説明

ルーバ装置

【課題】温室、大面積のガラス屋根等の遮光制御装置として適した展開・折畳み収納可能な可動のルーバ装置を提供する。
【解決手段】可撓性および弾性を有する薄板材で形成されたシート状材を複数の帯状部12の側縁部が交互に屈曲したつづら折状に形成し、これら帯状部には一方の側縁部から他方の側縁部にわたって複数のスリット線41を形成して複数の羽根部42を形成してルーバ本体11を構成し、展開・収納機構20によりこのつづら折状のルーバ本体11をプリーツカーテン状に展開および折り畳み収納し、羽根部の開閉機構30により上記のルーバ本体11の帯状部12の互いに隣接する側縁部をルーバ本体の面方向に互いに反対の方向に相対的に移動させて羽根部42を回動開閉させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可動のルーバ装置に関する。さらに特定すれば、本発明は薄いシート状材料をつづら折状に形成し、展開・折り畳み収納可能な可動ルーバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、二酸化炭素の排出規制が強化され、省エネルギーの一環として建物等の窓や天窓などの開口部の遮光が重要視されている。たとえば、夏季における建物の冷房負荷のうち、日射熱の入力が大きな比重を占めており、この日射熱の遮蔽が大きな問題となっている。また、最近ではオフィス等において、省エネルギーのために、窓、壁近傍のいわゆるペリメータ領域に対して特別な空調設計をしないペリメータレスの設計がなされており、この場合には窓、開口部の日射熱遮蔽が大きな問題となる。
【0003】
日射熱の遮蔽の手段としては、日射熱を吸収または反射する膜を窓ガラスに被覆する方法があるが、吸収率または反射率を大きくすると、当然ガラスが黒くなり、室内が暗く、また圧迫感が強くなる等の不具合がある。
【0004】
また、最近では農業の近代化のため機能性の高い温室が普及しつつある。温室の目的としては、内部の日射、気温を作物に適した状態に維持することであり、夏季の遮光や冬季夜間の保温を必要とする。このため遮光シートおよび保温シートを屋根の内側に沿って展開または巻き込み収容自在とした温室がある。しかし、このような温室は構造が複雑でコストが高くなるとともに、日射制御も直射か、遮光シートによる一定の遮光率の2段階の日射制御しかできないという問題もある。
【0005】
これら窓または屋根からの日射や放射の制御手段としてブラインド装置がある。このブラインド装置は、夏季等の太陽高度の高い場合にはブラインド羽根の角度を水平近くの角度にしても日射の遮蔽ができ、直射日光以外の光を室内に取り入れることができ、かつ窓の外の視認性が高く、圧迫感が軽減され、遮光装置としては好ましい。しかし、このブラインド装置そのものが日射熱により温度が高くなり、二次輻射または空気の対流により、結局、日射熱が室内に入力される。また、ブラインドははしご紐で羽根を吊るした構造であるため、鉛直にしか配置できず、温室等の傾斜した屋根の内側に沿って配置することはできない。
【0006】
特許文献1に示すように、二重の窓ガラスの間にブラインドを配置し、これらの窓ガラスの間の空気を換気することにより、室内への熱の侵入を防止するものがある。しかし、このものは、特別の二重窓を設けなければならず、窓全体が厚く、構造が複雑となり、特に既存の建物をリニューアルする場合には大掛かりな改修工事を必要とする。
【0007】
また、特許文献2および特許文献3に開示されているような、複層ガラス窓のガラス間にブラインドまたは可動ルーバ装置等の遮光機構を内蔵させたものがある。このものは、日射熱を効果的に遮蔽でき、かつ外形寸法等は従来の複層ガラス窓と同等に形成できるので工事が簡単であり、また既存の建物の改修の場合でも工事が簡単ですむ。しかし、このような複層ガラス間の間隔はあまり大きくできないので、通常のブラインドやルーバ機構では、その羽根またはスラットの幅を狭くせざるを得ず、これらが自重で撓んでしまう。このため、上記の特許文献2および3のものは、羽根またはスラットを薄い箔板で形成し、スプリングでこれらに張力を与え、これらを直線状に張設している。しかし、これらの羽根またはスラットは、幅が狭いので当然数が多くなり、これらの多数の羽根またはスラットに張力を与え、かつそれぞれ回動させる機構が複雑となり、コストが高くなる。
