説明

リン含有難燃性エポキシ樹脂組成物、プリプレグおよびその積層板

少なくとも1つの硬化性エポキシ樹脂と、少なくとも1つの難燃性硬化剤と、少なくとも1つの硬化触媒とを含む硬化性エポキシ樹脂組成物が本願明細書に提示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性エポキシ樹脂組成物、特にエポキシ樹脂、ポリアリーレンアルキルホスホネート硬化剤、および第四級ホスホニウム塩または第四級アンモニウム塩硬化触媒を含む硬化性難燃性エポキシ樹脂組成物に関する。この硬化性難燃性エポキシ樹脂組成物は、プリプレグのBステージ化の信頼性の高いプロセスのための広い加工範囲を示す。
【背景技術】
【0002】
難燃性エポキシ樹脂は、優れた自己消火性、機械的特性、耐水蒸気性および電気特性のため、様々な電気絶縁材料で使用される。得られた積層板の難燃性を改善するための種々の添加剤をエポキシ樹脂組成物の中へと組み込むことが、エポキシ含有積層板の調製では慣用的である。多くの種類の難燃性添加剤が示唆されてきたが、しかしながら、商用で最も広く使用されている添加剤はテトラブロモビスフェノールAなどのハロゲン含有添加剤、またはテトラブロモビスフェノールAを用いて調製されるエポキシ樹脂である。
【0003】
テトラブロモジフェニロールプロパンなどのハロゲン含有難燃性添加剤は有効であるが、それらを環境の観点から望ましくないと考える人もあり、そして近年では、典型的には標準的な「Underwriters Laboratory(米国保険業者研究所)」試験方法UL 94でV−0である難燃性の要件を満たすことができる、ハロゲン不含のエポキシ樹脂の配合物への関心が増加してきた。
【0004】
ハロゲン含有難燃性添加剤を置き換えるために有用である可能性があるいくつかの市販のリンベースの難燃性添加剤がある。例えばリン酸エステル系化合物であるリン酸トリフェニル(TPP)、リン酸トリクレジル(TCP)、リン酸クレジルジフェニル(CDP)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(BDP)などの付加型リン系難燃剤を、エポキシ樹脂組成物の中へと組み込むことにより、不燃性を維持することができる。このような配合物の例は、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、および特許文献5に記載されている。しかしながら、上記のもののような一般的なリン化合物は、エポキシ樹脂とは反応しないため、吸湿後のはんだ耐熱性などの他の問題が生じ、かつ成形品の耐アルカリ性などの耐化学薬品性は著しく低下する。これらのリン添加剤の著しい可塑化効果のため、硬化したエポキシ樹脂のガラス転移温度(T)も著しく低下する。
【0005】
ハロゲン化難燃剤の代わりに反応性のリンベースの難燃剤をエポキシ樹脂配合物の中で使用するという提案がなされた。リンベースの難燃性エポキシ樹脂の最新技術の概説は、非特許文献1で与えられた。いくつかの配合物では、リン難燃剤はエポキシ樹脂と予め反応して二官能性または多官能性のエポキシ樹脂を形成し、次いでこの二官能性または多官能性のエポキシ樹脂が架橋剤を用いて硬化される。
【0006】
先行技術には、リン元素をエポキシ樹脂系の中に導入するための方法としてエポキシ樹脂とともに使用するための架橋剤または硬化剤としての、あるリン元素含有化合物の使用が記載されている。例えば、特許文献6;特許文献7;特許文献8;特許文献9;特許文献10;特許文献11;および特許文献12は、有効な硬化剤としての二官能性または三官能性のホスフィンオキシド架橋剤の使用を記載する。上記の先行技術の組成物は、調製が簡単ではなく、しかも標準的でない調製手順を必要とする。実用的な、工業規模の原料から誘導することができる化合物を提供することは、有利であろうし、従って先行技術のプロセスに勝る経済的な優位性を提供するであろう。
【0007】
しかしながら、エポキシ樹脂について最も頻繁に利用されるリンベースの難燃剤は、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン 10−オキシド(DOPO)である。一般に公知の2つの、DOPOをエポキシ複合材に付与する方法がある。第1の方法では、特許文献13および特許文献14;特許文献15および特許文献16に記載されているように、DOPOを予めエポキシ樹脂と反応させる。DOPOは一官能性の反応性化合物であるので、DOPOはエポキシ鎖を停止させ、それゆえ、二官能性のエポキシよりも通常高価な多官能性のエポキシのみをこのプロセスで使用する必要がある。第2の方法では、例えば特許文献17および特許文献18、および特許文献19;特許文献20;特許文献21;特許文献22;特許文献23;特許文献24および特許文献25、および特許文献26に記載されているように、DOPOを、キノンまたはケトンの官能性とは別に2以上のヒドロキシル基またはアミン基をも有するキノンまたはケトン型の化合物と予め反応させる。この方法には、分子中に低いリン含有量しか有しない高価な化合物を生じる複雑さという問題がある。
