ルーフ用エアバッグ装置
【課題】自動車の横転時などにおいて乗員の頭部を確実に保護できるルーフ用エアバッグ装置を提供する。
【解決手段】基布15を縫製した袋体であって、自動車4の天井部材2の室内側に設けられたルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cと、ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cを膨張展開させるための圧力流体を噴出するインフレータ7A,7Bと、天井部材2とルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cの間に設けられて、天井部材2からルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cへの熱伝達を軽減する断熱シート3A,3B,3Cとを有し、ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cにおいては、基布15が導電性を有する導電繊維を織り込まれて備えている。
【解決手段】基布15を縫製した袋体であって、自動車4の天井部材2の室内側に設けられたルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cと、ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cを膨張展開させるための圧力流体を噴出するインフレータ7A,7Bと、天井部材2とルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cの間に設けられて、天井部材2からルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cへの熱伝達を軽減する断熱シート3A,3B,3Cとを有し、ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cにおいては、基布15が導電性を有する導電繊維を織り込まれて備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両に装備されるルーフ用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の衝突時等に乗員の身体を衝撃から保護するための各種エアバッグ装置が使用されている。
【0003】
例えば、運転席においてハンドルの回転中心から運転者側に膨張展開する運転席用エアバッグ(例えば、特許文献1参照)や、インストルメントパネルから助手席側に膨張展開する助手席用エアバッグ装置(例えば、特許文献2参照)、その他にもサイドエアバッグ装置、カーテンエアバッグ装置等など各種のエアバッグ装置が使用されている。
【0004】
【特許文献1】特許第3028524号公報(図2)
【特許文献2】特開平9−48305号公報(図17)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、衝突などによる車体横転や、倒木等の重量物落下等、自動車に大きな外力が加わる大事故が発生した場合、その際の衝撃により自動車の天井部材が破損変形し乗員の頭上から頭部に接触する可能性がある。上記従来のエアバッグ装置には特にこのような問題に配慮されておらず、乗員の頭部の確実な保護という観点からは必ずしも十分であるとは言えなかった。
【0006】
本発明は、自動車の横転時などにおいて乗員の頭部を確実に保護できるルーフ用エアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のルーフ用エアバッグ装置は、自動車の天井部に設けられ、基布を縫製した袋体からなるルーフ用エアバッグ本体と、ルーフ用エアバッグ本体を膨張展開させるための圧力流体を噴出するインフレータとを有する。
【0008】
これにより、衝突などによる車体の横転時や、倒木などといった重量物の落下により車体フレームが曲がって天井部材が乗員の頭部に近接接触した場合でも、ルーフ用エアバッグ本体をインフレータにより瞬時に膨張展開することで、天井部材との直接衝突から乗員の頭部を確実に保護することができ、自動車の安全性能を格段に向上させることができる。
【0009】
また、本発明のルーフ用エアバッグ装置は、ルーフ用エアバッグ本体が、前記自動車の天井部材と内装表皮部材との間に配置されていることが望ましい。
【0010】
これにより、通常運転時にはルーフ用エアバッグ本体が内装表皮に覆われるため室内空間の美観を損ねることがなく、また例えばルーフ用エアバッグ本体を接合部材で天井部材側に接合すれば、急激に膨張展開させた場合でも位置ずれせずに乗員の頭部に対する適切な位置での展開が可能になる。
【0011】
また、本発明のルーフ用エアバッグ装置は、ルーフ用エアバッグ本体が、保護対象の乗員ごとに設けられていることが望ましい。
【0012】
これにより、実際の乗員数とその配置に応じた必要箇所のルーフ用エアバッグ本体のみ膨張展開させることが可能となり、また乗員のいない方向への無駄な膨張がなくなることで乗員側への膨張展開の完了時間を短縮でき、より安全性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明のルーフ用エアバッグ装置は、天井部材とルーフ用エアバッグ本体の間に設けられ、天井部材からルーフ用エアバッグ本体への熱伝達を軽減する断熱手段を有することが望ましい。
【0014】
これにより、晴天時に天井部材が太陽から受ける輻射熱を室内側へ熱伝達するのを軽減させてルーフ用エアバッグ本体の熱損傷を防ぐとともに、室内温度の上昇を防いで乗車の快適性を確保できる。
【0015】
また、本発明のルーフ用エアバッグ装置は、断熱手段が、内部にゲル状の断熱材を注入した袋体であることが望ましい。
【0016】
これにより、断熱シート内のゲル状断熱材が衝撃緩衝材としても機能し、ルーフ用エアバッグ装置の頭部保護機能を向上させることができる。
【0017】
また、本発明のルーフ用エアバッグ装置は、ルーフ用エアバッグ本体が、導電性を有する導電繊維を織り込まれた基布を備えることが望ましい。
【0018】
これにより、ルーフ用エアバッグ本体の基布に静電気が発生しても、導電繊維を介して接地電位へ低減するか、コロナ放電により帯電した静電気を中和することができる。
【0019】
また、本発明のルーフ用エアバッグ装置は、導電繊維に接続して電気的に接地するアース回路を有することが望ましい。
【0020】
これにより、ルーフ用エアバッグ本体に発生した静電気は、すぐにアース回路を介して接地放電されるため静電気の帯電を確実に防止でき、またそのように放電経路を確定していることから、インフレータなどの周囲の電装部品への漏電を防ぐことができる。
【0021】
また、本発明のルーフ用エアバッグ装置は、導電繊維が、ポリマー段階又は製糸段階で着色顔料及び炭化物を練り込み紡糸した繊維を含むことが望ましい。
【0022】
これにより、着色された導電繊維を他の通常の繊維から容易に識別できるため製造工程における作業ミスをなくさせて作業効率を向上させることができる。また、炭化物により高い導電性が付与され、より効率よく静電気を中和除去できる。
【0023】
また、本発明のルーフ用エアバッグ装置は、基布が、JIS L 1094に規定された摩擦帯電圧測定法により測定した最大摩擦帯電圧が100Vより小さいことが望ましい。
【0024】
これにより、ルーフ用エアバッグ本体の基布の帯電による影響を確実に減少できる。
【0025】
また、本発明のルーフ用エアバッグ装置は、最大摩擦帯電圧が50Vより小さいことが望ましい。
【0026】
これにより、最大摩擦帯電圧が50Vより小さく、ルーフ用エアバッグ本体の基布の帯電静電気による影響を大きく減少できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、自動車の横転時などにおいて乗員の頭部を確実に保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態によるルーフ用エアバッグ装置において自動車に取り付けて展開する前の収納状態を説明する側断面図であり、図2は同じくルーフ用エアバッグ装置が展開した状態を説明する側断面図である。
