説明

レゾルバ

【課題】 駆動モータにより発生する漏洩磁束の変化により影響を受けることの少ないレゾルバを提供すること。
【解決手段】 モータ本体56に供給される電流量を検知する電流検知部72と、電流量をモータ本体56に流したときの漏洩磁束により発生する、レゾルバ80の検出角度誤差を電流量−検出角度誤差関係データ75として記憶するPROM74と、電流検知部72が検知した電流量に基づいて、PROM74の電流量−検出角度誤差関係データ75により、レゾルバ80の検出角度を補正する補正係数演算部76、補正部77とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車駆動用モータのロータ軸の回転角度を検出するために使用されるレゾルバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド自動車や電気自動車において、高出力のブラシレスモータが使用されている。ハイブリッド自動車のブラシレスモータを制御するためには、モータの出力軸の回転角度を正確に把握する必要がある。ステータの各コイルへの通電切替えを制御するには、ロータの回転位置を正確に把握している必要があるからである。特に、自動車においては、コギングがドライバビリティを悪くするため、コギングを減少させることが要望されているため、コイルへの通電切替えを正確に行いたいという要望が強い。
自動車のモータ軸の検出には、耐高温性、耐ノイズ性、耐振動性、耐高湿性等の機能を満足するために、レゾルバが使用されている。レゾルバは、モータの内部に組み込まれて、モータのロータ軸に直接取り付けられている。
この種のレゾルバとしては、可変リラクタンス型レゾルバ(VR型レゾルバ)が使用されている。VR型レゾルバとは、磁路中に設けたギャップの変動によりトランスの効率が変化することを利用したレゾルバである。ギャップが回転角に対して周期的に変化するようにロータの形状を設定することにより、回転子側の巻線無しで角度出力を検出することができる。
【0003】
VR型レゾルバは、励磁コイルと検出コイルと配置されたステータと、両コイルに外周面が近接して配置されたロータとを有する。検出コイルは、90度位相をずらした2つのコイルから構成されている。励磁コイルに数KHzの正弦波交流を印加する。ロータの外周面を介して、検出コイルの2つのコイルから誘起電圧が出力される。2つの誘起電圧の出力振幅から角度を検出することができる。
励磁コイルに印加する正弦波の周波数を高くすれば、巻線数を少なくでき、レゾルバを小型化できるのであるが、周波数を高くすると、回転角を読取処理する電気回路が複雑となり、検出精度の安定性が低下する問題がある。
一方、レゾルバを小型化する方法としては、特許文献1に示す技術が提案されている。すなわち、励磁コイルに印加する高周波信号を振幅変調して、かつ、高周波信号の極性を励磁信号の極性反転位置で反転させた変調信号を入力させることが開示されている。これによれば、励磁コイルと検出コイルとして、プリントパターンを利用できるため、コストダウンできることが開示されている。
【0004】
一方、高精度のレゾルバを得るために、特許文献2に示す技術では、巻線コイルに生じるDCオフセット成分の影響を除去する方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000-292205号公報
【特許文献2】特開2000-074695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のハイブリッド自動車で使用されるレゾルバには、次のような問題があった。
(1)VR型レゾルバは、数KHzの周波数の励磁信号を使用しているため、巻線数が多くなり、また、ロータも堅牢なものとなるため、レゾルバを小型化することが難しいという問題があった。また、特許文献1に記載されたレゾルバは、ロータリィトランスを巻線で構成し、かつロータリィトランスを軸心と並行方向に配置しているため、モータの軸心方向に長くなり、主として自動車用に用いるレゾルバを小型化することが難しい問題があった。
【0007】
(2)ハイブリッド自動車で使用されるレゾルバは、モータの内部に組み込まれて、モータのロータ軸に直接取り付けられている。モータの固定子コイルに高圧電流が流されると、固定子から漏洩する磁束が大きくなる。
VR型レゾルバは、可動部が金属製のロータのみであるため、漏洩磁束の影響を受けることが、特許文献1に記載されたれレゾルバと比較して、少ない。
