説明

レジストパターン改善化材料、レジストパターンの形成方法、半導体装置の製造方法、及び半導体装置

【課題】レジストパターンサイズを必要以上に変動させることなく、レジストパターンのLWRを改善できるレジストパターン改善化材料、並びに該レジストパターン改善化材料を用いたレジストパターンの形成方法、半導体装置の製造方法、及び該半導体装置の製造方法により製造された半導体装置の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される塩化ベンザルコニウムと、水とを含有するレジストパターン改善化材料である。


ただし、前記一般式(1)中、nは、8〜18の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジストパターン改善化材料、レジストパターンの形成方法、半導体装置の製造方法、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI(半導体集積回路)などの半導体装置においては、集積度の向上に伴い、微細パターンの形成が要求されており、近年の最小パターンサイズは、100nm以下に達している。
こうした半導体装置における微細パターンの形成は、露光装置における光源の短波長化、及びレジスト材料の改良によって実現してきた。現在では、深紫外線である波長193nmのArF(フッ化アルゴン)エキシマレーザ光を光源に、水を介して露光を行う液浸露光法が行われており、レジスト材料についても、アクリル樹脂をベースとした様々なArF対応レジスト材料が開発されている。更には、次世代の露光技術として、波長13.5nmの軟X線を光源とするEUV(極端紫外線)露光法が検討されており、パターンサイズは30nm以下と、より一層の微細化が今後も進行していくことは明らかである。
【0003】
しかしながら、このようなパターンサイズの微細化に伴い、レジストパターン側壁のがたつき(LER;Line edge roughness)及びレジストパターン幅の不均一さ(LWR:Line width roughness)が大きくなり、デバイス性能に悪影響を及ぼす懸念が高まっている。露光装置、レジスト材料、プロセス条件の最適化などで、これらを抑制する検討はなされているものの、十分な結果は得られていない。なお、LWRとLERは関連があり、LWRを改善することにより、LERも改善される。
【0004】
上記問題を解決する方法として、現像処理後のリンス工程において、イオン性の界面活性剤を含む水溶液を用いてレジストパターンを処理することで、現像処理によるディフェクト(残の発生やパターン倒れなどの欠陥)を抑制すると同時に、レジストパターンの凹凸を溶解して、前記LWR、LERを改善する方法が開示されている(特許文献1参照)。
また、別の解決方法として、現像処理後のレジストパターンに対し、カルボキシル基などを含む酸性の低分子化合物を添加した有機系の塗布材料を塗布し、これを剥離処理することでレジストパターンを細らせると同時に、前記LWR、及びLERを改善する方法が開示されている(特許文献2参照)。
しかし、これら提案の技術は、LWR、LER数値をさらに増大させる、即ちレジストパターンの不均一さやがたつきを増大させる可能性があるという問題がある。
【0005】
また、本発明者らにより、レジストパターンを太らせて(厚肉化させて)微細加工を可能とするレジストパターン厚肉化材料が開示されている(特許文献3、及び4参照)。しかしながら、これらのレジストパターン厚肉化材料によってレジストパターンを厚肉化処理した場合は、レジストパターンサイズが大きく変動する。そのため、これらのレジストパターン厚肉化材料は、レジストパターンサイズを必要以上に変動させることなくレジストパターンのLWRを改善することが求められるLWRの改善化材料としては適していないという問題がある。
【0006】
上記のように、従来技術では、LWR、LERが改善されるものの所望のレジストパターンサイズが得られない、又は、よりLWR、LER数値をさらに増大させる、即ちレジストパターンのがたつきや不均一さを増大させる可能性があるという問題がある。
【0007】
また、類似の手法であるが、レジストパターン形成方法であって、現像後のリンス液として特定の界面活性剤を含んだ水溶液で処理することによって、レジストパターンの倒れを防止する技術も開示されているが、前記LWR、及びLERの改善については何ら開示がない(特許文献5参照)。
【0008】
したがって、レジストパターンサイズを必要以上に変動させることなく、レジストパターンのLWRを改善できるレジストパターン改善化材料、並びに該レジストパターン改善化材料を用いたレジストパターンの形成方法、半導体装置の製造方法、及び該半導体装置の製造方法により製造された半導体装置の提供が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−213013号公報
【特許文献2】特開2010−49247号公報
【特許文献3】特許第3633595号公報
【特許文献4】特開2006−259692号公報
【特許文献5】特開2005−294354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、レジストパターンサイズを必要以上に変動させることなく、レジストパターンのLWRを改善できるレジストパターン改善化材料、並びに該レジストパターン改善化材料を用いたレジストパターンの形成方法、半導体装置の製造方法、及び該半導体装置の製造方法により製造された半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段としては、後述する付記に記載した通りである。即ち、
開示のレジストパターン改善化材料は、下記一般式(1)で表される塩化ベンザルコニウムと、水とを含有する。
【化1】