【0030】
図1及び図2において、ルーフ用エアバッグ装置1は、天井部材(天井鋼板)2の室内側に配置され乗員の頭部に向けて展開可能に構成されている。すなわちルーフ用エアバッグ装置1は、自動車(車両)4の車体の天井部材2とその室内側を覆う内装表皮(内装表皮部材)5との間に、断熱シート(断熱手段)3A,3B,3Cとルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cが積層状態で収納され、それらの近傍にルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cを膨張展開させるための圧力流体(ガス)を噴出するインフレータ7A,7Bが設けられている。図示する例では、自動車4の室内において前後方向で3列に並ぶよう座席8が配置されており、運転席を含む前方列9と、中央列10と、後方列11のそれぞれで個別に構成したルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cと断熱シート3A,3B,3Cが配置されている。各断熱シート3A,3B,3Cは天井部材2と各ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cとの間に挟まれた状態で設けられている。
【0031】
また、前方列9と中央列10のそれぞれのルーフ用エアバッグ本体6A,6Bの間に前方列9のインフレータ7Aが設けられており、ガス流入路6aを介して前方列ルーフ用エアバッグ本体6Aのガスの流通経路に接続されている。中央列10と後方列11のそれぞれのルーフ用エアバッグ本体6B,6Cの間に中央列10と後方列11の兼用のインフレータ7Bが設けられており、両方のルーフ用エアバッグ本体6B,6Cのガスの流通経路にそれぞれガス流入路6aを介して接続されている。なお、各インフレータ7A,7Bの取り付け箇所は天井部材2と内装表皮5の間に限られるものではなく、各ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cの近傍であればAピラー12、Bピラー13、Cピラー14等であってもよい。
【0032】
各ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cは、基布15を縫製して車幅とほぼ同じ長さの細長い袋状に形成されたエアバッグ袋体16を3本ずつ備えた構成となっている。それぞれのエアバッグ袋体16は内部の空気を抜いて平坦にした状態で、車幅方向に渡す向きで車両前後方向に併設するよう配置されている。そして、各ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cにおいて、3本のエアバッグ袋体16同士は端部においてガス連通路6bを介し内部の流通経路を連通させており、接続するインフレータ7A,7Bから3本全ての内部にガスを順次流入できるようになっている。
【0033】
また、各ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cにおいて、基布15には導電性を有する導電繊維が織り込まれており、それら導電性繊維のいずれかが図示しないアース線により(インフレータ7A,7Bへの干渉を与えないためにインフレータ7A,7Bと導通することなく別回路で)金属製の車体などで構成するアース回路に電気的に接続され、最終的にグランド接地されている。
【0034】
各断熱シート3A,3B,3Cは、吸熱作用を有する材料で構成されたシート体であり、その下方に位置する各ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cより大きく形成され、3枚合わせると天井部材2の室内側表面のほぼ全体を覆う配置で設けられている。これにより、天井部材2からルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cへの熱伝達を軽減するようになっている。
【0035】
また、内装表皮5には、ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cが膨張するときに断裂したりあるいは車室側に開き出したりしてルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cが車室内に膨張することを許容するティアライン(破断予定線:不図示)が形成されている。なおこのティアラインの延設方向については、ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cの膨張展開がしやすいように、適宜の方向に設ければ足りる。
【0036】
そして、上記ルーフ用エアバッグ装置1において、自動車4の衝突時に図示しない検知センサ(他のエアバッグ装置と兼用としてもよい)により各インフレータ7A,7Bが点火して作動し、それぞれ接続するルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cにガスを流入させると、各ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cのエアバッグ袋体16は膨張を開始し、図2で示すように内装表皮5のティアラインを破って天井部材2の室内側から下方に展開し、乗員の頭部を受け止める。
【0037】
以上のように構成した本実施形態のルーフ用エアバッグ装置1により得られる作用効果を順を追って説明する。
【0038】
(1)膨張展開による効果
衝突などによる車体の横転時や、倒木などといった重量物の落下により車体フレームが曲がり、天井部材2が乗員の頭部に接近した場合でも、ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cを瞬時に膨張展開することで、天井部材2から乗員の頭部を確実に保護することができ、自動車4の安全性能を格段に向上させることができる。これは特に、車両重量が軽いことから衝突によって比較的横転しやすい軽自動車への適用に非常に有用である。また、上記構成のルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cは、他のエアバッグ本体(運転席用エアバッグ本体など)のように蛇腹状やロール状に折り畳んで収納する必要がないため、製作、設置作業が容易であり、製作コストを比較的抑えることができる利点がある。
【0039】
また、ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cが、前方列9、中央列10及び後方列11の乗員列単位で3つに分割され、またインフレータ7A,7Bをガスの流通経路ごと(前方列ルーフ用エアバッグ本体6Aの単独の流通経路と、中央列ルーフ用エアバッグ本体6Bと後方列ルーフ用エアバッグ本体6Cの接続された流通経路の2つの流通経路)にそれぞれ設けているため、各ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cを実際の乗員数とその配置に応じた必要箇所の流通経路にのみ膨張展開させることができる。
【0040】
つまり、図示しない制御装置において、手動設定や座席センサーなどによる乗員の有無の検知などにより、実際に搭乗している乗員の人数と配置が把握されていれば、その乗員の上方のルーフ用エアバッグ本体だけを展開させて、乗員のいない座席での展開を回避し、効率的にインフレータを作動制御できる。例えば、この実施形態の場合、乗員が運転者のみである場合には、手動設定又は座席センサの検知により前方列ルーフ用エアバッグ本体6Aだけを展開させ、他のルーフ用エアバッグ本体6B,6Cを無駄に展開させることを回避できる。
【0041】
