節リウマチ、インシュリン依存性糖尿病、慢性肝炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、およびIgA腎症からなる群より選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は2002年10月31日に提出された米国仮特許出願番号60/422588に関する。その開示全体が、引用により本明細書中に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明の技術分野は、免疫グロブリンの沈着を伴う腎臓の免疫障害を含むがこれに限定されない免疫障害の処置に関する。この分野はさらに、リンホトキシン経路の阻害に関する。
【背景技術】
【0003】
自己免疫疾患は自己抗原に対する異常な免疫応答によって生じる。親和性が高く、体細胞において高度に変異した(hypermutated)自己抗体の作成が、自己免疫症状の顕著な特徴の1つである。ほとんどの自己免疫障害に、腎臓での自己反応性免疫グロブリンの沈着を伴う腎臓の兆候が含まれる。これらの障害のいくつかは最終的には腎不全に至る。免疫グロブリンの沈着を伴う糸球体腎炎は、慢性肝炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)、およびベルジェ病としても知られているIgA腎症において特に顕著である。これらの疾患の共通の構成は、糸球体の損傷を伴う、肉眼で見えるかまたは顕微鏡でしか見えないほどの血尿およびメサンギウムIgA沈着物の存在である。IgA免疫複合体の沈着は、腎不全の高い発生率を伴うヒトの糸球体腎炎の最も一般的な形態を引き起こす(Berger(1969)Transplant.Proc.1:939)。SLEには、米国だけにおいても200万人を超えるヒトが罹患している。IgA腎症は世界中で見られるが、日本、オーストラリア、東南アジア、および南ヨーロッパで多く見られる。米国では、罹患率は全ての腎生検のおよそ4%であるが、日本では罹患率は生検の45%にものぼる。これらの疾患の病原因子についてはほとんど理解されていない。これらの疾患については、現在は有効な処置がない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この問題に対する1つのアプローチは、種々の疾患を駆動する機構を使用する種々の動物モデルの経路の阻害因子を試験することである。これらの疾患を理解し、処置することにおける進展は、疾患状態のあらゆる局面と類似した症状を呈する動物モデルが利用できないことにより制約されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、腎臓での免疫グロブリン(Ig)の沈着を伴う病状を含む免疫障害を処置するための方法を提供する。本発明は、可溶性形態のLT−β受容体(LTBR)でのリンホトキシン(LT)経路の阻害により、BAFFトランスジェニックマウスにおいて狼瘡様の疾患の改善が導かれることの発見に、一部基づく。本発明はさらに、BAFFトランスジェニックマウスの腎機能障害が、腎臓でのIgAおよびIgG免疫複合体の蓄積に関係していることの発見に、一部基づく。
【0006】
したがって、本発明の1つの態様は、IgAまたはIgGの生産の無調節を含むB細胞による免疫グロブリンの生産が無調節になることによって引き起こされる疾患を含む、免疫障害を処置するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、LT経路の阻害因子を含む組成物が、糸球体腎炎を含むがこれに限定されない免疫グロブリンの沈着を伴う腎機能障害を伴う病状を予防または処置するために使用される。本発明はまた、IgA腎症および関連する病状の処置のために、ヒト以外の動物において治療用化合物を同定し、そして/またはその効力を試験するためのアッセイを提供する。いくつかの実施形態では、このアッセイには、BAFFトランスジェニック動物に対して試験される化合物を投与する工程、およびBAFFトランスジェニックの腎臓でのIgAの沈着のレベルを決定する工程が含まれる。
【0007】
特定の実施形態では、本発明の方法において使用されるLT経路の阻害因子として、可溶性形態のLTBR(例えば、LTBR免疫グロブリン融合体)のようなLTBR誘導体、LTBRに対する抗体、またはLTBRリガンドであるLTに対する抗体が挙げられる。本発明の1つの実施形態では、LT経路の阻害因子は、ヒト免疫グロブリンFcドメインを含むがこれに限定されない、1つ以上の異種タンパク質ドメインに対して融合させられた可溶性LTBRを含む。別の実施形態では、阻害因子は、配列番号1のアミノ酸から選択されるアミノ酸の機能的配列を含む可溶性LTBRを含む。さらに別の実施形態では、可溶性LTBRは、少なくとも1つのLTβサブユニットを含むリンホトキシン(LT)リガンドに対して選択的に結合することができるリガンド結合ドメインを含む。さらに別の実施形態では、可溶性LTBRは、LT−β−Rの細胞外ドメインを含む。
【0008】
上記の概要の記載および以下の詳細な説明のいずれもが例であり、説明的なものにすぎず、請求される本発明を限定するものではないことが理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
定義
用語「抗体」は、本明細書中で使用される場合は、免疫グロブリンまたはその一部を意味し、これには、供給源、生産方法、および他の特徴にはかかわらず、抗原結合部位を含むあらゆるポリペプチドが含まれる。この用語には、ポリクローナル、モノクローナル、、単特異的、多特異的、非特異的、ヒト化、単鎖、キメラ、合成、組み換え、ハイブリッド、変異、CDR移植抗体が含まれるが、これらに限定されない。用語「抗原結合ドメイン」は、抗原の一部または全体に特異的に結合するか、またはそれに相補的であるドメインを含む抗体分子の部分をいう。抗原が大きい場合には、抗体は抗原の特定の部分にのみ結合する場合がある。「エピトープ」または「抗原決定基」は、抗体の抗原結合ドメインとの特異的な相互作用に関与している抗原分子の部分である。抗原結合ドメインは、1つ以上の抗体の可変ドメイン(例えば、Vドメインから構成されるいわゆるFd抗体断片)によって提供される場合がある。抗原結合ドメインは、抗体の軽鎖可変領域(V)と抗体の重鎖可変領域(V)を含む。用語「LTBR抗体」または「LTBRに対する抗体」は、LTBRの少なくとも1つのエピトープに特異的に結合するあらゆる抗体をいう。用語「LT抗体」、「LTに対する抗体」、または「LTBRリガンドであるLTに対する抗体」は、LTの少なくとも1つのエピトープに特異的に結合するあらゆる抗体をいう。
【0010】
用語「治療用化合物」または「治療薬」は、本明細書中で使用される場合は、転写、翻訳、もしくは翻訳後の工程でLTBRまたはLTの発現を阻害することによるか、あるいはLTBRまたはその機能的リガンドであるLTの生物学的活性を阻害することのいずれかによってLT経路を「阻害する」ことができるあらゆる化合物を意味する。
【0011】
用語「阻害因子」、「阻害する」、「中和する」、「アンタゴナイズする」、およびそれらの同族語は、特定の反応または活性のアンタゴニストとして作用する化合物の能力をいう。用語「阻害する」は、治療用化合物の存在下で、同じ化合物が存在しない条件下での発現または活性と比較して、LTBRもしくはLTの発現、またはLTBRもしくはLTの活性を低下させることをいう。発現レベルまたは活性の低下は、好ましくは、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上である。LTBRもしくはLTの発現レベルまたは活性は、本明細書中に記載されるように、または当該分野で公知の技術によって測定することができる(例えば、Rooney(2000)Methods Enzymol.,322:345−363および米国特許第6403087号を参照)。
【0012】
用語「処置」、「治療用化合物」、およびそれらの同族語は、治療的処置および予防的/防御的措置の両方をいう。処置が必要であるものとしては、特定の内科的疾患をすでに有している個体、さらには最終的にそのような疾患に至るであろう個体を挙げることができる。
【0013】
用語「腎臓の免疫障害」は、無調節な免疫グロブリンの生産を含み、結果として腎臓の病状を生じる疾患または症状をいう。このような障害としては、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、関節リウマチ、インシュリン依存性糖尿病(IDDM)、慢性肝炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)、およびIgA腎症(ベルジェ病)、ならびに臨床的な兆候として肉眼で見えるかまたは顕微鏡でしか見えないほどの血尿および腎臓での免疫グロブリンの沈着が挙げられる他の疾患を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0014】
用語「有効用量」または「有効量」は、患者の症状の改善、または所望される生物学的結果(例えば、LT経路の阻害)を生じる化合物の量をいう。有効量は、以下のセクションに記載されるように決定することができる。
【0015】
用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」、および「DNA」は本明細書中では同義的に使用され、デオキシリボ核酸(DNA)を、そして適切である場合には、リボ核酸(RNA)を意味する。この用語はまた、ヌクレオチド類似体、および一本鎖または二本鎖のポリヌクレオチドを含むと理解されるべきである。ポリヌクレオチドの例として、プラスミドDNAまたはその断片、ウイルスDNAまたはRNA、アンチセンスRNAなどが挙げられるが、これらに限定されない。用語「プラスミドDNA」は、環状の二本鎖DNAをいう。「アンチセンス」核酸は、本明細書中で使用される場合は、ある程度の配列相補性によりmRNAのコード領域および/または非コード領域の一部にハイブリダイズすることができ、それによってmRNAからの翻訳を妨害する核酸をいう。
【0016】
本明細書中で使用される場合は、用語「定義された条件下でのハイブリダイゼーション」は、互いに極めて同一であるかまたは相同であるヌクレオチド配列が互いに結合したままであるハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を記載するように意図される。これらの条件は、少なくとも50、100、150、300、またはそれ以上のヌクレオチドの長さであり、少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、なおさらに好ましくは少なくともの約85〜90%が同一である配列が、互いに結合したままである条件である。パーセント同一性は、Altschul等(1997)Nucleic Acids Res.,25:3389−3402に記載されているように決定することができる。低ストリンジェンシーおよび高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の限定的ではない例が続くセクションに提供される。
【0017】
用語「特異的相互作用」または「特異的に結合する」などは、2つの分子が生理学的条件下で比較的安定な複合体を形成することを意味する。特異的な結合は、高い親和性によって特徴づけられ、これは、能力を抑えるには低い。非特異的結合は、通常は低い親和性を有して、高い能力を抑える。一般的には、結合は、親和定数Kが10−1よりも高い、または好ましくは10−1よりも高い場合に特異的とみなされる。必要な場合には、結合条件を変更することによって、特異的結合には実質的に影響を与えることなく非特異的結合を減少させることができる。このような条件は当該分野で公知であり、当業者は、日常的に行われる技術を使用して、適切な条件を選択することができる。これらの条件は通常、抗体の濃度、溶液のイオン強度、温度、結合させるための時間、無関係な分子(例えば、血清アルブミン、ミルクカゼイン)の濃度などに関して定義される。
