説明

リードバルブ

【課題】腐食の厳しい環境でも耐久性の高いリードバルブを提供する。
【解決手段】流体が流通する流路に配設され前記流体が通過可能な弁孔31を有するベース32と、板状に形成されると共に一端側がベース32に固定され弁孔31を開閉するリード33と、板状に形成されると共にリード33に重ねられた状態で一端側がベース32に固定されリード33の最大開度を規定するストッパ34とを備えたリードバルブ30において、リード33における閉弁時に弁孔31を覆う部分よりも一端側の部分に、板状のリード33を弁孔31とは反対側に凸となるように部分的に湾曲させて形成されると共にリード33の幅方向に沿って延びる湾曲部41を設けることで、開弁時にリード33が湾曲部41で曲がるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が流通する流路に配設され前記流体の逆流を防止するリードバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン(内燃機関)においてNOx(窒素酸化物)を低減させるためにEGR(排気ガス再循環)が用いられるが、特に過給エンジンにおける高負荷時のEGR量を上げるため、リードバルブ(逆止弁)が用いられる。
【0003】
図3に過給エンジンの一例を示す。
【0004】
図3に示すように、過給エンジン1は、エンジン本体(例えば、ディーゼルエンジン)2と、エンジン本体2に装着されたターボ(ターボチャージャ)3と、エンジン本体2の吸気ポートに接続された吸気マニフォルド4と、吸気マニフォルド4に接続された吸気ダクト5と、吸気ダクト5に配設されエンジン本体2に供給する吸気を加圧するターボ3のコンプレッサ6と、コンプレッサ6よりも吸気下流側の吸気ダクト5に配設され吸気を冷却するインタークーラ7と、インタークーラ7よりも吸気下流側の吸気ダクト5に配設されたスロットルバルブ8と、エンジン本体2の排気ポートに接続された排気マニフォルド9と、排気マニフォルド9に接続された排気ダクト10と、排気ダクト10に配設されコンプレッサ6を駆動するターボ3のタービン11と、タービン11よりも排気ガス下流側の排気ダクト10に配設された後処理装置12と、排気マニフォルド9内の排気ガスの一部をEGRガスとして吸気マニフォルド4に戻すべく排気マニフォルド9と吸気マニフォルド4とを連通するEGRダクト13と、EGRダクト13に配設され排気ガスを冷却するEGRクーラ14と、EGRクーラ14よりもEGRガス下流側のEGRダクト13に配設されEGR量を調整すべく流路面積を変更するEGRバルブ15とを備える。
【0005】
図3に示す過給エンジン1において、高負荷時は吸気マニフォルド4内の平均圧力が排気マニフォルド9内の平均圧力よりも高くなり、EGRバルブ15を開いてもEGRがかからない。しかし、吸気マニフォルド内圧(吸気マニフォルド4内の圧力)も排気マニフォルド内圧(排気マニフォルド9内の圧力)も変動(脈動)しているので、平均圧力で「吸気マニフォルド内圧>排気マニフォルド内圧」であっても、時系列でみれば「吸気マニフォルド内圧<排気マニフォルド内圧」となっている期間がある。そこで、リードバルブ(逆止弁)16をEGRダクト13に配設すると、「吸気マニフォルド内圧>排気マニフォルド内圧」となる期間は、リードバルブ16が自ずと閉じ、吸気が吸気マニフォルド4から排気マニフォルド9へEGRダクト13を逆流しない。他方、「吸気マニフォルド内圧<排気マニフォルド内圧」となる期間は、リードバルブ16が自ずと開き、排気ガスが排気マニフォルド9から吸気マニフォルド4へEGRダクト13を流れる。
【0006】
リードバルブ16自体は図4のようになっている。
【0007】
図4に示すように、リードバルブ16は、EGRダクト13に配設され、排気ガスが通過可能な弁孔17を有するベース18と、板状に形成されると共に一端側がベース18に固定され、弁孔17を開閉するリード(リードペダル)19と、板状に形成されると共にリード19に重ねられた状態で一端側がベース18に固定され、リード19の最大開度を規定するストッパ20とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−19530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、リードバルブ16が腐食の厳しい環境(例えば、硫黄分の多い軽油の使用)で使用される場合、リード19は常に排気ガスと接触しているため、リード19が腐食してリード19に切欠きが生じる場合がある。また、リードバルブ16が開く際(開弁時)は、リード19全体が反るように変形し、図4の矢印Xで示す部分の応力が高い。つまり、図4の矢印Xで示す部分は、リードバルブ16が開く際(開弁時)に元々応力が高いが、切欠きの発生によりさらに応力が拡大する(切欠き効果による応力拡大)。