ただし、前記一般式(1)中、nは、8〜18の整数を表す。
開示のレジストパターンの形成方法は、被加工面上に付与されたレジスト材料に対する露光、及び現像によりパターン化されたレジストパターンの表面を覆うように開示のレジストパターン改善化材料を塗布する工程と、塗布後に加熱を行う工程と、加熱後に水を含むリンス液でリンスを行う工程とを含む。
開示の半導体装置の製造方法は、被加工面上に付与されたレジスト材料に対する露光、及び現像によりパターン化されたレジストパターンの表面を覆うように開示のレジストパターン改善化材料を塗布する処理と、塗布後に加熱を行う処理と、加熱後に水を含むリンス液でリンスを行う処理とによりレジストパターンを改善するレジストパターン形成工程と、該改善したレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことにより前記被加工面をパターニングするパターニング工程とを含む。
開示の半導体装置は、開示の半導体装置の製造方法により製造される。
【発明の効果】
【0012】
開示のレジストパターン改善化材料によれば、レジストパターンサイズを必要以上に変動させることなく、レジストパターンのLWRを改善することができる。また、既存の露光装置の光源における露光限界を超えた微細レジストパターンを形成することができる。
開示のレジストパターンの形成方法によれば、レジストパターンサイズを必要以上に変動させることなく、LWRが改善されたレジストパターンを得ることができる。また、既存の露光装置の光源における露光限界を超えた微細レジストパターンを形成することができる。
開示の半導体装置の製造方法によれば、既存の露光装置の光源における露光限界を超えた微細レジストパターンであり、かつLWRが改善されたレジストパターンを用いて形成した微細な配線パターンを有する高性能な半導体装置を製造することができる。
開示の半導体装置によれば、微細な配線パターンを有する高精度な半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】図1Aは、本発明のレジストパターン改善化材料を用いてレジストパターンのLWRを改善(低減)するメカニズムの説明図であり、レジストパターン改善化材料をレジストパターンの表面に付与した状態を表す。
【図1B】図1Bは、本発明のレジストパターン改善化材料を用いてレジストパターンのLWRを改善(低減)するメカニズムの説明図であり、レジストパターン改善化材料がレジストパターン表面に染み込んだ状態を表す。
【図1C】図1Cは、本発明のレジストパターン改善化材料を用いてレジストパターンのLWRを改善(低減)するメカニズムの説明図であり、レジストパターン改善化材料によりレジストパターン表面が改善された状態を表す。
【図2A】図2Aは、本発明の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、シリコン基板上に層間絶縁膜を形成した状態を表す。
【図2B】図2Bは、本発明の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、図2Aに示す層間絶縁膜上にチタン膜を形成した状態を表す。
【図2C】図2Cは、本発明の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、チタン膜上にレジスト膜を形成し、チタン膜にホールパターンを形成した状態を表す。
【図2D】図2Dは、本発明の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、ホールパターンを層間絶縁膜にも形成した状態を表す。
【図2E】図2Eは、本発明の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、ホールパターンを形成した層間絶縁膜上にCu膜を形成した状態を表す。
【図2F】図2Fは、本発明の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、ホールパターン上以外の層間絶縁膜上に堆積されたCuを除去した状態を表す。
【図2G】図2Gは、本発明の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、ホールパターン内に形成されたCuプラグ上及び層間絶縁膜上に層間絶縁膜を形成した状態を表す。
【図2H】図2Hは、本発明の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、表層としての層間絶縁膜にホールパターンを形成し、Cuプラグを形成した状態を表す。
【図2I】図2Iは、本発明の半導体装置の製造方法の一例を説明するための概略図であり、三層構造の配線を形成した状態を表す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(レジストパターン改善化材料)
本発明のレジストパターン改善化材料は、下記一般式(1)で表される塩化ベンザルコニウムと、水とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、水溶性樹脂、界面活性剤などのその他の成分を含有する。
本発明において、レジストパターン改善化とは、レジストパターンの不均一さ(LWR)を改善することを意味する。
【0015】
<一般式(1)で表される塩化ベンザルコニウム>
前記レジストパターン改善化材料に用いる塩化ベンザルコニウムは、下記一般式(1)で表される。
【化2】

