説明

リン含有化合物およびそれを含むポリマー組成物

式(I):(I)(式中、m、n、R、RおよびRは、特許請求の範囲に示されたとおりである)のリン含有化合物。式(I)の化合物は、ポリマーに難燃性を与えるために使用することができる。
【化25】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、リン含有化合物、ならびに1種または複数のこれらの化合物をそのままおよび/またはポリマーに共有結合させて含む難燃性ポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
難燃特性を有するポリマー組成物は通常、難燃性添加剤をポリマー組成物と物理的にブレンドすることによって、または難燃剤をポリマー骨格に共有結合させることによってポリマー中に取り込むことによって製造される。例えば、エポキシ樹脂の場合、難燃性化合物の取込みは、エポキシ樹脂の主鎖中に、例えば、テトラブロモビスペノールAなどの化合物を取り込むことによって、またはエポキシ樹脂の架橋(硬化)のための難燃性化合物を用いることによって達成され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは今や、比較的高いリン含有率を有し、十分に確立した合成手順により容易に入手できかつ比較的安価な出発物質から調製することができ、ならびにエポキシ樹脂だけでなく種々の他のポリマー構造中に共有結合によって取り込むことができ、および/またはポリマー組成物と物理的にブレンドして、それらに難燃特性を与えることができる難燃性リン含有化合物の1つのクラスを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明では、式(I):
【化1】

[式中、
m=0、1、2、または3;
n=1、2、3または4、但し、(m+n)は、4以下であることを条件とし;
部分Rは、場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、およびアルカリル基、−NO、−OR、−COR、−CN、ハロゲン、ならびに−N(Rから独立して選択され、隣接する炭素原子上の2つの部分Rは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、場合によって不飽和の、場合によって置換された5員から8員の環を形成し得;
部分Rは、H、場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、およびアルカリル基、グリシジル、−COR、ならびに−CNから独立して選択され;
部分Rは、H、場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、およびアルカリル基、−OH、−OR、ならびに−N(Rから独立して選択され;
部分Rは、場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、およびアルカリル基から独立して選択され;
部分Rは、H、ならびに場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、およびアルカリル基から独立して選択され;
部分Rは、H、場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、およびアルカリル基から独立して選択され、2つの部分Rは一緒になって、式−(CR−(式中、p=2、3、4、または5、RおよびRは、Hおよび場合によって置換されたアルキル基から独立して選択される)の二価の基を形成し得、式(I)中の部分
【化2】

の少なくとも1つは、式(II):
【化3】

(式中、m、RおよびRは、上に示された意味を有し、さらに部分Rの1つは式(II)の部分を表し得る)
の部分を表し得る]
のリン含有化合物が提供される。
【0005】
一態様において、本発明の化合物は、式(I)
[式中、
m=0、1、または2;
n=1または2;
部分Rは、場合によって置換されたアルキルおよびアルケニル基、ならびに−ORから独立して選択され、隣接する炭素原子上の2つの部分Rは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、場合によって置換された6員の芳香族環を形成し得;
部分Rは、H、場合によって置換されたアルキルおよびアルケニル基、グリシジル、−COR、ならびに−CNから独立して選択され;
部分Rは、場合によって置換されたアルキルおよびアルケニル基から独立して選択され;
部分Rは、場合によって置換されたアルキル基から独立して選択され、2つの部分Rは一緒になって、式−(CR−(式中、p=2または3、RおよびRは、IIおよび場合によって置換されたアルキル基から独立して選択される)の二価の基を形成し得、部分
【化4】

の少なくとも1つは、式(II)(式中、m、RおよびRは上に示された意味を有する)の部分を表し得る]
の化合物であり得る。
【0006】
別の態様において、本発明の化合物は、式(I)
[式中、
m=0または1;
n=1または2;
部分Rは、場合によって置換されたアルキル基から独立して選択され;
部分Rは、H、場合によって置換されたアルキルおよびアルケニル基、グリシジル、−COR、ならびに−CNから独立して選択され;
部分Rは、場合によって置換されたアルキルおよびアルケニル基から独立して選択され;
部分Rは、場合によって置換されたアルキル基から独立して選択され、2つの部分Rは一緒になって、式−(CR−(式中、p=2または3、RおよびRは、Hおよび場合によって置換されたアルキル基から独立して選択される)の二価の基を形成し得、部分
【化5】

の少なくとも1つは、式(II)(式中、m、RおよびRは、上に示された意味を有する)の部分を表し得る]
の化合物であり得る。
【0007】
さらに別の態様において、本発明の化合物は、式(I)
[式中、
m=0;
n=1または2;
部分Rは、H、場合によって置換されたアルキルおよびアルケニル基、グリシジル、−COR、ならびに−CNから独立して選択され;
部分Rは、場合によって置換されたアルキルおよびアルケニル基から独立して選択され;
2つの部分Rは一緒になって、式−(CR−(式中、p=2または3、RおよびRは、Hおよび場合によって置換されたアルキル基から独立して選択される)の二価の基を形成し;部分
【化6】

の少なくとも1つは、式(II)(式中、m、RおよびRは、上に示された意味を有する)の部分を表し得る]
の化合物であり得る。
【0008】
なおさらなる態様において、本発明の化合物は、式(I)
[式中、
m=0;
n=1または2;
部分Rは、H、場合によって置換されたアルケニル基、グリシジル、−COR、および−CNから独立して選択され;
部分Rは、場合によって置換されたアルケニル基から独立して選択され;2つの部分Rは一緒になって、式−(CR−(式中、p=3、RおよびRは、Hおよび場合によって置換されたアルキル基から独立して選択される)の二価の基を形成し、部分
【化7】

の少なくとも1つは、式(II)(式中、m、RおよびRは、上に示された意味を有する)の部分を表し得る]
の化合物であり得る。
【0009】
別の態様において、本発明の化合物は、該化合物の全重量に基づいて、少なくとも約10重量%のリン、例えば、少なくとも約12重量%のリンを含み得る。
【0010】
別の態様において、本発明の化合物は、式(III)、式(IV)、または式(V):
【化8】

(式中、Meはメチルを表す)
の化合物であり得る。一態様において、式(III)、式(IV)、または式(V)の化合物のヒドロキシ基の少なくとも一部において、その水素原子は、グリシジル、−CN、式−CO−CR=CHRの基、および式−CH−CR=CHRの基(RおよびRは、HおよびC1〜4アルキル基から独立して選択される)から選択される基で置き換えられ得る。
【0011】
本発明では、中間体、すなわち、式(VI)および式(VII):
【化9】

