説明

ルミネセンスハイブリッド液晶

ベース・クラスタ・コア(式中、Mは、モリブデン(Mo)またはタングステン(W)より選択される)および少なくとも1個の配位子を含む化合物であって、前記少なくとも1つの配位子が以下の化合物:
【化1】


(式中、Aは、OH、COOHまたはSOHのいずれかであることができる。)より選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機配位子と結合した、F.A.Cottonにより「一部の非金属原子はクラスタと密接に結合することもできるが、大部分が、または、少なくともかなりの程度まで、金属原子間の直接の結合によってひとまとめにされた金属原子の有限の群」(F.A.Cotton,Inorg.Chem.1964,3,1217)と定義されるような、Mベースクラスタ(M=モリブデン、タングステンまたはレニウム)を含む、ルミネセンス特性を有する化合物、このような化合物を調製する方法、ならびにこのような化合物を含む液晶特性を有する発光材料に関する。本発明による液晶特性を有するルミネセンス材料の1つの主な用途は、例えば表示デバイスにおける発光構成要素としてのこれの使用である。本発明は、他の電子機器での本発明による液晶特性を持つルミネセンス材料の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーを使用するメリットがますます認識されるようになっただけでなく、石油価格の上昇によって液晶材料の使用における新たな手法が生まれている。
【0003】
液晶材料の1つの主な用途は、LCDスクリーンへの利用である。この非常によく知られた技術は、液晶を含有するセルの構造に基づいている。しかし、セルの構造に干渉フィルタ偏光および吸収フィルタの使用が避けられないことにより、光強度の実質的な損失が引き起こされ、高い消費電力が示唆される。このエネルギー消費を最小限に抑えるために、有機発光ダイオード(OLED)をベースとする新たに生じた技術がフラット低電力ディスプレイの設計に現在使用されている。この技術は、スピンコーティングまたは真空蒸着によってアモルファス状態のデバイス内に導入されるルミネセンス有機化合物をベースとしている。LEDよりも主に有利な点は、これのルミネセンス特性によって偏光子、バックライトまたはフィルタの使用が不要となることと、特注のフレキシブルディスプレイを設計できることである。しかしこの技術は、本発明でさらに記載するように、アモルファス発光有機化合物を、液晶特性を示す安定な無機蛍光体に代えることによって改良することができる。純有機材料とは対照的に、無機蛍光体は光退色(時間に対する照射時のルミネセンス特性の損失)を受けず、異方性長距離秩序およびこのため偏光発光を提供して、表示性能パラメータ、例えば輝度、コントラスト、エネルギー効率およびいくつかの場合では視野角を改善することができる。
【0004】
可視光スペクトルの各色を得るためには、3つの基本色(赤色、緑色および青色)が必要である。多くの有機化合物、無機またはハイブリッド有機−無機化合物はスペクトルの緑色および青色範囲で効果的に送達できるが、550〜950nm範囲(赤色および近赤外)で効果的に伝達できるのはごくわずかな化合物だけであることが周知である。従来技術では例えばランタニドベースの有機金属錯体が周知であり、これは狭い発光バンドのために興味深い。しかしこれの光吸収は弱く、光ルミネセンス強度は吸収された光の量に比例するので、光吸収が弱いことは利用のためには重大な欠点である。さらに、検討される波長範囲(550〜950nm)では、これのルミネセンスの発光量子収率は非常に低く、0.1%未満である。これとは対照的に、例えばWO2009/040551に記載されているような同様に周知の白金錯体は、より高い発光量子収率を有するが、これの生産コストは非常に高い。
【0005】
Reベース金属クラスタがルミネセンス特性を示すことが示されてきた。Dorson et al.(Dalton Trans.,2009,1279−1299)は、レニウムおよびセレンまたは硫黄含有金属クラスタをベースとするヘキサヒドロキソ錯体の高収率で簡単な調製方法を開示している。クラスタはp−tertブチルピリジン(TBP)の4個の配位子が結合され、修飾8面体クラスタは、2個の残存するヒドロキシル基を例えば没食子酸誘導体または他のカルボン酸によってさらに官能化するために好適である。Reクラスタ誘導体は、UV領域で高い吸収を示す。スペクトルにおける発光最大値は720nmにおいてである。本研究において、予備試験は、これらの化合物が、新たな系統のルミネセンス材料の設計のための好適な中性構成単位となり得る中間相材料のように挙動できることを示唆している。しかし、本出願の発明者らのより最近の研究は、2個の残存するOH基で官能化されたReベースクラスタが液晶特性を示さないことを示している。所望の特性を持つ好適なReクラスタベース分子集合体を同定するために、官能化に関するさらなる研究が現在行われている。
【0006】
モリブデンまたはタングステンの多くのハライド、カルコゲナイドおよびカルコハロゲナイドは、金属原子が金属間結合によってひとまとめにされている8面体クラスタを含有することが当分野で周知である。金属8面体は8個の面キャップ配位子および6個の末端配位子によって包囲され、[MQiQa2−ナノサイズ単位(Q=カルコゲンおよび/またはハロゲン、i=内部、a=頂点)を形成する。Kirakci et al.(Z.Anorg.Allg.Chem.2005,631,411)およびLong et al.(J.Am.Chem.Soc.1996,118,4603)によって示されるように、多くの経路が、液体または固体状態のどちらかにおいて、金属間結合に利用可能な金属電子の数に関連する特定の電子、磁性および光物理特性を呈する可溶性の孤立した[M2−単位(X=ハロゲン)を提供する。さまざまなグループによって、この単位が赤色〜NIR範囲において特に高度に発光性であり、モリブデン・ベース・クラスタでは最大23%の、タングステン・ベース・クラスタでは39%の光ルミネセンス発光量子収率を有することが示されている(タングステンクラスタについては、例えばZietlow,Thomas C;Nocera,Daniel G.;Gray,Harry B.Photophysics and electrochemistry of hexanuclear tungsten halide clusters.Inorganic Chemistry(1986),25(9),1351−3を参照のこと:[n−(CN]量子収率0.39;λmax=698nm;550から950nmの範囲に及ぶルミネセンス)。これはさらに、10分の1から100分の1マイクロ秒の範囲に及ぶ励起状態寿命を示し、電気発生ルミネセンスによる容易な基底状態−励起状態電子移動を受ける。M−Q結合のM−X結合と比べてより強い共有結合性質のために、ハロゲン頂点原子は、(Mm+コアを一切改変することなく無機または有機配位子に置き換えられて、独自の特性を有する超分子構造、ポリマーフレームワークまたはナノ材料の設計に使用できる官能性構成要素をもたらすことができる。6置換[Mx−単位(L=配位子)の多くの例がこれまでに報告されている。しかし(Mm+コアのナノメートルサイズおよび[Mx−単位の空気および水分に対する感受性のために、デバイスにおけるこれの官能化および液晶構成要素としての使用はいまだ課題のままである。一方では自己組織化機能を、他方では、集合体方法の間に発生することができる位置決め誤差を自動的に修正するための流動性を有する空気安定性ハイブリッド化合物が必要とされる。本発明の発明者らは、上の課題に対処してきた。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、Mベース・クラスタ・コアおよび少なくとも1つの配位子を含む化合物に関する。本発明の第1の実施形態において、金属Mはモリブデン(Mo)またはタングステン(W)である。好ましいのはモリブデン(Mo)である。
【0008】
本発明の本実施形態による配位子は、以下の化合物より選択され:
【化1】

