説明

リーダを介してトランスポンダからデータを読み取る方法、トランスポンダ、及びリーダ

リーダ装置(RD)によって複数のタイムスロット(TS)の間にトランスポンダ(T1〜T4)からデータ(DAT1〜DAT4)を読み取る方法を開示しており、ここでは、前記リーダ装置(RD)及び前記トランスポンダ(T1〜T4)双方において前記タイムスロット(TS)の占用を観察している。再編成(REORG)を前記占用に応じて実行し、前記リーダ装置(RD)及び前記トランスポンダ(T1〜T4)双方は新しいタイムスロット(TS)の数(N)を選ぶ。さらに、前記トランスポンダ(T1〜T4)は、実際の要求にシステムの容量を適合させるように、前記リーダ装置(RD)にデータ(DAT1〜DAT4)を送信するための、新しいタイムスロット(TS)の1つを選ぶ。前記再編成(REORG)は、前記リーダ装置(RD)及び前記トランスポンダ(T1〜T4)の間の通信なしで行うことが望ましい。本発明は、さらに、本発明に係る方法を実行するためのトランスポンダ(T1〜T4)及びリーダ装置(RD)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のタイムスロットの間に、リーダ装置によって、トランスポンダからデータを読み取る方法に関する。本発明は、さらに、本発明に係る方法を実行するためのトランスポンダ及びリーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭に規定した非接触リーダ装置は、今日、特にサービス部門、物流の分野、商取引の分野、及び工業生産の分野において、幅広く使用されている。これらの例は、通常、ビル及びオフィスへのアクセスシステム、支払いシステムであるスマートカード、並びに個人識別のためのスマートカード(例えばパスポート)に基づくものである。これらのいわゆるRFIDタグに基づく例は、むしろ、物及び製品の識別/価格付け、又は一般的なアイテム管理(この技術はよく、電気的バーコード、略してEPCと呼ばれる)、動物へのタグ付け、及びRFIDタグを内部に備える紙に対するシステムである。当業者は、当然、上記例は多数の用途及びサービスのほんの一部を単に表すに過ぎず、スマートカード及びRFIDタグが使用できる対象を示すものであることを理解するだろう。さらに、間もなく登場する近距離無線通信(Near Field Communication)の技術、略してNFCもまた、同じ技術分野に属する。以下では、パッシブモードで動作する、RFIDタグ及びスマートカード、並びにNFC装置を、概して、トランスポンダと呼ぶものとする。
【0003】
リーダ装置は、無線範囲内のトランスポンダと通信する、全てのこれらのシステム(NFCを除く、装置がリーダとしても動作し得るため)に対して必要である。従って、リーダ装置は、コマンド又はデータを含むことができ、且つ、トランスポンダによって受信され得る、無線信号を送信する。さらに、データ及びコマンドを、トランスポンダによってリーダに返信することもできる。ここで、パッシブトランスポンダとアクティブトランスポンダとの間は区別するものとする。パッシブトランスポンダは自身に給電するために電磁場のエネルギーを用いるが、アクティブトランスポンダは自身の電力源、例えばバッテリを有している。さらに、リーダ装置とトランスポンダとの間の異なる種類の結合(coupling)を区別しなくてはならない。誘電結合、電磁後方散乱結合(electromagnetic backscatter coupling)、閉結合、及び電気的結合が存在する。最後に、様々なシステムは、数kHzから始まり数GHzまでの、異なる周波数範囲で動作する。簡潔のため、以下の一般的なシステム特徴にのみ言及する。しかしながら、当業者であれば、本発明の目的及びこの目的を達成するために取られる手段は、あらゆる種類の識別システムに応用できることに、容易に想到できるだろう。
【0004】
リーダ/トランスポンダシステム(例えばRFIDシステム)の設計において克服すべき一つの課題は、どのようにして、無線範囲内の多数のトランスポンダを同時に処理するか、すなわち、“データ衝突”と通常呼ばれる、あるトランスポンダからのデータが他のトランスポンダからのデータに重なることが起きないように、トランスポンダからデータを集めるのか?ということである。これらの衝突は、全てのトランスポンダからのデータ、通常はトランスポンダのID番号をリーダ装置によって収集する、いわゆる“インベントリ(inventory)”の開始時において、リーダ装置及びトランスポンダのいずれもが、いくつのトランスポンダがリーダ装置の無線範囲内にあるのかという情報を有していない、ということの結果として生じる。このトランスポンダの数は、図1、2a及び2bを参照して下記に説明される、反復的な読取手順の間に徐々に明らかになる。同様の例は、"Specification for RFID Air Interface - EPC Global", Version 1.0.9, 2004, EPC Global Inc、特にセクション6.3.2及び添付資料B,C及びFに見受けられる。他の同様の例は、"Technical Report - 13.56 MHZ ISM Band Class 1 RFID Interface Specification", version 1.0.0, 2003, Audio-ID Center、特にセクションBに見受けられる。最後に、ISO/IEC18000−6タイプAは、トランスポンダによるタイムスロットの多数の占用(seizure)がデータ衝突を導くという、タイムスロットに基づいた別の方法を表す。
【0005】
ここで図1は、無線範囲に4つのトランスポンダT1〜T4を有する、リーダ装置RDの構成を表す。トランスポンダT1〜T4からデータDAT1〜DAT4を読み取るため、リーダ装置RDは、トランスポンダT1〜T4によって受信され、続いて処理される、読取コマンドINVを送信する。結果として、要求されたデータDATA1〜DAT4は、トランスポンダT1〜T4からリーダ装置RDへと送信される。
【0006】
図2aは、図1に示される構成の読取シーケンスCYC1の、従来技術のタイミング図を表し、読取シーケンスCYC1は8つの個別タイムスロットTS1〜TS8から構成される。このタイムスロットTSをタイミング図の第1行に示す。第2行は、リーダ装置RDからトランスポンダT1〜T4へ送信される、データ又はコマンドを示す。第3行〜第6行は、トランスポンダT1〜T4からリーダ装置RDに返信されるデータを示す。ここで、図1の構成の機能は、以下のとおりである。
【0007】
