説明

ルーフラック取付構造

【課題】ルーフラック取付構造の耐荷重性を高める。
【解決手段】サイドパネルアウタセンタ13上部のレール収容部27は、ルーフサイドエクステンションアウタロア21とルーフサイドエクステンションアウタアッパ25との間に形成される。ルーフラックブラケット29は、ルーフラックの取付面となる横壁29aの車体後方側に設けてある支持脚29e下端の取付フランジ29fをルーフサイドエクステンションアウタアッパ25上に接合し、前方側の支持片29gをルーフサイドエクステンションアウタロア21の上方に向けて立ち上がる前壁21bに接合する。また、ルーフラックブラケット29は、横壁29aの車幅方向内側に連続する延長部29bをルーフレールサイドセンタインナ19に接合し、縦壁29c下端の下部フランジ29dをルーフサイドエクステンションアウタアッパ25に接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフラックをルーフラックブラケットを介して車体に取り付けるルーフラック取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ルーフパネルとルーフサイドアウタパネルとの間に形成した溝部を利用して、ルーフラックをルーフラックブラケットを介して車体に取り付けるルーフラック取付構造が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−93247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したルーフラック取付構造の溝部は、断面形状が上辺を下辺より狭くした台形状として、この台形状に整合する形状のルーフラックブラケットを、溝部に嵌め込んだ状態でルーフラックの板状の取付部の下面にボルト・ナットにより締結固定している。
【0005】
このように、従来のルーフラック取付構造では、ルーフラックブラケットを溝部に嵌め込んではいるものの、ルーフラックの板状の取付部に締結固定しているため、耐荷重性が充分とは言えず、特に車体前後方向については車両の発進停止時に大きな荷重が付与されるので改善が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、ルーフラック取付構造の耐荷重性を高めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、スライドドアがガイドされるアッパレールを収容するレール収容部が、上壁部と下壁部とを有してこれら各壁部相互間に形成され、上壁部の上に、ルーフラックを取り付けるルーフラックブラケットを、少なくとも車体前後方向端部の端部接合部を用いて接合固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上壁部と下壁部とを備えて剛性を有するレール収容部の上壁部にルーフラックブラケットを接合固定することで、ルーフラック取付構造として耐荷重性を高めることができる。その際、ルーフラックブラケットの車体前後方向端部を上壁部に接合固定しているので、特に車両の発進停止時に付与される車体前後方向の、車幅方向に比較して大きくなりがちな荷重に対して有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係わるルーフラック取付構造の車体外側から見た斜視図である。
【図2】図1とは別角度の車体外側前方から見た斜視図である。
【図3】図1に対しルーフパネル、サイドパネルアウタセンタアッパ及びサイドパネルアウタフロントを取り付けた状態の斜視図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】図3のC−C断面図である。
【図6】図1に対しルーフラックブラケット及びルーフサイドエクステンションアウタアッパを取り外した分解斜視図である。
【図7】図2に対しルーフラックブラケット及びルーフサイドエクステンションアウタアッパを取り外した分解斜視図である。
【図8】図1のルーフラック取付構造を適用した自動車の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0011】
図8に示す自動車の車体1の左右両側のA部に、本発明の一実施形態に係わるルーフラック取付構造を適用している。以下図1〜図8の説明は、上記した左右両側のA部のうち車体左側について行っている。なお、各図中で矢印FRが車体前方、矢印OTRが車体外方、矢印UPRが車体上方をそれぞれ示している。
【0012】
図8の車体左側のA部に対応する図3は、図8では図示してある車体前部のサイドドア3及びその後部のスライドドア5を省略しており、これら各ドア3及び5に対応する位置に、フロントドア開口部15及びスライドドア開口部17が形成されている。また、図1、図2は、図3では図示しているルーフパネル7、ルーフパネル7の車幅方向外側に位置するサイドパネルアウタセンタアッパ9及び、サイドパネルアウタセンタアッパ9の車体前方に位置するサイドパネルアウタフロント11を省略している。
