説明

リン酸アルミニウムスラリー

非晶質のリン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、及び/又はこれらの組み合わせと分散剤とを含むスラリー組成物が記載されている。ある実施態様において、スラリーの総重量に基づき、ポリリン酸オルトリン酸及び/又はメタリン酸濃度は、約40〜約70重量%であり、分散剤濃度は、約3.5重量%未満である。一実施態様において、組成物は、塗料、ワニス、印刷インク、紙、及びプラスチックにおいて有用である。組成物は、多様な適用において二酸化チタンの代替物として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(先行関連出願)
本願は、2008年2月12日に出願された米国仮出願第61/065,493号に対する優先権を主張する。米国特許実務のために、該仮特許出願の内容は、そのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
(本発明の分野)
リン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム、又はこれらの組み合わせと分散剤とを含むスラリー状の組成物を本明細書に提供する。該スラリーにおけるリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、又はポリリン酸アルミニウムの粒子は、1つ以上の空隙によって特徴づけられる。塗料におけるこのような組成物の使用及び他の適用がさらに提供される。
【背景技術】
【0003】
二酸化チタン顔料は、後方散乱可視光に対するその強力な能力により、塗料において最も広く使用されている白色顔料であり、該後方散乱可視光はまた該二酸化チタン顔料の屈折率に依存する。二酸化チタンの代替物が探索されているが、鋭錐石形態及び金紅石形態の二酸化チタンの屈折率は、構造的理由に起因して、その他の白色粉末の屈折率よりも非常に高い。
【0004】
二酸化チタン顔料は、それが分散している被覆溶媒に不溶性である。このような物理的及び化学的特性を含む該二酸化チタン顔料の性能特性は、顔料の粒子サイズ及びその表面の化学組成により決定される。二酸化チタンの装飾的及び機能的能力はその散乱力に起因しており、これが二酸化チタンを非常に望ましい顔料にしている。しかしながら、二酸化チタンは、製造に費用のかかる顔料であることが知られている。したがって、顔料として二酸化チタンのより安価な代替物が必要である。
【0005】
非晶質リン酸アルミニウム粒子は、塗料及び他の適用における二酸化チタン白色顔料の代替物として文献に報告されている。例えば、米国特許公報第2006/0211798号及び第2006/0045831号及び第2008/0038556号を参照されたい。これらの特許出願の開示は、それらのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれている。
非晶質リン酸アルミニウムの効率的かつ費用効果の高い組成物を開発することが持続的に必要である。
【発明の概要】
【0006】
リン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウムの粒子又はこれらの混合物と分散剤とを含むスラリー状の組成物を本明細書に提供する。また、該組成物を製造する方法も提供する。スラリーにおけるリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、又はポリリン酸アルミニウムの粒子は、粉末状にある場合、非晶質のリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、又はポリリン酸アルミニウムの1粒子あたりの1つ以上の空隙によって特徴づけられる。一実施態様において、スラリーにおけるリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、又はポリリン酸アルミニウムの粒子は、粉末状にある場合、非晶質のリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、又はポリリン酸アルミニウムの1粒子あたりの1〜4個の空隙によって特徴づけられる。ある実施態様において、スラリーにおける非晶質のリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、又はポリリン酸アルミニウムは、1立方cmあたり約1.95〜2.50gの骨格密度(skeletal density)によって特徴づけられる。ある実施態様において、スラリーにおける非晶質のリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、又はポリリン酸アルミニウムは、約0.5〜1.75、0.65〜1.75、0.5〜1.5、又は0.8〜1.3のリン:アルミニウムモル比を有する。一実施態様において、スラリーにおける非晶質のリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、又はポリリン酸アルミニウムは、約0.5〜1.5又は0.8〜1.3のリン:アルミニウムモル比を有する。粉末状において、非晶質のリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、又はポリリン酸アルミニウムは、約5〜80nmの平均個別粒子半径サイズを含んでもよい。ある実施態様において、非晶質のリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、又はポリリン酸アルミニウムは、粉末状にある場合、約10〜80、20〜80、30〜80、10〜50、又は10〜40nmの平均個別粒子半径サイズを含んでもよい。
【0007】
いずれかの特定の理論と結び付けられることなく、スラリー組成物における分散剤によって、より高い濃度の不揮発性物質、例えばある実施態様においては、スラリーの総重量に基づいて約40又は50重量%を超える不揮発性物質、又は他の実施態様においては又はスラリーの総重量に基づいて約40又は50重量%を超えるリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム若しくはポリリン酸アルミニウム、又はこれらの組み合わせを達成することができると考えられる。ある態様において、分散剤を含むスラリー組成物は、所望の適用、例えば塗料におけるスラリー組成物の使用に適した粘度を有する粘性のある液体として存在する。ある実施態様において、分散剤を使用しないリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、又はポリリン酸アルミニウムの分散液は、より低い不揮発性物質濃度で、例えばスラリーの総重量に基づいて35重量%未満で又は約35重量%で低い粘度を呈する。他の実施態様において、分散剤を使用しないリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、又はポリリン酸アルミニウムの分散液は、より高い不揮発性物質濃度で、例えばスラリーの総重量に基づいて35重量%超の又は約35重量%で高い粘度を呈する。このような非常に粘性のあるスラリーは、例えば塗料適用及び他の適用における使用に適していない。ある実施態様において、より低い濃度の不揮発性物質を又はより低い濃度のリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、若しくはポリリン酸アルミニウム、及びこれらの組み合わせを含むスラリーが沈下し、それにより容易には分散しない硬く充填された沈降物を製造する。
【0008】
ある実施態様において、スラリーにおける非晶質のリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、又はポリリン酸アルミニウムはさらに、ナトリウム、リチウム、カルシウム、カリウム、ホウ酸、アンモニウム、又はこれらの組み合わせ等のイオンを含む。ある実施態様において、該イオンは、ナトリウム、カリウム及びリチウムイオンから選択される。一実施態様において、該イオンはナトリウムイオンである。ある実施態様において、スラリーは、リン酸アルミニウムナトリウム、メタリン酸アルミニウムナトリウム、オルトリン酸アルミニウムナトリウム、若しくはポリリン酸アルミニウムナトリウム、又はこれらの混合物と、分散剤又は分散剤の混合物とを含む。
【0009】
リン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、若しくはポリリン酸アルミニウム、又はそれらの混合物を含むスラリーは、塗料における一成分として使用されてもよい。ある実施態様において、スラリーは、二酸化チタンの(部分における又は全体における)代替物として使用される。また、スラリーは、ワニス、印刷インク、紙又はプラスチックにおける一成分として使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1:100s-1での51%リン酸アルミニウムスラリー粘度に及ぼす分散剤の種類及び濃度の効果。断続線は、沈降を伴わない低粘度の間隔を示す(900〜1150cPs)。
【図2】図2:室温(24±2℃)で3週間後に100s-1で51%リン酸アルミニウムスラリー粘度に及ぼす分散剤の種類及び濃度の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の記載において、単語「約」又は「およそ」をその関連で使用するか否かにかかわらず、本明細書に開示されている全ての数は概数である。数は、1%、2%、5%、又は時には、10〜20%まで変化し得る。下限RL及び上限RUを有する数的範囲を開示する場合には常に、該範囲内に収まる任意の数が具体的に開示される。特に、該範囲内の以下の数が具体的に開示される:R=RL+k*(RU−RL)(式中、kは1%の増分を有する1%〜100%の範囲にわたる変数であり、すなわち、kは、1%、2%、3%、4%、5%、・・・、50%、51%、52%、・・・、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である。)。さらに、先に定義した2つのR数で定義した全ての数的範囲も具体的に開示される。
【0012】
リン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、若しくはポリリン酸アルミニウム、又はこれらの混合物と分散剤とを含むスラリー状のリン酸アルミニウム組成物を本明細書に提供する。本明細書で使用する用語「リン酸アルミニウム」は、リン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、又はポリリン酸アルミニウム、及びこれらの混合物を含むことを意味する。
【0013】
本明細書で使用される用語「スラリー」は、溶媒におけるリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム若しくはポリリン酸アルミニウム、及び/又はこれらの混合物を含む不揮発性粒子を含む均質な懸濁液又は分散液を指す。ある実施態様において、溶媒は、水を含み又は水である。ある実施態様において、スラリーは、リン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、若しくはポリリン酸アルミニウム、及び/又はこれらの混合物を含む、スラリーの総重量に基づいて30、40、50、60又は70重量%を超える不揮発性粒子を含む。いくつかの実施態様において、(水などの)溶媒に懸濁した又は分散した粒子は、コロイド状溶液を形成し、該溶液は比較的長い時間にわたって安定である。コロイド状溶液は、固体が液体に懸濁した連続的な液相を有するコロイドである。