また、ルーフ用エアバッグ本体は、全体で1つにまとまった構成ではなく、流通経路を分割(本実施形態では2つに分割)した構成としているため、それぞれを小容積化して膨張展開の完了時間を短縮することができ、より安全性を向上させることができる。この膨張展開の速度向上は、上記のインフレータの作動の効率化(無駄な電力消費の回避)によっても得られる。
【0042】
以上の作用を考慮すると、ルーフ用エアバッグ本体の流通経路は、最小単位である乗員個人ごとに全て分割し、それぞれにインフレータを設けることが最も好ましいが、必要に応じて本実施形態のように乗員単位で2分割乃至3分割したものを連通接続させてまとめた構成としてもよく、車両の規模や搭乗可能人数に対する製造コストとの均衡を考慮して設定すればよい。もちろん、天井部材2とほぼ同じ大きさで全面に渡って流通経路が連通した1つのルーフ用エアバッグ本体を設置することも可能である。
【0043】
なお、ルーフ用エアバッグ本体は、インフレータからのガスの流入により膨張展開できる構成であればよく、複数の細長いエアバッグ袋体を連通させた構成に限らない。例えば、大きな円形のエアバッグ袋体1つで構成してもよいし、又は乗員の頭部の形状、配置に合わせたエアバッグ袋体で構成してもよい。
【0044】
(2)断熱効果等
また、各断熱シート3A,3B,3Cが天井部材2と各ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cの間に設けられているため、晴天時などで天井部材2が太陽から受ける輻射熱の室内側への熱伝達を軽減させてルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cの熱損傷を防ぐとともに、室内温度の上昇を防いで乗車の快適性を確保できる。そして、夜間などで室外が低温である際に、断熱シート3A,3B,3Cに蓄積された熱を天井部材2を介して外部に放熱させればよい。また、ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cが天井部材2と内装表皮5との間に配置されているため、通常運転時の収納状態ではルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cが内装表皮5に覆われ、室内空間の美観を損ねることがない。
【0045】
(3)導電繊維による静電気防止効果
さらに、本実施形態のルーフ用エアバッグ装置1は、ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cの基布15に導電性を有する導電繊維が織り込まれ、さらにその導電繊維に接続して電気的に接地するアース回路を有している。このため、ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cの基布15に静電気が発生しても導電繊維のコロナ放電により帯電した静電気を中和できるか、すぐにアース回路を介して接地放電されるため静電気の帯電を確実に防止できる。この結果、自動車4の衝突時においてルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cの円滑な展開を確保でき、また乗員が展開したルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cに触れても不快感を与えることがない。また上記のようにアース回路によって放電経路を確定していることから、インフレータ7A、7Bなどの周囲の電装部品への漏電を防ぐことができる効果もある。
【0046】
上述したような静電気帯電防止効果を確認するために、本願発明者等が上記構成の本発明のルーフ用エアバッグ本体用の基布と、従来のエアバッグ本体用基布について実施した帯電性試験について具体的に説明する。試験方法はJIS L 1094(織物及び編物の帯電性試験方法)に準拠するものであり、図3はこのJIS L 1094で用いられるロータリスタチックテスタを説明する図である。
【0047】
図3において、エアバッグ用本体基布の帯電性試験は、JIS L 1094に規定された摩擦帯電測定法に基づきロータリスタチックテスタ(福井工業技術センター所有、興亜商会株式会社製)で実施し、100×120mmに裁断してJIS L 1094に準拠して24時間20℃40%以下の環境に保持した検体を用いて5回の測定を繰り返し行い、その最大値を採用して結果を示す。摩擦試験に供した綿布はJIS L 0803(染色堅ろう度試験用添付白布)に規定されたものである。
【0048】
まず、一般的にエアバッグ本体用基布に用いる合成繊維(ナイロン66)縫製糸1400デニールのものを用いて縫合工程で高導電性加工を施したインフレーター取り付け孔にアース回路を形成させた。高導電性を付与することについては単糸ポリマー成形段階で微粒子(1マイクロメーター単位)に粉砕された炭化物(電気抵抗値が10−3Ω-cm程度以下)を繊維中芯に5%まで練りこまれ、通常の合成繊維材料と交絡させ人為的に撚糸及び混紡したものを用いた。
【0049】
これらの高導電性を付与した縫製糸条により縫合して従来通常に用いられているエアバッグ本体を作成したものから任意の方向に3水準で試験用の供試体を150×150mmのサイズで裁断して得た。
【0050】
図3に示すように、帯電性試験は、モータ54の駆動力をVベルト55を介して伝達することにより、金属ホルダー56を介し試験片(供試体)57を取付けた回転ドラム(定速回転体)50を回転させながら、一端が固定され他端に荷重51を加えたテンション負荷用の金属ベルト56に支持された摩擦布(木綿布)52によって60秒間摩擦し、試験片57に発生した静電気の帯電圧を受電部(検出器)53で測定した。
【0051】
図4は、図3に示すロータリスタチックテスタで実施したエアバッグ本体用基布の帯電性試験結果であり、本発明のルーフ用エアバッグ本体用基布による実施例と比較例のそれぞれの結果を示す。図4に示す判定において、帯電試験の結果が50V以下を満足しないものは×で示し、50V以下を十分に満足するものは◎で示した。
【0052】
(実施例1)基布25mm毎に高導電繊維束1400デニールを使用したもので縫い上げたもので、通常の洗濯乾燥工程を施して自然乾燥させて試験片を作製した。
【0053】
(実施例2)前記した条件と同様で900デニール環縫いして縫い上げ後、シリコンベースエマルジョンをコンマコーター塗布してコーテイング処理を施し、200℃×15分乾燥キュアを施して試験片を作製した。
【0054】
(実施例3)は、前記した条件に加えて900デニール環縫いして縫い上げ後、2液混合タイプのシリコンベースエラストマーをナイフコーター塗布してコーテイング処理を施し、200℃×15分乾燥キュアを施して試験片を作製した。
【0055】
又、実施例1〜3については、断熱性についての試験も行った。試験方法としては、通常の赤外線照射灯(200ワット)の下に載置した300×300mmサイズの二層の袋状の布帛上層側の内面に熱吸収ゲルを100CC注入して封止し、熱源から500mm隔離して30分間静置した後に温度計にて下層側の布帛内面温度を測定する。評価基準は、当初温度よりも10℃以上上昇したものは×として示し、10℃以下は○で示している。
【0056】
(比較例1)ウオータージェットルームでの基布打ち込みに際して通常に1400デニールで環縫いして縫い上げた後、2液混合タイプのシリコンベースエラストマーをナイフコーター塗布してコーテイング処理を施し、200℃×15分乾燥キュアを施して試験片を作製した。
【0057】
(比較例2)市販のノンコートエアバッグ布帛を使用されたものであり、1400デニールの縫製糸で環縫いして試験片を作製した。
【0058】
(比較例3)市販のノンコートエアバッグ布帛を使用されたものであり、900デニールの縫製糸で本縫いして試験片を作製した。
【0059】
(比較例4)は、市販のウオータージェット製織法により織り上げられた後、シリコンエラストマーコートされて200℃以上15分の熱収縮安定化処理を施されているものから裁断し、900デニールの縫製糸で本縫いして試験片を作製した。
【0060】