【0008】
アルキルホスホネートおよびアリールホスホネートは一般に、エポキシ樹脂と相溶性である。特に低級アルキルホスホネートは高い割合のリンを含有し、従ってそれらが組み込まれた樹脂に良好な難燃性をもたらすので、低級アルキルホスホネートは価値がある。エポキシ樹脂におけるホスホネートの使用の例は、例えば特許文献27および特許文献28に示される。しかしながら、ホスホネートが添加剤として使用される場合、ホスホネートは上記の非反応性のリン酸エステルと同様の問題を生じる。非反応性のホスホネートに伴う主な問題は、エポキシ化合物の低いガラス転移温度および高い吸湿である。高いレベルの水分を含有する積層板は、鉛ベースのはんだについては約260℃または鉛不含はんだについては約288℃の温度の液状はんだの浴に導入されるとき(プリント配線板の製造における典型的な工程である)、膨れを生じて機能しなくなる傾向がある。
【0009】
ヒドロキシル末端ポリ(m−フェニレン メチルホスホネート)をエポキシ系で使用することは特許文献29に記載された。この文献では、エポキシ樹脂は、硬化触媒としてのメチルイミダゾールの存在下でポリ(m−フェニレン メチルホスホネート)によって硬化された。さらには、このポリホスホネートは、非特許文献2によって記載されるように、エポキシ樹脂を有効に硬化させる。このホスホネートはエポキシのネットワークの中へと有効に組み込まれるので、最終の硬化した複合材は高いガラス転移温度および低い水吸収を示す。特許文献30は、エポキシ樹脂をポリ(m−フェニレン メチルホスホネート)と予め反応させるプロセスを記載するが、しかしながらこのポリホスホネートは多官能性化合物であるので、このポリホスホネートはエポキシ樹脂を架橋する傾向があり、それゆえ予めの反応を商業規模で有効に制御することはできない。
【0010】
ホスホネートはリン酸エステル基P−O−Cへのエポキシ基の挿入を介してエポキシを硬化させるので、1つの反応ごとにポリマーネットワークにおける分岐が生じる。さらには、イミダゾールまたは第三級アミンのようないくつかの一般的なエポキシ硬化触媒は、P−O−Cへのエポキシの挿入に加えてエポキシの自己硬化を触媒する。それゆえ、ゲル化が比較的狭い温度間隔で起こる。これは、プリプレグのBステージ化のための加工範囲を制限する。なぜなら、低温でまたは短期間ではこの樹脂は過剰な流れを呈するのに対し,より高い温度でおよび/またはより長い期間にわたっては、このエポキシは過剰に架橋して樹脂流動性を制限する可能性があるからである。
【0011】
フェノール性ヒドロキシルを含有する化合物とエポキシドとを反応させて高分子量のエポキシ化合物を生成するために、第四級アンモニウム塩、およびホスホニウム塩、より特定するとハロゲン化第四級アンモニウム、およびハロゲン化ホスホニウムを使用することは当該技術分野で周知である。例えば:特許文献31;特許文献32;特許文献33;特許文献34;特許文献35;特許文献36;特許文献37;特許文献38;特許文献39;特許文献40;および特許文献41および特許文献42、ならびに非特許文献3および非特許文献4を参照のこと。特定のホスホニウム触媒は近接のエポキシドとフェノール、カルボン酸またはカルボン酸無水物との間の反応を促進するということも特許文献43に記載されている。
【0012】
非特許文献5の学術文献では、ジアリールフェニルホスホネートをエポキシドと反応させるための触媒としての、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルホスホニウムおよび塩化テトラブチルホスホニウムの使用が記載されている。反応は長時間(48時間)行われ、直鎖状のポリホスホネートが生成された。T.Wu、A.M.Piotrowski、Q.YaoおよびS.V.Levchik(非特許文献2)は、エポキシドとポリ(m−フェニレン メチルホスホネート)との反応を示差走査熱量測定によって研究し、その反応は商用のエポキシ硬化サイクルとしては遅くかつ不適切であるということを見出した。2−メチルイミダゾールがより効率的な触媒として選択された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5,919,844号明細書