【0014】
本明細書で言及される用語「空隙」は一般的に、用語「中空粒子」と同義的であり、本明細書において「閉じた空隙」としても記載される。空隙(又は閉じた空隙若しくは中空粒子)は、リン酸アルミニウム混合物の中心及び殻の構造の一部である。空隙は、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡(「TEM」又は「SEM」)のいずれかを使用して観察でき及び/又は特徴づけできる。TEM又はSEMの使用は、当業者に周知である。一般的には、光学顕微鏡は、光の波長により、百nm、及び通常は数百nmの範囲の解像度に制限される。TEM及びSEMはこの制限を有さず、数nmの範囲で、かなり高い解像度を得ることができる。光学顕微鏡は、光学レンズを使用して、光波を曲げることによって光波の焦点を合わせるのに対し、電子顕微鏡は、電磁レンズを使用して、電子ビームを曲げることによって電子ビームの焦点を合わせる。電子ビームは、拡大率レベルの制御、及び作成できる画像の明瞭度の両方において、光ビームを超える卓越した利点を提供する。走査型電子顕微鏡は、試料表面の三次元画像を得るためのツールを提供する点で、透過型電子顕微鏡を補完する。
【0015】
非晶質(すなわち、非結晶性)固体は、同様の組成を有する該固体の結晶性対応物との差異を示し、このような差異は有益な特性を生じる場合がある。例えば、このような差異は、以下の1つ以上を含み得る:(i)非結晶性固体は、はっきりと明確な角度でX線を回折しないが、代わりに広い散乱ハローを生成し得る;(ii)非結晶性固体は、十分に定義された化学量論性を有さず、したがって広範囲の化学組成を網羅できる;(iii)化学組成の変動性は、アルミニウムイオン及びリン酸イオン以外のイオン構成要素を組み込む可能性を含んでいる;(iv)非晶質固体は熱力学的に準安定的になるにつれて、自発的な形態的、化学的及び構造的変化をする傾向を示し得る;及び、(v)結晶性粒子表面の化学組成が高度に均一であるのに対し、非晶質粒子の表面の化学組成は、突然に又は段階的にのいずれかで、大きな又は小さな差異を示し得る。さらに、結晶性固体の粒子は、周知のオストワルド熟成機構により成長する傾向があるのに対し、非結晶性粒子は、水の吸着及び脱離により膨張し又は膨潤し及び収縮する(脱膨潤する)ことができ、剪断、圧縮又は毛管力を受ける場合に容易に変形するゲル様材料又はプラスチック材料を形成する。
【0016】
スラリーにおけるリン酸アルミニウム粒子は、粉末状にある場合、非晶質リン酸アルミニウム1粒子あたり1つ以上の空隙によって特徴づけられる。一実施態様において、スラリーにおけるリン酸アルミニウム粒子は、粉末状にある場合、非晶質リン酸アルミニウム1粒子あたり1〜4個の空隙によって特徴づけられる。
【0017】
ある実施態様において、スラリーにおけるリン酸アルミニウム粒子は、約1.73〜2.40g/cm3の骨格密度によって特徴づけられる。一実施態様において、骨格密度は2.40g/cm3未満である。別の実施態様において、骨格密度は2.30g/cm3未満である。別の実施態様において、骨格密度は2.10g/cm3未満である。さらに別の実施態様において、骨格密度は1.99g/cm3未満である。一実施態様において、スラリーにおける非晶質リン酸アルミニウムは、1立方cmあたり約1.95、1.98、2.00、又は2.25gの骨格密度によって特徴づけられる。
【0018】
一実施態様において、スラリーにおける非晶質リン酸アルミニウムは、約0.5〜1.5のリン:アルミニウムモル比を有する。別の実施態様において、スラリーにおける非晶質リン酸アルミニウムは、約0.8〜1.3のリン:アルミニウムモル比を有する。ある実施態様において、リン:アルミニウムモル比は、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、又は1.5である。さらなる実施態様において、リン:アルミニウムモル比は、約0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、又は1.3である。
【0019】
粉末状において、非晶質リン酸アルミニウムは、約5〜80nmの平均個別粒子半径サイズを含んでもよい。ある実施態様において、非晶質リン酸アルミニウムは、約5〜40、10〜80、10〜40、20〜80、又は20〜40nmの平均個別粒子半径サイズを含んでもよい。
【0020】
ある実施態様において、リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム及び/又はメタリン酸アルミニウムが粉末状にある場合、差動走査熱量測定検査に供した試料は、一般的に90℃〜250℃で生じる2つの異なる吸熱ピークを示すであろう。一実施態様において、第一のピークは、およそ96℃〜116℃のおよその温度で生じ、第二のピークは、149℃〜189℃のおよその温度で生じる。別の実施態様において、2つのピークはおよそ106℃及びおよそ164℃で生じる。
【0021】
ある実施態様において、本明細書に提供されたスラリー組成物は、ASTM D280に従って測定された約40〜約75重量%の不揮発性物質を含む。ある実施態様において、スラリーは、総重量に基づいて約40重量%〜約60重量%の不揮発性物質を含む。一実施態様において、スラリーは、総重量に基づいて約50重量%〜約60重量%の不揮発性物質を含む。他の実施態様において、スラリーは、総重量に基づいて約20、30、40、45、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、若しくは60重量%又はそれより多くの不揮発性固体を含む。別の実施態様において、スラリーは、総重量に基づいて約51、53又は58重量%の不揮発性物質を含む。
【0022】
ある実施態様において、スラリーは、約25重量%〜約70重量%のリン酸アルミニウムを含む。ある実施態様において、スラリーは、総重量に基づいて約40重量%〜約60重量%のリン酸アルミニウムを含む。一実施態様において、スラリーは、総重量に基づいて約50重量%〜約60重量%のリン酸アルミニウムを含む。別の実施態様において、スラリーは、総重量に基づいて20、30、40、45、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59若しくは60重量%又はそれより多くのリン酸アルミニウムを含む。一実施態様において、スラリーは、総重量に基づいて約51、53又は58重量%のリン酸アルミニウムを含む。
【0023】
ある実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリーは、100〜500s-1の剪断速度で測定された約300cPs〜約3500cPsの範囲の粘度を有する(実施例3に記載されるように、Rheoterm 115 Rheometerを使用して測定された。)。他の実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリーは、100s-1の剪断速度で約550cPs~約3000cPsの範囲の粘度を有する。一実施態様において、本明細書に提供されるリン酸アルミニウムスラリーは、100/秒の剪断速度で約900cPs〜約1150cPsの範囲の粘度を有する。別の実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリーは、100〜500s-1の剪断速度で測定された約300、400、500、600、700、800、900、1000、1200、1400、1600、1800、2000、2200、2400、2600、2800、又は3000cPsの粘度を有する。
【0024】
本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリーにおける分散剤は、無機及び有機リン酸を含むリン酸分散剤、ホウ酸分散剤、ケイ酸分散剤、アルミン酸分散剤、いずれかの陰イオン性若しくは非イオン性界面活性剤又は当業者に公知の可溶性のポリマー若しくはオリゴマー、及びこれらのいずれかの組み合わせから選択される。
【0025】
ある実施態様において、分散剤は、ピロリン酸四ナトリウム(TSPP)、六メタリン酸ナトリウム、三リン酸五ナトリウム、リン酸三ナトリウム十二水和物、ピロリン酸四カリウム(TKPP)、三リン酸カリウムナトリウム又はこれらの組み合わせから選択される。一実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤濃度は、スラリーの総重量に基づいて約3.5重量%未満である。別の実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤濃度は、スラリーの総重量に基づいて約3、2.5、2、1.5又は1重量%未満である。一実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約50重量%〜約60重量%のリン酸アルミニウムと、約3、2.5、2、1.5又は1重量%未満の分散剤とを含む。
【0026】
一実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて約0.10〜約1.00重量%の濃度でリン酸三ナトリウム十二水和物を含む。別の実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて約0.20〜約0.75重量%の濃度でリン酸三ナトリウム十二水和物を含む。さらに別の実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて約0.20〜約0.50重量%の濃度でリン酸三ナトリウム十二水和物を含む。さらなる実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて約0.20、0.22、0.24、0.27、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60又は0.75重量%の濃度でリン酸三ナトリウム十二水和物を含む。
【0027】
一実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約50重量%〜約60重量%のリン酸アルミニウムと、約2重量%未満又は約1重量%未満のリン酸三ナトリウム十二水和物とを含む。一実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約50重量%〜約60重量%のリン酸アルミニウムと、約0.20重量%〜約0.75重量%のリン酸三ナトリウム十二水和物とを含む。別の実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約51、53又は58重量%のリン酸アルミニウムと、約0.24又は約0.50重量%のリン酸三ナトリウム十二水和物とを含む。さらなる実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約51重量%のリン酸アルミニウムと、約0.24又は約0.50重量%のリン酸三ナトリウム十二水和物とを含む。
【0028】