式中、Aは、OH、COOHまたはSOHのいずれかであることができ、式中、R、Rおよび/またはRはH原子、1から30個のメチレン基を含有する直鎖または分枝アルキル鎖のいずれかであることができ、ここで本アルキル鎖中の1個以上のメチレン基は、−O−、−CO−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OC(=O)−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−で置換することができ、本アルキル基中の水素原子はフッ素原子またはR基:
【化2】

で置換することができ、Rは1から30個のメチレン基を含有する直鎖または分枝アルキル鎖であることができ、ここで本アルキル鎖中の1個以上のメチレン基は、−O−、−CO−、−S−、−CH=CH−または−C≡C−、−COO−、−OC(=O)−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−で置換することができ、本アルキル基中の水素原子はフッ素原子で置換することができる。
【0009】
は、単結合、−C=C−、−C=C−、フェニル環、−C=N−、−N=C−、−N=N−、−C(=O)O、−O(O=)C−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−であることができる。
【0010】
は、水素原子、ハロゲン原子、−C≡N、−NO、1から30個のメチレン基を含有する直鎖もしくは分枝キラルまたはアキラルアルキル鎖のいずれかであることができ、ここで本アルキル鎖中の1個以上のメチレンは、−O−、−CO−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OC(=O)−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−で置換することができ、ここで本アルキル基中の水素原子はフッ素原子で置換することができる。
【0011】
好ましいものは以下のカルボン酸化合物より選択される配位子であり:
【化3】

式中、R、RおよびR
【化4】

であり、または式中、R、RおよびR
【化5】

である。
【0012】
本発明の本実施形態により、Mベース・クラスタ・コアはMo型であることができ、ここでMはMoまたはWであり、ここでQはハロゲンおよび/またはカルコゲンであり、Lは配位子である。
【0013】
好ましくは、化合物は、550〜950nmの範囲のルミネセンスを示す。ルミネセンス最大値はより好ましくは、700nmと745nmの間にある。
【0014】
本発明はさらに、本発明の第1の実施形態の化合物を産生する方法に関する。本方法は、MがMoまたはWであり、Qがハロゲンおよび/またはカルコゲンであり、XがFであるM型の金属クラスタと配位子との1ステップ反応を含む。
【0015】
方法の好ましい実施形態において、QはS、Se、Te、I、Cl、Brまたはこれらの混合物である。
【0016】
該方法は周囲雰囲気中で行うことができ、前記方法の1ステップ反応は、非プロトン性極性溶媒中または溶融した配位子中のどちらかで行うことができる。
【0017】
第2の実施形態において、本発明は、Mがレニウム(Re)であるMベース・クラスタ・コアおよび少なくとも1つの配位子を含む化合物に関する。
【0018】
本発明の本実施形態による配位子は、以下の化合物より選択され:
【化6】