【特許文献2】米国特許第5,932,637号明細書
【特許文献3】米国特許第6,348,523号明細書
【特許文献4】米国特許第6,713,163号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1,359,174号明細書
【特許文献6】米国特許第4,973,631号明細書
【特許文献7】米国特許第5,086,156号明細書
【特許文献8】米国特許第6,403,220号明細書
【特許文献9】米国特許第6,740,732号明細書
【特許文献10】米国特許第6,486,242号明細書
【特許文献11】米国特許第6,733,698号明細書
【特許文献12】米国特許第6,887,950号明細書
【特許文献13】欧州特許出願公開第0,806,429号明細書
【特許文献14】米国特許第6,645,631号明細書
【特許文献15】米国特許第6,291,627号明細書
【特許文献16】米国特許第6,486,242号明細書
【特許文献17】欧州特許出願公開第1,103,575号明細書
【特許文献18】欧州特許出願公開第1,537,160号明細書
【特許文献19】米国特許第6,291,626号明細書
【特許文献20】米国特許第6,441,067号明細書
【特許文献21】米国特許第6,933,050号明細書
【特許文献22】米国特許第6,534,601号明細書
【特許文献23】米国特許第6,646,064号明細書
【特許文献24】米国特許第6,762,251号明細書
【特許文献25】米国特許第6,984,716号明細書
【特許文献26】国際公開第05/118604号パンフレット
【特許文献27】米国特許第5,710,305号明細書
【特許文献28】米国特許第6,353,080号明細書
【特許文献29】国際公開第03/029258号パンフレット
【特許文献30】国際公開第04/060957号パンフレット
【特許文献31】米国特許第2,216.099号明細書
【特許文献32】米国特許第2,633,458号明細書
【特許文献33】米国特許第2,658,855号明細書
【特許文献34】米国特許第3,377,406号明細書
【特許文献35】米国特許第3,477,990号明細書
【特許文献36】米国特許第3,547,881号明細書
【特許文献37】米国特許第3,547,885号明細書
【特許文献38】米国特許第3,694,407号明細書
【特許文献39】米国特許第3,738,862号明細書
【特許文献40】米国特許第3,948,855号明細書
【特許文献41】米国特許第4,048,141号明細書
【特許文献42】欧州特許第0,019,852号明細書
【特許文献43】米国特許第4,048,141号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】S.LevchikおよびE.Weil、「Review on thermal decomposition,combustion and flame−retardancy of epoxy resins」、Polymer International、2004年、第53巻、1901−1929頁
【非特許文献2】T.Wu、A.M.Piotrowski、Q.YaoおよびS.V.Levchik、Journal of Applied Polymer Science、第101巻、4011−4022頁
【非特許文献3】H.LeeおよびK.Neville、Handbook of Epoxy Resins、McGraw−Hill、1967年
【非特許文献4】Chemistry and Technology of Epoxy Resins、B.Ellis編、Blacie Academic and Professional、1993年
【非特許文献5】S.Minegishi、S.Komatsu、A.KameyamaおよびT.Nishikubo、J.Polym.Sci.,Part A,Polym.Chem、1999年、第37巻、959−965頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記先行技術の制約を踏まえて、本発明の目的は、エポキシプリプレグおよびエポキシ積層板の生産においてならびにプリント配線板および多層プリント配線板の製造において使用するための硬化性難燃性エポキシ樹脂組成物であって、広い加工範囲を有しそれゆえプリプレグを容易にBステージ化することができる硬化性難燃性エポキシ樹脂組成物を提供することである。さらには、この積層板は、高い熱安定性および良好な耐湿性を示す必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、少なくとも1つの硬化性エポキシ樹脂と、ポリアリーレンアルキルホスホネート硬化剤などの少なくとも1つの難燃性硬化剤と、第四級ホスホニウム塩または第四級アンモニウム塩硬化触媒などの少なくとも1つの硬化触媒とを含む硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0017】
