説明

リークディテクタ

【構成】 試料ガスとバックグラウンドガスとを第1及び第2のガスセンサに交互に供給し、試料ガス及びバックグラウンドガスの流量を一定でかつ互いに等しくする。試料ガスに触れているガスセンサの出力からガスのリークを検出し、かつガスセンサの出力が所定の時間以上続けて閾値以上の場合に、試料ガスとバックグラウンドガスの流路を切り替える。
【効果】 ガスセンサの疲労による待ち時間がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はガスセンサを用いたリークディテクタに関し、特にガスセンサの疲労による待ち時間を無くしたリークディテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
リークの有無を検査する製品や設備に水素を封入し、ガスセンサでリークした水素を検出することが知られている。ところでガスセンサは高濃度のガスなどに触れると疲労し、出力が清浄空気中レベルへなかなか復帰しないことがある。リークの検査でガスセンサの出力が清浄空気中レベルへ復帰するのを待つと、高濃度のガスなどに触れる毎に待ち時間が生じ、非効率である。ガスセンサが高濃度のガスに触れることにより疲労し、センサ出力が清浄空気中レベルへ回復するまで検出ができなくなることは、フロン等の他のガスを検出するリークディテクタでも同様である。
【0003】
なお関連する先行技術を示すと、特許文献1:JP1999-264809Aは、ガスセンサへ供給する雰囲気を参照ガスと試料ガスとの間で切り替えた際の、過渡的な特性からガスを検出することを開示している。
【特許文献1】JP1999-264809A
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、ガスセンサの疲労による待ち時間を無くすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明のリークディテクタは、試料ガスの吸引孔と、バックグラウンドガスの吸引孔と、
第1及び第2の少なくとも2個のガスセンサと、
試料ガスを第1のガスセンサへバックグラウンドガスを第2のガスセンサへ供給する状態と、試料ガスを第2のガスセンサへバックグラウンドガスを第1のガスセンサへ供給する状態との間で、流路を切り替えるバルブと、
試料ガス及びバックグラウンドガスの流量が一定でかつ互いに等しくなるようにするための流量制御手段と、
第1及び第2のガスセンサの内で試料ガスを供給されているガスセンサの出力から、ガスのリークを検出するためのリーク検出手段と、
前記試料ガスを供給されているセンサの出力が増加して所定の条件を満たすと、前記バルブを介して前記流路を切り替えるための流路切り替え手段、とを設けたものである。
【0006】
ガスセンサは同種のものとし、3個以上設ける場合、流路も3通り以上設けて、センサの切り替えに応じて流路を切り替える。
好ましくは、流路切り替え手段は、前記試料ガスを供給されているセンサの出力が第1の閾値以上に増加した後、所定の時間内に第2の閾値以下に低下しない際に、流路を切り替える。
さらに好ましくは、前記リーク検出手段はリーク検出モードとガス濃度測定モードの2種のモードを備え、
リーク検出モードでは、ガスセンサ出力の時間微分からガスのリークを検出すると共に、前記試料ガスを供給されているセンサの出力が、第1の閾値以上に増加してから所定の時間経過した時点で、第2の閾値を越えている場合に流路を切り替え、
ガス濃度測定モードでは、前記試料ガスを供給されているセンサの出力が増加した後の安定値からガス濃度を測定すると共に、前記安定値を取得した時点で流路を切り替える。
【発明の効果】
【0007】
この発明では、一方のガスセンサが試料ガスに触れて出力が増加し所低の条件を満たすと、流路を切り替え他方のガスセンサで検出を開始する。他方のガスセンサは同じ流量のバックグラウンドガスに触れていたので、流路を切り替えてもセンサが置かれている環境は同じで、検出を開始すると直ちに検出を開始できる。このため、ガスセンサの疲労による待ち時間が生じない。
【0008】
ここで流路切り替え手段は、試料ガスを供給されているセンサの出力が第1の閾値以上に増加した後、所定の時間内に第2の閾値以下に低下しない際に、流路を切り替えると、センサの出力が元のレベルまで低下しない場合に流路を切り替えることができる。
