説明

レジンボンド砥石

【課題】特に溝付き工具の溝等のクリープフィード研削に用いて、研削熱を確実かつ効果的に発散することができ、研削比の一層の向上やワークをより高い精度で研削することが可能なレジンボンド砥石を提供する。
【解決手段】樹脂をバインダーとするボンド相に超砥粒が分散された砥粒層を有するレジンボンド砥石であって、ボンド相には、カーボンが5〜20vol%の範囲で、Ag粒子とCu粒子とが、互いの体積比を1:3〜3:1の範囲とし、かつボンド相に対して7〜30vol%の範囲で、バインダーが50〜70vol%の範囲で、それぞれ含有されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばドリルやエンドミルのような溝付き工具の溝のクリープフィード研削に用いて好適なレジンボンド砥石に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような溝付き工具の溝のクリープフィード研削に用いるレジンボンド砥石としては、例えば特許文献1に、樹脂結合相中にフィラーとしてアモルファスカーボンとファイバーカーボンとが所定の混合割合で、なおかつ樹脂結合相に対して所定の含有比率で分散配置されたものが提案されている。また、特許文献2には、例えば半導体ウェハーなどの高脆性材料の鏡面研削などに用いられるレジンボンド砥石として、特許文献1と同様に樹脂結合相中にアモルファスカーボンを分散配置するとともに、このアモルファスカーボンの他に耐摩耗性フィラーとして、SiC、SiO、Ag、Cu、Niなどを樹脂結合相中に分散することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−127018号公報
【特許文献2】特開2001−138244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このうち特許文献1に記載のレジンボンド砥石では、アモルファスカーボンやファイバーカーボンが有する固体潤滑性により研削抵抗を低減して砥石の切れ味を良くし、研削比を向上させて長寿命な砥石を得ている。ところが、特に上述の溝付工具の溝研削におけるクリープフィード研削では、切込みが深くて送り速度が遅い上に研削熱が籠もりやすいため、潤滑性を良くしてもワークや砥石に生じた熱により、結合相による砥粒の保持力が低下して研削比が損なわれやすいとともに、砥粒層自体の形状も維持し難くなってワークの成形精度も劣化するおそれがある。
【0005】
この点、特許文献2に記載のレジンボンド砥石においては、特に耐摩耗性フィラーとしてAgやCu等の金属フィラーを分散した場合には、かかる金属が有する熱伝導率の高さによって砥粒層に籠もりがちな熱を発散させることができる。しかしながら、これらの金属フィラーのうち、Cuは熱伝導率がより高くて熱の発散性では優れる反面、酸化されやすくてこの高い熱伝導率が早期に失われてしまうという問題がある。その一方で、Agは酸化はされ難いものの、熱伝導率はCuに比べると低いため、速やかな熱の発散を期待することはできない。
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたもので、特に上述した溝付き工具の溝等のクリープフィード研削に用いて、研削熱を確実かつ効果的に発散することができ、研削比の一層の向上やワークをより高い精度で研削することが可能なレジンボンド砥石を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、樹脂をバインダーとするボンド相に超砥粒が分散された砥粒層を有するレジンボンド砥石であって、上記ボンド相には、カーボンが5〜20vol%の範囲で、Ag粒子とCu粒子とが、互いの体積比を1:3〜3:1の範囲とし、かつ上記ボンド相に対して7〜30vol%の範囲で、上記バインダーが50〜70vol%の範囲で、それぞれ含有されていることを特徴とするものである。
【0008】
このようなレジンボンド砥石においては、ボンド相に5〜20vol%の範囲で含有されるカーボンによる固体潤滑性によって研削抵抗を低減して研削比の向上を図ることができるとともに、7〜30vol%の範囲で含有されるAg粒子とCu粒子により砥粒層の耐摩耗性を高めてその形状、寸法を維持し、成形精度を確保することができる。そして、これらAg粒子とCu粒子とは、互いの体積比が1:3〜3:1の範囲となるように、すなわち一方が他方に対して1/3以上3倍以下の体積比となるようにして含有されており、砥粒層の研削部位において生じた研削熱は熱伝導率の高いCu粒子によって速やかに発散させられるとともに、このCu粒子が酸化されても、残存する研削熱を酸化され難いAg粒子によって確実に発散させることができる。