の化合物を用いる、式(III)、式(IV)、または式(V)の化合物の調製方法も提供される。
【0012】
本発明では、上に示されたとおりの本発明の少なくとも1種の化合物(その様々な態様を含む)の共有結合された単位を含む難燃性ポリマーまたはオリゴマーも提供される。
【0013】
本発明では、エポキシ基と反応することができる少なくとも2個の基を含む、上に示されたとおりの本発明の化合物(その様々な態様を含む)と前反応させたエポキシ樹脂も提供される。例えば、エポキシ基と反応することができる基は、ヒドロキシ基を含み得る。
【0014】
本発明では、エポキシ樹脂および上に示されたとおりの本発明の少なくとも1種の化合物(その様々な態様を含む)ならびに/または上に示されたとおりの本発明の化合物と前反応させたエポキシ樹脂を含む硬化性組成物も提供される。
【0015】
本発明では、上に示されたとおりの本発明の化合物(その様々な態様を含む)の単位を含む架橋エポキシ樹脂も提供される。
【0016】
本発明では、(i)少なくとも2個の官能基を含む少なくとも1種の化合物と、(ii)(i)の少なくとも2個の官能基と反応することができる少なくとも2個の基を含む上に示されたとおりの本発明の少なくとも1種の化合物(その様々な態様を含む)とを含む重合性組成物も提供され、ならびにこれらの組成物から調製され得る難燃性ポリマーも提供される。
【0017】
一態様において、重合性組成物は、(i)少なくとも2個のイソシアネート(−NCO)基を含む少なくとも1種の化合物と、(ii)イソシアネート基と反応することができる少なくとも2個の基を含む上に示されたとおりの本発明の少なくとも1種の化合物(その様々な態様を含む)とを含み得る。
【0018】
別の態様において、この組成物は、(i)少なくとも1個のエチレン性不飽和部分を含む上に示されたとおりの本発明の少なくとも1種の化合物(その様々な態様を含む)と、(ii)少なくとも1個のエチレン性不飽和部分を含み、かつ(i)と異なる少なくとも1種の化合物とを含み得る。
【0019】
さらに別の態様において、この組成物は、(i)少なくとも2個のシアネート(−OCN)基を含む上に示されたとおりの本発明の少なくとも1種の化合物(その様々な態様を含む)と、(ii)シアネート基と反応することができる少なくとも2個の基を含む少なくとも1種の化合物とを含み得る。
【0020】
なおさらなる態様において、この組成物は、(i)少なくとも2個のエポキシ基(例えば、グリシジル基の形態の)を含む上に示されたとおりの本発明の少なくとも1種の化合物(その様々な態様を含む)と、(ii)エポキシ基と反応することができる少なくとも2個の基を含む少なくとも1種の化合物とを含み得る。
【0021】
別の態様において、この組成物は、(i)相補的な基とエステル結合(−CO−O−)を形成することができる少なくとも2個の基を含む上に示されたとおりの本発明の少なくとも1種の化合物(その様々な態様を含む)と、(ii)相補的な基とエステル結合を形成することができる少なくとも2個の基を含み、かつ(i)と異なる少なくとも1種の化合物とを含み得る。
【0022】
本発明では、ポリマー組成物の難燃性を改善する方法も提供される。この方法は、この組成物中に、上に示されたとおりの本発明の少なくとも1種の化合物(その様々な態様を含む)を、そのままおよび/またはポリマー中に共有結合させて/取り込ませて、取り込む段階を含む。
【0023】
この方法の一態様において、このポリマーは、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイソシアネート、および1種または複数のエチレン性不飽和モノマーから調製されるポリマーの少なくとも1種を含み得る。
【0024】
さらに、本明細書で開示される実施形態は、電気積層品に有用な硬化性組成物の調製およびスクリーニング、ならびにこのような組成物の調製およびスクリーニングのための溶媒を用いない処理に関する。
【0025】
本発明の他の特徴および利点は、以下の本発明の説明で示され、その説明から部分的に明らかであるか、または本発明の実施によって知ることができる。本発明は、この明細書および特許請求の範囲に特に指摘される組成物、生成物、および方法によって理解および達成される。
【0026】
本発明は、本発明の例示的な実施形態の非限定的な実施例によって図面を参照して、以下の詳細な説明でさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1〜3は、本発明の3種の化合物、すなわち、以下の実施例で記載されるとおりの式(III)、式(IV)および式(VII)の化合物と反応させたエポキシ樹脂のDSCサーモグラムである。縦軸を熱流(Heat Flow)、横軸を温度(Temperature)とする。
【発明を実施するための形態】
【0028】
特に断らない限り、化合物または成分への言及は、化合物または成分をそれ自体で、ならびに化合物の混合物などの他の化合物または成分と組み合わせて含む。
【0029】
本明細書で用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が別に明らかに示さない限り、複数形の言及を含む。
【0030】
別に示される場合を除いて、本明細書および特許請求の範囲で用いられる成分、反応条件などの量を表す数すべては、「約」という用語によってすべての場合に修飾されていると理解されるべきである。したがって、別に示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲で示される数値パラメータは、本発明によって得られるべく追求される所望の特性に依存して変わり得る近似値である。最低限でも、および特許請求の範囲に対する均等の原則の適用を制限する試みと考えられるべきでなく、各数値パラメータは、有効数字および通常の四捨五入の慣例に照らして解釈されるべきである。
【0031】
さらに、本明細書内の数値範囲の列挙は、その範囲内の数値および範囲のすべての開示であると考えられる。例えば、範囲が約1から約50である場合、例えば、1、7、34、46.1、23.7、またはその範囲内の任意の他の値もしくは範囲を含むと考えられる。
【0032】
本明細書で示される事項は、ほんの一例であるとともに、単に本発明の実施形態の例証的な検討のためであり、本発明の原理および概念的側面の最も有用で、容易に理解される説明であると考えられることを提供するために提示される。この点で、本発明の基本的な理解に必要であるより詳細に本発明の実施形態を示す試みはなされておらず、その説明は、本発明のいくつかの様式が実際にはどのように具体化され得るかを当業者に明らかにするものである。
【0033】
上に示されたように、本発明では、とりわけ、式(I):
【化10】