【0008】
また本発明者は、以前に特許文献4に開示されているようなシート状材を使用したルーバ装置を発明した。このものは、シート状材に多数のスリット線を入れて多数の羽根部分を形成し、このシート状材を一対の可動枠間に張設保持させ、これらの可動枠を回動させてシート状材に面方向のせん断変形を与えるものである。このようにスリットにより複数の羽根部分に分割されたシート状材を面方向にせん断変形させると、各羽根部分の根元部にねじれ変形が発生し、これにより羽根部が回動してこのルーバ装置が開閉する。このものは、構造が簡単で、かつ薄型に形成できるが、シート状材全体の形状をせん断変形(矩形を平行四辺形に、または平行四辺形を矩形に)させねばならず、複層ガラス窓に内蔵させることはできない。また、薄いシート状材で細い幅の羽根部を形成するので、幅の広い場合には羽根部分が風等により振動してしまうので、二重のガラス板間に内蔵させなければならない等の問題もあった。
【0009】
なお、このようなブラインド装置ないしは可動のルーバ装置は、上記のような複層ガラス窓内に内蔵させるものには限らず、温室用、その他の各種の用途があり、また日射熱の遮蔽用に限らず、目隠しその他の制光装置としての用途がある。
【0010】
上記のような問題を解決するため、本発明者は、特願2005−281634号において、強度が大きく、風等によっても羽根部分が振動しないルーバ装置を開発した。このものは、シート状材に所定の間隔で複数の枠部材を取り付け、これら枠部材の間に一方の枠部材から他方の枠部材にわたって複数のスリット線を形成して複数の羽根部を形成し、このシート状材を所定の張力で張設するとともに、互いに隣接する上記の枠部材をルーバ本体の面方向に互いに反対の方向に相対的に移動させてこれらの間の部分のシート状材にせん断変形を与えて羽根部を開閉させ、全体の形状を矩形に維持できるとともに、シート状材の中間部に複数の枠部材が取付けられているので、強度が大きく、風等によっても羽根部分が振動しないものである。
【0011】
しかし、たとえば温室、建築物の天窓、ガラス張りのドームないしはホール等に張設する場合に、このルーバ装置のルーバ本体を交換する等の保守作業のため、また冬季等において日射を100%導入した場合等、このルーバ装置を展開および折畳み収納する必要が生じた。
【特許文献1】特開2003−239657号公報
【特許文献2】特開2002−89154号公報
【特許文献3】特開2004−11389号公報
【特許文献4】特公平7−972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は以上の事情に基づいてなされたもので、可撓性および弾性を有する薄板材で形成されたシート状材を複数の帯状部の側縁部が交互に屈曲したつづら折状に形成され、これら帯状部には一方の側縁部から他方の側縁部にわたって複数のスリット線を形成して複数の羽根部を形成したルーバ本体を形成し、このつづら折状のルーバ本体を展開・折畳み収納可能としたもので、たとえば温室、大面積のガラス屋根の遮光制御装置として特に適したルーバ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の本発明は、可撓性および弾性を有する薄板材で形成されたシート状材を複数の帯状部の側縁部が交互に屈曲したつづら折状に形成し、これら帯状部には一方の側縁部から他方の側縁部にわたって複数のスリット線を形成して複数の羽根部を形成したルーバ本体と、このつづら折状のルーバ本体を展開および折り畳み収納する展開・収納機構と、上記のルーバ本体の帯状部の互いに隣接する側縁部をルーバ本体の面方向に互いに反対の方向に相対的に移動させる羽根部開閉機構とを備えたものである。
【0014】
請求項2に記載の本発明は、前記のルーバ本体は、複数の帯状のシート状材を重ねてその側縁部を交互に接合してつづら折状に形成したものである。
【0015】
請求項3に記載の本発明は、前記のルーバ本体は、シート状材を交互に反対方向に折曲してつづら折状に形成したものである。
【0016】