それにより、腐食の厳しい環境ではリード19が破損する虞がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、腐食の厳しい環境でも耐久性の高いリードバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する為に、本発明は、流体が流通する流路に配設され前記流体が通過可能な弁孔を有するベースと、板状に形成されると共に一端側が前記ベースに固定され前記弁孔を開閉するリードと、板状に形成されると共に前記リードに重ねられた状態で一端側が前記ベースに固定され前記リードの最大開度を規定するストッパとを備えたリードバルブにおいて、前記リードにおける閉弁時に前記弁孔を覆う部分よりも一端側の部分に、板状の前記リードを前記弁孔とは反対側に凸となるように部分的に湾曲させて形成されると共に前記リードの幅方向に沿って延びる湾曲部を設けることで、開弁時に前記リードが前記湾曲部で曲がるようにしたものである。
【0012】
前記ストッパにおける前記リードの前記湾曲部に重ねられる部分に、前記湾曲部を収容する溝部を設けても良い。
【0013】
前記ストッパにおける前記溝部よりも他端側の部分を平らに形成しても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、腐食の厳しい環境でも耐久性の高いリードバルブを提供することが出来るという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るリードバルブの側断面図であり、上半分は閉弁時を示し、下半分は開弁時を示す。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】リードバルブが用いられる過給エンジンの概略図である。
【図4】従来例に係るリードバルブの側断面図であり、上半分は閉弁時を示し、下半分は開弁時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0017】
本実施形態に係るリードバルブ(逆止弁)30は、例えば、図3に示す過給エンジン1において使用されるものであり、図4に示す従来例に係るリードバルブ16に代えてEGRダクト13(図示例では、EGRダクト13と吸気マニフォルド4との接続部分)に配設される。
【0018】
係るリードバルブ30は、排気マニフォルド9から吸気マニフォルド4への順方向への流れを許容し、吸気マニフォルド4から排気マニフォルド9への逆方向の流れを阻止するようにEGRダクト13に配設される。
【0019】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るリードバルブ30は、流体(エンジン本体2からの排気ガス)が流通する流路を為すEGRダクト13に配設され、排気ガスが通過可能な弁孔31を有するベース32と、板状に形成されると共に一端側(基端側)がベース32に固定され、弁孔31を開閉するリード(リードペダル)33と、板状に形成されると共にリード33に重ねられた状態で一端側(基端側)がベース32に固定され、リード33の最大開度を規定するストッパ34とを備える。
【0020】
ベース32は、例えばアルミニウムにて形成されている。ベース32は、EGRダクト13に取り付けられるフランジ部35と、フランジ部35から吸気マニフォルド4側(EGRダクト13の下流側)に突出する突出部36とから構成されている。フランジ部35には、排気ガスを流通させるための開口37が形成されている。突出部36は、側面視で三角形状に形成されており、弁孔31が形成される傾斜壁部38と、傾斜壁部38とフランジ部35との間を接続する側壁部39とを有する。各傾斜壁部38には、複数(本実施形態では、二つ)の弁孔31がベース32の幅方向に併設されており、各弁孔31に対してリード33及びストッパ34が各々設けられる(図2参照)。
【0021】
リード33は、例えばステンレス或いはカーボンにて形成された可撓性を有する長方形状の薄板からなる。リード33は、ボルト40によってベース32に固定されている。本実施形態では、リード33における閉弁時に弁孔31を覆う部分よりも一端側の部分に、リード33を弁孔31とは反対側に凸となるように部分的に湾曲させて形成されると共にリード33の幅方向に沿って延びる湾曲部41を設けている。湾曲部41は、側面視で断面半円形状に形成されている(図1参照)。
【0022】