【0013】
サイドパネルアウタセンタアッパ9の下部に位置するサイドパネルアウタセンタ13は、図1、図2に示すように、車体上下方向に延びるピラー部13aと、このピラー部13aの上端に位置して車体前後方向に延びる上縁部13bとを備えている。このサイドパネルアウタセンタ13の車体前側には、図3に示してあるサイドパネルアウタフロント11を結合している。
【0014】
上記サイドパネルアウタセンタ13の車体内側上部には、車体前後方向に延びるルーフレールサイドセンタインナ19を設けてあり、このルーフレールサイドセンタインナ19の外側を覆うようにして図3に示してあるサイドパネルアウタセンタアッパ9を設けている。
【0015】
ルーフレールサイドセンタインナ19のピラー部13aより車体後方近傍には、車体内側に膨出する膨出部19aを形成している。膨出部19aは、図3のB−B断面図である図4に示すように、車幅方向に対向する側壁19bと、側壁19bの下端から車幅方向外側に向けて延びる底壁19cとを備えている。側壁19bは、車体後方側が前方側より車幅方向外側となるよう車体前後方向に対して傾斜する傾斜部19b1を備えている。
【0016】
そして、ルーフレールサイドセンタインナ19の底壁19c上に、ルーフサイドエクステンションアウタロア21を配置している。ルーフサイドエクステンションアウタロア21は、膨出部19aの車体内側の傾斜部19b1を有する形状に対応して車体後方側が前方側より車幅方向の幅を小さくしている。
【0017】
上記したルーフサイドエクステンションアウタロア21は、底壁21aと、底壁21aの車体前方側端部から上方に向けて立ち上がる前壁21bと、車幅方向内側の側壁21c(図4)とを備えている。側壁21cは、膨出部19aの傾斜部19b1に対応するように車体後方側が前方側より車幅方向外側となるよう車体前後方向に対して傾斜している(図6、図7)。
【0018】
また、側壁21cの上縁には車幅方向内側に向けて屈曲するフランジ21d(図6、図7)を形成し、このフランジ21dを、ルーフレールサイドセンタインナ19の側壁19bの下部側に形成してある段部19d上に接合固定している。
【0019】
サイドパネルアウタセンタ13の上縁部13bのピラー部13aより車体後方近傍には、上記した膨出部19aに対応して車体前後方向に長い貫通孔13cを、車幅方向に貫通するよう形成している。この貫通孔13cに対応する部分のルーフサイドエクステンションアウタロア21から、貫通孔13cより車体後方のサイドパネルアウタセンタ13にわたり、スライドドア5がスライド移動する際にガイドされるスライドレールのアッパレール23となる。
【0020】
そして、上記したルーフサイドエクステンションアウタロア21の上方に、ルーフサイドエクステンションアウタアッパ25を配置している。このルーフサイドエクステンションアウタアッパ25は上壁部を構成し、その下方に位置するルーフサイドエクステンションアウタロア21は下壁部を構成している。
【0021】
したがって、これら上壁部を構成するルーフサイドエクステンションアウタアッパ25と下壁部を構成するルーフサイドエクステンションアウタロア21との間に、前記したアッパレール23を収容するレール収容部27が形成されることになる。また、これらルーフサイドエクステンションアウタアッパ25及びルーフサイドエクステンションアウタロア21は、サイドパネルアウタセンタ13やルーフレールサイドセンタインナ19などの車体構成部品に対しそれぞれ単体で別部品として設けている。
【0022】
上記したルーフサイドエクステンションアウタアッパ25は、ルーフサイドエクステンションアウタロア21の底壁21aに対向する底壁25aを有し、底壁25aの車体前方側端部から上方に向けて立ち上がる前部縦壁25bを設けている。この前部縦壁25bは、ルーフサイドエクステンションアウタロア21の前壁21bの上部に車体後方から突き当てて接合している。
【0023】
また、ルーフサイドエクステンションアウタアッパ25は、その底壁25aの車幅方向内側の縁部25a1を、ルーフサイドエクステンションアウタロア21のフランジ21d上に接合固定している。さらに、このフランジ21dへの縁部25a1の接合部の車体前方側の端部には、図4に示されている側部縦壁25cを形成し、この側部縦壁25cをルーフサイドエクステンションアウタロア21の側壁21cの上部に車幅方向外側から接合固定している。
【0024】
ルーフサイドエクステンションアウタアッパ25の車幅方向外側の縁部25dは、図4に示すように、サイドパネルアウタセンタアッパ9の下部の車体内側に向けて屈曲形成してある下端縁部9a上に接合固定している。なお、この下端縁部9aと縁部25dとの間には、サイドパネルアウタセンタ13の貫通孔13cの上部に位置する帯状の車体前後方向に延びる上部壁13dが挟み込まれて接合固定されている。
