説明

リン複合材料及びその製造方法、それを採用したリチウムイオン二次電池

【課題】本発明は、リン複合材料及びその製造方法、それを採用したリチウムイオン二次電池に関する。
【解決手段】本発明の電気化学の可逆的にリチウムイオンを吸蔵するためのリン複合材料は、導電基体と赤リンからなる。前記導電基体は、導電性炭及び/又は導電性ポリマーからなる。前記リン複合材料における前記赤リンの重量パーセンテージは15%〜90%であり、前記リン複合材料における前記導電基体の重量パーセンテージは10%〜85%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン複合材料及びその製造方法、それを採用したリチウムイオン二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用無線電話、携帯用パソコン、携帯用ビデオカメラ等の電子機器が開発され、各種電子機器が携帯可能な程度に小型化されている。それに伴って、内蔵される電池としても、高エネルギー密度を有し、且つ軽量なものが採用されている。そのような要求を満たす典型的な電池は、リチウム二次電池である。
【0003】
通常、リチウム二次電池は、リチウムイオンの可逆的な挿入/脱離が可能な物質からなる正極と負極とを含む。前記リチウム二次電池を充電する時、リチウムイオンが正極から脱離されて、負極に挿入される。反して、前記リチウム二次電池を放電する時、リチウムイオンが負極から脱離されて、正極に挿入される。従って、リチウム二次電池の性能、特性が負極と緊密に関連する。前記負極は、負極集電体と負極材料とを備え、前記負極材料はリチウムイオンの可逆的な挿入/脱離が可能な物質であるので、前記リチウム二次電池の負極材料は、前記リチウム二次電池の性能に影響する要となる材料の1つである。
【0004】
従来のリチウム二次電池の負極材料は、通常炭素系材料又は金属材料からなる。金属からなる負極材料は炭素系材料を用いた負極よりも多くのリチウムイオンを吸蔵、脱離できるため、これらの材料を使用することで高容量、高エネルギー密度な電池を作製することができる。例えば、金属錫は、体積当たりでより高容量な材料の1つであり、その理論容量は、1000mAh/gより大きい。金属錫は、リチウムと合金化することが知られており、これらの材料を使用することで高容量、高エネルギー密度な電池を作製することができると考えられている。しかしながら、金属及び合金の自然資源がわずかであり、且つ価格が比較的高いので、良好なリチウムイオンの吸蔵特性を有し、価格が比較的低い新しい負極材料を開発する研究がなされている。体積当たりで容量が高く、リチウムイオンの可逆的な挿入/脱離が可能な物質として注目されている材料は、シリコン複合物、酸化錫、遷移金属酸化物、金属窒化物及び金属リン化物などである。ここで、金属リン化物は、例えばLiMO(M=Ti、V等)、MnP、CoP、CuP、CuP、FeP、LiCuP、TiPなどの無機リン化物である。しかし、前記無機リン化物のサイクル性能は悪い。
【0005】
また、リチウム二次電池においてリチウムイオンの可逆的な挿入/脱離が可能な負極材料として、黒リン-炭素合成物が用いられることが非特許文献1に掲載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】hun−joon Sohn et al., “Black Phosohorus and its Composite Lithium Rechargeable Batteries”, Advanced materials. 2007年、第19巻, 第2465−2468頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記黒リン-炭素合成物の製造要求は苛酷であり、且つ黒リンが高価品であるので、リチウム二次電池のコストを増加させる。また、前記非特許文献1には赤リンがリチウムイオン二次電池に利用可能性がないと掲載されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、前記課題を解決するために、本発明はコストが低い赤リンを採用し、且つリチウムイオン二次電池に応用することができるリン複合材料及びその製造方法、それを採用したリチウムイオン二次電池を提供する。
