説明

レイヤ3スイッチの切替方法

【課題】パケット消失を防止することができるレイヤ3スイッチの切替方法を提供する。
【解決手段】第1VRRPグループG1と、第2VRRPグループG2と、第1マスタルータR1aと第2マスタルータR2aおよび第2スレーブルータR2bとがそれぞれ接続され、第1スレーブルータR1bと第2マスタルータR2aおよび第2スレーブルータR2bとがそれぞれ接続されているネットワークのレイヤ3スイッチの切替方法であって、第1スレーブルータR1bは、第1マスタルータR1aからVRRP広告が一定時間内に届かないと判断すると、第1スレーブルータR1bがマスタルータに昇格し、第1マスタルータR1aのIPアドレスと第1スレーブルータR1bのMACアドレスとを対応させたgratuitousARPを第2マスタルータR2aに送信し、第2マスタルータR2aはARPテーブルを変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パケット消失を防止することができるレイヤ3スイッチの切替方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のVRRP(Virtual Rounter Redundancy Protocolの略である)を用いたルータの冗長化は、VRRPでは、複数のルータを同じVRRPグループに所属させ、同一の仮想IPアドレスを使用することで、ルータを冗長化している。各端末においては、1つの仮想IPアドレスをデフォルトゲートウェイに設定しておけばよい。ルータにおいては、パケットの転送処理はマスタルータのみが行い、その他のスレーブルータは行わない。また、グループ内で1つがマスタルータとなり、一定周期でVRRP広告と呼ばれるパケットを送信する。
【0003】
マスタルータに障害が発生すると、VRRP広告を送信できなくなる。スレーブルータはこれを検知すると、自分がマスタルータに昇格する。そして、ただちに、引き継いだ仮想IPアドレスと自身のMACアドレスを、端末側ポートのLANセグメントへ、gratuitousARPでブロードキャストする。これによって、各端末は、仮想IPアドレスとMACアドレスの新たな対応を知ることができる。このVRRPによるルータの切替には数秒かかるが、各端末ではデフォルトゲートウェイのIPアドレスを変更する必要はない。
【0004】
そして、VRRPグループのマスタルータが切り替わった後の、端末から他の端末へのパケットは、デフォルトゲートウェイつまり仮想IPアドレス宛に送出されるので、マスタルータに昇格したスレーブルータがパケットを受信する。以後は、各ルータのルーティング情報に従って、他のルータに転送され、目的の端末へ転送される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−6516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のレイヤ3スイッチの切替方法は、同一VRRPグループ内のルータ同士はマスタルータの障害を検知できるが、他のVRRPグループのルータは、他のVRRPグループのマスタルータに障害が起こったことを検知することができない。そこで、他のVRRPグループに接続されている端末からマスタルータの変更された一方のVRRPグループに接続されている端末へのパケットを送信する場合、他のVRRPグループのマスタルータは、自身が持つルーティング情報に従ってパケットを転送しようとするが、通常のマスタルータが変更されておりリンクダウンしているため、パケット消失してしまう。この対応としては、ルータ同士は互いにルーティングプロトコル(OSPFやRIP)で情報をやり取りし、正しいルーティング情報に書き換えている。しかし、その状態になり通信が復旧するまでに、数秒〜数十秒かかり、その間のパケットが消失するという問題点があった。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、パケット消失を防止することができるレイヤ3スイッチの切替方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、
端末が接続され、第1マスタルータと第1スレーブルータとを有する第1VRRPグループと、
端末が接続され、第2マスタルータと第2スレーブルータとを有する第2VRRPグループと、
