説明

リーダを備えた工事用機械

【課題】リーダを備えた工事用機械において、リーダに無理な荷重をかけることなく、移動を円滑に行なうことができるようにする。
【解決手段】走行可能なベースマシン10と、ベースマシン10に対して旋回可能及び俯仰可能に取り付けられたブーム12と、該ブーム12から懸垂されて作業時にアースオーガー14を案内するリーダ14と、ベースマシン10に取付けられ、懸垂した状態にあるリーダ14の下端部に係合して、該下端部のベースマシンに対する変位を規制可能な一対のフレーム材20,20と、を備える。工事用機械が移動時には、リーダ14を懸垂した状態でベースマシン10が走行し、その際に、リーダ14の下端部のベースマシン10に対する変位を一対のフレーム材20,20によって規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、削孔機または杭打ち機のような、削孔体を案内するリーダを備えた工事用機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の工事用機械は、作業箇所を変更するため等で移動する際に、ほぼ鉛直方向に伸びる長いリーダを安定して移動させる必要がある。従来の移動方法としては、図6(a)〜(d)に示す工程による方法が実施されている。この方法は、リーダ54の下端を接地させてリーダ54を地面に支持させた状態(図6(a))で、リーダ54とブーム52とのなす角度を変えながらベースマシン50が走行できる距離範囲で走行し(図6(b))、再びリーダ54の接地位置を変更した後(図6(c))、ベースマシン50が走行できる距離範囲で少しずつ機械が移動していく(図6(d))方法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、かかる従来の方法では、リーダに無理な荷重が作用するおそれがあり、また、リーダの接地位置を置き換えながら、ベースマシンを少しずつ移動していくために、移動に手間と時間がかかるという問題がある。
【0004】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたもので、リーダを備えた工事用機械において、リーダに無理な荷重をかけることなく、移動を円滑に行なうことができる工事用機械を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述した目的を達成するために、請求項1記載の発明は、走行可能なベースマシンと、ベースマシンに対して旋回可能及び俯仰可能に取り付けられたブームと、該ブームから懸垂されて作業時に削孔体を案内するリーダと、を備える工事用機械において、
前記懸垂した状態にあるリーダの下端部に係合して、該下端部のベースマシンに対する変位を規制可能な規制部材がベースマシンに取り付けられることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の前記規制部材が、ベースマシンの走行方向に沿って伸びて、ベースマシンの外側へ張り出す一対の平行なフレーム材からなることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の前記規制部材の基部がベースマシンのシャシに溶接されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、工事用機械が移動する時には、リーダを懸垂した状態でベースマシンが走行し、その際に、リーダの下端部に係合して、その変位をベースマシンの車体に取り付けた規制部材によって規制するようにする。こうしてベースマシンが走行してもリーダが安定した状態で工事用機械が移動することができる。リーダを懸垂した状態で移動するために、リーダに無理な荷重が作用することなく、また、リーダの置き換えの必要がないために、移動を円滑且つ迅速に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態によるリーダを備えた工事用機械の作業時を示す側面図である。図において、10は走行可能なベースマシンであり、ベースマシン10にはアウトリガ11が備えられている。図示したベースマシン10は走行可能なように車輪を備えているが、これに限るものではなく、車輪の代わりにキャタピラを備えるものであってもよい。
【0010】
ベースマシン10には伸縮可能なブーム12が取り付けられている。ブーム12は、ベースマシン10に対して旋回可能及び俯仰可能になっている。ブーム12の先端からは、上部旋回機13を介してリーダ14が懸垂されている。さらに、ブーム12の先端からは、作業時にリーダ14によって案内されて削孔体を構成するアースオーガー15が鉛直方向に昇降可能に吊下げられる。そして、アースオーガー15には1本以上のオーガスクリュー16が連結される。リーダ14の下部には、オーガスクリュー16の振れ止めを行なう振れ止め17が取り付けられている。
【0011】
図1に示すように、作業時には、アウトリガ11が伸張されてベースマシン10が地面に固定され、リーダ14が鉛直に配置され、リーダ14に沿ってアースオーガー15が鉛直方向に移動して、オーガスクリュー16で地盤に削孔をするようになっている。
【0012】
この他、リーダを備えた工事用機械としては、オーガスクリューを備えたもの以外に、ハンマーを備えるものとすることもできる。
【0013】
図2に示したように、ベースマシン10の前部の中央部には、規制部材である一対のフレーム材20、20の基部が取り付けられている。各フレーム材20の基部は、好ましくはベースマシン10のシャシまたはベースマシン10の強度を保障する強度部材に溶接されているとよい。また溶接の代わりにボルト止めとすることもできる。
【0014】