【0025】
そして、上記したルーフサイドエクステンションアウタアッパ25の上には、ルーフラックブラケット29を配置している。ルーフラックブラケット29は、図4に示してあるルーフラック31を取り付ける取付面となる横壁29aを備えている。横壁29aには、車体前後方向に沿って2つの取付孔29a1を形成してあり、取付孔29a1を利用してルーフラック31の台座31aを、図示しないボルト・ナットなどの締結具によって締結固定する。
【0026】
上記したフラックブラケット29の横壁29aは、車体前後方向に長く形成され、その車幅方向内側に向けて延びる延長部29bを、ルーフレールサイドセンタインナ19の膨出部19aの上面に接合固定する。この膨出部19aの上面は、図4に示すように側壁19bの上端から車幅方向内側に向けてほぼ水平に屈曲する上部フランジ19eに対応している。
【0027】
この上部フランジ19eに対してルーフレールサイドセンタインナ19の下部側の下部フランジ19fは、ルーフサイドエクステンションアウタロア21の下部に取り付けてある連結片33の下端フランジ33aに車体内側から接合固定している。なお、この連結片33は、図1、図2では省略している。
【0028】
ルーフラックブラケット29は、上記した横壁29aの延長部29bと反対の車幅方向外側端部から下方かつ車幅方向やや外側に向けて傾斜するように屈曲する縦壁29cを備えている。さらに、この縦壁29cの下端から車幅方向外側に向けて屈曲する下部フランジ29dを設けている。下部フランジ29dは、図4に示すようにルーフサイドエクステンションアウタアッパ25の車幅方向外側の縁部25d上に重ね合わせて接合固定してあり、外側接合部を構成している。
【0029】
また、ルーフラックブラケット29は、図1に示すように、取付面である横壁29aの車体後方側の端部から下方に向けて屈曲する帯状の支持脚29eを設けるとともに、その下端の車体後方に向けて延びる取付フランジ29fを設けている。そしてこの取付フランジ29fを、ルーフサイドエクステンションアウタアッパ25の底壁25aの車幅方向内側の縁部25a1上に当接させて接合固定している。
【0030】
一方、図2に示すようにルーフラックブラケット29の縦壁29cの車体前方側の縁部には、車体内側の斜め下方に向けて突出する支持片29gを設け、この支持片29gを、ルーフサイドエクステンションアウタロア21の前壁21bの車体前方側の面に接合固定している。
【0031】
上記したルーフラックブラケット29の支持脚29e、取付フランジ29f及び支持片29gは、端部接合部を構成している。
【0032】
すなわち、本実施形態では、上壁部であるルーフサイドエクステンションアウタアッパ25の上に、ルーフラック31を取り付けるルーフラックブラケット29を、少なくとも車体前後方向端部(支持脚29e、支持片29g)を介して接合固定したことになる。
【0033】
ルーフラックブラケット29の取付面である横壁29a上には、図4に示すように、サイドパネルアウタセンタアッパ9の車体内側の上端縁部9b及び、ルーフパネル7の車幅方向外側の端縁部7aを順次重ね合わせて、これらを互いに接合固定している。この際、ルーフパネル7とサイドパネルアウタセンタアッパ9との車幅方向相互間の横壁29aに対応する部位は、車体前後方向に沿って凹部35が形成される。
【0034】
そして、この凹部35となっている横壁29a(実際にはルーフパネル7の端縁部7a)上に、ルーフラック31の台座31aを、図示しないボルト・ナットなどの締結具によって締結固定する。図3には、ルーフパネル7の端縁部7aに、ルーフラックブラケット29の取付孔29a1に対応する取付孔7a1を図示してある。
【0035】
このような本実施形態のルーフラック取付構造では、ルーフラックブラケット29を、ルーフサイドエクステンションアウタロア21及びルーフサイドエクステンションアウタアッパ25を備えたレール収容部27を利用して取り付けている。このレール収容部27は、スライドドア5の車体前方上端に位置してアッパレール23にガイドされるガイド部(ガイドローラ)が入り込む、いわゆる戸袋として機能するものであって、比較的剛性が高くなっている。
【0036】
このような剛性が高くなっているレール収容部27のルーフサイドエクステンションアウタアッパ25上にルーフラックブラケット29を取り付けることで、ルーフラック31の取付構造として耐荷重性を高めることができる。
【0037】
その際、本実施形態では、特にルーフラックブラケット29の車体後方側を、支持脚29e及び取付フランジ29fによりルーフサイドエクステンションアウタアッパ25に固定している。また、ルーフラックブラケット29の車体前方側は、支持片29gによりルーフサイドエクステンションアウタロア21の前壁21bを介してルーフサイドエクステンションアウタアッパ25に固定している。このため、特に車両の発進停止時に付与される車体前後方向の、車幅方向に比較して大きくなりがちな荷重に対して極めて有効となる。