(比較例5)は、市販のラピエ製織法により織り上げられたノンコート布帛であり、洗濯処理を3回繰り返して自然乾燥したものを裁断し900デニールの縫製糸で本縫いで縫い上げて試験片を作製した。
【0061】
図4の結果に示すように、何れの比較例においても、静電気の帯電圧量は基準を満足する50Vレベルを大きく上回る値を示しており、帯電性が強いことが明白である。そしてその一方で、本発明による何れの実施例においても、経糸方向の最大耐電圧及び緯糸方向の最大帯電圧は、定常的に帯電圧防止の効果が得られる100Vよりもさらに小さい50Vも下回っていることが確認できた。
【0062】
(4)着色繊維による作業効率向上効果
また、本実施形態のルーフエアバッグ装置1によれば、ポリマー段階又は製糸段階で着色顔料及び炭化物を練り込み紡糸した繊維を導電繊維に含ませることで着色した導電繊維は、他の通常の繊維から容易に識別できるので、作業効率を向上させることができる。
【0063】
すなわち、基布15は、通常、繊維の混紡を行う製糸工程、経糸と緯糸とを交織させる製織工程、基布15にバッグ形状に合わせてパターンを作図する作図工程、作図したパターンに沿って裁断を行う裁断工程、所定の部材組み付け加工を施す加工工程、所定の加工が施された基布のそれぞれの製織方向を合わせて袋状に縫合する縫合工程、バッグを所定の順序で展開できるように折り畳んで拘束又は形状保持する折り畳み工程、収納された状態のバッグを完成品のエアバッグとして所定の取り付け角度で取り付ける取付工程によって、エアバッグ装置として完成される。これら作図工程、裁断工程、縫合工程、折り畳み工程、及び取り付け工程等において着色導電繊維を製織方向を示す基準線として用いることで、熟練者でなくても、製織方向を容易に間違わずに識別できるので、各工程の作業効率を高めることができる効果がある。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
【0065】
図5は、本変形例のルーフ用エアバッグ装置において、自動車に取り付けて展開する前の収納状態を運転席上方で一部拡大して説明する正面断面図である。本変形例が上記実施形態と相違する点は、主にルーフ用エアバッグ本体と断熱シートの構成であり、以下においてはその相違点を中心に説明する。なお、図5において、上記実施形態のものと同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0066】
図5において、本変形例のルーフ用エアバッグ装置21が備えるルーフ用エアバッグ本体22は、基布15を縫製して天井部材2の車両前後方向長さとほぼ同じ長さの細長い袋状に形成されたエアバッグ袋体23を5本有しており(図中では2本のみ示している)、それぞれのエアバッグ袋体23は内部の空気を抜いた状態で車両前後方向に渡す配置で車幅方向に併設して備えている。そして、5本のエアバッグ袋体23は両端部及び中央部で内部の流体の流通経路を連通させており、ガス流入路6aを介して接続するインフレータ24から5本全ての内部に圧力流体を順次流入できるようになっている。
【0067】
断熱シート(断熱手段)25は、2枚の断熱シート用基布26を重ね合わせ、周縁部及び中央側部分同士を縫合などにより結合して複数の小室を形成した袋体であり、内部にゲル状の断熱材25aを注入して厚みのあるシート状としたものである。
【0068】
そして天井部材2に固定されたアンカーボルト(接合部材)27が、ルーフ用エアバッグ本体22と断熱シート25のそれぞれ車幅方向の両縁部を貫通して2つのナット28を螺合し挟むことにより接合している。また、このアンカーボルト27はブラケット29を介して緩衝材30及び内装表皮5と接合しており、すなわちアンカーボルト27は天井部材2の室内側表面から順に断熱シート25、ルーフ用エアバッグ本体22、緩衝材30及び内装表皮5を接合して固定している。また、この変形例における内装表皮5にも、ルーフ用エアバッグ本体22が車室内に膨張することを許容するティアライン(不図示)が形成されている。
【0069】
そして、上記構成の自動車の衝突により上記ルーフ用エアバッグ装置21を作動させた際には、5本のエアバッグ袋体23が一斉に膨張を開始し、内装表皮5のティアラインを破って天井部材2の全体から下方に展開し、乗員の頭部を受け止める。
【0070】
以上のような本変形例のルーフ用エアバッグ装置21によれば、ルーフ用エアバッグ本体22が接合部材であるアンカーボルト27によって接合されていることにより、急激に膨張展開させた場合でも位置ずれせずに乗員の頭部に対する適切な位置での展開が可能になる。また、断熱シート25内のゲル状断熱材25aが衝撃緩衝材としても機能し、乗員の頭部に対する衝撃を吸収してルーフ用エアバッグ装置21の頭部保護機能を向上させることができる。
【0071】
また、上記構成において、ルーフ用エアバッグ本体22に直接接触して接合するアンカーボルト27が、天井部材2に固定されていることで電気的に接地するアース回路として機能し、基布15に発生した静電気を確実に接地放電させるとともに、インフレータ24への漏電を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施形態によるルーフ用エアバッグ装置の展開前の収納状態を説明する側断面図である。
【図2】図1に示したルーフ用エアバッグ装置の展開状態を説明する側断面図である。
【図3】帯電試験に用いたロータリスタチックテスタを説明する図である。
【図4】図3に示すロータリスタチックテスタで実施したエアバッグ本体用基布の帯電性試験結果を表す図である。
【図5】袋体の配置方向等の異なる変形例における収納状態を表す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 ルーフ用エアバッグ装置
2 天井部材
3A〜C 断熱シート(断熱手段)
4 自動車
5 内装表皮
6A〜C ルーフ用エアバッグ本体
7A,B インフレータ
9 前方列
10 中央列
11 後方列
15 エアバッグ本体用基布(基布)
16 エアバッグ袋体
21 ルーフ用エアバッグ装置
22 ルーフ用エアバッグ本体
23 エアバッグ袋体
24 インフレータ
25 断熱シート(断熱手段)
25a ゲル状断熱材
27 アンカーボルト(接合部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両に装備されるルーフ用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の衝突時等に乗員の身体を衝撃から保護するための各種エアバッグ装置が使用されている。
【0003】
例えば、運転席においてハンドルの回転中心から運転者側に膨張展開する運転席用エアバッグ(例えば、特許文献1参照)や、インストルメントパネルから助手席側に膨張展開する助手席用エアバッグ装置(例えば、特許文献2参照)、その他にもサイドエアバッグ装置、カーテンエアバッグ装置等など各種のエアバッグ装置が使用されている。
【0004】
【特許文献1】特許第3028524号公報(図2)
【特許文献2】特開平9−48305号公報(図17)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、衝突などによる車体横転や、倒木等の重量物落下等、自動車に大きな外力が加わる大事故が発生した場合、その際の衝撃により自動車の天井部材が破損変形し乗員の頭上から頭部に接触する可能性がある。上記従来のエアバッグ装置には特にこのような問題に配慮されておらず、乗員の頭部の確実な保護という観点からは必ずしも十分であるとは言えなかった。
【0006】
本発明は、自動車の横転時などにおいて乗員の頭部を確実に保護できるルーフ用エアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のルーフ用エアバッグ装置は、自動車の天井部に設けられ、基布を縫製した袋体からなるルーフ用エアバッグ本体と、ルーフ用エアバッグ本体を膨張展開させるための圧力流体を噴出するインフレータとを有する。
【0008】