しかし、特許文献1に記載されたレゾルバは、励磁コイル及び検出コイルがプリントパターンで構成され、ステータとロータの双方に取り付けられている。特に、ロータに取り付けられた励磁コイルまたは検出コイルは、モータの漏洩磁束の影響を受けて、検出する回転角度のS/N比を低下させる問題がある。
特に、自動車駆動用モータは、増速時と減速時とでは大きく漏洩磁束が変化するため、S/N比の低下が大きく問題となる。
【0008】
(3)また、複数部品を組み合わせてレゾルバを組み立てているので、各部品の製作公差の範囲で、レゾルバのロータとステータの軸ずれが生じる可能性がある。特許文献2の技術では、レゾルバのロータとステータの軸ずれがあった場合には、軸ずれにより発生する回転角度検出の誤差を除去することができない問題があった。
【0009】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、駆動モータにより発生する漏洩磁束の変化により影響を受けることの少ないレゾルバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決するために、本発明のレゾルバは、次のような構成を有している。
(1)モータのロータ軸の回転角度を検出するレゾルバであって、モータに供給される電流量を検知する電流量検知手段と、電流量をモータに流したときの漏洩磁束により発生する、レゾルバの検出角度誤差を電流量−検出角度誤差関係データとして記憶する記憶手段と、記憶手段が記憶する電流量−検出角度誤差関係データに基づいて、レゾルバの検出角度を補正する補正手段とを有する。
ここで、電流量−検出角度誤差関係データを、実際に自動車にモータとレゾルバを組み込んで、実験により求めると良い。このとき、中間パラメータとして、モータからの漏洩磁束、レゾルバの受けるノイズ量を用いても良い。すなわち、漏洩磁束−ノイズ量関係データとして記憶して、そのデータを用いて、電流量からノイズ量を演算し、補正係数を算出して、補正に用いても良い。
【0011】
(2)(1)に記載するレゾルバにおいて、前記漏洩磁束−ノイズ量関係が、前記モータに前記レゾルバを設置した状態における、実験またはシミュレーションにより予め得られたデータであることを特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載するレゾルバにおいて、前記モータが、ハイブリッド自動車用駆動用モータまたは電気自動車用駆動モータであることを特徴とする。
【0012】
(4)モータのロータ軸の回転角度を検出するレゾルバであって、ロータ軸に高精度ロータリィエンコーダを取り付けて、少なくとも一回転させたときの、高精度ロータリィエンコーダの出力と、レゾルバの出力とを比較して検出した偏差を記憶する偏差記憶手段と、レゾルバの出力を、記憶手段が記憶する偏差により補正する補正手段とを有する。
【0013】
(5)(4)に記載するレゾルバにおいて、前記偏差記憶手段がPROMであり、前記PROM、及び前記補正手段が、レゾルバ信号処理回路に記憶されていることを特徴とする。
(6)(4)に記載するレゾルバにおいて、前記モータが、ハイブリッド自動車駆動用モータまたは電気自動車駆動用モータであり、前記偏差記憶手段、及び前記補正手段が、前記モータを駆動制御するためのECUに記憶されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記構成を有する本発明のレゾルバの作用及び効果について説明する。
ハイブリッド自動車駆動用モータ、及び電気自動車駆動用モータは、高出力を必要とすると同時に、小型化が要求される。そのため、通常のモータと比較して高電圧を供給することが行われている。一方、モータのロータ軸の回転角度を検出するためのレゾルバは、モータのすぐ近くに取り付けられている。すなわち、レゾルバは、モータから漏洩する磁束にさらされた状態で使用されている。そのため、レゾルバ内のコイルにモータからの漏洩磁束によるノイズが発生し、レゾルバの回転角度検出の精度を低下させる恐れがある。
【0015】
本発明のレゾルバは、モータに供給される電流量を検知する電流量検知手段と、電流量により発生するモータの漏洩磁束と、漏洩磁束がレゾルバに与えるノイズ量との関係を、漏洩磁束−ノイズ量関係として記憶する記憶手段と、電流量検知手段が検知した電流量に基づいて、記憶手段の漏洩磁束−ノイズ量関係により、ノイズ量を求め、求めたノイズ量に基づいて、レゾルバの検出角度を補正する補正手段とを有する。
