説明

ルータ装置、プレフィクス管理にもとづくパケット制御方法およびプログラム

【課題】本来使用してはならないプレフィクスを含むパケットが転送されないようにする。
【解決手段】ルータ装置1は、プレフィクス配付装置2から配付されたプレフィクスと、ノード3から受信した送信元IPアドレスにおけるプレフィクスとにもとづいて、ノード3からのパケットの通過または遮断の条件を含むフィルタ条件を作成するプレフィクス管理部5と、プレフィクス管理部5が作成したフィルタ条件に従って、ノードからのパケットを通過させるかまたは遮断するフィルタ部6とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレフィクス委譲によってIPアドレスのプレフィクスが配付されるルータ装置、ルータ装置におけるプレフィクス管理にもとづくパケット制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
IPV6(Internet Protocol Version 6 )に従う通信ネットワークにおいて、ノードのIPアドレスを自動設定する方法として、DHCPv6(Dynamic Host Configuration Protocol version 6 )を用いてアドレスを配付する方法がある。
【0003】
DHCPv6を用いてアドレスが配付する方法には、DHCPサーバまたはDHCP機能を備えた上位ルータが、ルータ装置に対してRA(Router Advertisement)を利用してIPアドレスのプレフィクス(Prefix)を配付する方法が含まれている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
プレフィクスが配付されたルータ装置は、例えばRAを用いてノードにプレフィクスを再配布する。ノードは、配付されたプレフィクスを含むIPアドレスを用いて上位ルータと通信する。上位ルータは、例えばインターネットに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−166097号公報
【特許文献2】特開2007−251269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図13は、ルータ装置としてのホームゲートウェイ(HGW)を含む通信システムの一例を示すブロック図である。上位ルータ(以下、ルータという。)200は、例えば、インターネットサービスプロバイダ(ISP)において設置され、インターネット400に接続可能である。HGW100は、宅内等に設定され、ルータ200とWAN(Wide Area Network )21を介して通信可能である。WAN21は、例えば加入者回線網である。HGW100は、LAN11を介して1つ以上のノード300と通信可能であり、ノード300とルータ200との間の通信を中継する。ノード300は、一例としてパーソナルコンピュータである。
【0007】
ルータ200は、定期的に、またはHGW100の要求に応じて、DHCP−PD(Prefix Delegation )機能にもとづいてHGW100にプレフィクスを配付する。HGW100は、プレフィクスをノード300に再配布する。ノード300は、プレフィクスと自局のリンクローカルアドレスとを組み合わせて、IPアドレスを生成する。ノード300は、生成したIPアドレスを使用して通信を行う。
【0008】
ルータ200に配付されるプレフィクスを変化さない固定方法もあるが、ルータ200に配付されるプレフィクスを時間経過等に起因して変える非固定方法もある。
【0009】
ルータ200からHGW100に配付されるプレフィクスが変化したときのHGW100およびノード300の動作を考察する。図13に示すように、Prefix110 であったプレフィクスがPrefix111 に変化したとする。その場合、HGW100は、ノード300に送信されるRAパケットの内容を変更する。すなわち、HGW100は、Prefix110 を削除し、かつ、Prefix111 の配付を示すパケットをノード300に送信する。
【0010】
ノード300が、内容変更されたパケットを受信できない場合には、有効期間(life time )が経過するまで、プレフィクスとしてPrefix110 を保持する。そのような状況の下では、ノード300は、ルータ200との通信やインターネット400を介する通信を行うことができない。
【0011】
また、HGW100が、ノード300から送信されたPrefix110 を含むIPアドレスを転送する可能性が生ずる。すなわち、誤ったプレフィクスが広告される可能性が生ずる。
【0012】
本発明は、本来使用してはならないプレフィクスを含むパケットが転送されないようにすることができるルータ装置、プレフィクス管理にもとづくパケット制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるルータ装置は、プレフィクス配付装置から配付されたプレフィクスをノードに再配付し、IPv6アドレスにもとづいてパケットのルーティングを行うルータ装置であって、プレフィクス配付装置から配付されたプレフィクスと、ノードから受信した送信元IPアドレスにおけるプレフィクスとにもとづいて、ノードからのパケットの通過または遮断の条件を含むフィルタ条件を作成するプレフィクス管理部と、プレフィクス管理部が作成したフィルタ条件に従って、ノードからのパケットを通過させるかまたは遮断するフィルタ部とを備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明によるプレフィクス管理にもとづくパケット制御方法は、プレフィクス配付装置から配付されたプレフィクスをノードに再配付し、IPv6アドレスにもとづいてパケットのルーティングを行うルータ装置で実行されるプレフィクス管理にもとづくパケット制御方法であって、プレフィクス配付装置から配付されたプレフィクスと、ノードから受信した送信元IPアドレスにおけるプレフィクスとにもとづいて、ノードからのパケットの通過または遮断の条件を含むフィルタ条件を作成し、作成されたフィルタ条件に従って、ノードからのパケットを通過させるかまたは遮断することを特徴とする。
【0015】
本発明によるプレフィクス管理にもとづくパケット制御プログラムは、プレフィクス配付装置から配付されたプレフィクスをノードに再配付し、IPv6アドレスにもとづいてパケットのルーティングを行うルータ装置に搭載されるプログラムであって、ルータ装置におけるコンピュータに、プレフィクス配付装置から配付されたプレフィクスと、ノードから受信した送信元IPアドレスにおけるプレフィクスとにもとづいて、ノードからのパケットの通過または遮断の条件を含むフィルタ条件を作成する処理と、作成されたフィルタ条件に従って、ノードからのパケットを通過させるかまたは遮断する処理とを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、本来使用してはならないプレフィクスを含むパケットが転送されないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるルータ装置の第1の実施形態を示すブロック図である。
【図2】発生した事象とプレフィクス保存部に保存される情報との関係の例を示す説明図である。
【図3】フィルタ条件の一例を示す説明図である。
【図4】RAのoptionのフォーマットを示す説明図である。
【図5】本発明によるルータ装置の第2の実施形態を示すブロック図である。
【図6】フィルタ条件の一例を示す説明図である。
【図7】本発明によるルータ装置の第3の実施形態を示すブロック図である。
【図8】フィルタ条件の一例を示す説明図である。
【図9】本発明によるルータ装置の主要部を示すブロック図である。
【図10】本発明による他の態様のルータ装置の主要部を示すブロック図である。
【図11】本発明によるさらに他の態様のルータ装置の主要部を示すブロック図である。
【図12】本発明によるルータ装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】ルータ装置としてのホームゲートウェイを含む通信システムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0019】
実施形態1.