請求項4に記載の本発明は、前記の複数のスリット線はそれらの両端部近傍において一端部と他端部とで互いに反対方向に屈曲しており、前記の羽根部はその両端部近傍において互いに反対方向に屈曲した屈曲部が形成されているものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の本発明は、可撓性および弾性を有する薄板材で形成されたシート状材を複数の帯状部の側縁部が交互に屈曲したつづら折状に形成されているので、このつづら折状のルーバ本体はプリーツカーテンのように展開および折畳んで収納することができる。
【0018】
そして、展開状態では、各帯状部の側縁の接合部を交互に互いに反対方向に移動させることにより、これらの帯状部がせん断変形(矩形が平行四辺形となるような変形)し、各羽根部の端部がねじれ変形して羽根部が回転して開閉し、遮光率を任意に変更できる可動ルーバとして作用する。また、日射を100%導入する場合には、このつづら折状のルーバ本体をプリーツカーテンのように折畳んで収納する。また、このルーバ本体を交換、補修するような場合にも、このルーバ本体を折畳み状態として保守作業を行えば、作業が容易である。
【0019】
請求項2に記載の本発明は、複数の帯状のシート状材を重ねてその側縁部を交互に接合してつづら折状のルーバ本体を形成したので、この側縁部の接合部分の剛性が高く、展開した場合の支持ガイドワイヤ等の間隔を大きくでき、構造が簡単となる。また、折畳んだ状態では、各帯状部が互いに密着するので、より小さく折畳みが可能である。
【0020】
請求項3に記載の本発明は、シート状材を交互に反対方向に折曲してつづら折状のルーバ本体を形成したので、製造が容易で、大量生産に適する。また、ルーバ本体を構成するシート状材が連続しているので、強度が大きい。
【0021】
請求項4に記載の本発明は、前記の複数のスリット線はそれらの両端部近傍において一端部と他端部とで互いに反対方向に屈曲しているので、羽根部の両端部のねじれ変形が大きく、かつ羽根部の中央部分にねじれ変形が発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図1ないし図14を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。この実施形態は本発明のシート状の折畳み可能な可動ルーバ装置を温室の遮光装置として適用したものであるが、その他、建物やホールの天窓、ガラス屋根の遮光、建物の窓用の遮光機構、オフィス等のパーティーションすなわち間仕切り用、その他の遮光、制光装置にも適用可能なものである。
【0023】
図1は、本発明のルーバ装置を備えた自動化温室である。図中の1は温室であって、ガラス張り、または温室用外被フイルム張りのものである。そして、この温室1の屋根および壁の内側には、本発明の可動のルーバ装置10が取り付けられている。これらのルーバ装置10は、図2に示す平面図のように、ユニット化された複数のルーバ装置を屋根の内側に隙間なく設置したもので、壁の内側にも同様に設置されている。
【0024】
そして、この温室内には、各種のセンサ、たとえば温室内の光量検出器2、温室内の温度検出器3等が設けられ、これらからの信号はこの温室の制御装置4に送られる。そして、これらの信号はこの制御装置4により処理され、上記のルーバ装置10を展開・収納および開閉作動させる。
【0025】
たとえば、通常の場合には、この温室1内で栽培される植物に生育に最適な光量となるようにルーバ装置10を制御する。すなわち、栽培する植物、たとえば葉物野菜、花卉等においては、その品種によりその品質、生育期間等が最も効率的となるような最適の光量があり、外部の日射光量がこれより大きい場合には、上記の光量検出器2で検出される光量がこの最適値となるように、ルーバ装置10の開度を調節する。また、夏季等において、温室内の温度が植物の生育を妨げるまで上昇した場合には、ルーバ装置10の開度を小さくし、日射を遮蔽して温度上昇を防止する。
【0026】