【0018】
語句「実質的に示されているとおり」は、関連するアミノ酸配列が、所定の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%同一であることを意味する。例として、このような配列は、様々な種に由来する変異体である場合があり、またこのような配列は、短縮、欠失、アミノ酸置換、または付加によって所定の配列から導かれる場合もある。2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、例えば、Altschul等(1990)J.Mol.Biol.,215:403−410に記載されているBasic Local Alignment Tool(BLAST)、Needleman等(1970)J.Mol.Biol.,48:444−453のアルゴリズム、またはMeyers等(1988)Comput.Appl.Biosci.,4:11−17のアルゴリズムのような、標準的なアラインメントアルゴリズムによって決定される。
【0019】
用語「胚中心」は、本明細書中で使用される場合は、抗原免疫後に形成される二次B細胞濾胞をいう。この組織部位の出現は、最適な記憶の形成、イソ型の切り替え、体細胞超変異、およびこれによる抗体応答の親和性の成熟に関係しており、胚中心は当該分野で十分に特徴付けられている。
【0020】
用語「辺縁帯」は、辺縁帯マクロファージ(MZM)、金属親和性マクロファージ(MM)、辺縁帯(MZ)B細胞、および細網細胞、そしてさらにはT細胞と樹上細胞から主に構成される二次リンパ系組織の組織学的に記載される成分をいう。動脈の血流は周辺静脈洞の内部に向かって開いており、したがってこれにより抗原をこれらの細胞に直接接近させて、この部位での抗原に対する細胞性の反応を促進する。
【0021】
用語「LT経路」は、LTBRとその機能的なリガンドであるLTとの結合の結果として生体内で生じる相互に関係のある分子事象をいう。LT経路は、米国特許第6403087号、およびFu等(1999)Ann.Rev.Immunol.,17:399;Ruddle(1999)Immunol.Res.,19:119;Luther等(2000)Immunity,12:471;およびWeyand等(2001)Am.J.Pathol.,159:787に概説されている。表面リンホトキシン(LT)は、LT−αとLT−βのヘテロ複合体から構成され、これはLTBRにのみ結合する(Ware等(1995)Curr.Topics in Microbiol.and Immunol.,198:175)。二次リガンドであるLIGHTも存在する。これは、LTBRに結合するだけではなく、ヘルペスウイルス侵入調節因子(herpes virus entry mediator(HVEM))と呼ばれる別の受容体にも結合する。用語「LTBRリガンド」または「LT」は、他に明記されない限りは、LT−α/βヘテロ三量体、LT−β、LT−α、およびLIGHTをいう。用語「LTBRリガンド結合ドメイン」は、LTとの相互作用の特異的な認識に関係しているLTBRの部分(単数または複数)をいう。
【0022】
用語「哺乳動物」は、ヒトを含む、そのように分類されるあらゆる動物をいう。
【0023】
用語「BAFFトランスジェニック動物」は、BAFFFまたはその機能的に同等の断片を過剰に発現するように遺伝子修飾されている哺乳動物をいう。BAFFトランスジェニック動物を作成する具体的な方法は、本開示において後に記載される。
【0024】
LTBRは腫瘍壊死因子(TNF)ファミリーのメンバーであり、その機能性リガンドであるLTを通じた情報伝達によってリンパ系の器官形成において重要な役割を果たす。受容体は、広範囲の細胞型(例えば、線維芽細胞および単球)上で発現される。リガンドは活性化されたT、B、およびNK細胞上でのみ発現される。LT経路は、二次リンパ系の発生、および慢性的な炎症の部位で異所に形成されたリンパ系構造の確立の両方において重要な役割を果たす(Fu等(1999)Ann.Rev.Immunol.,17:399;Ruddle(1999)Immunol.Res.,19:119;Luther等(2000)Immunity,12:471;およびWeyand等(2001)Am.J.Pathol.,159:787)。
【0025】
本発明は、可溶性形態のLT−β受容体(LTBR)を用いたリンホトキシン(LT)経路の阻害によりBAFFトランスジェニックマウスの狼瘡様疾患の改善が導かれることの発見に、一部基づく。本発明はさらに、BAFFトランスジェニックマウスの腎機能障害が、腎臓でのIgAおよびIgG免疫複合体の蓄積に関係していることの発見に、一部基づく。
【0026】
本発明はまた、LT経路の阻害因子を投与する工程を含む、糸球体腎炎を処置または予防するための方法を記載する。1つの実施形態では、LT経路の阻害因子が、自己免疫疾患を伴う糸球体腎炎の処置または予防のために投与される。用語「糸球体腎炎」は、腎臓の糸球体の炎症によって特徴付けられる腎機能障害をいう。糸球体腎炎は、インシュリン依存性糖尿病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、強皮症、多発性筋炎、慢性活動性肝炎、複雑な結合組織系の障害、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血、自己免疫性甲状腺炎、突発性アジソン病、白斑、グルテン過敏性腸疾患、グレーヴス病、重症筋無力症、自己免疫性好中球減少症、突発性血小板減少性紫斑、関節リウマチ、肝硬変、尋常性天疱瘡、自己免疫性不妊症、グッドパスチャー症候群、水疱性類天疱瘡、円盤状狼瘡、潰瘍性大腸炎、またはデンスデポジット病のような、自己免疫症状によって引き起こされるか、またはそのような症状に関係している場合がある。本発明の1つの実施形態では、LTBR−Ig融合タンパク質は、糸球体腎炎を処置または予防するために使用される。
【0027】
本発明は、IgAまたはIgGの生産の無調節を含むB細胞による免疫グロブリンの生産が無調節になることによって引き起こされる疾患を含む、免疫障害を処置または予防するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、この方法は、免疫グロブリンの沈着を伴う腎機能障害に関係している病状を予防または処置するために使用され得る。
【0028】
特定の実施形態では、本発明の方法において使用される組成物は、LT経路の阻害因子を含む。いくつかの実施形態では、阻害因子はタンパク質性である。すなわちこれらは、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸を含む。タンパク質性のLT経路の阻害因子としては、LTBR−Igを含む可溶性形態のLTBR、LTBRに対する抗体、またはLTBRリガンドであるLTに対する抗体が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態では、本発明の方法において使用される組成物は、LT経路のタンパク質性ではない阻害因子、例えば、核酸、低分子阻害因子、LT模倣物などを含む。
【0029】
LTBRおよびLT、それらの断片または他の誘導体、あるいはそれらの類似体は、LTBRまたはLTに特異的に結合する抗体を作成するために使用することができる。抗体の生産においては、所望される抗体のスクリーニングは、当該分野で公知の技術によって、最も一般的には、ELISAまたはFACSによって行うことができる(アッセイの例については、例えば、Rooney(2000)Methods Enzymol.,322:345−363を参照)。
【0030】
抗体は、例えば、従来のハイブリドーマ技術(Kohler and Milstein(1975)Nature,256:495−499)、組み換えDNA法(米国特許第4816567号)、または抗体ライブラリーを使用するファージディスプレイ技術(Clackson等(1991)Nature,352:624−628;Marks等(1991)J.Mol.Biol.222:581−597)によって作成することができる。種々の他の抗体生産技術については、例えば、Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow等編,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照のこと。1つの実施形態では、本発明の方法において使用される抗体は、ヒトLTBRの細胞外部分の少なくとも一部に対する抗体である。別の実施形態では、抗体は、LT経路を、例えば、LTのLTBRへの結合をブロックすることによって阻害することができる。別の実施形態では、抗体は全体がヒトのものである。LTBRに対する抗体の例としては、引用により本明細書中に組み込まれる米国特許第5925351号および同第6403087号に記載されているような、可溶性LTとLTBRとの相互作用をブロックするヒトLTBRに対するBDA8モノクローナル抗体、および細胞表面LT−α/βとLTBR−Igとの間での相互作用をブロックする、ヒトLTに対するモノクローナルB9抗体が挙げられるが、これらに限定されない。LTBRに対する抗体もまた、引用により本明細書中に組み込まれる米国特許第6312691号に記載されている。
【0031】
いくつかの実施形態では、これらの方法には、LTに結合し、それによって生体内のLT経路を阻害する、可溶性形態のLTBR(例えば、LTBR−Ig融合ポリペプチド)の使用が含まれる。具体的には、本明細書中に開示される可溶性形態のLTBRは、IgAまたはIgGの生産の無調節を含むB細胞による免疫グロブリンの生産の無調節に関係している、内因性LTBR活性を阻害する。いくつかの実施形態では、LTBR−Igは、これを治療上での使用に適切にする薬物動態特性、例えば、長い血液循環半減期および/またはタンパク質溶解性の分解に対する好ましい防御を有する。
【0032】
ヒトLTBRの細胞外部分の配列は配列番号1に示され、これは、米国特許第5925351号の図1に示されている。配列番号1の配列情報と、当該分野で周知の組み換えDNA技術を使用して、LTBRのリガンド結合ドメインをコードする機能性断片をベクター中にクローニングし、適切な宿主中で発現させて、可溶性LTBR分子を生産させることができる。LTリガンドへの結合について自然界に存在しているLTB受容体と競合することができる可溶性LTBR分子が、本明細書中および米国特許第6403087号に記載されているアッセイにしたがって、LTBR遮断因子として選択される。
【0033】
配列番号1に記載されている配列から選択されるアミノ酸配列を含む可溶性LTBRは、受容体融合タンパク質の生体内での安定性を高めるために、またはその生物学的活性もしくは局在性を調節するために、1つ以上の異種タンパク質ドメイン(「融合ドメイン」)に結合させられる場合がある。1つの実施形態では、安定な血漿タンパク質(これは、通常は、血液循環において20時間より長い半減期を有する)が、受容体融合タンパク質を構築するために使用される。このような血漿タンパク質としては、免疫グロブリン、血清アルブミン、リポタンパク質、アポリポタンパク質、およびトランスフェリンが挙げられるが、これらに限定されない。特定の細胞または組織型に対して可溶性LTBR分子を標的化することができる配列もまた、特異的に局在化する可溶性LTBR融合タンパク質を作成するためにLTBRリガンド結合ドメインに結合させられる場合がある。
【0034】