すなわち、モータにレゾルバが組み込まれた状態で、モータが使用される全ての状態において、モータに通電する電流量と、そのとき発生する漏洩磁束により、レゾルバに発生するノイズ量を測定して、関係マップ等を製作する。そして、この漏洩磁束−ノイズ量関係マップを記憶手段に記憶する。このとき、全ての状態におけるノイズ量の測定が難しい場合もある。そのような場合には、シミュレーションにより、ノイズ量を求めても良い。
【0016】
そして、レゾルバを使用するときに、モータに通電する電流値を検出し、検出した電流値に基づいて、漏洩磁束−ノイズ量関係マップにより、ノイズ量を求め、そのノイズ量で、レゾルバが検出した角度を補正手段が補正する。これにより、レゾルバの角度検出精度を高めることができる。
ハイブリッド自動車等のモータは、加速時または減速時に大きな漏洩磁束を出すと考えられる。加速時に特にドライバビリティが問題となるため、その補正を行うことにより、運転者のドライバビリティを向上させることができる。
【0017】
また、本発明のレゾルバは、ロータ軸に高精度ロータリィエンコーダを取り付けて、少なくとも一回転させたときの、高精度ロータリィエンコーダの出力と、レゾルバの出力とを比較して検出した偏差を記憶する偏差記憶手段と、レゾルバの出力を、記憶手段が記憶する偏差により補正する補正手段とを有するので、工場において、組み付けた状態で、レゾルバの校正を、高精度ロータリィエンコーダを用いて個別に行ない、偏差として記憶し、その偏差を用いてレゾルバの補正を行っているため、部品の公差により発生する角度検出精度の低下を防止することができる。
【0018】
また、偏差記憶手段がPROMであり、PROM、及び補正手段が、レゾルバ信号処理回路に記憶されているので、レゾルバを自動車に取り付けたときに、自動車側のECUは、レゾルバから補正された回転角度を得ることができるため、ECUの負荷を低減することができる。
また、モータが、ハイブリッド自動車駆動用モータまたは電気自動車駆動用モータであり、偏差記憶手段、及び補正手段が、前記モータを駆動制御するためのECUに記憶させることにより、レゾルバの記憶手段を小容量とすることができ、レゾルバ自体のコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
始めに、本発明のレゾルバが使用されるハイブリッド自動車のモータと発電機の全体構成を説明する。モータと発電機の中央断面図を図7に示す。
エンジン50のエンジン軸53が、変速機54を介して、モータ軸11に接続されている。エンジン軸53は、ハウジング62のベアリング63、ハウジング66のベアリング59により回転可能に保持されている。モータ軸11は、ハウジング13のベアリング14、ハウジング55のベアリング58により回転可能に保持されている。モータ軸11は、モータ本体56の中心を貫通している。エンジン軸53は、発電機本体51の中心を貫通している。
【0020】
モータ軸11には、モータ軸11の回転角度を検出するためのレゾルバ64,65が取り付けられている。また、エンジン軸53には、エンジン軸53の回転角度を検出するためのレゾルバ60,61が取り付けられている。
ハウジング13、ハウジング55とモータ本体56とで囲まれた空間は、密閉空間であり、オイルが封入されている。オイルは、モータの巻線コイルで発生した熱を冷却するためのものである。
ハイブリッド自動車で使用されるレゾルバは、モータの内部に組み込まれて、モータのロータ軸に直接取り付けられている。モータの内部には、モータ冷却用のオイルが封入されており、オイルが、ロータ回転板やトランスミッションにより、掻き揚げられて滴下するため、レゾルバは、オイルにさらされて使用されている。
【0021】
本発明のレゾルバ64、65について以下詳細に説明する。レゾルバ60,61は、レゾルバ64、65と同じ構造なので説明を省略する。
本発明の第1実施例であるレゾルバの構造を、図1に中央断面図で示す。ハイブリッド自動車の駆動用モータのロータ軸であるモータ軸11の一端は、密閉式のベアリング14により、ハウジング13に回転可能に保持されている。ハウジング13には、ステータプリント基板23が、位置決めブラケットであるステータ板24を介して取り付けられている。ステータ板24は、ステータプリント基板23をハウジング13に対して位置決めするためのものである。ステータプリント基板23の表面には、モータ軸11に近い面にロータリィトランスの一方22が環状に形成されている。また、モータ軸11から遠いほうの面に、励磁コイルパターン20が形成されている。