【0038】
そのほか、ルーフラックブラケット29が車両前後方向に受ける荷重は、図1、図2に示す延長部29bの車体前後方向端部のルーフレールサイドセンタインナ19への接合部に対応するD部及びE部でも受けることになって耐荷重性がさらに向上する。
【0039】
このような車両前後方向に受ける荷重の伝達経路は、図5に一点鎖線の矢印で示しており、入力された荷重は各部材に分散されて耐荷重性能が向上することになる。
【0040】
また、ルーフラックブラケット29が車両左右方向(車幅方向)に受ける荷重については、下部フランジ29dのルーフサイドエクステンションアウタアッパ25への接合部に対応するF部及び、延長部29bの車体前後方向中央部のルーフレールサイドセンタインナ19への接合部に対応するG部が主として受ける。
【0041】
これにより、ルーフラックブラケット29が車両左右方向(車幅方向)に受ける荷重に対しても、耐荷重性を充分確保することが可能となる。
【0042】
このような車両左右方向に受ける荷重の伝達経路は、図4に一点鎖線の矢印で示しており、入力された荷重は各部材に分散されて耐荷重性能が向上することになる。
【0043】
また、本実施形態のルーフラックブラケット29は、横壁29aの車幅方向内側に向けて延長されてルーフレールサイドセンタインナ19に接合される延長部29bと、横壁29aの車幅方向外縁から下方に向けて延びる縦壁29cの下縁から、車幅方向外側に向けて延びてルーフサイドエクステンションアウタアッパ25に接合固定する下部フランジ29dとを有している。
【0044】
これにより、ルーフラックブラケット29に作用する車幅方向の荷重を効率よく受けることができて、車幅方向に対する耐荷重性も向上する。
【0045】
また、本実施形態では、ルーフサイドエクステンションアウタアッパ25及びルーフサイドエクステンションアウタロア21は、サイドパネルアウタセンタ13やルーフレールサイドセンタインナ19などの車体構成部品に対し別部品として設けている。このため、レール収容部27の剛性がより一層高くなって、ルーフラック31の取付構造として耐荷重性をより高めることができる。
【符号の説明】
【0046】
5 スライドドア
13 サイドパネルアウタセンタ(車体構成部品)
19 ルーフレールサイドセンタインナ(車体構成部品)
21 ルーフサイドエクステンションアウタロア(下壁部)
23 アッパレール
25 ルーフサイドエクステンションアウタアッパ(上壁部)
27 レール収容部
29 ルーフラックブラケット
29a ルーフラックブラケットの横壁(取付面)
29b ルーフラックブラケットの延長部
29c ルーフラックブラケットの縦壁
29d ルーフラックブラケットの下部フランジ(外側接合部)
29e ルーフラックブラケットの支持脚(端部接合部、車体前後方向端部)
29f ルーフラックブラケットの取付フランジ(端部接合部、車体前後方向端部)
29g ルーフラックブラケットの支持片(端部接合部、車体前後方向端部)
31 ルーフラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部の上部に、スライドドアが車体前後方向移動時にガイドされるスライドレールのアッパレールを備え、このアッパレールを収容するレール収容部は、上壁部と下壁部とを有してこれら各壁部相互間に形成され、前記上壁部の上に、ルーフラックを取り付けるルーフラックブラケットを、少なくとも車体前後方向端部の端部接合部を用いて接合固定したことを特徴とするルーフラック取付構造。
【請求項2】
前記ルーフラックブラケットは、前記ルーフラックを取り付ける取付面と、この取付面の車体前後方向端部に位置して前記上壁部に接合固定する前記端部接合部と、前記取付面の車幅方向内側に向けて延長されて車体構成部品に接合される延長部と、前記取付面の車幅方向外縁から下方に向けて延びる縦壁と、この縦壁の下縁から車幅方向外側に向けて延長されて前記上壁部に接合固定する外側接合部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のルーフラック取付構造。
【請求項3】
前記上壁部及び下壁部は、車体構成部品に対し別部品として設けたものであることを特徴とする請求項1または2に記載のルーフラック取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−224236(P2012−224236A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94111(P2011−94111)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】