【0009】
従って、上記構成のレジンボンド砥石によれば、特に上述のような溝付き工具の溝研削などにおけるクリープフィード研削用砥石として用いても、籠もりがちな研削熱を効率的に、しかも確実に発散させることができ、ボンド相における超砥粒の保持力を維持して研削比の一層の向上を図ることが可能となるとともに、砥粒層を所定の形状、寸法に保持してより高い精度でワークを研削することができる。ここで、Ag粒子とCu粒子との体積比が1:3〜3:1の範囲を越えると、両粒子の含有バランスが損なわれてCu粒子による速やかな熱の発散性とAg粒子による持続する熱の発散性とのいずれか一方が奏功されなくなり、このような効果を得ることができなくなる。
【0010】
なお、これらAg粒子およびCu粒子と、上記カーボンとバインダーとしての樹脂とは、その総合計としてボンド相の体積の100vol%を越えるものでなければよく、例えばカーボンが20vol%、Ag粒子とCu粒子とが30vol%で含有されている場合には、バインダーの含有量は50vol%となる。また、ボンド相にはこれらの成分以外のフィラーが含有されていてもよく、この場合にはAg粒子およびCu粒子とカーボンとバインダー樹脂との総合計はボンド相の100vol%未満となる。
【0011】
このようなフィラーとして、上記ボンド相にはさらに粒径60μm以下の硬質粒子が20vol%以下の範囲で含有されていてもよく、これによりボンド相の耐摩耗性をさらに向上させてワークを一層高い精度で研削することが可能となる。なお、このような硬質粒子としては、WAまたはSiCが含有されるのが望ましい。また、このような硬質粒子に代えて、あるいは該硬質粒子とともに、上記ボンド相にはさらに平均粒径40〜200μmの中空ガラス粒子が15vol%以下の範囲で含有されていてもよく、この場合には研削時に中空ガラス粒子が破砕されて砥粒層表面にチップポケットが形成されることにより、切屑排出性が向上するのは勿論、上記Ag粒子やCu粒子も砥粒層表面に露出してより一層の熱発散を促すことが可能となる。
【0012】
さらに、このような砥粒層における上記超砥粒の含有量は15〜35vol%の範囲であることが望ましく、これよりも超砥粒含有量が少ないと如何にボンド相の熱発散性が向上しても高い研削比を得ることができなくなる一方、これより超砥粒含有量が多くても砥粒層に占めるボンド相の割合が少なくなって超砥粒が脱落しやすくなり、砥粒層の形状や寸法を確実に維持することが困難となるおそれが生じる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、Ag粒子とCu粒子とをバランス良くボンド相に含有させることにより、研削熱を確実かつ速やかに、しかも持続的に効率よく発散させることができる。従って、たとえ研削熱が籠もりがちな溝研削などにおけるクリープフィード研削でも、研削比の向上を図ることができるとともに高い成形精度を確保することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態のレジンボンド砥石は、超硬合金、ハイス、セラミックス、ガラス、水晶、焼き入れ鋼などの材質のワークをクリープフィード研削するのに用いられ、より具体的には超硬合金やハイス等からなるドリルやエンドミル等の溝付き工具の溝(フルート)研削加工や超硬合金、ダイス鋼等からなる金型の研磨に用いて好適なものであって、中心軸線回りに回転される円盤状の砥石本体の外周に、例えば研削する溝の断面形状に応じた断面の砥粒層を備えている。
【0015】
そして、この砥粒層は、熱硬化性フェノールやポリイミド等の樹脂をバインダーとするボンド相にcBNまたはダイヤモンド等の超砥粒が均一に分散されたものであって、このうち超砥粒を除く上記ボンド相にはさらに、5〜20vol%のカーボンと、合計で7〜30vol%のAg粒子およびCu粒子とが、50〜70vol%の上記バインダーにやはり均一に分散されてそれぞれ含有されており、このうちAg粒子とCu粒子とは互いの体積比が1:3〜3:1の範囲となるようにされている。また、砥粒層における超砥粒の含有量は15〜35vol%の範囲とされている。
【0016】