これにより、衝突などによる車体の横転時や、倒木などといった重量物の落下により車体フレームが曲がって天井部材が乗員の頭部に近接接触した場合でも、ルーフ用エアバッグ本体をインフレータにより瞬時に膨張展開することで、天井部材との直接衝突から乗員の頭部を確実に保護することができ、自動車の安全性能を格段に向上させることができる。
【0009】
また、本発明のルーフ用エアバッグ装置は、ルーフ用エアバッグ本体が、前記自動車の天井部材と内装表皮部材との間に配置されていることが望ましい。
【0010】
これにより、通常運転時にはルーフ用エアバッグ本体が内装表皮に覆われるため室内空間の美観を損ねることがなく、また例えばルーフ用エアバッグ本体を接合部材で天井部材側に接合すれば、急激に膨張展開させた場合でも位置ずれせずに乗員の頭部に対する適切な位置での展開が可能になる。
【0011】
また、本発明のルーフ用エアバッグ装置は、ルーフ用エアバッグ本体が、保護対象の乗員ごとに設けられていることが望ましい。
【0012】
これにより、実際の乗員数とその配置に応じた必要箇所のルーフ用エアバッグ本体のみ膨張展開させることが可能となり、また乗員のいない方向への無駄な膨張がなくなることで乗員側への膨張展開の完了時間を短縮でき、より安全性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明のルーフ用エアバッグ装置は、天井部材とルーフ用エアバッグ本体の間に設けられ、天井部材からルーフ用エアバッグ本体への熱伝達を軽減する断熱手段を有することが望ましい。
【0014】
これにより、晴天時に天井部材が太陽から受ける輻射熱を室内側へ熱伝達するのを軽減させてルーフ用エアバッグ本体の熱損傷を防ぐとともに、室内温度の上昇を防いで乗車の快適性を確保できる。
【0015】
また、本発明のルーフ用エアバッグ装置は、断熱手段が、内部にゲル状の断熱材を注入した袋体であることが望ましい。
【0016】
これにより、断熱シート内のゲル状断熱材が衝撃緩衝材としても機能し、ルーフ用エアバッグ装置の頭部保護機能を向上させることができる。
【0017】
また、本発明のルーフ用エアバッグ装置は、ルーフ用エアバッグ本体が、導電性を有する導電繊維を織り込まれた基布を備えることが望ましい。
【0018】
これにより、ルーフ用エアバッグ本体の基布に静電気が発生しても、導電繊維を介して接地電位へ低減するか、コロナ放電により帯電した静電気を中和することができる。
【0019】
また、本発明のルーフ用エアバッグ装置は、導電繊維に接続して電気的に接地するアース回路を有することが望ましい。
【0020】
これにより、ルーフ用エアバッグ本体に発生した静電気は、すぐにアース回路を介して接地放電されるため静電気の帯電を確実に防止でき、またそのように放電経路を確定していることから、インフレータなどの周囲の電装部品への漏電を防ぐことができる。
【0021】
また、本発明のルーフ用エアバッグ装置は、導電繊維が、ポリマー段階又は製糸段階で着色顔料及び炭化物を練り込み紡糸した繊維を含むことが望ましい。
【0022】
これにより、着色された導電繊維を他の通常の繊維から容易に識別できるため製造工程における作業ミスをなくさせて作業効率を向上させることができる。また、炭化物により高い導電性が付与され、より効率よく静電気を中和除去できる。
【0023】
また、本発明のルーフ用エアバッグ装置は、基布が、JIS L 1094に規定された摩擦帯電圧測定法により測定した最大摩擦帯電圧が100Vより小さいことが望ましい。
【0024】
これにより、ルーフ用エアバッグ本体の基布の帯電による影響を確実に減少できる。
【0025】
また、本発明のルーフ用エアバッグ装置は、最大摩擦帯電圧が50Vより小さいことが望ましい。
【0026】
これにより、最大摩擦帯電圧が50Vより小さく、ルーフ用エアバッグ本体の基布の帯電静電気による影響を大きく減少できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、自動車の横転時などにおいて乗員の頭部を確実に保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態によるルーフ用エアバッグ装置において自動車に取り付けて展開する前の収納状態を説明する側断面図であり、図2は同じくルーフ用エアバッグ装置が展開した状態を説明する側断面図である。
【0030】
図1及び図2において、ルーフ用エアバッグ装置1は、天井部材(天井鋼板)2の室内側に配置され乗員の頭部に向けて展開可能に構成されている。すなわちルーフ用エアバッグ装置1は、自動車(車両)4の車体の天井部材2とその室内側を覆う内装表皮(内装表皮部材)5との間に、断熱シート(断熱手段)3A,3B,3Cとルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cが積層状態で収納され、それらの近傍にルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cを膨張展開させるための圧力流体(ガス)を噴出するインフレータ7A,7Bが設けられている。図示する例では、自動車4の室内において前後方向で3列に並ぶよう座席8が配置されており、運転席を含む前方列9と、中央列10と、後方列11のそれぞれで個別に構成したルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cと断熱シート3A,3B,3Cが配置されている。各断熱シート3A,3B,3Cは天井部材2と各ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cとの間に挟まれた状態で設けられている。
【0031】
また、前方列9と中央列10のそれぞれのルーフ用エアバッグ本体6A,6Bの間に前方列9のインフレータ7Aが設けられており、ガス流入路6aを介して前方列ルーフ用エアバッグ本体6Aのガスの流通経路に接続されている。中央列10と後方列11のそれぞれのルーフ用エアバッグ本体6B,6Cの間に中央列10と後方列11の兼用のインフレータ7Bが設けられており、両方のルーフ用エアバッグ本体6B,6Cのガスの流通経路にそれぞれガス流入路6aを介して接続されている。なお、各インフレータ7A,7Bの取り付け箇所は天井部材2と内装表皮5の間に限られるものではなく、各ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cの近傍であればAピラー12、Bピラー13、Cピラー14等であってもよい。
【0032】
各ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cは、基布15を縫製して車幅とほぼ同じ長さの細長い袋状に形成されたエアバッグ袋体16を3本ずつ備えた構成となっている。それぞれのエアバッグ袋体16は内部の空気を抜いて平坦にした状態で、車幅方向に渡す向きで車両前後方向に併設するよう配置されている。そして、各ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cにおいて、3本のエアバッグ袋体16同士は端部においてガス連通路6bを介し内部の流通経路を連通させており、接続するインフレータ7A,7Bから3本全ての内部にガスを順次流入できるようになっている。
【0033】
また、各ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cにおいて、基布15には導電性を有する導電繊維が織り込まれており、それら導電性繊維のいずれかが図示しないアース線により(インフレータ7A,7Bへの干渉を与えないためにインフレータ7A,7Bと導通することなく別回路で)金属製の車体などで構成するアース回路に電気的に接続され、最終的にグランド接地されている。
【0034】