本発明は、本願明細書に記載される硬化性難燃性エポキシ樹脂組成物を含む、プリント配線板、例えば、電子技術応用のためのプリント配線板、電子素子用封止材、保護コーティング、ならびに構造用および/または装飾用複合材料に関する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の硬化性難燃性エポキシ樹脂組成物は、1つの必須の成分として、少なくとも1つの硬化性エポキシ樹脂を含有する。この成分は、非ハロゲン含有エポキシ樹脂、例えば、一官能性エポキシ、脂肪族、脂環式、および芳香族の一官能性エポキシ樹脂であってよく、これにはクレシルグリシジルエーテル(cresyl glycidyl ether)、ベンジルグリシジルエーテルなどの化学物質が含まれる。本発明の他の有用なエポキシ樹脂としては、二官能性、三官能性、四官能性、およびより多官能性のエポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。これらの種類のエポキシの例としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテル、ジグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、トリグリシジル−p−アミノフェノール、メチレンジアミンのテトラグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂およびジフェニルフルオレン型エポキシ樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの樹脂は、個々にまたはいずれかの適切な組み合わせで使用することができる。また、本発明で有用であるこの一般的な種類の他の有用なエポキシ樹脂または他の樹脂は、プリント配線板または他の電子基板材料の製造のための有用性を有するエポキシ樹脂または他の樹脂である。従って、これらの樹脂のいずれかの相溶性混合物を所望に応じて用いてもよい。
【0019】
この成分、すなわち、硬化性エポキシ樹脂は、当該組成物の総重量の約50〜約90重量%の範囲の量で存在する。より好ましくは、当該硬化性エポキシ樹脂は、当該組成物の総重量の約65〜約90重量%の量で存在する。
【0020】
ポリアリーレンアルキルホスホネート硬化剤は、当該組成物の総重量の約5%〜約40重量%、好ましくは約5%〜約25重量%で存在する。PCT国際公開第03/029258号パンフレット(この内容は、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする)により十分に記載されるように、この難燃性硬化剤は、繰り返し単位−OP(O)(R)−O−アリーレン−を含む(式中、Rは約8個までの炭素原子、好ましくは約6個までの炭素原子を含有する直鎖状もしくは分枝状のアルキルであることができる)を含むオリゴマー状のホスホネートであり、約12重量%より高いリン含有量を有する。当該組成物中のこのホスホネート種は−OH末端基を含有するホスホネート種、およびおそらくは、−OH末端基を含有しないホスホネート種を含む。好ましいR基はメチルであるが、いずれの低級アルキルであってもよい。1つの実施形態では、このポリアリーレンアルキルホスホネート硬化剤はポリ(m−フェニレン メチルホスホネート)である。
【0021】
「アリーレン」は、二価フェノールのいずれかのラジカルを意味する。この二価フェノールは、好ましくは、その2つのヒドロキシ基を、隣接していない位置に有するべきである。例としては、レゾルシノール類;ヒドロキノン類;ならびにビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、および4,4’−ビフェノール、フェノールフタレイン、4,4’−チオジフェノール、または4,4’−スルホニルジフェノールなど)が挙げられる。このアリーレン基は、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、またはビスフェノールジラジカル単位であってもよいが、好ましくは、このアリーレン基は1,3−フェニレンである。
【0022】
1つの実施形態では、当該硬化触媒は、式:
【化1】