別の実施態様において、本明細書に提供されるリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて約0.10〜約1.50重量%の濃度でピロリン酸四ナトリウムを含む。一実施態様において、本明細書に提供されるリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて約0.25〜約1.00重量%の濃度でピロリン酸四ナトリウムを含む。別の実施態様において、本明細書に提供されるリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて約0.25、0.27、0.30、0.35、0.45、0.50、0.75、0.97、又は1.00重量%の濃度でピロリン酸四ナトリウムを含む。
【0029】
一実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約50重量%〜約60重量%のリン酸アルミニウムと、約2重量%未満又は約1重量%未満のピロリン酸四ナトリウム(TSPP)とを含む。一実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約50重量%〜約60重量%のリン酸アルミニウムと約0.2重量%〜約1.00重量%のピロリン酸四ナトリウムとを含む。別の実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約51、53又は58重量%のリン酸アルミニウムと約0.25、0.27、0.50、0.97、又は1.00重量%のピロリン酸四ナトリウムとを含む。さらに別の実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて約51重量%のリン酸アルミニウムと約0.25、0.50、又は1.00重量%のピロリン酸四ナトリウムとを含む。
【0030】
一実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて約0.10〜約3.00重量%の濃度で三リン酸五ナトリウムを含む。別の実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて約0.10〜約1.60重量%の濃度で三リン酸五ナトリウムを含む。さらに別の実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて約0.25〜約1.00重量%の濃度で三リン酸五ナトリウムを含む。さらなる実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて約0.25、0.30、0.50、0.53、0.75、0.99、1.00又は1.50重量%の濃度で三リン酸五ナトリウムを含む。
【0031】
一実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約50重量%〜約60重量%のリン酸アルミニウムと、約2重量%未満、約1.5重量%未満、又は約1重量%未満の三リン酸五ナトリウムとを含む。一実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約50重量%〜約60重量%のリン酸アルミニウムと、約0.10重量%〜約1.50重量%の三リン酸五ナトリウムとを含む。別の実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約51、53、又は58重量%のリン酸アルミニウムと、約0.50重量%の三リン酸五ナトリウムとを含む。さらに別の実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約51重量%のリン酸アルミニウムと約0.50重量%の三リン酸五ナトリウムとを含む。
【0032】
一実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて約0.10〜約2.00重量%の濃度でピロリン酸四カリウム(TKPP)を含む。別の実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて約0.10〜約1.75重量%の濃度でピロリン酸四カリウムを含む。さらに別の実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて約0.25〜約1.55重量%の濃度でピロリン酸四カリウムを含む。さらなる実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて約0.25、0.30、0.50、0.51、0.75、0.99、1.00、1.50又は1.54重量%の濃度でピロリン酸四カリウムを含む。
【0033】
一実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約50重量%〜約60重量%のリン酸アルミニウムと、約2重量%未満又は約1重量%未満のピロリン酸四カリウムとを含む。一実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約50重量%〜約60重量%のリン酸アルミニウムと、約0.50重量%〜約1重量%のピロリン酸四カリウムとを含む。別の実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約51、53、又は58重量%のリン酸アルミニウムと、約1重量%のピロリン酸四カリウムとを含む。さらなる実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約51重量%のリン酸アルミニウムと約1重量%のピロリン酸四カリウムとを含む。
【0034】
一実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて約0.10〜約3.50重量%の濃度で三リン酸カリウムナトリウムを含む。別の実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて約0.10〜約3.10重量%の濃度で三リン酸カリウムナトリウムを含む。さらに別の実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて約0.25〜約1.55重量%の濃度で三リン酸カリウムナトリウムを含む。さらなる実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて約0.10、0.24、0.25、0.30、0.50、0.52、0.75、0.99、1.00、又は1.50重量%の濃度で三リン酸カリウムナトリウムを含む。
【0035】
一実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約50重量%〜約60重量%のリン酸アルミニウムと約2重量%未満又は約1重量%未満の三リン酸カリウムナトリウムを含む。一実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約50重量%〜約60重量%のリン酸アルミニウムと約1重量%の三リン酸カリウムナトリウムとを含む。別の実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約51、53、又は58重量%のリン酸アルミニウムと約1重量%の三リン酸カリウムナトリウムとを含む。さらなる実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約51重量%のリン酸アルミニウムと約1重量%の三リン酸カリウムナトリウムを含む。
【0036】
一実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて、約0.10〜約3.50重量%の濃度で六メタリン酸ナトリウムを含む。別の実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて、約0.10〜約3.10重量%の濃度で六メタリン酸ナトリウムを含む。一実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて、約0.25〜約1.55重量%の濃度で六メタリン酸ナトリウムを含む。別の実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物における分散剤は、スラリーの総重量に基づいて、約0.10、0.25、0.29、0.50、0.75、0.99、1.00、又は1.50重量%の濃度で六メタリン酸ナトリウムを含む。
【0037】
一実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約50重量%〜約60重量%のリン酸アルミニウムと、約2重量%未満又は約1重量%未満の六メタリン酸ナトリウムとを含む。一実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約50重量%〜約60重量%のリン酸アルミニウムと約0.25重量%〜約1重量%の六メタリン酸ナトリウムとを含む。別の実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約51、53、又は58重量%のリン酸アルミニウムと、約0.25又は約1重量%の六メタリン酸ナトリウムとを含む。別の実施態様において、本明細書に提供されたリン酸アルミニウムスラリー組成物は、スラリーの総重量に基づいて、約51重量%のリン酸アルミニウムと、約0.25又は約1重量%の六メタリン酸ナトリウムとを含む。
さらなる典型的な分散剤を表1a〜1eに列挙する。
【表1】

式中、n=2、3、4...である。
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0038】
(非晶質リン酸アルミニウム粒子を製造する方法)
スラリーにおいて使用される非晶質リン酸アルミニウム粒子は、当業者に公知のいずれかの方法によって製造することができる。典型的な方法は、本明細書に、並びに米国特許公報第2006/0211798号及び第2006/0045831号、並びに米国出願第11/891,510号に記載されている。このような特許出願の開示は、それらのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれている。
【0039】
一実施態様において、スラリー調合製品において使用されるリン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、オルトリン酸アルミニウム(又はこれらの組み合わせ)の中空の粒子を製造する方法は、以下の一般的な工程を含む。当業者は、ある工程が全く変化し又は省略されてもよいことを認識するであろう。工程は下記を含む:リン酸の希釈した溶液、硫酸アルミニウムの希釈した溶液、及び水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化アンモニウムの希釈した溶液など、該方法において使用される主要試薬の製造;該方法の間に混合物の均一性を維持するために、スロッシングシステムを装備した反応機における試薬の同時かつ制御された添加;反応機における試薬の添加の間の混合物の温度及びpH(酸性度)並びに主として反応時間の制御;適切な装置におけるおよそ8.0%の固体を有する懸濁液の濾過、並びに液相と固相との分離;弱アルカリ水溶液を使用したフィルターケークに存在する不純物の洗い出し;適切な分散機におけるおよそ20〜30%の固体を含有する洗浄したケークの分散;ターボ乾燥機における分散したパルプの乾燥;乾燥した生成物の5.0〜10ミクロンの平均顆粒度への微粒子化;及びか焼炉におけるリン酸アルミニウムの熱処理による乾燥した生成物の重合。
【0040】
