説明

リードフレームの位置決め治具

【課題】簡単な構造で、容易に位置決めすることができ、反りや曲がりを矯正した状態を保つことができる位置決め治具の提供。
【解決手段】端部に素子固定部を有するリードと、前記リードを複数連設するタイバーとを備えてなるリードフレームの位置決め治具であって、前記リードが直立した状態で挿入され、前記リードフレームが狭着固定されるリードフレーム挿入用溝が形成された支持部材を有し、前記支持部材は、その上面が前記素子固定部の外側底部と当接する上部当接面を有することを特徴とするリードフレームの位置決め治具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子や半導体受光素子などの素子を固定するための素子固定部を端部に有するリードフレームの位置決め治具に関し、より詳しくは、例えば、LED製造工程におけるパッケージ工程の中の液体材料塗布工程におけるリードフレームの位置決め治具に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)は、低消費電力、長寿命などの特徴により小型電球の置き換えとして広く用いられるようになっている。また近年、青色LEDが実用化され、赤、緑、青の三原色のLEDによるフルカラー表示や、青色LEDと蛍光体を用いた白色LEDも実用化されている。
一般的な砲弾型LEDの構造は、図1に示すようになっている。レンズ部101はエポキシなどの透明な樹脂で成形されている。レンズ部101の下部からは端子となるリード(102、103)が二本延出される。そして、透明な樹脂で成形されているレンズ部101の内部に、発光素子であるLEDチップ104が封止されている。より詳細には、リードの一方102の端にすり鉢状に成形されたチップマウント部105の中にLEDチップ104が搭載され、そのLEDチップ104ともう一方のリード103とがワイヤ106によって接続されている。
【0003】
上述した砲弾型LEDにおいて用いられるリードフレーム201は、完成品となる前の段階では図2に示すように、マイナス側リード102とプラス側リード103の対が二本のタイバー(202、203)により複数対連接された状態に成形されている。なお、リードフレームの中程にあるタイバーを中タイバー202、リードフレーム端部にあるタイバーを下タイバー203と呼ぶ。マイナス側リード102のタイバー203と連接されている側の端面と反対側の端面には、すり鉢状のチップマウント部105が成形されている。すり鉢状部105の開口面はリード端面とほぼ同一の面上になるよう一体として成形される。また、すり鉢状部105の径は、リードフレーム201の厚さよりも大きくなっており、その外側底部204はリードフレーム201を挟んで二カ所に形成されている。
【0004】
次に、LEDの製造工程について説明する。LEDの製造工程は大きく分けて、LEDチップを製造する工程と、そのLEDチップをパッケージに組み立てる工程とからなっている。さらにパッケージ工程を大別すると、(1)一方のリードフレームに成形されたチップマウント部に銀ペーストを塗布した後にLEDチップをのせて硬化させるダイボンディング工程、(2)銀ペーストが硬化して接続されたLEDチップともう一方のリードフレームとをワイヤで接続するワイヤボンディング工程、(3)レンズ部を成形する樹脂でLEDチップの搭載された側の先端部を封止固定するモールド工程、および、(4)リードフレームの余分な部分を切断するタイバーカット工程とからなる。
なお、前述した白色LEDを製造する際には、(2)ワイヤボンディング工程と(3)モールド工程との間に、蛍光体を含んだ液体材料をLEDチップ上部に塗布して硬化する工程が加わる。
【0005】
LED製造におけるパッケージ工程においても、通常の半導体パッケージ工程と同様にリードフレームを用いるが、半導体パッケージでよく用いられるリードフレームとは用い方が異なる。通常の半導体パッケージでは細長い薄板状のリードフレームを寝かせた状態、すなわち、一番広い面が上下面(水平面)になる状態で作業するのに対し、LEDパッケージでは細長い薄板状のリードフレームを立てた状態、すなわち、チップマウント部105を上側にして直立した状態(図2に示した状態)で作業する。
【0006】
LED製造の各種工程においては、図2に示すようにリードフレームを立てた状態で作業をするが、リードフレームは金属製の薄板等で構成されるため反りが生じるなどの課題があることから、「位置決め」をする必要がある。