まず、(“インベントリ”、“クエリ”、“開始ラウンド”又は“初期ラウンド”とも呼ばれる)読取コマンドINVが、リーダ装置RDによって発行される。この読取コマンドINVはまた、データの返信において、いくつのタイムスロットTSがトランスポンダT1〜T4によって用いられるのかという、情報項目を含む。従って、タイムスロットTSの数Nが読取コマンドINVに含まれており、この例では、数N=8である。この数Nはリーダ装置RDによって、初期設定、又は以前の経験に基づいて、厳密に、ランダムに決定することができる。即ち、リーダ装置RDは適応型アルゴリズムにより数Nを決定する。
【0008】
数Nを有するこの読取コマンドINVは、ここで、トランスポンダT1〜T4によって受信される。この数Nに基づき、トランスポンダT1〜T4は、どの時点において、即ちどのタイムスロットTSにおいて返信するかを決定する。一般に、これは全タイムスロットTSから1つをランダムに選択することによって、ここでは、8つのタイムスロットTS1〜TS8の1つを選択することによって行われる。この例では、第1のトランスポンダT1は、リーダ装置RDにDAT1を返信するために、第1のタイムスロットTS1を選択する。第2のトランスポンダT2も、第1のタイムスロットTS1を選択する。第3のトランスポンダT3は、第4のタイムスロットTS4を選択し、第4のトランスポンダT4は最後に第6のタイムスロットTS6を選択する。ここで、データ送信を開始することができる。
【0009】
第1のタイムスロットTS1は、読取コマンドINVの受信直後に始まるため、第1及び第2のトランスポンダT1及びT2は、自身のデータDAT1及びDAT2の送信を開始する。不運にも、リーダ装置RDは、通常、この2つのデータストリームを区別できないため、従って、DAT1及びDAT2は正しく受信されない。この状態は通常、2つ以上のトランスポンダT1〜T4が自身のデータDAT1〜DAT4を同時にリーダ装置RDに返信することを意味する、“データ衝突”と呼ばれる。しかしながら、周波数多重又は符号多重が用いられれば、この先で説明するように、2つ以上のトランスポンダT1〜T4によるデータを同時受信することができる。
【0010】
リーダ装置RDはこのデータ衝突を検出し、次のタイムスロット、ここでは第2のタイムスロットが開始できることを意味する、いわゆる“閉スロット”コマンドCSをトランスポンダT1〜T4に送信する。この“閉スロット”コマンドCSは、異なる技術又は標準において、異なる名称だが同一の機能のもの、即ち、リーダ装置RDの無線範囲内のトランスポンダT1〜T4に次のタイムスロットTSが開始することを伝えるものとして登場し得ることに留意されたい。
【0011】
第2及び第3のタイムスロットTS2及びTS3では、どのトランスポンダT1〜T4も応答しない。従って、リーダ装置RDは、比較的短時間後に、閉スロットコマンドCSにより次のタイムスロットに切替えることによって、読取シーケンスCYC1を加速する。従って、リーダ装置RDは、トランスポンダT1〜T4がデータDAT1〜DAT4の送信を開始するための待機時間の間、待機している。この待機時間後に、どのデータDAT1〜DAT4も受信しない場合、リーダ装置RDは閉スロットコマンドCSの発行を開始する。
【0012】
第4のタイムスロットTS4では、第3のトランスポンダT3は自身のデータDAT3を返信する。ここでは、自身のデータDAT1、DAT2、DAT4をリーダ装置RDに返信する他のトランスポンダT1、T2、T4は存在しないため、第1のタイムスロットT1とは対称的に、データ衝突は発生しない。第3のデータDAT3は、従って、リーダ装置RDに正しく送信される。従って、リーダ装置RDは、上記説明のとおり次のタイムスロットへの切替えの目印となり、さらに、アドレス指定したトランスポンダ、ここでは第3のトランスポンダT3を沈黙(quiet)状態にする、(“確定スロット”又は“次スロット”とも呼ばれる)いわゆる“閉スロット及び沈黙”コマンドCQにより応答する。この沈黙状態は、トランスポンダは、停止してから他の読取コマンドINVを受信するまで、沈黙にとどまることを意味する。ここでも、同等のコマンド及び手順は、異なる標準又は異なる技術において、異なる名称又はやや異なる要因さえ有し得ることに注意されたい。当業者であれば、これらの標準及び技術を容易に本発明に応用することができる。
【0013】
第4のタイムスロットTS4の後、他の、空のタイムスロット、即ち第5のタイムスロットTS5が続く。このあと、第4のトランスポンダT4は、第6のタイムスロットTS6内に、自身のデータDAT4をリーダ装置RDに返信する。この第6のタイムスロットTS6は、上記説明のように、閉スロット及び沈黙コマンドCQによって閉じされる。最後には、第1の読取シーケンスCYC1完了後、さらに2つのタイムスロット、即ち第7及び第8のタイムスロットTS7及びTS8が存在する。
【0014】
リーダ装置RDが第1の読取シーケンスCYC1においてデータ衝突を検出しているため、全てのトランスポンダT1〜T4からのDAT1〜DAT4が受信されていないことは明らかである。従って、リーダ装置RDは、図2bに示すようにもう一度読取コマンドINVを発行することにより、第2の読取シーケンスCYC2を開始する。第1の読取シーケンスCYC1において複数の空のタイムスロットTSが検出されたため、リーダ装置RDはここでは6つのタイムスロットTSのみを予約するように決定する。従って、読取コマンドINVに含まれる数NはN=6に設定される。(通常、一般的なシステムでは数Nは2の乗数、つまり自然数xに対して2に限られることに留意されたい。)本例では別の数Nを選択しているが、これは、本発明がこのように選択の可能性が限られたシステムに適用できないことを意味しているわけではない。)この手順は、図2aのタイミング図に対する上記説明と同等である。従って、第4及び第5のタイムスロットTS4及びTS5において、第1のトランスポンダT1からのデータDAT1及び後続の第2のトランスポンダT2からのデータDAT2がリーダ装置RDに送信され、その前の3つのタイムスロットTS1〜TS3は空である。最後の第6のタイムスロットTS6もまた空である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
第2の読取シーケンスCYC2ではデータ衝突が検出されないため、全トランスポンダT1〜T4からのDAT1〜DAT4は受信されている。当業者であれば、空のタイムスロットTS及び読取コマンドINVの複数送信により、多くの時間が浪費されていることは容易に認識できる。このことに対応して、第1の読取シーケンスの時間t1及び第2の読取シーケンスの時間t2の単純な合計である、読取手順の稼働時間が長くなるという結果を生じる。従って、本発明の目的は、読取手順を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は、リーダ装置によって複数のタイムスロットの間にトランスポンダからデータを読み取る方法であって、前記方法は、