各断熱シート3A,3B,3Cは、吸熱作用を有する材料で構成されたシート体であり、その下方に位置する各ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cより大きく形成され、3枚合わせると天井部材2の室内側表面のほぼ全体を覆う配置で設けられている。これにより、天井部材2からルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cへの熱伝達を軽減するようになっている。
【0035】
また、内装表皮5には、ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cが膨張するときに断裂したりあるいは車室側に開き出したりしてルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cが車室内に膨張することを許容するティアライン(破断予定線:不図示)が形成されている。なおこのティアラインの延設方向については、ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cの膨張展開がしやすいように、適宜の方向に設ければ足りる。
【0036】
そして、上記ルーフ用エアバッグ装置1において、自動車4の衝突時に図示しない検知センサ(他のエアバッグ装置と兼用としてもよい)により各インフレータ7A,7Bが点火して作動し、それぞれ接続するルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cにガスを流入させると、各ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cのエアバッグ袋体16は膨張を開始し、図2で示すように内装表皮5のティアラインを破って天井部材2の室内側から下方に展開し、乗員の頭部を受け止める。
【0037】
以上のように構成した本実施形態のルーフ用エアバッグ装置1により得られる作用効果を順を追って説明する。
【0038】
(1)膨張展開による効果
衝突などによる車体の横転時や、倒木などといった重量物の落下により車体フレームが曲がり、天井部材2が乗員の頭部に接近した場合でも、ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cを瞬時に膨張展開することで、天井部材2から乗員の頭部を確実に保護することができ、自動車4の安全性能を格段に向上させることができる。これは特に、車両重量が軽いことから衝突によって比較的横転しやすい軽自動車への適用に非常に有用である。また、上記構成のルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cは、他のエアバッグ本体(運転席用エアバッグ本体など)のように蛇腹状やロール状に折り畳んで収納する必要がないため、製作、設置作業が容易であり、製作コストを比較的抑えることができる利点がある。
【0039】
また、ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cが、前方列9、中央列10及び後方列11の乗員列単位で3つに分割され、またインフレータ7A,7Bをガスの流通経路ごと(前方列ルーフ用エアバッグ本体6Aの単独の流通経路と、中央列ルーフ用エアバッグ本体6Bと後方列ルーフ用エアバッグ本体6Cの接続された流通経路の2つの流通経路)にそれぞれ設けているため、各ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cを実際の乗員数とその配置に応じた必要箇所の流通経路にのみ膨張展開させることができる。
【0040】
つまり、図示しない制御装置において、手動設定や座席センサーなどによる乗員の有無の検知などにより、実際に搭乗している乗員の人数と配置が把握されていれば、その乗員の上方のルーフ用エアバッグ本体だけを展開させて、乗員のいない座席での展開を回避し、効率的にインフレータを作動制御できる。例えば、この実施形態の場合、乗員が運転者のみである場合には、手動設定又は座席センサの検知により前方列ルーフ用エアバッグ本体6Aだけを展開させ、他のルーフ用エアバッグ本体6B,6Cを無駄に展開させることを回避できる。
【0041】
また、ルーフ用エアバッグ本体は、全体で1つにまとまった構成ではなく、流通経路を分割(本実施形態では2つに分割)した構成としているため、それぞれを小容積化して膨張展開の完了時間を短縮することができ、より安全性を向上させることができる。この膨張展開の速度向上は、上記のインフレータの作動の効率化(無駄な電力消費の回避)によっても得られる。
【0042】
以上の作用を考慮すると、ルーフ用エアバッグ本体の流通経路は、最小単位である乗員個人ごとに全て分割し、それぞれにインフレータを設けることが最も好ましいが、必要に応じて本実施形態のように乗員単位で2分割乃至3分割したものを連通接続させてまとめた構成としてもよく、車両の規模や搭乗可能人数に対する製造コストとの均衡を考慮して設定すればよい。もちろん、天井部材2とほぼ同じ大きさで全面に渡って流通経路が連通した1つのルーフ用エアバッグ本体を設置することも可能である。
【0043】
なお、ルーフ用エアバッグ本体は、インフレータからのガスの流入により膨張展開できる構成であればよく、複数の細長いエアバッグ袋体を連通させた構成に限らない。例えば、大きな円形のエアバッグ袋体1つで構成してもよいし、又は乗員の頭部の形状、配置に合わせたエアバッグ袋体で構成してもよい。
【0044】
(2)断熱効果等
また、各断熱シート3A,3B,3Cが天井部材2と各ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cの間に設けられているため、晴天時などで天井部材2が太陽から受ける輻射熱の室内側への熱伝達を軽減させてルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cの熱損傷を防ぐとともに、室内温度の上昇を防いで乗車の快適性を確保できる。そして、夜間などで室外が低温である際に、断熱シート3A,3B,3Cに蓄積された熱を天井部材2を介して外部に放熱させればよい。また、ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cが天井部材2と内装表皮5との間に配置されているため、通常運転時の収納状態ではルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cが内装表皮5に覆われ、室内空間の美観を損ねることがない。
【0045】
(3)導電繊維による静電気防止効果
さらに、本実施形態のルーフ用エアバッグ装置1は、ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cの基布15に導電性を有する導電繊維が織り込まれ、さらにその導電繊維に接続して電気的に接地するアース回路を有している。このため、ルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cの基布15に静電気が発生しても導電繊維のコロナ放電により帯電した静電気を中和できるか、すぐにアース回路を介して接地放電されるため静電気の帯電を確実に防止できる。この結果、自動車4の衝突時においてルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cの円滑な展開を確保でき、また乗員が展開したルーフ用エアバッグ本体6A,6B,6Cに触れても不快感を与えることがない。また上記のようにアース回路によって放電経路を確定していることから、インフレータ7A、7Bなどの周囲の電装部品への漏電を防ぐことができる効果もある。
【0046】
上述したような静電気帯電防止効果を確認するために、本願発明者等が上記構成の本発明のルーフ用エアバッグ本体用の基布と、従来のエアバッグ本体用基布について実施した帯電性試験について具体的に説明する。試験方法はJIS L 1094(織物及び編物の帯電性試験方法)に準拠するものであり、図3はこのJIS L 1094で用いられるロータリスタチックテスタを説明する図である。
【0047】