特許文献1には、リードフレームに生ずる反りを解消するための装置であって、半導体装置の外囲器の形状に穿設された凹部を備えた外囲器成型部材と、これに固設したリードフレーム支持部材からなり、このリードフレーム支持部材は、半導体素子が配設されたリードの先端を凹部内に突入して半導体素子を凹部内の所定箇所に位置するように設けられたリードフレーム支持手段を備えることを特徴とするモールド装置が開示されている。
特許文献2には、リードフレームを下方から支持して搬送を案内するガイドレールと、ガイドレールに沿ってリードフレームを搬送する搬送手段と、リードフレームの背面を支持する支持ブロックと、駆動手段により駆動されてリードフレームを支持ブロックに押し付けてクランプするクランプ部材と、駆動手段により駆動されてリードフレームのタイバーを押し下げてガイドレールに押し付ける押し付け部材、からなることを特徴とするワイヤボンディング装置におけるリードフレームの位置決め装置が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開昭52−70767号公報
【特許文献2】特開平5−74842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の発明においては、タイバー部を挟持することでリードフレームの反りを矯正しているが、タイバー部のみを挟持する部材しかないため、リードフレームの全体的なそりを矯正できたとしても、タイバー部から外れているチップマウント部の局所的な曲がりがあった場合は、反りや曲がりなどは矯正できなかった。
また、特許文献2に記載の発明においては、クランプ部材、押し付け部材を動かすためにロッド、カム、ローラーなどを備えた複雑な機構が必要であり、また、クランプ部材、押し付け部材を駆動するために別々の駆動手段が必要であった。そのため、特許文献2に記載の構造では、装置が大がかりになることが必然的であり、小型化を実現することは難しかった。
【0009】
ところで、リードフレームの位置決めを精度よく行うことは、塗布装置等の作業装置によりダイボンディング工程やモールド工程などを迅速に行う上で重要である。例えば、直立したリードフレームに対する位置認識作業が、カメラによって最初のチップマウント部に対してのみ行われ、その後は所定の距離をもってめくら打ちされる場合には、位置決めを精度よく行うことは不可欠となる。
他方、直立したリードフレームに対する作業が、作業者の手作業により行われることもある。手作業による塗布等の作業の際に、容易に位置決めができるようにすることも本発明が解決すべき課題である。
【0010】
以上の課題を鑑み、本発明は、簡単な構造で、容易に位置決めすることができ、反りや曲がりを矯正した状態を保つことができる位置決め治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、端部に素子固定部を有するリードと、前記リードを複数連設するタイバーとを備えてなるリードフレームの位置決め治具であって、前記リードが直立した状態で挿入され、前記リードフレームが狭着固定されるリードフレーム挿入用溝が形成された支持部材を有し、前記支持部材は、その上面が前記素子固定部の外側底部と当接する上部当接面を有することを特徴とするリードフレームの位置決め治具である。
第2の発明は、第1の発明において、前記リードフレーム挿入用溝の底部近傍に設けられ、前記リードフレーム挿入用溝の深さ方向と直交する方向にリードフレームを付勢する押付機構をさらに備えることを特徴とする。
第3の発明は、第2の発明において、前記押付機構は、前記リードフレーム挿入用溝の深さ方向と直交する方向に付勢された押部材を有し、前記押部材は、前記リードフレーム挿入用溝の内側面と当接する第1の位置および前記リードフレーム挿入用溝の内側面と離間した第2の位置を有することを特徴とする。
第4の発明は、第3の発明において、前記押部材は、前記リードフレーム挿入用溝内に進入した前記リードフレームの最深位置において第1の位置にあり、前記タイバーの上方への移動を阻止することを特徴とすることを特徴とする。ここで、前記リードフレームの最深位置は、前記支持部材の上部当接面により規定してもよいし、前記リードフレームの下面により規定してもよい。
第5の発明は、第3または4の発明において、前記押部材は、その先端部分が球状体に構成されることを特徴とする。