ストッパ34は、例えばアルミニウムにて形成された長方形状の薄板からなる。ストッパ34は、ストッパ34の変形を抑制するために板厚がリード33よりも厚く形成されている。ストッパ34は、リード33に重ねられた状態でボルト40によってベース32に固定されている。本実施形態では、ストッパ34におけるリード33の湾曲部41に重ねられる部分に、湾曲部41を収容する溝部42を設けている。本実施形態では、ストッパ34を弁孔31とは反対側に凸となるように部分的に湾曲させることで、溝部42を形成している。また、リードバルブ30が閉じているとき(閉弁時)には、リード33の湾曲部41とストッパ34の溝部42との間に隙間43が生じるようになっている(図1の上半分参照)。さらに、本実施形態では、ストッパ34における溝部42よりも他端側(自由端側)の部分であって、最大開度となったリード33が当接する部分(当接面44)を、平らに形成している(図1参照)。
【0023】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0024】
「吸気マニフォルド内圧>排気マニフォルド内圧」となっている期間においては、図1の上半分に示すように、吸気マニフォルド内圧によりリード33がベース32(弁孔31)に押し付けられて、リードバルブ30が閉じるようになっている(閉弁)。他方、「吸気マニフォルド内圧<排気マニフォルド内圧」となっている期間においては、図1の下半分に示すように、排気マニフォルド内圧によりリード33がベース32(弁孔31)から離間されて、リードバルブ30が開くようになっている(開弁)。
【0025】
本実施形態では、リード33に湾曲部41を設けることで、図1の下半分に示すように、リードバルブ30が開く際(開弁時)に、リード33は湾曲部41で曲がるようになる。よって、リードバルブ30が開く際(開弁時)に湾曲部41の応力が上がるが、リードバルブ30が閉じているとき(閉弁時)はガスシールがなされるので、湾曲部41は腐食しない。そのため、リードバルブ30が開く際(開弁時)に湾曲部41の応力が切欠き効果で拡大することはない。よって、腐食の厳しい環境でもリード33が折損する虞がない。
【0026】
また、本実施形態では、ストッパ34における溝部42よりも他端側(自由端側)の部分である当接面44を平らに形成しているので、リードバルブ30の最大開度において、リード33全体が反るように変形することはなく、リード33における図4の矢印Xで示す部分に対応する部分の応力を、図4に示すリードバルブ16と比較して下げることができる。そのため、リード33のリフト量を高く(最大開度を大きく)することが出来、リードバルブ30の通気抵抗を下げられる。よって、図3に示す過給エンジン1において、本実施形態に係るリードバルブ30を図4に示す従来例に係るリードバルブ16に代えて用いることで、EGR量を増やすことが出来る。
【0027】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【0028】
例えば、上記実施形態ではリードバルブ30を過給エンジン1において用いるとしたが、これには限定はされない。
【0029】
また、上記実施形態では、湾曲部41が側面視で断面半円形状に形成されるとしたが、これには限定はされず、湾曲部41が側面視で、断面三角形状、断面四角形状及び断面台形状等に形成されても良い。
【符号の説明】
【0030】
30 リードバルブ(逆止弁)
31 弁孔
32 ベース
33 リード(リードペダル)
34 ストッパ
41 湾曲部
42 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通する流路に配設され前記流体が通過可能な弁孔を有するベースと、板状に形成されると共に一端側が前記ベースに固定され前記弁孔を開閉するリードと、板状に形成されると共に前記リードに重ねられた状態で一端側が前記ベースに固定され前記リードの最大開度を規定するストッパとを備えたリードバルブにおいて、
前記リードにおける閉弁時に前記弁孔を覆う部分よりも一端側の部分に、板状の前記リードを前記弁孔とは反対側に凸となるように部分的に湾曲させて形成されると共に前記リードの幅方向に沿って延びる湾曲部を設けることで、開弁時に前記リードが前記湾曲部で曲がるようにした
ことを特徴とするリードバルブ。
【請求項2】
前記ストッパにおける前記リードの前記湾曲部に重ねられる部分に、前記湾曲部を収容する溝部を設けた
請求項1に記載のリードバルブ。
【請求項3】
前記ストッパにおける前記溝部よりも他端側の部分を平らに形成した
請求項2に記載のリードバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−77818(P2012−77818A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222326(P2010−222326)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】