説明

リードスイッチ用ガラス管

【課題】搬送時等における端部の欠け、割れ等を確実に防ぐことができるリードスイッチ用ガラス管を提供する。
【解決手段】ガラス管10の端部1の外周面12に、端面11からの長さAが0.1〜0.6mmの範囲内の圧縮応力層22を形成し、端部1において前記ガラス管10の端面11に形成された圧縮応力層22の応力が、前記外周面12に形成された圧縮応力層22の応力よりも大きいものとする。ガラス管10の端面11に、レーザ光を照射することによって、ガラス管10の端面11を加熱軟化させ、端面11を送風冷却または自然冷却することによって、ガラス管10の端部1に圧縮応力層22を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードスイッチ用ガラス管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リードスイッチは、対向する磁性線材から成る接点と、これを封入するガラス管とから成り、ガラス管の外側から磁界を与えて接点を開閉動作させるものである。ガラス管内への磁性線材の封入は、不活性ガス、還元ガス、或いは真空下においてガラス管に磁性線材を挿入し、ガラス管の両端を加熱軟化させて封着することにより行われる。
【0003】
ところで、このリードスイッチ用ガラス管の端部に、鋭い角部や微小なクラックがあると、例えば搬送時に、ガラス管の端部が欠けたり、割れたりする問題が生じ、また、封入工程時に、その破片がガラス管内に混入する問題が生じる。そこで、従来では、ガラス管の端部をバーナーで加熱軟化させて丸め加工する口焼き処理を行っている。
【0004】
しかしながら、近年、電子機器の小型化、軽量化に伴い、リードスイッチ用ガラス管についても、その小径化、薄肉化、短尺化が一層進んでおり、例えば外径1.3mm、肉厚0.2mm、長さ3.1mmの微小なリードスイッチ用ガラス管にあっては、バーナー加熱による丸め加工では、ガラス管端部の欠け、割れ等を十分に防ぐことができない問題があった。
【0005】
なお、現在までに、ガラス板の側面にレーザ光を照射して該ガラス板の端部を丸め加工する技術が知られている(例えば、下記特許文献1、2参照)。しかしながら、この技術は、レーザビームをガラス板の側面に沿って移動させながら丸め加工するものであり、この技術を、微小なリードスイッチ用ガラス管に適用した場合、ガラス管の端面にビーム軌跡による凹凸が生じ、封入工程時にこの凹凸が雰囲気を巻き込んで気泡の発生を招くことになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−344551号公報
【特許文献2】特開平10−111497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来のリードスイッチ用ガラス管に上記のような問題があったことに鑑みて為されたもので、例えば搬送時等におけるガラス管端部の欠け、割れ等を確実に防ぐことができるリードスイッチ用ガラス管を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ガラス管の端部に圧縮応力層が形成されたリードスイッチ用ガラス管であって、前記端部において前記ガラス管の外周面に形成された圧縮応力層の、該ガラス管の長手方向の長さが0.1〜0.6mmであることを特徴としている。
【0009】
また、本発明は、前記端部において前記ガラス管の端面に形成された圧縮応力層の応力が、前記外周面に形成された圧縮応力層の応力よりも大きいことを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、波長1050nmにおける赤外線透過率が、肉厚0.5mmで10%以下であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るリードスイッチ用ガラス管によれば、ガラス管端部の外周面に、端面からの長さが0.1〜0.6mmの範囲内の圧縮応力層が形成されているので、例えば搬送時等に外部と接触しても、ガラス管端部の欠けや割れ等を確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態のリードスイッチ用ガラス管の斜視図である。
【図2】本実施形態のリードスイッチ用ガラス管の端部の拡大縦断面模式図である。
【図3】本実施形態のリードスイッチ用ガラス管の製造方法を説明する概略側面図である。
【図4】本実施形態のリードスイッチ用ガラス管の端部の偏光顕微鏡写真である。
【図5】従来のリードスイッチ用ガラス管の端部の偏光顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、本実施形態のリードスイッチ用ガラス管10は、外径1.75mm、肉厚0.25mm、長さ7.7mmの円筒形状を成しており、その両端部1の表面に、圧縮応力層2が形成されている。つまり、図2に示すように、リードスイッチ用ガラス管10の各端部1において、ガラス管の端面11には、その表面から所要の深さに亘って圧縮応力層21が形成され、ガラス管の外周面12には、その表面から所要の深さに亘って圧縮応力層22が形成され、ガラス管の内周面13には、その表面から所要の深さに亘って圧縮応力層23が形成されている。これら圧縮応力層(21、22、23)は連続している。
