説明

リン酸エステルならびにその湿潤剤および分散剤としての使用

本発明は、一般式(I)[式中、Aは、C1〜C20−アルキル−(AO)x−OHもしくはアシル−(AO)x−OH;またはC1〜C20−アルキル−(AO)x−(HA)y−OHもしくはアシル−(AO)x−(HA)y−OH;またはC1〜C20−アルキル−(AO)x−(AA−AO)y−OHもしくはアシル−(AO)x−(AA−AO)y−OH;またはMO−(HA)y−OHもしくはMO−(AA−AO)y−OH;(式中、アシルは、芳香族カルボン酸残基または飽和もしくは不飽和の脂肪酸残基であり;AOは、ポリC2〜C4アルキレングリコール残基であり、HAは、ヒドロキシカルボン酸またはそのラクトンであり、AAは、ジカルボン酸であり、MOは、モノアルコールであり、xは、1〜250であり、yは、1〜250である)から誘導されるモノヒドロキシル残基であり、Bは、モノ−、ジ−、もしくはトリ−、またはポリヒドロキシジ−、トリ−、または多−カルボン酸残基であり、ヒドロキシ基を介してリン酸に、そしてカルボン酸基1個を介してモノヒドロキシル残基[A]に結合し、残りのカルボキシル酸基は、フリーであるか、またはさらなるモノヒドロキシル残基[A]でエステル化されて分岐状エステルをもたらし;nは、1〜2であり;mは1〜4である]のリン酸エステルおよびその塩に関するものである。該リン酸エステルを、湿潤剤または分散剤として使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸エステルおよびその塩、ならびにこれらのリン酸エステルおよび塩の分散剤としての使用に関する。
【0002】
固体物質、たとえば顔料を液体媒体に導入するために、強い機械的力が必要である。これは、周囲の媒体による固体物質の湿潤能、ならびにこの媒体に対する親和力に大きく依存する。このような分散力を減らすために、物質を混和することを容易にする分散剤を用いるのが一般的である。これは主に、アニオンまたはカチオンまたは非イオン構造の界面活性剤(surface-active agentまたはsurfactant)に関係する。比較的低い量の添加では、これらの界面活性剤を固体物質に直接に適用するか、または分散媒に添加する。このような界面活性剤によって、分散に必要なエネルギーがかなり低減する。
【0003】
さらに、このような固体物質は、分散後、再凝集する傾向があることが公知であるが、これは最初に誘導された分散エネルギーを無にし、重大な問題をまねく。この現象は、特にロンドン力/ファンデルワールス力により説明することができ、これにより固体物質が相互に引きつけ合う。これらの引力を破棄するために、固体物質上に吸着層を設けるべきである。これは、このような界面活性剤またはポリマーの使用により行われる。
【0004】
しかし、分散の間および後、周囲の媒体と固体粒子との相互作用が生じ、そのため、より高濃度で存在する周囲の媒体との交換で界面活性剤の脱着が生じる可能性がある。しかし、ほとんどの場合、この周囲の媒体はそのように安定な吸着層を形成することができず、そのため全体のシステムが固まりになる。これは、特に液体システムにおける粘度の増加、光沢の喪失、ペイントおよびコーティングにおけるカラーシフト、顔料着色プラスチックおよびラッカーにおける着色力の不十分な開発、ならびに強化プラスチックにおける機械的強度の低下から明らかである。
【0005】
欧州特許EP 0417 490 B1(Byk-Chemie)には、式(HO)3-n−PO−(OR)n[式中、Rは、少なくとも1個のエーテル酸素(−O−)および少なくとも1個のカルボン酸エステル基(−COO−)および/またはウレタン基(−NHCOO−)を含有し、Zerewitinoff水素を伴わない脂肪族、脂環式および/または芳香族残基である]に対応するリン酸エステルおよびその塩が記載されている。例として、次式の化合物:アルキル−[O(CH2xz−[O−C=O(CH2xy−O−P=O(OH)2が開示されている。
【0006】
欧州特許EP765356 B1(Zeneca)には、ポリエチレングリコールと、ヒドロキシカルボン酸および/またはアルキレンオキシドとを反応させてポリマージオールを形成し、そしてジオールをリン酸で処理することにより得られる分散剤が記載されている。
【0007】
フリーカルボキシル基を有するリン酸エステル、またはフリーカルボン酸基を介して分岐状であるリン酸エステルは、記載されていない。
