説明

レジストの調整方法及びレジスト調整装置

【課題】再生レジスト中の固形分濃度を加熱残分法によらずに迅速に精度よく決定する手段を提供し、その上で膜厚のバラツキが小さくなるようにレジスト粘度を調整する手段を提供することである
【解決手段】回収した使用済みレジストの粘度を、溶剤を添加して目標とする粘度よりは高く設定された所定の粘度まで下げる工程、希釈したレジストの固形分濃度を、予め求めてある屈折率と固形分濃度の関係を示す検量線に基づいて算出する工程、固形分濃度が所定の値になるまで希釈したレジストに水を添加する工程、屈折率の測定と粘度の測定を行いつつ、溶剤と水で希釈したレジストが目標の粘度と固形分濃度になるまでさらに溶剤を添加する工程、とを有することを特徴とする使用済みレジストの調整方法及びその装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未使用レジストの成分バラツキの調整、あるいは一度使用したレジストを回収して再使用に供するためのレジストの調整方法とそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタ基板の製造では、着色画素の形成には着色レジストが使われ、スペーサや配向制御層、保護層の形成には対応する透明レジストが使用される。レジストの塗布には、スピンコート、スリットコート、ロールコート、インキジェット等が目的に応じて選択されるが、基板塗布時に飛散したレジスト、インキ供給用配管内や塗布装置内に残留・滞留したレジストは回収され、回収した使用済みレジスト類は再生して再使用するのが経済的であり好ましい態様である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
回収された使用済みレジスト(以下、単にレジストとも記す。)は、一般に装置内で凝集したものが混在するとか、空気中に一度暴露されたことで水分を吸収したり、溶媒が揮発して固形分濃度が高くなっている。その程度は、バッチごとばらばらであるが、該レジストは、フィルタで凝集異物を濾過してからタンク内に集められて、溶媒を添加しながら攪拌され、できるだけ使用前のレジスト組成に近づくように調整される。
【0004】
使用済みレジストの組成を使用前の当初のレジスト組成に近づける、あるいは異なるバッチに属する使用済みレジストの組成をできるだけ一致させるには、当該レジストに溶媒を添加してその粘度を指標として、粘度が未使用のレジストと同程度か、バッチの異なるレジスト間で同じになるように調整するのが一般的である。粘度が一致すれば組成が一致していると見なす再生方法と言える。
【0005】
そこで、フォトスペーサ形成に供された使用済みレジストをバッチごと回収して、粘度が所定の値(回転粘度計の測定値)となるように溶媒を添加してレジストとして再生させることを試みた。同時に未使用のレジストの粘度を測定し対比用サンプルとした。これらのレジストを使用して、スピンコート法により同一塗布条件でフォトスペーサ(以下、PSとも記す。)を形成して、乾燥後の膜厚を調べた。
【0006】
図1に示すように、再生レジストの粘度(△)は、粘度が同一になるように調整するので、目標値±2%に収まっていたが、膜厚は、目標値±4%と未使用のレジストに比べてバラツキが2倍程度となった。一方、未使用レジストの粘度(◆)のバラツキは再生レジストより大きいが、膜厚のバラツキは小さく一定値に収束する傾向であった。したがって、レジストの再生を粘度に基づいて行うという従来方法は膜厚制御の安定性に欠けるという問題がある。
【0007】
ところで、一般にレジスト溶液の粘度は、溶媒に溶解させた固形分の量に依存すると予想されるので、再生レジストの固形分濃度と粘度の相関を見たところ、図示はしないが固形分濃度が基準値±0.5%の範囲に収まっており、その範囲で粘度はほぼ一定であった。次に、固形分濃度とPS膜厚の相関を見たところ、図2に示すようにPS膜厚は固形分濃度が増えれば厚くなるという当然な結果であったが、再生レジスト(△)における膜厚バラツキは未使用レジスト(◆)に比べて大きいものであった。
【0008】
一般に、使用済みレジストに溶媒を添加して粘度調整を行って得られた再生レジストを使用してPSを形成すると、粘度調整を行ったわりには膜厚制御が十分に行えないという問題があり、このことは再生レジストの組成に何かしらの違いがあり、固形分濃度の観点