図1は、本発明によるルータ装置の第1の実施形態を示すブロック図である。図1には、ルータ装置の一例としてHGW101が示されている。HGW101を含む通信システムの構成は、図13に示された例と同じでよい。
【0020】
HGW101は、LAN11に接続されるLANインタフェース部110、LAN11を介するIPv6パケットの送受信を行うIPv6部(LAN側IPv6部)111、WAN21を介するIPv6パケットの送受信を行うIPv6部(WAN側IPv6部)112、IPv6パケットのルーティング制御を行うIPv6ルーティング部120、データの通過/遮断を制御するフィルタ部130、DHCPv6クライアント機能を有するDHCPv6クライアント部140、DNS(Domain Name System)等のIPv6機能を有するIPv6ホスト部150、プレフィクスを管理するプレフィクス管理部160、プレフィクス情報を保存するプレフィクス保存部170、およびWAN21に接続されるWANインタフェース部180を含む。
【0021】
なお、HGW101は、IPv6機能に加えて、IPv4にもとづく通信を実現するためのIPv4機能を備えていてもよい。
【0022】
LANインタフェース部110は、宅内ネットワーク(LAN21)に接続され、レイヤ2ヘッダのアドレスがLAN11側のアドレスまたはマルチキャストアドレスのパケットをLAN11を介して受信する。また、LANインタフェース部110は、IPv6部111が出力したパケットをLAN11に送信する。
【0023】
WANインタフェース部180は、加入者回線網(WAN21)を介してルータ200(図13参照)に接続される。WANインタフェース部180は、レイヤ2ヘッダのアドレスがLAN11側のアドレスまたはマルチキャストアドレスのパケットをWAN21を介して受信する。また、WANインタフェース部180は、IPv6部112が出力したパケットをWAN21に送信する。
【0024】
IPv6部111は、LANインタフェース部110が受信したパケットをIPv6ルーティング部120に出力する。IPv6部111は、IPv6ルーティング部120が出力したパケットをLANインタフェース部110に出力する。
【0025】
IPv6部112は、WANインタフェース部180が受信したIPv6パケットをフィルタ部130に出力する。IPv6部112は、フィルタ部130が出力したパケットをWANインタフェース部180に出力する。
【0026】
IPv6ルーティング部120は、IPv6部111、フィルタ部130、IPv6ホスト部150およびDHCPv6クライアント部140からパケットを入力する。IPv6ルーティング部120は、パケットの宛先(destination )IPv6アドレス、ポート番号、受信インタフェース情報を元に、入力したパケットを処理すべきHGW101内のブロックを特定する。IPv6ルーティング部120は、特定したブロックにパケットを出力する。
【0027】
DHCPv6クライアント部140は、DHCPv6クライアント機能を有する。DHCPv6クライアント部140は、IPv6ルーティング部120およびWAN21を介して、ルータ200(図13参照)とDHCPv6メッセージの送受信を行う。DHCPv6クライアント部140は、DHCP承認応答(Reply )メッセージにおけるDHCP−PDオプションに含まれるプレフィクス情報を抽出し、プレフィクス情報をプレフィクス管理部160に出力する。
【0028】
プレフィクス管理部160は、DHCPv6クライアント部140から入力したプレフィクス情報にもとづいて、LAN11側に通知すべきプレフィクス情報を決定する。プレフィクス管理部160は、決定したプレフィクス情報をプレフィクス保存部170に出力する。
【0029】
プレフィクス保存部170は、プレフィクス情報を保存する。また、プレフィクス保存部170は、プレフィクス管理部160から通知される削除フラグをプレフィクス情報とともに保存する。削除フラグは、削除されるべきプレフィクス情報を示す。例えば、「1」である削除フラグは、削除されるべきプレフィクス情報を示す。「0」である削除フラグは、利用可能なプレフィクス情報を示す。プレフィクス保存部170は、IPv6ホスト部150の要求に応じて、保存されているプレフィクス情報と削除フラグとの対をIPv6ホスト部150に供給する。
【0030】
プレフィクス管理部160がLAN11側に通知すべきプレフィクス情報を決定するためのプロセスは、例えば、以下のようである。
【0031】
まず、HGW101が、ルータ200(図13参照)に対して、要請(Solicit )メッセージをマルチキャスト送信する。ルータ200は、Solicit メッセージを受信すると、広告(Advertise )メッセージをHGW101に送信する。HGW101は、Advertise メッセージを受信すると、ルータ200に対して、要求(Request )メッセージを送信する。ルータ200は、Request メッセージを受信すると、Reply メッセージをHGW101に送信する。
【0032】
HGW101において、DHCPv6クライアント部140が、DHCP Replyメッセージのオプションである”Identity Association for Prefix Delegation”に設定されている情報から、”Prefix”、”Preferred lifetime”および”valid lifetime”を得る。DHCPv6クライアント部140は、それらの情報をプレフィクス管理部160に供給する。プレフィクス管理部160は、それらの情報を元に、LAN11側に通知すべきプレフィクス情報を決定する。
【0033】
プレフィクス管理部160は、DHCP Replyメッセージのオプションの内容が変化したとき、すなわちプレフィクス情報が変化するときにも、LAN11側に通知すべきプレフィクス情報を決定し、決定したプレフィクス情報をプレフィクス保存部170に出力する。また、廃棄されたパケットの送信元アドレス(source address)がフィルタ部130から出力されたときに、送信元アドレスに含まれるプレフィクスを示す情報をプレフィクス保存部170に出力する。なお、本実施形態では、プレフィクス長は、64ビットであるとする。
【0034】
プレフィクス管理部160は、プレフィクス制御部161を含む。プレフィクス制御部161は、プレフィクス管理部160において決定されたプレフィクス情報に対応する削除フラグの値(0または1)を決定する。プレフィクス管理部160は、プレフィクス保存部170にプレフィクス情報を出力するときに、プレフィクス情報に対応する削除フラグも出力する。