この方法において主要試薬を製造するにはいくつかの方法がある。リン酸アルミニウムの製造のためのリンの1つの源は、清澄化され変色させたいずれかの起源由来の肥料等級のリン酸である。例えば、およそ54%のP2O5を含む市販のリン酸は、化学的に処理され、及び/又は処理された水で希釈され、結果的に20%P2O5の濃度となってもよい。また、この方法の代替として(肥料等級のリン酸又は精製されたリン酸の代わりに)、オルトリン酸塩、ポリリン酸塩又はメタリン酸塩としてのリンの塩を使用することができる。
【0041】
前記方法のための別の試薬は、市販の硫酸アルミニウムである。硫酸アルミニウムは、アルミナ(酸化アルミニウム水和物)と濃硫酸(98%H2SO4)との反応から得られた後に、清澄化され、28%濃度のAl2O3で保存されてもよい。反応が好ましい動態を有するために、5.0%のAl2O3で処理した水で硫酸アルミニウムを希釈する。この方法に対する代替として、アルミニウム源は、その他のアルミニウム塩、及び水酸化アルミニウム又は金属形態のアルミニウムであることができる。
【0042】
反応の中和は、異なる濃度で商業的に購入され得る水酸化ナトリウム溶液を使用して実施される。50%濃度のNaOHを購入して希釈してもよい。例えば、反応の第一の相において、最初の試薬を混合しているときに、水酸化ナトリウムを20%濃度のNaOHで使用してもよい。反応の第二の相において、生成物の酸性度を微調整する必要性により、5.0%のNaOHを有する水酸化ナトリウム溶液を使用してもよい。代替的な中和剤として、水酸化アンモニウム又は炭酸ナトリウム(ソーダ灰)を使用してもよい。
【0043】
一態様において、化学反応は結果的に、純粋型か又は混合型かのいずれかのオルトリン酸ヒドロキソアルミニウムを結果的に形成する(例えば、Al(OH)2(H2PO4)又はAl(OH)(HPO4))。記載されている反応は、3つの試薬、すなわちリン酸溶液、硫酸アルミニウム溶液、及び水酸化ナトリウム溶液の混合を通じて実施される。試薬は、スロッシングシステムを典型的に含む反応機において30分間調薬される。反応機における試薬の添加の間、混合物のpHは1.4〜4.5の範囲内に、反応温度は35℃〜40℃に制御される。試薬混合の15分後に反応を完了させる。この時点において、より多くの希水酸化ナトリウムを添加しながら、混合物のpHを3.0〜5.0に調整してもよい。この実施態様において、温度は好ましくは、およそ40℃未満である。反応終了時に、形成した懸濁液は、1.1〜1.5の範囲のリン:アルミニウム元素間モル比を含むべきである。
【0044】
オルトリン酸アルミニウムの形成後、約6.0〜10.0%の固体を含み、およその最大温度が45℃、密度が1.15〜1.25g/cm3の範囲の懸濁液を従来型のフィルタープレスへと汲み出す。フィルタープレスにおいて、液相(時には「リカー」と呼ばれる。)を固相(しばしば「ケーク」と呼ばれる。)から分離する。およそ18%〜45%の固体を含み、硫酸ナトリウム溶液がなおもおそらく混入している湿潤ケークを洗浄サイクルのためにフィルターにおいて維持する。基本的に濃硫酸ナトリウム溶液である濾過した濃縮物を、フィルターから抽出し、さらなる使用のために保存する。
【0045】
一実施態様において、フィルター自体において3つの方法工程において、湿潤ケークの洗浄を実施する。第一の洗浄において(「置換洗浄」)、ケークを混入している濾過した物質の最大部分を取り出す。6.0m3の水/乾燥ケーク1トンの流速で、処理した水をケーク上に使用して、洗浄工程を実施する。第二の洗浄工程も、処理した水を使用し、8.0m3の水/乾燥ケーク1トンの流量を使用して、排除されていない場合に混入物をさらに減少させるために実施してもよい。そして最後に、希アルカリ性溶液を使用する第三の洗浄工程を実施してもよい。このような第三の洗浄工程は、ケークの中和のために、及びケークのpHを7.0の範囲に維持するために実施してもよい。最後に、一定時間、圧縮された空気をケークに吹き付けてもよい。ある実施態様において、湿潤生成物は、35%〜45%の固体を含む。
【0046】
一態様において、湿潤し洗浄され、かつおよそ35%の固体を含むフィルターケークが、コンベヤーベルトによってプレスフィルターから抽出され、反応機/分散機に移されるような方法で、ケーク分散液が加工されてもよい。ケークの分散は、希ピロリン酸四ナトリウム溶液の添加によって補助される。
【0047】
分散工程の後、次に、固体の割合が18%〜50%内にある「泥状の」リン酸アルミニウムが乾燥ユニットへと汲みだされると、生成物を乾燥する。一実施態様において、材料からの水の除去は、135℃〜140℃の温度で熱風流の注入を試料に通すことを通じて、「ターボ乾燥機」型などの乾燥装置を使用して実施することができる。生成物の最終的な湿度は、10%〜20%の水の範囲に優先的に維持されるべきである。
【0048】
次の工程において、Al(H2PO4)3としての無水アルミニウムのオルトリン酸塩を熱処理によって濃縮し、中空のポリリン酸アルミニウム、すなわちAl(n+2)/3(PnO(3n+1))を形成する(式中、「n」は1よりも大きないずれかの整数であることができ、好ましくはnは4以上である)。ある実施態様において、nは、10以上である。他の実施態様において、nは20以上であり、100未満又は50未満である。この加工工程は、噴霧乾燥機において、500℃〜600℃の温度範囲でリン酸アルミニウムを加熱することによって実施することができる。重合の後、生成物を迅速に冷却して、微粒子化ユニットに送ってもよい。この時点で、生成物の微粒子化工程を実施してもよい。最後に、乾燥機に残っている結果的な生成物を粉砕及び仕上げユニットに移して、微粒子化装置/選別機においてすりつぶし、その微粒子度(granulometry)を99.5%の範囲で400メッシュ未満に維持する。
【0049】
別の態様において、スラリー組成物において使用されるリン酸アルミニウムの製造方法における工程には下記が含まれる:リン酸溶液、固体の水酸化アルミニウム水和物、及びアルミン酸ナトリウム溶液など、前記方法において使用する主な試薬の製造;該方法の間、混合物の均一性を維持するための、スロッシングシステムを備えた反応機における試薬の添加;反応機における試薬の添加の間の混合物の温度及びpH並びに反応時間の制御;懸濁液の濾過;濾過ケークに存在する不純物の洗い出し;洗浄したケークの適切な分散剤への分散;ターボ乾燥機又は噴霧乾燥機における分散パルプの乾燥;乾燥した生成物の平均微粒子度1.0〜10ミクロンへの微粒子化;並びにか焼炉におけるリン酸アルミニウムの熱処理による乾燥した生成物の重合。ある実施態様において、該方法は、リン酸溶液と硫酸アルミニウム溶液とをあらかじめ混合した後に反応機に添加する工程を含む。ある実施態様において、顔料におけるリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムは、20〜60重量%以上の不揮発性物質を有するスラリーパルプ(重力又は低圧ポンプの作用下で流れる固体の含有量の高いの分散液)として;約10〜30%、ある実施態様においては、10、12、15、17、20、25又は30%の湿度の乾燥しかつ微粒子化したリン酸アルミニウムとして;並びにまた、か焼しかつ微粒子化したポリリン酸アルミニウムとしての重合体形態で、製造し及び使用することができる。
【0050】
一実施態様において、非晶質リン酸アルミニウムは、リン酸と水酸化アルミニウムとの間の反応によって製造される。該方法はさらに、中和工程を含んでもよい。中和工程は、アルミン酸ナトリウムによって実施することができる。
【0051】
ある実施態様において、非晶質のリン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムを製造する方法は、リン酸、水酸化アルミニウム及びアルミン酸ナトリウムを反応させることを含む。
一実施態様において、非晶質のリン酸ナトリウム又はポリリン酸ナトリウムを製造する方法は、リン酸アルミニウムとアルミン酸ナトリウムとを反応させることを含む。
【0052】
一実施態様において、前記反応は2つの工程を含む。第一の工程において、リン酸を水酸化アルミニウムと反応させて、酸性pHのリン酸アルミニウムを製造する。一実施態様において、リン酸アルミニウムは、水溶性リン酸アルミニウムとして製造される。ある実施態様において、水溶性リン酸アルミニウムのpHは、約3.5未満である。ある実施態様において、該pHは約3、2.5、2、1.5又は1である。ある実施態様において、リン酸アルミニウムは、より高いpHの微細な固液分散液として製造される。一実施態様において、該pHは約3、4、5又は6である。
【0053】
第二の工程において、第一の化学的工程由来の酸性リン酸アルミニウム水溶液又は分散液をアルミン酸ナトリウムと反応させる。ある実施態様において、アルミン酸ナトリウムは、約10よりも大きなpHの水溶液として使用される。一実施態様において、アルミン酸ナトリウム水溶液のpHは、約11、12又は13である。一実施態様において、アルミン酸ナトリウム水溶液のpHは、約12よりも大きい。リン酸ナトリウムアルミニウムは、固体沈殿物として生じる。一実施態様において、固体リン酸ナトリウムアルミニウムは、モル比P/Al=0.85及びモル比Na/Al=0.50を有する。一実施態様において、固体リン酸ナトリウムアルミニウムは、モル比P/Al=1.0及びモル比Na/Al=0.76を有する。ある実施態様において、他の調合比を有する分子は、同じ手法で得ることができる。
【0054】
一実施態様において、第一の化学的工程において、固体の水酸化アルミニウム水和物をリン酸に添加する。別の実施態様において、固体の水酸化アルミニウム水和物を、精製した液体アルミン酸ナトリウム溶液に添加して、コロイド状溶液を形成する。別の実施態様において、第二の反応工程において、固体の水酸化アルミニウム水和物を、固体又は水における固液懸濁液として直接添加する。ある実施態様において、反応は単一工程で実施される。
【0055】
ある実施態様において、反応の第二の工程、すなわち、第一の化学的工程由来の酸性リン酸アルミニウム水溶液又は分散液とアルミン酸ナトリウムとの反応を実施するための反応機は、反応物を混合し、かつ所望の粒子サイズ分布を有する固体沈殿物を生じるための非常に高い混合及び剪断応力性能を有する。ある実施態様において、反応機の分散特性は、噴霧乾燥加工の必要条件に対して調整され得る。一実施態様において、反応機は、CS‐TR(連続的撹拌タンク反応機)である。
【0056】
本明細書に提供される製法において使用するためのアルミン酸ナトリウム溶液は、当業者に公知の方法によって得ることができる。一実施態様において、アルミン酸ナトリウム溶液は、ボーキサイト鉱石からのアルミナ(Al2O3)抽出におけるバイヤー法の第一の工程から結果的に生じる標準的な化学生成物であり、しばしば「精製された富ナトリウム溶液(sodium pregnant solution)」と呼ばれる。この液体アルミン酸ナトリウム水溶液は、大気温で飽和し、水酸化ナトリウムNaOHを使用して安定化する。典型的な組成は、58〜65質量%のアルミン酸ナトリウム(25〜28質量%のAl2O3)及び3.3〜5.5質量%の水酸化ナトリウム(2.5〜4質量%の遊離Na2O)である。ある実施態様において、該組成は、約1.10〜2.20のモル比Na/Al及び低不純物(ボーキサイトの出所による:Fe=40ppm、重金属=20ppm、及び少量の陰イオンCl-及びSO42-)を有する。ある実施態様において、アルミン酸ナトリウム水溶液は、約1.10、1.15、1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、2.0、2.05、2.10、2.15又は2.2のモル比Na/Alを有する。ある実施態様において、溶液の色は琥珀色である。ある実施態様において、溶液の粘度はおよそ100cPである。ある態様において、アルミン酸ナトリウム溶液は、研磨濾過(polishing filtration)によって精製される。ある実施態様において、アルミン酸ナトリウム溶液は、固体水酸化アルミニウム及び水酸化ナトリウムから再生される。