ここで、上記カーボンとしては、例えば比重が1.3〜2.0で、最大繊維長70μm、繊維直径6〜10μm程度のカーボンファイバーを必要に応じて粉砕したものが用いられ、本実施形態では比重1.76、繊維長30μm、繊維直径7μm、かさ密度0.75程度のものが用いられている。なお、このカーボンは、特許文献1記載のレジンボンド砥石と同様にアモルファスカーボンであってもよい。また、Ag粒子としては、純度99.95%以上、比重10.50程度の板状ないしは片状の電解銀粉が用いられ、その粒径(最大寸法)は1〜30μmとされている。さらに、Cu粒子としては、理論密度8.96g/cm、見掛け密度1.45g/cm程度の電解銅粉が用いられ、その平均粒径は2〜9μmとされて、本実施形態では3μmとされている。
【0017】
上記ボンド相は、これらカーボンと、Ag粒子およびCu粒子と、樹脂バインダーとによってのみ形成されていてもよく、例えばカーボンの含有量が最大の20vol%、Ag粒子とCu粒子の合計含有量がやはり最大の30vol%のときには、バインダーの含有量は最小の50vol%とされる。一方、例えばカーボンの含有量が最少の5vol%で、Ag粒子とCu粒子の合計含有量もやはり最少の7vol%の場合には、バインダーの含有量は最大でも70vol%であるので、そのような場合にはボンド相にカーボン、Ag粒子およびCu粒子以外のフィラーが含有される。
【0018】
このようなフィラーとして、第1に、ボンド相には粒径60μm以下の硬質粒子が20vol%以下の範囲で含有されていてもよい。ここで、かかる硬質粒子としては、例えばWAまたはSiCが用いられる。また、第2に、平均粒径40〜200μmの中空ガラス粒子が15vol%以下の範囲で含有されていてもよく、これら硬質粒子と中空ガラス粒子との双方が含有されていてもよい。さらに、これら硬質粒子や中空ガラス粒子以外の、例えばCr粒子等が含有されていてもよい。
【0019】
このようなカーボン、Ag粒子およびCu粒子、バインダー樹脂と、必要に応じて上記硬質粒子や中空ガラス粒子等とは、上記超砥粒とともに、それぞれのボンド相または砥粒層に対する含有量が上記各範囲となるように、かつその総和がボンド相および砥粒層の100vol%となるように均一に混合され、ホットプレス等によって焼成されることにより、本実施形態のレジンボンド砥石が製造される。
【0020】
従って、このように構成されたレジンボンド砥石では、まずボンド相にカーボンが5〜20vol%の範囲で含有されており、その固体潤滑性により研削抵抗の低減を図って研削比を向上させることができる。また、ボンド相には金属フィラーとしてAg粒子とCu粒子とが合計で7〜30vol%の範囲で含有されていて、これにより砥粒層の耐摩耗性を高めることができて、該砥粒層の形状や寸法を維持することが可能となり、従って上述のような溝研削加工を行う場合でもワークに高い成形精度を確保することができる。
【0021】
そして、さらにこれらAg粒子とCu粒子とは、互いの体積比が1:3〜3:1の範囲となるようにされており、すなわち互いに一方が他方に対して少なくとも1/3の含有量が確保されるようにボンド相に含有されており、上述したような高硬度の材質よりなるワークをクリープフィード研削するときに発生した研削熱を、まずは熱伝導率の高いCu粒子によって速やかに発散させることができる。これは、特にワークが上述のような溝付き工具であってその溝研削を行う場合のように、ワーク側に発生した研削熱が溝内に籠もりがちとなってレジンボンド砥石側の砥粒層における熱の発散も妨げられ易い場合に特に効果的である。
【0022】
その一方で、かかるCu粒子は酸化されやすくてこのような高い熱伝導率を長く維持するのは難しいのに対し、Ag粒子は、Cu粒子と比較して熱伝導率は低いものの酸化され難く、長期に亙って安定した熱の発散を図ることができる。従って、上記構成のレジンボンド砥石によれば、Cu粒子による即効性とAg粒子による持続性とによって研削熱を確実かつ効率的に発散させることができるので、かかる研削熱の滞留によってボンド相の超砥粒保持力が損なわれるのを防いで研削比の一層の向上を図ることができるとともに、砥粒層自体の形状や寸法についてもより確実に維持することが可能となり、ワークの成形精度についても一層の向上を図ることができる。
【0023】