【0035】
また、プレフィクス制御部161は、プレフィクス管理部160において決定されたプレフィクス情報にもとづいてフィルタ条件を作成する。プレフィクス管理部160は、プレフィクス制御部161が作成したフィルタ条件をフィルタ部130に出力する。
【0036】
フィルタ部130は、フィルタ条件を記憶する。フィルタ部130は、LANインタフェース110がパケットを受信すると、フィルタ条件に従う処理を実行する。具体的には、フィルタ部130は、フィルタ条件を満たさないパケットをIPv6部112に出力する。また、フィルタ部130は、フィルタ条件を満たすパケットを廃棄する。そのとき、フィルタ部130は、廃棄したパケットの送信元アドレスをプレフィクス管理部160に出力する。フィルタ部130は、WAN21側からのパケットについてはフィルタ条件に従う処理を実行しない。
【0037】
IPv6ホスト部150は、IPv6の一部であるICMP(Internet Control Message Protocol )v6を実現するICMPv6部151を含む。ICMPv6部151は、ICMPv6パケットの生成、ICMPv6パケットの送受信、ICMPv6パケットに関する処理を実行する。なお、図1では、ICMP以外のIPv6を実現する部分は記載省略されている。
【0038】
具体的には、ICMPv6部151は、IPv6ルーティング部120からICMPv6パケットを入力し、ICMPv6パケットにおいて指定されているオプションに応じた処理を実行した後、ICMPv6パケットをIPv6ルーティング部120に返す。また、ICMPv6部151は、プレフィクス保存部170に保存されているプレフィクス情報を定期的に取得する。ICMPv6部151は、そのプレフィクス情報からオプション情報(option)を作成する。ICMPv6部151は、作成したoptionをICMPv6パケットのRAに付加する。ICMPv6部151は、optionが付加されたICMPv6パケットをIPv6ルーティング部120に出力する。ICMPv6部151は、転送すべきでないプレフィクスの削除を示すoptionをICMPv6パケットのRAに付加した場合には、プレフィクス保存部170に、プレフィクスの削除を通知する。
【0039】
次に、図2〜図4の説明図を参照して第1の実施形態のルータ装置の動作を説明する。図2は、発生した事象とプレフィクス保存部に保存される情報との関係の例を示す説明図である。図3は、フィルタ条件の一例を示す説明図である。図4は、RAのoptionのフォーマットを示す説明図である。
【0040】
まず、LAN11に接続されるノードに対してプレフィクスを配付するときの動作を説明する。なお、ノードは、図1において記載省略されているが、図13に示されたノード300に相当する装置である。
【0041】
WAN21側のルータ200(図13参照)は、プレフィクス情報、ネクストホップアドレス、およびDNSアドレスをHGW101に送信する。HGW101は、受信したプレフィクス情報を、LAN11に接続されているノードに送信する。
【0042】
ルータ200は、プレフィクス情報をHGW101に配付するときに、DHCPv6を使用する。HGW101は、プレフィクス情報をノードに送信するときに、DHCPv6を使用する。
【0043】
HGW101において、DHCPv6クライアント部140は、DHCPv6−PDで通知されたプレフィクス情報をプレフィクス管理部160に出力する。DHCPv6−PDで通知された情報で指定されるプレフィクスは、”Prefix110 ”であるとする。
【0044】
プレフィクス管理部160は、受信されたプレフィクス情報にもとづく”Prefix110 ”と「0」にセットされた削除フラグとをプレフィクス保存部170に出力する。図2において「WAN側のルータからPrefix110 が通知された」の行に示されるように、プレフィクス保存部170は、”Prefix110 ”と値が「0」である削除フラグとを保存する。
【0045】
また、プレフィクス制御部161は、プレフィクス情報を入力したときに、フィルタ条件(図3参照)を作成する。プレフィクス管理部160は、作成されたフィルタ条件をフィルタ部130に出力する。フィルタ部130は、フィルタ条件を記憶する。なお、プレフィクス制御部161は、複数のプレフィクス情報を受信した場合には、それぞれのプレフィクス情報に対応するフィルタ条件と削除フラグとを作成する。プレフィクス管理部160は、作成された複数のフィルタ条件および削除フラグをフィルタ部130に出力する。
【0046】
ICMPv6部151は、プレフィクス保存部170に保存されているプレフィクス情報を定期的に取得する。図2に示された例では、プレフィクス保存部170には、プレフィクス情報として”Prefix110 ”のみが保存されている(「WAN側のルータからPrefix110 が通知された」の行を参照)。ICMPv6部151は、RAパケットのoptionに”Prefix110 ”を付加する。ICMPv6部151は、optionが付加されたRAパケットをIPv6ルーティング部120に出力する。IPv6ルーティング部120は、RAパケットをIPv6部111に出力する。RAパケットは、LANインタフェース部110およびLAN11を介してノードに送信される。
【0047】
その後、ノードは、受信したRAパケットのoptionに付加されている”Prefix110 ”を利用してステートレスアドレス自動生成処理を実行してIPアドレスを生成する。ノードは、生成したIPアドレスを用いて、ノード200(図13参照)およびインターネット400を介して他の装置と通信を行う。
【0048】
図3に例示されるフィルタ条件が使用される場合には、LAN11側からWAN21側に向かうIPv6パケットを対象として、送信元アドレス(SrcIP アドレス)のプレフィクスがノードに配付されているプレフィクス(この例では、”Prefix110 ”)でないときに、当該IPv6パケットが廃棄される。なお、図3に示される例では、フィルタ条件には、パケットが廃棄されたときに、送信元アドレスがプレフィクス管理部160に通知されることを示す情報が付加されている。また、フィルタ条件において、宛先アドレス(DstIP アドレス)は問題にされないことが示されている。
【0049】