上記第1マスタルータと上記第2マスタルータおよび上記第2スレーブルータとがそれぞれ接続され、
上記第1スレーブルータと上記第2マスタルータおよび上記第2スレーブルータとがそれぞれ接続されているネットワークのレイヤ3スイッチの切替方法であって、
上記第1スレーブルータは、上記第1マスタルータからVRRP広告が一定時間内に届かないと判断すると、上記第1スレーブルータがマスタルータに昇格し、上記第1マスタルータのIPアドレスと上記第1スレーブルータのMACアドレスとを対応させたgratuitousARPを上記第2マスタルータに送信し、上記第2マスタルータはARPテーブルを変更するものである。
【0009】
また、この発明は、
端末が接続されマスタルータとスレーブルータとを有するVRRPグループを複数グループ有し、
対向する上記VRRPグループのマスタルータ同士とスレーブルータ同士とが互いに接続されているネットワークのレイヤ3スイッチの切替方法であって、
上記VRRPグループ内で上記マスタルータは上記スレーブルータのルーティングテーブル・ARPテーブル・FDBテーブルを共有し、上記マスタルータはパケット転送できないと判断すると、上記スレーブルータの上記ルーティングテーブル・ARPテーブル・FDBテーブルから上記スレーブルータにおいてパケット転送できるか否かを判断し、可能であると判断すると当該スレーブルータへパケット転送し処理を行うものである。
【0010】
また、この発明は、
端末が接続されマスタルータとスレーブルータとを有するVRRPグループを複数グループ有し、
対向する上記VRRPグループのマスタルータ同士とスレーブルータ同士とが互いに接続されているネットワークのレイヤ3スイッチの切替方法であって、
上記マスタルータはパケット転送できないと判断すると、上記VRRPグループ内の上記スレーブルータにパケット転送し、当該スレーブルータはルーティングテーブル・ARPテーブル・FDBテーブルに基づいてパケット転送し処理を行うものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明のレイヤ3スイッチの切替方法は、
端末が接続され、第1マスタルータと第1スレーブルータとを有する第1VRRPグループと、
端末が接続され、第2マスタルータと第2スレーブルータとを有する第2VRRPグループと、
上記第1マスタルータと上記第2マスタルータおよび上記第2スレーブルータとがそれぞれ接続され、
上記第1スレーブルータと上記第2マスタルータおよび上記第2スレーブルータとがそれぞれ接続されているネットワークのレイヤ3スイッチの切替方法であって、
上記第1スレーブルータは、上記第1マスタルータからVRRP広告が一定時間内に届かないと判断すると、上記第1スレーブルータがマスタルータに昇格し、上記第1マスタルータのIPアドレスと上記第1スレーブルータのMACアドレスとを対応させたgratuitousARPを上記第2マスタルータに送信し、上記第2マスタルータはARPテーブルを変更するので、
第2マスタルータから第1スレーブルータにただちにパケットを転送できるため、パケット消失を防止することができる。
【0012】
また、この発明のレイヤ3スイッチの切替方法は、
端末が接続されマスタルータとスレーブルータとを有するVRRPグループを複数グループ有し、
対向する上記VRRPグループのマスタルータ同士とスレーブルータ同士とが互いに接続されているネットワークのレイヤ3スイッチの切替方法であって、
上記VRRPグループ内で上記マスタルータは上記スレーブルータのルーティングテーブル・ARPテーブル・FDBテーブルを共有し、上記マスタルータはパケット転送できないと判断すると、上記スレーブルータの上記ルーティングテーブル・ARPテーブル・FDBテーブルから上記スレーブルータにおいてパケット転送できるか否かを判断し、可能であると判断すると当該スレーブルータへパケット転送し処理を行うので、
同一VRRPグループのスレーブルータから他のVRRPグループのスレーブルータを介してパケットを転送できるため、パケット消失を防止することができる。
【0013】
また、この発明のレイヤ3スイッチの切替方法は、
端末が接続されマスタルータとスレーブルータとを有するVRRPグループを複数グループ有し、
対向する上記VRRPグループのマスタルータ同士とスレーブルータ同士とが互いに接続されているネットワークのレイヤ3スイッチの切替方法であって、