ここで、ボンド相に含有されるこれらAg粒子とCu粒子との体積比が1:3〜3:1の範囲を越えて、一方が他方に対して1/3を下回るような含有量となってしまうと、この含有量が少なくなった両粒子のうちの一方による熱発散の即効性または持続性のいずれかの効果が確実に奏功されなくなり、発生した研削熱を速やかに発散させることができなくなったり、あるいは熱の発散性が早期に失われてしまったりするおそれがある。また、これらAg粒子およびCu粒子の合計含有量がボンド相全体に対して7vol%を下回るほど少なくなると、たとえその体積比が上記範囲内にあったとしても絶対的な粒子の含有量が少なくなって、やはり熱発散の即効性または持続性あるいはこれらの双方が確実に奏功されなくなるおそれがある。
【0024】
一方、これらAg粒子およびCu粒子の合計含有量がボンド相に対して30vol%を上回るほど多かったり、あるいはカーボンの含有量が20vol%を上回るほど多かったりすると、相対的にボンド相における樹脂バインダーの含有量が少なくなって却って超砥粒の保持力が低下してしまうおそれがあり、逆にこの樹脂バインダーの含有量が70vol%を越えるほど多すぎると、ボンド相の強度が低下して砥粒層の形状や寸法を確実に維持することが困難となるおそれがある。また、カーボンの含有量が5vol%を下回るほど少ないと、十分な固体潤滑性が得られずに研削抵抗を低減することができず、研削比を確実に向上させることができなくなるおそれがある。
【0025】
さらに、これらカーボンとAg粒子およびCu粒子とに加え、他のフィラーとして、第1に上述したWAまたはSiCのような硬質粒子をボンド相に含有させた場合には、ボンド相の耐摩耗性を高めて砥粒層の形状、寸法を一層安定化させ、ワークの成形精度をさらに向上させることが可能となる。ただし、このような硬質粒子は、その粒径が大きすぎたりボンド相における含有量が多すぎたりすると、Ag粒子およびCu粒子による研削熱の発散を阻害して上述の効果を損なうおそれがあるため、粒径は60μm以下とされるのが望ましく、またボンド相における含有量は20vol%以下とされるのが望ましい。なお、この硬質粒子は、WAとSiCとのうちの1種でもよく、またこれら2種を混合して含有させてもよい。
【0026】
また、このような硬質粒子に代えて、あるいは該硬質粒子とともに、ボンド相に中空ガラス粒子を分散して含有させた場合には、研削時にこの中空ガラス粒子が破砕されることによって砥粒層の表面にチップポケットが形成されるので、研削によって生成される微細な切屑をこのチップポケットを介して排出することができて、研削抵抗の一層の低減を図ることができるとともに、ボンド相に含有された上記Ag粒子やCu粒子をこのチップポケットから砥粒層の表面に多く露出させることができ、これにより一層効率的な研削熱の発散を促すことが可能となる。ただし、このような中空ガラス粒子についても、その粒径が小さすぎるとこのような効果を得ることができない一方、粒径が大きすぎたり含有量が多すぎたりすると、形成されるチップポケットも大きくなりすぎて砥粒層が早期に摩耗するおそれがあるので、中空ガラス粒子の粒径は平均粒径で40〜200μmとされるのが望ましく、またボンド相への含有量は15vol%以下とされるのが望ましい。
【0027】
さらに、本実施形態では、このようにカーボン、Ag粒子およびCu粒子、樹脂バインダー、および必要に応じて硬質粒子や中空ガラス粒子を含有したボンド相に上記超砥粒を合わせた砥粒層において、この超砥粒の含有量が15〜35vol%の範囲とされており、上述したAg粒子およびCu粒子の熱発散性による高い研削比をより確実に維持することが可能となる。すなわち、この超砥粒の含有量が15vol%を下回るほど小さいと、切刃となるべき超砥粒が少ないために高い研削比を得ることはできず、かといって超砥粒含有量が35vol%を上回るほど多くても、超砥粒を保持するボンド相自体の体積が少なくなるために如何に熱発散性が高められても超砥粒の脱落が促進されることが避けられず、やはり研削比の向上が阻害されることになる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例を挙げて上述した効果について実証する。本実施例では、上記実施形態に基づいて、比重1.76、繊維長30μm、繊維直径7μm、かさ密度0.75のカーボンファイバーを5〜20vol%の範囲で含有し、また純度99.95%以上、比重10.50で粒径(最大寸法)が5μmの板状ないしは片状の電解銀粉よりなるAg粒子と、理論密度8.96g/cm、見掛け密度1.45g/cm、平均粒径が3μmの電解銅粉よりなるCu粒子とを、互いの体積比が1:3〜3:1の範囲となるようにして7〜30vol%の範囲で含有し、さらに熱硬化性フェノール樹脂よりなるバインダーを50〜70vol%の範囲で含有したボンド相に、超砥粒として平均粒径80μmのダイヤモンド砥粒を集中度100および125(砥粒層に対する含有量25vol%および31.25vol%)で分散した複数種のレジンボンド砥石を製造した。これらを実施例1〜10とする。