次に、プレフィクスが変更されたときにルータ装置101の動作を説明する。ルータ200が、プレフィクスを、”Prefix110 ”から”Prefix111 ”に変更したとする。その場合、ルータ200は、HGW101に、新たなプレフィクスである”Prefix111 ”をDHCPv6−PDで通知する。
【0050】
HGW101において、DHCPv6クライアント部140は、DHCPv6−PDで通知されたプレフィクス情報をプレフィクス管理部160に出力する。DHCPv6−PDで通知された情報で指定されるプレフィクスは、”Prefix111 ”である。
【0051】
プレフィクス管理部160において、プレフィクス制御部161は、”Prefix111 ”に変更される前のプレフィクスである”Prefix110 ”に対応する削除フラグの値を「1」にする指示をプレフィクス保存部170に出力する。また、プレフィクス制御部161は、受信されたプレフィクス情報にもとづく”Prefix111 ”と「0」にセットされた削除フラグとをプレフィクス保存部170に出力する。図2において「WAN側のルータがプレフィクスを変更した」の行に示されるように、プレフィクス保存部170は、”Prefix110 ”に対応する削除フラグの値を「1」にし、かつ、”Prefix111 ”と値が「0」である削除フラグを保存する。
【0052】
また、プレフィクス制御部161は、”Prefix111 ”のプレフィクス情報が受信されたときに、フィルタ条件を作成する。プレフィクス管理部160は、フィルタ部130に対してフィルタ条件の削除指令を出す。この例では、削除指令の対象は、”Prefix110 ”に関するフィルタ条件である。また、プレフィクス管理部160は、作成された新たなフィルタ条件をフィルタ部130に出力する。フィルタ部130は、新たなフィルタ条件を記憶する。フィルタ部130が記憶するフィルタ条件は、図3に例示されたフィルタ条件で表されるが、この段階では、「HGW101がノードに配付していないプレフィクスを含むIPアドレス」は、”Prefix111 ”以外のプレフィクスを含むIPアドレスである。
【0053】
ICMPv6部151は、プレフィクス保存部170に保存されているプレフィクス情報を定期的に取得する。「WAN側のルータからPrefix110 が通知された」の行が有効であるときには(図2参照)、プレフィクス保存部170には、プレフィクス情報として”Prefix110 ”と”Prefix111 ”とが保存されている。”Prefix111 ”に対応する削除フラグの値は「0」であるが、”Prefix110 ”に対応する削除フラグの値は「1」である。そこで、ICMPv6部151は、RAパケットのoptionに”Prefix110 ”の削除を示すデータと、”Prefix110 ”の配付を示すデータとを付加する。ICMPv6部151は、optionが付加されたRAパケットをIPv6ルーティング部120に出力する。IPv6ルーティング部120は、RAパケットをIPv6部111に出力する。RAパケットは、LANインタフェース部110およびLAN11を介してノードに送信される。
【0054】
また、ICMPv6部151は、”Prefix110 ”の削除を示すデータと、”Prefix111 ”の配付を示すデータとが付加されたRAパケットが送信されたことを、プレフィクス保存部170に通知する。
【0055】
プレフィクス保存部170は、通知を受けると、”Prefix110 ”に関する情報を削除する。よって、図2における「RA送信後」の行に示されるように、プレフィクス情報として”Prefix111 ”のみが保存される。
【0056】
LAN11がイーサネット(登録商標)である場合など、パケットの到達性が保証されない場合には、ノードが、”Prefix110 ”の削除を示すoptionを含むパケットを受信できないことがある。ノードは、”Prefix110 ”の削除を示すoptionを含むパケットを受信できない場合には、プレフィクスとして”Prefix110 ”を保持し続ける。よって、ノードは、使用が禁止されるべき”Prefix110 ”を使用して、NGW101、ルータ200およびインターネット400と通信を行う。
【0057】
HGW101が再起動された場合にも、ノードが、使用が禁止されるべきプレフィクスを使用して通信を行う状況が発生しうる。HGW101がノードに”Prefix110 ”を配付した後、HGW101が再起動され、再起動された後にルータ200からプレフィクスとして”Prefix111 ”が送信された時点では、ルータ200およびHGW101はプレフィクスは”Prefix111 ”であると認識している。しかし、ノードには”Prefix110 ”が保持されている。その状況では、ノードは、プレフィクスとして、送信すべきでない”Prefix110 ”を送信する。
【0058】
次に、ノードが送信すべきでないプレフィクスを送信したときにHGW101の動作を説明する。なお、ノードがプレフィクスは”Prefix110 ”であると認識し、HGW101がプレフィクスは”Prefix111 ”であると認識している場合を例にする。すなわち、プレフィクス保存部170は、”Prefix111 ”とそれに対応する「0」の削除フラグとを保持する。
【0059】
HGW101は、LAN11を介して、ノードから送信されたパケットを受信する。HGW101において、パケットは、LANインタフェース部110、IPv6部111およびIPv6ルーティング部120を通過する。そして、フィルタ部130が、パケットを入力する。パケットに設定されている送信元アドレスのプレフィクスは、”Prefix110 ”である。フィルタ部130は、”Prefix111 ”がHGW101によって配付されたプレフィクスであるとするフィルタ条件を記憶している。送信元アドレスのプレフィクスは、”Prefix111 ”とは異なるので、フィルタ条件が満たされる。
【0060】
そこで、フィルタ部130は、入力したパケットを廃棄する。また、フィルタ部130は、そのパケットに設定されていた送信元アドレスをプレフィクス管理部160に通知する。
【0061】
プレフィクス管理部160は、送信元アドレスからプレフィクスを取得できる。なお、本実施形態では、プレフィクス長は64ビットであるから、プレフィクス管理部160は、送信元アドレスの先頭の64ビットのデータを抜き出し、抜き出したデータをプレフィクスであると認識する。
【0062】