(式中、各R、R、RおよびRは独立に、1〜約12個の炭素原子を含有するヒドロカルビルまたは不活性に置換されたヒドロカルビルラジカルであり、XはPまたはNであり、Yはアニオンであり、mはこのアニオンの価数である)によって表される少なくとも1つのものである。1つの実施形態では、このヒドロカルビルラジカルは、O、NまたはSで不活性に置換されていてもよい、約12個までの炭素原子を含有する直鎖状もしくは分枝状のアルキル基である。あるいは、これらの化合物は、テトラヒドロカルビルホスホニウム塩またはテトラヒドロカルビルアンモニウム塩と記載されてもよい。これらの触媒は、P−O−C結合へのエポキシ基の挿入という所望の反応を適切な反応速度で選択的に触媒する上で、驚くべきことに有効である。1つの実施形態では、Yは、臭化物、塩化物、ヨウ化物、酢酸塩、酢酸塩複合体、酢酸塩/酢酸複合体、リン酸塩、リン酸塩複合体および水酸化物からなる群から選択されるアニオンである。1つの実施形態では、mは1、2または3であることができる。
【0023】
好ましい触媒は、第四級ホスホニウム塩および第四級アンモニウム塩であるが、これらに限定されない。この第四級ホスホニウム塩としては、米国特許第5,208,317号明細書、同第5,109,099号明細書および同第4,981,926号明細書(これらの各々の内容は参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする)に記載されるように、例えば、塩化テトラブチルホスホニウム、臭化テトラブチルホスホニウム、ヨウ化テトラブチルホスホニウム、酢酸テトラブチルホスホニウム複合体、塩化テトラフェニルホスホニウム、臭化テトラフェニルホスホニウム、ヨウ化テトラフェニルホスホニウム、塩化エチルトリフェニルホスホニウム、臭化エチルトリフェニルホスホニウム、ヨウ化エチルトリフェニルホスホニウム、酢酸エチルトリフェニルホスホニウム複合体、リン酸エチルトリフェニルホスホニウム複合体、塩化プロピルトリフェニルホスホニウム、臭化プロピルトリフェニルホスホニウム、ヨウ化プロピルトリフェニルホスホニウム、塩化ブチルトリフェニルホスホニウム、臭化ブチルトリフェニルホスホニウム、ヨウ化ブチルトリフェニルホスホニウム、酢酸エチルトリ−p−トリルホスホニウム/酢酸複合体、酢酸エチルトリフェニルホスホニウム/酢酸複合体またはこれらの組み合わせなどが挙げられる。最も好ましい触媒としては、臭化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、酢酸エチルトリトリルホスホニウムおよび酢酸エチルトリフェニルホスホニウムが挙げられる。
【0024】
第四級アンモニウム塩としては、例えば、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、塩化トリエチルベンジルアンモニウム、臭化トリエチルベンジルアンモニウム、ヨウ化トリエチルベンジルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラ(n−ブチル)アンモニウム、臭化テトラ(n−ブチル)アンモニウム、ヨウ化テトラ(n−ブチル)アンモニウム、水酸化テトラ(n−ブチル)アンモニウム、塩化テトラ(n−オクチル)アンモニウム、臭化テトラ(n−オクチル)アンモニウム、ヨウ化テトラ(n−オクチル)アンモニウム、水酸化テトラ(n−オクチル)アンモニウム、塩化メチルトリス(n−オクチル)アンモニウム、ビス(テトラフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリドなどが挙げられる。
【0025】
使用される触媒の量は、触媒の分子量、触媒の活性および重合が進むことを意図される速度に依存する。一般に、触媒は0.01p.h.r.(樹脂100部あたりの部数)〜約1.0p.h.r.、より好ましくは約0.01p.h.r.〜約0.5p.h.r.、最も好ましくは約0.1p.h.r.〜約0.5p.h.rの量で使用される。1つの実施形態では、本願明細書中では、樹脂の部数は、本願明細書に記載される硬化性エポキシ樹脂の部数に関すると理解されたい。
【0026】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、任意の添加剤、例えば、補助的な難燃性添加剤、および以下の種類の物質を含有することができる:繊維および/もしくはクロス(布)強化添加剤;Al(OH)、Mg(OH)などの鉱物系充填剤:またはシリカ;離型剤;着色料など。
【0027】