Aは、OH、COOHまたはSOHのいずれかであることができ;ならびにR、Rおよび/またはRは、H原子、1から30個のメチレン基を含有する直鎖または分枝アルキル鎖のいずれかであることができ、ここで本アルキル鎖中の1個以上のメチレン基は、−O−、−CO−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OC(=O)−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−で置換することができ、本アルキル基中の水素原子はフッ素原子またはR基:
【化7】

で置換することができ、Rは、1から30個のメチレン基を含有する直鎖または分枝アルキル鎖であることができ、ここで本アルキル鎖中の1個以上のメチレン基は、−O−、−CO−、−S−、−CH=CH−または−C≡C−、−COO−、−OC(=O)−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−で置換することができ、本アルキル基中の水素原子はフッ素原子で置換することができる。
【0019】
は、単結合、−C=C−、−C≡C−、フェニル環、−C=N−、−N=C−、−N=N−、−C(=O)O、−O(O=)C−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−であることができる。
【0020】
は、水素原子、ハロゲン原子、−C≡N、−NO、1から30個のメチレン基を含有する直鎖もしくは分枝キラルまたはアキラルアルキル鎖のいずれかであることができ、ここで本アルキル鎖中の1個以上のメチレンは、−O−、−CO−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OC(=O)−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−で置換することができ、ここで本アルキル基中の水素原子はフッ素原子で置換することができる。
【0021】
本発明の本実施形態により、Mベース・クラスタ・コアはRe型であることができ、ここでQはハロゲンおよび/またはカルコゲンであり、Lは配位子である。
【0022】
本実施形態の好ましい形では、化合物は550〜950nmの範囲のルミネセンスを示す。ルミネセンス最大値は、好ましくは700nmと745nmの間にある。
【0023】
本発明はさらに、本発明の本実施形態の化合物を産生する方法であって、Qがハロゲンおよび/またはカルコゲンであり、XがFであるRe型の金属クラスタと配位子との1ステップ反応を含む方法に関する。Qは、S、Se、Te、I、Cl、Brまたはこれの混合物であることができる。
【0024】
該方法は周囲雰囲気中で行うことができ、1ステップ反応は非プロトン性極性溶媒中または溶融配位子中で行うことができる。
【0025】
本発明はさらに、上記実施形態に記載したような本発明による化合物を含む、液晶特性を有するルミネセンス材料に関する。
【0026】
本発明の1つの好ましい実施形態において、液晶特性を有するルミネセンス材料は、550〜950nmの範囲のルミネセンスを示す。ルミネセンス最大値は、好ましくは700nmと745nmの間にある。
【0027】
本発明の別の重要な特徴は、材料がLC相にとどまる温度範囲である。本発明のとりわけ好都合な実施形態において、液晶特性を有するルミネセンス材料は、約20℃から82℃の温度範囲にてスメクチック相のままであり、82℃と94℃との間でネマチック相を示す。このことにより材料は、材料の好都合な特性を改変することなく、広範囲の機器に好適となる。
【0028】
液晶特性を有するルミネセンス材料は、各種の機器、例えばポリマー・マトリクス・フラット・スクリーン、LCDスクリーン、光電池、情報記憶装置、温度検出器、ガスセンサ、エレクトロルミネセンスダイオード、レーザ、能動導波路および電界効果トランジスタで使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の1つの実施形態による(nBuN)[MoBr]および2つの没食子酸誘導体の化学構造を示す。
【図2】87.5℃における(nBuN)[MoBr2a]の偏光顕微鏡写真を示す。
【図3】77.5℃における(nBuN)[MoBr2a]の偏光顕微鏡写真を示す。
【図4】104℃における(nBuN)[MoBr2b]の偏光顕微鏡写真を示す。
【図5】i=2a、2bである(nBuN)[MoBr]の相挙動を示す。
【図6】冷却時に得た95、90、85、80、75、50および30℃における(nBuN)[MoBr2a]−6HFのX線回折パターンを示す(実線)。
【図7】固体状態での(nBuN)[MoBr](実線)、(nBuN)[MoBr2a]−6HF(破線)および(nBuN)[MoBr2b]−6HF(点線)の補正発光スペクトルを示す。λexc=450nm。(nBuN)[MoBr]の場合、粉末試料でスペクトルを得たが(nBuN)[MoBr2a]−6HFおよび(nBuN)[MoBr2b]−6HFでは、試料をスピンコーティングによってシリカ基材上に積層した。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書で使用する場合、「液晶材料」という用語は液晶で形成されている材料を指す。液晶は、液体構造と結晶性固体構造の間の中間である構造を有する材料である。液体と同様に、液晶の分子は相互に流過することができる。しかし固体結晶と同様に、液晶分子は認識可能な秩序化パターンに自己配列する。液晶は、固体結晶と共通して、多形を呈することができ、すなわち液晶は異なる構造パターンを取ることができる。
【0031】
本明細書で使用する場合、「中間相」という用語は、液晶の各種の相を指す。
【0032】
本明細書で使用する場合、「スメクチック相」という用語は、液晶の組織構造形を指す。スメクチック相は、相互に滑ることができ、1方向に沿って位置秩序化された明確な層を形成する。多くの異なるスメクチック相があり、すべて異なる種類および程度の位置秩序および配向秩序を特徴としている。例えばスメクチックA相では、分子が層法線に沿って配向されているが、スメクチックC相では、分子は層法線から傾斜している。これらの相は層内では液体様である。スメクチックB相は、配向秩序を有さない並進秩序相(各スメクチック平面における2次元6方格子)である。したがってスメクチック液晶は、層化シートとして自己配列するが、異なるスメクチック相中では、分子は、シート平面に対して異なるアラインメントを取ることができる。
【0033】
本明細書で使用する場合、「ネマチック相」という用語は、液晶の組織構造形を指す。「ネマチック相」は最も無秩序な液晶相であり、ここですべての分子は平均して同じ方向に配向されているが、位置相関を有さない。
【0034】
本明細書で使用する場合、「遷移金属」という用語は、周期律表の第3族から第12族のすべての元素を指す。
【0035】
本明細書で使用する場合、「発光量子収率」という用語は、発光光子の数と吸収された光子の数との比を指す。
【0036】
本発明は、ルミネセンス特性を有するMベース・クラスタ・コアを含む化合物、前記化合物を産生する方法、ならびに前記化合物を含む液晶特性を有するルミネセンス材料に関する。ボトムアップ手法を使用するM(M=Mo、W、またはRe;Q=ハロゲンおよび/またはカルコゲン)クラスタコアの巨視的デバイスへの組込みは、発明者によって示されている。
【0037】
本発明による化合物は、Mベース・クラスタ・コアおよび少なくとも1つの配位子を含有する。
【0038】
本発明の第1の実施形態による好適な金属原子は、モリブデン(Mo)またはタングステン(W)である。モリブデン(Mo)がタングステン(W)より好ましいのは、タングステンクラスタ化合物と比べて、モリブデンクラスタ化合物の合成が容易であるためである。
【0039】
第1の実施形態による好適な配位子は、以下の群より選択され:
【化8】