前記リーダ装置及び前記トランスポンダ双方において前記タイムスロットの占用を観察するステップと、
前記リーダ装置及び前記トランスポンダの双方において新たなタイムスロット数を選び、かつ、前記トランスポンダにおいてデータを前記リーダ装置に返信する前記新たなタイムスロットの1つを選択する再編成を、前記占用に応じて実行するステップと、を含むことを特徴とする方法によって達成される。
【0017】
本発明の目的はさらに、複数のタイムスロットの間にリーダ装置にデータを送信するトランスポンダであって、前記トランスポンダは、
他のトランスポンダによる前記タイムスロットの占用を観察する手段と、
新たなタイムスロット数を選び、かつ、データを前記リーダ装置に返信する前記新たなタイムスロットの1つをさらに選択する再編成を、前記占用に応じて実行する手段と、を有することを特徴とするトランスポンダによって達成される。
【0018】
最後に、本発明の目的は、
複数のタイムスロットの間にトランスポンダからデータを読み取るリーダ装置であって、前記リーダ装置は、
前記タイムスロットの占用を観察する手段と、
再編成を前記占用に応じて実行する手段と、を備え、
前記新たなスロット数を、前記トランスポンダと前記再編成に関する情報を交換しないで選ぶことを特徴とするリーダ装置によって達成される。
【0019】
本発明によると、リーダ装置及びトランスポンダ双方において再編成(reorganization)が行われるため、少なくとも取るべきステップのいくつかを、これらが同様の方法で実行する(即ち双方が同じことを同時にする)のであれば、独立して実行できる(即ち関係する情報の交換なしに)という利点をもたらす。これは、いつ及びどのように再編成を行うかについてのルールの初期設定を必要とし、これは、例えば、リーダ装置及びトランスポンダの製造段階にて行われ得る。製造者はこのルール、即ちプロトコルをリーダ装置及びトランスポンダの設計に組み込む。このような初期設定の利点は、この再編成に関する情報を、リーダ装置及びトランスポンダ間で交換する必要がない、又はごくまれに交換するだけでよい、ということである。これによって、インベントリの処理時間は劇的に減少される。
【0020】
前記再編成の前に前記リーダにデータを送信していない前記トランスポンダのみが、前記再編成を行えば、有利である。この方策は、再編成が開始される前に自身のデータをリーダに送信したトランスポンダは、この再編成に参加しないことを保証する。従って、多数のデータ送信を、有益に回避する。
【0021】
前記再編成の前に前記リーダ装置に自身のデータが正しく受信されていない前記トランスポンダのみが、前記再編成を行えば、非常に有利である。この方策は、再編成が開始される前に自身のデータをリーダに正しく受信されているトランスポンダ(これらのトランスポンダは閉スロット及び沈黙コマンドを受信する)は、この再編成に参加しないことを保証する。上記実施形態において、トランスポンダが実際には自身のデータを送信することがあるが、例えばデータ衝突によって、これらのデータはリーダにおいて正しく受信されていない(これらのトランスポンダは閉スロットコマンドを受信する)。いずれにせよ、これらのトランスポンダは自身のデータを繰返して送信しなければならないため、これらのトランスポンダがこの再編成に参加することは有利である。結果的に、多数のデータ送信を有益に回避することになるが、これは自身のデータがリーダ装置に正しく送信されたトランスポンダのデータのものだけである。
【0022】
本発明に係る方法が、
前記リーダ装置においてタイムスロット数を選択するステップと、
前記リーダ装置から前記リーダ装置の無線範囲内の前記トランスポンダに、前記タイムスロット数を含む読取コマンドを送信するステップと、
トランスポンダにおいて、前記リーダ装置にデータを返信するための1つのタイムスロットを選択するステップと、という初期化ステップを含めば有利である。
【0023】
上記利点に加え、ここで、リーダ装置は、単独で最初の実行のパラメータ、即ちタイムスロット数を決定する。ここでは、タイムスロット数を決定する場合、過去の読取手順の結果を考慮に入れることができる。リーダ装置が、常に、初期設定の間にエンジニアによって固定的に設定された同一のタイムスロット数を“選択”することも同様に考えられる。上記のプロトコル関連のトピックスに加え、再編成をいつ及びどのように行うか、又は少なくともこの一部に関するプロトコルを、読取コマンドと共に又は読取コマンド前に送信することにより、本発明に係るシステムの柔軟性をさらに増加させることも考えられる。
【0024】
前記再編成を、前記リーダ装置及び前記トランスポンダの間で前記再編成に係る情報を交換しないで行えば、非常に有利である。この場合、再編成は、読取コマンドが多くのタイムスロットを占用する従来技術のシステムの場合のように、リーダ装置からトランスポンダにコマンドを送信しなくてよいため、時間に関して非常に効率的に実行できる。従って、インベントリの処理時間はさらに減少される。上記は、この特徴に対する“明確な”情報、即ち再編成に関し、再編成の直前にリーダ装置及びトランスポンダ間で意図的に交換される情報、例えば特別なコマンド又は再編成に関する特別なパラメータを備えるコマンドを指していることに留意されたい。一方、再編成を実行するか実行しないかの決定に用いられ、かつ、他の情報から取得される情報(例えばタイムスロットのある種の占用、再編成に直接関係しないコマンドのある種のタイミング)は、“明確な”情報とはみなさない。さらに、この特徴は、例えばいつシステムを立ち上げるか、又はいつ読取コマンドを発行するかといった、再編成に対して直接的な時間関係のない、再編成に関する情報を最初にリーダ装置及びトランスポンダ間で交換する可能性を排除しない。
【0025】
本発明に係る方法の好適な実施形態では、前記占用が所定の制限より上の場合には、より多くの新たな数のタイムスロットで実行し、前記占用が所定の制限より少ない場合、より少ない数のタイムスロットで前記再編成を実行する。これは、タイムスロット数を実際の条件に適応させることにより、空の又は重複(overload)タイムスロットを回避する正攻法のアプローチである。
【0026】