【0009】
本発明の電気化学的に可逆的なリチウムイオン吸蔵のためのリン複合材料は、導電基体と赤リンとからなる。前記導電基体は、導電性炭及び/又は導電性ポリマーからなる。前記リン複合材料における前記赤リンの重量パーセンテージは15%〜90%であり、前記リン複合材料における前記導電基体の重量パーセンテージは10%〜85%である。
【0010】
前記導電性ポリマーは、赤リンの触媒作用で、有機ポリマーが脱水反応、脱ハロゲン化水素反応又は脱アミン反応することによって形成したものである。
【0011】
本発明の電気化学的に可逆的なリチウムイオン吸蔵のためのリン複合材料の製造方法は、重量比が1:10〜5:1である導電性炭及び/又は導電性ポリマーからなる原料と赤リンを混合して混合物を形成する第一ステップと、不活性雰囲気又は真空条件で、前記混合物を50℃〜120℃の範囲内の温度に昇温して乾燥させる第二ステップと、不活性雰囲気で、前記乾燥した混合物を250℃〜600℃の範囲内の温度に加熱して熱処理する第三ステップと、前記混合物における赤リンを気化した後、徐々に室温まで冷却する第四ステップと、を含む。
【0012】
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、負極及び電解液を含む。前記負極の活性材料は、リン複合材料を含む。前記リン複合材料は、導電基体と赤リンとからなる。前記導電基体は、導電性炭及び/又は導電性ポリマーからなる。前記リン複合材料における前記赤リンの重量パーセンテージは15%〜90%であり、前記リン複合材料における前記導電基体の重量パーセンテージは10%〜85%である。
【発明の効果】
【0013】
従来の技術と比べて、本発明のリン複合材料は、リチウムイオン二次電池に用いられることができ、即ちリチウムイオン二次電池の電極材料として用いられることができる。本発明のリン複合材料を採用してリチウムイオン二次電池の活性物質として応用する場合、−20℃〜80℃の温度でも可逆的に充/放電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明実施例3のリン複合材料を採用したリチウムイオン二次電池の充/放電特性を示す曲線図である。
【図2】本発明実施例4のリン複合材料を採用したリチウムイオン二次電池の充/放電特性を示す曲線図である。
【図3】本発明実施例4のリン複合材料を採用したリチウムイオン二次電池の充/放電サイクル特性を示す曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
本実施形態の電気化学的に可逆的なリチウムイオン吸蔵のためのリン複合材料は、導電基体及び赤リンを含む。前記導電基体は、導電性炭および(または)導電性ポリマーからなる。前記リン複合材料における前記赤リンの重量パーセンテージは15%〜90%であり、前記リン複合材料における前記導電基体の重量パーセンテージは10%〜85%である。
【0017】
前記導電性ポリマーは、導電性共役共重合体であることが好ましい。前記導電性ポリマーは、赤リンの触媒作用で、有機ポリマーから水素を除くと同時に炭化反応によって形成したものである。また、前記導電性ポリマーは、有機ポリマーから脱水反応、脱ハロゲン化水素反応又は脱アミン反応によって形成することがある。前記有機ポリマーは、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスチレン、ポリエチレン・オキシド、ポリビニル・アルコール(PVA)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、1,2―ビス塩化ビニル樹脂、1,2―ビス塩化エチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、フェノール樹脂の一種又は数種からなる。
【0018】
前記導電性炭は、活性炭、アセチレン・ブラック、導電性黒鉛又は導電性無定形炭の一種又は数種からなる。前記導電性無定形炭は、砂糖又はセルロースのような有機物の脱水素反応によって形成し、且つそれによって導電性能を有するものである。