この例では、パケットに設定されていた送信元アドレスは、 ”Prefix110 ”である。”Prefix110 ”は使用されるべきではないプレフィクスであるから、プレフィクス制御部161は、値が「1」である削除フラグを作成する。プレフィクス管理部160は、”Prefix110 ”と、プレフィクス制御部161が作成した削除フラグとをプレフィクス保存部170に出力する。プレフィクス保存部170は、”Prefix110 ”と値が「1」である削除フラグとを保存する。
【0063】
以上の処理によって、プレフィクス保存部170には、図2において「WAN側のルータがプレフィクスを変更した」の行に示されるように、”Prefix110 ”に対応する削除フラグの値を「1」にし、かつ、”Prefix111 ”と値が「0」である削除フラグとが、プレフィクス情報として保存される。
【0064】
ICMPv6部151は、プレフィクス保存部170に保存されているプレフィクス情報を定期的に取得する。ICMPv6部151は、そのプレフィクス情報からoptionを作成する。ICMPv6部151は、作成したoptionをICMPv6パケットのRAに付加する。
【0065】
図4は、RAのoptionのフォーマットを示す説明図である。ICMPv6部151は、optionにおける「タイプ」に「3」を設定し、「データ長」に「4」を設定し、「プレフィクス長」に「64ビット」を設定する。なお、「L」は同一リンクフラグ、「A」はアドレス設定フラグである。
【0066】
また、ICMPv6部151は、「有効期間(valid lifetime)」に「0」を設定し、「推奨期間(preferred lifetime)」に「0」を設定する。ICMPv6部151は、「プレフィクス(prefix)」に、削除対象であるプレフィクス(この例では、”Prefix110 ”)を設定する。
【0067】
なお、ルータ装置は、一般に、ノードに対して、配付したプレフィクスの「valid lifetime」および「preferred lifetime」に有効な時間が設定されたRAパケットを、定期的に送信することによって、プレフィクスの有効期間を更新する。
【0068】
本実施形態では、プレフィクス保存部170に削除フラグも保存されているので、ICMPv6部151は、プレフィクス保存部170に保存されているプレフィクスが使用可能であるか否かを容易に判定できる。
【0069】
上述したように、ICMPv6部151は、プレフィクス保存部170に保存されているプレフィクス情報を定期的に取得する。ICMPv6部151は、取得したプレフィクス情報にもとづいてRAパケットを作成してノードに送信する。HGW101は、定期的に送信するRAパケットを用いた確認動作を利用して、プレフィクスの配付とプレフィクスの更新(具体的には、削除)とを行う。本実施形態では、具体的には、ICMPv6部151は、削除対象である”Prefix110 ”を削除するためのoptionを作成し、”Prefix111 ”を配付するためのoptionを作成する。そして、IPv6ホスト部150は、ICMPv6部151が作成したoptionが付加されたRAパケットをIPv6ルーティング部120に出力する。
【0070】
RAパケットは、IPv6ルーティング部120でルーティングされ、IPv6部111、LANインタフェース部110およびLAN11を介してノードに送信される。ノードは、受信したRAパケットにもとづいて、”Prefix110 ”が使用不可であり、”Prefix111 ”を使用すべきであることを認識する。
【0071】
その後、ノードは、受信したRAパケットのoptionに付加されている”Prefix111 ”を利用してステートレスアドレス自動生成処理を実行してIPアドレスを生成する。ノードは、生成したIPアドレスを用いて、ノード200(図13参照)およびインターネット400を介して通信を行う。
【0072】
以上のような処理を経て、ノードは、保持していた”Prefix110 ”を無効にすることができる。すなわち、削除対象であるプレフィクス(使用不可のプレフィクス)を特定可能なオプション情報を含むRAパケットを受信したノードは、特定されたプレフィクスを削除する。
【0073】
以上に説明されたように、本実施形態では、HGW101が、RAパケットのoptionを利用して、ノードに、送信すべきでないプレフィクスを無効にさせることができる。具体的には、HGW101は、送信すべきでないに”Prefix110 ”関して、optionにおける「valid lifetime」および「preferred lifetime」が「0」に設定されたRAパケットを送信する。
【0074】
また、HGW101は、ルータ200(図13参照)から通知されていないプレフィクスを含むノードからのパケットを廃棄するので、共通の送信元アドレスを含むパケットが複数のノードからルータ200に送信される状況の発生は回避される。
【0075】
一般に、ルータ200は、DHCP−PD機能にもとづいてHGW101に新たなプレフィクス(例えば、”Prefix111 ”)を配付した後、旧プレフィクス(例えば、”Prefix110 ”)を他のルータ装置に配付できる。旧プレフィクスを他のルータ装置に配付した後、HGW101にLAN11で接続されるノードが旧プレフィクスを使用すると、共通の送信元アドレスを含むパケットが複数のノードからルータ200に送信されることになる。
【0076】
しかし、本実施形態のHGW101を使用する場合には、共通の送信元アドレスを含むパケットが複数のノードからルータ200に送信される状況の発生を回避できる。
【0077】
本実施形態では、HGW101は、ノードから受信したパケットに含まれる送信元IPアドレスと、上位のルータ200から送信されたプレフィクスとを比較することによって、ノードから受信したパケットが転送されるべきパケットであるか否か判断する。HGW101は、ノードから受信したパケットが転送されるべきではないパケットであると判断した場合に、パケットを廃棄する。よって、使用不可のプレフィクスにもとづく送信元IPアドレスを含むパケットがインターネットに送信されることが防止される。
【0078】
また、HGW101は、ノードに、使用できないプレフィクスの削除の指示と、ノード200から通知された新たなプレフィクスとを示すオプション情報を含むRAパケットを送信する。そのようなRAパケットを受信したノードは、使用できないプレフィクスを削除できるとともに、新たなプレフィクスを使用してルータ200およびインターネットを介する装置と通信できる状態に迅速に移行できる。
【0079】
実施形態2.