【0022】
モータ軸11は、モータ本体12から突出している。モータ軸11の、ベアリング14とモータ本体56との間には、一対のリング16,17により、ロータ回転板15がモータ軸11に対して、垂直に保持されている。すなわち、ロータ回転板15とモータ軸11とは、図示しないキー及びキー溝により回転方向に位置決めされている。ロータ回転板15とモータ軸11とのキー結合は、円周方向には少しガタをもたせている。それにより、ロータ回転板15は、一対のリング16,17と接触することにより垂直度が保持される。
ロータ回転板15の、ステータプリント基板23に対向する面、対向する位置に、ロータプリント基板18が配置されている。ロータプリント基板18は、ロータ回転板15に対して、位置決めされて取り付けられている。ロータプリント基板18の表面には、モータ軸11に近い面にロータリィトランスの一方22と対向する位置に、ロータリィトランスの他方のパターン21が環状に形成されている。また、モータ軸11から遠いほうの面上で、励磁コイルパターン20と対向する位置に、検出コイルパターン19が形成されている。
【0023】
次に、レゾルバの制御方法を示す制御ブロック図を図3に示す。また、制御ブロックの位置的な構成を図4に示す。レゾルバの制御方法は、基本的には、特許文献1で開示された制御方法と同じなので、詳細な説明は省略し、概観的な説明を行う。
励磁コイルパターン20は、90度位相をずらせた一対のコイルパターン46、47から構成されている。
コイルパターン46に供給される励磁電圧について説明する。7.2KHzの正弦波(図中Aで示す)が変調器45に供給される。同時に、720KHzの高周波正弦波(図中Bで示す)が変調器45に供給される。変調器45において、720KHzの高周波正弦波が、7.2KHzの正弦波により、振幅変調される。このとき、7.2KHz正弦波の極性反転位置で、720KHz高周波の極性を反転させる。これにより、被変調波に極性を与えられ、復調したときに元の7.2KHz正弦波と同様な極性をもった復調波が得られる(図中Dで示す)。
【0024】
次に、コイルパターン47に供給される励磁電圧について説明する。7.2KHzの余弦波(図中Cで示す)が変調器40に供給される。同時に、720KHzの高周波正弦波(図中Bで示す)が変調器40に供給される。変調器40において、720KHzの高周波正弦波が、7.2KHzの余弦波により、振幅変調される。このとき、上述の7.2KHz正弦波による変調と同様に極性反転を行うことにより、元の7.2KHz余弦波と同様な極性をもった復調波が得られる(図中Eで示す)。
【0025】
検出コイルパターン19には、励磁電圧により誘起された誘起電圧が発生する。検出コイルパターン19で発生した誘起電圧は、一対のロータリィトランスパターン21,22を介して、ステータ側の制御基板上の復調器48で復調され、位相差検出器44に入力される。励磁コイルパターン20に印加された励磁電圧により検出コイルパターン19に誘起された誘起電圧の位相差を検出することにより、ロータ回転板15のステータ板24に対する回転角度を計測することができる。位相差検出は、回路構成が簡単ですむ利点がある。
【0026】
図5及び図6にモータ軸11に回転ぶれが発生したときの計測角度の精度の変化を示す。図6は、従来のVR型レゾルバのデータを示し、図5は、本発明のレゾルバのデータを示す。いずれも、モータ軸が0.1〜0.2mm程度ずれた場合のデータを示している。縦軸が、変動値、すなわち誤差を示し、横軸が回転角度を示している。
図6に示すように、従来のVR型レゾルバでは、レンジで約3度の幅で誤差が発生している。本発明のレゾルバでは、レンジで約1度以下の幅で誤差が発生している。従来のVR型レゾルバの誤差のレンジが約3度であるのと比較して、本発明のレゾルバの誤差のレンジが1度以下であり、誤差が1/3以下となっている。
誤差が減少した理由は、プリントパターンで構成される励磁コイルパターン20と、プリントパターンで構成される検出コイルパターン19とが、対向する平面上に、対向する位置に、ある幅で配置されているので、モータ軸11に半径方向の少しのずれが発生しても、ずれ量とパターン幅との比率が大きく変化することがないためである。
【0027】
次に、上記レゾルバを用いて、モータを制御する作用について説明する。図8に、モータの制御装置の構成をブロック図で示す。エンジン50の軸にモータ本体56が接続し、モータ本体56の軸に変速機54とレゾルバ80(図7における64,65)が取り付けられている。