【0057】
固体の水酸化アルミニウム水和物は、当業者に公知の方法によって得られる。一実施態様において、水酸化アルミニウムは、バイヤー法によって製造された工業化学物質である。固体の水酸化アルミニウム水和物は、溶液を冷却することを介して達成される沈殿によって、「精製された富アルミン酸ナトリウム溶液」から得ることができる。一実施態様において、このように製造されたアルミン酸ナトリウムは、低レベルの不純物及び可変量の湿度(約70ppmの陽イオン、約0.85質量%の塩素酸及び約0.60質量%の硫酸(これらの不純物は、「精製された富アルミン酸ナトリウム溶液」の精製レベルによって決定される。))並びに全体の水、水和及び湿度約22.0〜23.5質量%を有する。一態様において、両方の原材料は、標準的な一次工業生成物であり、ボーキサイト加工からのまさに第一及び第二の工程であり、ボーキサイト加工装置によって莫大な量で生じる(一次産品)。
【0058】
一実施態様において、化学反応は、リン酸ナトリウムアルミニウム(Al(OH)0.7Na0.7(PO4)・1.7H2O)の形成をもたらす。リン酸ナトリウムアルミニウムの形成後、6.0%〜10.0%程度の固体を含み、最高およそ45℃の温度、及び1.15〜1.25g/cm3の範囲の密度を有する懸濁液を、従来型のフィルタープレスに汲み出す。一実施態様において、該懸濁液は、約5〜30%、10〜30%、又は15〜25%の固体を含んでいる。一実施態様において、該懸濁液は、約15〜25%の固体を含んでいる。一実施態様において、該懸濁液の密度は、1〜1.3又は1.10〜1.20g/cm3の範囲にある。フィルタープレスにおいて、液相(時に、「リカー」ともいわれる)は、固相(時に、「ケーク」ともいわれる)から分離される。およそ35〜40%の固体、ある実施態様においては、約35、40又は45%の固体を含む湿潤ケークを、洗浄サイクルの間、フィルターに維持する。
【0059】
一実施態様において、湿潤ケークの洗浄は、フィルター自体において、2〜3の製法工程で実施される。第一の洗浄(「置換洗浄」)において、ケークに混入している濾過物質の最大部分を取り出す。洗浄工程は、6.0m3の水/乾燥ケーク1トンの流速で、処理水をケーク上に使用して実施する。第二の洗浄工程も、処理水を8.0m3の水/乾燥ケーク1トンの流量で使用して実施して、混入物質を減少してもよい。そして最後に、水を使用して第三の洗浄工程を実施して、混入物をさらに減少してもよい。最終的に、一定時間、圧縮空気をケークに吹き付けてもよい。湿潤生成物は、35%〜45%の固体を呈するべきである。
【0060】
次に、この特定の実施態様において、ケーク分散液は、湿潤しかつ洗浄されたフィルターケークをコンベヤーベルトによってプレスフィルターから抽出し、反応機/分散機に移すような方法で加工してもよい。
ある実施態様において、ケークの分散液は、ポリリン酸ナトリウム溶液等の分散剤の添加によって補助される。
【0061】
一実施態様において、分散工程後、固体の割合が30%〜50%の範囲内であるリン酸アルミニウム「スラリー」が、乾燥ユニットに汲み出されると、生成物が乾燥する。別の実施態様において、材料からの水の除去は、熱風流の注入を通じての「ターボ乾燥機」、又は80℃〜350℃の温度での「噴霧乾燥機」など、乾燥装置を使用して試料を通じて実施することができる。生成物の最終的な湿度は、10%〜20%の水の範囲に維持することができる。
【0062】
ある実施態様において、本製法の次の工程には、生成物のか焼が含まれる。この工程において、無水リン酸アルミニウムのオルトリン酸イオンは、ポリリン酸イオン(二リン酸、三リン酸、四リン酸、n-リン酸、ここで「n」は、1よりも大きないずれかの整数であることができ、ある実施態様においては、nは4以上である。)への縮合を受ける。一実施態様において、nは10以上である。別の実施態様において、nは20以上である。一実施態様において、nは100未満である。別の実施態様において、nは50未満である。本製法工程は、か焼炉において、500℃〜600℃の温度範囲でリン酸アルミニウムを加熱することによって実施される。重合の後、生成物を迅速に冷却して、微粒子化ユニットに送ってもよい。この時点で、生成物微粒子化工程を実施してもよい。
【0063】
最後に、か焼炉に残っている結果的な生成物を粉砕及び仕上げユニットに移して、微粒子化装置/選別機においてすりつぶし、その微粒子度を99.5%の範囲で400メッシュ未満に維持する。
ある実施態様において、乾燥した生成物の微粒子化は、5.0〜10ミクロンの又は約0.1〜約5ミクロンの平均微粒子度になるまで実施される。
【0064】
(リン酸アルミニウムスラリー組成物の製造方法)
非晶質リン酸アルミニウムと1つ以上の分散剤とを含むリン酸アルミニウムスラリー組成物は、当業者に公知のいずれかの方法で製造することができる。一実施態様において、スラリー組成物は、組成物の総重量による約40〜約70重量%のリン酸アルミニウムを含んでおり、i)約30重量%のリン酸アルミニウムを含むストックスラリー;ii)例えば上記の方法によって得られるリン酸アルミニウム粉末;及びiii)分散剤を混合することによって製造される。
【0065】
一実施態様において、ストックスラリーは、約30〜40重量%の非晶質リン酸アルミニウムを含む。ストックスラリーは、例えば上記の方法において記載されるように製造することができる。
ある実施態様において、リン酸アルミニウムと1つ以上の分散剤とを含むスラリー組成物は、i)非晶質リン酸アルミニウム粉末、ii)分散剤又は分散剤の混合物及びiii)溶媒を混合することによって製造される。ある実施態様において、溶媒は水である。非晶質リン酸アルミニウム粉末は、例えば上記の方法によって製造することができる。適切な分散機、例えばCowles分散機を使用して、適切な撹拌速度、例えば730±30rpmの撹拌速度でスラリー混合物を10〜25分間撹拌して、均質な分散液を得る。典型的なスラリー組成物を実施例3に記載する。
【0066】
(リン酸アルミニウムスラリー組成物の適用)
本明細書に記載されるスラリー組成物におけるリン酸アルミニウム粒子は、ある態様において改良された特性を示す。例えば、リン酸アルミニウム粒子は、例えば室温で又は最高130℃で粒子が乾燥すると、空隙を呈する。一実施態様において、40℃〜130℃で乾燥すると、粒子は空隙を呈する。別の実施態様において、60℃〜130℃で乾燥すると、粒子は空隙を呈する。ある実施態様において、80℃〜120℃で乾燥すると粒子は空隙を呈する。さらに、リン酸アルミニウム粒子は、中心及び殻構造を有する。言い換えれば、これらの粒子は、中心とは化学的に異なる殻を有する。この特性は、いくつかの異なる観察によって証明されている。第一に、透過型電子顕微鏡によって測定されるように、プラズモン領域(10〜40eV)における粒子のエネルギーフィルター処理非弾性電子像は、ほとんどの粒子を取り囲む明るい線を示す。デジタルパルス力顕微鏡(DPFM)において実施したナノ押込測定は、粒子の表面が粒子の内部よりも堅いことを示している。
【0067】
このような粒子の分散液が室温又は最高120℃の空気の下で乾燥すると、中心及び殻構造を有するナノサイズの粒子が形成される。ナノサイズの粒子は、不規則な形状のミクロンサイズの凝集体への部分的な融合を示す。このような粒子は、分析用電子顕微鏡によって観察され得る。さらに、これらの粒子は、その内部に、閉じた孔として分散した多くの空隙を含む。粒子の中心は、粒子の個々の殻よりも可塑性がある。この現象は、加熱の際に、殻の周囲長が本質的に未変化のままでありながら空隙が成長することによって証明されている。
【0068】
本明細書に記載されたリン酸アルミニウム組成物は、二酸化チタン(すなわち、TiO2)の代替物として使用することができる。二酸化チタンは、ラテックス塗料調合物に包含される、ほぼすべての製造元によって使用されている現行の標準的な白色顔料である。通常の添加量の二酸化チタンを含む塗料、及び50%の二酸化チタン用量を非晶質リン酸アルミニウムに置換した塗料を使用して得られたフィルムから採取した光学的測定は、リン酸アルミニウムが、フィルムの光学的特性を保存しながら、二酸化チタン製造フィルムに置換し得ることを示している。
【0069】
本明細書に記載された組成物において使用したリン酸アルミニウムは、比較的小さな粒子サイズを有する。このようなより小さな粒子サイズによって、粒子はフィルムに広範囲に分布でき、かつ、樹脂、無機充填剤及び該粒子自体と本質的に会合でき、それにより、塗料が乾燥すると、大規模な空隙形成用部位であるクラスターを作る。いくつかの実施態様において、リン酸アルミニウム又はポリリン酸アルミニウムの粒子は、多くの閉じた孔を含むが、開いた孔を実質的にもたない。結果として、このような実施態様において、マクロ孔の容積は実質的に0.1cc/グラム未満である。
【0070】
いくつかの実施態様においてリン酸アルミニウムを使用する水性塗料フィルムの不透明化には、独自の特徴が関与する。湿潤被膜フィルムは、重合体、リン酸アルミニウム、二酸化チタン及び充填剤粒子からなる粘性のある分散液である。この分散液がフィルムとして注型され乾燥すると、標準的な塗料とは異なる挙動をする(臨界顔料容積濃度(CPVC)を下回る。)。標準的な塗料において、低いガラス転移温度(Tg)樹脂は、室温で可塑性であり、融合し、それにより樹脂フィルムは孔及び空隙を充填する。しかしながら、リン酸アルミニウムを調合された塗料は、異なる挙動を示すことができる。本明細書に記載されるように、閉じた孔が形成し、フィルム隠蔽力(film hiding power)の一因となる。
【0071】
本明細書の多様な実施態様に記載されたリン酸アルミニウム組成物を単独で又は二酸化チタン等の別の顔料との組み合わせで使用して、多様な塗料を調合することができる。塗料は、1つ以上の顔料、及び結合剤としての1つ以上の重合体(時には「結合重合体」と呼ばれる。)、及び任意に多様な添加物を含む。水性塗料及び非水性塗料がある。一般的に、水性塗料組成物は、4つの基本的な成分:結合剤、水性担体、顔料及び添加物から構成される。結合剤は、ラテックスを形成するために水性担体に分散する不揮発性樹脂材料である。水性担体が蒸発すると、結合剤は、水性塗料組成物の顔料粒子及び他の不揮発性成分を互いに結合する塗料フィルムを形成する。水性塗料組成物は、米国特許第6,646,058号に開示されている方法及び成分に従って、変法を使用して又は使用せずに、調合することができる。このような特許の開示は、そのすべての内容が全体として引用により本明細書に組み込まれている。本明細書の多様な実施態様に記載されたリン酸アルミニウム組成物を使用して、単独で又は二酸化チタンとの組み合わせで水性塗料を調合することができる。
【0072】
普通の塗料は、結合重合体、隠蔽顔料、並びに任意に増粘剤及び他の添加物を含むラテックス塗料である。さらに、本明細書の多様な実施態様に記載されたリン酸アルミニウム組成物は、ラテックス塗料を顔料として単独で又は二酸化チタンとの組み合わせで使用して調合することができる。ラテックス塗料を製造するための他の成分は、米国特許第6,881,782号及び第4,782,109号に開示されており、それらのすべての内容は全体として引用により本明細書に組み込まれている。例証として、ラテックス塗料を製造するのに適した成分及び方法を下記に簡単に説明する。
【0073】