【0019】
前記リン複合材料の製造方法は、重量比が1:10〜5:1である原料(有機ポリマー及び導電性炭の少なくとも1つからなる)と赤リンを混合させて混合物を形成するステップ(a)と、不活性雰囲気又は真空条件で、前記ステップ(a)で得られる混合物を50℃〜120℃の範囲内の温度に昇温して乾燥させるステップ(b)と、不活性雰囲気で、前記ステップ(b)で得られる混合物を250℃〜600℃の範囲内の温度に加熱して熱処理するステップ(c)、前記混合物における赤リンを気化した後、徐々に室温まで冷却するステップ(d)と、を含む。
【0020】
前記ステップ(a)で、原料と赤リンを混合することは、研磨若しくはボールミル粉砕して粉末を形成するステップ(aa)、赤リンの粉末を前記原料粉末に混合するステップ(ab)、を含む。
【0021】
前記ステップ(a)で、前記原料は、有機ポリマー及び/又は導電性炭からなる。前記有機ポリマーは、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスチレン、ポリエチレン・オキシド、ポリビニル・アルコール(PVA)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、1,2―ビス塩化ビニル樹脂、1,2―ビス塩化エチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フェノール樹脂の一種又は数種である。更に、ステップ(c)において、有機ポリマーは赤リンの触媒作用で導電性ポリマーを形成し、且つ前記赤リンは前記導電性ポリマーに吸蔵されることができる。前記有機ポリマーは、セルロース、グルコースまたはアミラーゼである。前記導電性炭は、活性炭、アセチレン・ブラック、導電性黒鉛又は導電性無定形炭の一種又は数種からなる。
【0022】
前記ステップ(b)で、混合物における水又は不純物を蒸発するために、混合物を1時間〜10時間乾燥させる。前記不活性雰囲気は、窒素ガス、希ガス、アルゴン雰囲気又はヘリウム雰囲気である。
【0023】
前記ステップ(c)で、熱処理は密閉反応室で行い、混合物の熱処理期間は、前記混合物の量によって決定するが、例えば1時間〜48時間の間で熱処理する。前記ステップ(d)で、前記密閉反応室において室温まで冷却する。前記原料が有機ポリマー又は導電性炭である場合、気化された赤リンと吸着方式で原位複合して(赤リンは吸蔵されて)電気化学的に可逆的なリチウムイオン吸蔵のためのリン複合材料を形成する。
【0024】
前記リン複合材料は、リチウムイオンの可逆的な挿入/脱離が可能な物質として用いられ、例えば電極活性材料としてリチウムイオン二次電池に応用されることができる。前記リン複合材料はリチウムイオン二次電池に応用される場合、前記リチウムイオン二次電池が正極、負極及び電解液を含む。前記リン複合材料は、前記負極の活性材料として用いられることができる。前記正極の活性材料は、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)、リン酸鉄リチウム(LiFePO)などの少なくとも一種である。前記電解液は、通常少なくとも1つの溶剤及びリチウム金属塩を含んでいる。前記リチウム金属塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)である。前記電解液に含まれる溶剤は、エチレン・カーボネート、プロピレン・カーボネート、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸エチルメチルなどの少なくとも一種である。
【0025】
(実施例1)
リチウムイオン二次電池に用いられたリン複合材料の製造方法は、重量比が1:4であるポリアクリロニトリル(PAN,Aldrich会社の製品)と赤リンを混合させて混合物を形成するステップ(a1)と、窒素ガス雰囲気で、前記ステップ(a1)で得られる混合物を70℃まで昇温して、6時間乾燥させるステップ(b1)と、前記ステップ(b1)で得られる混合物を、密閉反応室において、前記密閉反応室に窒素ガスを導入し、且つ前記混合物を500℃まで加熱して、12時間保持して熱処理するステップ(c1)と、前記混合物における赤リンを気化した後、前記混合物を前記密閉反応室において、徐々に室温まで冷却するステップ(d1)と、を含む。