モータ本体56には、モータ駆動用電流を制御するモータドライバ71が接続している。モータドライバ71とモータ本体56とを接続する電線には、電流検出器81が取り付けられている。電流検出器81は、電流検出部72に接続している。レゾルバ80には、レゾルバ80を制御して回転角度を得るためのR/D処理部73が接続されている。
電流検出部72は、補正係数演算部76に接続している。R/D処理部73は、補正部77及び補正係数演算部76に接続している。PROM74には、電流量−検出角度誤差関係データ75が記憶されている。PROM74は、補正係数演算部76に接続している。補正係数演算部76は、補正部77に接続している。補正部77は、CPU79に接続している。CPU79は、モータドライバ71に接続している。
【0028】
次に、電流量−検出角度誤差関係データ75について説明する。図9にモータの電流が比較的小さいときの、角度真値と検出角度との関係を示す。横軸はモータ軸11の回転角度の真の値であり、縦軸はレゾルバ80が検出した検出角度を示している。点線Bで示した値が、正しいデータであるが、モータ本体56の漏洩磁束の影響をレゾルバ80が受けるため、実際の検出角度は、実線Aで示したデータとなっている。
また、図10にモータの電流が比較的大きいときの、角度真値と検出角度との関係を示す。横軸はモータ軸11の回転角度の真の値であり、縦軸はレゾルバ80が検出した検出角度を示している。点線Bで示した値が、正しいデータであるが、モータ本体56の漏洩磁束が図9と比較して大きいため、レゾルバ80が受ける影響も大きくなるため、実際の検出角度は、実線Aで示すように、図9と比較して、真の値データである点線Bとの偏差が大きくなっている。
【0029】
モータ本体56を駆動するための電流の大きさによりノイズ量が異なり、レゾルバ80で発生するノイズ量も異なるため、本実施例では、図11に示すように、モータ電流値5A刻みで変化させて、データを記憶している。縦軸は、モータ本体56に流れる電流値を5A刻みで示し、横軸は、レゾルバの出力を5度刻みで示している。中のデータは、真の角度である点線Bとの偏差を回転角度の補正角度で示している。例えば、モータ電流値が15Aのとき、レゾルバ80の検出角度が10度ならば、偏差は+0.06度となる。また、モータ電流値が10Aのとき、レゾルバ80の検出角度が20度ならば、偏差は−0.04度となる。図11に示すデータが電流量−検出角度誤差関係データ75に記憶されている。
図11に示すデータは、ハイブリッド自動車に搭載された、エンジン50、モータ本体56、変速機54、レゾルバ80により、実際に計測したデータに基づいて製作したデータである。そのとき、真の角度は、高精度ロータリィエンコーダ等を用いて計測している。また、一部のデータは、シミュレーションにより、求めたものを利用している。
そして、電流値を5A刻みで採り、角度を5度刻みで採っているが、各々その中間値の場合には、直線補完を行っている。
【0030】
次に、図8のモータ制御装置の作用を説明する。
電流検出部72は、常にモータ本体56に流されている電流の電流値を検出し、補正係数演算部76に電流値を送る。R/D処理部73がレゾルバ80の検出角度を補正部77及び補正係数演算部76に送る。補正係数演算部76は、電流検出部72から得た電流値、及びR/D処理部73から得たレゾルバ80の検出角度に基づいて、PROM74の電流量−検出角度誤差関係データ75から、補正係数を読み出す。このとき、補正係数演算部76が、直線補完も行っている。補正係数演算部76は、演算した補正値を補正部77に送る。補正部77は、R/D処理部73から得たレゾルバ80の検出角度を、補正係数演算部76から得た補正値により補正して、CPU79にレゾルバ80の検出角度として送る。CPU79は、その検出角度に基づいて、モータドライバ71の制御を行う。
【0031】
以上詳細に説明したように、本実施例のレゾルバによれば、モータ本体56に供給される電流量を検知する電流検知部72と、電流量をモータ本体56に流したときの漏洩磁束により発生する、レゾルバ80の検出角度誤差を電流量−検出角度誤差関係データ75として記憶するPROM74と、電流検知部72が検知した電流量に基づいて、PROM74の電流量−検出角度誤差関係データ75により、レゾルバ80の検出角度を補正する補正係数演算部76、補正部77とを有するので、レゾルバ80を使用するときに、モータ本体56に通電する電流値を検出し、検出した電流値に基づいて、電流量−検出角度誤差関係データ75により、レゾルバが検出した角度を補正係数演算部76、補正部77が補正するため、レゾルバ80の角度検出精度を高めることができる。