いくつかの実施態様において、適切な結合重合体には、ラウリルメタクリラート及び/又はステアリルメタクリラートなど、0.8%〜6%の脂肪酸アクリラート又はメタクリラートを含む、エチレン性不飽和単量体を共重合したエマルションが含まれる。共重合したエチレン単量体の重量に基づいて、重合体結合剤は、0.8%〜6%の脂肪酸メタクリラート又はアクリラートを含んでおり、ここで、好ましい組成物は、10〜22個の炭素原子を含む脂肪族脂肪酸鎖を有する1%〜5%の共重合した脂肪酸アクリラート又はメタクリラートを含む。一実施態様において、共重合体組成物は、共重合した脂肪酸メタクリラートに基づいている。別の実施態様において、ラウリルメタクリラート及び/又はステアリルメタクリラートが使用される。一実施態様において、ラウリルメタクリラートは、選ばれる単量体である。他の有用な脂肪酸メタクリラートには、ミリスチルメタクリラート、デシルメタクリラート、パルミチン酸メタクリラート、オレイン酸メタクリラート、ヘキサデシルメタクリラート、セチルメタクリラート及びエイコシルメタクリラート、並びに類似の直鎖脂肪族メタクリラートが含まれる。脂肪酸メタクリラート又はアクリラートは、主として優勢な脂肪酸部分のメタクリラートを、少量の他の脂肪酸アクリラート又はメタクリラートとともに提供するために、メタクリル酸又はアクリル酸と共反応した市販の脂肪油を典型的に含む。
【0074】
重合可能なエチレン性不飽和単量体は、炭素‐炭素不飽和を含んでおり、ビニル単量体、アクリル単量体、アリル単量体、アクリルアミド単量体、並びにモノカルボン酸及びジカルボン酸不飽和酸が含まれる。ビニルエステルには、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸イソプロピルビニル、及び類似のビニルエステルが含まれ;ビニルハロゲン化物には、塩化ビニル、フッ化ビニル、及び塩化ビニリデンが含まれ;ビニル芳香族炭化水素には、スチレン、メチルスチレン及び類似の低級アルキルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、並びにジビニルベンゼンが含まれ;ビニル脂肪族炭化水素単量体には、エチレン、プロピレン、イソブチレン、及びシクロヘキセン等のαオレフィン、並びに1,3-ブタジエン、メチル-2-ブタジエン、1,3-ピペリレン、2,3ジメチルブタジエン、イソプレン、シクロヘキサン、シクロペンタジエン、及びジシクロペンタジエン等の共役ジエンが含まれる。ビニルアルキルエーテルには、メチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、及びイソブチルビニルエーテルが含まれる。アクリル単量体には、1〜12個の炭素原子を含むアルキルエステル部分を有するアクリル酸又はメタクリル酸の低級アルキルエステル並びにアクリル酸及びメタクリル酸の芳香族誘導体等の単量体が含まれる。有用なアクリル単量体には例えば、アクリル酸及びメタクリル酸、メチルアクリラート及びメタクリラート、エチルアクリラート及びメタクリラート、ブチルアクリラート及びメタクリラート、プロピルアクリラート及びメタクリラート、2-エチルヘキシルアクリラート及びメタクリラート、シクロヘキシルアクリラート及びメタクリラート、デシルアクリラート及びメタクリラート、イソデシルアクリラート及びメタクリラート、ベンジルアクリラート及びメタクリラート、並びにブチルフェニル等の多様な反応生成物、並びにアクリル酸及びメタクリル酸と反応したクレシルグリシジルエーテル、ヒドロキシエチル及びヒドロキシプロピルアクリラート及びメタクリラート等のヒドロキシアルキルアクリラート及びメタクリラート、並びにアミノアクリラート及びメタクリラートが含まれる。アクリル単量体には、極微量のアクリル酸及びメタクリル酸を含むアクリル酸、エタクリル酸、α-クロロアクリル酸、α-シアノアクリル酸、クロトン酸、β-アクリルオキシプロピオン酸、並びにβ-スチリルアクリル酸を含むことができる。
【0075】
他の実施態様において、ラテックス塗料の「結合重合体」である成分(a)として有用な重合体は、スチレン、メチルスチレン、ビニル、又はこれらの組み合わせから選択される単量体を含むコモノマーの混合物の共重合生成物である。一実施態様において、コモノマーは、スチレン、メチルスチレン、又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも40モル%の単量体と、アクリラート、メタクリラート、及びアクリロニトリルから選択される少なくとも10モル%の1つ以上の単量体とを含む。別の実施態様において、アクリラート及びメタクリラートは、例えば2-エチルヘキシルアクリラート及びメチルメタクリラート等の4〜16個の炭素原子を含む。単量体は、最終的な重合体が21℃を上回りかつ95℃未満であるガラス転移温度(Tg)を有するような比率で使用されてもよい。一実施態様において、重合体は、少なくとも100,000の重量平均分子量を有する。
【0076】
一実施態様において、結合重合体は、2-エチルヘキシルアクリラートに由来する内部重合単位(interpolymerized unit)を含む。別の実施態様において、結合重合体は、スチレン、メチルスチレン、又はこれらの組み合わせに由来する50〜70モル%単位;2-エチルヘキシルアクリラートに由来する10〜30モル%単位;及びメチルアクリラート、アクリロニトリル、又はこれらの組み合わせに由来する10〜30モル%単位を含む重合した単位を含む。
【0077】
適切な結合重合体の実例には、内部重合単位が、約49モル%のスチレン、11モル%のα-メチルスチレン、22モル%の2-エチルヘキシルアクリラート、及び18モル%のメチルメタクリラートに由来し、Tgがおよそ45℃である共重合体(ICI Americas,Inc.(Bridgewater,N.J.)製のNeocryl XA‐6037重合体エマルションとして入手可能);内部重合単位が、約51モル%のスチレン、12モル%のα-メチルスチレン、17モル%の2-エチルヘキシルアクリラート、及び19モル%のメチルメタクリラートに由来し、Tgがおよそ44℃である共重合体(S.C.Johnson & Sons(Racine,Wis.)製のJoncryl 537重合体エマルションとして入手可能);並びに内部重合単位が約54モル%のスチレン、23モル%の2-エチルヘキシルアクリラート、及び23モル%のアクリロニトリルに由来し、Tgがおよそ44℃である三元重合体(B.F.Goodrich Co.製のCarboset(商標)XPD‐1468重合体エマルションとして入手可能)が含まれる。一実施態様において、結合重合体は、Joncryl(商標)537である。
【0078】
先に記載されるように、本明細書に記載されたリン酸アルミニウム組成物は、ラテックス塗料を顔料として単独で又は別の顔料との組み合わせで調合するのに使用することができる。
適切なさらなる隠蔽顔料には、白色不透明隠蔽顔料、並びに有色の有機及び無機顔料が含まれる。適切な白色不透明隠蔽顔料の代表例には、金紅石及び鋭錐石二酸化チタン、リトポン、硫化亜鉛、チタン酸鉛、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、白鉛、酸化亜鉛、有鉛酸化亜鉛、及びその同類、並びにこれらの混合物が含まれる。一実施態様において、白色有機隠蔽顔料は、金紅石二酸化チタンである。別の実施態様において、白色有機隠蔽顔料は、約0.2〜0.4ミクロンの平均粒子サイズを有する金紅石二酸化チタンである。有色有機顔料の例は、フタロブルー及びハンザイエローである。有色無機顔料の例は、赤色酸化鉄、褐色酸化物、オーカー、及びアンバーである。
【0079】
最も知られたラテックス塗料は、塗料のレオロジー特性を修飾して、優良な拡延、取り扱い、及び適用特徴を保証する増粘剤を含む。適切な増粘剤には、非セルロース性増粘剤が含まれ、一実施態様においては会合性増粘剤;別の実施態様においてはウレタン会合性増粘剤が含まれる。
【0080】
例えば、疎水的に修飾されたアルカリ膨潤性アクリル共重合体及び疎水的に修飾されたウレタン共重合体などの会合性増粘剤は一般的に、例えばセルロース増粘剤等の従来型の増粘剤と比較して、より大きなニュートンレオロジーをエマルション塗料に与える。適切な会合性増粘剤の代表例には、ポリアクリル酸(例えば、Rohm & Haas Co.(Philadelphia,Pa.)製、Acrysol RM‐825及びQR‐708 Rheology Modifierとして入手可能)及び活性型アタパルジャイト(Engelhard(Iselin,N.J.)製、Attagel 40として入手可能)が含まれる。
【0081】
ラテックス‐塗料フィルムは、結合重合体の融合により形成され、塗料適用の大気温で結合マトリックスを形成し、硬く不粘着なフィルムを形成する。融合助溶媒(coalescing solvent)は、フィルム形成温度を低くすることによって、フィルム形成結合剤の融合を補助する。ラテックス塗料は好ましくは、融合助溶媒を含む。適切な融合助溶媒の代表例には、2-フェノキシエタノール、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジブチルフタラート、ジエチレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,1,3-ペンタンジオールモノイソブチラート、及びこれらの組み合わせが含まれる。一実施態様において、融合助溶媒は、ジエチレングリコールブチルエーテル(ブチルカルビトール)(Sigma‐Aldrich(Milwaukee,Wis.)から入手可能)又は2,2,4-トリメチル-1,1,3-ペンタンジオールモノイソブチラート(Eastman Chemical Co.(Kingsport,Tenn.)製、Texanolとして入手可能)、又はこれらの組み合わせである。
【0082】
融合助溶媒は好ましくは、ラテックス塗料1Lあたり約12〜60gの間の若しくは約40gのレベルで、又は塗料における重合体固体の重量に基づき約20〜30重量%で利用される。
【0083】
本明細書に提供される多様な実施態様に従って調合される塗料はさらに、例えば可塑剤、消泡剤、顔料増量剤、pH調整剤、色味剤(tinting color)、及び殺生物剤など、塗料に使用される従来の材料を含むことができる。このような典型的な成分は、例えば、C.R. Martensの文献「塗料、ワニス及びラッカーのテクノロジー(TECHNOLOGY OF PAINTS, VARNISHES AND LACQUERS)」(R.E. Kreiger Publishing Co., p.515(1974))に列挙されている。
【0084】
塗料は通常、被覆率を上げ、経費を減らし、耐久性を獲得し、外観を変化させ、レオロジーを制御し、他の所望の特性に影響を与える「機能的増量剤」とともに調合される。機能的増量剤の例には、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、粘土、石膏、シリカ、及び滑石を含む。
【0085】
内部つや消し塗料のための最も一般的な機能的増量剤は、粘土である。粘土は、該内部つや消し塗料を望ましいものにする多くの特性を有する。例えば、安価なか焼粘土は、低剪断粘度を制御する上で有用であり、「乾燥隠蔽」に寄与する大きな内部表面積を有する。しかし、この表面積はまた、着色を閉じ込めるためにも利用可能である。
【0086】