図3において、エアバッグ用本体基布の帯電性試験は、JIS L 1094に規定された摩擦帯電測定法に基づきロータリスタチックテスタ(福井工業技術センター所有、興亜商会株式会社製)で実施し、100×120mmに裁断してJIS L 1094に準拠して24時間20℃40%以下の環境に保持した検体を用いて5回の測定を繰り返し行い、その最大値を採用して結果を示す。摩擦試験に供した綿布はJIS L 0803(染色堅ろう度試験用添付白布)に規定されたものである。
【0048】
まず、一般的にエアバッグ本体用基布に用いる合成繊維(ナイロン66)縫製糸1400デニールのものを用いて縫合工程で高導電性加工を施したインフレーター取り付け孔にアース回路を形成させた。高導電性を付与することについては単糸ポリマー成形段階で微粒子(1マイクロメーター単位)に粉砕された炭化物(電気抵抗値が10−3Ω-cm程度以下)を繊維中芯に5%まで練りこまれ、通常の合成繊維材料と交絡させ人為的に撚糸及び混紡したものを用いた。
【0049】
これらの高導電性を付与した縫製糸条により縫合して従来通常に用いられているエアバッグ本体を作成したものから任意の方向に3水準で試験用の供試体を150×150mmのサイズで裁断して得た。
【0050】
図3に示すように、帯電性試験は、モータ54の駆動力をVベルト55を介して伝達することにより、金属ホルダー56を介し試験片(供試体)57を取付けた回転ドラム(定速回転体)50を回転させながら、一端が固定され他端に荷重51を加えたテンション負荷用の金属ベルト56に支持された摩擦布(木綿布)52によって60秒間摩擦し、試験片57に発生した静電気の帯電圧を受電部(検出器)53で測定した。
【0051】
図4は、図3に示すロータリスタチックテスタで実施したエアバッグ本体用基布の帯電性試験結果であり、本発明のルーフ用エアバッグ本体用基布による実施例と比較例のそれぞれの結果を示す。図4に示す判定において、帯電試験の結果が50V以下を満足しないものは×で示し、50V以下を十分に満足するものは◎で示した。
【0052】
(実施例1)基布25mm毎に高導電繊維束1400デニールを使用したもので縫い上げたもので、通常の洗濯乾燥工程を施して自然乾燥させて試験片を作製した。
【0053】
(実施例2)前記した条件と同様で900デニール環縫いして縫い上げ後、シリコンベースエマルジョンをコンマコーター塗布してコーテイング処理を施し、200℃×15分乾燥キュアを施して試験片を作製した。
【0054】
(実施例3)は、前記した条件に加えて900デニール環縫いして縫い上げ後、2液混合タイプのシリコンベースエラストマーをナイフコーター塗布してコーテイング処理を施し、200℃×15分乾燥キュアを施して試験片を作製した。
【0055】
又、実施例1〜3については、断熱性についての試験も行った。試験方法としては、通常の赤外線照射灯(200ワット)の下に載置した300×300mmサイズの二層の袋状の布帛上層側の内面に熱吸収ゲルを100CC注入して封止し、熱源から500mm隔離して30分間静置した後に温度計にて下層側の布帛内面温度を測定する。評価基準は、当初温度よりも10℃以上上昇したものは×として示し、10℃以下は○で示している。
【0056】
(比較例1)ウオータージェットルームでの基布打ち込みに際して通常に1400デニールで環縫いして縫い上げた後、2液混合タイプのシリコンベースエラストマーをナイフコーター塗布してコーテイング処理を施し、200℃×15分乾燥キュアを施して試験片を作製した。
【0057】
(比較例2)市販のノンコートエアバッグ布帛を使用されたものであり、1400デニールの縫製糸で環縫いして試験片を作製した。
【0058】
(比較例3)市販のノンコートエアバッグ布帛を使用されたものであり、900デニールの縫製糸で本縫いして試験片を作製した。
【0059】
(比較例4)は、市販のウオータージェット製織法により織り上げられた後、シリコンエラストマーコートされて200℃以上15分の熱収縮安定化処理を施されているものから裁断し、900デニールの縫製糸で本縫いして試験片を作製した。
【0060】
(比較例5)は、市販のラピエ製織法により織り上げられたノンコート布帛であり、洗濯処理を3回繰り返して自然乾燥したものを裁断し900デニールの縫製糸で本縫いで縫い上げて試験片を作製した。
【0061】
図4の結果に示すように、何れの比較例においても、静電気の帯電圧量は基準を満足する50Vレベルを大きく上回る値を示しており、帯電性が強いことが明白である。そしてその一方で、本発明による何れの実施例においても、経糸方向の最大耐電圧及び緯糸方向の最大帯電圧は、定常的に帯電圧防止の効果が得られる100Vよりもさらに小さい50Vも下回っていることが確認できた。
【0062】
(4)着色繊維による作業効率向上効果
また、本実施形態のルーフエアバッグ装置1によれば、ポリマー段階又は製糸段階で着色顔料及び炭化物を練り込み紡糸した繊維を導電繊維に含ませることで着色した導電繊維は、他の通常の繊維から容易に識別できるので、作業効率を向上させることができる。
【0063】
すなわち、基布15は、通常、繊維の混紡を行う製糸工程、経糸と緯糸とを交織させる製織工程、基布15にバッグ形状に合わせてパターンを作図する作図工程、作図したパターンに沿って裁断を行う裁断工程、所定の部材組み付け加工を施す加工工程、所定の加工が施された基布のそれぞれの製織方向を合わせて袋状に縫合する縫合工程、バッグを所定の順序で展開できるように折り畳んで拘束又は形状保持する折り畳み工程、収納された状態のバッグを完成品のエアバッグとして所定の取り付け角度で取り付ける取付工程によって、エアバッグ装置として完成される。これら作図工程、裁断工程、縫合工程、折り畳み工程、及び取り付け工程等において着色導電繊維を製織方向を示す基準線として用いることで、熟練者でなくても、製織方向を容易に間違わずに識別できるので、各工程の作業効率を高めることができる効果がある。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
【0065】
図5は、本変形例のルーフ用エアバッグ装置において、自動車に取り付けて展開する前の収納状態を運転席上方で一部拡大して説明する正面断面図である。本変形例が上記実施形態と相違する点は、主にルーフ用エアバッグ本体と断熱シートの構成であり、以下においてはその相違点を中心に説明する。なお、図5において、上記実施形態のものと同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0066】
図5において、本変形例のルーフ用エアバッグ装置21が備えるルーフ用エアバッグ本体22は、基布15を縫製して天井部材2の車両前後方向長さとほぼ同じ長さの細長い袋状に形成されたエアバッグ袋体23を5本有しており(図中では2本のみ示している)、それぞれのエアバッグ袋体23は内部の空気を抜いた状態で車両前後方向に渡す配置で車幅方向に併設して備えている。そして、5本のエアバッグ袋体23は両端部及び中央部で内部の流体の流通経路を連通させており、ガス流入路6aを介して接続するインフレータ24から5本全ての内部に圧力流体を順次流入できるようになっている。
【0067】
断熱シート(断熱手段)25は、2枚の断熱シート用基布26を重ね合わせ、周縁部及び中央側部分同士を縫合などにより結合して複数の小室を形成した袋体であり、内部にゲル状の断熱材25aを注入して厚みのあるシート状としたものである。
【0068】
そして天井部材2に固定されたアンカーボルト(接合部材)27が、ルーフ用エアバッグ本体22と断熱シート25のそれぞれ車幅方向の両縁部を貫通して2つのナット28を螺合し挟むことにより接合している。また、このアンカーボルト27はブラケット29を介して緩衝材30及び内装表皮5と接合しており、すなわちアンカーボルト27は天井部材2の室内側表面から順に断熱シート25、ルーフ用エアバッグ本体22、緩衝材30及び内装表皮5を接合して固定している。また、この変形例における内装表皮5にも、ルーフ用エアバッグ本体22が車室内に膨張することを許容するティアライン(不図示)が形成されている。
【0069】