上記マスタルータはパケット転送できないと判断すると、上記VRRPグループ内の上記スレーブルータにパケット転送し、当該スレーブルータはルーティングテーブル・ARPテーブル・FDBテーブルに基づいてパケット転送し処理を行うので、
同一VRRPグループのスレーブルータから他のVRRPグループのスレーブルータを介してパケットを転送できるため、パケット消失を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1のネットワークの構成を示す図である。
【図2】図1に示したネットワークの第1VRRPグループの各ポート情報を示した図である。
【図3】図1に示したネットワークの障害が発生した場合を示した図である。
【図4】図3に示したネットワークの障害後のパケット送信の経路を示した図である。
【図5】この発明の実施の形態2のネットワークの構成を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態3のネットワークの構成を示す図である。
【図7】図6に示したネットワークの障害後のパケット送信の経路を示した図である。
【図8】この発明の実施の形態4のネットワークの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
以下、本願発明の実施の形態について説明する。図1はこの発明の実施の形態1におけるネットワークの構成を示す図、図2は図1に示したネットワークの第1VRRPグループG1の各ポート情報を示した図、図3は図1に示したネットワークに障害が発生した場合の状態を示した図、図4は図3に示したネットワークの障害後のパケット送信の経路を示した図である。
【0016】
図において、端末T1が接続され、第1マスタルータR1aと第1スレーブルータR1bとを有する第1VRRPグループG1と、端末T2が接続され、第2マスタルータR2aと第2スレーブルータR2bとを有する第2VRRPグループG2とを有する。そして、第1マスタルータR1aと第2マスタルータR2aおよび第2スレーブルータR2bとがそれぞれ接続され、第1スレーブルータR1bと第2マスタルータR2aおよび第2スレーブルータR2bとがそれぞれ接続されネットワークが構成されている。具体的には、第1マスタルータR1aのポート2(R1aP2)と第2マスタルータR2aのポート2(R2aP2)とが接続され、第1マスタルータR1aのポート3(R1aP3)と第2スレーブルータR2bのポート2(R2bP2)とが接続され、第1スレーブルータR1bのポート2(R1bP2)と第2マスタルータR2aのポート3(R2aP3)とが接続され、第1スレーブルータR1bのポート3(R1bP3)と第2スレーブルータR2bのポート3(R2bP3)とがそれぞれ接続されている。
【0017】
第1スレーブルータR1bは、第1マスタルータR1aからVRRP広告が一定時間内に届かないと判断すると、第1スレーブルータR1bが第1VRRPグループG1のマスタルータに昇格し、第1マスタルータR1aのIPアドレスと第1スレーブルータR1bのMACアドレスとを対応させたgratuitousARPをポート2(R1bP2)から第2マスタルータR2aのポート3(R2aP3)に送信し、第2マスタルータR2aはARPテーブルを変更する。同時に、第1マスタルータR1aのIPアドレスと第1スレーブルータR1bのMACアドレスとを対応させたgratuitousARPをポート3(R1bP3)から第2スレーブルータR2bのポート3(R2bP3)に送信し、第2スレーブルータR2bはARPテーブルを変更する。
【0018】
第1マスタルータR1aの各ポート情報は、通常状態の場合は図2に示すように、
○第1マスタルータR1aのポート1(R1aP1)
IPアドレス=[R1aP1のIP]
仮想IPアドレス=[仮想IP]
MACアドレス=[R1aP1のMAC]
○第1マスタルータR1aのポート2(R1aP2)
IPアドレス=[R1aP2のIP]
MACアドレス=[R1aP2のMAC]
○第1マスタルータR1aのポート3(R1aP3)
IPアドレス=[R1aP3のIP]
MACアドレス=[R1aP3のMAC]
○第1スレーブルータR1bのポート1(R1bP1)
IPアドレス=[R1bP1のIP]
仮想IPアドレス=[仮想IP]
MACアドレス=[R1bP1のMAC]
○第1スレーブルータR1bのポート2(R1bP2)
IPアドレス=[R1bP2のIP]