第6の発明は、第1ないし5のいずれかの発明において、前記上部当接面は、その短手方向に複数の上面ガイド溝が形成されること、および、前記上面ガイド溝と咬合する複数の歯を有する挿入補助具をさらに備えることを特徴とする。
第7の発明は、第6の発明において、前記上面ガイド溝は、前記挿入補助具の最進入時に、前記リードフレームの下面が前記リードフレーム挿入用溝の内底面に到達する深さに構成されることを特徴とする。
第8の発明は、第1ないし7のいずれかの発明において、前記支持部材は、その下面の短手方向に複数の下面ガイド溝が形成されること、および、前記下面ガイド溝と咬合する複数の歯を有する抜脱補助具をさらに備えることを特徴とする。
第9の発明は、第8の発明において、前記下面ガイド溝は、前記抜脱補助具の最進入時に、前記リードフレーム挿入用溝に挿入された前記リードの5mm以上が前記支持部材の上方に露出する深さに構成されることを特徴とする。
第10の発明は、第1ないし9のいずれかの発明において、前記支持部材を短手方向に連設固定する固定部材をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複雑な機構を設けることなく容易にリードフレームの位置決めを行うことが可能である。また、リードフレームの反りや曲がりを矯正した状態を保ったままの状態で所定の作業を行うことができる。したがって、塗布装置などの作業装置による作業を精度よく、かつ、迅速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下では、本発明を実施するための最良の形態を、LED用のリードフレームの例で説明する。
[1]治具本体
図3に示すように、最良の形態の治具300は、概ね直方体をした特別な構造を有する支持部材301により構成される。
支持部材301は、その上面にはリードフレーム201が挿入されるリードフレーム挿入用溝310が形成されており、リードフレーム挿入用溝310を挟んで対峙する上面が上部当接面(302a、302b)をなしている。上部当接面(302a、302b)は、リードフレーム201を挟んで二カ所に形成されたすり鉢状チップマウント部の外側底部204にそれぞれ当接する部位である。
挟持面(303a、303b)は、上部当接面(302a、302b)と直交して隣り合う面であって、リードフレーム挿入用溝310の長手方向の内側面を構成する面である。側部当接面(304a、304b)は、上部当接面(302a、302b)と直交して隣り合う面であって、リードフレーム挿入用溝310の短手方向の内側面を構成する面である。挟持面(303a、303b)および側部当接面(304a、304b)の端部に囲まれた面、すなわち、リードフレーム挿入用溝310の内部底面が、下部当接面305である。二つの挟持面(303a、303b)間の距離は、リードフレーム201の厚さとほぼ同寸法であり、二つの側部当接面(304a、304b)間の距離は、リードフレーム201の長手方向の幅とほぼ同寸法である。上部当接面(302a、302b)から下部当接面305までの距離は、リードフレーム201に形成されたチップマウント部の外側底部204から下タイバー203までの距離とほぼ等しくなっている。つまり、直方体状の支持部材301の内部に、その内側寸法がリードフレーム外側寸法とほぼ同寸法の溝状空間(リードフレーム挿入用溝310)が形成されており、その溝状空間の5つの内側面(303a、303b、304a、304b、305)がリードフレーム201の各外側面に当接するようになっている。
【0014】
また、支持部材301の上面および下面には、リードフレームを挿脱する際の補助具をガイドする溝(306、307)が設けられている。
上面にある溝306は、図3に示すように、上部当接面(302a、302b)の短辺と平行方向にわたって、すなわち、支持部材301の長手方向と直交する方向に形成されている。溝306は、上部当接面(302a、302b)から、リードフレーム201が位置決めされるときのLEDチップ搭載側にあるタイバー(中タイバー)202まで達する深さを有している。また、溝の幅は、対になったリード間の間隔とほぼ同じ長さとなっている。
一方、下面にある溝307は、治具下面308の短辺と平行方向にわたって、すなわち、支持部材301の長手方向と直交する方向に形成されている。溝307は、治具下面308から、上部当接面(302a、302b)と治具下面308との間の距離の半分程度まで達する深さを有している。また、溝の幅は、対になったリード間の間隔とほぼ同じか少し大きめの長さとなっている。