ただし、前記一般式(1)中、nは、8〜18の整数を表す。
前記一般式(1)で表される塩化ベンザルコニウムは、通常、nが8〜18の範囲の混合物として市販されている。
【0016】
前記一般式(1)で表される塩化ベンザルコニウムの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記水100質量部に対して、0.001質量部〜10質量部が好ましく、0.01質量部〜5質量部がより好ましく、0.05質量部〜0.5質量部が特に好ましい。前記塩化ベンザルコニウムの含有量が、水100質量部に対して、0.001質量部未満であると、LWR改善効果が発現しないことがあり、10質量部を超えると、前記レジストパターン改善化材料をレジストパターン上に塗布した際に、レジストパターンが溶解して変形することがある。一方、前記塩化ベンザルコニウムの含有量が、前記特に好ましい範囲内であると、所望のパターンサイズ範囲内でレジストパターン側壁の凹凸を低減し、レジストパターン幅の不均一さ(LWR)を改善する効果の点で有利である。
【0017】
<水>
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、純水(脱イオン水)が好ましい。
前記水の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜決定することができるが、塗布性の点で、前記レジストパターン改善化材料100質量部に対して、80質量部以上が好ましく、90質量部以上がより好ましい。
【0018】
<水溶性樹脂>
前記水溶性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリグルタミン酸、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、オキサゾリン基含有水溶性樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性尿素樹脂、アルキッド樹脂、スルホンアミド樹脂、セルロース、タンニン、及びこれらを一部に含む樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、安定性の点で、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリグルタミン酸、及びこれらを一部に含む樹脂が好ましい。
【0019】
前記水溶性樹脂の水溶性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25℃の水100gに対し、前記水溶性樹脂が0.1g以上溶解する水溶性が好ましい。
【0020】
前記水溶性樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記水100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、4質量部以下がより好ましい。前記含有量が、10質量部を超えると、LWRの改善はするもののレジストパターンの厚肉化効果が大きすぎ、所望のレジストパターンサイズを得られなくなることがある。前記含有量が、より好ましい範囲内であると、レジストパターンサイズを必要以上に変動させることなく、所望のレジストパターン厚肉化の範囲内で、レジストパターン側壁の凹凸を低減し、レジストパターン幅の均一さを向上できる(即ちLWRを改善できる)点で有利である。なお、前記水溶性樹脂の含有量の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記水100質量部に対して、0.001質量部以上が好ましい。
【0021】
<界面活性剤>
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ナトリウム塩、カリウム塩等の金属イオンを含有しない点で、非イオン性界面活性剤が好ましい。
前記非イオン性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコキシレート系界面活性剤、脂肪酸エステル系界面活性剤、アミド系界面活性剤、アルコール系界面活性剤、エチレンジアミン系界面活性剤などが挙げられる。前記非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物化合物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレン誘導体化合物、ソルビタン脂肪酸エステル化合物、グリセリン脂肪酸エステル化合物、第1級アルコールエトキシレート化合物、フェノールエトキシレート化合物、ノニルフェノールエトキシレート系化合物、オクチルフェノールエトキシレート系化合物、ラウリルアルコールエトキシレート系化合物、オレイルアルコールエトキシレート系化合物、脂肪酸エステル系化合物、アミド系化合物、天然アルコール系化合物、エチレンジアミン系化合物、第2級アルコールエトキシレート系化合物などが挙げられる。
前記界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、前記塩化ベンザルコニウム、前記水溶性樹脂の種類や含有量などに応じて適宜選択することができるが、前記水100質量部に対して、2質量部以下が好ましい。前記界面活性剤の含有量が、2質量部を超えると、塗布時に析出したり、パターン上で欠陥となる可能性が高くなる。
【0022】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を害しない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機溶剤、公知の各種添加剤(例えば、アミン系、アミド系、アンモニウム塩素などに代表される各種相間移動触媒)などが挙げられる。
前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、前記一般式(1)で表される塩化ベンザルコニウム、前記水溶性樹脂の種類や含有量などに応じて適宜決定することができる。
【0023】
−有機溶剤−
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール系有機溶剤、鎖状エステル系有機溶剤、環状エステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、鎖状エーテル系有機溶剤、環状エーテル系有機溶剤などが挙げられる。
前記アルコール系有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどが挙げられる。
前記鎖状エステル系有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乳酸エチルなどが挙げられる。
前記環状エステル系有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、γ−ブチロラクトン等のラクトン系有機溶剤などが挙げられる。
前記ケトン系有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセトン、シクロヘキサノン、ヘプタノンなどが挙げられる。
前記鎖状エーテル系有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
前記環状エーテル系有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが挙げられる。
これらの有機溶剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、レジストパターンの凹凸の低減を効果的に行うことができる点で、80℃〜200℃の沸点を有する有機溶剤が好ましい。
前記有機溶剤を含有することにより、前記一般式(1)で表される塩化ベンザルコニウム、及び前記水溶性樹脂の前記レジストパターン改善化材料に対する溶解性を向上させたり、前記レジストパターン改善化材料の防腐効果が得られる。