からもレジストの組成を制御することが必要であるということを示唆する。ところで、レジスト中の固形分濃度は、通常加熱残分法を用いて算出する。加熱残分法とは加熱前の重量と加熱後の重量の比から求めるものであるが、名前が示唆するごとくオフラインの測定手段であってインライン測定に適した方法ではないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−340354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
異なるバッチで使用された後回収されたされた使用済みレジストを再使用するためには、再生したレジストを使用して所定のパターンを形成した場合、当該パターン形状のバッチ間のバラツキが小さくなければ生産性が低くて使い物にならない。
【0011】
そこで、本発明は、異なるバッチに属した組成が異なると考えられる使用済みレジストを、従来方法とは異なる方法で組成が同じレジストに再生するための調整方法と調整装置を提供することを目的とした。当然、未使用レジストの組成のバラツキを低減して均一化するためのレジストの調整方法ともなるものである。
【0012】
具体的には、使用しようとするレジストの組成が一致すると見なせるための、レジスト特性を特徴付ける新たな指標を導入すること、及び、レジスト中の固形分濃度を迅速正確に見積もるための、加熱残分法に代わる測定手段を提供することである
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明になる請求項1に記載の発明は、回収した使用済みレジストに溶剤と水分とを添加してレジストの粘度と固形分濃度とを調整することを特徴とするレジストの調整方法としたものである。
【0014】
本発明は、使用済みレジストの組成が同じと見なせる指標として、粘度に加えて固形分濃度を選択したものである。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、回収した使用済みレジストの粘度と固形分濃度とを見積もる工程、前記レジストの粘度を、溶媒を添加して目標とする粘度よりは高く設定された所定の粘度にまで希釈する工程、希釈したレジストの固形分濃度が所定の値になるまで水を添加する工程、屈折率の測定と粘度の測定を行いつつ、希釈したレジストが目標の粘度と固形分濃度になるまでさらに溶剤を添加する工程、とを有することを特徴とするレジストの調整方法としたものである。
【0016】
本発明は、使用済みレジストを再生する具体的な手続きを特定したもので、粘度に加えて固形分濃度を成分調整の指標としたもので、屈折率ある。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、未使用レジストに溶剤と水分とを添加してレジストの粘度と固形分濃度とを調整することを特徴とするレジストの調整方法としたものである。
【0018】
本発明は、未使用レジストの組成が同じと見なせる指標として、粘度に加えて固形分濃度を選択したものである。
【0019】
また、請求項4に記載の発明は、未使用レジストの粘度と固形分濃度とを見積もる工程、
前記レジストの粘度を、溶媒を添加して目標とする粘度よりは高く設定された所定の粘度にまで希釈する工程、希釈したレジストの固形分濃度が所定の値になるまで水を添加する工程、屈折率の測定と粘度の測定を行いつつ、希釈したレジストが目標の粘度と固形分濃度になるまでさらに溶剤を添加する工程、とを有することを特徴とするレジストの調整方法としたものである。
【0020】
また、請求項5に記載の発明は、前記レジストの固形分濃度は、予め求めてある屈折率と固形分濃度との関係を示す検量線に基づき屈折率の値から見積もることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレジストの調整方法としたものである。
【0021】
本発明は、レジスト中の固形分濃度の測定方法として、屈折率測定を特定したものである。
【0022】
また、請求項6に記載の発明は、レジストの粘度と固形分濃度とを、粘度測定と屈折率測定に基づいて管理するための粘度計と屈折率計とを備えることを特徴とするレジストの調整装置としたものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明になる、回収した使用済みレジストの調整装置を用いて粘度と固形分濃度の両方を調整した再生レジストを使用して形成したレジストパターンは、粘度だけを調整した再生レジストに比べてパターンの形状安定性が優れている。PS用レジストに関しては、異なるバッチ間の膜厚(PS高さ)のバラツキが少なく製造歩留まりが向上する。
レジスト中の固形分濃度の測定を加熱残分法から屈折率測定に切り替えたことで、廃レジストの回収から、溶剤と水を添加する調整・再生までの工程がインライン化され高速処理が可能となった。
また、本発明は、未使用レジストの組成のバラツキを抑制するためにも使用できる。