従って、有利な方法では、前記リーダ装置及び前記トランスポンダ双方が空のタイムスロットをカウントし、かつ、前記空のタイムスロット数が所定の制限を越えた場合には、より少ない新たなタイムスロット数で前記再編成を実行する。空のタイムスロットの存在はシステムの通信量が実容量より少ないことを示唆するため、空のタイムスロットのカウントは、本発明を実施する上での比較的容易なやり方である。結果的に、データ収集用に予約された時間を減少し、後続の手順用により少ない数のタイムスロットを選択することになる。
【0027】
先行するコマンドの後の、前記リーダ装置によって前記トランスポンダからのデータの待機に用いられる待機時間内に、前記リーダ装置によって送信される、閉スロットコマンドを受信した際に、前記トランスポンダの空のタイムスロットのカウントを増加させることはさらに有利である。従来のシステムでは、リーダ装置は、トランスポンダから送信されるデータに対して常にある時間待機する。このタイムスロットを選択するトランスポンダが存在せず、トランスポンダによるデータ送信が生じない場合、リーダ装置は、リーダ装置が次のタイムスロットに切替わることを意味する、いわゆる“閉スロットコマンド”の発行に移る。本発明では、空のタイムスロットを検出するために、この動作の評価を行う。従って、先行技術のシステムを更新するには、わずかな修正が必要となるだけである。
【0028】
前記リーダ装置及び前記トランスポンダ双方が2つ以上のトランスポンダ間のデータ衝突をカウントし、前記データ衝突の数が所定の制限を超えた場合に、より大きい新たなタイムスロット数で前記再編成を行うこともまた有利である。重複タイムスロットの存在はシステムの通信量が実容量より多いこと示唆するため、重複タイムスロットのカウントは、本発明を実施する上での比較的容易なやり方である。結果的に、データ収集用に予約された時間を、後続の手順に対してより大きい数のタイムスロットを選択することにより、延期する。
【0029】
有利な実施形態では、トランスポンダにおけるデータ衝突のカウンタを、先行するコマンドに続く、前記リーダ装置によって前記トランスポンダからのデータの待機に用いられる待機時間内に、前記リーダ装置によって送信される閉スロットコマンドを受信した際に、さらに増加させる。上記の通り、従来のシステムにおけるリーダ装置は、トランスポンダから送信されるデータを常にある時間待機する。データ送信が生じる場合、トランスポンダは現在のタイムスロットを選択しているため、リーダ装置は、データが送信されるまで待機して、リーダ装置が次のタイムスロットに切り替わり、かつ、トランスポンダに次の手順のために無通信で待機するように指示する、いわゆる“閉スロット及び沈黙コマンド”の発行に移る。しかしながら、2つ以上のトランスポンダが現在のタイムスロットを選んだ場合、全てのトランスポンダが自身のデータを同時に送信するためにデータ衝突が発生する。この場合、問題となったトランスポンダから後ほどデータを集めなければならないため、リーダ装置は通常の“閉スロットコマンド”を発行する。本発明では、重複したタイムスロットを検出するために、この動作の評価を行う。原理上は、データが送信されるため、これは、トランスポンダから送信されるデータをリーダが待つ純粋な待機時間より長くかかる。早く到着する閉スロットコマンド(空のタイムスロット)と遅く到着する閉スロットコマンド(重複タイムスロット)とを区別することにより、トランスポンダは容易にどちらのカウンタを増加させるか決定できる。従って、先行技術のシステムを更新するには、わずかな修正が必要となるだけである。
【0030】
タイムスロットが、それぞれがリーダ装置からの読取コマンドで始まる、より多くの読取シーケンスに分散していることがより好ましい。本発明に係る方法によっても、全てのトランスポンダを1つの読取シーケンス内(即ち1つの読取コマンドのみの発行によって)で読み出すことができるという保証はない。トランスポンダの設計を簡潔に保つために、1つは、簡易なアルゴリズムのみを、通常、トランスポンダに実装する。一方で、考えられる全ての場合をカバーできないことは、簡易なアルゴリズムの特性でもある。従って、リーダが、データ衝突に関わるトランスポンダからデータを収集するために、他の読取コマンドを発行することによって他の読取シーケンスを開始し、かつ、新たなパラメータ、即ちタイムスロットの数を、トランスポンダで実行中のアルゴリズムとは独立に送信する可能性を得ることは、実用的である。
【0031】
本発明に係る方法が、
リーダ装置において、リードシーケンスのタイムスロット数及びリードシーケンス数を選ぶステップと、
前記リーダ装置から前記リーダ装置の無線範囲内の前記トランスポンダに、前記タイムスロット数及び前記リードシーケンス数を含む読取コマンドを送信するステップと、
トランスポンダにおいて、前記リーダ装置にデータを返信するための1つの前記タイムスロット及び1つ前記リードシーケンスを選択するステップと、
前記リーダ装置及び前記トランスポンダ双方において、前記タイムスロットの占用を観察するステップと、
前記リーダ装置及び前記トランスポンダの双方において新たなタイムスロット数及び新たなリードシーケンス数を選び、かつ、前記トランスポンダにおいてデータを前記リーダ装置に返信する前記新たなタイムスロットの1つ及び前記新たなリードシーケンスの1つを選択する再編成を、前記占用に応じて実行するステップと、を含むことは、さらに非常に有利である。
【0032】
ここでは、タイムスロットは、それぞれが読取コマンドの発行によって開始する、より多くの読取シーケンスに分散している。より多くの読取シーケンスを使用することが有利であると先ほど決定している通り、この例では、読取シーケンスの数もまた読取コマンドと共に送信される。結果的に、トランスポンダは回答するタイムスロットを選ぶだけではなく、回答する読取シーケンスも選ぶことになる。読取シーケンスの数は、初期設定、ランダム、又は未来の決定に過去の出来事を考慮する適応型アルゴリズムの結果に基づいて、リーダによって決定される。
【0033】
(単純な)タイムスロットの代わりに送信チャネルを使うと、さらに大変有利である。送信チャネルはタイムスロットによって形成され、そこでは、さらに、データが異なる周波数帯域及び/又は異なる符号列を用いて送信される。“時分割多重接続”(TDMA)とも呼ばれるタイムスロットでのデータ送信は、1つ以上のエンティティからデータを集める唯一の候補である。同様に、共通に使われるのは、“周波数分割多重接続”(FDMA)及びいわゆる“符号分割多重接続”である。ここでは、周波数帯域又は符号列の組が多数の情報源からのデータ収集に用いられる。従って、ある時間周期内の送信チャネル数をさらに増加させるために、本発明に係るTDMA手順をFDMA及び/又はCDMAと組み合わせることはまた有利である。そうすることにより、送信チャネル数を減少又は増加させるパラメータは、タイムスロットの数だけではなく、周波数帯域及び符合の数も対象となる。これは、高い自由度によって、実際の要求に可能な限り合致するためのシステム容量の効率的な調整を実現するが、より複雑なシステムが必要となる。