LTBRリガンド結合ドメインを含むLTBR細胞外領域(配列番号1)全体またはその機能性部分が、ヒトIgG1重鎖のFcドメインのような免疫グロブリン定常領域に融合させられる場合もある(Browning等,J.Immunol.,154,pp.33−46(1995))。可溶性受容体−IgG融合タンパク質は一般的な免疫学的試薬であり、それらの構築のための方法は当該分野で公知である(例えば、引用により本明細書中に組み込まれる米国特許第5225538号を参照)。
【0035】
したがって、1つの実施形態では、本発明の方法において使用されるLTBR−Igは、(a)LTBRの細胞外ドメインに由来する第1のアミノ酸配列、および(b)抗体の定常領域に由来する第2のアミノ酸配列を含む。
【0036】
第1のアミノ酸配列は、LTBRの細胞外ドメイン全体またはその一部に由来し、LTに特異的に結合することができる。ヒトLTBRの細胞外ドメインのアミノ酸配列は配列番号1に示される。特定の実施形態では、第1のアミノ酸配列は配列番号1と同一であるか、または実質的に配列番号1に示されているものそのものである。このような配列は、短縮された配列がLTに特異的に結合する能力を保持している限りは、短縮することができる。いくつかの他の実施形態では、第1のアミノ酸配列は、配列番号1の少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、または180個の連続するアミノ酸を含む。
【0037】
第2のアミノ酸配列は、抗体の定常領域、具体的には、Fc部分から誘導されるか、またはこのような配列の変異体である。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列はIgGのFc部分から誘導される。関連する実施形態では、Fc部分は、IgG、IgG、または別のIgGイソ型であるIgGから誘導される。特定の実施形態では、第2のアミノ酸配列はヒトIgGのFc部分を含む。ここでは、Fcはエフェクター機能を最小にするように修飾される。このような修飾としては、Fc受容体の結合のようなエフェクター機能を変化させることができる特異的な変化用のアミノ酸残基を含めること(Lund等(1991)J.Immun.147:2657−2662およびMorgan等(1995)Immunology 86:319−324)、または定常領域を供給する種を変更することが含まれる。抗体は、エフェクター機能、すなわち、Fcレセプターの結合および補体活性化を低下させる変異を、重鎖のC2領域に有することができる。例えば、抗体は、米国特許第5624821号および同第5648260号に記載されている変異のような変異を有することができる。IgGまたはIgGの重鎖においては、例えば、このような変異は、IgGまたはIgGの全長配列中のアミノ酸234および237に対応するアミノ酸残基で作成することができる。抗体はまた、Angal等(1993)Mol.Immunol.30:105−108に開示されているように、免疫グロブリンの2つの重鎖の間のジスルフィド結合を安定化させる変異、例えば、IgGのヒンジ領域中に変異を有することもできる。
【0038】
種々のIgクラスおよびサブクラスに属する抗体のFcドメインは、様々な二次エフェクター機能を活性化することができる。活性化は、Fcドメインが同種のFc受容体に結合されると生じる。二次エフェクター機能としては、補体系を活性化させる能力、胎盤を通過する能力、および種々の微生物タンパク質に結合する能力が挙げられる。免疫グロブリンの種々のクラスおよびサブクラスの特性は、Roitt等,Immunology,p.4.8(Mosby−Year Book Europe Ltd.,第3版,1993)に記載されている。
【0039】
補体酵素のカスケードは、抗gpri追跡(antigpri−hound)IgG1、IgG3、およびIgM抗体のFcドメインによって活性化することができる。IgG2のFcドメインはあまり有効ではないようであり、IgG4、IgA、IgD、およびIgEのFcドメインは補体を活性化することについては全く効果がない。したがって、当業者は、それに伴う二次エフェクター機能がLT−β−R−Fc融合タンパク質で処置される特定の免疫応答または疾患について望ましいかどうかに基づいて、Fcドメインを選択することができる。
【0040】
特定の実施形態では、第2のアミノ酸配列は第1のアミノ酸配列のC末端またはN末端に連結され、これにはリンカー配列によって連結される場合も、リンカー配列を伴わない場合もある。リンカーの正確な長さおよび配列、さらには連結される配列に対するその方向は様々である。リンカーは、例えば、1つ以上のGly−Serを含む。リンカーは、2、10、20、30、またはそれ以上のアミノ酸の長さであり得、可溶性、長さ、立体構造の区別、免疫原性などのような望まれる特性に基づいて選択される。任意のタンパク質の配列中の特定のアミノ酸を、タンパク質の活性に有害な影響を与えることなく他のアミノ酸で置換することができることは、当業者によって理解されるであろう。したがって、種々の変更を、タンパク質性である本発明のLT経路の阻害因子のアミノ酸配列に対して、またはその生物学的活性または有用性を感知できるほどには損なうことなくそれらをコードするDNA配列に対して行うことができることが想定される。
【0041】
LTBRに関連する誘導体および類似体の使用は、本発明の範囲内である。特異的な実施形態では、誘導体または類似体は機能的に活性である、すなわち、例えば、配列番号1に示されるような野生型LTBRのLT結合ドメインに関係している1つ以上の活性を示すことができる。この結合を保持しているか、またはLT経路を阻害する誘導体または類似体は、Rooney(2000)Methods Enzymol.,322:345−363、米国特許第6403087号、または実施例に記載されるアッセイを含むがこれらに限定されない、当該分野で公知の手順によって望まれる活性について試験することができる。
【0042】
LTBR−Ig、LTBR抗体、またはLT抗体の誘導体は、機能的に同等の分子を生じる置換、付加、および/または欠失/短縮によってそれらのアミノ酸配列を変化させることによって作成することができる。ヌクレオチドコドンの縮重により、実質的に同じアミノ酸配列をコードする他のDNA配列を、本発明の実施において使用することもできる。これらとしては、配列内のアミノ酸と機能的に同等のアミノ酸残基をコードする異なるコドンでの置換によって変化させられ、したがって「サイレントな」変化を生じるヌクレオチド配列が挙げられるが、これに限定されない。例えば、無極性アミノ酸として、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが挙げられる。極性のある中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが挙げられる。正電荷を有している(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リジン、およびヒスチジンが挙げられる。負電荷を有している(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。配列内のアミノ酸の置換は、そのアミノ酸が属しているクラスの他のメンバーから選択することができる(表1を参照)。さらに、ポリペプチド中の任意の天然の残基が、アラニンで置換される場合もある(例えば、MacLennan等(1998)Acta Physiol.Scand.Suppl.643:55−67;Sasaki等(1998)Adv.Biophys.35:1−24を参照)。
【0043】
本発明のLTBR誘導体および類似体は、組み換え法および合成法を含む当該分野で周知の種々の技術によって生産することができる(Maniatis(1990)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY,およびBodansky等(1995)The Practice of Peptide Synthesis,第2版,Spring Verlag,Berlin,Germany)。
【0044】
【表1】

特定の実施形態では、他のタンパク質に由来するアミノ酸配列に対する本発明のLTBR−Igのいずれかのさらなる融合体を、本発明の方法での使用のために構築することができる。望ましい融合配列は、LTBRの活性とは異なる生物学的活性を有しているタンパク質、例えば、サイトカイン、成長因子および分化因子、酵素、ホルモン、他の受容体成分などに由来する。また、LTBR−Igを、他のタンパク質および薬学的な因子に対して化学的にカップリングさせるか、または結合させることもできる。このような修飾は、得られる組成物の薬物動態および/または生体分布を変化させるように設計することができる。本発明のLTBR−Igおよび抗体はまた、米国特許第4640835号、同第4496689号、同第4301144号、同第4670417号、同第4791192号、または同第4179337号に示されている様式で、グリコシル化、ペグ化(pegylated)することができ、また、別のタンパク質性ではない高分子、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、もしくはポリオキシアルキレンに連結することもできる。LTBR−Igおよび抗体は、例えば、それらの血液循環における半減期を延長するために、高分子に共有結合させることによって化学的に修飾することもできる。ペプチドにそれらを結合させるための例示的な高分子および方法はまた、米国特許第4766106号、同第4179337号、同第4495285号、および同第4609546号に示されている。
【0045】
本発明の方法において使用されるLTBR−Igおよび抗体はまた、検出可能な標識または機能性標識でタグをつけることもできる。検出可能な標識として、131Iまたは99Tcのような放射標識が挙げられる。これは、従来の化学方法を使用して結合させることができる。検出可能な標識としてはさらに酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、またはアルカリホスファターゼ)およびビオチンまたはアビジンのような検出可能な部分が挙げられる。
【0046】
いくつかの実施形態では、本発明の方法には、核酸またはこのような核酸によってコードされるポリペプチドの投与が含まれる。ここでは、ヌクレオチド配列は、(a)配列番号1のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;および(b)少なくとも100、200、300、400、または500ヌクレオチドの長さであり、定義された条件下で(a)の核酸にハイブリダイズすることができる核酸から選択される。ここでは、核酸の発現産物は、B細胞による免疫グロブリンの分泌を阻害することができる。1つの実施形態では、定義された条件は低ストリンジェンシーの条件である。別の実施形態では、定義された条件は中程度のストリンジェンシーの条件である。さらに別の実施形態では、定義された条件は、高ストリンジェンシーの条件である。
【0047】
適切なハイブリダイゼーション条件は、Ausubel等(1995)Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,section 2,4,and 6に説明されているように、最小限の実験によって当業者が選択することができる。さらに、ストリンジェントな条件は、Sambrook等(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Press,第7、9、および11章に記載されている。定義される低ストリンジェンシーの条件の限定的ではない例は以下である。DNAを含むフィルターを、35%のホルムアミド、5×SSC、50mMのTris−HCl(pH7.5)、5mMのEDTA,0.1%のPVP、0.1%のFicoll、1%のBSA、および500μg/mlの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で40℃で6時間、前処理する。ハイブリダイゼーションを以下の変更を加えた同じ溶液中で行う:0.02%のPVP、0.02%のFicoll、0.2%のBSA、100μg/mlのサケ精子DNA、10%(wt/vol)のデキストラン硫酸、および5〜20×1032P標識プローブを使用する。フィルターをハイブリダイゼーション混合物中で40℃で18〜20時間インキュベートし、その後、2×SSC、25mMのTris−HCl(pH7.4)、5mMのEDTA,および0.1%のSDSを含む溶液中で55℃で1.5時間洗浄する。洗浄溶液を新しい溶液と交換し、さらに1.5時間、60℃でインキュベートする。フィルターをブロットして乾燥させ、オートラジオグラフィーのために感光させる。当該分野で周知の低ストリンジェンシーの他の条件を使用することができる(例えば、種間ハイブリダイゼーションのために使用される場合)。