これらによりレジスト全体の使用効率が増大し、同時にカラーフィルタ基板の生産性が大幅に向上し、コスト低下に資するところが大きい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】PS用再生レジストと未使用PS用レジストの粘度とPS膜厚の関係を説明する図である。△は粘度揃えの再生レジスト、◆は未使用レジストである。
【図2】PS用再生レジストと未使用PS用レジストの固形分濃度とPS膜厚の関係を明する図である。△は粘度揃えの再生レジスト、◆は未使用レジストである。
【図3】再生レジスト中の固形分濃度と水分量(重量%)の関係を示す図である。
【図4】未使用レジストに水を添加して水分量を上げた場合の粘度の変化を示す図である。
【図5】レジスト中の固形分濃度と屈折率の関係を説明する図である。□は未使用レジストで△は未使用レジストに純水を添加して固形分濃度を変えた場合である。
【図6】本発明になるレジスト再生装置の概略構成図である。
【図7】本発明を適用して得られた膜厚と固形分濃度との関係を説明する図である。□は粘度と固形分濃度を揃えたもの(本発明)、△は粘度揃え(従来法)、×は未使用のレジストである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、使用済みレジストの再生あるいは未使用レジストの使用前の調整を溶媒添加による粘度調整に頼ってきた従来方法の問題点を明確にする過程で得られた知見に基づくものである。以下、その点につき簡単に説明する。
【0026】
缶単位(20リットル)で回収した異なるバッチに属する使用済みPS用レジスト(ア
クリル系)を6缶用意した。実験は同じ缶から3回に分けて評価用試料を採取して評価を行い、その平均値をその缶の当該評価の値とした。尚、未使用のレジスト缶も6缶を用意して同じ実験を行った。
【0027】
次に、回収した使用済みレジスト缶に所定の希釈用溶媒を添加しては、希釈されたレジストを採取して回転粘度計で粘度を測定し、所定の目標粘度になるまでこれを繰り返して再生レジストとしての粘度調整を行った。未使用品については希釈処理は行わず原液を使用して測定した。
【0028】
次に、これらのPS用レジストをガラス基板上にスピンコート法により塗布し、仕上がりの膜厚が4.00μmとなる標準的な条件(回転数600rpmで10秒間回転し、230℃で44分乾燥)で塗布・乾燥し、膜厚を測定した。結果は、図1に示した。
図1によれば、再生レジストの粘度(△)は±0.02mPa・sの範囲に収まっているが、粘度調整をしていない未使用品(◆)は±0.15mPa・s程度のバラツキを有していた。
【0029】
しかしながら、再生レジストは、粘度を同じになるようにしてバラツキが小さいにもかかわらず膜厚のバラツキは±0.04μmと大きなものであった。これに対し、未使用品は、粘度は±0.02μmの範囲でバラツクが、その範囲で膜厚は粘度が高くなると増すという傾向が見られた。すなわち、使用済みレジストの再生の指標として粘度を採用し、この値を揃えても、得られる膜厚は一定とならずバラツキが大きいということである。
【0030】
この傾向は、再生レジストを使用して、目標の膜厚を薄くすればするほど強まると予想され、レジストの再生を溶媒添加の粘度調整だけ頼るのは問題と言える。着色レジストの膜厚はPSの膜厚より一般に薄く、今後とも薄くなることが予想されるので、粘度調整は使えなくなる。PS用レジストの再生に限ってみても、膜厚のバラツキを未使用品と同程度に収める必要がある。
【0031】
そこで粘度調整したレジストの膜厚がバラツク原因を探るために、比較的測定が容易な固形分濃度と水分濃度とを、それぞれ加熱残分法(230℃、1時間保持)とカールフィッシャー法で測定した。図2に固形分濃度とPS膜厚の関係を示した。再生レジスト(△)についても未使用品(◆)についても固形分濃度が高いと膜厚が厚いという自然な結果であるが、再生レジストの方が固形分濃度に対する膜厚の依存性が弱く(傾きが少ない)バラツキが大きい傾向であった。尚、加熱後の残成分はアクリル系の樹脂成分である。
【0032】
図3に、再生レジストの固形分濃度と水分量(重量%)の関係を示した。該レジスト中の水分量は一定でなく0.5%から1.8%の範囲に広がっていた。図4は、水分の影響を見るために未使用レジストに水を添加して水分量を上げた場合の粘度の変化を示したものである。水が添加されても粘度が低下することが明らかで、水分量が粘度のバラツキに関係があることを示唆している。但し、水は溶媒に対して7重量%程度しか溶けないので、それ以上は添加できない。
【0033】