式中、Aは、OH、COOHまたはSOHのいずれかであることができ、式中、R、Rおよび/またはRはH原子、1から30個のメチレン基を含有する直鎖または分枝アルキル鎖のいずれかであることができ、ここで、本アルキル鎖中の1個以上のメチレン基は、−O−、−CO−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OC(=O)−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−で置換することができ、本アルキル基中の水素原子はフッ素原子またはR基:
【化9】

で置換することができ、Rは、1から30個のメチレン基を含有する直鎖または分枝アルキル鎖であることができ、ここで、本アルキル鎖中の1個以上のメチレン基は、−O−、−CO−、−S−、−CH=CH−または−C≡C−、−COO−、−OC(=O)−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−で置換することができ、本アルキル基中の水素原子はフッ素原子で置換することができる。
【0040】
は、単結合、−C=C−、−C≡C−、フェニル環、−C=N−、−N=C−、−N=N−、−C(=O)O、−O(O=)C−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−であることができる。
【0041】
は、水素原子、ハロゲン原子、−C≡N、−NO、1から30個のメチレン基を含有する直鎖もしくは分枝キラルまたはアキラルアルキル鎖のいずれかであることができ、ここで、本アルキル鎖中の1個以上のメチレンは、−O−、−CO−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OC(=O)−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−で置換することができ、ここで本アルキル基中の水素原子はフッ素原子で置換することができる。
【0042】
特に好ましいものは以下のカルボン酸化合物より選択される配位子であり:
【化10】