【0048】
定義される高ストリンジェンシーの条件の限定的ではない例は以下である。DNAを含むフィルターのプレハイブリダイゼーションを、6×SSC、50mMのTris−HCl(pH7.5)、1mMのEDTA、0.02%のPVP、0.02%のFicoll、0.02%のBSA、および500μg/mlの変性サケ精子DNAから構成される緩衝液中で65℃で8時間から一晩行う。フィルターを、100μg/mlの変性サケ精子DNAおよび5〜20×10cpmの32P標識プローブを含むプレハイブリダイゼーション混合物中で、65℃で48時間ハイブリダイズさせる。フィルターの洗浄を、2×SSC、0.01%のPVP、0.01%のFicoll、および0.01%のBSAを含む溶液中で37℃で1時間行う。これを、その後、0.1×SSC中で50℃で45分間洗浄する。
【0049】
様々な種々の宿主細胞中でのポリペプチドのクローニングおよび発現のためのシステムは周知である。適切な宿主細胞として、細菌、哺乳動物細胞、ならびに酵母およびバキュロウイルスシステムが挙げられる。異種ポリペプチドの発現のために当該分野で利用することができる哺乳動物細胞株として、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、NS0マウス黒色腫細胞などが挙げられる。一般的な細菌宿主は大腸菌(E.coli)である。例えば、LTBR−Igを生産させるために適切な他の細胞については、Gene Expression Systems,Fernandez等編,Academic Press,1999を参照のこと。
【0050】
適切な調節配列(プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子、および適切である場合には他の配列を含む)を含む適切なベクターを選択または構築することができる。ベクターは、プラスミドまたはウイルス(例えば、ファージ)である場合も、また適切である場合にはファージミドである場合もある。さらなる詳細については、例えば、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Sambrook等,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989を参照のこと。例えば、核酸構築物の調製、突然変異誘発、配列決定、細胞中へのDNAの導入、および遺伝子発現、ならびにタンパク質の分析における、核酸の操作についての多くの公知の技術およびプロトコールは、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel等編,第2版,John Wiley & Sons,1992に詳細に記載されている。
【0051】
発現後、LTBR−Igが単離および/または精製される(LTBR−Ig、LT(LT−α、LT−β、およびLT−α/βを含む)の発現および精製のための例示的な手順は、Rooney(2000)Methods Enzymol.,322:345−363に記載されている)。特異的なLTBR−Ig、およびそれをコードする核酸分子、および本発明のベクターは、例えば、それらが自然界において存在している環境から、実質的に純粋であるかまたは均質な形態で、あるいは核酸の場合には、必要な機能を有しているポリペプチドをコードする配列以外の核酸または遺伝子の起源を含まないかまたは実質的に含まない状態で、得る、単離する、および/または精製することができる。
【0052】
本発明は、治療用化合物(「治療薬」)の投与により種々の疾患および障害を処置または予防するための方法を提供する。適切な治療薬として、LTBR、その類似体および誘導体(断片を含む);LTBRタンパク質をコードする核酸、類似体、または誘導体;LTBRアンチセンス核酸、LTBR抗体、LT抗体、ならびに他のLTBR/LTアンタゴニストが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
本発明の方法による処置に敏感である免疫障害の例として、インシュリン依存性糖尿病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、強皮症、多発性筋炎、慢性活動性肝炎、複雑な結合組織系の障害、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血、自己免疫性甲状腺炎、突発性アジソン病、白斑、グルテン過敏性腸疾患、グレーヴス病、重症筋無力症、自己免疫性好中球減少症、突発性血小板減少性紫斑、関節リウマチ、肝硬変、尋常性天疱瘡、自己免疫性不妊症、グッドパスチャー症候群、水疱性類天疱瘡、円盤状狼瘡、潰瘍性大腸炎、またはデンスデポジット病のような自己免疫症状が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、IgAまたはIgGのような免疫グロブリンの生産の無調節を含む、B細胞による免疫グロブリンの生産が無調節になる免疫障害は、本明細書中に開示される治療薬の投与によって処置されるかまたは予防される。特定の実施形態では、B細胞は、IgAを過剰生産するB−1細胞である。いくつかの実施形態では、疾患は、高い(正常な濃度または望ましい濃度と比較して)自己免疫抗体濃度によって特徴付けられる。いくつかの他の実施形態では、免疫グロブリンの無調節な生産により、腎臓中でIgAの病理学的な沈着が生じる。このような障害としては、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、関節リウマチ、インシュリン依存性糖尿病(IDDM)、慢性肝炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)、およびIgA腎症(ベルジェ病)、ならびに臨床的な兆候として肉眼で見えるかまたは顕微鏡でしか見えないほどの血尿およびIgAの沈着の存在が挙げられる他の疾患を挙げることができるが、これらに限定されない。いくつかの他の実施形態では、本発明の方法は、GCとは無関係な機構を有する自己免疫障害を処置するために使用される。さらに他の実施形態では、これらの方法は、例えば、シェーグレン症候群のような、高いレベル(正常なレベルまたは望ましいレベルと比較して)のMZ B細胞を特徴とする疾患を処置するために利用される。さらに別の実施形態では、LT経路の阻害因子が、例えば、自己免疫症状を伴う糸球体腎炎を含む、糸球体腎炎の被験体を処置するために使用される。
【0054】
特異的な実施形態では、LTBR機能を阻害する治療薬が、(1)LTBRもしくはLTの高い発現レベル(すなわち、正常レベルもしくは望まれるレベルと比較して)、または高いLTBRもしくはLTの機能的活性に関係している疾患または障害において、あるいは(2)生体外または生体内でのアッセイによりLT経路の阻害因子の投与の有効性が明らかにされている疾患または障害において投与される。高い発現または活性のレベルは、例えば、患者から生物学的試料(例えば、尿試料)を採取し、そして肉眼で見えるかまたは顕微鏡でしか見えないほどの血尿の存在について試料をアッセイすることによって、容易に検出することができる。LTBRタンパク質を検出および/または視覚化するためのキナーゼアッセイ、免疫アッセイ(例えば、ウェスタンブロット、免疫沈降、その後のSDS−PAGE、免疫細胞化学など)、ならびに/あるいはハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ノーザンアッセイ、ドットブロット、インサイチュハイブリダイゼーション、RT−PCRなど)を含むがこれらに限定されない、当該分野で標準的である多くの方法を使用することができる。
【0055】
本発明の1つの実施形態は、腎臓でのIgの沈着を伴う疾患を含む、自己免疫障害を処置するための治療薬として有効である、LT経路の阻害因子を同定するためのアッセイを提供する。このスクリーニングアッセイでは、第1の結合混合物が、LTBR−Ig融合ポリペプチドとリガンド(例えば、LT)を結合させることによって形成され;そして第1の結合混合物中での結合の量(M)が測定される。第2の結合混合物もまた、LTBR−Ig融合ポリペプチド、リガンド、およびスクリーニングされる化合物または試薬を結合させることによって形成させられ、第2の結合混合物中での結合の量(M)が測定される。その後、第1の結合混合物と第2の結合混合物中での結合の量が、例えば、M/M比を計算することによって比較される。化合物または試薬は、第1の結合混合物と比較して、第2の結合混合物中での結合において減少が観察される場合に、Ig媒介性の腎臓病を阻害することができるとみなされる。結合混合物の構成および最適化は当業者のレベルの範囲内であり、このような結合混合物には、結合を促進または最適化するために必要な緩衝液および塩が含まれる場合もあり、さらに対照アッセイが本発明のスクリーニングアッセイに含まれる場合もある。したがって、LTBR/LT結合を少なくとも約10%(すなわち、M/M<0.9)、好ましくは約30%減少させることが明らかになった化合物を同定することができ、その後、必要である場合には、以下に記載されるような他のアッセイまたは動物モデルにおいて自己免疫障害を改善する能力についての二次スクリーニングが行われる。受容体とリガンドとの間での結合の強度は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫測定(RIA)、表面プラズモン共鳴に基づく技術(例えば、Biacore)を使用して測定することができる。これらの全てが当該分野で周知の技術である。
【0056】
LT経路の阻害因子は、ノックアウトモデルにおいて複雑な発育不全が観察されることなく、BAFFトランスジェニックモデルにおいて腎機能障害を緩和することが明らかにされる。したがって、このような動物モデルを、IgAまたはIgGの生産の無調節を含むB細胞による免疫グロブリンの生産が無調節になることに関係している障害について、治療用化合物を同定し、そして/またはその効力を試験するためのアッセイにおいて使用することができる。免疫に関係している腎臓の病状の特定の態様は、BAFFトランスジェニック動物において観察することができる。BAFFトランスジェニックマウスは、尿中のタンパク質濃度を記録することによって評価されるように、6ヶ月齢またはそれ以降で狼瘡のような症状を発症し始める。BAFFトランスジェニック動物のIg力価の上昇は、IgAサブクラスについて最も顕著であり、集めたデータから、腎臓ではIgG分泌細胞よりもIgA分泌細胞のほうが多く存在することが明らかである。さらに、マウスへのBAFFの注射により、ニューモバックス抗原に対する過剰な応答が生じ、最も劇的な影響を受けるイソ型がIgAである。したがって、特定の実施形態では、BAFFトランスジェニック動物が、IgA腎症を含むIgAに関連する免疫障害、またはIgA成分が強い他の障害の処置について化合物の効力を評価するために使用される。BAFFトランスジェニック動物はまた、濾胞性B細胞およびGC反応が重要ではない疾患状態に似た症状を呈するために使用することもできる。BAFFトランスジェニック動物モデルは、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、IgA腎症(ベルジェ病)、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)、シェーグレン症候群、強皮症、多発性筋炎、インシュリン依存性糖尿病、多発性硬化症、慢性活動性肝炎、複雑な結合組織系の障害、原発性胆汁性肝硬変、悪性貧血、自己免疫性甲状腺炎、突発性アジソン病、白斑、グルテン過敏性腸疾患、グレーヴス病、重症筋無力症、自己免疫性好中球減少症、突発性血小板減少性紫斑、関節リウマチ、肝硬変、尋常性天疱瘡、自己免疫性不妊症、グッドパスチャー症候群、水疱性類天疱瘡、円盤状狼瘡、潰瘍性大腸炎、またはデンスデポジット病のような免疫障害を処置または予防する能力について、分子をスクリーニングまたは試験するために使用することができる。