そして、上記構成の自動車の衝突により上記ルーフ用エアバッグ装置21を作動させた際には、5本のエアバッグ袋体23が一斉に膨張を開始し、内装表皮5のティアラインを破って天井部材2の全体から下方に展開し、乗員の頭部を受け止める。
【0070】
以上のような本変形例のルーフ用エアバッグ装置21によれば、ルーフ用エアバッグ本体22が接合部材であるアンカーボルト27によって接合されていることにより、急激に膨張展開させた場合でも位置ずれせずに乗員の頭部に対する適切な位置での展開が可能になる。また、断熱シート25内のゲル状断熱材25aが衝撃緩衝材としても機能し、乗員の頭部に対する衝撃を吸収してルーフ用エアバッグ装置21の頭部保護機能を向上させることができる。
【0071】
また、上記構成において、ルーフ用エアバッグ本体22に直接接触して接合するアンカーボルト27が、天井部材2に固定されていることで電気的に接地するアース回路として機能し、基布15に発生した静電気を確実に接地放電させるとともに、インフレータ24への漏電を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施形態によるルーフ用エアバッグ装置の展開前の収納状態を説明する側断面図である。
【図2】図1に示したルーフ用エアバッグ装置の展開状態を説明する側断面図である。
【図3】帯電試験に用いたロータリスタチックテスタを説明する図である。
【図4】図3に示すロータリスタチックテスタで実施したエアバッグ本体用基布の帯電性試験結果を表す図である。
【図5】袋体の配置方向等の異なる変形例における収納状態を表す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 ルーフ用エアバッグ装置
2 天井部材
3A〜C 断熱シート(断熱手段)
4 自動車
5 内装表皮
6A〜C ルーフ用エアバッグ本体
7A,B インフレータ
9 前方列
10 中央列
11 後方列
15 エアバッグ本体用基布(基布)
16 エアバッグ袋体
21 ルーフ用エアバッグ装置
22 ルーフ用エアバッグ本体
23 エアバッグ袋体
24 インフレータ
25 断熱シート(断熱手段)
25a ゲル状断熱材
27 アンカーボルト(接合部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の天井部に設けられ、基布を縫製した袋体からなるルーフ用エアバッグ本体と、
前記ルーフ用エアバッグ本体を膨張展開させるための圧力流体を噴出するインフレータとを有することを特徴とするルーフ用エアバッグ装置。
【請求項2】
請求項1記載のルーフ用エアバッグ装置において、
前記ルーフ用エアバッグ本体は、前記自動車の天井部材と内装表皮部材との間に配置されていることを特徴とするルーフ用エアバッグ装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のルーフ用エアバッグ装置において、
前記ルーフ用エアバッグ本体は、保護対象の乗員ごとに設けられていることを特徴とするルーフ用エアバッグ装置。
【請求項4】
請求項1記載のルーフ用エアバッグ装置において、
前記天井部材と前記ルーフ用エアバッグ本体の間に設けられ、前記天井部材から前記ルーフ用エアバッグ本体への熱伝達を軽減する断熱手段を有することを特徴とするルーフ用エアバッグ装置。
【請求項5】
請求項4記載のルーフ用エアバッグ装置において、
前記断熱手段は、内部にゲル状の断熱材を注入した袋体であることを特徴とするルーフ用エアバッグ装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載のルーフ用エアバッグ装置において、
前記ルーフ用エアバッグ本体は、導電性を有する導電繊維が織り込まれた前記基布を備えていることを特徴とするルーフ用エアバッグ装置。
【請求項7】
請求項6記載のルーフ用エアバッグ装置において、
前記導電繊維に接続して電気的に接地するアース回路を有することを特徴とするルーフ用エアバッグ装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載のルーフ用エアバッグ装置において、
前記導電繊維は、ポリマー段階又は製糸段階で着色顔料及び炭化物を練り込み紡糸した繊維を含むことを特徴とするルーフ用エアバッグ装置
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項記載のルーフ用エアバッグ装置において、
前記基布は、JIS L 1094に規定された摩擦帯電圧測定法により測定した最大摩擦帯電圧が100Vより小さいことを特徴とするルーフ用エアバッグ装置。
【請求項10】
請求項9記載のルーフ用エアバッグ装置において、
前記最大摩擦帯電圧が50Vより小さいことを特徴とするルーフ用エアバッグ装置。
【請求項1】
自動車の天井部に設けられ、基布を縫製した袋体からなるルーフ用エアバッグ本体と、
前記ルーフ用エアバッグ本体を膨張展開させるための圧力流体を噴出するインフレータとを有することを特徴とするルーフ用エアバッグ装置。
【請求項2】
請求項1記載のルーフ用エアバッグ装置において、
前記ルーフ用エアバッグ本体は、前記自動車の天井部材と内装表皮部材との間に配置されていることを特徴とするルーフ用エアバッグ装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のルーフ用エアバッグ装置において、
前記ルーフ用エアバッグ本体は、保護対象の乗員ごとに設けられていることを特徴とするルーフ用エアバッグ装置。
【請求項4】
請求項1記載のルーフ用エアバッグ装置において、
前記天井部材と前記ルーフ用エアバッグ本体の間に設けられ、前記天井部材から前記ルーフ用エアバッグ本体への熱伝達を軽減する断熱手段を有することを特徴とするルーフ用エアバッグ装置。
【請求項5】
請求項4記載のルーフ用エアバッグ装置において、
前記断熱手段は、内部にゲル状の断熱材を注入した袋体であることを特徴とするルーフ用エアバッグ装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載のルーフ用エアバッグ装置において、
前記ルーフ用エアバッグ本体は、導電性を有する導電繊維が織り込まれた前記基布を備えていることを特徴とするルーフ用エアバッグ装置。
【請求項7】
請求項6記載のルーフ用エアバッグ装置において、
前記導電繊維に接続して電気的に接地するアース回路を有することを特徴とするルーフ用エアバッグ装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載のルーフ用エアバッグ装置において、
前記導電繊維は、ポリマー段階又は製糸段階で着色顔料及び炭化物を練り込み紡糸した繊維を含むことを特徴とするルーフ用エアバッグ装置
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項記載のルーフ用エアバッグ装置において、
前記基布は、JIS L 1094に規定された摩擦帯電圧測定法により測定した最大摩擦帯電圧が100Vより小さいことを特徴とするルーフ用エアバッグ装置。
【請求項10】
請求項9記載のルーフ用エアバッグ装置において、
前記最大摩擦帯電圧が50Vより小さいことを特徴とするルーフ用エアバッグ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2006−175965(P2006−175965A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−370401(P2004−370401)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000108591)TKJ株式会社 (111)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000108591)TKJ株式会社 (111)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]