式中、R、RおよびR
【化11】

であり、または式中、R、RおよびR
【化12】

である。
【0043】
これらの化合物が本発明の第1の実施形態において、他の化合物よりもとりわけ選ばれてきたのは、Moクラスタ、またはアキシャル配位子としてF原子を含有するWクラスタとのこれの反応性およびこれの高い安定性のためである。
【0044】
これらが他の誘導体、例えばピリジン誘導体より好ましいのは、グラフト反応が、すべての反応物質が水分感受性ではない1ステップ定量反応であるためである。メトキシ基とカルボキシラートとの交換に基づくShriverおよびProkopukによって記載された研究(N.Prokopuk,D.F.Shriver Inorg.Chem.,1997,36,5609−5613)などの、先に記載されたクラスタコアへのカルボン酸誘導体のグラフト反応とは対照的に、クラスタ前駆体Mm−は空気安定性であり、水分感受性ではないため、所望のハイブリッドの合成を容易にして、このため生産コストを低下させる。実際にすべての操作は不活性雰囲気ドライボックス、高真空マニホールドまたはシュレンク技法を使用することなく、周囲雰囲気中で行われる。
【0045】
ピリジン誘導体の配位子としての使用も以前に記載されている。しかし以前の研究で、クラスタにN原子を介して結合されたアキシャル配位子としてのピリジンは、Moコアのルミネセンスをオフにすることが証明された(Rodrigo Ramirez−Taglea and Ramiro Arratia−Perez,「Pyridine as axial ligand on the[MoCl4+ core switches off luminescence」,CHEMICAL PHYSICS LETTERS,2009,475,4−6,232−234)。これとは対照的にクラスタコアのルミネセンス特性は、本発明による他の配位子の使用により、そのまま維持される。このためピリジン誘導体の配位子としての使用はあまり好ましくない。
【0046】
本発明による配位子の使用の別の利点は、クラスタの全電荷が配位子によって修飾されないので、配位子が組成物をより安定に維持することである。
【0047】
本発明の本第1の実施形態の好ましい形において、MクラスタコアはM型のコアであり、ここでMはMoまたはWであり、ここでQはハロゲンおよび/またはカルコゲンであり、Lは配位子である。好ましいのは、ReまたはWベースクラスタの使用にまさる利点、例えばより良好なルミネセンス特性およびより低コストの合成を有する、Moベースクラスタである。
【0048】
本第1の実施形態の好ましい形において、本発明のコアクラスタは、ハロゲン原子のみをさらに含む。好ましいハロゲン原子は、Br、ClおよびI、またはこれら3つのハロゲンの混合物である。コアクラスタでのハロゲン原子のみの使用が、カルコゲン/ハロゲンを有する遷移金属コアクラスタを使用するよりも好都合であるのは、これの合成がより容易であり、得られた材料がより安定なためである。さらにこれらのクラスタは、非常に良好なルミネセンス特性を示す。
【0049】
本発明は、本発明の第1の実施形態による化合物を産生する方法であって、MがMoまたはWであり、Qがハロゲンおよび/またはカルコゲンであり、ならびにXがFであるM型の金属クラスタと、上に記載したような配位子との1ステップ反応を含む方法をさらに含む。好ましい実施形態において、QはS、Se、Te、I、Cl、Br、またはこれらの混合物である。他の遷移金属クラスタと比べて、Mo−ハロゲン、Mo−ハロゲン/カルコゲンまたはW−ハロゲンおよびW−ハロゲン/カルコゲンベースクラスタの使用の利点は、合成の容易さおよび得られた材料の安定性である。さらにこれらのクラスタは、非常に良好なルミネセンス特性を示す。好ましいのは、Mo−ハロゲンおよびW−ハロゲンベースクラスタである。
【0050】
本方法におけるクラスタ中の頂点アニオンとしてのFの使用は、例えば非常に空気および水分感受性であるトリフレートまたはメトキシ基を頂点配位子として含有するクラスタとは対照的に、クラスタに非常に高い安定性を提供する。このため、すべての操作は、トリフレートまたはメトキシ置換クラスタでは通常であるような、不活性雰囲気ドライボックス、高真空マニホールドまたはシュレンク技法を使用することなく、周囲雰囲気中で行うことができる。クラスタは、クラスタの安定性にもかかわらず、カルボン酸誘導体と驚くほど非常に容易に反応する。反応は、非プロトン性極性溶媒、例えばTHF中で実現することができるが、溶融有機配位子中で行うこともできる。
【0051】
第2の実施形態において、本発明は、Mがレニウム(Re)であるMベース・クラスタ・コアおよび少なくとも1つの配位子を含む化合物に関する。
【0052】
本発明の本実施形態による配位子は、以下の化合物より選択され:
【化13】

Aは、OH、COOHまたはSOHのいずれかであることができ;ならびにR、Rおよび/またはRはH原子、1から30個のメチレン基を含有する直鎖または分枝アルキル鎖のいずれかであることができ、ここで本アルキル鎖中の1個以上のメチレン基は、−O−、−CO−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OC(=O)−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−で置換することができ、本アルキル基中の水素原子はフッ素原子またはR基:
【化14】