【0057】
BAFFトランスジェニックマウスは、肝臓特異的調節配列の制御下で全長のマウスBAFFを発現する。このトランスジェニックマウスは、以前に記載されているように作成される(Mackay等(1999)J.Exp.Med.190:1697)。マウスは、トランスジェニックの雄をC57BL/6雌に戻し交配させることによって、コロニーを発現させ続けることにより作成することができる。トランスジェニック状態は、テールチップから回収したDNAについてPCRを行うことによって検出することができる。トランスジェニック方法については、一般的には、Transgenic Mouse Methods and Protocols,Hofker等編,Humana Press,2002を参照のこと。簡単に言うと、BAFFトランスジェニックマウスは以下のようにして作成された。全長のマウスBAFFをコードするPCR断片を、以前に記載された配列情報(Scheider等(199)J.Exp.Med.,189:1747−1756)を使用して逆転写PCRによって作成した。第1鎖cDNAを、製造業者によるプロトコール(GIBCO BRL)に従ってオリゴdTを使用してマウスの肺のポリA+(Clontech)から合成した。PCR反応には、1×pfu緩衝液(Stratagene Inc.)、0.2mMのdNTPs、10%のDMSO、12.5pMのプライマー、5単位のpfu酵素(Stratagene Inc.)、および以下のプライマーNot1制限部位を含めた:
5’−TAAGAATGCGGCCGCGGAATGGATGAGTCTGCAAA−3’(配列番号2)
5’−TAAGAATGCGGCCGCGGGATCACGCACTCCAGCAA−3’(配列番号3)。
【0058】
鋳型を、94℃で1分間、54℃で2分間、および72℃で3分間を1サイクルとして30サイクル増幅し、その後72℃で10分間の伸張を行った。この配列は、GenBankファイルAF119383のヌクレオチド214−1171に対応する。PCR断片をNot1で消化し、改良型pCEP4ベクター(Invitrogen Corp.)にクローニングした。その後、得られたベクターをXba1で消化して、BAFFとSV40ポリA付加部位の配列を切り出した。プラスミドクローン540Bから予め精製しておいたヒトApoEエンハンサーとAAT(α−抗トリプシン)を含む1kbの平滑末端Bgl2−Not1断片であるプロモーターをEcoRV部位にさらに挿入したpUC系のベクターに、この断片をクローニングした。EcoRV/Bgl2断片を最後のベクターから精製して、トランスジェニックマウスの作成のために使用した。C57BL/6J雌×DBA/2J雄F1(BDF1)マウスの注射した子を、C57BL/6マウスに戻し交配した。マイクロインジェクションおよびトランスジェニックマウスの作成の技術は、以前に記載されている(Mcknights等(1983)Cell,34:335−341)。
【0059】
当業者は、化合物が必要に応じて、例えば以下のような少なくとも1つの別の動物モデルにおいて試験される場合があることを理解している(概要については、Immunologic Defects in Laboratory Animals,Gershwin等編,Plenum Press,1981を参照):SWR×NZB(SNF1)トランスジェニックマウスモデル(Uner等(1998)J.Autoimmune.11(3):233−240)、KRNトランスジェニックマウス(K/B×N)モデル(Ji等(1999)Immunol.Rev.169:139);NZB×NZW(B/W)マウス、SLEのモデル(Riemekasten等(2001)Arthritis Rheum.,44(10):2435−2445);マウスの実験用自己免疫脳炎(EAE)、多発性硬化症のモデル(Tuohy等(1988)J.Immunol.141:1126−1130,Sobel等(1984)J.Immunol.132:2393−2401、およびTraugott,Cell Immunol.(1989)119:114−129);糖尿病のNODマウスモデル(Baxter等(1991)Autoimmunity,9(1):61−67など)。
【0060】
特定の実施形態では、試験される化合物には、例えば、可溶性形態のLTBR(例えば、LTBR−Ig)のようなLT経路の阻害因子、LTBRに対する抗体、およびLTBRリガンドであるLTに対する抗体;それらの類似体、誘導体、および断片;それらをコードする核酸およびアンチセンス核酸(ならびにそれらの相補配列および相同配列)が含まれる。例示的な実施形態では、マウスに、約1μgから約1mg、好ましくは約10μgから約500μg、またはさらに好ましくは約100μgの、LTBR−IgあるいはIg対照が、5週間の期間にわたって腹腔内に注射される。腎機能が、以下の少なくとも1つによって評価される:タンパク尿、免疫組織分析、脾臓の重量、脾細胞の数、濾胞性B細胞の数、辺縁帯B細胞の数(例えば、B220+脾細胞の割合)、B−1b細胞に対するB−1a細胞の割合、血漿細胞の数およびIgA+血漿細胞の数、ならびに脾臓、骨髄、または腎臓中でのIgAまたはIgG分泌因子の頻度など。血清もまた、SLE、シェーグレン症候群、複雑な結合組織の障害(MCTD)、および全身性硬化症を含む全身性リウマチ疾患の典型的なマーカーとして細胞性の核抗原に結合することが知られている、自己抗核抗体(ANA)の存在について評価される場合がある。
【0061】
例えば、動物試験にしたがって決定されるような仮の用量、およびヒトへの投与についての投与量のスケーリングは、当該分野での慣例にしたがって行われる。毒性および治療効力は、例えば、LD50(集団の50%を死に至らしめる用量)およびED50(集団の50%において治療上有効である用量)を決定するための、細胞培養物または実験動物における標準的な薬理学的手順によって決定することができる。毒性と治療効果との間の用量比は治療指数であり、これは比LD50/ED50として表すことができる。大きな治療指数を示す組成物が好ましい。
【0062】
治療有効用量は、細胞培養アッセイによって最初に概算することができる。用量は、細胞培養アッセイまたは動物モデルにおいて決定されたIC50(すなわち、症状の最大の半分の阻害を達成する治療薬の濃度)を含む、血液循環中での血漿濃度の範囲が得られるように、動物モデルについて処方され得る。血漿中の濃度は、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。任意の特定の投与量の効果は、適切な生体アッセイによってモニターすることができる。投与量の例は、約0.1×IC50、約0.5×IC50、約1×IC50、約5×IC50、10×IC50、約50×IC50、および約100×IC50である。
【0063】
細胞培養アッセイまたは動物実験によって得られたデータを使用して、ヒトでの使用のための投与量の範囲を計算することができる。1つの動物モデルにおいて得られた治療有効投与量を、ヒトを含む別の動物での使用のために、当該分野で公知の換算係数を使用して変換することができる(例えば、Freireich等(1966)Cancer Chemother.Reports,50(4):219−244、および相当する表面積投与量係数についての表2を参照)。
【0064】
【表2】

このような化合物の投与量は、ほとんど毒性がないかまたは毒性がまったくなくED50を含む血液循環の濃度の範囲にあることが好ましい。投与量は、使用される投与量形態および利用される投与経路に応じてこの範囲内で変化させることができる。通常は、治療有効量は、被験体の年齢、症状、および性別、さらには被験体の医学的症状の重篤度によって変化し得る。投与量は医師によって決定され、必要である場合には、観察される処置の効果に適応するように調節することができる。一般的には、組成物は、LT経路の阻害因子がおよそ1μg/kgから20mg/kgまで、1μg/kgから10mg/kgまで、1μg/kgから1mg/kgまで、10μg/kgから1mg/kgまで、10μg/kgから100μg/kgまで、100μg/kgから1mg/kgまで、および500μg/kgから1mg/kgまでの用量で投与される。組成物は、投与後もっとも長い時間にわたって血液循環中での濃度が最大となるように、注射(bolus dose)で投与される場合がある。注射(bolus dose)後に、静注も使用される場合がある。
【0065】
いくつかの実施形態では、本発明の方法において使用される組成物は、LT経路の1つ以上の阻害因子と、薬学的に許容される賦形剤を含む。本明細書中で使用される場合は、語句「薬学的に許容される賦形剤」は、任意のおよび全ての溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などをいい、これらは薬学的投与に適合するものである。このような媒体および薬剤を薬学的活性のある物質に使用することは当該分野で周知である。組成物には、さらに、補助的な、それ以上の、または高い治療作用を提供する他の活性のある物質が含まれる場合もある。また、薬学的組成物は、箱、パック、ディスペンサー型の容器中に、投与についての説明書とともに含まれる場合もある。
【0066】
薬学的組成物は、その意図される投与経路と適合するように処方される。投与を行うための方法は当該分野で公知である。投与は、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、洞内(intracavity)、皮下、または皮膚を通じて行われ得る。局所または経口投与することができる組成物を得ることが可能である場合もある。
【0067】
皮内または皮下での適用に使用される溶液または懸濁液には、通常、以下の成分の1つ以上が含まれる:注射のための水、生理食塩溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成の溶媒のような滅菌の希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗菌剤、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムのような酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸のようなキレート化剤;酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩のような緩衝物質;ならびに塩化ナトリウムまたはデキストロースのような張力の調節のための試薬。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムのような酸または塩基を用いて調節することができる。このような調製物は、アンプル、使い捨てのシリンジ、またはガラスもしくはプラスチック製の複数回投与用のバイアル中に封入することができる。
【0068】