【0026】
前記ステップ(c1)で、赤リンの触媒作用で、前記ポリアクリロニトリルは、脱水素反応によって導電性共役共重合体を形成すると同時に、前記気化された赤リンが吸着方式で前記導電性共役共重合体と原位複合してリン複合材料を形成する。前記リン複合材料は、導電基体とした導電性共役共重合体及び赤リンを含む。元素分析計器を通じて測定すると、前記リン複合材料における前記赤リンの重量パーセンテージは55%であり、前記リン複合材料における前記導電基体の重量パーセンテージは45%である。
【0027】
さらに、本実施例は、リン複合材料を採用したリチウムイオン二次電池を提供する。前記リチウムイオン二次電池の負極は、負極材料と負極集電体を含む。前記負極材料は、重量比が80:10:5:5のリン複合材料、粘着剤、導電剤及び分散剤からなる。前記粘着剤は、ポリエチレン(テトラフルオロエチレン)である。前記導電剤は、重量比が1:1のアセチレン・ブラック及び導電黒鉛からなる。前記分散剤は、エタノールである。前記リン複合材料、粘着剤、導電剤及び分散剤からなる負極材料を、前記負極集電体に塗って、120℃の温度で24時間まで真空乾燥して負極として用いる。前記リチウムイオン二次電池の正極は、リチウム金属板からなる。前記リチウムイオン二次電池の電解液は、体積比が1:1:1のエチレン・カーボネート、炭酸ジエチル及び炭酸ジメチルの混合液に、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を混合して形成する。
【0028】
本実施例1のリン複合材料を採用したリチウムイオン二次電池の充/放電特性を測定する。前記リチウムイオン二次電池の開路電圧は、2.7Vである。最初の充/放電容量は、650mAh/g以上である。40回の充/放電サイクルを終了しても、前記リチウムイオン二次電池の充/放電容量は、400mAh/gより高い。
【0029】
(実施例2)
リチウムイオン二次電池に用いられたリン複合材料の製造方法は、重量比が1:2であるポリ塩化ビニリデン(PVDC,Aldrich会社の製品)と赤リンを混合させて混合物を形成するステップ(a2)と、アルゴン雰囲気で、前記ステップ(a2)で得られる混合物を80℃まで昇温して、6時間乾燥するステップ(b2)と、前記ステップ(b2)で得られる混合物を、密閉反応室において、前記密閉反応室にアルゴン気体を導入し、且つ前記混合物を450℃まで加熱して、3時間保持して熱処理するステップ(c2)と、前記混合物における赤リンを気化した後、前記混合物を前記密閉反応室において、徐々に室温まで冷却するステップ(d2)と、を含む。
【0030】
前記ステップ(c2)で、赤リンの触媒作用で、前記ポリ塩化ビニリデンは、脱水素炭化反応によって導電性共役共重合体を形成すると同時に、前記気化された赤リンが吸着方式で前記導電性共役共重合体と原位複合してリン複合材料を形成する。前記リン複合材料は、導電基体としての導電性共役共重合体及び赤リンを含んでいる。元素分析計器を通じて測定すると、前記リン複合材料における前記赤リンの重量パーセンテージは40%であり、前記リン複合材料における前記導電基体の重量パーセンテージは60%である。
【0031】
さらに、本実施例は、前記リン複合材料を採用したリチウムイオン二次電池を提供する。前記リチウムイオン二次電池の負極は、負極材料と負極集電体を含んでいる。前記負極材料は、重量比が80:10:5:5のリン複合材料、粘着剤、導電剤及び分散剤からなる。前記粘着剤は、ポリエチレン(テトラフルオロエチレン)である。前記導電剤は、重量比が1:1のアセチレン・ブラック及び導電黒鉛からなる。前記分散剤は、エタノールである。前記リン複合材料、粘着剤、導電剤及び分散剤からなる負極材料を、前記負極集電体に塗って、120℃の温度で24時間まで真空乾燥して負極として用いる。前記リチウムイオン二次電池の正極は、リチウム金属板からなる。前記リチウムイオン二次電池の電解液は、体積比が1:1:1のエチレン・カーボネート、炭酸ジエチル及び炭酸ジメチルの混合液に、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を混合して形成する。