【0014】
また、外周面12に形成された圧縮応力層22の、ガラス管の長手方向における長さAは約0.4mmに形成されている。この圧縮応力層22の長さAは、0.1〜0.6mmであることが好ましい。長さAが0.1mmよりも小さいと、外部との接触等によるガラス管10の端部の欠け等を有効に防ぐことができなくなる一方、長さAが0.6mmよりも大きいと、圧縮応力層22の圧縮応力の反力として圧縮応力層22の周囲に作用する引張応力が大きくなるため、却ってガラス管10の破損を招き易くなり好ましくない。
【0015】
また、本実施形態のリードスイッチ用ガラス管10は、端面11に形成された圧縮応力層21の応力が、外周面12に形成された圧縮応力層22の応力よりも大きく形成されている。このことで、リードスイッチ用ガラス管10の端部1のうち特に端面11の欠け等を有効に防ぐことが可能となる。図4は、本実施形態のリードスイッチ用ガラス管10の端部の偏光顕微鏡写真である。図4の画像で最も白く表れているように、端面11の圧縮応力層21の応力は、外周面12の圧縮応力層22の応力より大きく形成されている。
【0016】
図5は、従来のバーナー加熱による口焼き処理を施したガラス管の端部の偏光顕微鏡写真である。従来のバーナー加熱による口焼き処理によっても、ガラス管の端部に圧縮応力層を形成することは可能である。しかしながら、図5に示すように、バーナー加熱により形成された圧縮応力層は、その応力の大きさが外部との接触等による欠け等を防ぐのに十分でなく、しかも、圧縮応力層の形成範囲が広範囲(端面からの長さ約1.2mm以上)に及ぶことになる。
【0017】
また、本実施形態のリードスイッチ用ガラス管10は、波長1050nmにおける赤外線透過率が肉厚0.5mmで10%以下の高赤外線吸収ガラスから形成されている。このことで、リードスイッチの封入工程時に、ハロゲンランプの赤外線を効率的に吸収することが可能となり、たとえ微小なガラス管であっても、その両端部を確実に封着することができる。波長1050nmにおける赤外線透過率が肉厚0.5mmで10%を超えると、ハロゲンランプからの赤外線吸収が十分でなくなり、封入工程に余計な時間と余分なエネルギーが必要となるばかりでなく、ガラスを透過してリードスイッチ内部に達する赤外線量が多くなり、リードスイッチの接点部分が加熱され、その磁気特性を劣化させてしまう問題が生じる。
【0018】
波長1050nmにおける赤外線透過率が肉厚0.5mmで10%以下の高赤外線吸収ガラスとして、重量百分率で、SiO2 60〜75%、Al23 1〜10%、B23 0〜10%、RO 3.5〜10%(RはCa、Mg、Ba、Sr、Znから選ばれる1種以上)、Li2O 0.5〜5%、Na2O+K2O 8〜17%、Fe34 2〜10%の組成を有する赤外線吸収ガラスが好適に使用できる。
【0019】
SiO2は、ガラスの骨格を構成するために必要な主成分であるが、75%より多いと線熱膨張係数が低くなりすぎるとともに溶解性が悪化し、60%より少ないと化学的耐久性が悪化する。このため、リードスイッチ製造工程における鍍金等の薬品処理でガラスが変質したり、電子部品として長期的な信頼性を保つ耐候性が得られない。
【0020】
Al23は、ガラスの耐候性を向上させ、またガラス溶解における失透を抑えるのに著しい効果があるが、10%より多いとガラスの溶解が困難になり、1%より少ないと上記の効果が得られない。
【0021】
23は、ガラスの溶解を促進するとともに、ガラスの粘度を下げて封入の効率を上げる効果があるが、10%より多いと化学耐久性が悪化し、また溶解時に蒸発が多くなって均質なガラスが得られなくなる。
【0022】
ROで表されるCaO、MgO、Ba0、SrO、ZnOは、ガラスの粘度を低下させるとともに、ガラスの耐候性を向上させる効果を有するが、それらの合計量が10%より多いとガラスの失透性が増し、均質なガラスの製造が困難になり、3.5%より少ないと上記効果が得られない。
【0023】
Li2Oは、リードスイッチの電気絶縁として必要なガラスの体積固有抵抗率を高く維持しつつ、線熱膨張係数をある程度大きくする効果を有している。さらに、融剤としての効果と粘度を下げる効果が著しく大きいため、Li2Oを必須成分にすることで、ガラスの融剤として通常使われるが蒸発しやすい成分でもあるB23の含有を極力減らすことができる。しかしながら、5%より多いと、ガラスの耐候性、及び失透性が悪化するため好ましくない。その一方で、0.5%より少ないと上記効果が得られない。
【0024】
Na2O及びK2Oは、Li2Oと同様に、ガラスの線熱膨張係数を大きくするとともに、ガラスの溶融を促進する成分であるが、Na2OとK2Oが合量で17%を越えると線熱膨張係数が大きくなり過ぎるとともに、ガラスの耐候性と体積固有抵抗率が著しく悪化する。一方、8%より少ないと所定の線熱膨張係数が得られず、またガラスの溶融が困難になる。
【0025】
また、Li2O、Na2O、K2Oのうちの1成分の含有量が、単独でこれらの総量の80%を越えないようにすると、混合アルカリ効果の作用によって、より優れた耐候性と高い体積固有抵抗率を得ることができる。