注射に適切な薬学的組成物として、滅菌の水溶液または分散液、および滅菌の注射可能な溶液または分散液を即座に調製するための滅菌の粉末が挙げられる。静脈内投与については、適切な担体として、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(BASF,Parsippany、NJ)、またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、組成物は滅菌のものでなければならず、容易にシリンジ中に存在できる程度に流動性でなければならない。製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌のような微生物の混入作用から保護されなければならない。担体は溶媒または分散媒体であってよく、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物が挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用によって、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持によって、そして界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用からの保護は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって得ることができる。多くの場合には、等張化剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールのような多価アルコール、および塩化ナトリウムを組成物中に含ませることが好ましい。注射可能な組成物の持続的な吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に含めることによってもたらすことができる。
【0069】
経口組成物は、通常、不活性な希釈剤または食用の担体を含む。これらは、ゼラチンカプセル中に封入することができ、また錠剤になるように圧縮して固めることもできる。経口による治療的投与の目的のためには、LT阻害因子を賦形剤とともに組み入れることができ、これは錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤の形態で使用される。薬学的に適合する結合剤、および/またはアジュバント物質を、組成物の一部として含めることもできる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分の任意のもの、または同様の性質の化合物を含むことができる;微結晶性セルロース、トラガカントガム、またはゼラチンのような結合剤;澱粉または乳糖のような賦形剤;アルギン酸、Primogel、またはトウモロコシ澱粉のような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはSterotesのような潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素のような流動促進剤;スクロースまたはサッカリンのような甘味剤;あるいはペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香味剤のような香味剤。
【0070】
吸入による投与については、LT阻害因子は、適切な圧縮ガス、例えば、二酸化炭素のような気体を含む加圧型容器またはディスペンサー、あるいはネブライザーからエアゾールスプレーの形態で投与される。
【0071】
全身投与は、粘膜を通じるか、皮膚を通じる手段によっても行うことができる。例えば、LTBR−Igと抗体の場合には、組成物は、FcRn受容体によって媒介される経路を通じて粘膜(例えば、腸粘膜、口腔粘膜、または肺粘膜)を透過することができる(米国特許第6030613号)。粘膜を通じる投与は、例えば、薬用キャンディー、鼻腔スプレー、吸入器、または坐剤の使用によって行うことができる。皮膚を通じる投与のためには、活性のある化合物は、当該分野で一般的に知られているように、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲル剤、またはクリーム剤に処方される。粘膜を通じる投与または皮膚を通じる投与については、浸透させられるバリアに適切である浸透剤が、処方物中に使用される。このような浸透剤は当該分野で一般的に知られており、例えば、界面活性剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。
【0072】
LT阻害因子は、化合物が体から迅速に排出されてしまわないように保護する担体とともに、例えば移植片およびマイクロカプセル化された送達システムを含む徐放処方物のように、調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のような生体分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。このような処方物の調製方法は当業者に明らかである。リポソーム懸濁液もまた、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、例えば、米国特許第4522811号に記載されているように、当業者に公知の方法にしたがって調製することができる。
【0073】
投与を容易にし、投与量を均一にするためには、投与量単位の形態に経口組成物または非経口組成物を処方することが有効であり得る。投与量単位の形態は、本明細書中で使用される場合は、処置される被験体についての単位投与量として適応させられた物理的に分けられている単位をいう。個々の単位は、必要な薬学的担体と組み合わせて、望ましい治療効果を生じるように計算された予め決定された量の活性のある化合物を含む。
【0074】
タンパク質性のLT阻害因子をコードする核酸、例えば、LTBR全体もしくはその一部をコードする核酸、またはそれらに対応するアンチセンス核酸を、組織、器官、または生物体の細胞に導入することができ、その結果、コードされるポリペプチドを発現させることができる。特異的なプロトコールについては、Morgan,Gene Therapy Protocols,第2版,Humana Press,2000を参照のこと。この方法論は、例えば、個体の組織および器官に対するタンパク質性のLT阻害因子の効果を評価することにおいて有用であり得る。特定の実施形態では、タンパク質性のLT阻害因子をコードする核酸は、組織特異的な発現制御配列に連結される。当業者は、特異的なポリヌクレオチド配列を、哺乳動物に全身的または局所的に注射することができる、ウイルスまたはプラスミドベクター中に挿入できることを理解している。また、宿主細胞を回収することができ、タンパク質性のLT阻害因子をコードする核酸を、そのような細胞に生体外でトランスフェクトして、その後、当該分野で公知の方法を使用して再度移植することもできる。Gene Expression Systems,Academic Press,Fernandez等編,1999に記載されているように、核酸を単細胞である胚にトランスフェクトして、トランスジェニック動物を作成することもできる。
【実施例1】
【0075】
LTBR−Igでの処置により腎機能が改善する
肝臓特異的調節配列の制御下で全長のマウスBAFFを発現するBAFFトランスジェニック(Tg)マウスを、以前に記載されたように作成した(Mackay等(1999)J.Exp.Med.190:1697)。使用した全てのマウスを、Tgの雄をC57BL/6雌に戻し交配させることによって、コロニーを発現させ続けることにより作成した。トランスジェニック状態は、テールチップから回収したDNAについてPCRを行うことによって決定した。BAFFトランスジェニックマウスは、尿中のタンパク質濃度を記録することによって評価すると、6ヶ月齢およびそれ以降に狼瘡のような症状を発症しはじめた。
【0076】
LTBR−IgがBAFFトランスジェニックマウスの処置において有効であるかどうかを評価するために、1+/2+またはそれよりも高いタンパク尿(PU)スコアを示す6ヶ月齢またはそれ以上の動物を、5週間の処置レジュメに登録するために選択した。BAFF Tgマウスと、トランスジェニックではない(Tg neg.)同腹子の対照に、100μgのLTBR−Igまたは100μgのヒトIgG(huIgG)(Sandoz,Basel,Switzerland)の腹腔内(i.p.)注射を、5週間にわたって1週間に1回投与した。最後の注射の4日後にマウスを安楽死させ、組織分析のために腎臓を採取した。
【0077】
4回の別々の実験において、LTBR−Igでの処置により、5週間の処置期間の後のタンパク尿スコアが明らかに低下した(処置前のPUレベル対処置後のPUレベル、P<0.0004、n=26)。しかし、対照である対応するタンパク質での処置によっては、腎機能の改善はできなかった(P=0.8、n=23)(図1A)。トランス遺伝子を含まない同腹子から記録したPUスコアは、処置期間全体にわたって穏やかに変化したが、スコアは処置レジュメ全体について+1(疾患ではない)を下回ったままであり、したがってPUスコアにおけるこれらの機能は意味のないものであることになる(図1B)。さらに、LTBR−IgとhuIgG対照で処置したトランス遺伝子を含まない同腹子との間には観察できるほどの差はなく、したがってそれらのスコアは重ね合わさった。
【0078】
BAFFトランスジェニックモデルの特徴を別の狼瘡モデルと比較するために、SNF1マウスを、LTBR−Igで治療的または予防的のいずれかで処置した。これらの動物の糸球体腎炎(GN)は、MR1での処置により顕著に改善された。これはおそらく、GC反応に対するその効果によるものである。マウスを、そのタンパク尿スコアがおよそ+1である場合には疾患の発症前に処置し、またスコアが+3/+4に達していた場合には、マウスを治療的に処置した。いずれの場合にも、LTBR−Igでの処置によっては、タンパク尿の測定値または腎臓の病状には全く効果がなかった。これらの動物にLTBR−Igを投与した場合には、生存性においていくらかの効果があったが、これはGNの状態とは無関係である。したがって、LT経路はBAFFトランスジェニックマウスのSLE様疾患においては重要であるが、この経路は、MR1がさらに有効であるSNF1モデルにおいてはあまり重要ではないようである。
【実施例2】
【0079】
LTBR−Igでの処置により腎臓の糸球体の損傷が改善される
タンパク尿によって評価される腎機能不全には、複数の腎臓病の側面が伴う。腎炎の腎臓においては、いくつかの病状を見ることができる。糸球体は、大きくなっており過形成しているように見え、糸球体の内部にコラーゲンの沈着を見ることができる。さらに、多くの場合に、糸球体周辺に浸潤が観察され、さらに重篤な腎炎の症例では、タンパク質性の円柱に気づくことができる。
【0080】
BAFF−Tgマウスとトランスジェニックではない(Tg neg.)対照を、実施例1に記載したようにLTBR−IgまたはhuIgGで処置した。コラーゲンの沈着を評価するためのパス(PAS)染色を使用して、4回の別々の研究による腎臓を評価した。腎臓の病状における統計学的有意性(P<0.002)の低下が、huIgG対照動物と比較して、LTBR−Igでの処置によって観察された(図2G)。個々の動物についての病状の範囲は広く、LTBR−Igでの処置は全ての動物の病状を予防するものではなかった。典型的な組織化学的試料を図2A〜2Fに示す。LTBR−Igでの処置はおそらく、腎臓の病状が早くすすむことを妨げるが、開始時のPUスコアが3よりも高いマウスは、処置に対してあまり反応しないようであり、処置後には最も大きな腎臓の病変を示した(図2G、三角)。
【実施例3】
【0081】
LTBR−Igでの処置により自己抗体力価が低下する