MACアドレス=[R1bP2のMAC]
○第1スレーブルータR1bのポート3(R1bP3)
IPアドレス=[R1bP3のIP]
MACアドレス=[R1bP3のMAC]
である。
【0019】
次に上記のように構成された実施の形態1のネットワークのレイヤ3スイッチの切替方法について説明する。まず、第1マスタルータR1aは第1スレーブルータR1bに定期的にVRRP広告を送信している。そして、第1マスタルータR1aに障害が発生すると、VRRP広告を送信できなくなる。よって、第1スレーブルータR1bは第1マスタルータR1aからVRRP広告が一定期間送信されないと、第1マスタルータR1aに障害が発生したと判断する。次に、第1スレーブルータR1bは、自身がマスタルータに昇格し、ただちにgratuitousARPをLANセグメントに送信する。通常のVRRP技術では、端末側ポート(スレーブルータR1bのポート1(R1bP1))から送信するが、本実施の形態1では、trunk側ポートの、第1スレーブルータR1bのポート2(R1bP2)およびポート3(R1bP3)からもgratuitousARPを送信する。
【0020】
この際に、例えば、図3に示すように、第1スレーブルータR1bのポート2(R1bP2)からは、「第1マスタルータR1aのポート2(R1aP2)のIPアドレス」と「第1スレーブルータR1bのポート2(R1bP2)のMACアドレス」との対応を示すgratuitousARPを、ポート3からは、「第1マスタルータR1aのポート3(R1aP3)のIPアドレス」と「第1スレーブルータR1bのポート3(R1bP3)のMACアドレス」との対応を示すgratuitousARPをそれぞれ送信している。これによって第2マスタルータR2aおよび第2スレーブルータR2bはそれぞれARPテーブルを変更する。
【0021】
そして、図4に示すように、端末T2から端末T1へのパケット送信は、第2マスタルータR2aにおいて、自身が持つルーティング情報に従い、第1マスタルータR1aのポート2(R1aP2)のIPアドレスへ転送しようとする。そして、自身が持つARPテーブルによると、第1マスタルータR1aのポート2(R1aP2)のIPアドレスに対応するMACアドレスは、第1スレーブルータR1bからのgratuitousARPによって変更されているので、第1スレーブルータR1bのポート2(R1bP2)のMACアドレスが書かれている。さらに、自身が持つFDBテーブルによると、第1スレーブルータR1bのポート2(R1bP2)のMACアドレスと接続しているポートは、第2マスタルータのポート3(R2aP3)と書かれている。
【0022】
よって、第2マスタルータR2aは、第1マスタルータR1aのポート2へ転送するパケットを、第2マスタルータR2aのポート3から第1スレーブルータR1bのポート2のMACアドレス宛に転送する。そして、第1スレーブルータR1bのポート1から端末T1にパケットが送信される。これによって、動的ルーティングプロトコルによって正しいルーティング情報に書き換わるまで待つことなく、通信を復旧させることができる。
【0023】
また、第2マスタルータR2aに障害が発生している場合であれば、第2スレーブルータR2bがマスタルータに昇格している。よって、第2スレーブルータR2bは、上記場合と同様に、ARPテーブルが変更されているため、第2スレーブルータR2bのポート3から第1スレーブルータR1bのポート3に対してパケットを転送し、上記場合と同様に端末T2から端末T1にパケットが送信される。
【0024】
上記のように行われたレイヤ3スイッチの切替方法によれば、動的ルーティングプロトコルによって正しいルーティング情報に書き換わるのを待つことなく、第2マスタルータから第1スレーブルータにパケットを送信、または、第2マスタルータに障害が発生している場合であれば、第2スレーブルータから第1スレーブルータにパケットを送信できるため、通信をただちに復旧させることができる。
【0025】
尚、上記実施の形態1では、第1スレーブルータから第2マスタルータおよび第2スレーブルータにgratuitousARPを送信する例を示したが、これに限られることはなく、第2マスタルータが正常である場合は第2スレーブルータに送信する必要はないため、第1スレーブルータから第2マスタルータのみにgratuitousARPを送信するのみであってもよい。但し、第2マスタルータにも同時に障害が発生しているような場合には、上記実施の形態1と同様に、第1スレーブルータから第2スレーブルータにgratuitousARPを送信しておけば、第2スレーブルータから第1スレーブルータにパケット送信して処理することができる。