【0008】
本発明の目的は、有機および無機顔料用に、ならびに水性および非水性システム中の充填剤およびエキステンダー用に、改良された分散特性を有する分散剤を提供することである。
【0009】
本発明は、一般式I:
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、Aは、モノヒドロキシル残基であり;Bは、モノ−、ジ−、トリ−、またはポリヒドロキシジ−、トリ−、または多−カルボン酸残基であり、ヒドロキシ基を介してリン酸に、そしてカルボン酸基1個を介してモノヒドロキシル残基[A]に結合し、残りのカルボン酸基は、フリーであるか、またはさらなるモノヒドロキシル残基[A]でエステル化されて分岐状エステルをもたらし;
nは、1〜2であり;
mは、1〜4である)のリン酸エステルおよびその塩に関するものである。
【0012】
本発明のリン酸エステルの本質的な特徴は、モノ−、ジ−、トリ−、またはポリヒドロキシジ−、トリ−、または多−カルボン酸残基[B]の存在である。
【0013】
[B]に関して、少なくとも1個のフリーカルボン酸基が存在するか、またはフリーカルボン酸をエステル化することにより少なくとも1個の分岐中心が生じることが重要である。
【0014】
トリ−または多−カルボン酸を選択する場合、フリーカルボン酸基が2個以上存在する。フリーカルボン酸基は、フリーのままであるか、完全にエステル化され分岐状化合物をもたらすか、または部分的にエステル化されフリーカルボン酸基を有する分岐状化合物をもたらすことができる。全ての場合、フリーカルボキシル基を塩に変換することができる。
【0015】
使用するモノ−、ジ−、トリ−、またはポリヒドロキシジ−、トリ−、または多−カルボン酸[B]は、たとえば、酒石酸、リンゴ酸、シトロリンゴ酸(2−メチルリンゴ酸)、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、アスコルビン酸またはクエン酸、好ましくはリンゴ酸(ヒドロキシブタンジカルボン酸)またはクエン酸とすることができる。
【0016】
多−カルボン酸は、3個より大きいカルボン酸基を含む任意の酸、たとえばヒドロキシベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸である。
【0017】
モノヒドロキシル残基[A]は、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、またはそれぞれの基をブロック状もしくはランダムに配列することができる混合ポリエーテル−ポリエステル鎖を含むことができる。
【0018】
[A]は、ポリC2〜C4アルキレングリコールモノエーテルおよび/またはカルボン酸のポリC2〜C4アルキレングリコールモノエステルを含むのが好ましい。
【0019】
適切なポリC2〜C4アルキレングリコールモノエーテルは、C1〜C20アルキルエーテル、好ましくはメチルエーテル(MePEG)、(MePPG)、ブチルエーテル(BuPPG)、アルキルフェノールエーテル(APE)、C12〜C20脂肪アルコールエーテルまたはC10〜C15オキソアルコールエーテルである。
【0020】
カルボン酸のポリC2〜C4アルキレングリコールエステルは、たとえば、ポリC2〜C4アルキレングリコールモノラウレート、ポリC2〜C4アルキレングリコールモノステアレート、ポリC2〜C4アルキレングリコールモノオレエート、およびポリC2〜C4アルキレングリコールベンゾエートである。
【0021】
ポリC2〜C4アルキレングリコールモノエーテルおよび/またはポリC2〜C4アルキレングリコールモノエステルは、[B]でエステル化されていてもよく、あるいはヒドロキシ−カルボン酸またはそのラクトン[HA]から誘導されるポリエステル単位を介して、および/またはC2〜C4−アルキレンオキシド[AO]構造でジオールに結合するジカルボン酸[AA]から誘導される単位を介して、[B]に結合していてもよい。
【0022】
したがって、次のモノヒドロキシル化合物[A]:
【0023】
【化3】

【0024】
(式中、C1〜C20−アルキルは、直鎖状鎖または分岐状炭化水素残基であり、
アシルは、芳香族カルボン酸残基、たとえば、安息香酸残基または飽和もしくは不飽和の脂肪酸残基、たとえば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、オレイン酸、リノール酸などであり、