着色を吸収する傾向があるので、レオロジー制御に必要な少量だけの、例えば典型的には増量剤顔料全体の約半分未満のか焼粘土を塗料に使用するか、又は全く使用しないことが好ましい。本明細書に記載された塗料に使用するための典型的な増量剤は、炭酸カルシウムであり;ある実施態様においては、例えば、Opacimite(ECC International(Sylacauga,Ala.)から入手可能)、Supermite(Imerys(Roswell,Ga.)から入手可能)、又はおよそ1.0〜1.2ミクロンの粒子サイズを有する他のものなど、極微粉砕した炭酸カルシウムである。極微炭酸カルシウムは、隠蔽用に二酸化チタンの間隔を最適に空けるのに役立つ(例えば、K.A. Haagensonの文献「内部ラテックスつや消し塗料の隠蔽特性に及ぼす増量剤粒子サイズの効果(The effect of extender particle size on the hiding properties of an interior latex flat paint)」(American Paint & Coatings Journal, Apr. 4, 1988, pp.89-94)を参照されたい。)。
【0087】
本明細書に記載された多様な実施態様に従って調合されるラテックス塗料は、従来技術を利用して製造することができる。例えば、塗料成分のいくつかは一般的に、高い剪断の下で互いに混和され、塗料調合機によって「粉砕物(grind)」と一般的に呼ばれる混合物を形成する。この混合物の粘稠度は、泥の粘稠度に匹敵しており、高剪断撹拌機を使用して成分を効率的に分散させるために望ましい。粉砕物の製造の間、高い剪断エネルギーを使用して、凝集した顔料粒子をばらばらにする。
【0088】
粉砕物に含まれていない成分は通常、「降下物(letdown)」と呼ばれる。降下物は通常、粉砕物よりも非常に粘性が小さく、通常、適切な粘稠度を有する最終的な塗料を得るために、粉砕物を希釈するのに使用される。粉砕物と降下物との最終的な混合は典型的には、低剪断混合によって実施される。
【0089】
ほとんどの重合体ラテックスは、剪断安定ではなく、それゆえ、粉砕物の成分として使用されない。粉砕物における剪断不安定ラテックスの組み込みは結果的に、ラテックスの凝固をもたらし、フィルム形成能を全く又はほとんどもたない塊の多い塗料を生じることができる。その結果、塗料は一般的に、降下物にラテックス重合体を添加することによって製造される。しかしながら、本明細書に記載された多様な実施態様に従って調合されるいくつかの塗料は、一般的に剪断安定なラテックス重合体を含む。それゆえ、ラテックス塗料は、ラテックス重合体のいくつか又はすべてを粉砕物に組み込むことによって製造することができる。一実施態様において、ラテックス重合体の少なくともいくつかを粉砕物に入れる。
【0090】
上記の多様な実施態様に従った組成物の例を以下に提供する。さらに、当業者は、本明細書に記載された組成物において利用されてもよい変法を認識するであろう。下記の例は、主張された主題の実施態様を例示するために提供する。全ての数値は概数である。数的範囲が与えられる場合、該規定範囲外の実施態様が、本発明の範囲内になおも収まり得るということは理解されるべきである。各例に記載された具体的な詳細は、本発明の必要な特徴として解釈されるべきではない。
【実施例】
【0091】
(実施例1:リン酸アルミニウム粉末の製造)
791gのリン酸(81.9重量%のH3PO4又は59.3重量%のP2O5)を、210gの水における189gの水酸化アルミニウム水和物(85.3重量%のAl(OH)3又は58.1重量%のAl2O3)と80℃で1時間反応させて(最終モル比P/Al=2.99)、酸性リン酸アルミニウム溶液を得た。第二の工程において、1155gの市販の精製アルミン酸ナトリウム溶液(9.7重量%のAl及び11.2重量%のNa又は18.3重量%のAl2O3及び15.7重量%のNa2O、最終Na/Al=1.36)を酸性リン酸アルミニウム溶液と同時に、1500gの水を入れた撹拌容機に室温で添加した。
【0092】
最終反応pHは7.1であり、反応中の温度を45℃に維持した。結果として生じる分散液を遠心分離して(30分間、2500rpm‐相対遠心力:1822g)、反応リカーを除去してケークを形成し、水で1回洗浄して(1000gの洗浄水)、27.0重量%の不揮発性物質含有量(ASTM D 280後の無水ベースで902g)を有するpH7.3の白色湿潤ケーク(3300g)を得た。スラリーを噴霧乾燥して、1090gのリン酸アルミニウム粉末を生じた(約83重量%の不揮発性物質含有量)。
【0093】
(実施例2:リン酸アルミニウム粉末の製造)
この実施例において、535.0kgのリン酸アルミニウムを製造した。湿潤生成物を「ターボ乾燥機」で乾燥させると、15%湿度及びP:Al(リン:アルミニウム)比1:1.50の中空粒子の特徴を示した。
【0094】
P2O5を55.0%含む940.0kgの肥料リン酸を使用した。初期の製造段階において、酸の変色を実施し、これは85℃の温度でおよそ30分間続いた。この段階のために、約50%のH2O2を含む8.70kgの過酸化水素を有する溶液を酸に添加した。次に、該酸を975.0kgの処理水で希釈し、40℃の温度に冷却した後、27.0%のP2O5濃度で保存した。
【0095】
本願で採用したアルミニウム源は、28%のAl2O3を含む市販の硫酸アルミニウム溶液とした。該溶液を濾過し、処理水で希釈した。具体的には、884.30kgの硫酸アルミニウム溶液及び1,776.31kgの処理水を組み合わせて、およそ9.30%のAl2O3の溶液を作製した。
【0096】
この特定の実験では、20.0%のNaOHを中和試薬として含む市販の水酸化ナトリウムの希釈した溶液を使用した。具体的には、50%のNaOHを有する974.0kgの水酸化ナトリウム溶液と1,461.0kgの処理水とを混合した。最終混合物を40℃に冷却した。
【0097】
7,500Lの反応機において、3つの試薬を同時におよそ30分間混合した。反応機に試薬を添加する間、混合物の温度を40℃〜45℃の範囲に維持し、pHを4.0〜4.5の範囲に止まるよう制御した。試薬の添加終了時に、混合物をおよそ15分間揺り動かし続けた。5.0%のNaOHを含む水酸化ナトリウム溶液の添加によって、この時点でのpHをおよそ5.0に制御した。結果として生じる懸濁液は、およそ7,000kgで密度1.15g/cm3であり、6.5%の固体を示しており、これは約455.0kgの沈殿物を表す。
【0098】
次に、懸濁液をプレスフィルターで濾過して、1,300kgの湿潤ケーク及び5,700kgの濾液を生じた。濾液は主として、硫酸ナトリウム溶液(Na2SO4)からなった。ケークは、およそ35%の固体からなった。ケークをプレスフィルターにおいて、3,860Lの処理水を使用して、室温で直接洗浄し、乾燥ケーク1tあたりおよそ8.5cm3の洗浄溶液の洗浄比を維持した。ケークの洗浄で生じた濾液を任意のその後の使用のために、又は流出液処理のために保存した。次に、フィルターから抽出したケーク約1,300kgを、コンベヤーベルトを通じて(およそ1,000Lの)分散機に移した。およそ35%の固体を含む分散液は、1.33g/cm3の密度及び80〜200cPsの粘度を有しており、塗料を製造するためのスラリーとして使用することができた。
【0099】
次に、およそ35%の固体を有する分散したリン酸アルミニウム懸濁液をターボ乾燥機に汲み出した。熱風流を通じて、生成物を135℃の温度で加熱した。湿度15%のおよそ535.0kgのオルトリン酸アルミニウムを生成した。最終生成物を微粒子化し、その顆粒度を400メッシュ未満に維持した。乾燥生成物の最終的な分析は、下記の結果を示した:生成物におけるリン含有量はおよそ20.2%であり;アルミニウム含有量はおよそ13.9%であり;ナトリウム含有量はおよそ6.9%であり、かつ水性分散液のpHはおよそ7.0であり;水分含有量はおよそ15%であり;骨格密度は2.20g/cm3であり、粉末粒子の平均直径は5〜10mであった。
【0100】
(実施例3:51重量%のリン酸アルミニウムを含むリン酸アルミニウムスラリーの製造及び粘度測定)
37.2重量%の不揮発性物質含有量を含むストックスラリー及び85.5重量%の不揮発性物質を含むリン酸アルミニウムストック粉末を、多様な量の下記の分散剤と共に使用して、51重量%以上のリン酸アルミニウムを含むリン酸アルミニウムスラリー試料を製造した:
i.ピロリン酸四ナトリウム(TSPP)、Na4P2O7
ii.六メタリン酸ナトリウム、Na(PO3)x、Nuclear。
iii.三リン酸五ナトリウム、Na5P3O10、Merck。
iv.リン酸三ナトリウム十二水和物、Na3PO4、Merck。
v.ピロリン酸四カリウム(TKPP)、K4P2O7
vi.三リン酸カリウムナトリウム、K4.65Na0.35P3O10、イオン交換樹脂(Dowex 50WX4‐400)を使用して(iii)から製造。
【0101】
20〜25℃での水におけるリン酸分散液の溶解度を以下の表2に提供する:
【表6】

【0102】
(スラリーの製造)
A)分散液を使用しない51重量%のリン酸アルミニウムスラリー
52.0gのリン酸アルミニウムストック粉末を140.0gのリン酸アルミニウムストックスラリーにゆっくりと添加した。730±30rpmの撹拌速度でCowles分散機を使用して混合を実施し;粉末の添加に約25分間かけ、最終混合物をさらに15分間撹拌した。
【0103】
B)分散剤を使用した51重量%のリン酸アルミニウムスラリー
蒸留水に各リン酸塩を溶解することによって、分散剤ストック溶液を製造し、下記の濃度を生じた:
5.0重量%のピロリン酸四ナトリウム、
20重量%の六メタリン酸ナトリウム、
11重量%の三リン酸五ナトリウム、
7.7重量%のリン酸三ナトリウム十二水和物、
50重量%のピロリン酸四カリウム、及び
8重量%の三リン酸カリウムナトリウム。
【0104】
リン酸分散剤溶液をリン酸アルミニウムスラリーのストックに添加して、所望の分散剤濃度を獲得した。次に、リン酸アルミニウム粉末をリン酸アルミニウム‐分散剤スラリーに添加した。51%リン酸アルミニウムスラリーを製造するのに使用したすべての成分の量を表3及び4に列挙する。
【表7】

【表8】

【表9】

【0105】
(粘度測定)
Rheoterm 115 Rheometer(Contraves)を使用して、51%リン酸アルミニウムスラリー組成物の粘度を測定した。730±30rpmに設定した撹拌速度でCowles分散機を使用して、51%リン酸アルミニウムスラリー試料を15分間撹拌した。次に、共軸の円筒状構造の容器に試料を付加し、心棒を容器内に配置した。試料を25℃で1時間静置したままにした。次に、粘度の読み取りを100、300、及び500s-1の剪断速度で実施し、表6及び7に提供した。
【表10】


1 室温で静置3時間後
2 沈降物によって占有される高さの%
3 Na5P3O10 (0.98重量%)及びNa(PO3)x (0.49重量%)
4 Na5P3O10 (0.50重量%)及びNa(PO3)x (0.99重量%)
【表11】

【0106】
表6〜7及び図1のデータからわかるように、六メタリン酸ナトリウム及び三リン酸五ナトリウムの分散剤は、51重量%のリン酸アルミニウムスラリーについてより低い粘度を生じた。静置の際にほとんどの試料がゲル形成をしたが、形成されたゲルは、分散剤を使用しない51重量%のリン酸アルミニウムスラリーにおいて形成されたゲルよりも非常に弱かった。形成されたゲルは、重力下では流れなかったが、剪断すると、容易にゆるくなった。また、三リン酸カリウムナトリウムK4.65Na0.35P3O10は、51%リン酸アルミニウムスラリーに対してより低い粘度を生じ、2つの利点を有した:(i)1重量%濃度では沈降せず、(ii)形成されたゲルは、三リン酸五ナトリウムを有するスラリーよりも非常に弱かった。より高い分散剤濃度でNa5P3O10及びK4.65Na0.35P3O10を有する51重量%のリン酸アルミニウムスラリーの場合、粘度減少は過度であり、圧縮された沈降物を形成できた。