【0032】
本実施例2のリン複合材料を採用したリチウムイオン二次電池の充/放電特性を測定する。前記リチウムイオン二次電池の開路電圧は、2.7Vである。最初の充/放電容量は、1150mAh/g以上である。40回の充/放電サイクルを終了しても、前記リチウムイオン二次電池の充/放電容量は、300mAh/gより高い。
【0033】
(実施例3)
リチウムイオン二次電池に用いられたリン複合材料の製造方法は、重量比が1:1である活性炭と赤リンを混合させて混合物を形成するステップ(a3)と、窒素ガス雰囲気で、前記ステップ(a3)で得られる混合物を100℃まで昇温して、6時間乾燥するステップ(b3)と、前記ステップ(b3)で得られる混合物を、密閉反応室において、前記密閉反応室に窒素ガスを導入し、且つ前記混合物を470℃まで加熱して、6時間保持して熱処理するステップ(c3)と、前記混合物における赤リンを気化した後、前記混合物を前記密閉反応室において、徐々に室温まで冷却するステップ(d3)と、を含む。
【0034】
前記ステップ(c3)で、熱処理過程に前記気化された赤リンが前記活性炭に吸着されてリン複合材料を形成する。前記リン複合材料は、導電基体としての活性炭及び赤リンを含んでいる。元素分析計器を通じて測定すると、前記リン複合材料における前記赤リンの重量パーセンテージは30%であり、前記リン複合材料における前記活性炭の重量パーセンテージは70%である。
【0035】
さらに、本実施例は、前記リン複合材料を採用したリチウムイオン二次電池を提供する。前記リチウムイオン二次電池の負極は、負極材料と負極集電体を含んでいる。前記負極材料は、リン複合材料、粘着剤、導電剤及び分散剤からなり、ここでリン複合材料、粘着剤と導電剤の重量比が4:5:5である。前記粘着剤は、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVDF−PHFP)である。前記導電剤は、アセチレン・ブラックからなる。前記分散剤は、N-メチル-2-ピロリドン(N−methylpyrrolidone,NMP)である。前記リチウムイオン二次電池の正極は、リチウム金属板からなる。前記リチウムイオン二次電池の電解液は、体積比が1:1:1のエチレン・カーボネート、炭酸ジエチル及び炭酸ジメチルの混合液に、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を混合して形成する。
【0036】
本実施例3のリン複合材料を採用したリチウムイオン二次電池の充/放電特性を測定する。図1を参照し、本実施例3のリン複合材料を採用したリチウムイオン二次電池の充/放電特性を示す曲線図である。前記図1に示す曲線座標図中、横座標軸は前記リチウムイオン二次電池の充/放電量を表示し、縦座標軸は電圧を表示する。前記図1に示すように本実施例3のリン複合材料を採用したリチウムイオン二次電池は、あきらかな充/放電過度区を有する。前記リチウムイオン二次電池の開路電圧は、2.6Vである。最初の充/放電容量は、900mAh/g以上である。40回の充/放電サイクルを終了しても、前記リチウムイオン二次電池の充/放電容量は、また500mAh/gより高い。
【0037】
(実施例4)
リチウムイオン二次電池に用いられたリン複合材料の製造方法は、重量比が1:1である導電黒鉛と赤リンを混合させて混合物を形成するステップ(a4)と、アルゴン雰囲気で、前記ステップ(a4)で得られる混合物を100℃まで昇温して、6時間乾燥するステップ(b4)と、前記ステップ(b4)で得られる混合物を、密閉反応室において、前記密閉反応室にアルゴン気体を充填し、且つ前記混合物を600℃まで加熱して、6時間まで保持して熱処理するステップ(c4)と、前記混合物における赤リンを気化した後、前記混合物を前記密閉反応室において、徐々に室温まで冷却するステップ(d4)と、を含む。
【0038】
前記ステップ(c4)で、熱処理過程において前記気化された赤リンが前記導電黒鉛に吸着されてリン複合材料を形成する。前記リン複合材料は、導電基体としての導電黒鉛及び赤リンを含んでいる。元素分析計器を通じて測定すると、前記リン複合材料における前記赤リンの重量パーセンテージは15%であり、前記リン複合材料における前記導電黒鉛の重量パーセンテージは85%である。