なお、この制御装置4には、プログラム装置5が接続され、栽培する植物の品種に対応した制御プログラムが交換、変更可能となっている。また、この制御装置4には、外部との接続装置6が接続されており、外部または遠隔の端末装置7、たとえば携帯電話に情報を送り、またこの端末から制御可能となっている。また、この制御装置4およびルーバ装置10を作動させるための電源装置8が設置されており、この電源装置8は外部からの商用電源からの電力供給を受けるとともに、万一の停電の場合には内蔵された電池等により、必要な時間独立して電力を供給可能となっている。
【0027】
次に、図3ないし図8を参照してルーバ装置10の構成を説明する。図3は平面図であって、11はルーバ本体である。このルーバ本体11は、ある程度の弾性を有する可撓性のシート状材、たとえば樹脂フイルム・アルミ蒸着膜・樹脂フイルムの3層構造の厚さ36μ程度のフイルム材からなり、図4および図5に示すように、帯状に形成された複数の帯状部12の側縁部を交互に互いに接合し、つづら折状に形成したものである。なお、この実施形態では、剛性と強度を高めるため、各帯状部12の側縁部は骨部材13、14を介在させて接合されている。これらの骨部材13、14は、アルミニウム、ステンレス、あるいは繊維強化樹脂等の材料で形成され、棒状、帯板状のものである。
【0028】
また、このルーバ本体11の両端は、剛性の高い枠部材15、16に接続されている。そして、一方すなわち上方の骨部材14は、固定側すなわち温室1のフレーム等に張り渡されたガイドワイヤ18に案内されて移動するように構成されている。このように案内支持されたルーバ本体11は、展開・収納機構20によって展開および折畳み収納され、また開閉機構30によって展開状態のまま可動ルーバとして開閉し、光の遮光率を任意の値に調整する。
【0029】
次に、図3ないし図5を参照して上記の展開・収納機構20の構成を説明する。上記のルーバ本体11の先端側の枠部材15は、展開・収納機構20によって移動され、これによりルーバ本体11が引き出されて展開される。この展開・収納機構20は、温室のフレーム等に回転自在に支承された対をなすプーリ21、22と、これらの間に張り渡された無端状のワイヤ23と、これら基端側のプーリを正逆両方向に回転駆動する駆動モータ機構24等から構成されている。そして、上記の無端ワイヤ23は、ルーバ本体11の先端側の枠部材15に取り付けられ、また基端側の枠部材16は、このルーバ本体11に張力を与えるためのスプリング17を介して温室のフレーム等に取り付けられている。
【0030】
上記の展開・収納機構20は、上記の駆動モータ機構によりプーリ21を回転させると無端ワイヤ23が走行し、ルーバ本体11の先端部の枠部材15を引き出し、図4に示すようにこのルーバ本体11を展開する。この場合に、上記のスプリング17によって、この展開されたルーバ本体11に所定の張力が与えられる。
【0031】
また、このプーリ21を逆方向に回転駆動すると、図5に示すように、枠部材15が基端側に移動し、このルーバ本体11がプリーツカーテンのように折畳まれて収納される。
この状態では、ルーバ本体11が基端側に折畳まれているので、このルーバ本体11の交換、補修等の保守作業が容易に行える。
【0032】
次に、図6ないし図8を参照してこのルーバ本体11の開閉機構30を説明する。図6はこの開閉機構30を簡略化して示すもので、ルーバ本体11の基端部側には対をなす大プーリ31と、これより径の小さい小プーリ32とが回転自在に支承されており、これらは図3に示すように駆動モータ機構33により正逆両方向に回転駆動される。そして、これら大プーリ31および小プーリ32には、開閉紐34の両端部がそれぞれ巻回されている。この開閉紐34は、ルーバ本体11の接合部の骨部材13、14に形成された対をなす案内穴を通してルーバ本体11の先端部まで導かれ、先端部の枠部材15に回転自在に取り付けられた案内プーリ35で360°折り返されている。また、これら開閉紐34は、骨部材13、14との間を山形に、すなわちつづら折状の挿通経路で配置されている。なお、各骨部材13、14には、上述した案内孔36が2個ずつ並んで配置され、これらの案内孔には開閉紐34との摩擦を軽減するため、摩擦係数の小さい樹脂ブッシュ37が取り付けられている。
【0033】