【0034】
リーダ装置において、リードシーケンスの送信チャネル数を選ぶステップと、
前記リーダ装置から前記リーダ装置の無線範囲内の前記トランスポンダに、前記送信チャネル数を含むよ読取コマンドを送信するステップと、
トランスポンダにおいて、前記リーダ装置にデータを返信するための1つの送信チャネルを選ぶステップと、
前記リーダ装置及び前記トランスポンダ双方において、前記送信チャネルの占用を観察するステップと、
前記リーダ装置及び前記トランスポンダの間で前記新たな選択に関する情報を交換することなく、前記リーダ装置及び前記トランスポンダの双方において新たな送信チャネルを選び、かつ、前記トランスポンダにおいてデータを前記リーダ装置に返信する前記送信チャネルを選択する再編成を、前記占用に応じて実行するステップと、を含むことは、さらに有利である。
【0035】
ここで、本発明に係る方法を、タイムスロットをカバーするだけでなく周波数帯域及び符号列を上記の通りカバーする、送信チャネルにまで拡大する。従って、送信チャネルの数は、読出し手順のために予約される時間を延長又は短縮させるパラメータである。上では送信チャネルを広い意味で参照しているが、当業者であれば、上記シーケンスをより異なったパラメータに応用できることにも容易に想到できる。つまり、送信チャネルの数を変える代わりに、タイムスロットの数及び/又は周波数チャネルの数及び/又は符号の数を変えることも考えられる。当業者は、さらに、読取シーケンスの間、1つのパラメータのみを制御し、他のパラメータを定数に保つこと、又は他の任意の組み合わせを応用することが考えられることを理解するだろう。
【0036】
本発明の他の好適な実施形態は、再編成の間、リーダ装置及びトランスポンダ双方において、タイムスロットの数に加えて、又はタイムスロットの数の代わりに、確率パラメータを選び、かつ、トランスポンダではさらに、この確率パラメータに応じたある確率で、リーダ装置にデータを返信するタイムスロットを選ぶ方法である。
【0037】
ここでは、トランスポンダはある確率で新たなタイムスロットを選ぶ。この場合、読取コマンド送信時に(又は初期ラウンドコマンド時に)“確率パラメータ”がトランスポンダに供給される。ここまでに示した教示によれば、トランスポンダは、リーダ装置から与えられるタイムスロットの1つを常に選ぶ。従って、トランスポンダはいずれにしても1つのタイムスロットを選ぶ。ここでは、下記の例によって示すように、所与の確率のみによってトランスポンダがタイムスロットを選ぶという、異なった方法を示す。
【0038】
リーダ装置は、追加の確率パラメータを有する読取コマンドを発行する。例えばN=8をタイムスロットの数に選び、1/8を確率に選ぶことができる。従って、トランスポンダは8つのタイムスロットの1つを1/8の確率で選択する。これは、全てのトランスポンダがタイムスロットを選ぶことを意味する(ここまでは前述の方法と異ならない)。N=6での再編成を想定すると、確率は1/8に設定されており、一方で利用可能なタイムスロットの数は6だけであるため、全てのトランスポンダがタイムスロットを選ぶわけではない。読取すべきトランスポンダが8つ残されているとすると、これは、このうち6つのみが利用可能なタイムスロットの1つを選ぶことを意味する。これに対して、システムの全てのトランスポンダは確率パラメータなしで返答する。結果として、確率パラメータを用いるシステムはデータ衝突のリスクを減少できるが、複数のトランスポンダからデータが受信できない危険性を含む。通常、確率パラメータをタイムスロット数の逆数、例えばN=8に対して1/8、N=6に対して1/6など、にすることは良い選択である。しかしながら、システムをデータ衝突のリスクから少し遠ざける(確率を減らす)又はトランスポンダを見逃すリスクから遠ざける(確率を上げる)ために、他の選択をすることもまた有用である。さらに、タイムスロットの数及び確率パラメータは、共に読取手順の制御に使用することができる。従って、読取手順の制御に対して大きな自由度が得られる。しかしながら、この制御に確率パラメータを単独で用いながら、タイムスロット数を定数に保つことも可能である。この点では、数N=1も選ぶことができ、これは確率パラメータを用いる場合に特に有利であることに留意されたい。
【0039】
本発明に係る方法の好適な実施形態では、さらに、再編成を、占用が所定の制限より上の場合には、より低い確率パラメータで実行し、占用が所定の制限未満の場合、より高い確率パラメータで実行する。これは、タイムスロットの占用を制御し、空の又は重複タイムスロットを回避する正攻法のアプローチである。
【0040】
この発明の他の好適な実施形態では、確率パラメータは再編成をいつ及びどのように実行するかのルールの一部である。例えばこの確率は実施が非常に容易となるよう常にタイムスロットの逆数となる。一見すると、これは非常に有用であると思えないが、詳細な精査により、この方策は、予想より多いトランスポンダを読取すべき場合に、特に有利であることが示される。確率パラメータはデータ衝突のリスクを減らす一方、進行中の再編成は1回の実行で全てのトランスポンダからのデータを取得するのに役立つ。従って、確率パラメータと再編成の組み合わせは、非常に効率的な読取アルゴリズムをもたらす。
【0041】
最後に、この点において、本発明に係る方法に関する様々な実施形態及び関連する利点は、本発明に係るトランスポンダ及び本発明に係るリーダ装置に等しく応用可能である。
【0042】
これ以降、本発明を、非限定的な例によって、図面に示す実施形態を参照して、より詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
図3aは、再び、リーダ装置RD及び4つのトランスポンダT1〜T4による読取手順のタイミング図を示す。各コマンドは図2a及び2bと同じであり、簡潔のため、各コマンドの効果の詳細な説明は省略する。
【0044】
トランスポンダT1〜T4からリーダ装置RDに返信されるデータDAT1〜DAT4の送信用に、8つのタイムスロットTSを予約する。従って、読取コマンドINVはN=8と共に送信される。各トランスポンダT1〜T4は、8つのタイムスロットT1〜T8の1つを選び、図3aに示すプランニングが得られる。ここでも、後続の閉スロットコマンドによって、それぞれが短い待機時間で割り込まれるという特徴を持つ、いくつかの空きタイムスロットTSが読取シーケンスCYC1の一部となっている。図2a及び2bに示す手順とは対象的に、ここでは、各トランスポンダT1〜T4は、他のトランスポンダT1〜T4によるタイムスロットTS1〜TS4の占用を観察する。即ち、例えば、第1のトランスポンダT1は、他のトランスポンダT2〜T4によるタイムスロットT1〜T8の占用の観測などをする。