【0024】
前記レジストパターン改善化材料の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水溶液、コロイド液、エマルジョン液などが挙げられる。これらの中でも、塗布性の点で、水溶液が好ましい。
【0025】
<使用等>
前記レジストパターン改善化材料は、基材上に付与されたレジスト材料に対する露光、及び現像によりパターン化されたレジストパターンの表面に塗布して使用することができる。
前記レジストパターン改善化材料を前記レジストパターン上に塗布すると、該レジストパターンと相互作用(ミキシング)し、その後の水を含むリンス溶液により最表層がならされた結果、前記レジストパターン側壁の凹凸が緩和され、LWRが改善されたレジストパターンが形成される。
前記一般式(1)で表される塩化ベンザルコニウムは、通常、nが8〜18である複数の炭素数のアルキル基を持つ分子の混合物からなるため、前記レジストパターンを形成している前記レジスト材料の性状に幅広くマッチングしやすく、該レジストパターンに浸透しやすく、レジストパターン側壁の凹凸を低減する効果を有する。
【0026】
前記レジストパターン改善化材料により、レジストパターン側壁の凹凸が低減された結果、前記レジストパターンのライン幅は、凹凸が低減される前の前記レジストパターンのライン幅よりも均一性が向上する、即ち、前記レジストパターン幅の不均一さ(LWR:Line width roughness)が改善される。その結果、前記レジストパターンのパターニング時に用いた露光装置の光源の露光限界(解像限界)を超えて(前記光源に用いられる光の波長でパターニング可能な開口乃至パターン間隔の大きさの限界値よりも小さく)、より高精度な前記レジストパターンが形成される。
【0027】
また、前記レジストパターン改善化材料が、前記一般式(1)で表される塩化ベンザルコニウムに加え、更に前記水溶性樹脂を含有する場合は、前記レジストパターン側壁の凹凸低減と同時に、レジストパターンが厚肉化される。レジストパターンが厚肉化されることにより、前記レジストパターン側壁の凹凸はさらに低減される。
前記レジストパターン側壁の凹凸の低減量、及び前記レジストパターン幅の均一度、更には、厚肉化量は、前記レジストパターン改善化材料における前記一般式(1)で表される塩化ベンザルコニウムの含有量、並びに、前記レジストパターン改善化材料の粘度、塗布厚み、ベーク温度、ベーク時間などを適宜調節することにより、所望の範囲に制御することができる。
【0028】
−レジストパターンの材料(レジスト材料)−
前記レジストパターン(前記レジストパターン改善化材料が塗布されるレジストパターン)の材料(レジスト材料)としては、特に制限はなく、公知のレジスト材料の中から目的に応じて適宜選択することができ、ネガ型、ポジ型のいずれであってもよく、例えば、g線、i線、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、Fエキシマレーザ、電子線等でパターニング可能なg線レジスト、i線レジスト、KrFレジスト、ArFレジスト、Fレジスト、電子線レジスト、EUVレジストなどが好適に挙げられる。これらは、化学増幅型であってもよいし、非化学増幅型であってもよい。これらの中でも、KrFレジスト、ArFレジスト、アクリル系樹脂を含んでなるレジスト、EUVレジストなどが好ましく、より微細なパターニング、スループットの向上などの観点からは、解像限界の延伸が急務とされているArFレジスト、EUVレジスト、及びアクリル系樹脂を含んでなるレジストの少なくともいずれかがより好ましい。
【0029】
前記レジストパターンの材料の具体例としては、ノボラック系レジスト、PHS系レジスト、PHS−アクリル共重合体系レジスト、アクリル系レジスト、シクロオレフィン−マレイン酸無水物系(COMA系)レジスト、シクロオレフィン系レジスト、ハイブリッド系(脂環族アクリル系−COMA系共重合体)レジストなどが挙げられる。これらは、フッ素修飾等されていてもよい。
【0030】
前記レジストパターンの形成方法、大きさ、厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、特に厚みについては、加工対象である被加工面、エッチング条件等により適宜決定することができるが、一般に50nm〜500nm程度である。
【0031】
前記レジストパターン改善化材料を用いた前記レジストパターン側壁の凹凸低減について以下に図面を参照しながら説明する。
図1Aに示すように、被加工面(基材)5上にレジスト材料を付与し、露光、及び現像を行うことによりパターン化されたレジストパターン3を得た後、レジストパターン3の表面にレジストパターン改善化材料1を付与(塗布)し、塗膜を形成する。この後、ベーク(加温及び乾燥)を行う。すると、レジストパターン3とレジストパターン改善化材料1との界面において、レジストパターン改善化材料1のレジストパターン3へのミキシング(含浸)が起こり、図1Bに示すように、内層レジストパターン10b(レジストパターン3)とレジストパターン改善化材料1との界面において前記ミキシング(含浸)した部分が反応して表層(ミキシング層)10aが形成される。これは、レジストパターン改善化材料中に含まれる塩化ベンザルコニウムの界面活性効果によるレジストパターン3への浸透と、極性基による反応に寄るものであり、その結果、内層レジストパターン10b(レジストパターン3)の大きさに左右されず(依存せず)安定にかつ均一に内層レジストパターン10b(レジストパターン3)の側壁の凹凸が低減される。
【0032】
この後、図1Cに示すように、リンス処理を行うことによって、付与(塗布)したレジストパターン改善化材料1の内、レジストパターン3と相互作用(ミキシング)していない部分乃至相互作用(ミキシング)が弱い部分(水溶性の高い部分)が除去され、側壁の凹凸か緩和された平滑なレジストパターン10が形成される。
なお、前記リンス処理は、純水を用いてもよいし、汎用のアルカリ現像液などのアルカリ水溶液によるリンス処理であってもよい。また、必要に応じて界面活性剤を純水やアルカリ現像液などのアルカリ水溶液に含有させたものを用いてもよい。
【0033】
凹凸の低減されたレジストパターン10は、内層レジストパターン10b(レジストパターン3)の表面に、レジストパターン改善化材料1が反応して形成された表層(ミキシング層)10aを有してなる。凹凸の低減されたレジストパターン10は、レジストパターン3に比べて表層(ミキシング層)10aの分だけ凹凸が緩和されており、凹凸低減後レジストパターン10により形成されるレジストラインパターンのライン幅のばらつき(不均一さ)を表すLWR値(LWR=Line width roughness)は、凹凸低減前のレジストパターン3により形成されるレジストパターンのライン幅のばらつきよりも小さくなる。このため、レジストパターン3を形成する時の露光装置やレジスト材料における平滑さの限界を超えて前記レジストラインパターンをより平滑に高精度に形成することができる。
【0034】
さらに、レジストパターン改善化材料1が、前記水溶性樹脂を含む場合には、レジストパターン改善化材料が、前記水溶性樹脂を含まない場合に比べ、レジストパターン改善化材料における表層(ミキシング層)10aは大きくなる。これにより、凹凸の低減されたレジストパターン10は、レジストパターン3に比べて表層(ミキシング層)10aの分だけ凹凸が低減されると共に厚肉化もされるため、凹凸低減後レジストパターン10により形成されるレジストパターンのライン幅のばらつき(不均一さ)を表すLWR値(LWR=Line width roughness)は、凹凸低減前のレジストパターン3により形成されるレジストパターンのライン幅のばらつきよりもより小さくなる。