のリン含有化合物が提供される。
【0034】
上の式(I)中のmの値は、0、1、2、または3であり得、好ましくは0、1、または2である。例えば、mの値は1であり得、またはmの値は0であり得る(すなわち、ベンゼン環上に存在する基Rが1個のみであるかまたはない)。
【0035】
上の式(I)中のnの値は、1、2、3または4であり得、好ましくは1または2である。例えば、nの値は1であり得る。いずれにせよ、合計(m+n)は、4より大きいことはあり得ず、しばしば3以下、例えば、2以下である。
【0036】
上の式(I)中の部分Rは、場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、およびアルカリル基、−NO、−OR、−COR、−CN、ハロゲン、ならびに−N(Rから選択される。m=2または3の場合、部分Rは、同じかまたは異なっていてもよいが、それらは好ましくは同一である。さらに、m=2または3の場合、隣接する炭素原子上の2つの部分Rは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、場合によって不飽和の、場合によって置換された5員から8員の環を形成し得る。
【0037】
部分Rとしての場合によって置換されたアルキル基の非限定的な例には、1から約18個の炭素原子、例えば、1から約12個の炭素原子、1から約6個の炭素原子、または1から約4個の炭素原子を有する直鎖および分岐のアルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、およびn−ドデシルなどが含まれる。メチルおよびエチルは、アルキル基Rの好ましい例である。これらのアルキル基上に場合によって存在し得る1個または複数(例えば、1、2、3または4個)の置換基の非限定的な例には、ヒドロキシ、C1−4アルコキシ(例えば、メトキシまたはエトキシ)、アミノ(−NH)、モノ(C1−4アルキル)アミノおよびジ(C1−14アルキル)アミノ基、ならびにハロゲン(例えば、F、ClおよびBr)が含まれる。2個以上の置換基が存在する場合、それらは同じかまたは異なっていてもよい。
【0038】
部分Rとして場合によって置換されたシクロアルキル基の非限定的な例には、約5から約8個の炭素原子、例えば、5、6または7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、例えば、シクロペンチルおよびシクロヘキシルなどが含まれる。これらのシクロアルキル基上に場合によって存在し得る1個または複数(例えば、1、2、3または4個)の置換基の非限定的な例には、アルキル(例えば、上に示されたとおりの場合によって置換されたアルキル基)、ヒドロキシ、C1−4アルコキシ(例えば、メトキシまたはエトキシ)、アミノ、モノ(C1−4アルキル)アミノおよびジ(C1−14アルキル)アミノ基、およびハロゲン(例えば、F、ClおよびBr)が含まれる。2個以上の置換基が存在する場合、それらは同じかまたは異なっていてもよい。
【0039】
部分Rとしての場合によって置換されたアルケニル基の非限定的な例には、2から約18個の炭素原子、例えば、2から約12個の炭素原子、約3から約6個の炭素原子を有する直鎖および分岐のアルケニル基が含まれる。これらのアルケニル基は、1個または複数のエチレン性不飽和単位、例えば、1または2個のエチレン性不飽和単位を含み得る。部分Rとしてのアルケニル基の非限定的な具体例には、ビニル、アリル(2−プロペニル)、1−プロペニル、メタリルおよび2−ブテニルが含まれる。これらのアルケニル基上に場合によって存在し得る1個または複数(例えば、1、2、3または4個)の置換基の非限定的な例には、ヒドロキシ、C1−14アルコキシ(例えば、メトキシまたはエトキシ)、アミノ、モノ(C1−14アルキル)アミノおよびジ(C1−4アルキル)アミノ基、ならびにハロゲン(例えば、F、ClおよびBr)が含まれる。2個以上の置換基が存在する場合、それらは同じかまたは異なっていてもよい。
【0040】
部分Rとしての場合によって置換されたシクロアルケニル基の非限定的な例には、約5から約8個の炭素原子、例えば、5、6または7個の炭素原子を有するシクロアルケニル基、例えば、シクロペンテニルおよびシクロヘキセニルなどが含まれる。シクロアルケニル基は、1個または複数のエチレン性不飽和単位、例えば1または2個のエチレン性不飽和単位を含んでもよい。これらのシクロアルケニル基上に場合によって存在し得る1個または複数(例えば、1、2、3または4個)の置換基の非限定的な例には、アルキル(例えば、上に示された場合によって置換されたアルキル基)、アルケニル(例えば、上に示された場合によって置換されたアルケニル基)、ヒドロキシ、C1−4アルコキシ(例えば、メトキシまたはエトキシ)、アミノ、モノ(C1−4アルキル)アミノおよびジ(C1−4アルキル)アミノ基ハロゲン(例えば、F、ClおよびBr)が含まれる。2個以上の置換基が存在する場合、それらは同じかまたは異なっていてもよい。
【0041】
部分Rとしてのアリール基の非限定的な例には、6から約18個の炭素原子、例えば、約6から約12個の炭素原子を有する直鎖および分岐のアリール基、例えば、フェニルおよびナフチルなどが含まれる。これらのアリール基上に場合によって存在し得る1個または複数(例えば、1、2、3、4または5個)の置換基の非限定的な例には、ハロゲン(例えば、F、ClおよびBr)、ヒドロキシ、C1−4アルコキシ(例えば、メトキシまたはエトキシ)、およびアミノ、モノ(C1−4アルキル)アミノおよびジ(C1−4アルキル)アミノ基が含まれる。2個以上の置換基が存在する場合、それらは同じかまたは異なっていてもよい。
【0042】
部分Rとしての場合によって置換されたアラルキル基の非限定的な例には、7から約18個の炭素原子、例えば、7から約12個の炭素原子を有するアラルキル基、例えば、ベンジル、フェネチルおよびナフチルメチルなどが含まれる。これらのアラルキル基上(そのアルキル部分、アリール部分、または両方の上)に場合によって存在し得る1個または複数(例えば、1、2、3、4または5個)の置換基の非限定的な例には、ヒドロキシ、C1−4アルコキシ(例えば、メトキシまたはエトキシ)、アミノ、モノ(C1−4アルキル)アミノおよびジ(C1−4アルキル)アミノ基、ならびにハロゲン(例えば、F、ClおよびBr)が含まれる。アラルキル基のアリール部分の置換基のさらなる例には、場合によって置換されたアルキルおよびアルケニル基、例えば、上に示されたものなどが含まれる。2個以上の置換基が存在する場合、それらは同じかまたは異なっていてもよい。
【0043】
部分Rとしてのアルカリル基の非限定的な例には、7から約18個の炭素原子、例えば、7から約12個の炭素原子を有するアルカリル基、例えば、トリル、キシリルおよびエチルフェニルなどが含まれる。これらのアルカリル基上(そのアルキル部分、アリール部分、または両方の上)に場合によって存在し得る1個または複数(例えば、1、2、3、4または5個)の置換基の非限定的な例には、ヒドロキシ、C1−4アルコキシ(例えば、メトキシまたはエトキシ)、およびアミノ、モノ(C1−4アルキル)アミノおよびジ(C1−4アルキル)アミノ基、ならびにハロゲン(例えば、F、ClおよびBr)が含まれる。アルカリル基のアリール部分の置換基のさらなる例には、場合によって置換されたアルケニル基、例えば、上に示されたものなどが含まれる。2個以上の置換基が存在する場合、それらは同じかまたは異なっていてもよい。
【0044】
2つの部分Rが隣接する炭素原子上に存在する場合、それらは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、場合によって置換された、飽和または不飽和の5員から8員の環を形成し得る。好ましくは、この環は、6員、さらにより好ましくは、ナフチル基を生じる芳香族である。2つの部分Rによって形成される環は、1個または複数(例えば、1、2、3または4個)の置換基で場合によって置換されていてもよい。それらの非限定的な例には、アルキル(例えば、上に示された例示的なアルキル基)、アルケニル基(例えば、上に示された例示的なアルケニル基)、ハロゲン(例えば、F、ClおよびBr)、ヒドロキシ、C1−4アルコキシ(例えば、メトキシまたはエトキシ)、ならびにアミノ、モノ(C1−4アルキル)アミノ、およびジ(C1−4アルキル)アミノ基が含まれる。2個以上の置換基が存在する場合、それらは同じかまたは異なっていてもよい。
【0045】
部分Rが−CORを表す場合、部分Rは、H、場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、およびアルカリル基、−OH、−OR、ならびに−N(Rから選択され得る。場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、およびアルカリル基の非限定的な例には、Rの意味に関して上に示されているものが含まれる。好ましいRの意味は、場合によって置換されたアルキル(例えば、メチルおよびエチル)、場合によって置換されたアルケニル(例えば、ビニル、プロペン−2−イル、1−プロペニルおよび2−プロペニル)および−ORである。
【0046】
が−ORを表す場合、Rは、場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、およびアルカリル基から選択され得る。場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、およびアルカリル基の非限定的な例には、Rの意味に関して上に示されているものが含まれる。好ましいRの意味は、場合によって置換されたアルキル(例えば、メチルおよびエチル)および場合によって置換されたアルケニル(例えば、ビニル、プロペン−2−イルおよび1−プロペニル)である。
【0047】
が−N(Rを表す場合、部分Rは、同じかまたは異なっていてもよく、H、および場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、およびアルカリル基から選択される。場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、およびアルカリル基の非限定的な例には、Rの意味に関して上に示されているものが含まれる。好ましいRの意味は、Hおよび場合によって置換されたアルキル(例えば、メチルおよびエチル)である。
【0048】
がハロゲンを表す場合、その例には、F、ClおよびBrが含まれる。2個以上のハロゲン原子が存在する場合、それらは同じかまたは異なっていてもよいが、好ましくは同一である。一実施形態において、1つまたは複数の部分Rは、仮にも存在する場合、式(I)の化合物は好ましくはハロゲンを含まないので、ハロゲン原子と異なる。
【0049】
存在する場合、好ましい部分Rは、アルキル、アルケニル、−OR、および−COR、特にアルキルおよび−ORである。
【0050】
上の式(I)中の部分Rは、H、場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、およびアルカリル基、グリシジル、−COR、ならびに−CNから独立して選択される。場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、およびアルカリル基の非限定的な例には、Rの意味に関して上に示されているものが含まれる。基−CORの例示的で好ましい意味には、Rの意味に関して上に示されているものが含まれる。好ましい部分Rの意味は、H、場合によって置換されたアルキル、場合によって置換されたアルケニル、グリシジル、−CNおよび−COR(ここで、Rは、場合によって置換されたアルキルまたは場合によって置換されたアルケニルを表す)である。特に好ましいRの意味はHである。また、基Rは好ましくは同一である。この点で、3個以上の基−ORがベンゼン環上に存在し得る、すなわち、1個または複数の部分Rが存在し、少なくとも1つの部分Rが−ORを表すことが理解されるべきである。
【0051】
上の式(I)中の部分Rは、H、場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキルおよびアルカリル基から選択される。場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、およびアルカリル基の非限定的な例には、Rの意味に関して上に示されているものが含まれる。部分Rは、同じかまたは異なっていてもよく、好ましくは同一である。好ましいRの意味は、1から約4個の炭素原子を有する場合によって置換されたアルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピルおよびイソプロピルなどである。
【0052】
2つの部分Rは一緒になって、式−(CR−(式中、p=2、3、4、または5、RおよびRは、IIおよび場合によって置換されたアルキル基から選択される)の二価の基をさらに形成し得る。場合によって置換されたアルキル基の非限定的な例には、Rの意味に関して上に示されているものが含まれる。同じ炭素原子上に存在する場合、部分RおよびRは、同じかまたは異なっていてもよい。また、各単位−(CR)−において、RおよびRの意味は、同じかまたは別の単位−(CR)−におけるRおよびRの意味と異なっていてもよい。好ましいRおよびRの意味は、水素、および1から約4個の炭素原子を有するアルキル基、例えば、メチル、およびエチルなど、特にメチルである。pの値は、好ましくは2または3、最も好ましくは3である。また、式−(CR−の二価の基における炭素原子の数は、好ましくは約8以下、例えば、約7以下、約6以下、約5以下である。式−(CR−の単位の非限定的な具体例には、(−CH−)、(−CH−)、(−CH−)、−CH−CH(CH)−CH−、−CH−C(CH)−CH−、−CH−CH(C)−CH−、−CH−C(CH)(C)−CH−、および−CH−C(C−CH−が含まれる。
【0053】
さらに、式(I)中の部分
【化11】

(この部分は、nが、2、3または4に等しい場合、同じかまたは異なっていてもよいが、好ましくは同一である)の少なくとも1つ(および好ましくは2以下)は、式(II):
【化12】