BAFF−Tgマウスの血清Ig濃度が、トランスジェニックではない同腹子と比較して高いことが示された。図3Aに示すように、BAFF−Tgマウスを使用すると、IgM力価(7.3倍)およびIgA力価(10.6倍)の両方が顕著に増大し、IgG2a力価(2.4倍)は中程度に増大した。全IgG力価については、わずかに1.2倍の増大が見られただけであった。
【0082】
hyper−IgAマウスのLT経路の阻害がIgAレベル全体に影響があるかどうかを決定するために、自己抗体力価の試験をBAFFトランスジェニックマウスにおいて行った。5週間にわたるLTBR−Igでの処置は、IgAを含む全てのIgイソ型に対してまったく影響がなかった(図3Bおよび3C)。わずかおよそ30%のBAFFトランスジェニックが抗DNA力価の兆候を有していただけであり、これらは非常に弱かった。抗クロマチン力価は、トランスジェニックマウスの血清中にもっと確実に存在していた。LTBR−Igでの処置により、抗クロマチン力価は、5週間にわたる処置期間の間に36%低下した。しかし、IgGで処置したトランスジェニックマウスは、同じ処置期間の間に抗クロマチン力価において25%の低下を示した。
【0083】
自己抗体力価は、多数の動物モデルにおいて疾患と必ずしも関係していない。BAFFトランスジェニックマウスにおける低い抗DNA抗体力価は、観察される腎臓の病状と必ずしも一致していない。したがって、LTBR−Igでの処置が抗DNA抗体の生産をより確実に生じるシステムにおいて、これらの自己抗体の作成を加速させることができるかどうかを決定することが望まれた。プリスタンの1回の注射により、種々のバックグラウンドマウス株において抗DNA抗体が誘導されることが示されているが、作用機構は明らかではない。プリスタンを注射したマウスにおけるLTBR−Igでの処置の効果を評価した。DBA−1マウスへのプリスタンの注射の4週間後、測定できる程度の抗二本鎖(ds)DNA力価および抗一本鎖(ss)DNA力価が、これらの動物の血清中で観察された(図3D)。しかし、注射をしていないマウスは抗DNA力価を生じなかった。LTBR−Igでの処置により、抗dsDNA力価および抗ssDNA力価の誘導は完全に妨げられた。したがって、自己抗体力価がより高いシステムにおいては、これらの力価をLTBR−Ig処置によって妨げることができる。
【実施例4】
【0084】
免疫複合体はBAFFトランスジェニックマウスの腎臓中に沈着する
SLEを伴う腎臓の病状には、多くの場合に糸球体内部での免疫複合体の沈着が伴う。BAFFトランスジェニックマウスは、血液循環中に高いレベルの免疫複合体を有していることが示されている。これらのマウスはまた、糸球体内での免疫複合体の沈着の兆候も示す。
【0085】
BAFFトランスジェニックの腎臓中のIgAおよびIgG免疫複合体の存在を試験した。凍結した腎臓切片をアセトンで固定し、風乾させ、そして10%のFc Block(Pharmingen,San Diego,CA)、5%のラットの血清、および5%のBSAを含むTBS緩衝液とともにインキュベートして、非特異的結合部位をブロックした。切片をビオチン結合ラット抗マウスIgA特異的モノクローナル抗体とともに30分間インキュベートし、その後、ストレプトアビジン−488(Molecular Probes,Eugene,OR)とともに30分間インキュベートした。全てのインキュベーションを、加湿チャンバー内で室温で行った。糸球体を、UV線下で試験し、IgAの沈着が存在するかどうかについて記録した。血清IgAの力価は5週間のLTBR−Igでの処置によっては変化しなかったが、BAFFトランスジェニックマウスの糸球体中のIgA免疫複合体の状況は明らかに減少した(対照で処置したBAFFトランスジェニックと比較してP<0.01)(図4Aおよび4C)。IgG免疫複合体の沈着については、処置を用いても有意な差は検出されなかった(図4Bおよび4C)。このことは、この疾患のパラメーターの縮小が、LTBR−Igでの処置によって観察される効力には寄与していないことを示唆している。
【実施例5】
【0086】
LTBR−Igでの処置により辺縁帯B細胞が減少する
BAFFトランスジェニックマウスはT2過渡期のB細胞、MZ B細胞、成熟濾胞性B細胞、およびいくつかの場合にはB−1細胞の拡大を示す。この拡大には、脾臓の重量の増加、および細胞充実性の増大が伴う。マウスを実施例1に記載したように処置した。5週間の処置期間の後、これらのパラメーターを、LT阻害によって調節されるそれらの能力について分析した。BAFFトランスジェニックマウスの脾臓の重量は、トランス遺伝子を含まない同腹子よりも平均して1.5倍重く、LTBR−Igでの処置はこの脾腫には効果がなかった(図5A)。さらに、脾臓の細胞充実性だけではなく成熟CD23+濾胞性B細胞の数もまた、LTBR−Igでの処置によって変化せず(図5B)、同様であった(図5C)。MZ B細胞の数を、CD23−CD1hiCD21hi B細胞を数えることによって評価した。トランスジェニックではない同腹子に対してBAFFトランスジェニックの脾臓においてはおよそ4倍に増加した濾胞性B細胞のサブセットに対して、MZ B細胞の数はおよそ13倍に増大した。この非常な増加にもかかわらず、LTBR−Igでの処置により、対照での処置と比較してMZ B細胞の数は劇的に減少した(P<0.00006)(図5D)。さらに、MZ B細胞成分の減少は、抗IgMおよび抗IgDを含む脾臓切片を含むことによる、免疫組織化学的分析によっても観察された。この場合、B細胞濾胞の外側にある、IgMのみが陽性であるMZは、トランスジェニックとトランスジェニックではない同腹子の両方において、処置によって大幅に減少した(図5E)。したがって、脾腫と濾胞性B細胞成分の増加はLTBR−Igでの処置によっては変化しなかったが、MZ B細胞成分が処置に敏感であった。
【0087】
B−1細胞は、それらが応答する抗原の種類に関してMZ B細胞と多くの類似点を示し、これらは、RagまたはIL−7の発現が成体マウスにおいてオフに変換されると長期間持続することができることが示されている。B−1細胞のサブセットは自己反応性B細胞受容体を発現することができるので、LTBR−Igがこのサブセットに対して効果があるかどうか、そしてこのサブセットがBAFFトランスジェニックマウスの疾患に必要であるかどうかを決定することが目的であった。B−1サブセットは、同腹子の対照と比較して、高齢のBAFFトランスジェニックマウスにおいておよそ2〜3倍拡大していることが明らかになった。さらに、B−1aサブセットは、わずかに優先して拡大するようであった(表3にまとめる)。LTBR−Igでの処置は、これらのマウスの腹腔洗浄法によって分析したCD23−CD5+B−1a細胞の非常な増加に対しては効果がないことが明らかになった。したがって、LTBR−Igでの処置によるBAFFトランスジェニックマウスのGNの改善は、B−1a細胞の減少によっては説明することはできない。
【0088】
他のB細胞エフェクター成分もまた、処置したBAFFトランスジェニックマウスにおいて増加した(表3にまとめる)。免疫応答の後、血漿細胞は骨髄(BM)へと戻ったが、脾臓およびリンパ節では検出することができた。血漿細胞の数を、シンデカン−1についての染色によりFACSによって評価した。BAFFトランスジェニック動物においては、血漿細胞は、トランスジェニックではない同腹子と比較して、脾臓においておよそ6倍に増加した。LTBR−Igでの処置によっては脾臓の血漿細胞の数は減少しなかった−実際には、これらは数はわずかに増加した。このことはおそらく、LTBR−Igでの処置が、多くの場合に穏やかな脾腫を誘導し、これが次いでこれらの細胞のさらなる増加を生じるという事実が原因である。BAFFトランスジェニックマウスの腸間膜のリンパ節(MLN)においては、IgAを分泌する血漿細胞の非常に大きな増加(35倍)が記録された。これらは、LTBR−Igでの処置によっておよそ2倍に減少した。BMにおいて、Ig分泌細胞をELISPOT(商標)分析によって評価した。BAFFトランスジェニックマウスは、トランスジェニックではない同腹子と比較して、IgG分泌細胞の46倍の増加、およびIgA分泌細胞の5倍の増加を示した。しかし、IgG分泌細胞とIgA分泌細胞の数は、LTBR−Igでの処置によっては減少しなかった。
【0089】
最後に、SLE動物において、血漿細胞が腎臓中で観察された。おそらくこれは、この炎症した器官でのケモカインの発現が原因である。したがって、BAFFトランスジェニックマウスにおいては、有意な数のIgA分泌細胞、およびあまり有意ではない数のIgG分泌細胞が、ELISPOT(商標)によって腎臓で検出された。IgA分泌細胞は、LTBR−Igでの処置によっておよそ2倍減少した。まとめると、試験した全ての細胞のサブセットのうち、MZ B細胞だけをLTBR−Igでの処置によって明らかに調節することができたが、腎臓中およびMLN中のIgA分泌細胞は、部分的にLT制御下にある場合もあった。このことはまた、これらのエフェクター細胞の炎症組織への移動ができないことを示唆している。ケモカインの発現の破壊が、おそらくこの表現形の原因であり、SLEを処置することにおいて重要な治療上の利点を有している可能性があった。実際、CXCR3リガンドは、最近、血漿細胞の移動において重要であることが示されている。血漿細胞の移動におけるLT経路の役割と一致して、本発明者らは、CXCR3リガンドをIFN−γの存在下でのLTBRでの刺激によって誘導できることを見出した。
【0090】
【表3】

【実施例6】
【0091】
疾患状態のBAFFトランスジェニックマウスにおけるGCの役割の評価
濾胞性樹状細胞(FDC)は、マウスにおいても霊長類においてもLT経路によって厳密に調節されている。FDCはGC中に存在し、抗原を保持する能力を有しているので、この種の細胞は免疫応答の間に親和性の高いB細胞を選択することにおいて役割を果たすことができる。LT欠損動物とLTBR−Igで処置した動物での体液性応答の親和性の成熟の試験により、抗原の用量と投与経路におそらく依存する種々の結論が得られた。いずれの場合にも、LTBR−Igでの処置の結果としてのFDCネットワークの排除が、処置を用いて観察された糸球体腎炎(GN)の改善についての1つの説明である可能性がある。マウスを実施例1に記載したように処置した。処置の5週間後、BAFFトランスジェニックマウスに由来する脾臓を、GCを数えるためにPNA染色について評価した。BAFFトランスジェニックマウスは有意な数のGCを有していることが観察されたが、これらは全く免疫化されていなかった(図6A(iii))。LTBR−Igでの処置により、BAFFトランスジェニックの脾臓中のPNA陽性GCの数は一部減少した(P<0.006)(図6B)。しかし、脾臓をFDC特異的マーカーであるM−1で染色すると、LTBR−Igでの処置によるFDCネットワークにおける減少は完全であった。したがって、PNA陽性GCにおいては完全には減少しないが、FDCネットワークはLTBR−Igでの処置によって排除される。
【0092】
PNA陽性GCにおけるこの部分的な減少がBAFFトランスジェニックマウスにおいて観察された疾患の縮小と関係があるかどうかを決定するために、CD40経路を遮断する効果を評価した。CD40欠損動物はPNA陽性GCを形成することができず、T依存性免疫応答はこれらの動物においては完全に失われている。さらに、成体マウスの抗CD40リガンド抗体(MR1)での処置は、GCおよびT依存性免疫応答に対して同様の効果を有する。LTBR−Igで処置した動物と同様に、MR1での処置は脾腫に対して効果がなかった(図7A)だけではなく、増加した濾胞性B細胞成分に対しても効果がなかった(図7B)。しかし、MR1また、BAFFトランスジェニックマウスの増加したBZ B細胞成分に対しても全く効果がなかった(図7C)。MR1で処置したBAFFトランスジェニックマウスは、それらの脾臓においては、観察できる程度にはPNA陽性GCを有していなかった(対照で処置したBAFFトランスジェニックと比較してP<0.001)(図7Dおよび7E)。GCに対するこの効果にもかかわらず、MR1での処置は、タンパク尿によって測定したように、疾患状態にあるトランスジェニックマウスの腎機能を改善できなかった(図7F)だけではなく、腎臓の病状を有意に改善することもできなかった。まとめると、GC反応およびT依存性応答に対するこの十分に研究された効果にもかかわらず、CD40経路の阻害は、BAFFトランスジェニックマウスの疾患には効果がなかった。