一対のフレーム材20、20は、ベースマシン10の走行方向、即ちベースマシン10の前後方向に平行に伸びて、その自由端側はベースマシン10の外側、即ち前方へと張り出した断面コ字状または断面H字状の部材である。一対のフレーム材20、20間に形成される規制空間22は、ほぼベースマシン10の車幅方向センタに位置している。この規制空間22の間隔は、リーダ14の幅に対応しており、一対のフレーム材20、20の間の規制空間22内にリーダ14の下端部が挿入して、一対のフレーム材20、20がリーダ14の下端部に係合可能となっている。
【0015】
以上のように構成されるリーダを備えた工事用機械において、削孔位置を変更するため等で工事用機械を工事現場内で小距離移動させる場合には、図3に示すように、アウトリガ11を収縮させると共に、ブーム12の長さ及び/または俯仰角度を適宜調整して、リーダ14の下端部が一対のフレーム材20の間の規制空間22内に入るようにし、且つリーダ14の上端が下端よりも反フレーム材20側へと後方に位置づけられるようにリーダ14がやや鉛直方向より傾いた状態にする。これによって、リーダ14の下端部が一対のフレーム材20の間の規制空間22内に入り、該一対のフレーム材20に係合されることが保障される。尚、このときリーダ14の下端は地面から離反している。
【0016】
この状態でベースマシン10が走行すると、リーダ14のベースマシン10に対する変位は、ブーム12及び一対のフレーム材20によって規制されており、特に、リーダ14の下端部のベースマシン10の走行方向に直交する方向のベースマシンに対する変位が規制される。このため、リーダ14の横揺れが防止されて、リーダ14を地面から離反した懸垂した状態でも安定して工事用機械が移動することができる。リーダ14を接地する必要がないために、リーダ14に無理な荷重が作用することはない。ベースマシン10は低速ながらも走行を維持することができるので、効率的に機械の移動を行なうことができる。
【0017】
また、フレーム材20はその基部がシャシまたは強度部材に取り付けられているために、リーダ14からの反力に対して十分な強度及び剛性を備えることができる。
【0018】
規制部材である一対のフレーム材20は、前述のようにリーダ14のベースマシン10の走行方向に直交する方向のベースマシンに対する変位を規制するので、ベースマシン10が前進または後退走行した際の加減速による慣性力により、リーダ14の下端部が、規制空間22の間から出てしまうことも起こりえるが、慣性力は基本的に前後方向に作用するために、力が解除されると、リーダ14の下端部は再び一対のフレーム材20の間の規制空間22に収まることとなる。
【0019】
リーダ14の下端部が一対のフレーム材20の規制空間22の間から出ることのないように、さらなる規制部材としてのロープ、ワイヤのような索状部材によって規制空間22の出口を塞ぐことも可能である。
【0020】
ベースマシン10の走行方向に対して地面が左右方向に傾斜している場合には、ブーム12を旋回させて図4に示すように、斜面側にリーダ14の上端部を倒して、バランスをとりながら移動することも可能である。
【0021】
図5は他の実施形態を表しており、この例では、規制部材としての4本のフレーム材が平行にベースマシン10の走行方向、即ち前後方向に伸びており、隣り合うフレーム材同士の間に3つの規制空間22、22、22が形成されている。中央の規制空間22がベースマシン10の車幅方向センタに位置している。そして、各規制空間22の間隔は、リーダ14の幅に対応しており、各規制空間22内にリーダ14の下端部が挿入して、隣り合うフレーム材20、20がリーダ14の下端部に係合可能となっている。
【0022】
以上のように構成されるリーダを備えた工事用機械においては、複数の規制空間22のいずれかを選択してリーダ14の下端部を入れることができ、工事用機械が左右方向に傾斜している地面を移動する際には、リーダ14の下端部を中央以外の規制空間22に挿入して、バランスをとることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態によるリーダを備えた工事用機械の作業時の状態を示す側面図である。
【図2】図1の工事用機械の前方から見た一部斜視図である。
【図3】図1のリーダを備えた工事用機械の移動時の状態を示す側面図である。
【図4】図1のリーダを備えた工事用機械が、左右方向に傾斜した地面を移動する際の正面図である。
【図5】本発明の他の実施形態によるリーダを備えた工事用機械の前方から見た一部斜視図である。
【図6】(a)〜(d)はリーダを備えた工事用機械の従来の移動方法の工程を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
10 ベースマシン
12 ブーム
14 リーダ
15 アースオーガー
20 フレーム材(規制部材)
22 規制空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能なベースマシンと、ベースマシンに対して旋回可能及び俯仰可能に取り付けられたブームと、該ブームから懸垂されて作業時に削孔体を案内するリーダと、を備える工事用機械において、
前記懸垂した状態にあるリーダの下端部に係合して、該下端部のベースマシンに対する変位を規制可能な規制部材がベースマシンに取り付けられることを特徴とするリーダを備えた工事用機械。
【請求項2】
前記規制部材は、ベースマシンの走行方向に沿って伸びて、ベースマシンの外側へ張り出す一対の平行なフレーム材からなることを特徴とする請求項1記載のリーダを備えた工事用機械。
【請求項3】
前記規制部材は、その基部がベースマシンのシャシに溶接されることを特徴とする請求項1または2記載のリーダを備えた工事用機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−88726(P2008−88726A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271850(P2006−271850)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(395006672)株式会社イケハタ (6)
【Fターム(参考)】