さらに、支持部材301の高さ方向の中央より下方には、挟持面(303a、303b)に垂直な方向からリードフレーム201を押し付ける1組の押付機構309が配設されている。押付機構309は、一対になった二本のリード102、103の間に位置される。押付機構309は、二つ以上を支持部材301の長手方向の中心線を挟んで対称に配置することが好ましい。押付機構309の詳細については後述する。
【0015】
[2]リードフレームの治具への挿脱
本発明に係る治具300にLED用リードフレーム201を挿入する手順、および治具300よりLED用リードフレーム201を抜脱する手順を説明する。
(i)リードフレームの治具への挿入手順
まず、図4(a)に示すように、支持部材301に形成されたリードフレーム挿入用溝310へ、リードフレームの下タイバー203が押付機構309内の球状体501に当たるまで、リードフレーム201を挿入する。このときの押付機構309の作用は図5(a)に示すとおりである。すなわち、最初の段階では、リードフレーム201を上から押し込むための充分な力がかかっていないため、球状体501を挟持面303bに向かって押し付けているばね502の力に抗してリードフレーム201が押し込まれることはない。
【0016】
続いて、図4(b)に示すように、リードフレーム201に対して上方からより大きな力を与え、下タイバー203を押付機構309の下方に押し込む。この際、挿入補助具401をその歯402が治具上面に形成された溝306に合う位置で、上から中タイバー202にあてがって下方に押し込むことが好ましい態様として開示される。なお、歯402および溝306は、リードフレーム201の特定の場所に過大な力がかからないよう、二つ以上均等に配置することが好ましい。これにより、チップマウント部外側底面204が上部当接面(302a、302b)に当接し、或いは、下タイバー203が下部当接面305に当接するまで挿入補助具401を介してリードフレーム201が下方へ押し込まれる。
このときの押付機構309の作用は図5(b)に示すとおりである。すなわち、リードフレーム201を下へ押し込むのに充分な力をかけることにより、押付機構309内の球状体501を押し付けているばね502の力に打ち勝ち、下タイバー203が球状体501をばね502の付勢方向とは逆の方向へ押し込まれる。そして、下タイバー203が通過してリード部分になると、球状体501が一対になった二本のリード102、103の間に、ばね502の力により入り込む。
【0017】
以上の手順により、リードフレーム201がリードフレーム挿入用溝310の5つの内側面(303a、303b、304a、304b、305)および上部当接面(302a、302b)に当接することで位置決めがされ、押付機構309により位置決めした状態が保持される。このように、リードフレーム201を治具300に挿着することにより、例えば、図6に示すように、リードフレーム201のチップマウント部105付近に曲がり601がある場合も、リードフレーム201に当接する挟持面(303a、303b)により曲がり601が矯正され、塗布対象であるチップマウント部105を正確に位置決めすることができる。
【0018】
(ii)リードフレームの治具からの抜脱手順
まず、図7(a)に示すように、リードフレーム201を位置決めした状態で保持した治具300に対し、支持部材301の下面に形成された溝307との咬合位置に抜脱補助具701の歯702をあてがう。抜脱補助具701の歯702と下タイバー203の下面を当接させた状態から、歯702が溝307の最奥部に当接するまで、或いは、治具下面308が抜脱補助具701の歯が配設されている部材703に当接するまで、治具300を下方に押し込む。これにより、抜脱補助具701の作用によりリードフレーム201が治具300の外へ押し出される。
なお、治具300を下方に押し込む距離は、抜脱補助具701の歯702の長さと治具下面308に形成された溝307の深さによって決まる。この距離は、当業者において適宜調節することができるが、治具300から押し出されたリードフレーム201を、作業者が素子固定部107に触れることなく指で掴むことのできる掴みしろが得られる距離とするのが好ましい。この距離は、上部当接面302a、302bから、リードフレーム201が5mm以上露出する距離とすることが好ましく、前記リードフレーム201が10mm以上露出することがより好ましく、前記リードフレーム201が15mm以上露出することがさらに好ましい。