また、上記の開閉紐34は、上記の大プーリ31と小プーリ32とでは、その巻き付け方向が互いに逆となっている。したがって、これら大プーリ31と小プーリ32とが回転すると、たとえば大プーリ31では開閉紐34が巻き込まれ、また小プーリ32では巻き出される。しかし、大プーリ31の巻き込み量の方が大きいので、この開閉紐34全体では、案内プーリとの間の長さが減少する。また逆方向に回転すると、上記とは逆にこの開閉紐34全体では、案内プーリとの間の長さが増大する。
【0034】
また、上記の作用の際、案内プーリ35で折り返された2本の案内紐34はその走行方向が逆になる。したがって、図8に示すような2個の案内孔36内を走行する際、その走行に伴う摩擦力が逆になり、この並んだ2個の案内孔36に作用する摩擦力が反対となり、これら摩擦力が相殺され、この案内紐34の走行により骨部材13、14に作用する摩擦力小さくなり、これらが変形することがない。
【0035】
また、上記の大プーリ31と小プーリ32と開閉紐34との巻き付け関係、この開閉紐34と骨部材13、14との間の山形の挿通経路の関係は、隣接する2対の大プーリ31と小プーリ32との間で互いに全く逆となっており、これらが同じ方向に回転しても、一方の大プーリ31と小プーリ32とでは開閉紐34全体の長さが絞られ、他方の一方の大プーリ31と小プーリ32とでは開閉紐34全体の長さが緩められる。
【0036】
次に、この開閉機構30の作動を図9ないし図14を参照して説明する。まず、図6を参照して前述のルーバ本体11のフイルム材の構成を説明する。このフイルム材の帯状部には、その両側縁にわたって多数のスリット線41が形成されており、これらの間の部分がこのルーバ本体の可動の羽根部42として形成されている。これらのスリット線41の両端部は、互いに逆方向に屈曲しており、したがって、各羽根部42の両端部も屈曲した形状をなしている。なお、この実施形態では、これらの羽根部42は、骨部材13、14に対して直角ではなく、斜めに配置されている。
【0037】
このようなスリットにより多数の羽根部42が形成されたフイルム材の帯状部12をせん断変形、すなわち矩形を平行四辺形に、あるいは平行四辺形を矩形に変形させると、各羽根部42の端部に同じ方向のねじれ変形が発生し、各羽根部が一斉に同じ方向に回動し、このルーバ本体が開閉自在の可動ルーバとして作動する。なお、上記の羽根部の端部は屈曲した形状をなしているので、上記のねじれ変形が大きいとともに、このねじれ変形はこの屈曲部にのみ発生し、羽根部42はこの端部を除いて平面状を保ったまま回転し、光を正確に反射、制御する。
【0038】
図9および図10には、このルーバ本体11を展開した状態で、羽根部42の開閉度は中間の状態を示す。すなわち、上記の羽根部42は、骨部材13、14に対して斜めに配置されているので、このルーバ本体11が展開し、前記のスプリング17により所定の張力が与えられると、この張力により羽根部42が骨部材と直角となるように変形し、図10に示すように羽根部は半開の状態となる。この状態が中立状態で、各開閉紐43はすべて緩んだ状態にある。
【0039】
次に、前記の大プーリ31、小プーリ32を回転させると、図11および図12に示すように、一方の開閉紐34が絞られ、他方の開閉紐34はさらに緩む。これによって、各骨部材13、14は、図11の矢印の方向に相対的に移動し、この状態ではこのルーバ本体11のフイルム材に全く荷重、変形が作用していない初期状態に戻り、羽根部42の端部のねじれ変形も無くなる。よって、図12に示すように、各羽根部42は同一平面上に整列し、この状態がこのルーバ本体11の全閉状態で、光を透過させず、遮光率が100%の状態である。
【0040】
次に、前記の大プーリ31、小プーリ32を逆方向に回転させると、図13および図14に示すように、一方の開閉紐34が緩められ、他方の開閉紐34は絞られる。これによって、各骨部材13、14は、図13の矢印の方向に相対的に移動し、図9の中立状態からさらにせん断変形が大きくなり、図14に示すように、各羽根部42はさらに大きく回動し、このルーバ本体11の全開状態となる。この場合に、ルーバ本体11のフイルム材に過大な変形を与えることなく、これら羽根部42を80ないし90°の角度まで回転させることが可能である。中緯度地域では、真夏の太陽高度でも80°程度であるので、これら羽根部42を日射の方向と平行まで回動可能であり、日射を略100%透過、すなわち遮光率を実質的に0%とすることができる。