【0026】
また、第2マスタルータおよび第2スレーブルータは上記実施の形態1に示した第1マスタルータおよび第1スレーブルータと同様の動作を行うように設定することが可能であり、同様の効果を奏することができる。また、1つの端末が接続されている例を示しているが、これに限られることはなく、複数の端末が接続されていても同様に行うことができる、また、スレーブルータを1つの例を示したがこれに限られることはなく、複数のスレーブルータを配設するようにしても、同様に行うことができ、同様の効果を奏することができる。
【0027】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2のネットワークの構成を示す図である。図において、上記実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。上記実施の形態1ではあらかじめ第1スレーブルータに送信用のgratuitousARPを設定する例を示したが、これに限られることはなく、例えば、第1マスタルータR1aは、自身のポート情報・IPアドレス情報を第1スレーブルータR1bに送信し、第1スレーブルータR1bはこのポート情報・IPアドレス情報(trunkポートの情報)に基づいてgratuitousARPを作成するようにすればよい。このようにすれば、あらかじめgratuitousARPを設定する必要がなく、新しいルータを設置する場合などに有効的である。
【0028】
具体的には、同一VRRPグループの第1マスタルータR1aは、自身のVRRP動作ポート以外のポート、すなわち動的ルーティングプロトコル動作ポート(いわゆるtrunkポートなど)のポート番号・IPアドレス・MACアドレスの対応を、同一VRRPグループ内の他のルータすなわち、第1スレーブルータR1bに通知しておく。尚、この通知のタイミングは、VRRP広告と同じく定周期でもよいし、一度通知するだけでもよい。そして、第1スレーブルータR1bは、この情報を記憶しておく。
【0029】
そして、第1マスタルータR1aに障害が発生すると、第1スレーブルータR1bはマスタルータに昇格し、記憶しておいた情報に基づいて、上記実施の形態1と同様に、 第1スレーブルータR1bのポート2(R1bP2)からは、「第1マスタルータR1aのポート2(R1aP2)のIPアドレス」と「第1スレーブルータR1bのポート2(R1bP2)のMACアドレス」との対応を示すgratuitousARPを、ポート3からは、「第1マスタルータR1aのポート3(R1aP3)のIPアドレス」と「第1スレーブルータR1bのポート3(R1bP3)のMACアドレス」との対応を示すgratuitousARPをそれぞれ送信している。そして、これによって第2マスタルータR2aおよび第2スレーブルータR2bはそれぞれARPテーブルを変更する。
【0030】
上記のように構成された実施の形態2のレイヤ3スイッチの切替方法によれば、上記実施の形態1と同様に、第2マスタルータおよび第2スレーブルータのARPテーブルをそれぞれ変更することができる。よって、上記実施の形態1と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、送信するgratuitousARPの内容について、詳細な事前設定が必要でなくなり、平常時に自動的に情報を送受信し記憶しておくことにより事前設定を大幅に削減することができる。
【0031】
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3のネットワークの構成を示す図、図7は図6に示したネットワークの障害後のパケット送信の経路を示した図である。図において、上記各実施の形態と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。上記各実施の形態とはtrunk側のネットワーク構成が異なる。これは、各拠点にルータを2台設置して冗長化しながら、第1VRRPグループG1と第2VRRPグループG2間のケーブルは上記各実施の形態では4本であったものを、第1マスタルータR1a、第2マスタルータR2a同士と第1スレーブルータR1b、第2スレーブルータR2b同士とが互いに接続するケーブルの2本に減らしたものである。