以上の結果をまとめると、使用済みレジストに溶媒を添加して粘度を揃えてもPS膜厚のバラツキは未使用レジストの膜厚バラツキより大きい。PSの膜厚は、未使用レジストにおいては粘度と固形分濃度に相関があるが、再生レジストにおいては、粘度との相関は弱く固形分濃度とよい相関があるように見える。粘度と固形分濃度は含有される水分量と相関がある、ということである。要するに粘度が同じでも再生レジストの組成に何らかの違いがあるということである。
【0034】
これらのことから、定かではないが再生レジストの塗布時の形状(膜厚)バラツキが大
きいのは、粘度が一定であっても再生レジスト中の水分量にバラツキがあるためと推測した。未使用レジストの水分は0.2%以下と少ないが、使用済みレジスト中ではレジストの吸湿あるいは水分や溶剤の揮発等によって、溶剤と水分量の配合がバッチごとに様々と考えられる。
【0035】
そこで本発明では、回収した缶(バッチ)ごとの物性値の調整を、粘度が同じになるように溶媒だけを添加していくのではなく、固形分濃度と粘度の両方が同じになるように、溶媒と水を添加して調整することで缶(バッチ)ごとの組成の相違を解消することにした。
【0036】
ここで問題になるのは、レジスト中の固形分濃度の評価方法であるが、加熱残分法はリアルタイム測定が難しくインライン化が不可能なので、それに代わるものとして、固形分濃度と相関がある物理量を探したところ、レジストの屈折率とよい相関があることを見出した。図5に、水分量が0.2重量%である未使用レジスト(□)に純水を添加して固形分濃度を変化させたレジスト(△)の屈折率を測定した結果の一例を示した。
【0037】
屈折率はアッベ屈折率計にて光源波長589nm(D線)、液温25℃で測定した。固形分濃度は加熱残分法で測定した。加熱残分法で得られた固形分濃度と屈折率には図5で示す直線的な相関があり、検量線として使えることがわかった。水の屈折率は溶剤の屈折率より小さい。屈折率差が小さい組み合わせに対しては適用が難しいという問題はあるが、屈折率の値から固形分濃度を見積もることができた。
【0038】
レジストは、固形分濃度が同じでも、溶媒と水分の混合比によって、屈折率が異なるが、溶媒に対する水の溶解度は7重量%程度以下なので、混合比による屈折率の差は実際上無視した。しかしながら、混合比ごとに、検量線を作成すればレジスト組成のより精密な予測が可能となる。
【0039】
次に、粘度と固形分濃度とを所定の値にむけて調整していく具体的な手順と装置について説明する。
【0040】
上記の特性を調整するレジスト調整装置1は、図6に示すように、回収した使用済みのレジスト9を調合する液調合用タンク2(20リットル程度)、該タンクに回収した使用済みレジスト9を送り込む回収ライン3、再生されたレジストを塗布装置まで配送する供給ライン4からなっている。タンク2には、粘度計5(振動式粘度計)、屈折率計6、温度計7等と液回転機構8が備えられており、リアルタイムに測定可能となっている。勿論、タンク2は、レジストの回収・供給ラインと接続されている必要はなく、回収した廃液缶から注入する方式の独立方式でも構わない。図が煩雑になるので、レジストと純水の添加機構は省略してある。
【0041】
再生すべき使用済みレジストは、異物除去等のフィルタリングの後、液調合用タンク2に回収されよく混合され、付属の測定装置にて粘度と固形分濃度が測定される。調合の開始時には、水分量の測定も行っておくことが望ましい。水分量と固形分濃度が既知であれば、粘度と固形分濃度を目標値に持っていく際に水分量のバラツキをより効果的に抑えることができる。但し、必ずしも水分量の特定は必要でないが、この場合には下記の手順中でトライアンドエラーの要素が多くなる。
【0042】
使用済みレジストは、未使用のレジストに比べて、溶剤成分の揮発により粘度は高い(固形分比が高い)が、水分量については、未使用レジスト自体のバラツキや吸湿により過多がある。そこで、目標とする粘度と固形分濃度を、前述の実測値に基づいて溶媒と水分を添加する方向で設定する。バッチが異なる使用済みレジストに対しては、溶媒と水分の
比ができるだけ同じになるように、溶媒の量でなく水の量を基準にしてそれぞれの添加量を調整するのが好ましく、水分量の目標値は、概ね5〜6重量%の範囲である。
【0043】
設定値と溶媒と水の添加量が概略決まると、先ず溶媒を添加して粘度を下げるが、後で水を添加しても粘度が下がるので、仮の目標粘度は本当の目標粘度よりも高く設定する。粘度測定装置の目盛りを参照しながら溶媒を添加する。添加量は、見積もった添加量よりは少ないのが普通である。溶媒と水の混合比ごとに屈折率の検量線があると溶媒と水の添加量がより正確に見積もれる。この点は以下同様である。