前記レジストパターン改善化材料は、レジストパターン側壁の凹凸を低減し、露光装置やレジスト材料における平滑さの限界を超えて前記レジストラインパターンをより平滑に高精度に形成するのに好適に使用することができる。また、前記レジストパターン改善化材料は、本発明の半導体装置の製造方法などに特に好適に使用することができる。
【0035】
(レジストパターンの形成方法)
本発明のレジストパターンの形成方法は、レジストパターン改善化材料を塗布する工程と、加熱(ベーク)を行う工程と、リンスを行う工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、前露光工程などのその他の工程を含む。
【0036】
<塗布する工程>
前記塗布する工程としては、被加工面上に付与されたレジスト材料に対する露光、及び現像によりパターン化されたレジストパターンの表面を覆うようにレジストパターン改善化材料を塗布する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記レジストパターン改善化材料としては、本発明の前記レジストパターン改善化材料が使用される。
【0037】
前記レジスト材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記レジストパターン改善化材料の説明において記載した前記レジスト材料などが挙げられる。
【0038】
前記レジストパターンは、公知の方法に従って形成することができる。
前記レジストパターンは、被加工面(基材)上に形成する。該被加工面(基材)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、該レジストパターンが半導体装置に形成される場合には、該被加工面(基材)としては、半導体基材表面が挙げられる。前記半導体基材としては、シリコンウエハ等の基板、各種酸化膜などが好ましい。
【0039】
前記露光、及び現像の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記現像の後には、前記レジストパターン改善化材料を塗布する前にリンスを行ってもよく、行わなくてもよい。前記リンスにおけるリンス液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、純水を含有していてもよく、アルカリ現像液を含有していてもよい。更に、これらに界面活性剤を含んで用いることも可能であるが、プロセスの容易さの点で、前記リンス液は、純水であることが好ましい。
【0040】
前記レジストパターン改善化材料の塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の塗布方法の中から適宜選択することができるが、スピンコート法が好ましい。
該スピンコート法の場合、回転数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100rpm〜10,000rpmが好ましく、500rpm〜5,000rpmがより好ましい。塗布時間としては、1秒間〜10分間が好ましく、1秒間〜90秒間がより好ましい。
前記塗布の際の塗布厚みとしては、通常、5nm〜1,000nm程度であり、10nm〜100nm程度が好ましい。
【0041】
<加熱(ベーク)を行う工程>
前記加熱(ベーク)を行う工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記レジストパターンを軟化させない加熱条件が好ましい。
前記加熱条件、及び方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。加熱の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、40℃〜150℃が挙げられる。前記加熱の回数は、1回であってもよいし、2回以上であってもよい。2回以上の場合は、各回におけるベークの温度は、一定であってもよいし、異なっていてもよく、前記一定である場合、40℃〜150℃が好ましく、60℃〜120℃がより好ましく、また、その時間としては、10秒間〜5分間が好ましく、30秒間〜100秒間がより好ましい。
前記加熱を行うことで、前記レジストパターンと前記レジストパターン改善化材料との界面において該レジストパターン改善化材料の該レジストパターンへのミキシング(含浸)を効率よく生じさせることができる。
【0042】
<リンスを行う工程>
前記リンスを行う工程としては、リンス液でリンスを行う工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記リンスを行う工程により、前記レジストパターン改善化材料と、前記レジストパターンと相互作用(ミキシング)及び反応していない部分乃至相互作用(ミキシング)が弱い部分(水溶性の高い部分)を溶解除去し(リンス処理)、側壁の凹凸を低減したレジストパターンを得ることができる。
前記リンス液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、純水を含有していてもよく、アルカリ現像液を含有していてもよい。更に、これらに界面活性剤を含んで用いることも可能であるが、プロセスの容易さの点で、前記リンス液は、純水であることが好ましい。
【0043】
界面活性剤を含む純水又はアルカリ現像液などのアルカリ水溶液を用いる場合は、前記レジストパターン改善化材料と前記レジストパターンとの界面における効果の面内均一性の向上を図り、残渣や欠陥の発生を抑制する効果が高まることが期待できる。
【0044】
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ナトリウム塩、カリウム塩等の金属イオンを含有しない点で、非イオン性界面活性剤が好ましい。
前記非イオン性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物化合物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレン誘導体化合物、シリコーン化合物、ソルビタン脂肪酸エステル化合物、グリセリン脂肪酸エステル化合物、アルコールエトキシレート化合物、フェノールエトキシレート化合物などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、イオン性界面活性剤であっても、非金属塩系のものであれば使用することは可能である。
【0045】
前記界面活性剤の純水又はアルカリ現像液などのアルカリ水溶液における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001質量%〜1質量%が好ましく、0.05質量%〜0.5質量%がより好ましい。
前記含有量が、0.001質量%未満であると、前記界面活性剤による効果が少なく、1質量%を超えると、現像液の溶解力が大きくなり過ぎるため前記レジストパターンが溶解し、側壁の凹凸がより大きくなったり、泡の発生による残渣や欠陥が発生しやすくなることがある。
【0046】
前記アルカリ現像液としては、特に制限はなく、半導体装置の製造に用いられる公知のものの中から適宜選択することができるが、四級水酸化アンモニウム水溶液、コリン水溶液が好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、低コスト及び汎用性が高い点で、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液が好ましい。
また、前記アルカリ現像液に、必要に応じて前記界面活性剤を添加してもよい。この場合、前記界面活性剤の前記アルカリ現像液における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001質量%〜1質量%が好ましく、0.05質量%〜0.5質量%がより好ましい。
【0047】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、例えば、前露光工程などが挙げられる。