また、ハイブリッド自動車等のモータにおいて、特に加速時及び減速時に、運転者のドライバビリティを向上させることができる。
【0032】
次に、第2の実施例について説明する。第1実施例と相違する点のみ説明し、同じ部分については、説明を割愛する。図12にモータの制御装置の構成をブロック図で示す。
エンジン50の軸にモータ本体56が接続し、モータ本体56の軸に変速機54とレゾルバ80(図7における64,65)が取り付けられている。
モータ本体56には、モータ駆動用電流を制御するモータドライバ71が接続している。レゾルバ80には、レゾルバ80を制御して回転角度を得るためのR/D処理部73が接続されている。R/D処理部73は、補正部77に接続している。PROM74には、補正データ78が記憶されている。PROM74は、補正部77に接続している。補正部77は、レゾルバ信号処理回路CPU79に接続している。CPU79は、モータドライバ71に接続している。
【0033】
次に、補正データ78について説明する。
レゾルバ80は、単体で高精度のものであっても、組み付け時のロータとステータとの軸芯ずれ等により、検出誤差を発生する。そこで、組み付け終了後、ロータリィエンコーダ等の高精度の検出器をレゾルバ80の軸に直接取り付け、ロータリィエンコーダを用いて、レゾルバ80の出力との偏差を、各角度に対して求める。すなわち、図3に計測結果を示す。横軸はロータリィエンコーダの検出角度であり、縦軸はレゾルバ80の検出角度である。図中実線Aがレゾルバ80の出力であり、点線Cがロータリィエンコーダの出力である。実線Aと点線Cとの縦方向の差が偏差であり、その偏差が、レゾルバ80の検出角度毎に、補正データ78としてPROM74に記憶される。
【0034】
次に、図12のモータ制御装置の作用を説明する。
R/D処理部73がレゾルバ80の検出角度を補正部77に送る。補正部77は、R/D処理部73から得たレゾルバ80の検出角度に基づいて、PROM74の補正データ78から、偏差を読み出す。このとき、補正部77は、直線補完も行っている。補正部77は、PROM74の補正データ78から得た偏差によりレゾルバ80の検出角度を補正して、レゾルバ信号処理回路CPU79にレゾルバ80の検出角度として送る。レゾルバ信号処理回路CPU79は、その検出角度に基づいて、モータドライバ71の制御を行う。
これにより、正確な検出角度を用いてモータを制御することができる。
【0035】
以上説明したように、第2の実施例のレゾルバによれば、ロータ軸に高精度ロータリィエンコーダを取り付けて、少なくとも一回転させたときの、高精度ロータリィエンコーダの出力と、レゾルバの出力とを比較して検出した偏差を記憶するPROM74と、レゾルバ80の出力を、PROM74が記憶する偏差により補正する補正部77とを有するので、工場において、組み付けた状態で、レゾルバの校正を、高精度ロータリィエンコーダを用いて個別に行ない、偏差として記憶し、その偏差を用いてレゾルバの補正を行っているため、部品の公差により発生する角度検出精度の低下を防止することができる。
【0036】
また、偏差記憶手段がPROM74であり、PROM74、及び補正部77が、レゾルバ信号処理回路CPU79の一部として記憶されているので、レゾルバ80を自動車に取り付けたときに、自動車側のECUは、レゾルバから補正された回転角度を得ることができるため、ECUの負荷を低減することができる。
また、モータが、ハイブリッド自動車駆動用モータまたは電気自動車駆動用モータであり、補正データ78、及び補正部77を、モータを駆動制御するためのECUに記憶させることにより、レゾルバの記憶手段を小容量とすることができる。
【0037】
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で以下のように実施することもできる。
例えば、本実施例では、電流値を5A刻みとし、検出角度を5度刻みとしたが、より細分化してデータを持つことにより、よりレゾルバ80の検出角度の精度を高めることができる。自動車は、高温、低温、高湿、乾燥等の様々な環境条件下で使用されるため、全ての環境条件で、モータ電流値とノイズ量の関係を実験により求めることは、困難な場合がある。その場合には、シミュレーションにより、実験値を補正するようにしても良い。