【0041】
上記のようにして、このルーバ本体11を遮光率100%から0%まで、無段階に任意の遮光率に調整できる。したがって、温室内に導入される光量を、栽培する植物に最適の光量に正確に制御することができる。
【0042】
なお、前述したように、初期の状態で羽根部42を骨部材13、14に対して斜めに配置した理由は、このルーバ本体11を展開して張力を与えた場合に、図9および図10に示すように中立で羽根部42が半開状態とし、この状態から骨部材13、14の相対的な移動を左右に均等に割り振り、開閉の際の相対的な移動ストロークを小さくするためである。したがって、太陽高度の低い高緯度地域、またはラン、葉物野菜等の栽培専用の温室等、遮光率を小さくする必要のない場合には、初期状態で羽根部が骨部材と直角となるように配置してもよい。
【0043】
なお、本発明は上記の実施形態には限定されず、たとえば図15に示すような第2の実施形態としてもよい。この実施形態は、ルーバ本体の開閉機構を上述とは別の構成としたものである。
【0044】
この実施形態の開閉機構50は、複数のスプライン軸51を備えている。このスプライン軸51は、軸受け52によって温室のフレーム等に回転自在に支承されており、また駆動モータ機構53によって正逆両方向に回転駆動される。また、これらスプライン軸51には、展開されたルーバ本体の可動側の骨部材13の位置に対応して巻き取りドラム54がそれぞれ取り付けられ、これらの巻き取りドラム54は、スプライン軸51と一体的に回転し、またこのスプライン軸51の軸方向に移動自在となっている。また、これら巻き取りドラム54には、それぞれ開閉紐55が巻き付けられており、これらの開閉紐の先端は上記の骨部材13に取り付けられている。
【0045】
このような開閉機構50は、スプライン軸51を駆動モータ機構によって正逆両方向に回転駆動すると、巻き取りドラム54が開閉紐55を巻き取りまたは巻き出し、骨部材13を矢印両方向に移動させ、前記と同様にこのルーバ本体11を開閉する。なお、図15は、この開閉機構50を概略的に示したものであるが、実際のルーバ装置では、たとえば上記のスプライン軸51をルーバ本体11の展開・収納の際にこのルーバ本体を案内するガイドワイヤとして作用するように構成してもよい。なお、この第2の実施形態は、上記の点以外は前記の第1の実施形態と同様な構成であり、共通する部分には同じ符号を付してその説明は省略する。
【0046】
また、上記のルーバ本体の構成も上記のものには限定されない。図16には、第3の実施形態のルーバ本体61を示す。このものは、連続したフイルム材を交互に折り返し、つづら折状のルーバ本体61を構成したもので、折り返し部の間が帯状部62となる。
【0047】
なお、このルーバ本体61には、剛性を高めるために骨部材63が各折り曲げ部に取り付けられている。この骨部材63は、たとえば丸棒状の芯部材64と、断面C字状の押さえ部材65とからなり、これらの間でフイルム材の折り曲げ部を挟み込んで固定している。このような構造のルーバ装置は、フイルム材が連続しているので、専用の折り曲げ装置を使用すれば、簡単、迅速に製造でき、大量生産に適する。
【0048】
さらに、図17には、第4の実施形態のルーバ本体71を示す。このものは、連続したフイルム材を交互に折り返し、つづら折状のルーバ本体71を構成したもので、折り返し部の間が帯状部72となる。
【0049】
このルーバ本体71は、その折り曲げ部を袋状に縫製または接着して袋状部75を形成し、この袋状部75内に棒状の骨部材74を縫い込んだものである。このような構造のルーバ装置も、フイルム材が連続しているので、専用の折り曲げ装置や縫製装置を使用すれば、簡単、迅速に製造でき、大量生産に適する。
【0050】
なお、本発明は上記の各実施形態にも限定されない。たとえば、ルーバ本体を構成する材料は、必ずしもフイルム材には限定されず、たとえば布、不織布、繊維強化プラスチックのシート材、その他のシート材を使用することができる。また、骨部材も必ずしも必要はなくも比較的剛性の高いシート材を使用すれば、その帯状部の側縁部の接合部または折り返し部が剛性を高める骨部材の作用をなす。
【0051】