で置換することができ、Rは、1から30個のメチレン基を含有する直鎖または分枝アルキル鎖であることができ、ここで本アルキル鎖中の1個以上のメチレン基は、−O−、−CO−、−S−、−CH=CH−または−C≡C−、−COO−、−OC(=O)−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−で置換することができ、本アルキル基中の水素原子はフッ素原子で置換することができる。
【0053】
は、単結合、−C=C−、−C≡C−、フェニル環、−C=N−、−N=C−、−N=N−、−C(=O)O、−O(O=)C−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−であることができる。
【0054】
は、水素原子、ハロゲン原子、−C≡N、−NO、1から30個のメチレン基を含有する直鎖もしくは分枝キラルまたはアキラルアルキル鎖のいずれかであることができ、ここで本アルキル鎖中の1個以上のメチレンは、−O−、−CO−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OC(=O)−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−で置換することができ、ここで、本アルキル基中の水素原子はフッ素原子で置換することができる。
【0055】
本発明の本実施形態により、Mベース・クラスタ・コアはRe型であることができ、ここでQはカルコゲンおよび/またはハロゲンであり、Lは配位子である。
【0056】
本発明はさらに、本発明の本実施形態の化合物を産生する方法であって、Qがハロゲンおよび/またはカルコゲンであり、XがFであるRe型の金属クラスタの配位子との1ステップ反応を含む方法に関する。Qは、S、Se、Te、I、Cl、Brまたはこれらの混合物であることができる。該方法は周囲雰囲気中で行うことができ、1ステップ反応は非プロトン性極性溶媒中または溶融配位子中で行うことができる。
【0057】
多くの有機化合物、無機またはハイブリッド有機−無機化合物は緑色および青色で効果的に送達できるが、550〜950nm範囲(赤色および近赤外)で効果的に搬送できるのはごくわずかな化合物だけであることが周知である。ランタニドベースの有機金属錯体は、この範囲で狭い発光バンドのために興味深いが、これのルミネセンスの発光量子収率は非常に低く、検討する波長範囲で0.1%未満である。白金錯体はより高い収率を有する。しかしこれの生産コストは非常に高い。このため本発明の1つの目的は、これまでに公知の錯体の欠点を克服することと、赤色および近赤外範囲で強い発光を有し、経済的に魅力のある、液晶特性を備えたルミネセンス材料を提供することである。
【0058】
本発明の一実施形態において、本発明による化合物は、ルミネセンスが550〜950nmの範囲にあることを特徴とする。本発明の好ましい実施形態において、ルミネセンス最大値は700nmと745nmの間に位置する。
【0059】
本発明はさらに、本発明による化合物を含む、液晶特性を有するルミネセンス材料を提供する。
【0060】
本発明の一実施形態において、本発明による液晶特性を有するルミネセンス材料は、ルミネセンスが550〜950nmの範囲にあることを特徴とする。本発明の好ましい実施形態において、ルミネセンス最大値は700nmと745nmの間に位置する。
【0061】
液晶材料およびこれの機器の重要な特徴は、前記材料が液晶相のままである温度範囲である。本発明のとりわけ好都合な実施形態において、液晶特性を有するルミネセンス材料は、約20℃から82℃の温度範囲にてスメクチック相のままであり、82℃と94℃との間でネマチック相を示す。このことにより材料は、材料の特性を改変することなく、広範囲の機器に好適となる。
【0062】
本発明による液晶特性を有するルミネセンス材料は、各種の機器、例えばポリマー・マトリクス・フラット・スクリーン、LCDスクリーン、光電池、情報記憶装置、温度検出器、ガスセンサ、エレクトロルミネセンスダイオード、レーザ、能動導波路および電界効果トランジスタで使用することができる。
【0063】
本発明で示されたMo14、W14、またはRe14型などの8面体モリブデン、タングステン、またはレニウムクラスタの利点の1つは、最大23%のおよび最大39%もの高い光ルミネセンス量子収率、ならびに広い発光バンドである。加えて純有機化合物とは異なり、これらは光退色の現象に対して感受性でなく、このことはルミネセンス特性の効率を長期にわたって低下させる。
【0064】
本発明の液晶特性を有するルミネセンス材料が、ポリマーマトリクスを有するフラットスクリーンを産生するための最適な材料となるのは、このルミネセンス特性および長距離組織秩序が、当分野で公知の他の解決策、例えば良好な輝度を維持するためにより強力なバックライトの使用を意味する、カラーフィルタを含有する代表的なLCDディスプレイ、またはアモルファスであるOLEDと比較してより低いエネルギー消費をもたらすためである。これらの材料は、このより低いエネルギー消費のために、モバイル技術に適している。
【0065】
本発明の液晶特性を有するルミネセンス材料の別の好都合な特徴は、クラスタの性質のために、得られた分子集合体の形態および化学親和性を修飾できることである。これらの変化は、分子レンガのナノ構造を最適化して、このような材料の巨視的規模での大幅な組織変化を与える。
【0066】
例えば液晶特性を有するいくつかのルミネセンス材料のディスコチック特性は、電子を伝導する1次元網目に自己組織化するこの材料の能力のために、光電池などのデバイスでの用途を見出すことができる。
【0067】
金属クラスタを含まずに、本明細書で上述した液晶特性を示すクラスタを1つまたは複数の公知の液晶と共に含むハイブリッド材料を提供することは、本発明の範囲内である。このようなシステム(LC+クラスタを含有するLC)の利点の1つはLCルミネセンス材料を提供して、得られたハイブリッド材料の流動性を改善するために必要なクラスタの量を低減することが可能なことである。また異なるLC挙動を得るために2つの異なるLCクラスタの混合も想定される。
【0068】
本発明は、以下の実施例の参照によってより良好に理解することができる。これらの実施例は、本発明の具体的な実施形態を示すものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0069】
<実施例1:ナノメートルサイズの(nBuN)[MoBr]クラスタ単位の合成および錯体への配位子のグラフト>
合成は簡単であり、[MoBr2−単位とカルボン酸誘導体の1ステップ反応に存する(図1)。合成は、頂点Fのカルボキシラートアニオンによるインサイチュー交換をHFの形成と共に引き起こす。ナノメートルサイズの(nBuN)[MoBr]クラスタ単位は、アセトン/エタノールの混合物中での(nBuN)[MoBR14]前駆体と過剰な(nBuN)Fとの反応によって得られた。これのバルク性およびこれの8面体配位のために、可撓性脂肪族スペーサを通じた中間相プロモータのグラフトに基づく戦略を使用した(この戦略は以前の研究において、ポリオキソメタレート、8面体配位錯体、フラーレンまたはバルク状ランタニドメソゲンの場合にサーモトロピック中間相を得るためにうまく利用された)。配位子HL2a,bは没食子酸骨格をベースとし、Kouwer et al.によって報告された手順に従って合成された。ハイブリッドは、1当量の(nBuN)[MoBr]および6当量の対応する没食子酸誘導体を含有する混合物を加熱することによって容易に得られた。
【0070】
<実施例2:(nBuN)[MoBr]−6HFの熱特性および液晶(LC)特性>
(nBuN)[MoBr]−6HFの熱特性および液晶(LC)特性を、示差走査熱量測定(DSC)、偏光顕微鏡法(POM)およびX線回折によって調べた。87.5℃および77.5℃における(nBuN)[MoBr2a]の、ならびに、104℃における(nBuN)[MoBr2b]の偏光顕微鏡写真を図2から4に示す。相転移および熱力学のデータを図5で報告する。(nBuN)[MoBr2a]の場合、94から82℃の間でネマチックLC相に特有であるシュリーレン組織が観察され、続いて、等方性溶融物からの冷却時には20℃までスメチック型相のフォーカル・コニック・ファン組織が観察された。(nBuN)[MoBr2b]では、スメチック型相のフォーカル・コニック・ファン組織を、2時間のアニーリングの後の等方性溶融物からの冷却時にPOMによって得ることができた。温度範囲をDSC分析によって確認した。
【0071】
<実施例3:温度依存性X線回折>
温度依存性X線回折実験を実施して、得られた中間相の正確な性質を同定した。中間相範囲内の異なる温度にて記録されたX線回折パターンはすべて定性的に同等であり、1:2の比で相互間隔を有する層状形態の特徴である2個の鋭い小角反射を含有している。このためブラッグの法則を適用することにより、例えば80℃にて、層間距離に起因する42.2Åの間隔が計算された。4.4Å(h1)を中心として、広角領域における、ならびに溶融鎖およびシアノビフェニル部分の側面短距離秩序に対応する散漫散乱ハロによって、中間相の液晶性質が確認された。さらなる強力で非常に広い反射は、層内での電子が豊富なクラスタコアの平均側面組織化に起因する。図6は、冷却時に得られた、各種温度における(nBuN)[MoBr2a]−6HFのX線回折パターンを示す。
【0072】
<実施例4:発光測定>
固体状態のすべての化合物について発光測定を行った((nBuN)[MoBr]は粉末に対して、および(nBuN)[MoBr]は石英ガラススライドにスピンコーティングによって被着させた試料で)。図5に示すように、すべてのクラスタは、570nmから900nmを超える範囲に及ぶ赤色−NIR範囲に幅広いルミネセンスを示し、最大値は(nBuN)[MoBr]では745nmに、(nBuN)[MoBr2a]では710nmに、および(nBuN)[MoBr2b]では735nmに位置していた。本ルミネセンスは、300nmから開始する550nmまでの広範囲の励起波長で得られる。クラスタ周囲の配位子の存在がこれのルミネセンススペクトルにわずかな変化を誘発して、発光の原因である電子遷移が主に金属間電荷移動型であることと、このため錯体形成時に明るいルミネセンス特性が維持されることとが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース・クラスタ・コアおよび少なくとも1個の配位子を含む化合物であって、ここで、Mがモリブデンまたはタングステンより選択され、前記少なくとも1つの配位子が以下の化合物:
【化1】