またリーク検出モードとガス濃度測定モードの2種のモードを設けると、リークの有無のチェックとガス濃度の測定の2種類の検出ができる。そしてリーク検出モードでは、ガスセンサ出力の時間微分からガスのリークを検出すると共に、試料ガスを供給されているセンサの出力が、第1の閾値以上に増加してから所定の時間経過した時点で、第2の閾値を越えている場合に流路を切り替える。一方ガス濃度測定モードでは、試料ガスを供給されているセンサの出力が増加した後の安定値からガス濃度を測定すると共に、前記安定値を取得した時点で流路を切り替えると、ガス濃度の安定値を測定できるようになった後に流路を切り替えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0010】
図1〜図4に、実施例のリークディテクタを示す。各図において2,4はガスセンサで、例えば金属酸化物半導体水素センサとし、ガスセンサ2,4は例えば同じ型番の同一ロットの2個のガスセンサである。6,8は三方弁で、これらを合わせて1個の4方弁等としてもよく、10,12はニードルバルブで、流量を調整できるバルブであれば任意であり、14,16は流量計である。また18は吸引用のポンプで、ニードルバルブ10,12に対しそれぞれ別のポンプを設けても良い。20,21はダストフィルタで、ガス中のダストを除き、22,23はガスフィルタで、活性炭やゼオライトなどのフィルタである。そしてダストフィルタ20,21は同じ種類のフィルタとし、ガスフィルタ22,23も同じ種類のガスフィルタとして、流路を切り替えても流量が変動しないようにする。25はガス吸引孔で、図示しないプローブの先端などに設け、チューブ27を介してダストフィルタ20へ接続する。26はバックグラウンドガス吸引孔で、リークディテクタの本体ケースなどに設ける。
【0011】
三方弁6,8の切替信号を(S,R)、ガスセンサ2,4からの出力信号をS1,S2、流量計14,16からの出力信号をF1,F2とする。またニードルバルブ10,12の制御信号をQ1,Q2とする。24は制御部で、ADコンバータやマイクロコンピュータ並びにLCDディスプレイなどを備え、センサ信号S1,S2と流量信号F1,F2が入力され、信号S,Rにより三方弁6.8を切り替えると共に、信号Q1,Q2によりニードルバルブ10,12を制御する。
【0012】
図2にリークディテクタの制御部24を示す。ADコンバータ30へはセンサ信号S1,S2と流量信号F1,F2とが入力され、流量制御部40によりニードルバルブ10,12を制御して、これらの流量が一定でかつ共に等しくなるようにする。なお流量制御部40を設ける代わりに、ニードルバルブ10,12をマニュアルで制御するようにして、バルブ10,12の制御の仕方を表示部35に表示しても良い。リーク検出部31は、試料ガスに触れている方のガスセンサの出力を時間微分し、水素のリークの有無を検出する。
【0013】
水素濃度測定部32は、同様に試料ガスに触れている方のガスセンサ信号が増加し、安定値に達すると、安定値から水素濃度を検出する。なお実際にセンサ信号が安定値に達するのを待つ代わりに、センサ信号の波形などから安定値を予測して、水素濃度を求めても良い。水素のリークの有無や水素濃度は、試料ガスに触れている方のガスセンサの信号から検出し、これらの検出結果を表示部35に表示する。流路切り替え部33は、試料ガスに触れている方のガスセンサ信号に基づいて、流路の切替信号S,Rを出力する。34は、流路切り替え部33に付属のタイマである。記憶部36は、バックグラウンドガスに触れている方のガスセンサ信号の平均値や定常値などを記憶し、流路を切り替え、このセンサを測定に用いると、記憶した平均値や定常値をバックグラウンドレベルを示す参照信号とする。モード選択部37は、リーク検出モードか水素濃度測定モードかの切り替えを行うマニュアルスイッチである。
【0014】
図3に、リーク検出モードでの流路の切り替えアルゴリズムを示す。ここではセンサAが試料ガスに触れているものとし、センサ信号の時間微分からリークの有無を求めて、検出結果を表示部に表示する。センサAの出力が第1の検出閾値を越えると、タイマを起動し、タイムアウトするまでに第2の検出閾値以下にセンサ出力が低下していない場合、流路を切り替える。このようにして、ガスセンサの信号が増加した後、バックグラウンドレベルへの復帰が遅い場合に、流路を切り替える。また例えば1分あるいは2分などの一定時間毎に、流路を切り替える。ここでは検出閾値2を検出閾値1以下としたが、これらは同一の値などでも良い。またタイマを設けず、ガスセンサの信号が検出閾値1を越えると流路を切り替えてもよい。この場合は、微分によるリークの検出を妨げないように、第1の検出閾値を実施例よりも大きい値とすることが好ましい。
