説明

レバーペースト食品

【課題】レバー特有のコク味が増したレバーペースト食品を提供する。
【解決手段】マッシュルームエキスと湿熱処理澱粉を配合することを特徴とするレバーペースト食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レバー特有のコク味が増したレバーペースト食品に関する。
【背景技術】
【0002】
レバーは、癖が強く好き嫌いの別れる食品原料であるが、レバー特有のコク味を活かした様々な料理に活用されており根強い人気を博している。特に、レバーのぼそぼそとした食感を改めペースト状に調製したものが好まれ、例えば、薄切りパンに乗せたカナッペや、パスタや肉料理のコク味付け等に用いられている。
【0003】
また、レバーは、鶏、牛、豚等の肝臓から採取される良質な蛋白源であり、ビタミンA、B群、D等のビタミン類や、鉄や亜鉛等のミネラル類が豊富に含まれる栄養価の高い食材である。そのため、栄養が偏りビタミン類やミネラル類が不足しがちな現代人や、栄養バランスに一層の配慮が必要な乳幼児等はその摂取を推奨されている。
【0004】
しかしながら、レバーは、ビタミン類やミネラル類のうち特にビタミンAを豊富に含んでいるため、ビタミンAの過剰摂取による手足の痛み、めまい、吐き気、嘔吐、食欲不振等の様々な副作用に注意する必要がある。そこで、レバーの過剰摂取に注意しながらも、レバー特有のコク味が増したレバーペースト食品が求められていた。
【0005】
従来、レバーを配合した食品の風味を改善する方法として、カレー粉を含有させることでレバー独特の臭みのないレバーペースト(特許文献1)や、カテキンを含有させることでレバー独特の臭みを解消したレバーソーセージ(特許文献2)等のレバー特有の臭みを解消したレバー食品は提案されているが、レバー特有のコク味が増したレバーペースト食品については示されていない。
【0006】
【特許文献1】特開昭60−120963号公報
【特許文献2】特開2000−32955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、レバー特有のコク味が増したレバーペースト食品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、マッシュルームエキスと湿熱処理澱粉を配合したレバーペースト食品は、意外にもレバー特有のコク味が増すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)マッシュルームエキスと湿熱処理澱粉を配合するレバーペースト食品、
(2)レバー100部に対しマッシュルームエキスを2〜20部配合し、かつレバーペースト食品全体に対し湿熱処理澱粉を1〜5%配合する(1)のレバーペースト食品、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レバー特有のコク味が増したレバーペースト食品を提供することができる。これにより、レバーの過剰摂取を気にせずにレバーペースト食品を摂取できるようになり、食品市場の更なる拡大が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
【0012】
本発明のレバーペースト食品は、マッシュルームエキスと湿熱処理澱粉を配合することを特徴としており、これにより、レバー特有のコク味を増すことができる。
【0013】
本発明のレバーペースト食品に用いるマッシュルームエキスは、特に限定されないが、マッシュルーム(Agaricus bisporus、和名ツクリタケ)から熱水抽出法やアルコール抽出法など公知の方法で、抽出された成分を濃縮して得られる。また、その形態は、市販されているものであれば、特に限定されないが、液体状、顆粒状、粉末状、固形状のもの等を用いることができる。
【0014】
本発明のレバーペースト食品に用いるマッシュルームエキスの配合量は、特に限定されないが、レバー100部に対しマッシュルームエキスを2〜20部配合することが好ましく、3〜10部がより好ましい。マッシュルームエキスの配合量が前記範囲より少ないと、レバー特有のコク味が増し難い。前記範囲より多いと、配合量を増やしたとしても本発明の効果が増し難く経済的でない場合がある。
【0015】
本発明のレバーペースト食品に用いる湿熱処理澱粉は、澱粉を100℃前後の飽和水蒸気の存在下で加熱処理したものであり、例えば、特開平4−130102号公報に記載された方法、すなわち、澱粉を減圧下に置いた後、蒸気導入による加圧加熱を行い、或いはこの操作を繰り返すことにより澱粉を所定時間加熱した後、冷却粉砕して製造される。
【0016】
本発明のレバーペースト食品に用いる湿熱処理澱粉の配合量は、特に限定されないが、レバーペースト食品全体に対し湿熱処理澱粉を1〜5%配合することが好ましく、1.5〜4%がより好ましい。湿熱処理澱粉の配合量が前記範囲より少ない又は多いと、レバー特有のコク味が増し難い。
【0017】
本発明のレバーペースト食品に用いるレバーは、特に限定されないが、例えば、鶏、牛、豚等の肝臓から採取されたものを用いることができ、特に、鶏肉のレバーを用いた場合に本発明の効果が奏し易く好ましい。
【0018】
本発明のレバーペースト食品は、前記マッシュルームエキス及び湿熱処理澱粉以外に、本発明の効果を損わない範囲で適宜選択し配合することができる。具体的には、例えば、ジャガイモ、ニンジン、カボチャ、タマネギ、里芋、サツマイモ等の野菜類、鶏肉、豚肉、牛肉等の畜肉類、牛乳、脱脂粉乳、バター、チーズ等の乳製品等、煮干、椎茸、鶏肉、牛肉、豚肉、魚、野菜等を使用した出汁又はエキス類、清水、酒、砂糖、醤油、みりん、酢、食塩、グルタミン酸ソーダ等の調味料、生姜、唐辛子、あさつき、おろし大根等の薬味、有機酸等のpH調整剤を配合することができる。
【実施例】
【0019】
以下に本発明のレバーペースト食品を実施例及び試験例に基づき詳述する。なお、本発明はこれに限定するものではない。
【0020】
〔実施例1〕
下記配合表に従って、二重釜に鶏レバー肉(ミンチ状)、牛乳、鶏肉(ミンチ状)、タマネギ、ニンジン、湿熱処理澱粉、バター、マッシュルームエキス、清水を投入し、加熱撹拌し、コミットロール(アーシェル社製)を用いてペースト化した。次に、100g容の耐熱性の瓶に100gずつ充填後、開口部を密閉し、レトルト処理(120℃、30分間)を施し、本発明のレバーペースト食品を得た。なお、製したレバーペースト食品は、マッシュルームエキスをレバー100部に対して3部、レバーペースト食品全体に対し湿熱処理澱粉を2.5%配合するものであった。
【0021】
[配合表]
鶏レバー肉(ミンチ状) 10%
牛乳 7%
鶏肉(ミンチ状) 5%
タマネギ 5%
ニンジン 5%
湿熱処理澱粉 2.5%
バター 5%
マッシュルームエキス 0.3%
清水 60.2%
――――――――――――――――――
合計 100%
【0022】
〔実施例2〕
鶏レバー肉(ミンチ状)を豚レバー肉(ミンチ状)に置換えた以外は、実施例1に準じて、本発明のレバーペースト食品を得た。
【0023】
〔比較例1〕
湿熱処理澱粉をアセチル化アジピン酸架橋澱粉に置換えた以外は、実施例1に準じて、レバーペースト食品を得た。
【0024】
〔比較例2〕
湿熱処理澱粉を生澱粉に置換えた以外は、実施例1に準じて、レバーペースト食品を得た。
【0025】
〔比較例3〕
マッシュルームエキスをチキンエキスに置換えた以外は、実施例1に準じて、レバーペースト食品を得た。
【0026】
〔比較例4〕
マッシュルームエキスをカツオエキスに置換えた以外は、実施例1に準じて、レバーペースト食品を得た。
【0027】
〔試験例1〕
マッシュルームエキス及び湿熱処理澱粉を清水に置換えた以外は実施例1に準じて調製したレバーペースト食品を対照にして、実施例1及び2並びに比較例1〜4についてレバー特有のコク味が増しているか下記の評価基準に沿って官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