(式中、Aは、OH、COOHまたはSOHのいずれかであることができ;
式中、R、Rおよび/またはRはH原子、1から30個のメチレン基を含有する直鎖または分枝アルキル鎖のいずれかであることができ、ここで、当該アルキル鎖中の1個以上のメチレン基は、−O−、−CO−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OC(=O)−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−で置換することができ、当該アルキル基中の水素原子はフッ素原子またはR基:
【化2】

で置換することができ、式中、Rは、1から30個のメチレン基を含有する直鎖または分枝アルキル鎖であることができ、ここで、当該アルキル鎖中の1個以上のメチレン基は、−O−、−CO−、−S−、−CH=CH−または−C≡C−、−COO−、−OC(=O)−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−で置換することができ、当該アルキル基中の水素原子はフッ素原子で置換することができ;かつ
式中、Rは、単結合、−C=C−、−C≡C−、フェニル環、−C=N−、−N=C−、−N=N−、−C(=O)O、−O(O=)C−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−であることができ;かつ
式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、−C≡N、−NO、1から30個のメチレン基を含有する直鎖もしくは分枝キラルまたはアキラルアルキル鎖のいずれかであることができ、ここで、当該アルキル鎖中の1個以上のメチレンは、−O−、−CO−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OC(=O)−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−で置換することができ、ここで、当該アルキル基中の水素原子はフッ素原子で置換することができる)
より選択される化合物。
【請求項2】
前記配位子が以下のカルボン酸化合物:
【化3】