図5は、本発明によるルータ装置の第2の実施形態を示すブロック図である。図5には、ルータ装置の一例としてHGW102が示されている。HGW102を含む通信システムの構成は、図13に示された例と同じでよい。
【0080】
図1に示された第1の実施形態では、HGW101において、フィルタ部130は、IPv6ルーティング部120とIPv6部112との間に配置されていた。本実施形態では、図5に示されるように、フィルタ部130は、IPv6部111とIPv6ルーティング部120との間に配置されている。
【0081】
なお、HGW102における各ブロックが実行する処理は、HGW101における各ブロックが実行する処理と同じである。
【0082】
図6は、フィルタ条件の一例を示す説明図である。本実施形態では、DHCP−PD機能にもとづいてノード200(図13参照)がHGW102に”Prefix110 ”を配付した後、ノード200がプレフィクスを”Prefix111 ”に変更したとする。よって、ICMPv6部151は、”Prefix110 ”の削除を示すデータと、”Prefix111 ”の配付を示すデータとが付加されたRAパケットが送信されたことを、プレフィクス保存部170に通知する。プレフィクス保存部170は、図2における「RA送信後」の行に示されるように、”Prefix110 ”が削除され”Prefix111 ”のみが設定されているプレフィクス情報を保存する。
【0083】
また、HGW102がプレフィクスが”Prefix111 ”であると認識しているが、ノードは、”Prefix110 ”の削除を示すoptionを含むパケットを受信できなかったことに起因して、プレフィクスが”Prefix110 ”であると認識している場合を例にする。
【0084】
また、図3に示されたように第1の実施形態ではIPv6ルーティング部120からIPv6部112に向かうプレフィクスが規制されたが、本実施形態では、図6に示されるように、IPv6部111からIPv6ルーティング部120に向かうプレフィクスが規制される。
【0085】
次に、HGW102の動作を説明する。
【0086】
HGW102において、LAN11を介してノードから送信されたパケットは、LANインタフェース部110およびIPv6部111を経由して、フィルタ部130に入力される。第1の実施形態では、パケットはIPv6部111からIPv6ルーティング部120に入力された。本実施形態では、フィルタ部130がIPv6ルーティング部120の前段(LAN側)に配置されているので、ルーティング処理の前にフィルタ処理が実行される。
【0087】
この例では、ノードからのIPアドレスにおけるプレフィクスは、”Prefix110 ”である。よって、フィルタ条件が満たされる。そこで、フィルタ部130は、パケットを廃棄する。また、フィルタ部130は、そのパケットに設定されていた送信元アドレスをプレフィクス管理部160に通知する。
【0088】
プレフィクス管理部160は、送信元アドレスを解析する。プレフィクス管理部160は、送信元アドレスから”Prefix110 ”を認識する。”Prefix110 ”は使用されるべきではないプレフィクスであるから、第1の実施形態の場合と同様に、プレフィクス制御部161は、値が「1」である削除フラグを作成する。プレフィクス管理部160は、”Prefix110 ”と、プレフィクス制御部161が作成した削除フラグとをプレフィクス保存部170に出力する。プレフィクス保存部170は、”Prefix110 ”と値が「1」である削除フラグとを保存する。
【0089】
ICMPv6部151は、プレフィクス保存部170に保存されているプレフィクス情報を定期的に取得する。ICMPv6部151は、そのプレフィクス情報からオプション情報(option)を作成する。ICMPv6部151は、作成したoptionをICMPv6パケットのRAに付加する。
【0090】
RAパケットは、IPv6ルーティング部120でルーティングされ、フィルタ部130、IPv6部111、LANインタフェース部110およびLAN11を介してノードに送信される。ノードは、受信したRAパケットにもとづいて、”Prefix110 ”が使用不可であり、”Prefix111 ”を使用すべきであることを認識する。
【0091】
第1の実施形態では、IPv6ルーティング部120の後段(WAN側)にフィルタ部130が配置されているので、ノードから入力したパケットは一度ルーティングされる。そして、フィルタ部130は、WAN側に向かうパケットのみを対象にしてフィルタ処理を実行する。本実施形態では、フィルタ部130がIPv6ルーティング部120の前段に配置されているので、ルーティング処理の前にフィルタ処理が実行される。よって、フィルタ部130は、LAN内でルーティングされるパケットに対してもフィルタ処理を実行できる。すなわち、本実施形態では、第1の実施形態による効果に加えて、LAN内でルーティングされるパケットにもとづいて、パケットの転送を禁止でき、かつ、プレフィクス更新のためのRAパケットを送信できるという効果が得られる。
【0092】
実施形態3.
図7は、本発明によるルータ装置の第3の実施形態を示すブロック図である。図7には、ルータ装置の一例としてHGW103が示されている。HGW103を含む通信システムの構成は、図13に示された例と同じでよい。
【0093】
HGW103における各ブロックが実行する処理は、HGW101,102における各ブロックが実行する処理と同じである。
【0094】
第1の実施形態および第2の実施形態では、HGW101,102において、IPv6ホスト部150におけるICMPv6部151が、プレフィクス保存部170に保存されているプレフィクス情報を定期的に取得する。そして、ICMPv6部151が、取得したプレフィクス情報にもとづいてRAパケットを作成してノードに送信する。すなわち、HGW101,102は、定期的に送信するRAパケットを用いた確認動作を利用して、プレフィクスの配付とプレフィクスの更新(具体的には、削除)とを行う。
【0095】
本実施形態では、IPv6ホスト部150は、ノード200(図13参照)からプレフィクスの削除通知が受信されたときに、直ちに、ノードに対してプレフィクスの削除を実行させるための処理を行う。
【0096】
以下、HGW103の動作を説明する。
【0097】
本実施形態では、DHCP−PD機能にもとづいてノード200(図13参照)がHGW103に”Prefix110 ”を配付した後、ノード200がプレフィクスを”Prefix111 ”に変更したとする。よって、ICMPv6部151は、”Prefix110 ”の削除を示すデータと、”Prefix111 ”の配付を示すデータとが付加されたRAパケットが送信されたことを、プレフィクス保存部170に通知する。プレフィクス保存部170は、図2における「RA送信後」の行に示されるように、”Prefix110 ”が削除され”Prefix111 ”のみが設定されているプレフィクス情報を保存する。
【0098】
また、HGW102がプレフィクスが”Prefix111 ”であると認識しているが、ノードは、”Prefix110 ”の削除を示すoptionを含むパケットを受信できなかったことに起因して、プレフィクスが”Prefix110 ”であると認識している場合を例にする。
【0099】
ノードからのIPアドレスにおけるプレフィクスは、”Prefix110 ”である。よって、フィルタ条件が満たされる。そこで、フィルタ部130は、パケットを廃棄する。また、フィルタ部130は、そのパケットに設定されていた送信元アドレスをプレフィクス管理部160に通知する。