また、本実施例では、モータの電流値毎に角度補正マップデータを記憶して、漏洩磁束やノイズ量を求めることなく、直接、レゾルバ80の検出角度を補正しているが、モータの電流値と漏洩磁束との関係データ、漏洩磁束とノイズ量との関係データ、及びノイズ量と検出角度との関係データを各別に持って、順次演算を行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施例のレゾルバの構成を示す中央断面図である。
【図2】本発明の第5実施例のレゾルバの構成を示す中央断面図である。
【図3】レゾルバの制御構成を制御ブロック図である。
【図4】レゾルバの制御ブロックの位置関係を示す図である。
【図5】本発明のレゾルバの実験データ図である。
【図6】従来のVR型レゾルバの実験データ図である。
【図7】本発明のレゾルバが取り付けられたハイブリッド自動車用モータの構成を示す中央横断面図である。
【図8】本発明の第1実施例のモータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【図9】モータ電流が小さいときの角度真値と検出角度の関係を示す図である。
【図10】モータ電流が大きいときの角度真値と検出角度の関係を示す図である。
【図11】モータ電流値毎の、レゾルバ80の検出角度と、ノイズによる誤差角度との関係を示すデータである。
【図12】本発明の第2実施例のモータ制御装置の構成を示すブロック図である。
【図13】ロータリィエンコーダの検出角度とレゾルバ80の検出角度との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
11 モータ軸
13 ハウジング
15 ロータ回転板
16,17 リング
19 検出コイルパターン
20 励磁コイルパターン
21、22 ロータリィトランスパターン
24 ステータ板
25,26 ロータリィトランスパターン
56 モータ本体
71 モータドライバ
72 電流検出部
74 PROM
75 電流量−検出角度誤差関係データ
76 補正係数演算部
77 補正部
79 レゾルバ信号処理回路CPU
81 電流検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータのロータ軸の回転角度を検出するレゾルバにおいて、
前記モータに供給される電流量を検知する電流量検知手段と、
前記電流量を前記モータに流したときの漏洩磁束により発生する、レゾルバの検出角度誤差を電流量−検出角度誤差関係データとして記憶する記憶手段と、
前記記憶手段が記憶する前記電流量−検出角度誤差関係データに基づいて、レゾルバの検出角度を補正する補正手段とを有することを特徴とするレゾルバ。
【請求項2】
請求項1に記載するレゾルバにおいて、
電流量−検出角度誤差関係データが、前記モータに前記レゾルバを設置した状態における、実験またはシミュレーションにより予め得られたデータであることを特徴とするレゾルバ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載するレゾルバにおいて、
前記モータが、ハイブリッド自動車用駆動用モータまたは電気自動車用駆動モータであることを特徴とするレゾルバ。
【請求項4】
モータのロータ軸の回転角度を検出するレゾルバにおいて、
前記ロータ軸に高精度ロータリィエンコーダを取り付けて、少なくとも一回転させたときの、前記高精度ロータリィエンコーダの出力と、レゾルバの出力とを比較して検出した偏差を記憶する偏差記憶手段と、
前記レゾルバの出力を、記憶手段が記憶する偏差により補正する補正手段とを有することを特徴とするレゾルバ。
【請求項5】
請求項4に記載するレゾルバにおいて、
前記偏差記憶手段がPROMであり、
前記PROM、及び前記補正手段が、レゾルバ信号処理回路に記憶されていることを特徴とするレゾルバ。
【請求項6】
請求項4に記載するレゾルバにおいて、
前記モータが、ハイブリッド自動車駆動用モータまたは電気自動車駆動用モータであり、
前記偏差記憶手段、及び前記補正手段が、前記モータを駆動制御するためのECUに記憶されていることを特徴とするレゾルバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−256486(P2008−256486A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97979(P2007−97979)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】