AOは、ポリC2〜C4アルキレングリコール残基、たとえば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリブチレングリコールであり、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマーを含み、
HAは、ヒドロキシカルボン酸またはそのラクトン、たとえば、乳酸、グリコール酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシデカン酸、4−ヒドロキシデカン酸、またはラクトン、たとえばβ−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、またはε−カプロラクトンであり、ブロックコポリマー、たとえばε−カプロラクトン/δ−バレロラクトンのブロックコポリマーを含み、
AAは、ジカルボン酸、たとえばコハク酸、マレイン酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、セバシン酸、シュウ酸、ジグリコール酸、およびこれらの酸無水物であり、
xは、1〜250、好ましくは2〜50、より好ましくは5〜15であり、
yは、1〜250、好ましくは2〜50、より好ましくは2〜15である)を得ることができる。
【0025】
ポリエステル単位を、適切には4〜30個、好ましくは4〜20個の炭素原子を有するモノアルコール、たとえばn−ブタノールおよび2−エチル−1−ヘキサノール、セチルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール(linoloyl alcohol)、オキソアルコール、シクロヘキサノール、フェノール、フェニルエタノール、およびベンジルアルコールで始めることもできる。
【0026】
したがって、次のモノヒドロキシル化合物[A]:
【0027】
【化4】

【0028】
(式中、MOは、上述したモノアルコールであり、HAは、上述したヒドロキシカルボン酸またはそのラクトンであり、AAは、上述したジカルボン酸であり、AOは、上述したポリC2〜C4アルキレングリコール残基である)を得ることができる。
【0029】
モノヒドロキシル化合物[A]中に、別の単位、たとえばウレタンまたはアミド単位/官能基を含んでもよい。
【0030】
単位[A]対[B]の分子量の比は1.5:1〜8:1、好ましくは2:1〜5:1である。
【0031】
好ましいリン酸エステルは、分子量250〜750のMe−PEG−OHから誘導されるものである。ε−カプロラクトンがヒドロキシカルボン酸として存在するのも好ましい。好ましいヒドロキシ−ジカルボン酸はリンゴ酸である。
【0032】
式Iのリン酸エステルは、公知のエステル化反応により製造できる。ポリアルキレングリコールエーテル、好ましくはMe−PEG−OHと、モノ−、ジ−、トリ−、またはポリヒドロキシジ−、トリ−、または多カルボン酸とを、エステル化触媒、たとえば、ジブチルスズジラウレート、テトラアルキルチタネート、p−トルエンスルホン酸、または鉄(II)アセチルアセトナトの存在下で、高温、たとえば100〜250℃で反応させる。
【0033】
ヒドロキシカルボン酸単位、たとえばカプロラクトンが存在する場合、ポリアルキレングリコールエーテルを、最初にヒドロキシカルボン酸で、次にモノ−、ジ−、トリ−またはポリヒドロキシジ−、トリ−または多−カルボン酸でエステル化させる。
【0034】
触媒は通常、ヒドロキシジ−またはトリカルボン酸100モル当り、0.005〜0.5モルの量で用いる。不活性溶剤を加えることができるが、溶剤無しにエステル化を行うのが好ましい。
【0035】
式Iのリン酸エステルは、本質的に公知の方法で、上記で得たブロックコポリマーのモノ−、ジ−、トリ−またはポリヒドロキシジ−、トリ−、または多カルボン酸残基のヒドロキシル基の1個と、リン酸エステルを形成するリン化合物との反応により得る。リン化合物は、ポリリン酸またはP25が好ましい。P25をリン酸として用いる場合、モノ−およびジ−エステルの混合物を得る。
【0036】
リン酸エステル(phophoric acid ester)の塩は、水酸化アルカリで、アンモニアで、アミン、アルカノールアミン、または第四級アンモニウム化合物で中和することにより得ることができる。
【0037】