の部分を表し得る。
【0054】
式(II)において、m、RおよびRの意味は、上に示されている式(I)中のRおよびRの意味(例示的および好ましい意味を含む)と同じである。さらに、式(II)中の部分Rの1つは、式(II)の部分を表し得る。言い換えれば、式(I)の対応する化合物は、存在する式(II)の各部分について、例えば、合計最大約10、例えば、最大約8、最大約6、最大約4、最大約3、または約2の式(II)の部分を含み得るオリゴマー(または種々のオリゴマーの混合物)であり得る。
【0055】
式(I)の化合物は、よく確立されており、かつ当業者によく知られている方法によって調製され得る。例えば、式(I)(式中、Rは水素を表す)の化合物は、非プロトン有機溶媒、例えば、トルエン中無機または有機酸、例えば、塩酸、ギ酸または酢酸などの存在下で、式HPO(OR)の化合物と場合によって置換されたp−ベンゾキノンとの混合物を反応させる(加熱する)ことによって調製され得る。例示的な手順は、以下の実施例2および実施例4に示される。順次に、式HPO(OR)の化合物は、トルエンなどの有機溶媒中三価のリン化合物、例えば、三ハロゲン化リン(PClなど)を1種または複数のアルコール(またはジオール)と反応させる(加熱する)ことによって調製され得る。例示的な手順は、以下の実施例1および実施例3に示される。
【0056】
式(I)(式中、Rは水素を表す)の化合物は、多種多様の式(I)の他の化合物、例えば、式(I)(式中、部分Rの一方または両方は水素と異なる)の化合物に変換され得る。非限定的な例によって、フェノールヒドロキシ基は、エピクロロヒドリンなどのエピハロヒドリンと反応させて、式(I)(式中、一方または両方の基Rがグリシジルを表す)の化合物を得ることができる。
【0057】
さらに、フェノールヒドロキシ基は、例えば、カルボン酸、対応するカルボン酸無水物または対応するカルボン酸ハロゲン化物でエステル化させて、式(I)(式中、Rは−CORを表す)の化合物を得ることができる。カルボン酸の非限定的な例には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸およびマレイン酸(後者の場合、式(I)の2つ単位は、マレイン酸架橋によって連結され得る)が含まれる。
【0058】
なおさらに、式(I)(式中、一方または両方の基Rは水素を表す)の化合物のフェノールヒドロキシ基は、アルコールもしくはジオールまたはそれらの適当な誘導体とエーテル化させて、式(I)(式中、一方または両方の部分Rは、場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、またはアルカリル基を表す)の化合物を調製し得る。
【0059】
非限定的な例によって、式(I)の(ビス)フェノールのアリル化は、例えば、アリルメチルカーボネートを用いるカーボネート交換反応か、または例えば、ハロゲン化アリル、ハロゲン化メタリルなどに加えてアルカリ剤および任意選択の触媒(相間移動触媒など)を用いる直接アリル化反応を介して行われ得る。アリルメチルカーボネートは通常、アリルアルコールとジメチルカーボネートの反応から調製されて、アリルメチルカーボネートとジアリルカーボネートの混合物を得る。この粗製混合物および純粋アリルメチルカーボネートの両方は、アリル化剤ならびにハロゲン化アリル、例えば、塩化アリル、臭化アリル、塩化メタリル、臭化メタリルなどとして用いることができる。
【0060】
好ましい方法では、アリルメチルカーボネートが式(I)のビスフェノールと化学量論的に反応させるカーボネート交換反応が用いられ、ビスフェノールのヒドロキシ基の本質的に全アルキル化が与えられて、対応するアリルエーテル(アリルオキシ)基を得る。直接アリル化反応では、ハロゲン化アリルは、ビスフェノールのヒドロキシ基と化学量論的に反応させ得る。反応条件に依存して、可変量のクライゼン転位生成物をこの反応で認めることができ、O−とC−アリル化生成物の混合物を生じる。
【0061】
式(I)の(ビス)フェノールと塩化アリルなどのハロゲン化アリルとの直接アリル化反応は、例えば、アルカリ金属水酸化物(例えば、NaOH)の水溶液などのアルカリ剤の存在下で行われ得る。必要に応じて、不活性溶媒(例えば、1,4−ジオキサンなど)および相間移動触媒(例えば、ハロゲン化ベンジルトリアルキルアンモニウムまたはハロゲン化テトラアルキルアンモニウムなど)を用いることができる。約25℃から約150℃の反応温度が実施可能であり、約50℃から約100℃の温度が好ましい。
【0062】
式(I)(式中、部分Rの一方または両方は水素を表す)の化合物は、シアネート化合物、例えば、式(I)(式中、部分Rの一方または両方は−CNを表す)の化合物にさらに変換され得る。例えば、式(I)のシアネートは、式(I)の(ビス)フェノールとハロゲン化シアンの反応によって調製され得る。非限定的な例によって、(ジ)シアネート化合物は、フェノールヒドロキシ基当たりほぼ化学量論的量またはわずかに化学量論的に過剰(最大約20パーセント過剰)の塩基化合物の存在下および適当な溶媒の存在下で、式(I)のビスフェノールをフェノールヒドロキシ基当たりほぼ化学量論的量またはわずかに化学量論的に過剰(最大約20パーセント過剰)のハロゲン化シアンと反応させることによって調製され得る。通常、約−40℃から約60℃の反応温度が用いられ、約−15℃から約10℃の反応温度が好ましく、約−10℃から約0℃の反応温度が特に好ましい。適当なハロゲン化シアンの非限定的な例には、塩化シアンおよび臭化シアンが含まれる。代わりに、その全開示が参照により本明細書に明示的に組み込まれる、John Wiley and Sonにより刊行されたOrganic Synthesis、第61巻、35〜68頁(1983年)に記載された方法を用いて、シアン化ナトリウムとハロゲン(塩素または臭素など)とからインサイチューでハロゲン化シアンを生成させることができる。上の方法における使用のための適当な塩基化合物の非限定的な例には、無機塩基および第三級アミンの両方、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、およびそれらの混合物が含まれる。トリエチエルアミンが塩基として最も好ましい。シアン化反応のための適当な溶媒の非限定的な例には、水、脂肪族ケトン、塩素化炭化水素、脂肪族および脂環式のエーテルおよびジエーテル、芳香族炭化水素、ならびにそれらの混合物が含まれる。アセトン、メチルエチルケトン、塩化メチレン、およびクロロホルムが、溶媒として特に好ましい。
【0063】
当然、式(I)の化合物の可能な反応は、フェノールヒドロキシ基OR(ここで、Rは水素を表す)の変換に限定されない。水素と異なる部分Rは、同様に他の部分Rに変換され得る。追加的にまたは代わりに、芳香族環は、置換されて、式(I)(ここで、mは0と異なる)の化合物を与え得る。さらに、置換反応後に存在する部分Rは、所望の部分Rに変換され得る。例えば、部分Rがヒドロキシ基を表す場合、ヒドロキシ基は、例えば、部分ORに関して上に示されたものと同じ手順で変換され得る。また、1つまたは複数の部分Rは、p−ベンゾキノン(または他の)出発物質上に既に存在し得る。例えば、場合によって置換された1,4−ナフトキノンまたは置換p−ベンゾキノンは、非置換p−ベンゾキノンの代わりに出発物質として用いることができる。
【0064】
式(I)の化合物は、いくつかの方法で種々の有機ポリマーに難燃性を付与するために用いることができる。例えば、式(I)の化合物は、有機ポリマーの主鎖または側鎖に取り込むことができ、および/または有機ポリマーのための架橋剤として用いることができる。さらに、それらはそのままでポリマー組成物に(それと物理的にブレンドして)添加する、すなわち、難燃性添加剤として機能することもできる。当然、それらは、難燃性添加剤として用いることも、および場合によって架橋された有機ポリマーの構造中に取り込むこともできる。この点で、本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる「ポリマー」という用語は、それらの重合度およびそれらが製造された方法(例えば、フリーラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、重縮合などによる)に係わらず、すべての種類のポリマーおよびオリゴマー物質を含むことが意図されることが指摘される。
【0065】
有利に用いられる式(I)の化合物(複数可)の量は、例えば、式(I)の化合物(複数可)のリン含有率(式(I)の化合物は、好ましくは、該化合物の全重量に基づいて重量で少なくとも約10%、例えば、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、またはさらに少なくとも約15%のリン含有量を有する)、ポリマー組成物およびそれから製造される製品に付与されるべき難燃性の程度などのいくつかの因子に依存する。例えば、UL94V−0等級(アメリカ保険業者安全試験所)は通常、存在する有機固体の全重量に基づいて、重量で約1%から約5%のリン含有率で達成される。
【0066】
式(I)の化合物が共有結合によってポリマー中に取り込まれる場合、それらは、そのポリマーの調製に用いられるモノマー出発物質の1つとして用いることができる。非限定的な例によって、難燃性ポリウレタン、ポリエステルまたはポリカーボネートが製造される場合、式(I)(式中、Rは水素である)の化合物は、ジオールおよび/またはポリオール出発物質の少なくとも一部として用いることができる。エチレン性不飽和化合物が製造される場合(例えば、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンなど、またはスチレンホモもしくはコポリマー、例えば、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン(HIPS)、ABSまたはSANなど)、式(I)(式中、Rは、例えば、アリルもしくはメタリルなどのアルケニル基を表す)の化合物および/または式(I)[式中、Rは−COR(ここで、Rはアルケニル基、例えば、ビニルもしくはプロペン−2−イルなどを表す)を表す]の化合物は、モノマー出発物質の一部を形成し得る。当然、例えば、ポリカーボネート/ABSまたはポリプロピレンオキシド/HIPSなどの種々のポリマーのブレンドも、この方法で難燃性にさせ得る。また、式(I)(式中、部分Rの1つまたは複数は、重合反応に関与するために適当である官能基を含む)の化合物も同様に用いることができる。
【0067】
式(I)の化合物由来の単位を含むポリマーおよびポリマー組成物は、式(I)の化合物の単位を含まない対応するポリマーを用いることができるすべての用途、例えば、(モールド)品、繊維、フォーム、コーティングなどの製造に、ならびにまた電子機器および半導体の分野で、例えば、電気用積層板の製造に(特にエポキシ樹脂の場合)用いることができる。
【0068】
エポキシ樹脂の場合、式(I)の化合物は、エポキシ樹脂の少なくとも一部(例えば、式(I)中Rがグリシジルを表す場合)および/またはエポキシ樹脂のための架橋剤の少なくとも一部[例えば、式(I)中Rが水素を表し、および/または式(I)の化合物が、エポキシ基と反応することができる少なくとも2個の官能基(例えば、その基が、例えば、部分Rおよび/またはRとして(またはその一部として)存在し得る酸基、アミノ基、酸無水物基、ホスファートおよびホスフィナートから選択される基など)を含む場合]として用いることができる。式(I)の化合物はしばしば、エポキシ樹脂のための架橋剤として、好ましくは1種または複数のさらなる架橋剤(例えば、エポキシ樹脂の架橋に適当であると知られているもの、例えば、ジシアンジアミド、置換グアニジン、フェノール系化合物、アミノ化合物、ベンゾキサジン、カルボン酸無水物、アミドアミン、およびポリマミドなど)と組み合わせて用いることができる。この点で、式(I)の化合物は、架橋剤としてそのまま、および/または前反応形態で、例えば、エポキシ樹脂と前反応させて用いることができる。(これは、他のポリマー、例えば、ポリウレタン、ポリエステルなどの製造に用いられる式(I)の化合物にも適用される)。
【0069】
式(I)の化合物が架橋剤として機能し得るエポキシ樹脂の非限定的な例には、ジまたは多官能エポキシ樹脂、およびそれらの組合せが含まれる。ポリマーエポキシ樹脂は、脂肪族、脂環式、芳香族、またはヘテロ環式エポキシ樹脂であり得る。ポリマーエポキシ樹脂には、末端エポキシ基を有する線状ポリマー(例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、ポリマー骨格オキシラン単位(例えば、ポリブタジエンポリエポキシド)およびペンダントエポキシ基を有するポリマー(例えば、グリシジルメタクリレートポリマーまたはコポリマーなど)が含まれる。エポキシ樹脂は、純粋な化合物であってもよいが、一般に混合物または1分子当たり1個、2個またはそれ以上のエポキシ基を含む化合物である。一部の実施形態において、エポキシ樹脂は反応性−OH基も含み得、これは、より高温で酸無水物、有機酸、アミノ樹脂、フェノール樹脂と、またはエポキシ基(触媒される場合)と反応し、さらなる架橋をもたらし得る。
【0070】
一般に、エポキシ樹脂は、グリシド化樹脂、脂環式樹脂、エポキシ化油などであり得る。グリシド樹脂はしばしば、エピクロルヒドリンとビスフェノールAなどのビスフェノール化合物との反応生成物;CからC28アルキルグリシジルエーテル;CからC28アルキル−およびアルケニル−グリシジルエステル;CからC28アルキル−、モノ−およびポリ−フェノールグリシジルエーテル;多価フェノール(ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン(またはビスフェノールF)、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン(またはビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、およびトリス(4−ヒドロキシフィニル)メタンなど)のポリグリシジルエーテルである。
【0071】
一部の実施形態において、エポキシ樹脂には、グリシジルエーテルタイプ;グリシジルエステルタイプ;脂環式タイプ;ヘテロ環式タイプなどが含まれ得る。適当なエポキシ樹脂の非限定的な例には、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニルエポキシ樹脂、ヒドロキノンエポキシ樹脂、スチルベンエポキシ樹脂、ならびにそれらの混合物および組合せが含まれる。
【0072】
本発明の化合物によって架橋され得るエポキシ樹脂の非限定的な例には、芳香族ジアミン、芳香族モノ一級アミン、アミノフェノール、多価フェノール、多価アルコール、およびポリカルボン酸の1種または複数のグリシジル誘導体、例えば、レゾルシノールジグリシジルエーテル(1,3−ビス−(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゼン)、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(2,2−ビス(p−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)プロパン)、トリグリシジルp−アミノフェノール(4−(2,3−エポキシプロポキシ)−N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)アニリン)、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(2,2−ビス(p−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)メタン)、メタ−および/またはパラ−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル(3−(2,3−エポキシプロポキシ)N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)アニリン)、およびテトラグリシジルメチレンジアニリン(N,N,N’,N’−テトラ(2,3−エポキシプロピル)4,4’−ジアミノジフェニルメタン)、ならびに2種以上のエポキシ樹脂の混合物、芳香族アミンおよびエピクロロヒドリンに基づくポリエポキシ化合物、例えば、N,N’−ジグリシジル−アニリン;N,N’−ジメチル−N,N’−ジグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン;N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン;N−ジグリシジル−4−アミノフェニルグルシジルエーテル;およびN,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−プロピレンビス−4−アミノベンゾエートも含まれる。
【0073】
本発明による式(I)の化合物によって架橋され得るエポキシ樹脂のなおさらなる例には、多価ポリオール(エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサンジオール、グリセロール、および2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンなど)のポリグリシジルエーテル;脂肪族および芳香族ポリカルボン酸(例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テトラフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、および二量化リノール酸など)のポリグリシジルエーテル;ポリフェノール(例えば、ビス−フェノールA、ビス−フェノールF、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブタン、および1,5−ジヒドロキシナフタレンなど)のポリグリシジルエーテル;アクリレートまたはウレタン部分を有する変性エポキシ樹脂;グリシジルアミンエポキシ樹脂;ならびにノボラック樹脂が含まれる。
【0074】