【0039】
さらに、本実施例は、前記リン複合材料を採用したリチウムイオン二次電池を提供する。前記リチウムイオン二次電池の負極は、負極材料と負極集電体を含んでいる。前記負極材料は、リン複合材料、粘着剤、導電剤及び分散剤からなり、ここでリン複合材料、粘着剤と導電剤の重量比が4:5:5である。前記粘着剤は、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVDF−PHFP)である。前記導電剤は、アセチレン・ブラックからなる。前記分散剤は、N-メチル-2-ピロリドン(N−methylpyrrolidone,NMP)である。前記リチウムイオン二次電池の正極は、リチウム金属板からなる。前記リチウムイオン二次電池の電解液は、体積比が1:1:1のエチレン・カーボネート、炭酸ジエチル及び炭酸ジメチルの混合液に、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を混合して形成する。
【0040】
本実施例4のリン複合材料を採用したリチウムイオン二次電池の充/放電特性を測定する。図2を参照し、本実施例4のリン複合材料を採用したリチウムイオン二次電池の充/放電特性を示す曲線図である。前記図2に示す曲線座標図中、横座標軸は前記リチウムイオン二次電池の充/放電量を表示し、縦座標軸は電圧を表示する。前記図2に示すように本実施例4のリン複合材料を採用したリチウムイオン二次電池は、あきらかな充/放電過度区を有する。図3を参照し、本実施例4のリン複合材料を採用したリチウムイオン二次電池の充/放電循環性能を示す曲線図である。前記図3に示す曲線図中、横座標軸はリチウムイオン二次電池の循環回数を表示し、縦座標軸は前記リチウムイオン二次電池の充/放電容量を表示する。最初の充/放電容量は、900mAh/g以上である。60回の充/放電サイクルを終了しても、前記リチウムイオン二次電池の充/放電容量は、500mAh/gより高く、且つ充/放電効率が約100%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電基体と赤リンからなる可逆的にリチウムイオンを吸蔵するためのリン複合材料であって、
前記導電基体は、導電性炭及び/又は導電性ポリマーからなり、
前記リン複合材料における前記赤リンの重量パーセンテージは15%〜90%であり、
前記リン複合材料における前記導電基体の重量パーセンテージは10%〜85%であることを特徴とする電気化学的に可逆的なリチウムイオンを吸蔵するためのリン複合材料。
【請求項2】
前記導電性ポリマーは、赤リンの触媒作用で、有機ポリマーが脱水反応、脱ハロゲン化水素反応又は脱アミン反応することによって形成したものであることを特徴とする請求項1に記載の電気化学的に可逆的なリチウムイオンを吸蔵するためのリン複合材料。
【請求項3】
重量比が1:10〜5:1である導電性炭及び/又は導電性ポリマーからなる原料と赤リンを混合させて混合物を形成する第一ステップと、
不活性雰囲気又は真空条件で、前記混合物を50℃〜120℃の範囲内の温度に昇温して乾燥させる第二ステップと、
不活性雰囲気で、前記乾燥した混合物を250℃〜600℃の範囲内の温度に加熱して熱処理する第三ステップと、
前記混合物における赤リンを気化した後、徐々に室温まで冷却する第四ステップと、を含むことを特徴とする電気化学的に可逆的なリチウムイオンを吸蔵するためのリン複合材料の製造方法。
【請求項4】
正極、負極及び電解液を含むリチウムイオン二次電池であって、
前記負極の活性材料は、請求項1又は2に記載のリン複合材料を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−219051(P2010−219051A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62276(P2010−62276)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】