本発明の別の局面は、式Iのリン酸エステルと、ポリC2〜C4アルキレングリコールモノエーテルのリン酸エステルおよび/またはカルボン酸のポリC2〜C4アルキレングリコールモノエステルとの、あるいは他の市販湿潤剤および分散剤、たとえばEFKA-5066、EFKA-5070、EFKA-5207、EFKA-5244、EFKA-6220、EFKA-6225、EFKA-6230、EFKA-8503、EFKA-8510、EFKA-8511、EFKA-8530、EFKA-8531、EFKA-8532などとの混合物を提供することである。
【0038】
式Iのリン酸エステルとポリC2〜C4アルキレングリコールモノエーテルのリン酸エステルとの、重量比0.01対99.99、好ましくは10対90、より好ましくは50対50の混合物が好ましい。
【0039】
本発明は、式Iのリン酸エステルの、分散剤としておよび分散安定剤としての使用にも関する。本発明による分散剤を水性および溶剤型コーティングおよび印刷インクの製造に用いることができる。水溶性ではないそれらの分散剤は、水中で自己乳化効果を持つことができ、そのためそれらは水性および溶剤型コーティングおよび印刷インク中での使用に同程度に適切である。あるいはまた、リン酸およびカルボン酸エステル基を水酸化アルカリ、たとえば水酸化カリウム溶液、またはアミン、たとえばアンモニア、ジメチルエタノールアミンなどにより中和することで、それらを完全に水溶性にすることができる。その中和度は、分散剤当り、中和剤0.5〜2当量、好ましくは中和剤0.8〜1.5当量である。この点については、本明細書で用いる水性および溶剤型コーティングおよび印刷インクは、部分的に有機補助溶剤を含むそれらの生成物も指す。この分野で用いる顔料は、使用する液体に不溶性の有機および無機顔料、たとえば、すす、多環式顔料、酸化鉄などである。
【0040】
本発明による分散剤は、固体、たとえば顔料、充填剤、およびファイバーを含む樹脂の製造でも使用することができる。このようなシステムは、シート成形コンパウンド(SMC)または塊状成形コンパウンド(BMC)として公知であり、そして不飽和ポリエステル樹脂を主成分とする。現在の技術水準では、これらのシステムは、最終製品の望ましい物性を達成するために、このような固体を高い配合量(典型的には>250phr)含有しなければならない。高固形分配合により起こる高粘度のために、強化用ファイバーの不十分な湿潤および空気の閉じ込めが観察される。本発明による分散剤の使用は、十分な粘度の低下を導き、このような高い充填剤グレードでファイバーの湿潤を高める。
【0041】
分散させることができるエキステンダーおよび充填剤の例は、たとえば、炭酸カルシウム、アルミナ、三水酸化アルミニウム(ATH)、砂、白陶土、タルク、カオリン、シリカ、バライトおよびチョーク、ガラス繊維、ガラスビーズ、または金属粉末である。
【0042】
これらの実施例が、単に存在する可能性の選択を表すことは、当業者には明らかで一般的であり、限定とみなすことはできない。
【0043】
実験
リン酸エステル製造のための一般的な方法および実施例
実施例1
方法A、リン酸エステルA:Me−(EO)7−MA−P
窒素雰囲気下、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG350、MW350、65.3g、1当量)およびリンゴ酸(25.0g、1当量)を、室温で反応器に入れ、180℃に加熱した。エステル化触媒としてジブチルスズジラウレート2滴を加えた。酸価105〜115mgKOH/gに達するまで、数時間の間、反応器から反応水を除去した。続いて淡黄色液体を60℃に冷ました後に、激しく攪拌しながらポリリン酸(テトラリン酸(PPA 116)、20.8g、0.33当量)をゆっくり加えた。この混合物を、100℃で1時間攪拌した。全工程の間、溶剤を加えなかった。リン酸エステルAを、室温で、透明で粘稠な黄色がかった液体として得た。
【0044】
実施例2
方法B、リン酸エステルB−1:Me−(EO)7CL2−MA−P
窒素雰囲気下、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MW350、44.4g、1当量)およびカプロラクトン(28.3g、2当量)を、室温で反応器に入れ、180℃に加熱した。エステル化触媒としてジブチルスズジラウレート2滴を加えた。反応混合物を、固形分>98%に達するまで、数時間攪拌した。
【0045】