【0045】
このために、トランスポンダT1〜T4は、先行するコマンドの直後にリーダ装置RDによって送出される、閉スロットコマンドCSを評価することにより、空のタイムスロットTSをカウントする。従って、先行するコマンドINV,CS,CQの後、リーダ装置RDによってトランスポンダT1〜T4からのデータDAT1〜DAT4の待機に用いられる待機時間内に、リーダ装置RDによって送信される閉スロットコマンドCSの受信した際に、空のタイムスロットTSのカウントに対応するカウンタを増加させる。タイムスロットTSの占用のバランスを取るため、再編成REORGをこの占用に応じて実行する。ここでは、タイムスロットTSの新たな数Nをリーダ装置RD及びトランスポンダT1〜T4の双方で選び、さらに、トランスポンダT1〜T4において、データDAT1〜DAT4をリーダ装置RDに返信する新たなタイムスロットTSの1つを選択する。
【0046】
簡単に言えば、これは、リーダ装置RD及びトランスポンダT1〜T4双方が空のタイムスロットTSを数え、空のタイムスロットTSの数が所定の限界を超えた場合に(ここでは限界を2に設定)、これらの装置はタイムスロットTSの新たな数Nを同時に選ぶ。さらに、トランスポンダT1〜T4は、リーダ装置RDにデータDAT1〜DAT4を返信するための、新たなタイムスロットTSの1つを選ぶ。さらに、本実施例では、リーダ装置RD及びトランスポンダT1〜T4の間で、新たな選択に関する情報を交換しない(リーダ装置RD及びトランスポンダT1〜T4は再編成REORGを独立して実行することを想定。即ち、関連する情報は交換しないが同じやり方で実行することにより、同時に同じことを行っている)。この再編成REORGの結果を図3bに示す。ここで、読取コマンドINVと同様に最初の2つのタイムスロットTS1及びTS2は過去のものとして扱われる。いくつかの空のタイムスロットの存在は読取手順の通信量が実容量よりかなり少ないことを示唆するため、再編成は、最初の数N=8よりも小さい数N=6で行われる。
【0047】
トランスポンダT1〜T4は自身のデータDAT1〜DAT4を送信するための新たなタイムスロットTS1〜TS4を選択しているので、副次的な効果として、図3aのタイムスロットTS5におけるデータ衝突も回避される。これは偶然であり、本発明に係る方法の必然的結果ではないことに留意されたい。有利なことに、ここでは、全ての4つのトランスポンダT1〜T4は、他の読取シーケンスCYCを他の読取コマンドINVを発行することによって開始する必要なく、1回の実行で読取できる。しかしながら、まだデータ衝突が再編成REORG後に生じ得るため、図2bに示す他の読取サイクルCYCが必要となる。再編成REORGの数N=6について記す。ここで、この数は読取手順全体に関するものであり、2つが過去であるため、4つのタイムスロットTS3〜TS6が残される。しかしながら、数Nがこの先の数に関すること、つまり、本実施例ではN=4が選択されことも考えられる。
【0048】
1つの読取シーケンスCYC1を構成する読取手順の全体的な実行時間は、再編成前の時間t1aと、再編成後の時間t1bである。当業者であれば、本例の合計時間は図2a及び2bにおける値より短いことが理解できるだろう。従って、タイムスロットTSは従来技術の例よりも効率的に使用されている。
【0049】
図4a及び4bは、タイムスロットTSがより重複する例を示しており、タイムスロットTSの数N=4であり、読取すべきトランスポンダT1〜T4の数に比べて少ない。厳密に言えば、数NはトランスポンダT1〜T4の数に整合するが、トランスポンダT1〜T4はタイムスロットTSをランダムに選ぶため、データ衝突のリスクは増加する。
【0050】
本実施例では、第1のデータ衝突は最初のタイムスロットTS1で生じ、ここでは第2及び第3のトランスポンダT2及びT3が自身のデータDAT2及びDAT3の送信を試みている。結果的に、第1のタイムスロットTS1は、閉スロットコマンドCSによって閉じられる。さらに、第2のタイムスロットTS2では他のデータ衝突があり、これは第1及び第4のトランスポンダT1及びT4の間のものである。図3a及び3bに示す例と類似して、ここでは重複したタイムスロットTSを空のタイムスロットの代わりにカウントする。
【0051】
このために、トランスポンダT1〜T4は、先行するコマンドのしばらく後にリーダ装置RDによって送出される、閉スロットコマンドCSを評価することによって、データ衝突をカウントする。従って、先行するコマンドINV,CS,CQの後、リーダ装置RDによってトランスポンダT1〜T4からのデータDAT1〜DAT4への待機に用いられる待機時間内に、リーダ装置RDによって送信される、閉スロットコマンドCSを受信した際に、データ衝突のカウントに対応するカウンタを増加させる。タイムスロットTSの占用のバランスを取るため、再び、再編成REORGをこの占用に応じて実行する。ここでは、タイムスロットTSの新たな数Nをリーダ装置RD及びトランスポンダT1〜T4の双方で選び、さらに、トランスポンダT1〜T4において、データDAT1〜DAT4をリーダ装置RDに返信する、新たなタイムスロットTSの1つを選択する。
【0052】
簡単に言えば、これは、リーダ装置RD及びトランスポンダT1〜T4双方がデータ衝突を数え、データ衝突の数が所定の限界を超えた場合に(ここでは限界を2に設定)、これらの装置はタイムスロットTSの新たな数Nを同時に選ぶ。さらに、トランスポンダT1〜T4は、リーダ装置RDにデータDAT1〜DAT4を返信するための、新たなタイムスロットTSの1つを選ぶ。本実施例では、さらに、リーダ装置RD及びトランスポンダT1〜T4の間で、新たな選択に関する情報は交換されないこの再編成REORGの結果を図4bに示す。ここで、読取コマンドINVと同様に最初の2つのタイムスロットTS1及びTS2は過去のものとして扱われる。いくつかのデータ衝突の存在は読取手順の通信量が実容量より多いこと示唆するため、再編成は最初の数N=4よりも大きい数N=6で行われる。
【0053】