また、溝307および歯702は、リードフレーム201の特定の場所に過大な力がかからないよう、二つ以上均等に配置することが好ましい。
このときの押付機構309の作用は図8に示すとおりである。すなわち、リードフレーム201を上へ押し出すのに充分な力をかけることにより、押付機構309内の球状体501を押し付けているばね502の力に打ち勝ち、下タイバー203が球状体501をばね502の付勢方向とは逆の方向へ押し込まれる。そして、下タイバー203が通過すると、球状体501はばね502の力により再び挟持面303bに向かって押し付けられる。
【0019】
以上の手順により、図7(b)に示すように、リードフレーム201を治具300の挟持面(303a、303b)、側部当接面(304a、304b)および下部当接面305で囲まれたリードフレーム挿入用溝310から取り出す。このように、本発明によれば、リードフレーム201の位置決め、固定および取り外しを容易に行うことができる。また、リードフレーム201の位置決め作業中に、塗布対象部であるチップマウント部105に何らかの部材が接触する危険性を格段に減らすことができる。
【0020】
以下では、本発明の詳細を実施例により説明するが、本発明は何ら実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
本実施例に係る塗布装置901は、図9に示すように、X駆動機構902と、Y駆動機構903と、Z駆動機構904と、吐出装置905と、カメラ906とこれらの動作を制御する制御部907とを備えている。制御部907は、カメラ906から送られてくる画像を処理する画像処理部を兼ねている。
X駆動機構902上には、Z駆動機構904が設けられている。Y駆動機構903上には、治具300に位置決めされた塗布対象物であるリードフレーム201を載置するテーブル908が設けられている。Z駆動機構904上に設けられた吐出装置905は、液体材料を貯留する貯留容器909と、液体材料を吐出するノズル910とを備えている。本実施例のカメラ906は、吐出装置905とともにZ駆動機構904上に設けられている。しかし、この構成には限定されず、カメラ906をZ駆動機構904と独立してX駆動機構902上に配置してもよい。
【0022】
塗布作業に際しては、まず、リードフレーム201が固定された治具300をテーブル908上に載置し、固定する。次に、X駆動機構902およびY駆動機構903を作動させ、リードフレーム201が固定された治具300をカメラ906の下まで移動する。そして、カメラ906にて塗布位置を確認後、ノズル910の下へ移動し、塗布が開始される。塗布が終了すると、テーブル908および吐出装置905は各駆動機構(902、903、904)により待機位置へ移動し、一つのリードフレーム201に対する塗布作業は終了となる。複数のリードフレームに対し塗布作業を続ける場合は、既塗布のリードフレームを未塗布のリードフレームと交換して上記の作業を繰り返す。交換の際、複数の治具300を用意して治具ごと交換するようにしてもよい。
【0023】
以上の構成を有する本実施例の治具300によれば、複雑な機構を設けることなく容易に位置決めを行い、かつ、反りや曲がりを矯正した状態で作業を行うことが可能となる。したがって、塗布装置901による塗布作業を精度よく、かつ、迅速に行うことができる。
また、本実施例の構成によれば、リードフレームの曲がりが矯正され、位置決めが高精度に行われるため、位置決め作業時の画像認識処理は必要的ではなくなる。しかし、安全のために位置決め作業時の画像認識を行う場合においても、本実施例の構成によれば安定した画像を得ることができる。すなわち、チップマウント部105の位置を検出すべく、チップマウント部105の上方よりカメラにて画像認識する場合、そのカメラにより得られる画像は、チップマウント部105の下部に存在する物体を背景画像とするチップマウント部上面の画像であるが、本実施例では、リードフレームを「溝」に挿入する(嵌め込む)構成であるため、チップマウント部の下方には、上部当接面302aおよび302bが常に存在することとなる。したがって、本実施例のカメラで撮像される画像においては、常に上部当接面302aおよび302bが背景となることから、チップマウント部105の輪郭等の画像を容易に得ることができる。この点、一の板の側面にリードフレームを押し付けて位置決め固定する従来の装置では、チップマウント部の板側半分の背景画像は前記板となるが、逆側半分の背景画像はその下方に存在する部品が映り込むために、安定した画像が得られ難く、チップマウント部105を認識できない場合さえある。