本発明の化合物によって架橋され得るエポキシ樹脂のさらに他の例には、グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートと1種または複数の共重合性ビニル化合物などの、グリシドールのアクリル酸エステルのコポリマーが含まれる。このようなコポリマーの例は、スチレン/グリシジルメタクリレート、メチルメタクリレート/グリシジルアクリレートおよびメチルメタクリレート/エチルアクリレート/−グリシジルメタクリレートである。
【0075】
容易に入手できるエポキシ樹脂には、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル;The Dow Chemical Company(Midland,Michigan)製D.E.R.331、D.E.R.332およびD.E.R.334;ビニルシクロヘキセンジオキシド;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート;ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート;ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル;ポリプロピレングリコール変性脂環式エポキシ;ジペンテンジオキシド;エポキシ化ポリブタジエン;エポキシ官能性を有するシリコーン樹脂;フェノール−ホルムアルデヒドノボラックの1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(The Dow Chemical Companyから入手できるD.E.N.431およびD.E.N.438という商品名で市販されているものなど);およびレゾルシノールジグリシジルエーテルが含まれる。具体的には述べないが、The Dow Chemical Companyから入手できるD.E.R.およびD.E.Nという商品名表示の下での他のエポキシ樹脂も本発明の目的に有用である。
【0076】
本発明の式(I)の化合物で架橋され得るエポキシ樹脂のさらなる例は、例えば、それらの全開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,163,973号、同第6,887,574号、同第6,632,893号、同第6,242,083号、同第7,037,958号、同第6,572,971号、同第6,153,719号および同第5,405,688号、国際公開第2006/052727号、ならびに米国特許出願公開第2006/0293172号および同第2005/0171237号に開示されている。
【0077】
十分な難燃性を得るために、エポキシ(または他の)樹脂組成物におけるリンの濃度はしばしば、樹脂組成物中の有機固体の全重量に基づいて、重量で約0.2%から約3.5%、例えば、約1%から約3%、または約1.5%から約2.8%である。
【0078】
エポキシ樹脂の架橋のために1種もしくは複数の式(I)の化合物および/またはそれらの前反応体と組み合わせて用いることができる化合物には、この目的にとって知られているすべての化合物が含まれる。通常、これらの化合物は、エポキシ基と反応性である少なくとも2個の官能基、例えば、フェノール基、酸基、アミノ基、および酸無水物基を含む。これらの化合物はエポキシ樹脂と前反応させておいてもよい。
【0079】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、架橋剤(複数可)とエポキシ樹脂の間の反応を促進することができ、かつエポキシ樹脂の硬化を促進するための1種または複数の触媒を含み得る。
【0080】
適当な触媒物質の非限定的な例には、アミン、ホスフィン、アンモニウム、ホスホニウム、アルソニウムまたはスルホニウム部分を含む化合物が含まれる。特に好ましい触媒は、ヘテロ環式窒素含有化合物である。
【0081】
触媒は好ましくは、平均で1分子当たり約1以下の活性水素部分を含む。活性水素部分の例には、数例ではあるが挙げると、アミン基、フェノールヒドロキシル基、カルボン酸基、チオール基、アミド基、ウレタン基、およびカーボネート基に結合した水素原子が含まれる。例えば、触媒中のアミンおよびホスフィン部分は、好ましくは第三級のアミンまたはホスフィン部分であり;アンモニウムおよびホスホニウム部分は、好ましくは四級のアンモニウムおよびホスホニウム部分である。
【0082】
触媒として用いることができる好ましい第三級アミンの中に、アミン水素のすべてが適当な置換基、例えば、ヒドロカルビル基、好ましくは脂肪族、脂環式または芳香族基によって置き換えられた開鎖または環状の構造を有するモノまたはポリアミンがある。
【0083】
これらのアミンの非限定的な例には、とりわけ、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデク−7−エン(DBU)、メチルジエタノールアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン、トリシクロヘキシルアミン、ピリジンおよびキノリンが含まれる。好ましいアミンは、トリアルキル、トリシクロアルキルおよびトリアリールアミン(トリエチルアミン、トリフェニルアミン、トリ−(2,3−ジメチルシクロヘキシル)アミンなど)、およびアルキルジアルカノールアミン(メチルジエタノールアミンなど)およびトリアルカノールアミン(トリエタノールアミンなど)が含まれる。弱い第三級アミン、例えば、1M水溶液で10未満のpHを与えるアミンが特に好ましい。特に好ましい第三級アミン触媒は、ベンジルジメチルアミンおよびトリス(ジメチルアミノメチル)フェノールである。
【0084】
適当なヘテロ環式窒素含有触媒の非限定的な例には、その全開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,925,901号に記載されたものが含まれる。用いることができる好ましいヘテロ環式第二級および第三級アミンまたは窒素含有触媒には、例えば、イミダゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾリジン、イミダゾリン、オキサゾール、ピロール、チアゾール、ピリジン、ピラジン、モルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピロリジン、ピラゾール、キノキサリン、キナゾリン、フタロゾジン、キノリン、プリン、インダゾール、インドール、インドラジン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、ピロリン、インドリン、ピペリジン、ピペラジンおよびそれらの組合せが含まれる。アルキル置換イミダゾール;2,5−クロロ−4−エチルイミダゾール;およびフェニル置換イミダゾール、ならびにそれらの混合物が特に好ましい。N−メチルイミダゾール;2−メチルイミダゾール;2−エチル−4−メチルイミダゾール;1,2−ジメチルイミダゾール;および2−メチルイミダゾールがさらにより好ましい。
【0085】
本発明における使用のための触媒のさらなる非限定的な例には、ヒドラジド、変性尿素、および「潜在性触媒」[例えば、Ancamine2441、K61B(Air Productsから市販されている変性脂肪族アミン)、およびAjinomoto PN−23またはMY−24など]が含まれる。
【0086】
特に触媒がヘテロ環式窒素含有化合物である場合、ルイス酸も本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に場合によって用いることができる。ルイス酸と組み合わせて好ましく用いられるヘテロ環式窒素含有触媒の例は、それらの全開示が参照により本明細書に組み込まれる、欧州特許出願公開第A526488号、欧州特許出願公開第A0458502号、および英国特許第A9421405.3号に記載されたものである。有用であるルイス酸には、例えば、亜鉛、スズ、チタン、コバルト、マンガン、鉄、ケイ素、アルミニウム、およびホウ素のハロゲン化物、酸化物、水酸化物およびアルコキシド、例えば、ホウ素のルイス酸、およびホウ素のルイス酸の無水物、例えば、ホウ酸、メタホウ酸、場合によって置換されたボロキシン(トリメトキシボロキシンなど)、場合によって置換されたホウ素の酸化物、ホウ酸アルキル、ハロゲン化ホウ素、ハロゲン化亜鉛(塩化亜鉛など)および比較的弱い共役塩基を有する傾向がある他のルイス酸が含まれる。好ましくは、ルイス酸は、ホウ素のルイス酸、またはホウ素のルイス酸の無水物、例えば、ホウ酸、メタホウ酸、場合によって置換されたボロキシン(トリメトキシボロキシン、トリメチルボロキシンまたはトリエチルボロキシンなど)、場合によって置換されたホウ素の酸化物、またはホウ酸アルキルである。上に示されたヘテロ環式窒素含有化合物と組み合わせた場合、これらのルイス酸は硬化性エポキシ樹脂において非常に有効である。
【0087】
用いられるルイス酸の量は、好ましくはヘテロ環式窒素化合物1モル当たり少なくとも約0.1モルのルイス酸、より好ましくはヘテロ環式窒素含有化合物1モル当たり少なくとも約0.3モルのルイス酸である。ルイス酸は、好ましくは触媒1モル当たり約5モル以下、例えば、触媒1モル当たり約4モル以下、または約3モル以下のルイス酸である量で存在する。触媒の全量は通常、組成物の有機固体の全重量に基づいて、重量で約0.1%から約3%、例えば、約0.1%から約2%である。
【0088】
本発明の組成物は、1種または複数のさらなる難燃性添加剤も場合によって含むことができ、例えば、液体または固体のリン含有化合物、例えば、ポリリン酸エステル、ポリホスホン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスファゼン、側鎖にリンを含む化合物、例えば、フタル酸ジオクチル−エポキシ反応生成物など、およびDOPO(6H−ジベンズ[c,e][1,2]オキサホスホリン−6−オキシド)の付加物;窒素含有難燃剤および/または共力剤、例えば、メラミン、置換メラミン、シアヌル酸、イソシアヌル酸およびそれらの誘導体;ハロゲン化難燃剤およびハロゲン化エポキシ樹脂(特に、臭素化エポキシ樹脂);共力性リン−ハロゲン含有化学物質(synergistic phosphorus-halogen containing chemicals);有機酸の塩を含有する化合物;無機金属水和物、例えば、アルミニウム水和物およびマグネシウム水和物;ホウ素含有化合物、例えば、ホウ酸亜鉛など;アンチモン含有化合物、例えば、SbおよびSbなど;メタロセン;ならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0089】
リンを含有するさらなる難燃剤が本発明の組成物に存在する場合、そのリン含有難燃剤は一般に、樹脂組成物の全リン含有率が、有機固体の全重量に基づいて、重量で約0.2%から約5%であるような量で存在する。
【0090】
また、場合によって、無機充填剤(例えば、タルク)などの他の非難燃性添加剤を本発明の組成物中に用いることができる。
【0091】
本発明のエポキシ樹脂組成物(およびまた他のポリマー組成物)は、1種または複数の他の添加剤も場合によって含むことができ、例えば、顔料、着色剤、UV安定剤、発泡剤、核形成剤、共力剤、酸化防止剤、可塑剤、潤滑剤、湿潤および分散助剤、流動調整剤、表面調整剤、接着促進剤、離型剤、溶剤、充填剤、ガラス繊維、溶剤、反応性および非反応性熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0092】
溶剤が本発明のエポキシ(または他の)樹脂組成物中で用いられる場合(例えば、加工性の改善のために)、それには、例えば、プロピレングリコールメチルエーテル(The Dow Chemical Companyから入手できるDowanol PM(商標))、メトキシプロピルアセテート(The Dow Chemical Companyから入手できるDowanol PMA(商標))、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、メタノール、およびそれらの組合せが含まれ得る。
【0093】
本発明における使用のための充填剤の非限定的な例には、約0.5nmから約100μmの粒径範囲を有する官能性および非官能性粒子状充填剤が含まれる。それらの具体例には、シリカ、アルミナ三水和物、酸化アルミニウム、金属酸化物、カーボンナノチューブ、カーボンブラックおよびグラファイトが含まれる。
【0094】
本発明における使用のための接着促進剤の非限定的な例には、変性オルガノシラン(エポキシ化、メタクリル、アミノ、アリルなど)、アセチルアセトネート、硫黄含有分子、チタン酸塩、およびジルコン酸塩が含まれる。
【0095】
本発明における使用のための湿潤および分散助剤の非限定的な例には、変性オルガノシラン(例えば、Byk900シリーズおよびW9010など)、および変性フルオロカーボンが含まれる。
【0096】
本発明における使用のための表面調節剤の非限定的な例には、スリップ剤および光沢剤が含まれ、これらのいくつかは、ドイツ国、Byk−Chemieから入手できる。
【0097】
本発明のエポキシ樹脂組成物における使用のための熱可塑性樹脂の非限定的な例には、反応性および非反応性熱可塑性樹脂、例えば、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルイミド、ポリフタルイミド、ポリベンズイミダゾール、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、およびポリウレタンなどが含まれる。
【0098】
本発明における使用のための離型剤の非限定的な例には、ワックス、例えば、カルナバワックスなどが含まれる。
【0099】
当然、本発明の樹脂組成物は、様々な他の任意選択の添加剤を含み得る。例えば、それらは、ポリマー特性を改善するために官能性添加剤または前反応生成物を含み得る。それらの非限定的な例には、(例えば、エポキシ樹脂のための)ビスマレイミド、トリアジン、イソシアネート、イソシアヌレート、シアネートエステル、アリル基含有分子などが含まれる。
【0100】
本発明の組成物は、すべての成分を一緒に任意の順序で混合することによって生成され得る。
【0101】
本明細書で開示される実施形態は、重量で、少なくとも大部分の成分の融点未満の温度で、少なくとも1種の熱硬化性モノマーを含む該組成物の成分を粉砕および混合し、該組成物を形成することによる組成物の形成にも関する。本明細書で用いられる場合、「大部分」は、該組成物の全重量の50%超を指す。様々な実施形態において、粉砕および混合は、重量で、該組成物の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%、またはさらに100%の融点未満の温度で行われ得る。一部の成分がそれらの融点を超える温度で用いられる場合、このような成分は、粉砕によって形成された粒子を被覆し、吸着し、または別にそれらに取り込ませ得る。
【0102】
混合および粉砕は、例えば、約25℃未満の温度で行われ得る。一部の実施形態において、粉砕および混合は、約−273℃から約0℃;他の実施形態において約−200℃から約0℃;およびさらに他の実施形態において約−80℃から約0℃の範囲の温度で行われ得る。
【0103】
この方法で成分を粉砕および混合することにより、粒子の形態で成分の混合物を生じ得る。成分の融点未満の温度での粉砕および混合によって、粉砕処理によって形成される粒子は、組成物中で不均一であり得る。言い換えれば、形成される粒子は、組成物の様々な成分のそれぞれの混合物を含めて、溶剤型処理(solvent-borne process)または溶融押出処理を用いて形成されるのと同様の組成物を有することができない。成分の一部が高融点を有し、溶融時に粘性であり得るとしても、成分の適切な混合は硬化過程で行われ、完全な網状構造の形成が可能になることが見出された。例えば、本明細書で開示された実施形態により製造された組成物のガラス転移温度と溶剤型処理により形成されたものとの比較によって決定して、このような組成物について完全な硬化が認められた。
【0104】
組成物およびそれらの得られた熱硬化性樹脂は、上に記載されたとおりにかつ重量で、成分の少なくとも大部分の融点未満の温度で硬化性組成物の成分を粉砕および混合することを含めて、本明細書で開示される実施形態に従って硬化性組成物を形成することによってスクリーニングすることができる。
【0105】
本明細書で開示された処理を用いて、従来の溶剤型処理で用いられた溶剤にあまり溶解しないものを含む成分を硬化性組成物中に容易に取り込ませることができる。
【0106】
本発明の組成物は、例えば、引抜成形、成形(molding)、カプセル化、またはコーティングなどによる当該産業で周知の技術によって複合材料を製造するために用いることができる。特に、本発明のエポキシ樹脂組成物は、当該産業で周知の技術によってB段階プリプレグおよび積層体を製造するために特に有用である。
【0107】
本発明の重合性または硬化性組成物は、このような樹脂組成物が用いられるいずれの用途にも用いることができる。例えば、エポキシ樹脂組成物は、接着剤、シーラント、構造用および電気用積層体、コーティング、キャスティング、航空宇宙産業用構造体として、電子産業用の回路板などとして有用であり得る。本明細書で開示される組成物は、とりわけ、電気用ワニス、カプセル材料、半導体、一般型用粉末、フィラメント巻線管、貯蔵タンク、ポンプ用ライナー、および耐食性コーティングにも用いることができる。
【0108】
一部の実施形態において、本明細書で記載される硬化性エポキシ樹脂組成物は、そのまま硬化させ得る。他の実施形態において、組成物は、硬化性エポキシ樹脂組成物を強化材に塗布することによって、例えば、強化材を含浸させまたはコーティングし、次いで、強化材と一緒に硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させることによって形成され得る。
【0109】
特に、エポキシ樹脂の架橋のために用いられる場合、本発明の化合物は、とりわけ、集積回路パッケージングのための印刷回路板および材料(IC基板など)の製造のための難燃性付与化合物として用いることができる。
【実施例1】
【0110】
出発物質式(VII)の合成
【化13】