【0026】
Fe34(赤外線を吸収するのはFeOであるが、ガラス中ではレドックスに依存してFe23と共存している。ここでは、全ての酸化鉄をFe34に換算して表している。)は、ガラスに赤外線吸収能力を持たせるために必須の成分として使用されるが、10%より多いとガラス化が困難となり、2%より少ないとガラスの肉厚が0.5mmにおける波長1050nmの赤外線透過率を10%以下にすることができない。
【0027】
なお、上記ガラスにおいては、ガラスの粘度の調整や失透性、耐候性を改善する目的で、ZrO2、TiO2等の各成分を3%まで添加することが可能である。
【0028】
次に、本実施形態のリードスイッチ用ガラス管10の製造方法について説明する。
【0029】
まず、上記組成を有するバッチを調合し、このバッチを溶融する。得られた溶融ガラスを管状に成形し、所定の長さに切断することによって赤外線吸収ガラス管3を得る。
【0030】
次いで、図3に示すように、複数の赤外線吸収ガラス管3を固定具4に固定し、各ガラス管3の端面に、その上方のレーザ5からレーザ光Lを照射することによって、各ガラス管3の端面を加熱軟化させる。このレーザー加熱は、ガラス管3の端面の外径より大きいビーム径のレーザ光Lをガラス管3の端面に照射して行う。
【0031】
このことで、ガラス管3の端面全体を均等に加熱軟化させることが可能となり、たとえ微小なリードスイッチ用ガラス管に対しても、その端部に圧縮応力層を確実に形成することができる。また、赤外線吸収ガラス管3の端面に照射したレーザ光Lを効率的に吸収させることができ、しかも、端面の表面付近のみを有効に加熱軟化させることができるので、ガラス管3の端面に、外周面の圧縮応力層より大きい応力の圧縮応力層を的確に形成することができる。
【0032】
そして、加熱軟化させた各ガラス管3の端面を送風冷却または自然冷却することによって、各ガラス管3の端部に圧縮応力層を形成する。こうして、本実施形態のリードスイッチ用ガラス管10が製造される。
【0033】
このように本実施形態のリードスイッチ用ガラス管10は、その端部1の外周面12に、端面11からの長さAが0.1〜0.6mmの範囲内の圧縮応力層22が形成されているので、例えば搬送時等に外部と接触してもガラス管端部の欠けや割れ等を確実に防ぐことができる。
【0034】
しかも、本実施形態のリードスイッチ用ガラス管10は、その端面11に、外周面12の圧縮応力層22より大きい応力の圧縮応力層21が形成されているので、特に端面11の欠けや割れ等を確実に防ぐことができる。
【0035】
また、本実施形態のリードスイッチ用ガラス管10は、波長1050nmにおける赤外線透過率が肉厚0.5mmで10%以下であるので、リードスイッチの封入工程時に、ハロゲンランプの赤外線を効率的に吸収することが可能となり、たとえ微小なガラス管であっても、その両端部を確実に封着することができる。
【0036】
以上、本実施形態のリードスイッチ用ガラス管10について説明したが、本発明はその他の形態でも実施することができる。
【0037】
上記実施形態では、リードスイッチ用ガラス管の一例として、外径1.75mm、肉厚0.25mm、長さ7.7mmの微小なリードスイッチ用ガラス管について説明したが、本発明は、このサイズに限定されるものではなく、例えば、外径4.95mm、肉厚0.65mm、長さ18.4mmのリードスイッチ用ガラス管として構成してもよい。
【0038】
本発明は、その他、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良く、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成したり、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施しても良い。
【符号の説明】
【0039】
10 リードスイッチ用ガラス管
1 端部
11 端面
12 外周面
13 内周面
2、21、22、23 圧縮応力層
A 外周面の圧縮応力層の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス管の端部に圧縮応力層が形成されたリードスイッチ用ガラス管であって、
前記端部において前記ガラス管の外周面に形成された圧縮応力層の、該ガラス管の長手方向の長さが0.1〜0.6mmであることを特徴とするリードスイッチ用ガラス管。
【請求項2】
前記端部において前記ガラス管の端面に形成された圧縮応力層の応力が、前記外周面に形成された圧縮応力層の応力よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のリードスイッチ用ガラス管。
【請求項3】
波長1050nmにおける赤外線透過率が、肉厚0.5mmで10%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリードスイッチ用ガラス管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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