また、開閉機構も前述のものには限定されず、任意の構造のものが採用可能である。たとえば、ルーバ装置がユニット化されたものでは、このユニット全体の枠部材を互いに相対的に移動可能な2つの枠部材から構成し、一方の骨部材を一方の枠部材に接続し、また他方の骨部材を他方の枠部材に接続し、これら枠部材を相対的に移動させることにより、各骨部材を一斉に相対的に移動させることもできる。
【0052】
また、上記の各羽根部は、その端部を屈曲させず羽根部は端部まで一直線状としてもよい。この場合には、端部のねじれが羽根部の中央部分まで影響するが、正確な制光特性を必要とせず、平均的な遮光率の調整でよいものではあまり支障はない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態のルーバ装置を内蔵した温室の概略図。
【図2】図1の温室の平面図。
【図3】本発明のルーバ装置の平面図。
【図4】図3の4−4矢視図。
【図5】折畳み状態の図3の4−4矢視図。
【図6】第1の実施形態の開閉機構の平面図。
【図7】図6の7−7線に沿う断面図。
【図8】図7の8−8線に沿う断面図。
【図9】中立状態のルーバ本体の平面図。
【図10】図9の10−10線に沿う断面図。
【図11】全閉状態のルーバ本体の平面図。
【図12】図12の12−12線に沿う断面図。
【図13】全開状態のルーバ本体の平面図。
【図14】図13の14−14線に沿う断面図。
【図15】第2の実施形態の開閉機構の平面図。
【図16】第3の実施形態のルーバ本体の側面図。
【図17】第4の実施形態のルーバ本体の側面図。
【符号の説明】
【0054】
1 温室
2 光量検出器
3 温度検出器
4 制御装置
5 プログラム装置
6 接続装置
7 端末装置
8 電源装置
9 商用電源
10 ルーバ装置
11 ルーバ本体
12 帯状部
13 骨部材
14 骨部材
15 枠部材
16 枠部材
17 スプリング
18 ガイドワイヤ
20 展開・収納機構
21 プーリ
22 プーリ
23 無端ワイヤ
30 開閉機構
31 大プーリ
32 小プーリ
33 駆動モータ機構
34 開閉紐
35 案内プーリ
36 案内孔
37 樹脂ブッシュ
41 スリット線
42 羽根部
50 開閉機構
51 スプライン軸
52 軸受け
53 駆動モータ機構
54 巻き取りドラム
55 開閉紐
61 ルーバ本体
62 帯状部
63 骨部材
64 芯部材
65 押さえ部材
71 ルーバ本体
72 帯状部
74 骨部材
75 袋状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性および弾性を有する薄板材で形成されたシート状材を複数の帯状部の側縁部が交互に屈曲したつづら折状に形成され、これら帯状部には一方の側縁部から他方の側縁部にわたって複数のスリット線を形成して複数の羽根部を形成したルーバ本体と、このつづら折状のルーバ本体を展開および折り畳み収納する展開・収納機構と、上記のルーバ本体の帯状部の互いに隣接する側縁部をルーバ本体の面方向に互いに反対の方向に相対的に移動させる羽根部開閉機構とを備えたことを特徴とするルーバ装置。
【請求項2】
前記のルーバ本体は、複数の帯状のシート状材を重ねてその側縁部を交互に接合してつづら折状に形成したものであることを特徴とする請求項1のルーバ装置。
【請求項3】
前記のルーバ本体は、シート状材を交互に反対方向に折曲してつづら折状に形成したものであることを特徴とする請求項1のルーバ装置。
【請求項4】
前記の複数のスリット線はそれらの両端部近傍において一端部と他端部とで互いに反対方向に屈曲しており、前記の羽根部はその両端部近傍において互いに反対方向に屈曲した屈曲部が形成されていることを特徴とする請求項1のルーバ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−239290(P2007−239290A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62504(P2006−62504)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(505257501)有限会社インベル (7)
【Fターム(参考)】