配合する場合:+ 配合しない場合:−
<評価基準>
○:レバー特有のコク味が増し、十分なコク味を有していた。
△:ややレバー特有のコク味が増していた。
×:レバー特有のコク味が増していなかった。
【0029】
表1の結果、マッシュルームエキス及び湿熱処理澱粉を配合した場合、レバーを少量しか配合していないにも拘わらず、レバー特有のコク味が非常に増しており好ましかった(実施例1、2)。一方、マッシュルームエキス以外の動植物エキスを用いた場合、及び湿熱処理澱粉以外の澱粉を用いた場合、レバー特有のコク味は増していなかった(比較例1〜4)。
【0030】
〔試験例2〕
レバー100部に対するマッシュルームエキスの配合割合、全体に対する湿熱処理澱粉の配合量の違いによる本発明への影響を調べた。具体的には、実施例1において、マッシュルームエキス及び湿熱処理澱粉の配合量を表2に示す割合に変更した以外は、実施例1と同様の方法でレバーペースト食品を製した。次いで、得られたレバーペースト食品を喫食し、レバー特有のコク味について試験例1と同様の評価基準に沿って官能評価を行った。結果を表2に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
表2の結果、マッシュルームエキス及び湿熱処理澱粉を配合したレバーペースト食品は、レバー特有のコク味が増していた(No.2〜7)。特に、レバー100部に対しマッシュルームエキスを2〜20部配合し、かつレバーペースト食品全体に対し湿熱処理澱粉を1〜5%配合した場合、レバー特有のコク味に深みが増し非常に好ましかった(No.3〜5)。一方、マッシュルームエキス及び湿熱処理澱粉を配合していない場合、レバー特有のコク味は増していなかった(No.1、8)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マッシュルームエキスと湿熱処理澱粉を配合することを特徴とするレバーペースト食品。
【請求項2】
レバー100部に対しマッシュルームエキスを2〜20部配合し、かつレバーペースト食品全体に対し湿熱処理澱粉を1〜5%配合する請求項1記載のレバーペースト食品。

【公開番号】特開2011−109945(P2011−109945A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268008(P2009−268008)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】