【0044】
溶媒を添加した後、屈折率を測定して予め作製してある検量線から固形分濃度を見積もる。固形分濃度は目標値よりも高いであろう。次に、固形分濃度が、前記の値よりは低いが、目標値よりは若干高い程度まで(残りの溶剤を添加すると固形分濃度が目標値に達する)純水を添加する。これにより粘度も低下して目標粘度に近づく。
【0045】
最後に、粘度と固形分濃度が目標値に到達するまで溶媒を添加する。残っている溶媒を添加していくことになる。何らかの手違いがあって、二つの指標とも目標値に到達しない場合には、濃い目の未使用レジストを加えて最初からやりなおせばよい。尚、上記の手順は、未使用レジストの缶(バッチ)やロットごとの組成のバラツキを低減するためのレジスト調整にそのまま使えることは明らかである。
【実施例】
【0046】
未使用のPS用レジスト(アクリル系フォト樹脂を用いたクリアーレジスト)を6缶、該レジストの廃液缶を10缶を用意した。廃液については4缶を従来法に従って粘度だけが揃うようにレジスト用溶媒分を添加して再生した。残りの4缶については、粘度と固形分濃度の両方が揃うように溶剤と純水を上記に記載の手順で添加した。
【0047】
それぞれの缶からレジストを採取し、ガラス基板上にスピンコート法により所定の条件(700rpm、6秒間回転保持、230℃で44分乾燥)で塗布した。図7に乾燥後の膜厚と固形分濃度の関係を横軸を固形分濃度にとって示した。△は粘度揃え、□は粘度と固形分濃度を揃えたもの、×は未使用のレジストである。
【0048】
固形分濃度のバラツキは、粘度揃えの再生レジストが大きく、他に比べて2倍以上のバラツキであった。膜厚のバラつきは、粘度と固形分濃度揃えの調整処理で大幅に改善され、どちらかと言えば新規品(×)よりも小さい傾向が見られた。
【0049】
本発明になる調整装置を使用して、使用済みレジストのそれぞれに、粘度と固形分濃度が揃うように溶剤と水分とを添加して得られる再生レジストは、回収にいたるプロセスがどうであれ組成がほぼ等しい再生レジストになる。
以上、使用済みのPS用レジストについて述べたが、本発明は、組成が異なる着色レジスト及び未使用の各種レジストについても適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1、レジスト再生装置
2、液調合用タンク
3、回収ライン
4、供給ライン
5、回転粘度計
6、屈折率計
7、温度計
8、液回転機構
9、レジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収した使用済みレジストに溶剤と水分とを添加してレジストの粘度と固形分濃度とを調整することを特徴とするレジストの調整方法。
【請求項2】
回収した使用済みレジストの粘度と固形分濃度とを見積もる工程、
前記レジストの粘度を、溶媒を添加して目標とする粘度よりは高く設定された所定の粘度にまで希釈する工程、
希釈したレジストの固形分濃度が所定の値になるまで水を添加する工程、
屈折率の測定と粘度の測定を行いつつ、希釈したレジストが目標の粘度と固形分濃度になるまでさらに溶剤を添加する工程、とを有することを特徴とするレジストの調整方法。
【請求項3】
未使用レジストに溶剤と水分とを添加してレジストの粘度と固形分濃度とを調整することを特徴とするレジストの調整方法。
【請求項4】
未使用レジストの粘度と固形分濃度とを見積もる工程、
前記レジストの粘度を、溶媒を添加して目標とする粘度よりは高く設定された所定の粘度にまで希釈する工程、
希釈したレジストの固形分濃度が所定の値になるまで水を添加する工程、
屈折率の測定と粘度の測定を行いつつ、希釈したレジストが目標の粘度と固形分濃度になるまでさらに溶剤を添加する工程、とを有することを特徴とするレジストの調整方法。
【請求項5】
前記レジストの固形分濃度は、予め求めてある屈折率と固形分濃度との関係を示す検量線に基づき屈折率の値から見積もることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレジストの調整方法。
【請求項6】
レジストの粘度と固形分濃度とを、粘度測定と屈折率測定に基づいて管理するための粘度計と屈折率計とを備えることを特徴とするレジストの調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−113135(P2012−113135A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262206(P2010−262206)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】