【実施例2】
【0024】
本実施例の治具300は、複数の支持部材301を連設した構成である。
これは、図9に示す実施例1と同様に、リードフレーム201を立てた状態で位置決めをするため、テーブル908上のスペースに余裕があり、複数の支持部材301をその短手方向に連続して配置することが可能となるからである。
連設する支持部材301の個数は、テーブル908の大きさ、駆動機構(902、903、904)のストロークなどにより適宜増減することができる。複数個の支持部材301は、同時に作業ができるように、任意の固定部材により整列して固定される。本実施例では、図10に示すように、10個の治具300を、固定板1001にねじなどの締結手段を用いて固設している。この際、一つ一つの治具300の上面および下面に形成された溝(306、307)の位置を揃えて配置すること、すなわち、10個連なったときにあたかも一つの溝であるかのよう配置する。溝(306、307)の位置を揃えて固定することにより、10個の治具に対して一度に挿入および抜脱を可能とするためである。固定板1001には、作業をしやすいように取っ手1002が設けられている。
【0025】
本実施例の挿入補助具401は、図10に示すように、連設する10個の支持部材301に対して同時に作業をするための形状に構成される。すなわち、挿入補助具401の歯402は、10個の溝306を横断する長さの3つの板状体を、平行に配置して構成される。ここで、歯402は、取っ手1004が設けられた1組の枠体1003によりその両端部を挟持するように固定される。歯402を枠体1003により固定する態様としたのは、位置決め時の視認性を損なわないようにするためである。位置決めを機械により自動で行う場合のように、視認性が問題とされない場合には、歯402を平板に固設する態様としてもよい。
本実施例の抜脱補助具701は、図10に示すように、連設する10個の支持部材301に対して同時に作業をするための形状に構成される。すなわち、抜脱補助具701の歯702は、10個の溝307を横断する長さの2つの板状体を、一枚の平板1005上に平行に配置して構成される。ここで、連なった支持部座301を押下する際に、歯702と溝307の位置がずれることがないように、平板10005上に連なった支持部材301を案内するガイド部材1006を設けている。
【0026】
以上の構成を有する本実施例の治具300によれば、複数単位のリードフレーム201に対して同時に位置決め作業を行うことができるため、挿入、抜脱作業や塗布作業の時間を短縮することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の治具は、端部に半導体素子が設けられた一対のリードを複数有するリードフレーム、例えば、LEDチップ、フォトダイオードチップ、フォトトランジスタチップなどが設けられる一対のリードを複数有するリードフレームに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】一般的なLEDの構造を示す部分透視図である。
【図2】一般的なリードフレームの形状を示す概略図である。
【図3】本発明に係る治具の概略斜視図である。
【図4】本発明に係る治具へのリードフレームの挿入手順を説明する説明図である。
【図5】本発明に係る押付機構の挿入時の作用を示す部分断面図である。
【図6】本発明に係る治具による曲がり矯正の作用を説明する説明図である。
【図7】本発明に係る治具からのリードフレームの抜脱手順を説明する説明図である。
【図8】本発明に係る押付機構の抜脱時の作用を示す部分断面図である。
【図9】実施例1に係る塗布装置の概略斜視図である。
【図10】実施例2に係る治具の構成例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
101 レンズ部
102 マイナス側リード
103 プラス側リード
104 LEDチップ
105 チップマウント部
106 ワイヤ
107 素子固定部
201 リードフレーム
202 中タイバー