【0111】
500mLフラスコ中、1,2−ジクロロベンゼン(100mL)をペンタエリトリトール(54.5g、400mmol)およびピリジン塩酸塩(0.1g、1mmol)に添加した。三塩化リン(PCl、109.9g、800mmol、69mL)を、添加漏斗を介して1時間かけて滴下した。得られた溶液を2時間かけて100℃に加熱し、100℃にさらに1時間維持し、31P NMR(122MHz、DMSO、−149ppm)で確認した中間体3,9−ジクロロ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンを含む透明で無色の溶液になった。この溶液にギ酸(36.8g、800mmol)を65分かけて滴下した。添加の間、温度を25℃から42℃で維持した。窒素をこの溶液を通して通気し、HClおよびCOを除去した。この反応混合物を真空ろ過でろ過し、固体を集めた。固体をトルエンおよびジエチルエーテルで洗浄して、3,9−H−3,9−ジオキサ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカンを白色固体として得た(81.1g、89%)。31P NMR(122MHz,DMSO):−6.4ppm.ESI/LC/MS:実際値C10:228.08;実測値:228.08
【実施例2】
【0112】
式(V)の化合物のオリゴマーバージョンの調製
【化14】

【0113】
250mLの三口フラスコ中、3,9−H−3,9−ジオキサ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン(6.00g、26.3mmol)を2−エトキシエタノール(100mL)に添加し、その後p−ベンゾキノン(5.67g、52.6mmol)を添加し、得られた混合物を125℃に約5時間加熱した。反応の過程にわたって、反応混合物は固化した。反応混合物中で形成された固体を真空オーブン中で一晩乾燥させ、式(V)の化合物のオリゴマーバージョンを単離した。31P NMR(121MHz,DMSO,)δ−7.46,−7.26,−7.12,−7.02
【実施例3】
【0114】
式VIのホスホナート出発物質の合成
【化15】