【0093】
本明細書は、参照により本明細書中に組み込まれる、明細書中で引用された参考文献の教示に照らして最も十分に理解される。明細書中の実施形態は、本発明の実施形態の例を提供し、本発明の範囲を限定するようには解釈されるべきではない。当業者には、多くの他の実施形態が本発明に含まれることが理解される。本開示において引用された全ての刊行物および特許は、それらの全体が参照により組み込まれる。本明細書中の全ての参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明の先行技術であると自認するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、疾患状態にあるBAFFトランスジェニック(BAFF Tg)マウスのLTBR−Igでの処置により、タンパク尿(PU)スコアによって示されるように腎機能の改善が生じたことを示す。6ヶ月齢のBAFF Tgマウスとトランスジェニックではない(Tg neg.)同腹子の対照に、100μgのLTBR−Igまたは100μgのヒトIgG(huIgG)の腹腔内(i.p.)注射を、5週間にわたって1週間に1回投与した。図1Aは、処置の終了時点でのPUスコアにおける絶対的変化を示す。図1BはPUスコアにおける相対的変化を示す。
【図2】図2は、疾患状態にあるBAFF−TgマウスのLTBR−Igでの処置により、腎臓のパス(PAS)組織化学的染色によって示されるように、糸球体の病状の改善が生じたことを示す。6ヶ月齢のBAFF TgマウスとTg neg.同腹子の対照に、100μgのLTBR−Igまたは100μgのhuIgGのi.p.注射を、5週間にわたって1週間に1回投与した。組織分析のために腎臓を採取した。典型的な組試料を、図2A〜2Fに示す。糸球体の病状のスコアを図2Gに示す。
【図3】図3は、自己抗体の力価に対するLTBR−Igでの処置の効果を示す。6ヶ月齢のBAFF TgマウスとTg neg.同腹子の対照に、100μgのLTBR−Igまたは100μgのhuIgGのi.p.注射を、5週間にわたって1週間に1回投与した。血清Ig濃度を測定し、組織分析のために腎臓を採取した。図3Aは、BAFF−Tgマウスが、野生型の同腹子である対照と比較して、高い血清IgG2a、IgA、およびIgM濃度を示したことを明らかにしている。図3B〜3Cは、LTBR−Igでの処置によりBAFF Tgマウスの自己抗体力価が低下したことを示す。
【図4】図4は、BAFF−Tgマウスの腎臓での免疫複合体の沈着を示す。6ヶ月齢のBAFF TgマウスとTg neg.同腹子の対照に、100μgのLTBR−Igまたは100μgのhuIgGのi.p.注射を、5週間にわたって1週間に1回投与した。組織分析のために腎臓を採取した。典型的な組織化学的試料を図4Cに示す。BAFF−TgマウスおよびTg neg.マウスの糸球体中のIgA(図4A)およびIgG(図4B)免疫複合体の状況を記録した。
【図5】図5は、LTBR−Igでの処置により辺縁帯(MZ)B細胞が減少したことを示す。6ヶ月齢のBAFF TgマウスとTg neg.同腹子の対照に、100μgのLTBR−Igまたは100μgのhuIgGのi.p.注射を、5週間にわたって1週間に1回投与した。組織分析のために腎臓を採取した。BAFF TgマウスおよびTg neg.マウスの脾臓重量を図5Aに示す。脾臓細胞の数、成熟CD23+濾胞性B細胞の数、およびMZ B細胞の数を、それぞれ図5B、5C、および5Dに示す。典型的な組織化学的試料を図5Eに示す。
【図6】図6は、LTBR−Igでの処置によりBAFF Tgの脾臓中のPNA陽性GCの数が減少したことを示す。6ヶ月齢のBAFF TgマウスとTg neg.同腹子の対照に、100μgのLTBR−Igまたは100μgのhuIgGのi.p.注射を、5週間にわたって1週間に1回投与した。組織分析のために腎臓を採取した。典型的な組織化学的試料を図6Aに示す。LTBR−IgまたはhuIgGでの処置を行った総数に対するPNA陽性濾胞の割合を、図6Bに示す。
【図7】図7は、PNA陽性GCの部分的な減少がBAFF Tgマウスにおいて観察された疾患の縮小に関係していることを示す。6ヶ月齢のBAFF TgマウスとTg neg.同腹子の対照に、100μgの抗CD40リガンド抗体(MR1)または100μgのhuIgGのi.p.注射を、5週間にわたって1週間に1回投与した。組織分析のために腎臓を採取した。BAFF TgマウスおよびTg neg.マウスの脾臓の重量を図7Aに示す。濾胞性B細胞の数、MZ B細胞の数、および脾臓中のPNA陽性CGの割合を、それぞれ図7B、7C、および7Dに示す。典型的な組織化学的試料を図7Eに示す。腎機能は、図7Fに示すようにタンパク尿によって評価した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LT経路の阻害因子を含む組成物の有効量を哺乳動物に投与し、それによって哺乳動物を処置する工程を含む、腎臓の免疫障害を有している哺乳動物を処置する方法。
【請求項2】
前記障害が、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、関節リウマチ、インシュリン依存性糖尿病、慢性肝炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、およびIgA腎症からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記障害がIgA腎症である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記阻害因子がLTBR抗体またはLT抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記阻害因子がポリペプチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列またはその一部を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリペプチドが:
(a)配列番号1のアミノ酸配列;または
(b)少なくとも100、200、300、400、または500ヌクレオチドの長さであり、定義された条件下で(a)をコードする核酸にハイブリダイズする核酸によってコードされるアミノ酸配列であって、
前記ポリペプチドがB細胞による免疫グロブリンの分泌を阻害する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記定義された条件に、6×SSC、50mMのTris−HCl(pH7.5)、1mMのEDTA、0.02%のPVP、0.02%のFicoll、0.02%のBSA、および500μg/mlの変性サケ精子DNAを含む溶液中での65℃で8時間の前処理;65℃で48時間のハイブリダイズ;ならびに2×SSC、0.01%のPVP、0.01%のFicoll、および0.01%のBSAを含む溶液中での37℃で1時間、さらに0.1×SSCを含む溶液中での50℃で45分間の洗浄が含まれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、IgG1のFc断片またはIgG4のFc断片をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記阻害因子が、1つ以上の異種タンパク質ドメインに融合させられた可溶性LTBRを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記可溶性LTBRが、少なくとも1つのLT βサブユニットを含むリンホトキシン(LT)リガンドに選択的に結合することができるリガンド結合ドメインを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記可溶性LTBRがLT−β−Rの細胞外ドメインを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記可溶性LTBRがヒトLT−β−Rである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記異種タンパク質ドメインがヒト免疫グロブリンFcドメインを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
LT経路の阻害因子を含む組成物の有効量を被験体に投与し、それによって糸球体腎炎を処置する工程を含む、糸球体腎炎を有する被験体を処置する方法。
【請求項17】
前記糸球体腎炎が、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、関節リウマチ、インシュリン依存性糖尿病、慢性肝炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、およびIgA腎症から選択される障害に関連している、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記阻害因子が1つ以上の異種タンパク質ドメインに融合させられた可溶性LTBRを含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記阻害因子が配列番号1のアミノ酸から選択されるアミノ酸の機能的配列を含む可溶性LTBRを含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項20】
前記可溶性LTBRが、少なくとも1つのLTβサブユニットを含む表面リンホトキシン(LT)リガンドに選択的に結合することができるリガンド結合ドメインを含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項21】
前記可溶性LTBRがLT−β−Rの細胞外ドメインを含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項22】
前記可溶性LTBRがヒトLT−β−Rである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項23】
前記異種タンパク質ドメインがヒト免疫グロブリンFcドメインを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
BAFFトランスジェニック動物に化合物を投与する工程;投与後の該動物の腎臓中でのIgAの沈着の試験レベルを決定する工程;該レベルを閾値と比較する工程を含み、該閾値よりも低い試験レベルにより該化合物が有効であることが示される、IgA腎症の処置に対する化合物の効力を評価する方法。
【請求項25】
前記動物が齧歯動物である、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−504775(P2006−504775A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548618(P2004−548618)
【出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/034813
【国際公開番号】WO2004/039329
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】