【0032】
このような構成の場合、上記各実施の形態と同様に、第1マスタルータR1aの障害が発生し、第1スレーブルータR1bがマスタルータに昇格し、第1スレーブルータR1bからgratuitousARPを送信すると、第2スレーブルータR2bのARPテーブルは更新できるが、第2マスタルータR2aのARPテーブルは更新できない。つまり、端末T2から端末T1へのパケット送信は、第2マスタルータR2aが受信し、自身のルーティング情報に従って第2マスタルータR2aのポート2から第1マスタルータR1aへ転送しようとして、パケットが消失してしまう。
【0033】
そこで、本実施の形態3では、各VRRPグループ内において各スレーブルータR1b、R2bのルーティング情報・ARPテーブル・FDBテーブルを各マスタルータR1a、R2aにそれぞれ送信しておく。そして、図7に示すように、端末T2から端末T1にパケットを転送する場合、第2マスタルータR2a自身のルーティング情報・ARPテーブル・FDBテーブルを参照するが、さらに、第1マスタルータR1aに障害が発生し、第2マスタルータR2aのパケット転送先ポートがリンクダウンしている場合は、第2スレーブルータR2bのルーティング情報・ARPテーブル・FDBテーブルを調査する。そして、第2スレーブルータR2bのこれら情報からパケット転送可能であると判断すると、第2マスタルータR2aは第2スレーブルータR2bへパケット転送する。そして、第2スレーブルータR2bは第1スレーブルータR1bにパケットを送信する。そして、第1スレーブルータR1bは端末T1にパケットを送信する。
【0034】
上記のように行われた実施の形態3のレイヤ3スイッチの切替方法によれば、動的ルーティングプロトコルによって正しいルーティング情報に書き換わるのを待つことなく、また、スレーブルータがマスタルータに昇格する前であっても、同一VRRPグループのスレーブルータから他のVRRPグループのスレーブルータを介してパケットを転送できるため、通信をただちに復旧させることができる。また、あらかじめマスタルータにてパケット経路を判断して送信することができるため、処理を速く、確実に行うことができる。
【0035】
実施の形態4.
図8はこの発明の実施の形態4のネットワークの構成を示す図である。図において、上記各実施の形態と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。上記実施の形態3と同様の構成であるが、本実施の形態4においては、VRRPグループ同士でルーティング情報・ARPテーブル・FDBテーブルを共有しない。第2マスタルータR2aでは、自身のルーティング情報・ARPテーブル・FDBテーブルを参照し、パケット転送先ポートがリンクダウンしていた場合は、同一第2VRRPグループG2の別の第2スレーブルータR2bへ転送する。その際、第2マスタルータR2aではパケット転送できなかったことを示すマーキングをしておく。第2スレーブルータR2bでは、自身のルーティング情報・ARPテーブル・FDBテーブルを参照し、パケット転送ポートを調査する。
【0036】
図8は、例えば、第2マスタルータR2aからのパケット転送先がこの場合は、第2スレーブルータR2bから第1スレーブルータR1bとなり、第1スレーブルータR1bはリンクダウンしていないので、第1スレーブルータR1bへ転送でき、端末T1にパケットが送信できる。尚、万一、第1スレーブルータR1bへのリンクがリンクダウンしていた場合、同一VRRPグループの別ルータ(図示しない他のスレーブルータを示す)へ転送しようとする。しかし、図8の場合においては、別ルータが第2マスタルータR2aしか存在しない。よって、パケットには第2マスタルータR2aでパケット転送できなかったことを示すマーキングが付いているので、これ以上のパケット転送は行わない。
【0037】
上記のように行われた実施の形態4のレイヤ3スイッチの切替方法によれば、動的ルーティングプロトコルによって正しいルーティング情報に書き換わるのを待つことなく、また、スレーブルータがマスタルータに昇格する前であっても、同一VRRPグループのスレーブルータから他のVRRPグループのスレーブルータを介してパケットを転送できるため、通信をただちに復旧させることができる。また、ルーティング情報・ARPテーブル・FDBテーブルを常に送信しておく必要がないため、平常時の処理負荷を低減しながら上記実施の形態3と同一の効果を得ることができる。