【0029】
なお、このうち実施例1においては平均粒径120μm、比重2.5の中空ガラス粒子を10vol%で、実施例1、3〜6、8、10においては硬質粒子として平均粒径35μmのSiCを15vol%で、実施例2、7、9においては硬質粒子として平均粒径48μmのWAを15vol%で、それぞれボンド相に含有させ、さらに実施例6、7ではSiC、WAに加えて平均粒径0.5μmのCrを7.5vol%で含有させた。また、これらの実施例に対する比較例として、カーボンの含有量が5vol%未満で、Ag粒子とCu粒子の体積比が上記の範囲外とされ、さらに一部で樹脂バインダーの含有量や硬質粒子の含有量も上記範囲外とされた複数種のレジンボンド砥石を製造した。これらを比較例1〜5とする。
【0030】
そして、これら実施例1〜10および比較例1〜5とにより、超硬合金よりなるワークに対してクリープフィード研削を行い、その際の研削比と、砥粒層の形状、寸法の変化の指標として研削終了後のコーナーだれの大きさとを測定した。この結果を、各実施例および各比較例のレジンボンド砥石における砥粒集中度およびボンド相の組成と合わせて表1に示す。なお、レジンボンド砥石はホイール寸法:200D/7T/3X/50.8H、仕様:SDC200−100Bで、研削条件は周速:25m/秒、テーブル送り速度:0.17m/秒、湿式研削(ソリューションタイプ、50倍希釈)、研削長は10mであった。
【0031】
【表1】

【0032】
この表1の結果より、本発明に係わる実施例1〜10のレジンボンド砥石では研削比がいずれも300を上回り、コーナーだれも小さく抑えられていたのに対し、カーボンの含有量が少なく、またAg粒子とCu粒子の体積比も1:3〜3:1の範囲外で、さらに一部で樹脂バインダーの含有量や硬質粒子の含有量も上記範囲外とされた比較例1〜5のレジンボンド砥石では研削比が300未満で、コーナーだれも比較的大きくなっている。特に、実施例1〜10のうちでも、ボンド相にカーボンと、Ag粒子およびCu粒子と、硬質粒子と、そしてさらに中空ガラス粒子とが、それぞれ上述した所定の範囲で含有された実施例1のレジンボンド砥石では、他の実施例2〜10に比べても優れた研削性能が得られていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂をバインダーとするボンド相に超砥粒が分散された砥粒層を有するレジンボンド砥石であって、
上記ボンド相には、
カーボンが5〜20vol%の範囲で、
Ag粒子とCu粒子とが、互いの体積比を1:3〜3:1の範囲とし、かつ上記ボンド相に対して7〜30vol%の範囲で、
上記バインダーが50〜70vol%の範囲で、
それぞれ含有されていることを特徴とするレジンボンド砥石。
【請求項2】
上記ボンド相にはさらに粒径60μm以下の硬質粒子が20vol%以下の範囲で含有されていることを特徴とする請求項1に記載のレジンボンド砥石。
【請求項3】
上記硬質粒子は、WAまたはSiCであることを特徴とする請求項2に記載のレジンボンド砥石。
【請求項4】
上記ボンド相にはさらに平均粒径40〜200μmの中空ガラス粒子が15vol%以下の範囲で含有されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のレジンボンド砥石。
【請求項5】
上記砥粒層における上記超砥粒の含有量が15〜35vol%の範囲であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のレジンボンド砥石。
【請求項6】
クリープフィード研削用砥石であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のレジンボンド砥石。

【公開番号】特開2011−104750(P2011−104750A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264975(P2009−264975)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】