−前露光工程−
前記前露光工程は、前記レジストパターン改善化材料の塗布の前に、前記レジストパターンの全面に対して紫外線光及び電離放射線のいずれかを照射する工程である。
レジストパターンが疎な領域(レジストパターンの間隔が長い領域)とレジストパターンが密な領域(レジストパターンの間隔が短い領域)とを有する、パターン間隔が異なるレジストパターンや、種々のサイズが混在したレジストパターンでは、パターン毎に露光時の光強度分布が異なるため、前記レジストパターンの現像では表面化しない程度のわずかな表面状態の差(かぶり露光量の差)が、前記レジストパターンへの前記レジストパターン改善化材料の浸透性の差として影響し、その結果、前記レジストパターン改善化材料と前記レジストパターンとが相互作用して形成されるミキシング層の形成し易さに影響することがある。そこで、前記レジストパターン改善化材料を塗布する前に前記レジストパターンの全面に対して、紫外線光又は電離放射線を照射すると、前記レジストパターンの表面状態を均一化することができ、前記パターンの疎密差や大きさなどに依存することなく、前記レジストパターンへの前記レジストパターン改善化材料の浸透を均一化でき、より効果的に前記レジストパターンの側壁の凹凸を低減し、レジストパターン幅の均一さを向上することができる。
【0048】
前記紫外線光及び前記電離放射線としては、特に制限はなく、照射する前記レジストパターンの材料の感度波長に応じて適宜選択することができる。具体的には、高圧水銀ランプ又は低圧水銀ランプから生じるブロードバンドの紫外線光のほか、g線(波長436nm)、i線(波長365nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、Fエキシマレーザー光(波長157nm)、EUV光(波長5nm〜15nmの軟X線領域)、電子線、X線などが挙げられる。なお、製造装置の構造上、これらの中から、前記レジストパターンの形成において露光時に使用する紫外線光又は電離放射線と同一のものを選択するのが好ましい。
【0049】
前記紫外線光及び前記電離放射線の前記レジストパターンへの照射量(露光量)としては、特に制限はなく、使用する前記紫外線光又は前記電離放射線の種類に応じて適宜選択することができるが、前記レジストパターンの形成に必要とされる照射量(露光量)に対して、0.1%〜20%が好ましい。
前記照射量が、0.1%未満であると、前記レジストパターンの表面状態の均一化効果が生じにくいことがあり、20%を超えると、必要充分以上に前記レジストパターンに光反応が生じてしまい、前記レジストパターンの上部の形状劣化やパターンの部分消失が生じやすくなることがある。
【0050】
なお、一定の前記照射量で前記紫外線光又は前記電離放射線を照射する限り、その方法としては、特に制限はなく、強い光を使用した場合には短時間で、弱い光を使用した場合には長時間で、また、露光感度の高いレジスト材料を用いた場合には露光量(照射量)を少なく、露光感度の低いレジスト材料を用いた場合には露光量(照射量)を多くするなど適宜調節し、それぞれ行うことができる。
【0051】
前記レジストパターンの形成方法は、各種のレジスト抜けパターン、例えば、ライン&スペースパターン、ホールパターン(コンタクトホール用など)、トレンチ(溝)パターンなどの形成に好適であり、該レジストパターンの形成方法により形成されたレジストパターンは、例えば、マスクパターン、レチクルパターンなどとして使用することができ、金属プラグ、各種配線、磁気ヘッド、LCD(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、SAWフィルタ(弾性表面波フィルタ)等の機能部品、光配線の接続に利用される光部品、マイクロアクチュエータ等の微細部品、半導体装置などの製造方法に好適に使用することができ、これらの中でも、後述する本発明の半導体装置の製造方法に特に好適に使用することができる。
【0052】
(半導体装置の製造方法、及び半導体装置)
本発明の半導体装置の製造方法は、レジストパターン形成工程と、パターニング工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
本発明の半導体装置は、本発明の前記半導体装置の製造方法により製造される。
【0053】
<レジストパターン形成工程>
前記レジストパターン形成工程は、被加工面上に付与されたレジスト材料に対する露光、及び現像によりパターン化されたレジストパターンの表面を覆うように前記レジストパターン改善化材料を塗布する処理と、塗布後に加熱を行う処理と、加熱後に水を含むリンス液でリンスを行う処理とによりレジストパターンを改善する工程である。該レジストパターン形成工程により、パターン側壁の凹凸が低減し、レジストパターン幅の均一さが向上したレジストパターンが前記被加工面上に形成される。
【0054】
前記レジストパターン形成工程の詳細は、前記レジストパターンの形成方法と同様である。即ち、前記塗布する処理は、前記レジストパターンの形成方法における前記塗布する工程と同様であり、前記加熱を行う処理は、前記レジストパターンの形成方法における前記加熱を行う工程と同様であり、前記リンスを行う処理は、前記レジストパターンの形成方法における前記リンスを行う工程と同様である。
前記被加工面としては、例えば、半導体装置における各種部材の表面層などが挙げられるが、シリコンウエハ等の基板乃至その表面、各種酸化膜、金属膜、半導体膜が好ましい。
【0055】
<パターニング工程>
前記パターニング工程は、前記レジストパターン形成工程により形成した前記レジストパターンをマスクとして(マスクパターン等として用いて)エッチングを行うことにより前記被加工面をパターニングする工程である。
前記エッチングの方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から目的に応じて適宜選択することができるが、ドライエッチングが好ましい。該エッチングの条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明の半導体装置の製造方法によると、例えば、フラッシュメモリ、DRAM、FRAM、HDDヘッド、SAWフィルタを初めとする各種半導体装置、磁気ディスク装置などを効率的に製造することができる。
本発明の半導体装置としては、例えば、フラッシュメモリ、DRAM、FRAM、HDDヘッド、SAWフィルタを初めとする各種半導体装置、磁気ディスク装置などが挙げられる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0057】
(実施例1)
<ベーク有り実験>
−レジストパターン改善化材料の調製−
表1に示す組成を有するレジストパターン改善化材料A〜N及び比較材料a〜eを調製した。
なお、表1において、「A」〜「N」及び「a」〜「e」は、前記レジストパターン改善化材料A〜N及び比較材料a〜eに対応している。表1中のカッコ内の数値の単位は、「質量(g)」を表す。
レジストパターン改善化材料A〜Nにおける「塩化ベンザルコニウム」は、和光純薬工業のものを用いた。該塩化ベンザルコニウムは、前記一般式(1)においてn=8〜18であり、主としてn=12、及び15からなる。
また、表1における「樹脂」は、水溶性樹脂を意味し、「PVA」は、ポリビニルアルコール(PVA−205C、クラレ社製)を表し、「PVPd」は、ポリビニルピロリドン(K=30、関東化学社製)を表し、「PGA」は、ポリグルタミン酸(分子量約150万、非架橋タイプ、ヤクルト薬品工業社製)を表す。また、「その他」の欄における、「IPA」は、イソプロピルアルコールを表し、「2HBA」は、2−ヒドロキシベンジルアルコールを表し、「TN−80」は、非イオン性界面活性剤(第1級アルコールエトキシレート系界面活性剤、ADEKA社製)を表す。
塩化ベンゼトニウム、及び塩化セチルピリジニウムは、下記構造式で表される。
【化3】