反応混合物を140℃に冷まし、リンゴ酸(16.6g、1当量)を加えた。続いて、反応混合物を180℃に加熱し、酸価60〜70mgKOH/gに達するまで、数時間の間、装置から反応水を除去した。続いて淡黄色液体を60℃に冷ました後に、激しく攪拌しながらポリリン酸(テトラリン酸、13.8g、0.33当量)をゆっくり加えた。この混合物を、100℃で1時間攪拌した。全工程の間、溶剤を加えなかった。リン酸エステルBを、透明で粘稠な橙色液体として得て、これは室温でゆっくり凝固した。
【0046】
実施例3
方法B、リン酸エステルB−2:Me−(EO)7−CL4−MA−P
窒素雰囲気下、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MW350、44.4g、1当量)およびカプロラクトン(56.6g、4当量)を、室温で反応器に入れ、180℃に加熱した。エステル化触媒としてジブチルスズジラウレート2滴を加えた。反応混合物を、固形分>98%に達するまで、数時間攪拌した。
【0047】
反応混合物を140℃に冷まし、リンゴ酸(16.6g、1当量)を加えた。続いて、反応混合物を180℃に加熱し、酸価50〜60mgKOH/gに達するまで、数時間の間、装置から反応水を除去した。続いて淡黄色液体を60℃に冷ました後に、激しく攪拌しながらポリリン酸(テトラリン酸、13.8g、0.33当量)をゆっくり加えた。この混合物を、100℃で1時間攪拌した。全工程の間、溶剤を加えなかった。リン酸エステルBを、透明で粘稠な橙色液体として得て、これは室温でゆっくり凝固した。
【0048】
実施例4
方法C、リン酸エステルC:Me−(EO)7−CL2−CA−P
窒素雰囲気下、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MW350、43.3g、1当量)およびカプロラクトン(28.3g、2当量)を、室温で反応器に入れ、180℃に加熱した。エステル化触媒としてジブチルスズジラウレート2滴を加えた。反応混合物を、固形分>98%に達するまで、数時間攪拌した。
【0049】
反応混合物を140℃に冷まし、クエン酸(23.8g、1当量)を加えた。続いて、反応混合物を180℃に加熱し、酸価130〜140mgKOH/gに達するまで、数時間の間、反応器から反応水を除去した。続いて淡黄色液体を60℃に冷ました後に、激しく攪拌しながらポリリン酸(テトラリン酸、13.8g、0.33当量)をゆっくり加えた。この混合物を、100℃で1時間攪拌した。全工程の間、溶剤を加えなかった。リン酸エステルCを、室温で、透明で粘稠な茶色がかった液体として得た。
【0050】
実施例5
方法D、(Me−(EO)72−MA−P
方法AまたはBと同様だが、ポリマーモノアルコール2当量対リンゴ酸1当量の比で、最初の工程で完全にエステル化した。
【0051】
実施例6
類似の方法で、次の生成物を製造した。
【0052】
【表1】

【0053】
実施例7
リン酸エステルJ−1:(Me−(EO)7−CL22−CA−P
方法Cと同様だが、ポリマーモノアルコール2当量対クエン酸1当量の比で、最初の工程で完全にエステル化した。
【0054】
実施例8
リン酸エステルJ−2:(Me−(EO)7−CL23−CA−P
方法Cと同様だが、ポリマーモノアルコール3当量対クエン酸1当量の比で、最初の工程で完全にエステル化した。
【0055】
実施例9
リン酸エステルJ−3:(Me−(EO)72−CA−P
方法Cと同様だが、MPEG350 2当量対クエン酸1当量の比で、最初の工程で完全にエステル化した。
【0056】
実施例10
リン酸エステルJ−4:(Me−(EO)73−CA−P
方法Cと同様だが、MPEG350 3当量対クエン酸1当量の比で、最初の工程で完全にエステル化した。
【0057】
実施例11
方法K、リン酸エステルK
窒素雰囲気下、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MW350、35g、1当量)、アジピン酸(36.5g、2.5当量)、およびジプロピレングリコール(33.5g、2.5当量)を、室温で反応器に入れ、190℃に加熱した。エステル化触媒としてジブチルスズジラウレート2滴を加えた。この混合物から、反応水を6時間の間除去した。得られた黄色がかった液体を140℃に冷まし、方法Bに示すように、リンゴ酸(13.4g、1当量)およびポリリン酸(11.0g、0.33当量)とさらに反応させた。リン酸エステルKは、室温で暗黄色液体であった。