【0107】
Na5P3O10を有するスラリー組成物における固体含有量の増大は、沈降を回避するように見えたが、粘度はかなり増大し、スラリーはゲルとなり、容易にはゆるくならなかった。ある実施態様において、スラリーにおける有用な最大濃度のリン酸アルミニウムは約54重量%であり、約1.5重量%のNa5P3O10を有した(第二行目、表7)。
【0108】
分析した51重量%のスラリーのほとんどは、加速した経年検査(54℃で7日間)の後、粘度が増大し;しかしながら、粘度は分散剤を有さないスラリーについてなおも最高であった。1.0及び1.5重量%でNa(PO3)xを有するスラリー組成物は、経年検査後に粘度の有意な増大を示さなかった。室温で3週間後のスラリー(図2参照)は、オーブンにおける加速した検査(54℃で7日間)と何ら相関を示さなかった。
【0109】
分散剤を有さない51重量%スラリー組成物では、製造後に粘度が低下し、より低濃度(0.25及び0.50%)の分散剤を有するスラリーでは、経時的に粘度が増大する傾向にあるが、例外としてNa5P3O10はその初期値を維持する。その一方で、より高濃度(1.0及び1.5%)でピロリン酸四ナトリウム及びNa(PO3)xを有する51重量%のスラリーにおいては、粘度は初期値から低下する傾向にある。
【0110】
ある実施態様において、51%リン酸アルミニウムスラリーを製造するのに適した粘度範囲は、900〜1150cPSである。この範囲では、静置の際に弱いゲルがスラリーに形成され、沈降は観察されない。
【0111】
典型的な塗料乾燥フィルムにおいて、顔料及び充填剤粒子は樹脂フィルムに分散している。隠蔽力は、粒子の屈折率及びサイズに大きく依存する。言及したように、二酸化チタンは、屈折率が大きくかつ可視光領域における光吸収がないので、現行の標準的な白色顔料である。本明細書に提供されるいくつかの実施態様におけるリン酸アルミニウム組成物を調合した塗料の乾燥フィルムは、典型的な塗料乾燥フィルムとはいくつかの違いを有する。第一に、リン酸アルミニウムを有するフィルムは、単なる樹脂フィルムではない。該フィルムはむしろ、絡まった樹脂及びリン酸アルミニウムによって形成される。このように、該フィルムは、フィルムの機械的特性並びに水及び他の侵襲剤に対する耐性に関係する相乗的な利点を獲得するために異なる特性を有する2つの相互浸透相を組み合わせたナノ混成フィルムである。第二に、フィルムが、光を散乱させる多量の閉じた孔を含んでいるので、優良なフィルム隠蔽力は、より低い二酸化チタン含有量で得られる。さらに、二酸化チタン粒子がこれらの空隙の1つに隣接する場合、より大きな屈折率勾配に起因して、該粒子が樹脂によって完全に取り囲まれる場合よりも非常に多く散乱させるであろう。このことは、隠蔽力が関係している限り、新規のリン酸アルミニウムと二酸化チタンとの間の相乗作用を引き起こす。
【0112】
標準的な塗料乾燥フィルムとリン酸アルミニウムを有するフィルムとを比較する検査において、半つや消しアクリル塗料の標準的な市販の調剤が選択され、二酸化チタンはリン酸アルミニウム製品によって漸次置き換わる。水含有量及び他の塗料成分は必要に応じて調整される。本実施態様における調合の変法のいくつかは、増粘剤/レオロジー改質剤、分散剤、アクリル樹脂及び融合助剤の低用量の使用と関連している。
上記のように、本明細書に記載される実施態様は、約40〜70%の不揮発性物質と1つ以上の分散剤とを含むリン酸アルミニウムスラリーを含む組成物を提供する。
【0113】
本主題は、限られた数の実施態様に関して記載されているが、一実施態様の具体的な特徴が、本発明の他の実施態様の結果であるとされるべきではない。単一の実施態様が、本発明のすべての態様の典型ではない。いくつかの実施態様において、組成物又は方法は、本明細書で言及していない多くの化合物又は工程を含んでもよい。他の実施態様において、組成物又は方法には、本明細書で列挙していないいずれの化合物若しくは工程も含まないか、又は該化合物若しくは工程が実質的に存在しない。記載された実施態様からの変化及び改変は存在する。樹脂又は顔料を製造する方法は、多数の作用又は工程を含むものとして記載されている。これらの工程又は作用は、別段の記載がない限り、いずれの配列又は順序で実施されてもよい。最後に、本明細書に記載されたいずれの数も、単語「約」又は「およそ」が数を記載する上で使用されているかどうかに関わらず、概数を意味すると解釈されるべきである。添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲内に収まるものとして、すべてのこれらの改変及び変化を網羅することを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質リン酸アルミニウム粒子と分散剤とを含むスラリーであって、該スラリーの総重量に基づいて、該リン酸アルミニウム濃度が約40〜約70重量%であり、かつ該分散剤濃度が約3.5重量%未満である、前記スラリー。
【請求項2】
前記分散剤濃度が、前記スラリーの総重量に基づいて約2重量%未満である、請求項1記載のスラリー。
【請求項3】
前記分散剤濃度が、前記スラリーの総重量に基づいて約1重量%未満である、請求項1又は2記載のスラリー。
【請求項4】
前記分散剤濃度が、前記スラリーの総重量に基づいて約0.1〜約1重量%である、請求項1〜3記載のスラリー。
【請求項5】
前記分散剤濃度が、前記スラリーの総重量に基づいて約0.25〜約1重量%である、請求項1記載のスラリー。
【請求項6】
前記分散剤濃度が、前記スラリーの総重量に基づいて約0.25、0.5、0.75又は1重量%である、請求項1記載のスラリー。
【請求項7】
前記リン酸アルミニウム濃度が、前記スラリーの総重量に基づいて約50〜約60重量%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のスラリー。
【請求項8】
前記リン酸アルミニウム濃度が、前記スラリーの総重量に基づいて約50、51、52、53、54、55又は56重量%である、請求項1〜7のいずれか1項記載のスラリー。
【請求項9】
前記リン酸アルミニウム濃度が前記スラリーの総重量に基づいて約51重量%であり、かつ前記分散剤濃度が約1.5重量%未満である、請求項1記載のスラリー。
【請求項10】
前記分散剤が、リン酸分散剤、ホウ酸分散剤、ケイ酸分散剤、アルミン酸分散剤、陰イオン性又は非イオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1〜9のいずれか1項記載のスラリー。
【請求項11】
前記分散剤が、ピロリン酸四ナトリウム、六メタリン酸ナトリウム、三リン酸五ナトリウム、リン酸三ナトリウム十二水和物、ピロリン酸四カリウム、三リン酸カリウムナトリウム及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1〜9のいずれか1項記載のスラリー。
【請求項12】
100s-1の剪断速度で測定された約300cPs〜約3500cPsの範囲の粘度を有する、請求項1〜11のいずれか1項記載のスラリー。
【請求項13】
前記粘度が、100s-1で測定された約900cPs〜約1150cPsである、請求項12記載のスラリー。
【請求項14】
前記リン酸アルミニウム粒子が、約1.73〜2.40g/cm3の骨格密度によって特徴づけられる、請求項1〜13のいずれか1項記載のスラリー。
【請求項15】
前記リン酸アルミニウム粒子が、約1.95、1.98、2.00、又は2.25g/cm3未満の骨格密度によって特徴づけられる、請求項1〜13のいずれか1項記載のスラリー。
【請求項16】
前記リン酸アルミニウムが、約0.65〜1.75のリン:アルミニウムモル比によって特徴づけられる、請求項1〜15のいずれか1項記載のスラリー。
【請求項17】
前記リン酸アルミニウムが、約0.5〜1.5のリン:アルミニウムモル比によって特徴づけられる、請求項1〜15のいずれか1項記載のスラリー。
【請求項18】
前記リン酸アルミニウムが、約0.8〜1.3のリン:アルミニウムモル比によって特徴づけられる、請求項1〜15のいずれか1項記載のスラリー。
【請求項19】
前記リン酸アルミニウムが、約1のリン:アルミニウムモル比によって特徴づけられる、請求項1〜15のいずれか1項記載のスラリー。
【請求項20】
前記リン酸アルミニウムが、約5〜80nmの平均個別粒子半径サイズによって特徴づけられる、請求項1〜19のいずれか1項記載のスラリー。
【請求項21】
前記リン酸アルミニウムが、粉末状の非晶質リン酸アルミニウムの1粒子あたり1〜4個の空隙によって特徴づけられる、請求項1〜20のいずれか1項記載のスラリー。
【請求項22】
前記リン酸アルミニウムがイオンをさらに含む、請求項1〜21のいずれか1項記載のスラリー。
【請求項23】
前記イオンがナトリウムである、請求項22記載のスラリー。
【請求項24】
前記イオンが、カルシウム、カリウム、ホウ酸及びアンモニウムから選択される、請求項22記載のスラリー。
【請求項25】
溶媒と請求項1〜24のいずれか1項に記載のスラリーとを含む塗料。
【請求項26】
前記塗料が二酸化チタンをさらに含む、請求項25記載の塗料。
【請求項27】
前記塗料が二酸化チタンを実質的に含まない、請求項26記載の塗料。
【請求項28】
前記溶媒が水を含む、請求項25記載の塗料。
【請求項29】
前記溶媒が極性溶媒を含む、請求項25記載の塗料。
【請求項30】
前記溶媒が非極性溶媒を含む、請求項25記載の塗料。
【請求項31】
該溶媒が有機溶媒を含む、請求項25記載の塗料。
【請求項32】
安定したリン酸アルミニウムスラリー組成物の製造方法であって、a)i)該スラリーの総重量に基づいて約30重量%の非晶質リン酸アルミニウムを含むストックスラリー;ii)非晶質リン酸アルミニウム粉末;及びiii)分散剤を混合すること、並びにb)分散機を使用して、500〜2000rpmの撹拌速度で撹拌することを含む、前記製造方法。
【請求項33】
安定したリン酸アルミニウムスラリー組成物の製造方法であって、a)i)非晶質リン酸アルミニウム粉末、及びii)分散剤又は分散剤の混合物、及びiii)水を混合すること、並びにb)分散機を使用して、500〜2000rpmの撹拌速度で撹拌することを含む、前記製造方法。
【請求項34】
安定したリン酸アルミニウムスラリー組成物の製造方法であって、i)該スラリーの総重量に基づいて約30重量%又は30重量%未満の非晶質リン酸アルミニウムを含むストックスラリー、ii)分散剤又は分散剤の混合物、及びiii)水を混合することを含み、該スラリーが、100s-1で約900〜約1150cPsの粘度を有する、前記製造方法。
【請求項33】
塗料、ワニス、印刷インク、紙又はプラスチックにおける請求項1〜23のいずれか1項記載のスラリーの使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−511867(P2011−511867A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546186(P2010−546186)
【出願日】平成21年2月11日(2009.2.11)
【国際出願番号】PCT/BR2009/000034
【国際公開番号】WO2009/100510
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(510219350)ブンゲ フェルチルザンテス エス.エー. (1)
【出願人】(503215446)ユニバージデード エスタデュアル デ カンピナス (5)
【Fターム(参考)】