【0100】
プレフィクス管理部160は、送信元アドレスを解析する。プレフィクス管理部160は、送信元アドレスから”Prefix110 ”を認識する。プレフィクス制御部161は、送信元アドレスから”Prefix110 ”が認識されたときに、フィルタ条件を作成する。プレフィクス管理部160は、作成されたフィルタ条件をフィルタ部130に出力する。フィルタ部130は、フィルタ条件を記憶する。
【0101】
図8は、本実施形態におけるフィルタ条件の一例を示す説明図である。本実施形態では、プレフィクス管理部160は、図8に示されるように、フィルタ部130が廃棄したパケットに含まれていたプレフィクス(この例では、”Prefix110 ”)に関する条件が付加されたフィルタ条件を作成する(図8における2行目参照)。
【0102】
その後、フィルタ部130は、フィルタ条件に従ってフィルタ処理を実行する。フィルタ部130は、図8の2行目に設定されている条件に合致するパケットが受信されると、パケットを廃棄する。また、フィルタ部130は、パケットを廃棄したことをプレフィクス管理部160に通知する。
【0103】
プレフィクス管理部160において、プレフィクス制御部161は、値が「1」である削除フラグを作成する。プレフィクス管理部160は、”Prefix110 ”と、プレフィクス制御部161が作成した削除フラグとをプレフィクス保存部170に出力する。プレフィクス保存部170は、”Prefix110 ”と値が「1」である削除フラグとを保存する。すなわち、プレフィクス保存部170には、図2において「WAN側のルータがプレフィクスを変更した」の行に示されるように、”Prefix110 ”に対応する削除フラグの値を「1」にし、かつ、”Prefix111 ”と値が「0」である削除フラグを保存する。
【0104】
また、プレフィクス管理部160は、パケットを廃棄したことが通知されたときに、ICMPv6部151に削除命令を出力する。
【0105】
ICMPv6部151は、削除命令を入力すると、直ちに、プレフィクス保存部170に保存されているプレフィクス情報を取得する。ICMPv6部151は、そのプレフィクス情報からオプション情報(option)を作成する。具体的には、ICMPv6部151は、プレフィクス情報において値が「1」である削除フラグに対応するプレフィクス(この例では、”Prefix110 ”)を、RAのoptionに設定する。ICMPv6部151は、作成したoptionをICMPv6パケットのRAに付加する。
【0106】
RAパケットは、IPv6ルーティング部120でルーティングされ、IPv6部111、LANインタフェース部110およびLAN11を介してノードに送信される。ノードは、受信したRAパケットにもとづいて、”Prefix110 ”が使用不可であることを認識する。
【0107】
本実施形態では、プレフィクス管理部160が削除命令を出力すると、ICMPv6部151は、直ちに、プレフィクス保存部170に保存されているプレフィクス情報を確認する。よって、ICMPv6部151が定期的にプレフィクス保存部170に保存されているプレフィクス情報を確認する場合に比べて、より早く、ノードに使用不可のプレフィクスが伝達される。すなわち、本実施形態では、第1の実施形態による効果に加えて、速やかに、ノードを、使用不可であるプレフィクスを使用しない状態に設定できるという効果を得ることができる。
【0108】
なお、図7に示されたHGW103は、図1に示されたHGW101を基本にして構成されているが、図5に示されたようにフィルタ部130がIPv6部111とIPv6ルーティング部120との間に配置されているHGW102を基本にして構成されてもよい。
【0109】
また、HGW101,102,103において、LANインタフェース部110およびWAN委部180以外のブロックの機能は、プログラムに従って制御を行うCPUとメモリとで実現可能である。
【0110】
また、上記の各実施形態では、ルータ装置としてHGWが例にされたが、本発明を適用可能なルータ装置は、HGWに限られない。
【0111】
図9は、本発明によるルータ装置の主要部を示すブロック図である。図9に示すように、ルータ装置1は、プレフィクス配付装置2(一例として、図13に示されたルータ200)から配付されたプレフィクスと、ノード3(一例として、図13に示されたノード300)から受信した送信元IPアドレスにおけるプレフィクスとにもとづいて、ノード3からのパケットの通過または遮断の条件を含むフィルタ条件を作成するプレフィクス管理部5(一例として、図1、図5および図7のそれぞれに示されたプレフィクス管理部160)と、プレフィクス管理部5が作成したフィルタ条件に従って、ノードからのパケットを通過させるかまたは遮断するフィルタ部6(一例として、図1、図5および図7のそれぞれに示されたフィルタ部130)とを備えている。
【0112】
上記の各実施形態には、以下のようなルータ装置も開示されている。
【0113】
(1)フィルタ部6が、受信されたパケットがフィルタ条件におけるパケットを遮断する条件に合致した場合に当該パケットを廃棄し、かつ、廃棄したパケットの送信元IPアドレスをプレフィクス管理部5に通知し、プレフィクス管理部5が、通知された送信元IPアドレスに含まれるプレフィクスが、使用不能であって削除されるべきプレフィクスであると決定するルータ装置。
【0114】
(2)図10に示すように、プレフィクスを、当該プレフィクスが使用可能であるか否かを判別するために用いられる判別データ(一例として、削除データ)とともに保存するプレフィクス保存部7(一例として、図1、図5および図7のそれぞれに示されたプレフィクス保存部170)を備えたルータ装置。
【0115】
(3)図11に示すように、プレフィクス保存部7に保存されている内容を定期的に確認し、プレフィクス保存部7に保存されているプレフィクスと判別データとを元にプレフィクスの使用可または使用不可を特定可能なRAパケットのオプション情報を作成し、作成したオプション情報を含むRAパケットをノードに送信するRA送信部8を備えたルータ装置。
【0116】
(4)RA送信部8が、フィルタ部6がパケットを廃棄したときに、直ちに、当該パケットの送信元IPアドレスに含まれるプレフィクスが使用不可であることを特定可能なオプション情報を含むRAパケットをノード3に送信するルータ装置。
【0117】
(5)プレフィクス管理部5が、プレフィクス配付装置2からプレフィクスが配付されたときに当該プレフィクスに対応する判別データを使用可能であることを示す値にし、プレフィクス配付装置2から新たなプレフィクスが配付されたときに、既に配付されていたプレフィクスに対応する判別データを使用不可であることを示す値に変更するルータ装置。
【0118】
図12は、本発明によるルータ装置の動作を示すフローチャートである。すなわち、本発明によるパケット制御方法における処理を示すフローチャートである。図12に示すように、ルータ装置は、プレフィクス配付装置から配付されたプレフィクスと、ノードから受信した送信元IPアドレスにおけるプレフィクスとにもとづいて、ノードからのパケットの通過または遮断の条件を含むフィルタ条件を作成する工程(ステップS1)と、作成されたフィルタ条件に従って、ノードからのパケットを通過させるかまたは遮断する工程(ステップS2)とを含むことを特徴とする。
【0119】
上記の各実施形態には、以下のようなパケット制御方法も開示されている。