【0058】
実施例12
方法L、リン酸エステルL(リン酸エステルの混合物)
窒素雰囲気下、ポリエチレングリコールモノラウレート(MW600、24g、1当量)およびカプロラクトン(13.7g、3当量)を、室温で反応器に入れ、180℃に加熱した。エステル化触媒としてジブチルスズジラウレート2滴を加えた。反応混合物を、固形分>98%に達するまで、数時間攪拌した。
【0059】
反応混合物を140℃に冷まし、リンゴ酸(5.36g、1当量)を加えた。続いて、全てを数時間の間180℃に加熱し、酸価50〜60mgKOH/gに達するまで反応器から反応水を除去した。反応器の内容物を60℃に冷まし、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(Lutensol TO 8(商標)(BASF)MW約540、21.6g、1当量)を加えた。均質に攪拌した後、その次に激しく攪拌しながらポリリン酸(テトラリン酸、9.05g、0.66当量)をゆっくり加えた。得られた混合物を、100℃で1時間攪拌した。リン酸エステルLを透明で粘稠な黄色がかった液体として得て、これは室温でわずかに黄色いペーストに凝固した。
【0060】
実施例13
方法M
方法AまたはBと同様。合成の最後の工程で、ポリリン酸の代わりに五酸化二リン(phosphorous pentoxide)を用いて(ポリマーモノアルコール3当量に対して1当量)、モノおよびジリン酸エステルの1:1混合物を得た。反応条件:激しく攪拌しながら50℃でP25をモノアルコールに添加、その後温度を80℃にゆっくり上昇、そして1時間攪拌。
【0061】
【表2】

【0062】
実施例14
リン酸エステルP:
リン酸エステルB(100g、MW約775、1当量)を、脱イオン水125mlに室温で分散させた。温度を40℃に上げながら、この混合物に、KOH溶液(水中25%、26g、0.9当量)を、30分の間にゆっくり加えた。得られた透明な溶液を、40℃でさらに30分攪拌した。これにより、リン酸エステルP(Bのカリウム塩)を、固形分41%(Mettler Halogen dryer、150℃、0.5g)を有するわずかに黄色がかった液体として得た。
【0063】
実施例15
リン酸エステルQ:
窒素雰囲気下、リン酸エステルB(80g、MW約775、1当量)を脱イオン水100mlに室温で分散させた。温度を35℃に上げながら、この混合物に、N,N−ジ−メチルエタノールアミン(8.3g、0.9当量)を、1時間の間にゆっくり加えた。得られた透明な溶液を、40℃で30分攪拌した。これにより、リン酸エステルQ(Bのアンモニウム塩)を、固形分42%(Mettler Halogen dryer、150℃、0.5g)を有する黄色がかった液体として得た。
【0064】
応用実施例:
次の配合物を調製した。
配合物1
Laropal A81 60% 19.41wt% (粉砕樹脂、BASF)
Solvesso 100 05.15wt% (芳香族炭化水素溶剤、Exxon)
MPA 05.15wt%
(メトキシプロピルアセテート、溶剤、Kluthe)
Saci 300 A 01.00wt%
(沈降防止剤、Stoney Creek Technologies, LLC)
Kronos 2310 67.93wt% (二酸化チタン、Kronos)
ガラスビーズ3mm 100.0wt% (粉砕助剤)
リン酸エステル 01.36wt%
【0065】
調製:上記配合によるサンプルを、ガラスボトル中、Skandex(Fluid Management)で1時間振盪した。次に、レオロジーをHaake RS 600 Rheometerで測定する前に、サンプルを24時間室温に冷ました。
【0066】
配合物2
MEG 04.75wt% (モノエチレングリコール)
脱イオン水 16.88wt%
Bentone EW 00.20wt% (沈降防止剤、Rheox Inc.,)
AMP 90 00.15wt% (アミン中和、Angus Chemie)
EFKA-2550 00.20wt% (脱泡剤、EFKA Additives)
Parmetol A 28 S 00.20wt% (殺カビ剤、Schulke & Mayr GmbH)
Kulubrite 5 76.19wt%
(CaCO3、Idwala Ind. Holdings (Pty) Ltd.)