本発明の1つの実施形態では、当該エポキシ樹脂組成物は、特定の用途に応じて変わる必要と考えられる量で、他の用途、例えばプリプレグ、プリント配線板、電子素子用封止材、保護コーティング、構造用および/または装飾用複合材料などの電子技術応用で使用することができるが、1つの限定を意図しない好ましい実施形態では、当該エポキシ樹脂組成物は、約0.01p.h.r.〜約2.0p.h.r.、より好ましくは約0.01p.h.r.〜約0.5p.h.r.、最も好ましくは約0.1p.h.r.〜約0.5p.h.r.の量で使用することができる。
【0028】
本発明は以下の実施例によってさらに例証される。
【実施例】
【0029】
(物質)
エポキシ1:(PNE) フェノールノボラックエポキシ、D.E.N.438、Dow Chemicalsの商標
エポキシ2:(CNE) クレゾールノボラックエポキシ、EPON 164、Hexionの商標
硬化剤:(PMP) ポリ(m−フェニレン メチルホスホネート)、Fyrol PMP、ICL−IPの商標
触媒1:(ETPPA) 酢酸エチルトリフェニルホスホニウム(70% メタノール溶液)、Alfa Aesarから購入した
触媒2:(ETPPB) 臭化エチルトリフェニルホスホニウム、Dishman Co.の製品
触媒3:(2−MI) 2−メチルイミダゾール、Amicure AMI−2、Air Productsの商標
触媒4:(2−PI) 2−フェニルイミダゾール、Amicure PI−2、Air Productsの商標
触媒5:(DMAPM) ビス(ジメチルアミノプロピル)メチルアミン、Polycat 77、Air Productsの商標
触媒6:(DMAMP) <90% トリス−2,4,6−(ジメチルアミノメチル)フェノール+<10% ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、Ancamide K54、Air Productsの商標
溶媒:メチルエチルケトン、(MEK)、Flukaから購入した
ガラスクロス:7628/50型、BGF Industriesの製品
銅箔:Gould Electronics Inc.、(JTC、1.0oz/ft.(約305g/m))
【0030】
(ワニスの調製)
秤量した量のエポキシ樹脂(1種または複数種)およびFyrol PMPを、別々の瓶の中で100〜120℃の温度に予熱した。この樹脂およびFyrol PMPを、メカニカルスターラー、温度計および加熱マントルを備えた3つ口丸底フラスコの中へと注ぎ込んだ。次いで25p.h.r.のMEKを、透明な均一溶液が得られるまで、連続的に撹拌しながら加えた。MEKをさらに加えることによって溶液の粘度を700〜1000cPa(25℃において)に調整した。上記触媒を別々にMEKまたはアセトンに溶解し、0.15〜1.0p.h.rの量で最後に上記ワニスに加えた。
【0031】
(プリプレグの製造)
ガラスクロス(10.5×10.5インチ(約26.7cm×約26.7cm))を、手作業で両側に、室温でワニスをはけ塗りした。このガラスクロスを175〜185℃の予熱した空気循環式オーブンの中に置き、特定の時間、熱に曝した。異なる曝露時間を用いて実験を繰り返した。約40%の樹脂含有量を有するプリプレグを製造した。
【0032】
(樹脂流動性の測定)
得たプリプレグを、IPC−TM−650、試験2.3.16.2に従って樹脂流動性について試験した。樹脂流動性を曝露時間の関数としてプロットした。これは、通常、負の傾きを有する直線のグラフを生じた。算出した傾きは、加工範囲の特徴を表す。−0.1〜−0.5の傾きは広い加工範囲を表す一方で、−0.7〜−1.5の傾きは狭い加工範囲を表す。
【0033】
(積層板の製造)
一番下および一番上に銅箔を有する、8枚のプリプレグを積み重ねたものを、2つのステンレス鋼板の間に置いた。これらの板の下および上に4枚のクラフト紙を置いた。この組み立て体全体を液圧プレスの中に置き、これを185または200℃まで線形に加熱した。200psi(約1.38MPa)の圧力を170℃で加えた。90分間の等温(185℃または200℃)加熱、次いでそれぞれ15分間の215℃または230℃での後硬化で積層板を硬化させた。
【0034】
(プレッシャークッカー試験)
IPC−TM−650、試験2.3.7.1に従って積層板から銅をエッチングした。以下の変更を加えてIPC−TM 650、試験2.6.16に従って、プレッシャークッカー試験(PCT)を実施した:(a)オートクレーブの中で1時間、2時間および4時間、試料を蒸気に曝した;(b)はんだ槽の温度を288℃に保持した;(c)試料をはんだに5分間浸した。
【0035】
(ガラス転移温度(T))
IPC−TM 650、試験2.4.25に従って、示差走査熱量測定(DSC)によってガラス転移温度を測定した。