【0015】
図4に、水素濃度測定モードでの流路切り替えアルゴリズムを示す。検出閾値1や検出閾値2は例えば図3の場合と同様とし、タイマ34がタイムアウトした時点ではなく、センサ出力が安定値に達すると、もしくは安定値を予測し得るようになると、流路を切り替える。即ち図4の1)でセンサ出力の波形から安定値を測定もしくは予測し、この時点でタイマ34がタイムアウトしていると流路を切り替える。なお水素濃度測定モードでは、検出のタクトタイムへの要求が高くないので、高濃度ガスに触れた後の流路の切り替えを行わなくても良い。またセンサ出力をキャリブレーションしておき、試料ガス中での安定値から求めたガス濃度と、バックグラウンド中でのセンサ出力に対応するガス濃度との差を、水素濃度として出力する。
【0016】
実施例では金属酸化物半導体ガスセンサによる水素の漏れを検出する例を示したが、検出対象ガスはフロンその他任意であり、ガスセンサは接触式燃焼式ガスセンサや固体電解質ガスセンサあるいは電気化学ガスセンサなどでもよい。

【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例のリークディテクタのガス流路を示す図
【図2】実施例での制御部のブロック図
【図3】リーク検出モードでの流路切り替えアルゴリズムを示す図で、1)はガスセンサの出力波形を、2)はタイマの動作を、3)は流路の切替を示す。
【図4】水素濃度測定モードでの流路切り替えアルゴリズムを示す図で、1)はガスセンサの出力波形を、2)はタイマの動作を、3)は流路の切替を示す。
【符号の説明】
【0018】
2,4 ガスセンサ
6,8 三方弁
10,12 ニードルバルブ
14,16 流量計
18 ポンプ
20,21 ダストフィルタ
22,23 ガスフィルタ
24 制御部
25 試料ガス吸引孔
26 バックグラウンドガス吸引孔
27 チューブ
30 ADコンバータ
31 リーク検出部
32 水素濃度測定部
33 流路切り替え部
34 タイマ
35 表示部
36 記憶部
37 モード選択部
40 流量制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスの吸引孔と、バックグラウンドガスの吸引孔と、
第1及び第2の少なくとも2個のガスセンサと、
試料ガスを第1のガスセンサへバックグラウンドガスを第2のガスセンサへ供給する状態と、試料ガスを第2のガスセンサへバックグラウンドガスを第1のガスセンサへ供給する状態との間で、流路を切り替えるバルブと、
試料ガス及びバックグラウンドガスの流量が一定でかつ互いに等しくなるようにするための流量制御手段と、
第1及び第2のガスセンサの内で試料ガスを供給されているガスセンサの出力から、ガスのリークを検出するためのリーク検出手段と、
前記試料ガスを供給されているセンサの出力が増加して所定の条件を満たすと、前記バルブを介して前記流路を切り替えるための流路切り替え手段、とを設けたリークディテクタ。
【請求項2】
流路切り替え手段は、前記試料ガスを供給されているセンサの出力が第1の閾値以上に増加した後、所定の時間内に第2の閾値以下に低下しない際に、流路を切り替えることを特徴とする、請求項1のリークディテクタ。
【請求項3】
前記リーク検出手段はリーク検出モードとガス濃度測定モードの2種のモードを備え、
リーク検出モードでは、ガスセンサ出力の時間微分からガスのリークを検出すると共に、前記試料ガスを供給されているセンサの出力が、第1の閾値以上に増加してから所定の時間経過した時点で、第2の閾値を越えている場合に流路を切り替え、
ガス濃度測定モードでは、前記試料ガスを供給されているセンサの出力が増加した後の安定値からガス濃度を測定すると共に、前記安定値を取得した時点で流路を切り替えるようにしたことを特徴とする、請求項2のリークディテクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−276309(P2009−276309A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130321(P2008−130321)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000112439)フィガロ技研株式会社 (58)
【出願人】(508148600)株式会社FUSO (3)
【Fターム(参考)】