【0120】
(6)パケットを通過させるかまたは遮断する工程に、受信されたパケットがフィルタ条件におけるパケットを遮断する条件に合致した場合に当該パケットを廃棄し、かつ、廃棄したパケットの送信元IPアドレスに含まれるプレフィクスを、使用不能であって削除されるべきプレフィクスであると決定する工程が含まれるパケット制御方法。
【0121】
(7)プレフィクスを、当該プレフィクスが使用可能であるか否かを判別するために用いられる判別データとともにプレフィクス保存部に保存する工程を含むパケット制御方法。
【0122】
(8)プレフィクス保存部に保存されている内容を定期的に確認し、プレフィクス保存部に保存されているプレフィクスと判別データとを元にプレフィクスの使用可または使用不可を特定可能なRAパケットのオプション情報を作成し、作成したオプション情報を含むRAパケットをノードに送信する工程を含むパケット制御方法。
【0123】
(9)ノードから受信したパケットを廃棄したときに、直ちに、当該パケットの送信元IPアドレスに含まれるプレフィクスが使用不可であることを特定可能なオプション情報を含むRAパケットをノードに送信する工程を含むパケット制御方法。
【0124】
(10)プレフィクス配付装置からプレフィクスが配付されたときに当該プレフィクスに対応する判別データを使用可能であることを示す値にし、プレフィクス配付装置から新たなプレフィクスが配付されたときに、既に配付されていたプレフィクスに対応する判別データを使用不可であることを示す値に変更する工程を含むパケット制御方法。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、上位のルータ等からルータ装置にプレフィクスが配付され、ルータ装置が下位のノード装置にプレフィクスを再配布する、一般的なIPv6インターネット接続サービス環境において、好適に使用可能である。
【符号の説明】
【0126】
1 ルータ装置
2 プレフィクス配付装置
3 ノード
5 プレフィクス管理部
6 フィルタ部
7 プレフィクス保存部
8 RA送信部
11 LAN
21 WAM
101,102,103 ホームゲートウェイ(HGW)
110 LANインタフェース部
111 IPv6部
120 IPv6ルーティング部
130 フィルタ部
140 DHCPv6クライアント部
150 IPv6ホスト部
151 ICMPv6部
160 プレフィクス管理部
161 プレフィクス制御部
170 プレフィクス保存部
180 WANインタフェース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレフィクス配付装置から配付されたプレフィクスをノードに再配付し、IPv6アドレスにもとづいてパケットのルーティングを行うルータ装置であって、
前記プレフィクス配付装置から配付されたプレフィクスと、前記ノードから受信した送信元IPアドレスにおけるプレフィクスとにもとづいて、前記ノードからのパケットの通過または遮断の条件を含むフィルタ条件を作成するプレフィクス管理部と、
前記プレフィクス管理部が作成したフィルタ条件に従って、前記ノードからのパケットを通過させるかまたは遮断するフィルタ部とを備えた
ことを特徴とするルータ装置。
【請求項2】
フィルタ部は、受信されたパケットがフィルタ条件におけるパケットを遮断する条件に合致した場合に当該パケットを廃棄し、かつ、廃棄したパケットの送信元IPアドレスをプレフィクス管理部に通知し、
前記プレフィクス管理部は、通知された送信元IPアドレスに含まれるプレフィクスが、使用不能であって削除されるべきプレフィクスであると決定する
請求項1記載のルータ装置。
【請求項3】
プレフィクスを、当該プレフィクスが使用可能であるか否かを判別するために用いられる判別データとともに保存するプレフィクス保存部を備えた
請求項1または請求項2記載のルータ装置。
【請求項4】
プレフィクス保存部に保存されている内容を定期的に確認し、前記プレフィクス保存部に保存されているプレフィクスと判別データとを元にプレフィクスの使用可または使用不可を特定可能なRAパケットのオプション情報を作成し、作成したオプション情報を含むRAパケットをノードに送信するRA送信部を備えた
請求項3記載のルータ装置。
【請求項5】
RA送信部は、フィルタ部がパケットを廃棄したときに、直ちに、当該パケットの送信元IPアドレスに含まれるプレフィクスが使用不可であることを特定可能なオプション情報を含むRAパケットをノードに送信する
請求項4記載のルータ装置。
【請求項6】
プレフィクス管理部は、プレフィクス配付装置からプレフィクスが配付されたときに当該プレフィクスに対応する判別データを使用可能であることを示す値にし、前記プレフィクス配付装置から新たなプレフィクスが配付されたときに、既に配付されていたプレフィクスに対応する判別データを使用不可であることを示す値に変更する
請求項3から請求項5のうちのいずれか1項に記載のルータ装置。
【請求項7】
プレフィクス配付装置から配付されたプレフィクスをノードに再配付し、IPv6アドレスにもとづいてパケットのルーティングを行うルータ装置で実行されるプレフィクス管理にもとづくパケット制御方法であって、
前記プレフィクス配付装置から配付されたプレフィクスと、前記ノードから受信した送信元IPアドレスにおけるプレフィクスとにもとづいて、前記ノードからのパケットの通過または遮断の条件を含むフィルタ条件を作成し、
作成されたフィルタ条件に従って、前記ノードからのパケットを通過させるかまたは遮断する
ことを特徴とするプレフィクス管理にもとづくパケット制御方法。
【請求項8】
受信されたパケットがフィルタ条件におけるパケットを遮断する条件に合致した場合に当該パケットを廃棄し、かつ、廃棄したパケットの送信元IPアドレスに含まれるプレフィクスを、使用不能であって削除されるべきプレフィクスであると決定する
請求項7記載のプレフィクス管理にもとづくパケット制御方法。
【請求項9】
プレフィクス配付装置から配付されたプレフィクスをノードに再配付し、IPv6アドレスにもとづいてパケットのルーティングを行うルータ装置に搭載されるプレフィクス管理にもとづくパケット制御プログラムであって、
前記ルータ装置におけるコンピュータに、
前記プレフィクス配付装置から配付されたプレフィクスと、前記ノードから受信した送信元IPアドレスにおけるプレフィクスとにもとづいて、前記ノードからのパケットの通過または遮断の条件を含むフィルタ条件を作成する処理と、
作成されたフィルタ条件に従って、前記ノードからのパケットを通過させるかまたは遮断する処理と
を実行させるためのプレフィクス管理にもとづくパケット制御プログラム。
【請求項10】
コンピュータに、
受信されたパケットがフィルタ条件におけるパケットを遮断する条件に合致した場合に当該パケットを廃棄し、かつ、廃棄したパケットの送信元IPアドレスに含まれるプレフィクスを、使用不能であって削除されるべきプレフィクスであると決定する処理を実行させるための請求項9記載のプレフィクス管理にもとづくパケット制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−175676(P2012−175676A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38873(P2011−38873)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】