リン酸エステル 01.43wt%
【0067】
調製:上記配合によるサンプルを、ディソルバーを用いて4000rpmで2分分散させた。続いてサンプルを24時間室温に冷まし、Haake Rheometer RS 600で測定した。
【0068】
粘度測定は、剪断速度5〜50[1/s]で行った。
【0069】
配合物1
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
配合物2
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I:
【化1】


[式中、Aは、C1〜C20−アルキル−(AO)x−OHもしくはアシル−(AO)x−OH;または
1〜C20−アルキル−(AO)x−(HA)y−OHもしくはアシル−(AO)x−(HA)y−OH;または
1〜C20−アルキル−(AO)x−(AA−AO)y−OHもしくはアシル−(AO)x−(AA−AO)y−OH;または
MO−(HA)y−OHもしくはMO−(AA−AO)y−OH;
(式中、アシルは、芳香族カルボン酸残基または飽和もしくは不飽和の脂肪酸残基であり、
AOは、ポリC2〜C4アルキレングリコール残基であり、
HAは、ヒドロキシカルボン酸またはそのラクトンであり、
AAは、ジカルボン酸であり、
MOは、モノアルコールであり、
xは、1〜250であり、
yは、1〜250である)から誘導されるモノヒドロキシル残基であり、
Bは、モノ−、ジ−、トリ−、もしくはポリヒドロキシジ−、トリ−、もしくは多−カルボン酸残基であり、ヒドロキシ基を介してリン酸に、そしてカルボン酸基1個を介してモノヒドロキシル残基[A]に結合し、残りのカルボン酸基はフリーであるか、またはさらなるモノヒドロキシル残基[A]でエステル化されて分岐状エステルをもたらし、
nは、1〜2であり、
mは、1〜4である)のリン酸エステルおよびその塩。
【請求項2】
Bが、少なくとも1個のフリーカルボン酸基を有し、そして分岐中心を持たない、請求項1記載のリン酸エステル。
【請求項3】
Bのフリーカルボン酸基が、完全にエステル化された、請求項1記載のリン酸エステル。
【請求項4】
Bが、少なくとも1個のフリーカルボン酸基を有し、少なくとも1個のフリーカルボン酸基がエステル化された、請求項1記載のリン酸エステル。
【請求項5】
Bが、リンゴ酸またはクエン酸である、請求項1〜4のいずれか1項記載のリン酸エステル。
【請求項6】
アシルが、飽和または不飽和の脂肪酸残基であり;
AOが、ポリC2〜C3アルキレングリコール残基であり;
HAが、ε−カプロラクトンまたはδ−バレロラクトンであり;
AAが、ジカルボン酸であり;
MOが、アルキル鎖である4〜30個の炭素原子を有するモノアルコールであり、
xが、2〜50であり、
yが、2〜50である、請求項1〜5のいずれか1項記載のリン酸エステル。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載のリン酸エステルとポリC2〜C4アルキレングリコールモノエーテルのリン酸エステルとの、重量比0.01対99.99、好ましくは10対90、より好ましくは50対50の混合物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項記載の式Iのリン酸エステルもしくはその塩または請求項7記載の混合物の、分散剤としての使用。
【請求項9】
シート成形コンパウンド(SMC)または塊状成形コンパウンド(BMC)の製造における、式Iのリン酸エステルまたはその塩の使用。
【請求項10】
水性および溶剤型コーティングおよび印刷インクの製造における、式Iのリン酸エステルまたはその塩の使用。

【公表番号】特表2007−527896(P2007−527896A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502328(P2007−502328)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【国際出願番号】PCT/EP2005/050830
【国際公開番号】WO2005/085261
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(396023948)チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.
【Fターム(参考)】