また、水には純水(脱イオン水)を用い、水の量はそれぞれの組成において100gとした。
【0058】
【表1】

【0059】
−レジストパターンの形成−
以上により調製した材料(レジストパターン改善化材料及び比較材料)を、脂環族系ArFレジスト(東京応化工業社製)より形成した幅96nm(ピッチ180nm)、LWR6.6nmのライン&スペースのパターン(形成条件は次のとおりである。ArF露光装置(キヤノン社製)で露光後、露光装置に接続されたトラック装置(東京エレクトロン社製)で露光後ベークを行い、続けて2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド現像液を用いて20秒間現像し、更に純水でリンスを行った。)上(表2における未処理に相当)に、スピンコート法により、初めに850rpm/5sの条件で、次に2,000rpm/40sの条件で塗布し、110℃/60sの条件でベークを行った後、純水で前記材料を60秒間リンス処理し、相互作用(ミキシング)しなかった未反応部を除去し、レジストパターン改善化材料A〜N及び比較材料a〜eにより微細パターンを形成した。
【0060】
得られたレジストパターンのライン幅サイズ(表2における「処理後サイズ」)及びラインパターン幅の変化量(表2における「サイズ変化量」)、更にラインパターン幅のばらつき度(表2における「LWR」)及びLWRの改善値(%)を表2に示す。表2において、A〜N、及びa〜eは、前記レジストパターン改善化材料A〜N、及び比較材料a〜eに対応する。
なお、ライン幅は、測長SEMを用いて観察した観察領域の6点のライン幅の平均値である。また、LWRは、長さ750nmの領域を25点測長し、線幅のばらつきの標準偏差(σ)を3倍することで求めた。また、未処理時のLWR値に対する処理後のLWR値の改善量の割合を以下の式により求め、それを「LWR改善値(%)」と定義した。
LWR改善値(%)=
〔(未処理時のLWR値−処理後のLWR値)/(未処理のLWR値)〕×100
【0061】
【表2】

【0062】
表2より、前記一般式(1)で表される塩化ベンザルコニウムを含有する本発明のレジストパターン改善化材料A〜Nを用いた場合、塩化ベンザルコニウムを含まない比較材料a〜bに比べて、レジスト線幅の変化を小さく抑えながらLWR値の低減、即ちレジストパターン幅の均一さが向上する効果があることが分かった。また、塩化ベンザルコニウムと同じ4級アンモニウム塩である塩化ベンゼトニウムを用いた場合(比較材料d)は、LWRが悪化した。塩化ベンザルコニウムと同じ4級アンモニウム塩である塩化セチルピリジニウムを用いた場合(比較材料e)には、LWRが15%改善するものの、ラインサイズが4nm太くなるため、サイズ変化を抑えながらLWRを低減する効果が小さいことが分かった。
【0063】
<ベーク無し実験>
実施例1で調製したレジストパターン改善化材料Bを用い、前記ベーク有り実験と同様に脂環族系ArFレジスト(東京応化社製)より形成した幅96nm、LWR6.6nmのラインパターン上(表2における未処理に相当)に、スピンコート法により、初めに850rpm/5sの条件で、次に2,000rpm/40sの条件で塗布した。続いて、ベークを行わずに純水でレジストパターン改善化材料を60秒間リンスし、相互作用(ミキシング)しなかった未反応部を除去し、微細パターンを形成した。
得られた前記レジストパターンを前記ベーク有り実験と同様に評価した結果を表3に示す。
【0064】
【表3】

表3より、前記一般式(1)で表される塩化ベンザルコニウムを含有する本発明のレジストパターン改善化材料Bを用いた場合でも、塗布後にベークを行わずにリンスした場合は、LWRの低減効果がなかった。
【0065】
<レジストパターン形成時のリンス液の適用実験>
レジストパターンの現像までを前記ベーク有り実験と同じ材料、装置、及び条件で行った。具体的には、脂環族系ArFレジスト(東京応化製)を用い、ArF露光装置(キヤノン社製)で露光後、露光装置に接続されたトラック装置(東京エレクトロン社製)で露光後ベークを行い、続けて2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド現像液を用いて20秒間現像した。ここまでの条件は、前記ベーク有り実験のレジストパターン形成の条件と同じである。
この後、2種類の処理方法でLWRの低減を比較した。即ち、通常、現像後に行う水リンスに替え、レジストパターン改善化材料Bを用いて処理後、ベーク無しでそのまま純水でリンスを行った場合(処理方法X)と、レジストパターン改善化材料Bを用いて処理後、いったん110℃で60秒間ベークを行い、続いて純水でリンスを行った場合(処理方法Y)とを比較した。結果を表4に示す。
【表4】