(式中、R、RおよびR
【化4】

であり、または式中、R、RおよびR
【化5】

である)
より選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記Mベース・クラスタ・コアがM型であり、式中、Mがモリブデンまたはタングステンであり、Qがハロゲンおよび/またはカルコゲンであり、Lが配位子である請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Qが、S、Se、Te、I、Cl、Br、またはこれらの混合物より選択される請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物のルミネセンスが550〜950nm範囲にあることをさらに特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
前記化合物のルミネセンス最大値が700nmと745nmとの間にあることをさらに特徴とする請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Mがモリブデンまたはタングステンであり、Qがハロゲンおよび/またはカルコゲンであり、ならびに、XがFであるM型の金属クラスタと配位子との1ステップ反応を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物を産生する方法。
【請求項8】
Qが、S、Se、Te、I、Cl、Br、またはこれらの混合物より選択される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
周囲雰囲気中で行われる請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記1ステップ反応が非プロトン性極性溶媒中で行われる請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
溶融した配位子中で行われる請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
MがレニウムであるMベース・クラスタ・コアおよび少なくとも1個の配位子を含む化合物であって、前記少なくとも1個の配位子が以下の化合物:
【化6】

(式中、Aは、OH、COOHまたはSOHのいずれかであることができ;かつ
式中、R、Rおよび/またはRはH原子、1から30個のメチレン基を含有する直鎖または分枝アルキル鎖のいずれかであることができ、ここで、当該アルキル鎖中の1個以上のメチレン基は、−O−、−CO−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OC(=O)−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−で置換することができ、当該アルキル基中の水素原子はフッ素原子またはR基:
【化7】

で置換することができ、式中、Rは、1から30個のメチレン基を含有する直鎖または分枝アルキル鎖であることができ、ここで、当該アルキル鎖中の1個以上のメチレン基は、−O−、−CO−、−S−、−CH=CH−または−C≡C−、−COO−、−OC(=O)−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−で置換することができ、当該アルキル基中の水素原子はフッ素原子で置換することができ;かつ
式中、Rは、単結合、−C=C−、−C≡C−、フェニル環、−C=N−、−N=C−、−N=N−、−C(=O)O、−O(O=)C−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−であることができ;かつ
式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、−C≡N、−NO、1から30個のメチレン基を含有する直鎖もしくは分枝キラルまたはアキラルアルキル鎖のいずれかであることができ、ここで、当該アルキル鎖中の1個以上のメチレンは、−O−、−CO−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OC(=O)−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)NH−または−NH(C=O)−で置換することができ、ここで、当該アルキル基中の水素原子はフッ素原子で置換することができる)
より選択される化合物。
【請求項13】
前記Mベース・クラスタ・コアがRe型であり、式中、Qがカルコゲンおよび/またはハロゲンであり、ならびにLが配位子である請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
Qが、S、Se、Te、I、Cl、Br、またはこれらの混合物より選択される請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
前記化合物のルミネセンスが550〜950nm範囲にあることをさらに特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
前記化合物のルミネセンス最大値が700nmと745nmとの間にあることをさらに特徴とする請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
Qがハロゲンおよび/またはカルコゲンであり、XがFであるRe型の金属クラスタと配位子との1ステップ反応を含む請求項12〜16のいずれか1項に記載の化合物を産生する方法。
【請求項18】
Qが、S、Se、Te、I、Cl、Br、またはこれの混合物より選択される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
周囲雰囲気中で行われる請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記1ステップ反応が非プロトン性極性溶媒中で行われる請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
溶融配位子中で行われる請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1〜6および12〜16のいずれか1項に記載の化合物を含む、液晶特性を有するルミネセンス材料。
【請求項23】
前記ルミネセンスが550〜950nmの範囲にあることをさらに特徴とする請求項22に記載の液晶特性を有するルミネセンス材料。
【請求項24】
前記ルミネセンス最大値が700nmと745nmとの間にあることをさらに特徴とする請求項23に記載の液晶特性を有するルミネセンス材料。
【請求項25】
前記材料が20℃から82℃の温度範囲にてスメクチック相のままであり、82℃と94℃との間でネマチック相を示すことをさらに特徴とする請求項22〜24のいずれか1項に記載の液晶特性を有するルミネセンス材料。
【請求項26】
表示デバイス、ポリマー・マトリクス・フラット・スクリーン、LCDスクリーン、光電池、情報記憶装置、温度検出器、ガスセンサ、エレクトロルミネセンスダイオード、レーザ、能動導波路および電界効果トランジスタの群より選択される請求項22〜25のいずれか1項に記載の液晶特性を有するルミネセンス材料の、機器における使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−512266(P2013−512266A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541399(P2012−541399)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067786
【国際公開番号】WO2011/064139
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(503261111)ユニヴェルシテ・ドゥ・レンヌ・1 (9)
【出願人】(511239133)サントル・ナシオナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シアンティフィーク (2)
【Fターム(参考)】