【0115】
70mLのトルエンが入っている250mL五口フラスコ中に、激しく撹拌しながらネオペンチルグリコール(41.7g、0.4mol)および水(0.40mol)を添加した。三塩化リン(PCl、54.9g、0.40mol)を滴下し、この反応混合物を35℃に加温した。いったん最初の発熱が治まると、温度を50℃に維持した。濁った混合物は透明になり、その後、混合物を110℃で3時間加熱した。反応物は、31P NMRでモニターすることができる。この時点で窒素流量を増加させ、残存しているHClを一掃した。反応が終了した後、得られた混合物をフラスコに移し、真空で濃縮し、トルエンを除去した。白色固体のスラリーを真空オーブン中でさらに乾燥させ、ホスホン酸水素ネオペンチルグリコール(neopentyl glycol hydrogen phosphonate)(59.3g、99%)を得た。融点:51〜53℃。H NMR(300MHz,CDCl)δ8.05(d,1H),7.09(m,4H),4.11(m,8H),1.12(s,3H),1.03(s,3H);31P NMR(121.348MHz,CDCl)δ4.08.
【実施例4】
【0116】
式(III)および式(IV)の化合物の調製
【化16】

【0117】
機械式撹拌機および還流コンデンサーを備えた五口500mL丸底フラスコ中、ホスホン酸水素ネオペンチルグリコール(30g、200mmol)をトルエン(500mL)に添加した。この溶液に、トルエン(20mL)中p−ベンゾキノン(21.6g、200mmol)および酢酸(1.2g、20mmol)を数分かけて滴下した。得られた溶液を110℃に加熱し、反応物を31P NMRでモニターした。31P NMRで決定して反応の終了後に、混合物を周囲温度に冷却し、その後茶色の固体が沈殿した。この固体は、式(III)および式(IV)の化合物の混合物であった。茶色の固体をメチルエチルケトン(900mL)中で撹拌した。この固体を再度集めて、式(IV)の化合物(5.3g、6%)を単離した。ろ液を減圧下で除去して、黄褐色の固体を得て、これをジエチルエーテル(500mL)中でさらに撹拌した。固体を真空ろ過により集めて、式(III)の化合物(33.4g、64%)を単離した。
【0118】
式(III)の化合物
H NMR(300MHz,DMSO)δ:9.65(1H,s),9.10(1H,s),6.95−9.70(3H,m),4.10−3.90(4H,m),1.14(3H,s),0.95(3H,s);
31P NMR(121MHz,DMSO)δ:13.1;
ESI/LC/MS:実際値C1115P:258.07;実測値258.07.
【0119】
式(IV)の化合物
H NMR(300MHz,DMSO)δ:9.86(2H,s),7.08(2H,s),3.74(4H,m),3.54(4H,m),1.17(6H,s),0.61(6H,s);
13C NMR(122MHz,DMSO)δ:158.5,154.6,123.9,77.3,31.9,22.3,20.4;
31P NMR(121MHz,DMSO,)δ:9.6;
ESI/LC/MS:実際値C1624:406.10;実測値406.09.
【実施例5】
【0120】
式(VII)、式(III)および式(IV)の化合物の反応性試験
式(IV)、式(V)および式(VI)の化合物とエポキシ樹脂との反応性を検査するためにDSC法を開発した。この小規模の反応およびスクリーニング手順は以下のとおりである:
【0121】
D.E.N.(商標)438(The Dow Chemical Company製180のエポキシ当量を有するエポキシノボラック樹脂)を、樹脂の粘度が低下するまで60℃〜100℃で対流式オーブン中に置く。合計3.5〜3.8gのD.E.N.(商標)438をアルミ製計量鍋中に量り入れる。この試験化合物を別々に秤量し(約1.10g)、170℃でアルミ製鍋に穏やかに添加する。この温度で反応混合物を木製舌圧子により5分間撹拌する。次いで、アルミ製鍋を高温プレートから取り出し、約2分間冷却させる。鍋を高温プレートに戻し、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート(A−1触媒)のメタノール中溶液を添加し、この樹脂混合物を撹拌しながら5分間加熱する。一般に、反応残渣は透明であり、ときどき溶解しない反応性の断片が認められる。冷却後に、アルミ製鍋をプラスチック袋に入れ、密封する。次いで、この変性樹脂(室温でガラス状固体)を以下のプロトコルを用いてDSC(示差走査熱量測定法)により分析する:
−50℃で平衡
220℃に傾斜10℃/分
220℃で30分間等温
−40℃で平衡
220℃に傾斜10℃/分
【0122】
図1、図2および図3は、所定の順序で、式(VII)、式(III)、および式(IV)の化合物で得られたDSC曲線を示す(縦軸を熱流(Heat Flow)、横軸を温度(Temperature)とする)。DSCデータは、試験化合物すべてに関してその増加したTg対正味D.E.N.(商標)438のTgに基づいて向上を示す。220℃の等温前後のTgにおける差によって証明されるさらなる向上がDSC分析の間に認められる。A1触媒は、エポキシ樹脂のホモ重合を最小化するように選択し、したがって、Tgの増加は、エポキシ樹脂と試験化合物の間の反応に起因する。
【実施例6】
【0123】
試料調製
表1に記載される成分すべてをポリカーボネート製試料管に添加した。次いで、この試料をSpex SamplePrep 6870 Freezer Millの中に入れた。試料バイアルを液体窒素の浴中で15分間予備冷却し、10cpsにおいてそれぞれ2分間で3サイクル粉砕した。終了後直ちに、試料バイアルをチャンバーから取り出し、周囲温度まで加温し、単離した。その粉末をさらに使用するためにすり鉢とすりこぎで細かく粉砕することができる。
【0124】
【表1】

【0125】
プリプレグ調製
プレスを125℃に予備加熱した。7628ガラスクロス(12インチ×12インチ)の切断片を金属製剥離シート上に置き、このシートの下に2枚のTyvex(登録商標)スペーサを置いた。5.2グラム量のふるいをかけた低温粉砕粉末をガラスシート上に加えた。この粉末を、舌圧子を用いてならして円を作った。次いで、2番目の離型シートをさらに2枚のTyvex(登録商標)スペーサとともに加えた。2番目の金属製シートを上部に置き、材料を所望の温度のプレス中に入れた。プレスを22.2キロニュートンの力で110秒間閉じた。その時間が経過後、サイクルを止めて、材料をプレスから取り出した。材料をそのTg未満に約2分間冷却した。次いで、金属製シート、離型シート、およびスペーサを取り除いた。
【0126】
積層体の調製
以下の工程を用いて積層体を調製した:最初に、プリプレグ試料を所望の寸法に切断し、プリプレグシートをステープルで一緒にとめる。次いで、コーティングしていないアルミニウム製シートをカウルプレート上に置く。次いで、プリプレグスタックを2枚の離型シート間に置き、別のコーティングしていないアルミニウム製シートを上部に置く。
【0127】
積層体の調製のプログラムは以下のとおりである:
ステップ1:142.8Cに−13.3C/分、55.2kPa10秒間保持
ステップ2:192.2Cに−13.3C/分、103.4kPa90秒間保持
ステップ3:37.8Cに−9.4C/分、103.4kPa30秒間保持
【0128】
燃焼試験
燃焼試験は、標準ASTM法D3801(UL−94垂直燃焼試験)下で行った。等級は、3.1%P負荷でV−0であった。データを以下の表2に示す。
【0129】
【表2】