有利なことに、トランスポンダT1〜T4は自身のデータDAT1〜DAT4を送信するための新たなタイムスロットTS1〜TS4を選んでいるため、他のデータ衝突を回避している。従って、各残りのタイムスロットTS3〜TS6では、データDAT1〜DAT4の1つの組が、トランスポンダT1〜T4の1つからリーダ装置RDに送信される。有利なことに、さらに、全ての4つのトランスポンダT1〜T4は、他の読取シーケンスCYCを他の読取コマンドINVを発行することによって開始する必要なく、1回の実行で読取できる。しかしながら、まだデータ衝突が再編成REORG後に生じ得るため、図2bに示す他の読取サイクルCYCが必要となる。再編成REORGの数N=6について記す。ここで、この数は読取手順全体に関するものであり、2つが過去であるため、4つのタイムスロットTS3〜TS6が残される。しかしながら、数Nが未来に関すること、つまり、本実施例ではN=4が選択されことも考えられる。
【0054】
読取手順の全体的な実行時間は、再編成前の時間t1aである1つの実行シーケンスCYC1と再編成語の時間t1bのみである。当業者であれば、本実施例の合計時間は図2a及び2bにおける値より短いことが理解できるだろう。従って、タイムスロットTSは従来技術の例よりも効率的に使用されている。
【0055】
図3a〜図4bの例に対して、2つの空の又は重複タイムスロットTSの閾値を規定どおりに選んでいる。さらに、タイムスロットTSの数Nも、2つ分、減少又は増加している。当業者であれば、これは多数ある例のうち1つの例に過ぎず、本発明の範囲から外れない多数の代替候補があることを容易に理解できるだろう。このように、1からNの任意のカウントに閾値を設定する可能性の他に、閾値を0から1の間の、数Nの一部とすることも考えられる。1つの例は0.4であり、これは再編成REORGが3つの空/重複タイムスロットTSの後に開始されることを暗示する(N=8とする)。従って、2つ分、タイムスロットTSの数Nを減少又は増加させることは必須ではない。むしろ、任意の適した数を選択することが可能である。即ち、多数の空のスロットが存在する場合にはより低い数Nになり、多数の重複タイムスロットTSが存在する場合にはより高い数Nになる。当業者であれば、再編成REORGのイベントの際に、数Nを半減したり倍にしたりすることを考えうるだろう。さらに、任意の倍率が可能であり、例えば0.8(数Nを減らす)又は1.2(数Nを増やす)となる。最後に、当業者は、新たな数Nを、下記の通り計算できることも理解するだろう。
【0056】
new=Nold*X 又は Nnew=Nold*e
【0057】
ここでNnewは新たな数を表し、Noldは古い数を表し、Xは値に応じてNoldに対してNnewを増加又は減少させる指数である。さらに、図3aから図4bの例は、その前に自身のデータDAT1〜DAT4を送信していない、又はDAT1〜DAT4はリーダ装置RDで正しく受信されていないトランスポンダT1〜T4だけが再編成REORGを実行するという、この発明の実施形態に対応している。
【0058】
図5に示す他の実施形態は、組み合わせのシステムを示す。ここでは、(時分割多重接続TDMAの)異なるタイムスロットTSによってだけではなく、異なる周波数f及び/又は異なる符合cを用いて、データDAT1〜DAT4がトランスポンダT1〜T4によって送信される。異なる周波数帯域fの使用は“周波数分割多重接続”(FDMA)の名称で、異なる符号cの使用は“符号分割多重接続”(CDMA)の名称で周知である。
【0059】
図5はTDMA、FDMA及びCDMAの組み合わせを3次元に可視化して示している。各軸は、時間t、周波数f、及び符号cを表す。同時に2つの周波数帯域と2つの異なる符号が使用されているので、本システムでは、各時点で、即ち各タイムスロットTSにおいて、4つの並列通信チャネルTCが存在する。1つの送信チャネルを例示のために参照符号TC221でマークする。この送信チャンネルTC221は、以下の“座標”を有する。即ち、タイムスロットTS=2、周波数帯域=2、及び符号=1である。図5では、この方法の詳細をあまり示していない。しかしながら、当業者であれば、容易に上述したような概念を導き出し、多次元システムに応用することができる。
【0060】
第1ステップでは、リーダ装置RDは、タイムスロットTSの数Nだけでなく、周波数帯域及び符号の数を含む、読取コマンドINVを発行する。ここでは、タイムスロットの長さ、周波数帯域の範囲、及び符号列といった通信チャネルTCの物理的特性は事前に設定されており、当該パラメータをトランスポンダT1〜T4に送信する必要はない。しかしながら、初期ステップにおいて、この通信プロトコル又はその一部をトランスポンダT1〜T4に送信することも考えられる。
【0061】
第1のステップの後、トランスポンダT1〜T4は、異なるタイムスロットTS、異なる周波数帯域、及び異なる符号を用いて、自身のデータDAT1〜DAT4の送信を開始する。しかしながら、この組み合わせシステムにおいてさえ、送信チャネルTCが不足し、データ衝突が生じ得る。同様に、多くの空の送信チャネルTCが存在することも起こりうる。結果的に、図2a〜4bの教示に従い、送信チャネルTCの数は重複送信チャネルTCの場合には増加し、空の送信チャネルTCの場合には減少する。図2a〜4bの例と対称的に、非常に大きな自由度が存在する。即ち、タイムスロットTSの数Nだけでなく、周波数帯域の数及び/又は符号の数もまた増加又は減少し得る。また、リーダ装置RD及びトランスポンダT1〜T4が、再編成REORGを独立に、しかし同じやり方で(即ち同時に同じことをする)実行する場合には、新たな読取コマンドINVを発行しないで(即ち関連する情報を交換しないで)すませることもできる。
【0062】
上記例では、TDMA、FDMA及びCDMAを組み合わせるシステムを示した。しかしながら、TDMA及びFDMAのみ、又はTDMA及びCDMAのみを利用することも可能である。このような場合、図5は3次元の図ではなく、2次元のみの図となる。
【0063】
最後に、上記実施形態は本発明を限定するものではなく、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から外れることなく、多くの別の実施形態を設計できることに留意されたい。「Comprise(備える、含む)」とその活用形等は、請求項又は明細書全体に記載された以外の要素又はステップの存在を排除しない。単数形による要素の記述は、この要素の複数形を排除せず、その逆も同様である。複数手段を列挙する装置の請求項において、この手段のいくつかは、同一のソフトウェア又はハードウェアにより実施できる。また、ある手段が互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できない、ということを示していない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】4つのトランスポンダと通信するリーダ装置を示す図である。
【図2a】図1に示すシステムの、従来技術による読取手順のタイミング図を示す図である。