【0036】
(熱安定性)
窒素の不活性雰囲気の中での、10℃/分の加熱速度での熱重量分析(TGA)によって積層板の熱安定性を測定した。5%重量損失をTとして記録した。
【0037】
表1
下記の表1 ワニスの組成、プリプレグの物性および積層板の物性
【表1】

【0038】
表1からわかるように、触媒4、5および6は、このプリプレグのBステージ化についての非常に狭い加工範囲を与え、それゆえそれらの触媒は、上記積層板の製造のためには用いなかった。触媒3は、0.15p.h.r.では許容できる加工範囲を与えるが、非常に低い積層板の特性を示した。0.3p.h.r.への触媒3の濃度の増加は、加工範囲の狭小化をもたらした。触媒3、4、5、6はまた、濃く茶色に着色した積層板を生じた。この着色は、この積層板の品質検査で不合格になる可能性がある。
【0039】
本発明の他の実施形態は、本願明細書の考察または本願明細書に開示される本発明の実施から、当業者には明らかであろう。本願明細書および実施例は例示的なものに過ぎないと考えられるべきであり、本発明の本当の範囲および技術思想は添付の特許請求の範囲によって定められるということが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの硬化性エポキシ樹脂と、少なくとも1つの難燃性硬化剤と、少なくとも1つの硬化触媒とを含む硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記難燃性硬化剤はポリアリーレンアルキルホスホネートである、請求項1に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記難燃性硬化剤はポリ(m−フェニレン メチルホスホネート)である、請求項1に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化性エポキシ樹脂は、前記硬化性エポキシ樹脂組成物の総重量の約50〜約90重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記硬化性エポキシ樹脂は、前記硬化性エポキシ樹脂組成物の総重量の約65〜約90重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリアリーレンアルキルホスホネートは、前記組成物の総重量の5〜約40重量%の範囲の量で存在する、請求項2に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの触媒は、式:
【化1】

(式中、各R、R、RおよびRは独立に、ヒドロカルビルまたは不活性に置換されたヒドロカルビルラジカルであり、XはPまたはNであり、Yはアニオンであり、mは前記アニオンの価数である)によって表される、請求項1に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記触媒は第四級アンモニウム塩または第四級ホスホニウム塩である、請求項1に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記触媒は、硬化性エポキシ樹脂100部あたり約0.01〜約1.0部の量で存在する、請求項1に記載の硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物を含む、プリプレグ。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物を含む、積層板。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物を含む、プリント配線板用封止材。
【請求項13】
請求項1に記載の組成物を含む、保護コーティング。
【請求項14】
請求項1に記載の組成物を含む、構造用および/または装飾用複合材料。

【公表番号】特表2012−507599(P2012−507599A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534612(P2011−534612)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/061276
【国際公開番号】WO2010/051182
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(510181677)アイシーエル−アイピー アメリカ インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】