【0130】
本発明をその特定のバージョンに関してかなり詳細に説明してきたが、他の様々なバーションも可能であり、本明細書を読み、本図面を検討すれば、示されるバージョンの変更、置換、および均等は、当業者に明らかとなる。また、本明細書におけるバージョンの様々な特徴は、様々な仕方で組み合わせて、本発明のさらなるバージョンを提供することができる。さらに、特定の用語は、説明の明瞭さのために用いたが、本発明を限定するためではない。したがって、いずれの添付の特許請求の範囲も、本明細書に含まれる好ましいバージョンの説明に限定されるべきでなく、本発明の真の精神および範囲内に入る変更、置換、および均等のすべてを含むべきである。
【0131】
今や本発明を完全に説明したが、本発明の方法は、本発明の範囲またはその任意の実施形態から逸脱することなく、条件、処方、および他のパラメータの広範で均等な範囲で行い得ることが当業者に理解される。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の化合物。
【化17】

[式中、
m=0、1、2、または3;
n=1、2、3または4、但し、(m+n)は、4以下であることを条件とし;
部分Rは、それぞれ独立して、場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、およびアルカリル基、−NO、−OR、−COR、−CN、ハロゲン、ならびに−N(Rから選択され、隣接する炭素原子上の2つの部分Rは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、場合によって不飽和の、場合によって置換された5員から8員の環を形成し得;
部分Rは、それぞれ独立して、H、場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、およびアルカリル基、グリシジル、−COR、ならびに−CNから選択され;
部分Rは、それぞれ独立して、H、場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、およびアルカリル基、−OH、−OR、ならびに−N(Rから選択され;
部分Rは、それぞれ独立して、場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、およびアルカリル基から選択され;
部分Rは、それぞれ独立して、H、ならびに場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、およびアルカリル基から選択され;
部分Rは、それぞれ独立して、H、場合によって置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、およびアルカリル基から選択され、2つの部分Rは一緒になって、式−(CR−(式中、p=2、3、4、または5、RおよびRは、それぞれ独立して、Hおよび場合によって置換されたアルキル基から選択される)の二価の基を形成し得、そして、
下記部分
【化18】

の少なくとも1つは、下記式(II)の部分を表し得る。
【化19】

(式中、m、RおよびRは、上に示された意味を有し、さらに部分Rの1つは式(II)の部分を表し得る。)]
【請求項2】
上記式(I)中、
m=0、1、または2;
n=1または2;
部分Rが、それぞれ独立して、場合によって置換されたアルキルおよびアルケニル基、ならびに−ORから選択され、隣接する炭素原子上の2つの部分Rは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、場合によって置換された6員の芳香族環を形成し得;
部分Rが、それぞれ独立して、H、場合によって置換されたアルキルおよびアルケニル基、グリシジル、−COR、ならびに−CNから選択され;
部分Rが、それぞれ独立して、場合によって置換されたアルキルおよびアルケニル基から選択され;
部分Rが、それぞれ独立して、場合によって置換されたアルキル基から選択され、2つの部分Rは一緒になって、式−(CR−(式中、p=2または3、RおよびRは、それぞれ独立して、Hおよび場合によって置換されたアルキル基から選択される)の二価の基を形成し得、そして、
下記部分
【化20】

の少なくとも1つが、上記式(II)(式中、m、RおよびRは上に示された意味を有する)の部分を表し得る、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
上記式(I)中、
m=0または1;
n=1または2;
部分Rが、それぞれ独立して、場合によって置換されたアルキル基から選択され;
部分Rが、それぞれ独立して、H、場合によって置換されたアルキルおよびアルケニル基、グリシジル、−COR、ならびに−CNから選択され;
部分Rが、それぞれ独立して、場合によって置換されたアルキルおよびアルケニル基から選択され;
部分Rは、それぞれ独立して、場合によって置換されたアルキル基から選択され、2つの部分Rは一緒になって、式−(CR−(式中、p=2または3、RおよびRは、それぞれ独立して、Hおよび場合によって置換されたアルキル基から選択される)の二価の基を形成し得、そして、
下記部分
【化21】

の少なくとも1つが、上記式(II)(式中、m、RおよびRは、上に示された意味を有する)の部分を表し得る、請求項1および2のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項4】
上記式(I)中、
m=0;
n=1または2;
部分Rは、それぞれ独立して、H、場合によって置換されたアルキルおよびアルケニル基、グリシジル、−COR、ならびに−CNから選択され;
部分Rは、それぞれ独立して、場合によって置換されたアルキルおよびアルケニル基から選択され;
2つの部分Rは一緒になって、式−(CR−(式中、p=2または3、RおよびRは、それぞれ独立して、Hおよび場合によって置換されたアルキル基から選択される)の二価の基を形成し;そして、
下記部分
【化22】

の少なくとも1つは、上記式(II)(式中、m、RおよびRは、上に示された意味を有する)の部分を表し得る、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
上記式(I)中、
m=0;
n=1または2;
部分Rは、それぞれ独立して、H、場合によって置換されたアルケニル基、グリシジル、−COR、および−CNから選択され;
部分Rは、それぞれ独立して、場合によって置換されたアルケニル基から選択され;2つの部分Rは一緒になって、式−(CR−(式中、p=3、RおよびRは、それぞれ独立して、Hおよび場合によって置換されたアルキル基から選択される)の二価の基を形成し、そして、
下記部分
【化23】

の少なくとも1つは、上記式(II)(式中、m、RおよびRは、上に示された意味を有する)の部分を表し得る、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
少なくとも約10重量%のリンを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
少なくとも約12重量%のリンを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
下記式(III)、下記式(IV)、または下記式(V)の化合物である、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物(式中、Meはメチルを表す)。
【化24】

【請求項9】
少なくとも一部のヒドロキシ基において、水素原子が、グリシジル、−CN、式−CO−CR=CHRの基、および式−CH−CR=CHRの基(RおよびRは、それぞれ独立して、HおよびC1−4アルキル基から選択される)から選択される基で置き換えられている、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
オリゴマーのポリマーが、請求項1から9のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物の共有結合単位を含む難燃性ポリマーまたはオリゴマー。
【請求項11】
エポキシ基と反応することができる少なくとも2個の基を含む請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物と前反応させたエポキシ樹脂。
【請求項12】
前記エポキシ基と反応することができる少なくとも2個の基が、ヒドロキシ基を含む、請求項11に記載のエポキシ樹脂。
【請求項13】
エポキシ樹脂および請求項1から9のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物、請求項11および12のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂、またはそれらの混合物を含む硬化性組成物。
【請求項14】
請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物の単位を含む架橋エポキシ樹脂。
【請求項15】
(i)少なくとも2個の官能基を含む少なくとも1種の化合物と、(ii)該(i)の少なくとも2個の官能基と反応することができる少なくとも2個の基を含む請求項1から9のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物とを含む重合性組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の組成物から調製される難燃性ポリマー。
【請求項17】
(i)少なくとも2個のイソシアネート基を含む少なくとも1種の化合物と、(ii)イソシアネート基と反応することができる少なくとも2個の基を含む請求項1から9のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物とを含む、請求項15に記載の重合性組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の組成物から調製される難燃性ポリウレタン。
【請求項19】
(i)少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を含む請求項1から9のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物と、(ii)少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を含み、かつ(i)と異なる少なくとも1種の化合物とを含む、請求項15に記載の重合性組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の組成物から調製される難燃性ポリマー。
【請求項21】
(i)少なくとも2個のシアネート基を含む請求項1から9のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物と、(ii)シアネート基と反応することができる少なくとも2個の基を含む少なくとも1種の化合物とを含む、請求項15に記載の重合性組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の組成物から調製される難燃性ポリマー。
【請求項23】
(i)少なくとも2個のエポキシ基を含む請求項1から9のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物と、(ii)エポキシ基と反応することができる少なくとも2個の基を含む少なくとも1種の化合物とを含む、請求項15に記載の重合性組成物。
【請求項24】
請求項23に記載の組成物から調製される難燃性硬化エポキシ樹脂。
【請求項25】
(i)相補的な基とエステル結合を形成することができる少なくとも2個の基を含む請求項1から9のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物と、(ii)相補的な基とエステル結合を形成することができる少なくとも2個の基を含み、かつ(i)と異なる少なくとも1種の化合物とを含む、請求項15に記載の重合性組成物。
【請求項26】
請求項25に記載の組成物から調製される難燃性ポリエステルまたはポリカーボネート。
【請求項27】
ポリマー組成物の難燃性を改善する方法であって、該組成物中に請求項1から9のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物をそのままおよび/または該ポリマーに共有結合させて取り込む段階を含む方法。
【請求項28】
前記ポリマーが、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイソシアネート、および1個または複数のエチレン性不飽和モノマーから調製されるポリマーの少なくとも1種を含む、請求項27に記載の方法。

【公表番号】特表2012−501335(P2012−501335A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525163(P2011−525163)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/054992
【国際公開番号】WO2010/025165
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】