【0038】
尚、上記実施の形態3および実施の形態4は上記実施の形態1および実施の形態2の構成であっても採用することができ、同様の効果を奏することができる。
【0039】
また、上記各実施の形態においては、説明の便宜上、第1マスタルータ、第1スレーブルータ、第2マスタルータ、第1スレーブルータと定義してそれぞれを示したが、この例に限られることはなく、第1マスタルータ、第1スレーブルータ、第2マスタルータ、第1スレーブルータのそれぞれの関係が成り立つ場合であれば同様に行うことができ、同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0040】
T1,T2 端末、R1a 第1マスタルータ、R2a 第2マスタルータ、
R1b 第1スレーブルータ、R2b 第2スレーブルータ、
G1 第1VRRPグループ、G2 第2VRRPグループ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末が接続され、第1マスタルータと第1スレーブルータとを有する第1VRRPグループと、
端末が接続され、第2マスタルータと第2スレーブルータとを有する第2VRRPグループと、
上記第1マスタルータと上記第2マスタルータおよび上記第2スレーブルータとがそれぞれ接続され、
上記第1スレーブルータと上記第2マスタルータおよび上記第2スレーブルータとがそれぞれ接続されているネットワークのレイヤ3スイッチの切替方法であって、
上記第1スレーブルータは、上記第1マスタルータからVRRP広告が一定時間内に届かないと判断すると、上記第1スレーブルータがマスタルータに昇格し、上記第1マスタルータのIPアドレスと上記第1スレーブルータのMACアドレスとを対応させたgratuitousARPを上記第2マスタルータに送信し、上記第2マスタルータはARPテーブルを変更することを特徴とするレイヤ3スイッチの切替方法。
【請求項2】
上記第1スレーブルータはマスタルータに昇格すると、上記第1マスタルータのIPアドレスと上記第1スレーブルータのMACアドレスとを対応させたgratuitousARPを上記第2スレーブルータに送信し、上記第2スレーブルータはARPテーブルを変更することを特徴とする請求項1に記載のレイヤ3スイッチの切替方法。
【請求項3】
上記第1マスタルータは、自身のポート情報・IPアドレス情報を上記第1スレーブルータに送信し、上記第1スレーブルータは上記ポート情報・IPアドレス情報に基づいて上記gratuitousARPを作成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレイヤ3スイッチの切替方法。
【請求項4】
端末が接続されマスタルータとスレーブルータとを有するVRRPグループを複数グループ有し、
対向する上記VRRPグループのマスタルータ同士とスレーブルータ同士とが互いに接続されているネットワークのレイヤ3スイッチの切替方法であって、
上記VRRPグループ内で上記マスタルータは上記スレーブルータのルーティングテーブル・ARPテーブル・FDBテーブルを共有し、上記マスタルータはパケット転送できないと判断すると、上記スレーブルータの上記ルーティングテーブル・ARPテーブル・FDBテーブルから上記スレーブルータにおいてパケット転送できるか否かを判断し、可能であると判断すると当該スレーブルータへパケット転送し処理を行うことを特徴とするレイヤ3スイッチの切替方法。
【請求項5】
端末が接続されマスタルータとスレーブルータとを有するVRRPグループを複数グループ有し、
対向する上記VRRPグループのマスタルータ同士とスレーブルータ同士とが互いに接続されているネットワークのレイヤ3スイッチの切替方法であって、
上記マスタルータはパケット転送できないと判断すると、上記VRRPグループ内の上記スレーブルータにパケット転送し、当該スレーブルータはルーティングテーブル・ARPテーブル・FDBテーブルに基づいてパケット転送し処理を行うことを特徴とするレイヤ3スイッチの切替方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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