表4より、前記一般式(1)で表される塩化ベンザルコニウムを含有する本発明のレジストパターン改善化材料Bをレジストパターン形成時の現像液のリンス液として用いた場合でも、ベークを行わない場合(処理方法X)は、表3の結果と同様にLWRが増大する(即ち、LWRが悪化する)ことが分かった。また、ベークを行った場合(処理方法Y)は、表1の場合の処理方法と同様にLWRの低減効果が高いことが明らかとなった。
【0066】
(実施例2)
−半導体装置の作製−
図2Aに示すように、シリコン基板11上に層間絶縁膜12を形成し、図2Bに示すように、層間絶縁膜12上にスパッタリング法によりチタン膜13を形成した。次に、図2Cに示すように、ArF液浸露光によりレジストパターンを形成し、次いで本発明のレジストパターン改善化材料Bを塗布後、ベークを行い、純水によるリンス工程を経てLWR値が低減した平滑なレジストパターン14を形成し、これをマスクとして用い、反応性イオンエッチングによりチタン膜13をパターニングして開口部15aを形成した。引き続き、反応性イオンエッチングによりレジストパターン14を除去するととともに、図2Dに示すように、チタン膜13をマスクにして層間絶縁膜12に開口部15bを形成した。
【0067】
次に、チタン膜13をウェット処理により除去し、図2Eに示すように層間絶縁膜12上にTiN膜16をスパッタリング法により形成し、続いて、TiN膜16上にCu膜17を電解めっき法で成膜した。次いで、図2Fに示すように、CMP(化学機械研磨)にて開口部15b(図2D)に相当する溝部のみにバリアメタルとCu膜(第一の金属膜)を残して平坦化し、第一層の配線17aを形成した。
【0068】
次いで、図2Gに示すように、第一層の配線17aの上に層間絶縁膜18を形成した後、図2A〜図2Fと同様にして、図2Hに示すように、第一層の配線17aを、後に形成する上層配線と接続するCuプラグ(第二の金属膜)19及びTiN膜16aを形成した。
【0069】
上述の各工程を繰り返すことにより、図2Iに示すように、シリコン基板11上に第一層の配線17a、第二層の配線20a、及び第三層の配線21aを含む多層配線構造を備えた半導体装置を製造した。なお、図2Iにおいては、各層の配線の下層に形成したバリアメタル層は、図示を省略した。
【0070】
この実施例2では、上述したようにレジストパターン14が、本発明のレジストパターン改善化材料を用いて製造したレジストパターンである。
【0071】
本発明のレジストパターン改善化材料は、ArFレジスト、ArF液浸用レジストなどによるレジストパターンの側壁の凹凸を低減して、レジストパターン幅の均一さを向上することから、光の露光限界を超えたパターンを微細に形成するのに好適に用いることができ、各種のパターニング方法、半導体の製造方法などに好適に適用することができる。また、本発明のレジストパターン改善化材料は、本発明のレジストパターンの形成方法、本発明の半導体装置の製造方法に特に好適に用いることができる。
本発明の半導体装置の製造方法は、フラッシュメモリ、DRAM、FRAM、HDDヘッド、SAWフィルタを初めとする各種半導体装置、磁気ディスク装置などの製造に好適に用いることができる。
本発明の半導体装置は、フラッシュメモリ、DRAM、FRAM、HDDヘッド、SAWフィルタを初めとする各種半導体装置、磁気ディスク装置などに適している。
【0072】
以上の実施例1〜2を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)下記一般式(1)で表される塩化ベンザルコニウムと、水とを含有することを特徴とするレジストパターン改善化材料。
【化4】

ただし、前記一般式(1)中、nは、8〜18の整数を表す。
(付記2)更に、水溶性樹脂を含有する付記1に記載のレジストパターン改善化材料。
(付記3)水溶性樹脂が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリグルタミン酸、及びこれらを一部に含む樹脂の少なくとも一種である付記2に記載のレジストパターン改善化材料。
(付記4)水溶性樹脂の含有量が、水100質量部に対して、0.001質量部〜10質量部である付記2から3のいずれかに記載のレジストパターン改善化材料。
(付記5)更に、界面活性剤を含有する付記1から4のいずれかに記載のレジストパターン改善化材料。
(付記6)水溶液である付記1から5のいずれかに記載のレジストパターン改善化材料。
(付記7)被加工面上に付与されたレジスト材料に対する露光、及び現像によりパターン化されたレジストパターンの表面を覆うように付記1から6のいずれかに記載のレジストパターン改善化材料を塗布する工程と、塗布後に加熱を行う工程と、加熱後に水を含むリンス液でリンスを行う工程とを含むことを特徴とするレジストパターンの形成方法。
(付記8)被加工面上に付与されたレジスト材料に対する露光、及び現像によりパターン化されたレジストパターンの表面を覆うように付記1から6のいずれかに記載のレジストパターン改善化材料を塗布する処理と、塗布後に加熱を行う処理と、加熱後に水を含むリンス液でリンスを行う処理とによりレジストパターンを改善するレジストパターン形成工程と、該改善したレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことにより前記被加工面をパターニングするパターニング工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記9)エッチングが、ドライエッチングである付記8に記載の半導体装置の製造方法。
(付記10)被加工面が、誘電率2.7以下の層間絶縁材料である付記8から9のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
(付記11)付記8から10のいずれかに記載の半導体装置の製造方法により製造されることを特徴とする半導体装置。
【符号の説明】
【0073】
1 レジストパターン改善化材料
3 レジストパターン
5 被加工面(基材)
10 レジストパターン
10a 表層
10b 内層レジストパターン
11 シリコン基板
12 層間絶縁膜
13 チタン膜
14 レジストパターン
15a 開口部
15b 開口部
16 TiN膜
16a TiN膜
17 Cu膜
17a 配線
18 層間絶縁膜
19 Cuプラグ
20a 配線
21a 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される塩化ベンザルコニウムと、水とを含有することを特徴とするレジストパターン改善化材料。
【化1】

ただし、前記一般式(1)中、nは、8〜18の整数を表す。
【請求項2】
更に、水溶性樹脂を含有する請求項1に記載のレジストパターン改善化材料。
【請求項3】
水溶性樹脂が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリグルタミン酸、及びこれらを一部に含む樹脂の少なくとも一種である請求項2に記載のレジストパターン改善化材料。
【請求項4】
更に、界面活性剤を含有する請求項1から3のいずれかに記載のレジストパターン改善化材料。
【請求項5】
被加工面上に付与されたレジスト材料に対する露光、及び現像によりパターン化されたレジストパターンの表面を覆うように請求項1から4のいずれかに記載のレジストパターン改善化材料を塗布する工程と、塗布後に加熱を行う工程と、加熱後に水を含むリンス液でリンスを行う工程とを含むことを特徴とするレジストパターンの形成方法。
【請求項6】
被加工面上に付与されたレジスト材料に対する露光、及び現像によりパターン化されたレジストパターンの表面を覆うように請求項1から4のいずれかに記載のレジストパターン改善化材料を塗布する処理と、塗布後に加熱を行う処理と、加熱後に水を含むリンス液でリンスを行う処理とによりレジストパターンを改善するレジストパターン形成工程と、該改善したレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことにより前記被加工面をパターニングするパターニング工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置の製造方法により製造されることを特徴とする半導体装置。

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図2E】
image rotate

【図2F】
image rotate

【図2G】
image rotate

【図2H】
image rotate

【図2I】
image rotate

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate


【公開番号】特開2012−189879(P2012−189879A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54410(P2011−54410)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】