203 下タイバー
204 チップマウント部外側底部
300 治具
301 支持部材
302a、b 上部当接面
303a、b 挟持面
304a、b 側部当接面
305 下部当接面
306 上面ガイド溝
307 下面ガイド溝
308 治具下面
309 押付機構
310 リードフレーム挿入用溝
401 挿入補助具
402 挿入補助具の歯
501 球状体(押部材)
502 ばね
601 曲がり
701 抜脱補助具
702 抜脱補助具の歯
703 抜脱補助具の歯が配設される部材
901 塗布装置
902 X駆動機構
903 Y駆動機構
904 Z駆動機構
905 吐出装置
906 カメラ
907 制御部、画像処理部
908 テーブル
909 貯留容器
910 ノズル
1001 固定板
1002 取っ手
1003 枠体
1004 取っ手
1005 平板
1006 ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に素子固定部を有するリードと、前記リードを複数連設するタイバーとを備えてなるリードフレームの位置決め治具であって、
前記リードが直立した状態で挿入され、前記リードフレームが狭着固定されるリードフレーム挿入用溝が形成された支持部材を有し、
前記支持部材は、その上面が前記素子固定部の外側底部と当接する上部当接面を有することを特徴とするリードフレームの位置決め治具。
【請求項2】
前記リードフレーム挿入用溝の底部近傍に設けられ、前記リードフレーム挿入用溝の深さ方向と直交する方向にリードフレームを付勢する押付機構をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のリードフレームの位置決め治具。
【請求項3】
前記押付機構は、前記リードフレーム挿入用溝の深さ方向と直交する方向に付勢された押部材を有し、
前記押部材は、前記リードフレーム挿入用溝の内側面と当接する第1の位置および前記リードフレーム挿入用溝の内側面と離間した第2の位置を有することを特徴とする請求項2に記載のリードフレームの位置決め治具。
【請求項4】
前記押部材は、前記リードフレーム挿入用溝内に進入した前記リードフレームの最深位置において第1の位置にあり、前記タイバーの上方への移動を阻止することを特徴とする請求項3に記載のリードフレームの位置決め治具。
【請求項5】
前記押部材は、その先端部分が球状体に構成されることを特徴とする請求項3または4に記載のリードフレームの位置決め治具。
【請求項6】
前記上部当接面は、その短手方向に複数の上面ガイド溝が形成されること、および、
前記上面ガイド溝と咬合する複数の歯を有する挿入補助具をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のリードフレームの位置決め治具。
【請求項7】
前記上面ガイド溝は、前記挿入補助具の最進入時に、前記リードフレームの下面が前記リードフレーム挿入用溝の内底面に到達する深さに構成されることを特徴とする請求項6に記載のリードフレームの位置決め治具。
【請求項8】
前記支持部材は、その下面の短手方向に複数の下面ガイド溝が形成されること、および、
前記下面ガイド溝と咬合する複数の歯を有する抜脱補助具をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載のリードフレームの位置決め治具。
【請求項9】
前記下面ガイド溝は、前記抜脱補助具の最進入時に、前記リードフレーム挿入用溝に挿入された前記リードの5mm以上が前記支持部材の上方に露出する深さに構成されることを特徴とする請求項8に記載のリードフレームの位置決め治具。
【請求項10】
前記支持部材を短手方向に連設固定する固定部材をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載のリードフレームの位置決め治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−272491(P2009−272491A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122480(P2008−122480)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(390026387)武蔵エンジニアリング株式会社 (56)
【Fターム(参考)】