【図2b】図1に示すシステムの、従来技術による読取手順のタイミング図を示す図である。
【図3a】図1に示すシステムの、(実容量より通信量が少ない場合の)本発明に係る読取手順のタイミング図を示す図である。
【図3b】図1に示すシステムの、(実容量より通信量が少ない場合の)本発明に係る読取手順のタイミング図を示す図である。
【図4a】図1に示すシステムの、(実容量より通信量が多い場合の)本発明に係る読取手順のタイミング図を示す図である。
【図4b】図1に示すシステムの、(実容量より通信量が多い場合の)本発明に係る読取手順のタイミング図を示す図である。
【図5】TDMA、FDMA、及びCDMAの組み合わせシステムを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダ装置によって複数のタイムスロットの間にトランスポンダからデータを読み取る方法であって、前記方法は、
前記リーダ装置及び前記トランスポンダ双方において前記タイムスロットの占用を観察するステップと、
前記リーダ装置及び前記トランスポンダの双方において新たなタイムスロット数を選び、かつ、前記トランスポンダにおいてデータを前記リーダ装置に返信する前記新たなタイムスロットの1つを選択する再編成を、前記占用に応じて実行するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記再編成の前に前記リーダにデータを送信していない前記トランスポンダのみが、前記再編成を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記再編成の前に前記リーダ装置に自身のデータが正しく受信されていない前記トランスポンダのみが、前記再編成を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記トランスポンダは、ある確率のみに基づいて新たなタイムスロットを選択する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記再編成を、前記リーダ装置及び前記トランスポンダの間で前記再編成に係る情報を交換しないで行う、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記リーダ装置及び前記トランスポンダ双方が空のタイムスロットをカウントし、かつ、前記空のタイムスロット数が所定の制限を越えた場合には、より少ない新たなタイムスロット数で前記再編成を実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
先行するコマンドの後の、前記リーダ装置によって前記トランスポンダからのデータの待機に用いられる待機時間内に、前記リーダ装置によって送信される、閉スロットコマンドを受信した際に、前記トランスポンダの空のタイムスロットのカウントを増加させる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記リーダ装置及び前記トランスポンダ双方が2つ以上のトランスポンダ間のデータ衝突をカウントし、前記データ衝突の数が所定の制限を超えた場合に、より大きい新たなタイムスロット数で前記再編成を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
先行するコマンドに続く、前記リーダ装置によって前記トランスポンダからのデータの待機に用いられる待機時間内に、前記リーダ装置によって送信される閉スロットコマンドを受信した際に、前記トランスポンダのデータ衝突のカウンタを増加させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
タイムスロットの代わりに送信チャネルを用い、前記送信チャネルをタイムスロットにより形成し、データをさらに異なる周波数帯域及び/又は異なる符号列を用いて送信する、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
再編成の間、前記リーダ装置及び前記トランスポンダ双方において、前記タイムスロット数に加えて、又は前記タイムスロット数の代わりに確率パラメータを選び、かつ、前記トランスポンダではさらに、前記確率パラメータに応じたある確率によって、前記リーダ装置にデータを返信するタイムスロットを選ぶ、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
複数のタイムスロットの間にリーダ装置にデータを送信するトランスポンダであって、前記トランスポンダは、
他のトランスポンダによる前記タイムスロットの占用を観察する手段と、
新たなタイムスロット数を選び、かつ、データを前記リーダ装置に返信する前記新たなタイムスロットの1つをさらに選択する再編成を、前記占用に応じて実行する手段と、を有することを特徴とするトランスポンダ。
【請求項13】
空のタイムスロットをカウントするカウンタと、先行するコマンドの後の、前記リーダ装置によって前記トランスポンダからのデータの待機に用いられる待機時間内に、前記リーダ装置によって送信される閉スロットコマンドを受信した際に、前記空のタイムスロットのカウンタを増加させる手段と、
2つ以上のトランスポンダの間のデータ衝突をカウントするカウンタと、先行するコマンドに続く、前記リーダ装置によって前記トランスポンダからのデータの待機に用いられる待機時間内に、前記リーダ装置によって送信される閉スロットコマンドを受信した際に、前記データ衝突のカウンタを増加させる手段と、をさらに有する、請求項12に記載のトランスポンダ。
【請求項14】
複数のタイムスロットの間にトランスポンダからデータを読み取るリーダ装置であって、前記リーダ装置は、
前記タイムスロットの占用を観察する手段と、
再編成を前記占用に応じて実行する手段と、を備え、前記新たなスロット数を、前記トランスポンダと前記再編成に関する情報を交換しないで選ぶことを特徴とするリーダ装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−514311(P2009−514311A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537279(P2008−537279)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【国際出願番号】PCT/IB2006/053897
【国際公開番号】WO2007/049219
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(507219491)エヌエックスピー ビー ヴィ (657)
【Fターム(参考)】